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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070755
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】カプセル投入装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
A01K29/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183035
(22)【出願日】2021-11-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】栗本 優
(57)【要約】
【課題】動物へのカプセル投入時の作業効率を向上することが求められている。
【解決手段】本開示のカプセル投入装置10は、牛100の口から挿入される支持パイプ11の先端部に、カプセル90を保持可能なカプセル保持部20を備え、支持パイプ11内の芯材40が、操作部50の操作により先端側へ移動することで、カプセル90が押し出され、牛100にカプセル90が投入される。また、支持パイプ11は、メインパイプ12と、カプセル保持部20との間を連結し、曲げ変形可能な曲げ変形部29を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の胃袋に常駐させる無線器内蔵のカプセルを口から投入するためのカプセル投入装置であって、
前記動物の口から喉又は食道まで挿入される支持パイプと、
前記支持パイプの先端部に設けられ、前記カプセルを保持可能なカプセル保持部と、
前記支持パイプの基端部に設けられ、前記支持パイプ内に通される芯材を介して前記カプセル保持部に連結された操作部と、を備え、
前記操作部の操作により、前記カプセル保持部が前記カプセルを保持する保持状態と、前記カプセル保持部から前記カプセルを離すリリース状態とに切り替わるカプセル投入装置。
【請求項2】
前記支持パイプには、曲げ変形可能な、多関節構造の、又は、蛇腹構造の、又は、エラストマー製の、又は、コイル構造の、曲げ変形部が含まれている請求項1に記載のカプセル投入装置。
【請求項3】
前記曲げ変形部は、前記支持パイプのうち先端寄り位置のみに配置されている請求項2に記載のカプセル投入装置。
【請求項4】
前記カプセル保持部には、前記保持状態で前記カプセルの外側面全体を覆いかつ前記動物の咀嚼から前記カプセルを保護する保護スリーブが含まれている請求項1から3の何れか1の請求項に記載のカプセル投入装置。
【請求項5】
前記保護スリーブと前記カプセルとの摩擦係合によって前記保持状態になり、
前記操作部の操作により前記芯材の先端部が前記カプセルを前記保護スリーブから押し出して前記リリース状態になる請求項4に記載のカプセル投入装置。
【請求項6】
前記保護スリーブは、内部に位置決めされた係合リングを備え、
前記係合リングと前記カプセルとの摩擦係合によって前記保持状態になる請求項5に記載のカプセル投入装置。
【請求項7】
前記係合リングは、前記保護スリーブ内を直動可能であり、かつ、前記支持パイプの先端側へ付勢されている請求項6に記載のカプセル投入装置。
【請求項8】
前記操作部は、
前記支持パイプに固定され、前記支持パイプの軸方向と交差する方向に延びるハンドル部と、
前記ハンドル部に回動可能に支持され、前記支持パイプの軸方向で前記ハンドル部に対向し、前記芯材の基端部に連結される操作レバーと、を備える請求項1から7の何れか1の請求項に記載のカプセル投入装置。
【請求項9】
