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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070706
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/44 20060101AFI20230515BHJP
   A47C 7/48 20060101ALN20230515BHJP
【FI】
A47C7/44
A47C7/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182968
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000152228
【氏名又は名称】株式会社内田洋行
(71)【出願人】
【識別番号】000114385
【氏名又は名称】株式会社クオリ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】本間 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 悟
(72)【発明者】
【氏名】本田 佳之
(72)【発明者】
【氏名】長坂 典明
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084EC06
3B084GA05
(57)【要約】
【課題】左右方向に胴体を傾けた場合にも座り心地を向上できる椅子を提供する。
【解決手段】背凭れ構造体13は、座部構造体と接続される背凭れ支持体31と、背受け部材33を支持する背凭れ本体32と、を備え、背凭れ支持体31は、座部構造体と接続される下支持部42と、下支持部42から上方に延びる支柱部43a,43bと、支柱部43a,43bの上側に位置する上支持部46と、を備え、背凭れ本体32は、上支持部46に固定される上固定部51と、下支持部42に揺動支持機構45を介して支持される下接続支持部52と、を備え、揺動支持機構45は、下支持部42に対して下接続支持部52を左右方向に揺動可能に支持する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背凭れ構造体を備える椅子であって、
前記背凭れ構造体は、座部構造体と接続される背凭れ支持体と、前記背凭れ支持体に支持される背凭れ本体と、を備え、
前記背凭れ支持体は、前記座部構造体と接続される下支持部と、前記下支持部から上方に延びる支柱部と、前記支柱部の上側に位置する上支持部と、を備え、
前記背凭れ本体は、前記上支持部に固定される上固定部と、前記下支持部に揺動支持機構を介して支持される下接続支持部と、を備え、
前記揺動支持機構は、前記下支持部に対して前記下接続支持部を左右方向に揺動可能に支持する
椅子。
【請求項2】
前記揺動支持機構は、
前記下支持部および前記下接続支持部のうちの何れか一方の部分が備える揺動軸部と、
他方の部分が備える受け部であって、前記揺動軸部が挿通される前記受け部と、を備える
請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記揺動支持機構は、
前記一方の部分において、前記受け部が形成された突片を収容する空間を、前記揺動軸部の周囲に構成する壁部と、
前記壁部の先端面に載置されることにより前記空間を塞ぐプレートと、を備える
請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
前記支柱部は、左右方向の揺動時、揺動方向に撓む柔軟性を有する
請求項1ないし3のうち何れか1項に記載の椅子。
【請求項5】
前記支柱部は、一対であり、
一対の支柱部は、互いに近づく方向に曲がることで、その間隔が下側よりも狭まる狭幅部を備えている
請求項1ないし4のうち何れか1項に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れの状態が変位する椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
