(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070707
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】安全管理システム
(51)【国際特許分類】
E04G 1/00 20060101AFI20230515BHJP
E04G 5/08 20060101ALI20230515BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20230515BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20230515BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
E04G1/00 ESW
E04G5/08 Q
E04G21/32 Z
G08B21/02
G08B21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182969
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】羽立 征治
【テーマコード(参考)】
5C086
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086AA53
5C086AA60
5C086BA30
5C086CA15
5C086CA28
5C086CB20
5C086CB36
5C086DA40
5C086FA11
5C086FA17
5C086FA18
5C086GA02
(57)【要約】
【課題】建設現場において作業中の作業員の安全をより確実に確保できる安全管理システムを提供する。
【解決手段】安全管理システム10は、可撓性を有する帯体11aと帯体11aの長さ方向における一端部から他端部までの感圧領域とする感圧部11bとを有する帯状センサ11と、感圧部11bに接続され、感圧部11bの感圧信号の大きさが閾値を超えたときに検知信号を出力する検知部12と、検知部12に接続され、検知信号の入力により警告を行う警告器13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場における安全管理システムであって、
可撓性を有する帯体と前記帯体の長さ方向における一端部から他端部までを感圧領域とする感圧部とを有する帯状センサと、
前記感圧部に接続され、前記感圧部の感圧信号の大きさが閾値を超えたときに検知信号を出力する検知部と、
前記検知部に接続され、前記検知信号の入力により警告を行う警告器と、を備える
安全管理システム。
【請求項2】
前記帯状センサは、前記長さ方向における端部に、前記感圧部同士を接続可能な接続コネクタを有する
請求項1に記載の安全管理システム。
【請求項3】
前記帯状センサが、足場を構成する足場板に敷設されている
請求項1または2に記載の安全管理システム。
【請求項4】
前記帯状センサが、足場の端部側を構成する単管に巻き回されている
請求項1または2に記載の安全管理システム。
【請求項5】
前記検知部に接続され、前記検知信号が入力される通信機と、
前記通信機と通信可能な安全管理装置と、を備え、
前記通信機は、前記検知信号の入力により、前記検知信号に関する情報である検知情報を前記安全管理装置に送信し、
前記安全管理装置は、前記検知情報に基づく警告情報を記憶する警告情報記憶部を有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の安全管理システム。
【請求項6】
前記帯状センサが設置された安全管理領域を撮像する監視カメラを有し、
前記監視カメラの撮像した監視画像情報が前記安全管理装置に送信可能に構成され、
前記安全管理装置は、前記検知情報が入力されると、当該検知情報に対応する安全管理領域を撮像する監視カメラの監視画像を表示部に表示する
請求項5に記載の安全管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場において作業中の作業員の安全を確保する安全管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建設現場においては、作業員の安全確保のために、高所作業を行う仮設の足場などには安全帯を引掛可能な手摺が設けられていたり、開口部などの危険エリアや建機の作業エリアの周囲には進入禁止エリアを示す目印が設けられていたりする。また、特許文献1には、作業員の位置情報と建機の位置情報とに基づいて、建機に接触する可能性のある作業員に対して作業員端末を通じて警告を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のシステムにおいては、作業員端末の所持を作業員が失念してしまうおそれもある。