前記操作部に操作の可否を切り替えるロック機構が設けられている請求項1から8の何れか1の請求項に記載のカプセル投入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動物の胃袋に常駐させる無線器内蔵のカプセルを口から投入するためのカプセル投入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動物の胃袋内に、胃袋内の状態を無線送信する無線器内蔵のカプセルを常駐させる監視方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-74992号公報(段落[0035]~[0039]、図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動物へのカプセルの投入は、例えば、動物の頭を上げて口から喉を真っ直ぐにして、そこに挿入された塩化ビニル管内にカプセルを通すことで行われるが、この方法では、塩化ビニル管の途中でカプセルが止まってしまって投下が行えないことがあり、作業効率が悪かった。これに鑑みて、動物へのカプセル投入時の作業効率を向上することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のカプセル投入装置は、動物の胃袋に常駐させる無線器内蔵のカプセルを口から投入するためのカプセル投入装置であって、前記動物の口から喉又は食道まで挿入される支持パイプと、前記支持パイプの先端部に設けられ、前記カプセルを保持可能なカプセル保持部と、前記支持パイプの基端部に設けられ、前記支持パイプ内に通される芯材を介して前記カプセル保持部に連結された操作部と、を備え、前記操作部の操作により、前記カプセル保持部が前記カプセルを保持する保持状態と、前記カプセル保持部から前記カプセルを離すリリース状態とに切り替わるカプセル投入装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示のカプセル投入装置の斜視図
図2】カプセルを用いた牛の管理方法の概要図
図3】カプセル投入装置の断面図
図4】カプセル保持部の断面図
図5】カプセル保持部の拡大断面図
図6】メインパイプと曲げ変形部との連結部の拡大断面図
図7】ハンドル部の拡大断面図
図8】ハンドル部の拡大断面図
図9】カプセル投入装置の斜視図
図10】カプセル投入装置の断面図
図11】カプセル保持部の断面図
図12】牛に挿入された状態のカプセル投入装置の断面図
図13】牛に挿入された状態のカプセル投入装置の断面図
図14】変形例に係るカプセル保持部の断面図
図15】変形例に係るカプセル保持部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下、図1図13を参照して、本実施形態のカプセル投入装置10について説明する。図1に示されるカプセル投入装置10は、牛100(特許請求の範囲中の「動物」に相当する)の胃袋100S(具体的には、第1胃又は第2胃)内に常駐されるカプセル90(図2参照)を投入するための装置である。
【0008】
図2に示すように、カプセル90は、両端有底の円筒状のケース91と、ケース91内に内蔵された圧力センサ92及び無線器93と、を備えている。カプセル90は、牛舎や牧場の複数頭の牛100にそれぞれ投入され、圧力センサ92が計測した胃袋100S内の圧力データ等を無線器93によって通信ネットワーク等を介して牛舎や牧場の管理者のユーザ端末110に送信する。なお、カプセル90には、圧力センサ92の他に、温度センサや加速度センサが備えられている。
【0009】
図1及び図3に示すように、カプセル投入装置10は、牛100(図2参照)の口に挿入される支持パイプ11と、支持パイプ11の内部に挿通された芯材40と、を有している。以降、図3における左側をカプセル投入装置10の先端側とし、右側をカプセル投入装置10の基端側とする。
【0010】
支持パイプ11は、支持パイプ11の基端から支持パイプ11全体の2/3程の部分を構成するメインパイプ12と、支持パイプ11の先端に位置するカプセル保持部20と、を有している。
【0011】
図4及び図5に示すように、カプセル保持部20は、保護スリーブ21と、保護スリーブ21の基端部に螺合される第1連結部25と、を備えている。保護スリーブ21は、両端が開放した円筒状をなし、その外側面は均一に延びている。保護スリーブ21の内側面には、基端部に雌ネジ部21Nが形成され、軸方向の中央部に内側に突出した中間突部22が形成されている。中間突部22の基端側の側面は、軸方向と直交する直交面22Aとなっていて、先端側の側面は、基端側に向かうにつれて径方向の中央に近づくように傾斜した傾斜面22Bとなっている。直交面22Aと傾斜面22Bとの間は、軸方向と平行に延びた連絡面22Cにより連絡されている。