背凭れを備えた椅子には、特許文献1などに記載されているように、着座者の体格や姿勢に合わせて、背凭れの位置を、前後方向に調整可能としたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6651799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、椅子に着座している着座者は、着座している間に、左右方向に姿勢を傾けることもある。前後方向に移動する背凭れは、着座者が左右方向の何れか一方向に姿勢を傾けた場合、その動きに追従することが困難である。着座者の姿勢が左右方向の何れかの方向に傾いたときに、その動きに背凭れが追従しないのでは、座り心地を更に向上させることが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する椅子は、背凭れ構造体を備える椅子であって、前記背凭れ構造体は、座部構造体と接続される背凭れ支持体と、前記背凭れ支持体に支持される背凭れ本体と、を備え、前記背凭れ支持体は、前記座部構造体と接続される下支持部と、前記下支持部から上方に延びる支柱部と、前記支柱部の上側に位置する上支持部と、を備え、前記背凭れ本体は、前記上支持部に固定される上固定部と、前記下支持部に揺動支持機構を介して支持される下接続支持部と、を備え、前記揺動支持機構は、前記下支持部に対して前記下接続支持部を左右方向に揺動可能に支持する。上記構成によれば、利用者が左右方向に胴体を傾けた場合、背凭れ構造体も同方向に揺動する。これにより、利用者の動きに背凭れ構造体が追従し座り心地を向上することができる。
【0006】
上記椅子において前記下支持部および前記下接続支持部のうちの何れか一方の部分が備える揺動軸部と、他方の部分が備える受け部であって、前記揺動軸部が挿通される前記受け部と、を備えるようにしてもよい。上記構成によれば、背凭れ支持体に対して背凭れ本体を揺動させる構造を簡素な構成で実現することができる。
【0007】
上記椅子において、前記揺動支持機構は、前記一方の部分において、前記受け部が形成された突片を収容する空間を、前記揺動軸部の周囲に構成する壁部と、前記壁部の先端面に載置されることにより前記空間を塞ぐプレートと、を備えるようにしてもよい。上記構成によれば、背凭れ本体は、背凭れ支持体に対する前後方向のがたつきが抑えられる。
【0008】
上記椅子において、前記支柱部は、左右方向の揺動時、揺動方向に撓む柔軟性を有する構成としてもよい。上記構成によれば、支柱部は、利用者の荷重が加わった状態で撓むことで、背凭れ本体がより揺動し易くなる。
【0009】
上記椅子において、一対の支柱部は、互いに近づく方向に曲がることで、その間隔が下側よりも狭まる狭幅部を備えている構成にしてもよい。上記構成によれば、一対の支柱部において、下側の変位量より上側の変位量が大きくなるように撓ませることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のような構成によれば、左右方向に胴体を傾けた場合にも座り心地を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】椅子を正面側から見た斜視図である。
図2図1に示す椅子の後面図である。
図3図1に示す椅子の側面図である。
図4図1に示す椅子の背凭れ構造体を後面側から見た斜視図である。
図5図1に示す椅子における揺動支持機構の分解斜視図である。
図6図1に示す椅子における揺動支持機構の拡大分解斜視図である。
図7】着座した利用者が胴体を左右方向に傾けた状態を示す後面図である。
図8】着座した利用者が胴体を左右方向に傾けたときの背凭れ構造体の状態を示す後面図である。
図9】揺動軸部を用いない変形例としての揺動支持機構であって、背凭れ支持体に対して背凭れ本体が直立した状態を示す要部後面図である。
図10図9に示す揺動支持機構であって、背凭れ支持体に対して背凭れ本体が傾いた状態を示す要部後面図である。
図11】支持片の貫通孔を横長の長孔で構成した変形例としての揺動支持機構の後面図である。
図12】支持片が接する上壁の先端面を凸型円弧面で構成した変形例としての揺動支持機構の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図12を用いて、椅子を具体化した一実施形態を説明する。
(椅子の全体構成)