こうした作業員が作業に集中してしまうと、仮設の足場における自身の踏み場の位置や進入禁止エリアに対する自身の位置についての意識が薄れてしまい、意図せずに不安全行動を起こすおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する安全管理システムは、建設現場における安全管理システムであって、可撓性を有する帯体と前記帯体の長さ方向における一端部から他端部までを感圧領域とする感圧部とを有する帯状センサと、前記感圧部に接続され、前記感圧部の感圧信号の大きさが閾値を超えたときに検知信号を出力する検知部と、前記検知部に接続され、前記検知信号の入力により警告を行う警告器と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、建設現場において作業中の作業員の安全をより確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】安全管理システムの一実施形態の概略構成を模式的に示す図。
【
図2】足場板に帯状センサが設置された様子を模式的に示す図。
【
図3】手摺を構成する単管に帯状センサが設置された様子を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1~
図5を参照して、安全管理システムの一実施形態について説明する。安全管理システムは、建設現場において、作業員の墜落や転落、建機との接触などの可能性がある安全管理領域付近で不安全行動を起こした作業員に対して警告を行うシステムである。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の安全管理システム10は、帯状センサ11、検知部12、警告器13、通信機14、監視カメラ15、および、安全管理装置20を備える。
帯状センサ11は、安全管理システム10による安全管理領域に設置される。検知部12、通信機14、および、監視カメラ15は、安全管理領域付近に設置される。
【0010】
帯状センサ11は、帯体11aと感圧部11bとを有する。帯体11aは、可撓性を有する。帯体11aは、例えばゴムなどで形成される。帯体11aは、例えば1.5m~2.0mの長さを有することが好ましい。
【0011】
図2に示すように、仮設の足場を構成する足場板18の端部などに帯状センサ11が設置される場合、帯体11aは10cm~15cm程度の幅を有することが好ましい。
図3に示すように、手摺や足場板18を支持する単管など、足場の端部側を構成する単管19に帯状センサ11が巻き回される場合、帯体11aは35cm~40cm程度の幅を有することが好ましい。
【0012】
感圧部11bは、帯体11aの長さ方向における一端部から他端部までを感圧領域として、帯体11aに対する圧力、すなわち帯体11aに対する荷重や帯体11aの振動の大きさを検出する。感圧部11bは、その検出した荷重や振動の大きさを示す感圧信号を出力する。
【0013】
帯状センサ11の一端部および他端部には、接続コネクタ11cが設けられている。接続コネクタ11cは、他の帯状センサ11の感圧部11bとの接続、帯状センサ11と検知部12との接続に用いられる。
【0014】
感圧部11bの一例は、帯体11aの長さ方向に直線状に延びる感圧線が帯体11aの幅方向に並設される構成である。こうした構成は、
図2に示したように、帯状センサ11が足場板18の端部に設置される場合に好適である。
【0015】
また、
図4に示すように、感圧部11bの他例は、帯体11aの幅方向に延びる感圧線が帯体11aの長さ方向に並設されて、これらの感圧線が接続コネクタ11c(
図4では図示せず)に並列接続される構成である。こうした構成は、
図3に示したように、帯状センサ11が単管19に巻き回される場合に好適である。
【0016】
こうした構成の帯状センサ11は、帯体11aが可撓性を有することから、凹凸のある地面に敷設したり、手摺などに巻き回して設置したりすることができる。また、例えば短手方向に丸めることにより、容易に持ち運ぶことができる。
【0017】
検知部12は、帯状センサ11の接続コネクタ11cに接続される。検知部12は、感圧部11bからの感圧信号を増幅して、その増幅した感圧信号の大きさが予め定めた閾値を超えたときに警告器13および通信機14に検知信号を出力する。検知信号は、感圧信号の大きさが閾値を超えたこと、および、感圧信号の大きさを含む信号である。
【0018】