【0012】
また、保護スリーブ21の先端部は、内側に膨らんで肉厚になった肉厚部21Aとなっている。保護スリーブ21のうち肉厚部21Aと中間突部22との間の内径は、中間突部22と雌ネジ部21Nとの間の内径よりも大きくなっている。
【0013】
図4に示すように、第1連結部25は、保護スリーブ21より肉厚な大径筒部26と、大径筒部26の基端から径方向内側に張り出す基端壁26Aと、を有している。大径筒部26の先端部には、保護スリーブ21の雌ネジ部21Nに螺合する雄ネジ部26Nが形成されている。大径筒部26のうち雄ネジ部26Nより基端側の外側面は保護スリーブ21の外側面と面一になっている。また、大径筒部26の先端面26Bは、中間突部22の直交面22Aと対向しかつ直交面22Aより径方向の内側へ張り出している。
【0014】
基端壁26Aには、中央に円形の貫通孔26Kが形成され、貫通孔26Kの開口縁からは、大径筒部26より小径でかつ肉薄な小径筒部27が基端側へ突出している。また、第1連結部25の内側面には、大径筒部26の内側面と小径筒部27の内側面との間を段付き状に連絡する段差面28が設けられている。
【0015】
保護スリーブ21には、内側に嵌合した係合リング23が備えられている。係合リング23は、保護スリーブ21本体よりも短い円筒状をなし、中間突部22の直交面22Aと第1連結部25の先端面26Bとの間に挟まれて位置決めされる。係合リング23の内径は、カプセル90と摩擦係合可能な大きさになっている。カプセル90は、保護スリーブ21の先端側の開口から挿入され、係合リング23と摩擦係合することで保護スリーブ21に保持される。
【0016】
本実施形態では、カプセル90が、一端(図4における左端)から他端(図4における右端)に向かうにつれて僅かにテーパ状に縮径しており、これに対応して係合リング23の内側面もテーパ状に縮径している。係合リング23は、小径側が基端側に位置するように配され、カプセル90も、小径側が基端側に位置する向きで挿入される。そして、テーパ面同士が当接した状態でカプセル90が係合リング23に押し込まれることで、係合リング23とカプセル90との摩擦係合が強固となる。
【0017】
また、保護スリーブ21の先端は、保護スリーブ21内に保持されたカプセル90の先端よりもカプセル90の軸方向における外側に位置し、保護スリーブ21は、カプセル90の外側面全体を覆う。
【0018】
図3に示すように、メインパイプ12は、保護スリーブ21よりも小径の円筒状のメインパイプ本体12Aを備え、その先端部には、第2連結部材15が取り付けられている。図6に示すように、第2連結部材15は、基端側の大径筒部16と、先端側の小径筒部17と、を有している。大径筒部16には、外側面の基端部に、メインパイプ本体12Aに形成された雌ネジ部12Nと螺合する雄ネジ部16Nが形成されている。大径筒部16の先端部には、径方向内側に張り出した先端壁16Aが設けられている。先端壁16Aの中央には、円形の貫通孔16Kが形成され、この貫通孔16Kの開口縁から上述した小径筒部17が先端側へ突出している。
【0019】
図3に示すように、メインパイプ本体12Aの基端部には、閉塞部材18が取り付けられている。閉塞部材18は、メインパイプ本体12Aの基端側開口を閉塞する閉塞壁18Aと、閉塞壁18Aの外縁から先端側へ延びてメインパイプ本体12Aの外側に嵌合する嵌合壁18Bと、を有し、閉塞壁18Aの中央には、貫通孔18Kが形成されている。嵌合壁18Bには、ネジ孔18Hが複数形成されていて、それらネジ孔18Hにネジが締め付けられることで、閉塞部材18がメインパイプ本体12Aに固定される。
【0020】
次に、芯材40について説明する。芯材40は、支持パイプ11内の中心軸上に保持された状態で軸方向に直動可能になっている。具体的には、芯材40は、一端がカプセル保持部20の第1連結部25内に配される一方、他端がメインパイプ12の基端部から突出した位置に配され、第1連結部25及び第2連結部材15の小径筒部27,17と、閉塞部材18の貫通孔18Kの開口縁とに当接することにより支持パイプ11の中心軸上に保持される。
【0021】