図1および図2に示すように、椅子1は、脚部材11と、座部構造体12と、背凭れ構造体13と、を備えている。本実施形態では、椅子1は、座部構造体12の座部22が着座可能に開放されている。この開放された側が前側、座部構造体12の背凭れ構造体13の位置する側が後側である。また、本実施形態では、座部構造体12を前側から見て左右方向が右側および左側であり、脚部材11に対する座部側が上側、座部22に対する脚部材11側が下側である。
【0013】
脚部材11は、キャスタ付の脚部材である。脚部材11は、脚柱11aを備えている。脚柱11aの下端には、放射状に脚部11bが延びている。脚部11bの先端にはキャスタ11cが取り付けられている。脚柱11aは、ガススプリングが内蔵されている。このガススプリングは、座部構造体12が備える操作レバー16の操作に応じて、受台21の高さ調整を行う。
【0014】
座部構造体12は、受台21と、座部22と、を備えている。受台21の上部には、座部22が取り付けられている。この座部22は、座板の上にウレタンフォーム等のクッション材が積層され、布等によって被覆されて構成されている。
【0015】
(背凭れ構造体)
図2および図3に示すように、背凭れ構造体13は、前後方向から見て左右対称の形状をしている。背凭れ構造体13は、背凭れ支持体31と、背凭れ本体32と、を備えている。背凭れ本体32は、背受け部材33を備えている。
【0016】
背凭れ支持体31は、接続部材39によって座部構造体12と接続されている。背凭れ支持体31は、下支持部42と、支柱部43と、上支持部46と、を備えている。接続部材39は、座部構造体12と下支持部42とを接続する部材であって、受台21の下側を後側から前側に向って延び、脚柱11aの近くまで延びている。接続部材39は、下支持部42に対してねじなどの固定部材によって固定される。なお、接続部材39と下支持部42とは、一体成形された一連の部材であってもよい。
【0017】
下支持部42は、座部22の後側に左右方向に延在されている。下支持部42の左右に延びる長手方向の長さは、座部22の後側縁と同程度の長さ若しくは短い。図4に示すように、下支持部42において、接続部材39は、脚柱11a側の面であって長手方向の中央部に固定される。また、下支持部42の後側の面であって長手方向の中央部には、背凭れ本体32を揺動可能に支持する揺動支持機構45が構成されている。揺動支持機構45は、接続部材39の接続部分とは反対側の位置に構成されている。なお、揺動支持機構45の詳細は後述する。
【0018】
支柱部43は、一対の第1支柱部43aおよび第2支柱部43bと、を備えている。一対の支柱部43a,43bは、下支持部42から上方に向ってなだらかに、曲がりながら延びている。具体的に、一対の支柱部43a,43bは、下から、斜め後側に、互いの間隔が開き、そして上方に延びる(第1間隔C1)。次いで、一対の支柱部43a,43bは、前側に向って互いの間隔が狭まりながら上方に延びる(第2間隔C2)。その後、一対の支柱部43a,43bは、ほぼ同じ間隔で上方に延びる(第3間隔C3)。その後、一対の支柱部43a,43bは、左右方向に開き、上支持部46を構成する。すなわち、第1間隔C1を構成する部分では、斜め後側に互いの間隔が開くように膨らむ第1湾曲部47aが構成される。第2間隔C2を構成する部分では、前側に向って膨らむ第2湾曲部47bが構成されている。一対の支柱部43a,43bは、第1湾曲部47aから第2湾曲部47bにかけて互いに近づく方向に湾曲することで、その間隔が下側の第1間隔C1よりも上側の第2間隔C2で狭まる。これにより、第2湾曲部47bより上側は、第1湾曲部47aに対して狭幅部となる。
【0019】
上支持部46は、第1支柱部43aおよび第2支柱部43bの各上端を繋ぐとともに、左右方向の外側に向って突出している。すなわち、上支持部46は、第1支柱部43aの上端と第2支柱部43bの上端とを繋ぐ連結部46aと、第1支柱部43aの上端から一方向に延びる第1延長部46bと、第2支柱部43bの上端から他方向に延びる第2延長部46cと、を備えている。
【0020】
連結部46aには、ヘッドレスト、ジャケットハンガーなどの付属部品を取り付けるための部品取付部が構成されている。部品取付部は、連結部46aに設けられた部品取付凹部を、別部品のキャップ48aで閉塞して構成されている。部品取付凹部は、その開口端が後方を向いており、前方から見えにくい場所に設けられている。部品取付凹部は、付属部品を固定するねじ孔などが設けられている。付属部品を取り付けるときには、キャップ48aが取り外され、部品取付凹部に対して付属部品が固定される。