閾値の大きさは、帯状センサ11の設置場所によって異なる。例えば、帯状センサ11が足場板18などに設置される場合、閾値は、帯状センサ11を作業員が踏んだことを検知できる値である。また例えば、転落によって大きな災害が発生するような開口部の周囲に帯状センサ11が設置される場合、閾値は、帯状センサ11の近くに作業員が近づいてきたときに生じる振動を検知できる値である。
【0019】
警告器13は、検知部12に接続されている。警告器13は、検知部12から検知信号が入力されると、安全管理領域に向けて警報を発したり、警告灯を点灯したりする。
通信機14は、無線接続により、安全管理装置20と通信可能に構成されている。通信機14は、自機の識別情報を関連付けた情報を安全管理装置20に送信する。通信機14は、検知部12から検知信号が入力されると、検知信号の入力や検知信号の大きさなどを示す検知情報に自機の識別情報を関連付けて安全管理装置20に送信する。
【0020】
上述した帯状センサ11、検知部12、警告器13、および、通信機14のセットは、例えば安全管理領域を帯状センサ11で取り囲む場合など、多数の帯状センサ11が必要となる場合には、安全管理領域を分割した分割領域ごとに設置されることが好ましい。こうした構成によれば、その分割領域ごとに警告器13による警告を行うことができる。
【0021】
監視カメラ15は、安全管理領域付近を撮像した監視画像情報を通信機14に入力する。通信機14は、その監視画像情報に対して自機の識別情報を関連付けて安全管理装置20に送信する。
【0022】
図5に示すように、安全管理装置20は、通信部21、入力部22、表示部23、および、情報処理部24を有している。
通信部21は、通信機14と通信可能に構成されている。通信部21は、通信機14からの各種情報を情報処理部24に入力する。
【0023】
入力部22は、監視者が操作可能なキーボードやマウスなどを接続可能なインターフェースを備えている。入力部22は、操作オペレータによるキーボードやマウスなどの操作情報を情報処理部24に入力する。
【0024】
表示部23は、各種情報を表示可能なディスプレイである。表示部23は、例えば、情報処理部24が提供する管理画面や監視カメラ15による監視画像を表示する。
情報処理部24は、たとえばcircuitry、すなわち、ASICのような1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上の処理回路、或いは両者の組み合わせによって実現することができる。処理回路は、CPUと、CPUによって実行されるプログラムを記憶したメモリ(ROM及びRAM等)と、を有する。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0025】
情報処理部24は、各種処理を実行する処理部25と後述する警告情報を記憶する警告情報記憶部26とを有する。
例えば、処理部25は、入力部22の操作に基づいて、表示部23に対する表示内容を切り替える処理を実行する。また、処理部25は、通信部21を通じて通信機14から検知情報が入力されると、その検知情報に対応する監視カメラ15の画像に表示部23の表示を切り替える処理を実行する。
【0026】
また例えば、処理部25は、警告の発生に関連する情報を警告情報として警告情報記憶部26に記憶する処理を実行する。警告情報は、例えば、警告の発生日時などを安全管理領域ごとに示す情報である。
【0027】
警告情報は、監視者が手動で警告情報記憶部26に記憶させる構成であってもよい。この場合、処理部25は、通信機14の識別情報などが入力可能な警告情報入力画面を表示部23に表示させるとともに、警告情報入力画面への監視者の入力に基づく情報を警告情報として警告情報記憶部26に記憶する。
【0028】
また、警告情報は、自動的に警告情報記憶部26に記憶される構成であってもよい。この場合、処理部25は、検知情報に基づいて、その検知情報に含まれる通信機14の識別情報と発生日時と関連付けた情報を警告情報として警告情報記憶部26に記憶する。
【0029】
(作用)
上述した構成の安全管理システム10においては、作業員の不安全行動による荷重や振動を帯状センサ11の感圧部11bが検出すると、その検出した荷重や振動の大きさを示す感圧信号が検知部12に入力される。検知部12は、増幅した感圧信号の大きさが閾値を超えた場合に警告器13に検知信号を出力する。検知信号の入力により、警告器13は、安全管理領域に向けて警報を発したり、警告灯を点灯したりする。
【0030】
本実施形態の効果について説明する。
(1)安全管理システム10は、可撓性を有する帯体11aと帯体11aの長さ方向における一端部から他端部までを感圧領域とする感圧部11bとを有する帯状センサ11と、感圧部11bに接続され、感圧部11bの感圧信号の大きさが閾値を超えたときに検知信号を出力する検知部12と、検知部12に接続され、検知信号の入力により警告を行う警告器13と、を備える。