図4に示すように、芯材40の先端には、径方向の外側に張り出し、カプセル保持部20の第1連結部25の段差面28に先端側から対向する張出部45が設けられている。また、図7に示すように、芯材40のうち、支持パイプ11内に配される部分の基端部には、抜止部材46が固定されている。抜止部材46は筒状をなして芯材40の外側に嵌合している。抜止部材46の下部のうち中央部から基端側は斜めに切り欠かれ、これにより、抜止部材46の下部に、基端に向かうにつれて径方向内側に近付く傾斜面46Mが形成されている。また、抜止部材46の先端面と上部の基端面とは、軸方向に対して直交している。これら張出部45及び抜止部材46により、芯材40が基端側へ抜けることが規制される。
【0022】
図3に示すように、カプセル投入装置10は、支持パイプ11に対して芯材40を直動させるための操作部50を備えている。操作部50は、支持パイプ11の基端部に固定されたハンドル部51と、ハンドル部51に軸支された操作レバー60と、を有している。
【0023】
図7に示すように、ハンドル部51は、断面「コ」の字状の鋼材からなるハンドルベース52を備えている。ハンドルベース52は、基端側に開放した向きで一端が支持パイプ11の閉塞部材18に固定され、そこから基端側に寄りながら下方へ延びている。ハンドルベース52の下端には、両側壁52Sに固定され、基端側へ延びた1対のサイド壁53が配されている。なお、ハンドルベース52は閉塞部材18と一体に成形されていてもよい。
【0024】
ハンドルベース52の上端には、ロック機構55が設けられている。ロック機構55は、支持壁55Aと、ロック操作部55Sと、ロックピン55Pと、を有している。支持壁55Aは、ハンドルベース52の上端に固定され、先端側へ延びたのち僅かに下方へ延びている。
【0025】
ロック操作部55Sは、帯板をL字に曲げてなり、水平に延びた第1辺部55S1と、第1辺部55S1の基端から下方へ延びた第2辺部55S2と、を有している。ロック操作部55Sの第1辺部55S1の基端部には、上方へ突出した突片55S3が設けられ、その上端部が支持壁55Aの角部に軸支されることで、ロック操作部55Sがハンドルベース52に対して回動可能になっている。
【0026】
ロックピン55Pは、上下方向に延び、その下端部がロック操作部55Sの先端部に連結されている。図7に示すように、支持パイプ11におけるメインパイプ本体12Aの下部には、芯材40の抜止部材46より僅かに先端側に、貫通孔12Kが形成されていて、ロックピン55Pは、貫通孔12Kからメインパイプ本体12A内に進入し、抜止部材46に先端側から当接可能となっている。
【0027】
ロック操作部55Sは、第1辺部55S1の先端が基端より上方に位置する第1位置に弾性部材(図示せず)により付勢されている。この第1位置では、ロックピン55Pの上端部が芯材40の抜止部材46に対向し、芯材40を先端側へ移動させることが規制される。また、第1位置では、ロック操作部55Sの第2辺部55S2がハンドルベース52から離れた位置に配されている。
【0028】
第2辺部55S2がハンドルベース52に当接するまでロック操作部55Sを回動すると、ロックピン55Pが抜止部材46に当接する位置から退避し、芯材40が先端側へ移動可能となる(図8参照)。
【0029】
図1及び図7に示すように、操作レバー60は、ハンドル部51の基端側に配されている。操作レバー60は、芯材40を挟んで水平方向で対向する1対の対向壁61と、1対の対向壁61の基端側側辺同士を連絡する連絡壁62と、を有する。1対の対向壁61は、上下方向に延びた帯板状をなし、その下端部がサイド壁53の基端部に軸支されている。対向壁61の上端は、支持パイプ11よりも上方に位置している。連絡壁62は、1対の対向壁61のうち芯材40より下方部分を連絡している。連絡壁62の上端には、基端側へ延びたのちに上方へ屈曲した屈曲壁63が設けられている。
【0030】
操作レバー60の上端には、作動アーム65が連結されている。作動アーム65は、操作レバー60の上端部から下方に延びた棒状をなし、その下端部に、芯材40の基端部が固定されている。操作レバー60の上端には長孔60Aが形成されていて、この長孔60Aに、作動アーム65の上端に設けられた係合ピン65Aが直動可能に係合している。