【0021】
第1延長部46bには、背凭れ本体32を固定支持する第1固定支持部48bが設けられている。第1固定支持部48bは、第1固定具を用いて、背凭れ本体32の上固定部51を第1延長部46bに固定する。第2延長部46cにも、背凭れ本体32を固定支持する第2固定支持部48cが設けられている。第2固定支持部48cは、第2固定具を用いて、背凭れ本体32の上固定部51を第2延長部46cに固定する。
【0022】
背凭れ本体32は、一例として環状枠形状を有している。背凭れ本体32は、上固定部51と、下接続支持部52と、上固定部51の左右両側と下接続支持部52の左右両側とを繋ぐ第1縦枠部53aおよび第2縦枠部53bと、を備えている。上固定部51は、背凭れ支持体31の上支持部46の湾曲に倣う湾曲形状を有している。縦枠部53a,53bは、上固定部51から下接続支持部52へ向かって斜め前方に延びている。下接続支持部52は、U字形状を有しており、その両側は、上固定部51の左右両側よりも前側へ突出し、中央部が後方に突出するように湾曲している。そして、下接続支持部52は、その左右両側が縦枠部53a,53bの下側と繋がっている。湾曲した下接続支持部52において、最も後方に位置する中央部には、揺動支持機構45を構成する突片54が下方に向って突出している。
【0023】
背凭れ本体32には、背受け部材33が張架されている(図1参照)。背受け部材33は、一例として、張り部材である。背受け部材33は、例えばメッシュ形状であり、上固定部51、下接続支持部52、および縦枠部53a,53bに渡って、前方からの荷重を好適に受けられるように張架されている。
【0024】
(揺動支持機構)
図5に示すように、揺動支持機構45は、背凭れ支持体31の下支持部42に設けられる構成要素として、揺動軸部61と、揺動軸部61の周囲の空間62aを構成する壁部62と、空間62aを塞ぐプレート63と、を備えている。揺動支持機構45は、背凭れ本体32の下接続支持部52に設けられる構成要素として、突片54と、突片54に形成された貫通孔54aと、を備えている。
【0025】
図6に示すように、揺動軸部61は、下支持部42の一部である底壁61aに一体的に形成された円筒形状のボスであり、中心軸線が前後方向に延びている。揺動軸部61は、平坦な底壁61aから後側に向って突出している。
【0026】
壁部62は、下壁64aと、下壁64aの両側に位置する一対の縦壁64b,64cと、下壁64aの上側に位置する上壁64dと、を備えている。そして、底壁61aに立設された壁64a,64b,64c,64dに囲まれた領域が空間62aである。底壁61aには、揺動軸部61の左右両側に、第1固定ボス65aおよび第2固定ボス65bが形成されている。第1固定ボス65aおよび第2固定ボス65bは、共に、円筒形状を有しており、前後方向に挿通孔を備えている。挿通孔には、固定部材となるボルト69が挿通される。上壁64dは、底壁61aの方向に切り欠かれた凹部66を備えている。凹部66には、突片54が配置される。
【0027】
下壁64aおよび縦壁64b,64cの先端面は、底壁61aからの高さが同じである。上壁64dにおける凹部66の両側の先端面は、下壁64aおよび縦壁64b,64cの先端面よりも一段低い。壁部62は、下壁64aの内側に、下壁64aに隣接して形成された内側リブ64eを備えている。内側リブ64eは、固定ボス65a,65bと下壁64aおよび縦壁64b,64cとを繋ぐ。内側リブ64eは、固定ボス65a,65bを補強する。固定ボス65a,65b先端面は、下壁64aおよび縦壁64b,64cの先端面よりも一段低い。固定ボス65a,65bの先端面は、上壁64dにおける凹部66の両側の先端面の高さと同じである。上壁64dの凹部66の部分は、二重壁で構成される。すなわち、上壁64dの凹部66の部分は、低壁64fと高壁64gとで構成され、上側の壁が低壁64fであり、下側の壁が高壁64gである。そして、高壁64gが突片54の外面と直接的に接触する壁であり、低壁64fは、高壁64gを補強している。突片54の外面は、平坦面で構成され、高壁64gの先端面も平坦面で構成されている。これにより、突片54は、高壁64gの先端面に案内されながら左右方向に揺動することになる。低壁64fの部分には、さらに凹部66の両側の上壁64dと揺動する突片54との隙間を塞ぐためシャッタを配置するようにしてもよい。