【0031】
これにより、帯状センサ11の感圧部11bが所定の荷重や振動を検出すると、帯状センサ11付近にいる作業員に対して警告器13が警告を行うことから、警告を受けた作業員が安全確保の行動を起こしやすくなる。その結果、作業中の作業員の安全をより確実に確保することができる。
【0032】
(2)検知部12において感圧信号が増幅される。これにより、帯状センサ11の感度を高めることができる。
(3)帯状センサ11は、長さ方向における端部に、感圧部11b同士を接続可能な接続コネクタ11cを有する。感圧部11b同士の接続によって帯状センサ11の全体長さが長くなることから、帯状センサ11の設置場所についての自由度が高められるとともに安全管理システム10の構成要素を低減することができる。
【0033】
(4)帯状センサ11が足場板18に設置されることにより、足場板18の端部を踏み場としている作業員に対して警告することができる。これにより、足場板18から作業員が転落しにくくなる。
【0034】
(5)帯状センサ11が足場の端部側の手摺を構成する単管19に巻き回されることにより、手摺の乗り越えるような体勢にある作業員に対して警告することができる。これにより、そうした体勢にある作業員の転落を抑制することができる。また、足場の端部側の足場板を支持する単管19に巻き回されていることにより、この足場の端部側の単管19を踏んだ作業員や足場の端部側に近づいた作業員に対して警告することができる。これにより、作業員の転落を抑制することができる。
【0035】
(6)安全管理システム10は、検知部12に接続され、検知信号が入力される通信機14と、14通信機と通信可能な安全管理装置20と、を備える。通信機14は、検知信号の入力により、検知信号に関する情報である検知情報を安全管理装置20に送信する。安全管理装置20は、検知情報に基づいて警告情報を記憶する警告情報記憶部26を有する。
【0036】
これにより、警告情報記憶部26に記憶された警告情報に基づいて、警告が発生しやすい場所の特徴や時間帯などについて解析することができる。その結果、それら場所の特徴や時間帯についての情報を他の建設現場を含めた注意喚起に役立てることができる。
【0037】
(7)安全管理システム10は、帯状センサ11が設置された安全管理領域を撮像する監視カメラ15を有し、監視カメラ15の撮像した監視画像情報が安全管理装置20に送信可能に構成されている。安全管理装置20は、検知情報が入力されると、表示部23に、当該検知情報に対応する安全管理領域を撮像する監視カメラ15の監視画像を表示する。これにより、警告が発生した安全管理領域の状況を監視者が容易に確認することができる。
【0038】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・監視カメラ15は、有線接続や無線接続により、安全管理装置20に対して接続されてもよい。
【0039】
・安全管理装置20においては、検知情報の入力によって、その検知情報に対応する監視カメラ15の監視画像を表示部23に表示されればよい。そのため、表示部23の全体を監視画像に切り替えることなく、表示部23の一部に監視画像を表示してもよい。
【0040】
・安全管理装置20においては、検知情報に基づく警告情報を警告情報記憶部26に記憶させなくともよい。
・警告器13が行う警告は、警報の発生や警告灯の点灯に限られない。警告器13は、例えば帯状センサ11が足場板18や単管19に設置された場合には、その設置対象を振動させることにより警告を行う構成であってもよい。また、警告器13は、例えば帯状センサ11が開口部の周辺に設置された場合には、開口部と作業員との間に安全バーを出現させることにより警告を行う構成であってもよい。さらには、警告器13は、作業員が装備した安全ブロックを作動させることにより警告を行う構成であってもよい。
【0041】
・帯状センサ11は、例えば、十分な長さを有する場合には、接続コネクタ11cが設けられていなくともよい。
・帯状センサ11は、フィルム状の帯体11aに感圧部11bが印刷される構成であってもよい。また、帯状センサ11は、設置対象となる足場板18や単管19などに対して貼り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…安全管理システム、11…帯状センサ、11a…帯体、11b…感圧部、11c…接続コネクタ、12…検知部、13…警告器、14…通信機、15…監視カメラ、18…足場板、19…単管、20…安全管理装置、21…通信部、22…入力部、23…表示部、24…情報処理部、25…処理部、26…警告情報記憶部。