【0031】
図8に示すように、操作レバー60をハンドル部51に近づけるように回動させると、作動アーム65が、操作レバー60の屈曲壁63に押されて回動し、作動アーム65の下端部が支持パイプ11に近づく。これにより芯材40が先端側へ移動する。
【0032】
図7に示すように、ロック操作部55Sが第1位置に配されている状態では、操作レバー60を操作しようとしても、芯材40の抜止部材46がロックピン55Pに当接してそれ以上操作レバー60を押し込むことができなくなる。つまり、ロック操作部55Sが第1位置に配されている状態では、操作レバー60はロックされている。そして、図8に示すように、ロック操作部55Sが操作されて第2位置に配されると、ロックが解除されて操作レバー60の操作が可能になる。図8図11に示すように、作動アーム65が支持パイプ11に当接するまで操作レバー60が押し込まれると、芯材40の先端がカプセル保持部20の先端より突出した位置まで移動する。
【0033】
図7及び図8に示すように、ハンドル部51と操作レバー60との間には、弾性部材58が取り付けられている。弾性部材58は、線材が隙間なく巻き付けられたコイルばねであり、一端がハンドル部51の上部に固定される一方、他端が操作レバー60の下端部に固定され、途中部分が屈曲した状態になっている。弾性部材58の屈曲角(直線状態から屈曲した角度)は、操作レバー60がハンドル部51に近接した状態(図8参照)の方が操作レバー60がハンドル部51から離間した状態(図7参照)よりも大きくなる。これにより、操作レバー60がハンドル部51から離間した状態に付勢される、即ち、芯材40は、基端側へ付勢されている。
【0034】
操作部50は、ハンドル部51に4本の指を添え、手のひらを操作レバー60に当てて握ることで、片手で操作レバー60を操作可能となっている。また、ロック操作部55Sに人差し指をかけることで、ロックの解除も、操作部50を握ったまま片手で行うことが可能となる。
【0035】
カプセル投入装置10は以下のようにして使用される。即ち、まず、カプセル90を、カプセル保持部20に先端側から挿入し、保護スリーブ21(係合リング23)に摩擦係合させる。そして、支持パイプ11を牛100の口に先端側から挿入し、カプセル保持部20を牛100の喉又は食道に到達させる(図12参照)。
【0036】
そして、ロック操作部55Sを操作してロックを解除し、操作レバー60をハンドル部51側へ押し込むように操作する。すると、芯材40が先端側へ移動し、その先端がカプセル90を保護スリーブ21(係合リング23)から押し出し、カプセル90がカプセル投入装置10からリリースされて牛100の体内に投入される(図13参照)。
【0037】
投入が完了した後は、操作部50の操作をやめれば(操作部50を握る手を緩めれば)、弾性部材58の弾性力により、操作レバー60がハンドル部51から離間した状態、即ち、芯材40が基端側に位置した状態に戻る。このとき、芯材40の抜止部材46の下部に傾斜面46Mが形成されているので、ロック機構55のロック操作部55Sが第1位置に戻り、ロックピン55Pが抜止部材46に対向していても、ロックピン55Pが傾斜面46Mに誘導されて下方へ移動し、スムーズに芯材40及び操作レバー60を戻すことができる。
【0038】
ここで、図3に示すように、本実施形態のカプセル投入装置10では、支持パイプ11が、メインパイプ12と、カプセル保持部20との間を連結し、曲げ変形可能な曲げ変形部29を備えている。曲げ変形部29は、線材を同軸上に隙間なく巻き付けたコイル状をなし、その両端に、カプセル保持部20の第1連結部25の小径筒部27と、メインパイプ12の第2連結部材15の小径筒部17と、が圧入されている。
【0039】
また、芯材40にも曲げ変形部41が設けられている。詳細には、芯材40は、操作部50の作動アーム65からメインパイプ12内の先端寄りの中間部まで延びた棒材42と、芯材40の先端に位置する先端部材43と、を、有し、それらの間が曲げ変形部41により連結されている。先端部材43は円柱状をなし、その先端から上述した張出部45が側方に張り出している。曲げ変形部41は、支持パイプ11の曲げ変形部29と同様に、線材を同軸上に隙間なく巻き付けたコイル状をなし、その両端に棒材42と先端部材43とが圧入されている。