【0028】
凹部66の上側は、底壁61aを上方に延長した延長片67を備えている。延長片67は、揺動軸部61に支持された突片54と重なる部分であって、突片54に対して前側、すなわち座部22側に位置する。これにより、延長片67は、座部22側から見たときに突片54を隠すとともに、異物が前方から揺動支持機構45に入り込みにくくする。
【0029】
突片54は、下接続支持部52の中央部から下方に突出する平板形状の片である。突片54の中央部には、受け部としての貫通孔54aが形成されている。揺動軸部61も、中心軸線に対して直交する方向の横断面形状が真円である。貫通孔54aは、揺動軸部61の外径よりも大径の真円ある。貫通孔54aに揺動軸部61が挿通されると、突片54は、揺動軸部61に対してがたつきを有しながらも、左右方向に回動可能に支持する。突片54は、凹部66内に位置し、左右方向の幅の範囲で左右方向に回動可能となる。
【0030】
プレート63は、一例として、板金であり、壁部62で囲まれる開口形状に対応した形状を有している。プレート63は、揺動軸部61の先端面に対応する位置と、第1固定ボス65aの先端面に対応する位置と、第2固定ボス65bの先端面に対応する位置の3か所に固定孔68を備えている。プレート63は、内側リブ64e、固定ボス65a,65bの各先端面、および、上壁64dの凹部66の両側の先端面に載置される。そして、各固定孔68、揺動軸部61および固定ボス65a,65bの各挿通孔には、固定部材であるボルト69が挿通される。そして、ボルト69は、底壁61aを介して空間62aの反対側に配置された取付プレートに設けられたナットに締め付けられる。これにより、空間62aは、プレート63によって閉塞される。プレート63は、突片54の貫通孔54aに揺動軸部61が挿通された後に、壁部62に固定される。これにより、突片54は、空間62aに収容され、空間62aがプレート63によって塞がられることで前後方向のがたつきが規制される。
【0031】
図4を用いて、背凭れ支持体31と背凭れ本体32との関係を説明する。背凭れ本体32は、背凭れ支持体31に対して、上側が第1固定支持部48bおよび第2固定支持部48cで固定され、下側は、揺動軸部61の位置を起点に左右方向に揺動可能である。背凭れ支持体31の支柱部43a,43bは、背凭れ本体32の縦枠部53a,53bの間において、上下方向に延びるように位置する。背凭れ支持体31も背凭れ本体32も、例えば、共にガラスファイバをナイロンなどの合成樹脂に含ませた強化プラスチックで構成されているが、背凭れ本体32は、座り心地を良くするため背凭れ支持体31よりも柔軟性を有するように構成されている。
【0032】
ただし、背凭れ支持体31において、少なくとも支柱部43a,43bは、揺動時、揺動方向に撓む程度の柔軟性を有している。背凭れ本体32が揺動軸部61を中心に左右方向に揺動しようとしたとき、上側で背凭れ本体32と背凭れ支持体31とが固定されているので、支柱部43a,43bも左右方向に撓む。そして、背凭れ本体32は、そのときの利用者100の姿勢に合わせて撓むことになる。また、利用者100が離席したときなどには、背凭れ本体32および支柱部43a,43bが弾性復帰することにより、直立状態に戻る。
【0033】
(椅子の動作説明)
利用者100が椅子1に着座している場合において、利用者100が左右方向に胴体を傾ける場合を説明する。図7に示すように、利用者100は、骨盤101から背骨を左右何れかの方向に湾曲させることになる。脊椎は、全体としてねじる側の半身を縮め、逆側を伸ばすように弓なりになる。このとき、利用者100は、頭部104から動き出し、次いで、胸椎103、腰椎102、骨盤101の順に動く。そして、その傾きは、骨盤101の近くの腰椎102の周辺の変位量Aよりも胸椎103の周辺の変位量Bの方が大きくなり、さらに胸椎103より上の頭部104の変位量Cの方が更に大きくなる。すなわち、利用者100の胴体の変位量は、骨盤101から頭部104に向うほど大きくなる。
【0034】