【0040】
これにより、支持パイプ11は、芯材40ごと、カプセル保持部20がメインパイプ12の軸方向に対して側方へ曲がるようになっている。
【0041】
なお、支持パイプ11の曲げ変形部29は、牛100が舌で押し出そうとしても挿入可能な程度の剛性があることが望ましく、例えば、線材径が2.5~4.0mm(好ましくは3.2±0.1mm)で、コイル外径が20~30mm(好ましくは22.0±0.5mm)で、線材の材質がステンレス材で、45deg時の反力は40~60N(好ましくは49N)であるものが考えられる。また、曲げ変形部29は、外方へ露出していてもよいし、カバー(図示せず)により覆われていてもよい。後者の場合、コイルの変形により生じた線材同士の隙間に喉等の一部が挟まれてしまうことが防がれる。
【0042】
本実施形態のカプセル投入装置10の構成は以上である。次に、カプセル投入装置10の作用効果について説明する。上述したように、カプセル投入装置10は、カプセル保持部20にカプセル90を係合させた状態で牛100の口から挿入される。そして、操作部50が操作されることにより、カプセル90が牛100の体内に投入される。投入されたカプセル90は、牛100の胃袋100S内に常駐し、胃袋100S内の圧力データ等を牛舎や牧場の管理者のユーザ端末110に送信する。これにより、胃袋内で発生したガスにより鼓脹症になった牛100又は鼓脹症の予兆がある牛100を早期に発見することが可能となる。
【0043】
ところで、従来、この種のカプセルを、牛100に投入する際は、例えば、牛100の頭を上げて口から喉を真っ直ぐにして、そこに挿入された塩化ビニル管内にカプセルを通すことで行われるが、この方法では、塩化ビニル管の途中でカプセルが止まってしまって投下が行えないことがあり、作業効率が悪かった。
【0044】
これに対して、本実施形態のカプセル投入装置10によれば、支持パイプ11の先端部のカプセル保持部20にカプセル90を保持させた状態で、そのカプセル保持部20を牛100の喉又は食道に配し、操作部50を操作することでカプセル90の投入が可能であり、作業効率が向上する。
【0045】
また、従来の方法では、牛100の頭を上げた姿勢を保つ必要があり、牛100にストレスを与える虞がある。これに対し、本実施形態のカプセル投入装置10は、支持パイプ11と芯材40とに曲げ変形部29,41が設けられているので、牛100の頭を上げずに支持パイプ11を挿入しても、牛100の喉の形に沿って曲げ変形部29,41が変形し、カプセル保持部20を牛100の喉又は食道に配することができる(図12参照)。そして、この状態で操作部50を操作することで、支持パイプ11の曲げ変形部29が変形したままカプセル90が投入される(図13参照)。これにより、牛100に与えるストレスが軽減される。
【0046】
また、曲げ変形部29が支持パイプ11の先端寄り位置にのみ配されているので、支持パイプ11の全体が曲げ変形可能な構成よりも、剛性が高く、支持パイプ11を牛100の口内に挿入しやすくなっている。
【0047】
さらに、カプセル投入装置10では、カプセル保持部20の保護スリーブ21がカプセル90の外側面全体を覆うので、支持パイプ11の挿入時に牛100の咀嚼によりカプセル90が傷つくことが防がれる。しかも、保護スリーブ21は、内部に備える係合リング23がカプセル90と摩擦係合する構成になっているので、外径の異なるカプセルを投入するときは、その大きさに合わせた係合リング23を用意すれば、他の部品は使いまわすことが可能となる。つまり、本実施形態のカプセル投入装置10は、複数種類のカプセルに対応することが可能である。
【0048】
また、操作部50に、操作レバー60を操作不能にするロック機構55が設けられているので、支持パイプ11の挿入途中で誤って操作レバー60を操作しカプセル90が落ちてしまうことが防がれる。
【0049】
[第2実施形態]
図14から図16には、第2実施形態のカプセル投入装置10Zが示されている。以下、このカプセル投入装置10Zについて、上記第1実施形態のカプセル投入装置10と同じ構成の部位については同じ符号を付して説明は省略し、異なる点に関してのみ説明する。
【0050】
図15に示すように、本実施形態のカプセル投入装置10Zのカプセル保持部20Zでは、係合リング23Zの基端側端部に径方向内側に張り出したフランジ23Z1が設けられている。このフランジ23Z1と第1連結部25Zとの間に圧縮コイルばね20Cが配されていて、係合リング23Zは、先端側へ付勢されつつも、基端側へ移動可能となっている。
【0051】
これにより、カプセル90が係合リング23Zに押し込まれるときに、テーパ同士が面当接してある程度係合したところで、係合リング23Zが基端側へ移動する。つまり、カプセル90を係合リング23Zに押し込む力を圧縮コイルばね20Cに逃がすことができるので、カプセル90が係合リング23Zに対して過度に押し込まれることを防ぐことができる。よって、カプセル90を投入するときに必要な力を大きくなりすぎないようにすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、第1連結部25Zの小径筒部27Zと、第2連結部材15Zの小径筒部17Zと、の外面に雄螺子27N,17Nが形成されていて、これら雄螺子27N,17Nが曲げ変形部29の両端部と螺合している。これにより、曲げ変形部29の両端部が変形しにくくなり、曲げ変形部29の端部に応力が集中して塑性変形することが防がれる。同様に、棒材42と先端部材43との外面にも雄螺子が形成されていて、曲げ変形部41の両端部に螺合していて、曲げ変形部41の端部に応力が集中して塑性変形することが防がれる。
【0053】
また、図14及び図16に示すように、本実施形態のカプセル投入装置10Zの操作部50Zには、カバープレート50Cが備えられていてる。本実施形態の操作部50Zでは、上記第1実施形態の操作部50と同様に、操作レバー60Zをハンドル部51Zに近づけるように把持すると、作動アーム65が連動して芯材40を先端側へ直動させる。なお、本実施形態の操作部50Zには、ロック機構55が設けられていないが、本実施形態のハンドル部51Zは、操作レバー60Zと直接は連結しておらず、ハンドル部51Zのみを把持しやすくなっているので、支持パイプ11の挿入途中に誤って操作レバー60Zを操作してしまうことが起こりにくくなっている。
【0054】
[他の実施形態]
(1)曲げ変形部29は、曲げ変形が可能であれば、多関節構造、蛇腹構造であってもよいし、エラストマー製であってもよい。
【0055】
(2)支持パイプ11の全体が曲げ変形可能な構成であってもよい。
【0056】
(3)操作部50に、指の挟み込み等を防止するカバーが設けられていてもよい。
【0057】
(4)芯材40が、ワイヤー等、全体が曲げ変形可能な構成であってもよい。
【0058】
(5)上記実施形態では、操作部50が、ハンドル部51と操作レバー60とを握る構成であったが、例えば、芯材40に一体に取り付けられた操作部を支持パイプ11に対してスライド操作する構成であってもよい。
【0059】
(6)係合リング23を備えず、保護スリーブ21がカプセル90と直接係合する構成であってもよい。
【0060】
(7)作動アーム65を備えず、芯材40が操作レバー60と直接連結されている構成であってもよい。
【0061】
(8)カプセル90の先端部が保護スリーブ21から露出する構成であってもよい。
【0062】
(9)芯材40を基端側に引くと、カプセル90がリリース状態になる構成であってもよい。例えば、図17に示すように、芯材40の先端に、カプセル保持部20の一部としてカプセル90と摩擦係合する係合部40Rが設けられる一方、保護スリーブ21にカプセル90と当接する当接部21Tが設けられていて、芯材40が基端側に引かれると、当接部21Tに当接したカプセル90に対して係合部40Rが移動して係合が解除され、カプセル90が落下する構成
【0063】
(10)芯材40が支持パイプ11の一部と螺合し、芯材40を回転させることによって、芯材40を支持パイプ11の軸方向に移動させる構成であってもよい。
【0064】
(11)カプセル90とカプセル保持部20とが一部螺合し、芯材40が回転を伝達してカプセル90を移動させる構成であってもよい。
【0065】