このような利用者100の左右方向の動きに対して、背凭れ構造体13は次のように動作する。図8に示すように、背凭れ本体32は、利用者100の背中と背受け部材33を介して接している。利用者100が左右のいずれか一方に胴体を変位させると、背凭れ本体32は、背凭れ支持体31の揺動軸部61を支点にして、胴体と同方向に揺動する。このとき、上側で背凭れ本体32と固定されることで繋がった背凭れ支持体31の支柱部43a,43bも、同方向に撓む。これにより、背凭れ全体が胴体の傾いた方向に傾くことになる。そして、支柱部43a,43bも、下支持部42の近く部位の変位量よりも上支持部46の近くの変位量の方が大きくなる。すなわち、利用者100における脊椎の変位の方向と支柱部43a,43bの変位の方向がほぼ同じになる。
【0035】
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)利用者100が左右方向に胴体を傾けた場合、背凭れ構造体13も同方向に揺動する。具体的に、背受け部材33が張架された背凭れ本体32が揺動軸部61を中心に背凭れ支持体31に対して揺動する。これにより、利用者100の座り心地を向上することができる。
【0036】
(2)揺動支持機構45は、背凭れ支持体31側の揺動軸部61に対して背凭れ本体32の貫通孔54aを挿通することで、背凭れ支持体31に対して背凭れ本体32を揺動可能とすることができる。揺動支持機構45は、背凭れ支持体31に対して背凭れ本体32を揺動させる構造を簡素な構成で実現することができる。
【0037】
(3)貫通孔54aが形成される突片54は、壁部62で囲まれた空間62a内に配置され、空間62aは、プレート63により塞がれる。これにより、背凭れ本体32は、背凭れ支持体31に対する前後方向のがたつきが抑えられる。
【0038】
(4)支柱部43は、少なくとも利用者100の体重程度の荷重が加わらないと、撓まない程度の強度である。背凭れ本体32は、このような荷重が加わったときに、背凭れ支持体31に対して利用者100の荷重が加わった状態で揺動する。すなわち、軽い荷重で背凭れ本体32が背凭れ支持体31に対して容易に揺動してしまうことで、かえって座り心地が悪化してしまうことを防ぐことができる。
【0039】
(5)一対の支柱部43は、第1湾曲部47aの上側に第2湾曲部47bを設け、上側の方を狭幅部とすることで、下側の変位量より上側の変位量が大きくなるように撓ませることができる。
【0040】
なお、上記第1実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・背凭れ支持体31に対する背凭れ本体32の揺動は、揺動軸部61と貫通孔54aの構成に限定されるものではない。
【0041】
図9および図10は、揺動軸部61と貫通孔54aを用いない揺動支持機構45の変形例である。この変形例では、背凭れ本体32における突片54の下端面と接触する背凭れ支持体31の壁部71が、第1半径の第1円弧面72を備えている。これに対して、背凭れ本体32における突片54の下端面も第2円弧面73で構成されている。第2円弧面73は、第1半径より小さい第2半径の円弧面である。すなわち、第1円弧面72の方が第2円弧面73よりも緩やかな円弧面で構成されている。
【0042】
図9は、背凭れ本体32が直立した状態を示している。この場合、第2円弧面73の第2中心軸線73aは、鉛直であり、第1円弧面72の第1中心軸線72aと一致している。そして、第1円弧面72における第1中心軸線72aの位置が第2円弧面73との接点74となる。
【0043】
図10は、背凭れ本体32が背凭れ支持体31に対して10度程度傾いた状態を示している。この場合、第1中心軸線72aに対して第2中心軸線73aが同方向に傾くとともに、第1円弧面72と第1円弧面72との接点74が背凭れ本体32が傾いた方向に移動する。このような揺動支持機構45によっても、背凭れ支持体31に対して背凭れ本体32を揺動可能に支持することができる。
【0044】
図11は、背凭れ本体32の突片54に形成された貫通孔54aの変形例である。図6などに示した貫通孔54aは、揺動軸部61の外径よりも大径の真円ある。これに対して、図11に示す貫通孔75は、長軸を左右方向とした横長の長孔である。これにより、揺動軸部61は、貫通孔75内を、貫通孔54aの場合よりも、より自由に移動することができる。これにより、背凭れ支持体31に対して背凭れ本体32を左右方向により自由度をもって揺動させることができる。
【0045】