(12)図18に示すように、カプセル保持部20Wが、ヒンジ連結された1対の把持アーム20W1によりカプセル90を把持し、芯材40の操作により1対の把持アーム20W1が開いてカプセル90をリリースする構成であってもよい。
【0066】
(13)カプセル90は、胃袋内の圧力データを送信するものではなく、例えば、牛の所在管理や個数管理のために用いられるものであってもよい。また、牛以外の動物や人に投入するものであってもよい。
【0067】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0068】
10 カプセル投入装置
10S 胃袋
11 支持パイプ
12 メインパイプ
12A メインパイプ本体
20 カプセル保持部
21 保護スリーブ
23 係合リング
29 曲げ変形部
40 芯材
50 操作部
51 ハンドル部
52 ハンドルベース
55 ロック機構
60 操作レバー
90 カプセル
100 牛(動物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2022-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の胃袋に常駐させる無線器内蔵のカプセルを口から投入するためのカプセル投入装置であって、
前記動物の口から喉又は食道まで挿入される支持パイプと、
前記支持パイプの先端部に設けられ、前記カプセルを保持可能なカプセル保持部と、
前記支持パイプの基端部に設けられ、前記支持パイプ内に通される芯材を介して前記カプセル保持部に連結された操作部と、
前記支持パイプの先端寄り位置にのみ設けられ、曲げ変形可能な、多関節構造の、又は、蛇腹構造の、又は、エラストマー製の、又は、コイル構造の曲げ変形部と、を備え、
前記操作部の操作により、前記カプセル保持部が前記カプセルを保持する保持状態と、前記カプセル保持部から前記カプセルを離すリリース状態とに切り替わるカプセル投入装置。
【請求項2】
前記カプセル保持部には、前記保持状態で前記カプセルの外側面全体を覆いかつ前記動物の咀嚼から前記カプセルを保護する保護スリーブが含まれている請求項1に記載のカプセル投入装置。
【請求項3】
前記保護スリーブと前記カプセルとの摩擦係合によって前記保持状態になり、
前記操作部の操作により前記芯材の先端部が前記カプセルを前記保護スリーブから押し出して前記リリース状態になる請求項2に記載のカプセル投入装置。
【請求項4】
前記保護スリーブは、内部に位置決めされた係合リングを備え、
前記係合リングと前記カプセルとの摩擦係合によって前記保持状態になる請求項3に記載のカプセル投入装置。
【請求項5】
前記係合リングは、前記保護スリーブ内を直動可能であり、かつ、前記支持パイプの先端側へ付勢されている請求項4に記載のカプセル投入装置。
【請求項6】
前記操作部は、
前記支持パイプに固定され、前記支持パイプの軸方向と交差する方向に延びるハンドル部と、
前記ハンドル部に回動可能に支持され、前記支持パイプの軸方向で前記ハンドル部に対向し、前記芯材の基端部に連結される操作レバーと、を備える請求項1から5の何れか1の請求項に記載のカプセル投入装置。
【請求項7】
前記操作部に操作の可否を切り替えるロック機構が設けられている請求項1から6の何れか1の請求項に記載のカプセル投入装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本開示のカプセル投入装置は、動物の胃袋に常駐させる無線器内蔵のカプセルを口から投入するためのカプセル投入装置であって、前記動物の口から喉又は食道まで挿入される支持パイプと、前記支持パイプの先端部に設けられ、前記カプセルを保持可能なカプセル保持部と、前記支持パイプの基端部に設けられ、前記支持パイプ内に通される芯材を介して前記カプセル保持部に連結された操作部と、前記支持パイプの先端寄り位置にのみ設けられ、曲げ変形可能な、多関節構造の、又は、蛇腹構造の、又は、エラストマー製の、又は、コイル構造の曲げ変形部と、を備え、前記操作部の操作により、前記カプセル保持部が前記カプセルを保持する保持状態と、前記カプセル保持部から前記カプセルを離すリリース状態とに切り替わるカプセル投入装置である。