図12は、壁部62における上壁64dの変形例である。上壁64dの突片54の外面と接する先端面76は、中央が最も高い凸型円弧面で構成されている。突片54の外面は平坦面である。これにより、突片54は、揺動時、先端面76に倣って前後方向にも傾く。これにより、背凭れ支持体31に対して背凭れ本体32を、左右方向だけでなく前後方向にも揺動させることができる。このような構成は、図11に示すように、横長の貫通孔75であれば、突片54は、より前後左右方向により揺動し易くなる。
【0046】
・一対の支柱部43a,43bは、第1湾曲部47aの上側に第2湾曲部47bを設け、上側の方を狭幅部とする構成を採用しなくてもよい。一例として、一対の支柱部43a,43bは、直線形状として、下支持部42から真っ直ぐ上方に延びてもよい。この場合、一対の支柱部43a,43bの間隔は、一定である。湾曲部47a,47bは、なだらかに湾曲した形状の他、角張った形状であってもよい。
【0047】
・一対の支柱部43a,43bが有する柔軟性は、材料によって調整してもよいし、太さなど形状によって調整してもよいし、これらの組み合わせで調整してもよい。
・支柱部43は、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0048】
・揺動支持機構45としては、突片54を配置するための空間62aを構成するための壁部62を省略してもよい。この場合、突片54は、露出することになる。
・揺動軸部61を突片54など背凭れ本体32側に設けて、貫通孔54aを底壁61aなど背凭れ支持体31側に設けるようにしてもよい。
【0049】
・突片54を省略し、貫通孔54aを下接続支持部52に設けるようにしてもよい。
・受け部としての貫通孔54aは、揺動軸部61が係合される有底の孔部であってもよい。
【0050】
・プレート63に、壁部62を設けて空間62aを構成するようにしてもよい。
・壁部62は、内側リブ64eを設けて二重壁を設けるのではなく、一重の壁であってもよい。この場合、壁部62は、凹部66の部分を除いて、同じ高さとなり、その先端面に、プレート63が載置されることになる。この場合、プレート63は、一重の壁部62からはみ出さないように載置されてもよい。
【0051】
また、プレート63の外周端は、少なくとも一部が壁部62からはみ出したはみ出し部を備えていてもよい。
揺動支持機構45は、カバーで覆い、外部から見えにくい構成とすることもできる。この場合、カバーは、壁部62およびプレート63を覆う大きさを有している。カバーは、内面に、フックを備え、フックがプレート63のはみ出し部に係止されるように構成されることが好ましい。これにより、ねじなどを用いることなく、カバーは、下支持部42に取り付けられることになる。勿論、カバーは、ねじや接着剤などで下支持部42に固定されるようにしてもよい。
【0052】
・背凭れ本体32に張架される背受け部材33としては、メッシュシートに限定されるものではなく、座部22で使用した布張地などであってもよい。また、背凭れ本体32は、ウレタンなどのクッションタイプであってもよい。クッションタイプの場合は、背凭れ本体32は、板状または多孔板に対してウレタンなどのクッション材を配置し不透過性の布張地で被覆して構成される。すなわち、背凭れ本体32は、背受け部材33と一体的に構成されることになる。そして、背凭れ本体32は、少なくとも、上固定部51と下接続支持部52を備えていればよい。
【0053】
・椅子1としては、キャスタ11cを備えていない脚部材であってもよい。
また、座部22には、肘掛部を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…椅子
12…座部構造体
13…背凭れ構造体
31…背凭れ支持体
32…背凭れ本体
33…背受け部材
39…接続部材
42…下支持部
43(43a,43b)…支柱部
45…揺動支持機構
46…上支持部
47a…第1湾曲部
47b…第2湾曲部
48a…キャップ
48b…第1固定支持部
48c…第2固定支持部
51…上固定部
52…下接続支持部
53a,53b…縦枠部
54…突片
54a…貫通孔
61…揺動軸部
62…壁部
62a…空間
63…プレート
65a,65b…固定ボス
66…凹部
69…ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12