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  • 特開-導電率検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070758
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】導電率検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/22 20060101AFI20230515BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
G01R27/22 Z
G01N27/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183043
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】恩田 英
【テーマコード(参考)】
2G028
2G060
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028BC04
2G028CG02
2G028DH21
2G028HN03
2G028HN09
2G060AA05
2G060AF03
2G060AF08
2G060AG03
2G060HA02
2G060HB06
2G060HC02
(57)【要約】
【課題】導電率を補正するための演算処理を行う必要がなく、しかも精度の高い導電率を得ることができる導電率検出装置の提供。
【解決手段】
導電率検出器1は、導電率センサ4によって検出カバー2内のドレン60の導電率を検出するが、ISO規格その他の規格によって、導電率は液温25°Cの数値で示すことになっている。このため、導電率センサ4を周回している冷却水路3の冷却コイル3aによって、検出カバー2内のドレン60の温度を25°Cに調整して導電率を検出する。すなわち、コントローラー8は温度センサ6が出力する温度信号に基づいて検出カバー2内のドレン60の現在温度を把握し、現在温度が25°Cを上回っている場合は、冷却水導入バルブ9に開弁信号を与えて冷却水導入バルブ9を開弁する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
限定領域としての内部空間を有する限定収容部であって、外部から内部空間に向けて対象流体が流入する流入孔が形成された限定収容部、
前記限定収容部に配置されており、前記内部空間に収容されている前記対象流体の導電率を検出する導電率検出手段、
前記内部空間に収容されている前記対象流体の温度を調整する温度調整手段、
を備えたことを特徴とする導電率検出装置。
【請求項2】
請求項1に係る導電率検出装置において、
前記温度調整手段は、内部を調整用流体が通過する温度調整路であって、当該調整用流体が前記対象流体との間で熱交換することによって前記対象流体の温度を調整する温度調整路である、
ことを特徴とする導電率検出装置。
【請求項3】
請求項2に係る導電率検出装置において、
前記温度調整手段としての温度調整路は、前記導電率検出手段を周回する周回部を有している、
ことを特徴とする導電率検出装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に係る導電率検出装置において、
前記限定収容部に設けられた温度検出手段であって、前記内部空間に収容されている前記対象流体の温度を検出して温度信号を出力する温度検出手段、
前記温度信号を取り込み、当該温度信号に基づいて温度調整手段を制御し、前記対象流体の温度を調整する制御手段、
を備えたことを特徴とする導電率検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る導電率検出装置は、水質管理等を行うための導電率検出装置の構成の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
導電率とは、物質中における電気伝導のし易さを表す物性量である。電解質を含む水溶液の導電率は溶液中に含まれるイオン量によって決まるため、水に物資が溶け込むと電気が流れやすくなる。この結果、導電率は高くなることから、導電率の検出を通じて水質管理を行うことができる。
【0003】
ところで、水溶液の温度が上昇すると溶液中のイオンの移動速度が活性化されるため、一般に水溶液の導電率は高くなる。また、温度上昇によって分子解離が生じ、溶液中のイオンの数が増加して導電率が高くなることもある。したがって、適正な水質管理を行うためには、対象となる水の温度の影響を除外した導電率を求める必要がある。
【0004】
このような導電率の検出に関する技術として後記特許文献1に開示された水質管理用導電率センサおよび吸収式冷温水機がある。この水質管理用導電率センサ20は、冷却水に浸漬させた電流印加電極21、22間に交流化した定電流を流し、電圧測定電極23、24間に発生する電圧を検出して導電率を測定する。
【0005】
そして、この水質管理用導電率センサ20を、貯槽80の冷却水81内に浸漬して導電率を測定するが、冷却水供給管83に設けられた冷却水温度センサ84が冷却水の温度を検出し、この検出温度に基づいてコントローラ90は、水質管理用導電センサ20から出力される導電率を補正する。この補正処理によって、温度変動の影響を除去して水質管理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-74865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の特許文献1に開示された技術においては、冷却水温度センサ84は冷却水供給管83に設けられており、この部分の温度を検出して導電率を補正している。しかし、水質管理用導電率センサ20が浸漬している貯槽80の冷却水81と、冷却水温度センサ84の検出部位である冷却水供給管83における冷却水とでは、冷却水の温度は必ずしも同一ではなく、温度むらによる誤差が生じていることがある。
【0008】
このため、冷却水温度センサ84の検出温度に基づいて導電率を補正しても、精度の高い導電率を得ることができないという問題がある。また、特許文献1に開示された技術においては、水質管理用導電センサ20から出力される導電率を補正するために、演算処理を実行しなければならないという問題がある。
【0009】
そこで本願に係る導電率検出装置は、これらの問題を解決するため、導電率を補正するための演算処理を行う必要がなく、しかも精度の高い導電率を得ることができる導電率検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に係る導電率検出装置は、
限定領域としての内部空間を有する限定収容部であって、外部から内部空間に向けて対象流体が流入する流入孔が形成された限定収容部、
前記限定収容部に配置されており、前記内部空間に収容されている前記対象流体の導電率を検出する導電率検出手段、
前記内部空間に収容されている前記対象流体の温度を調整する温度調整手段、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願に係る導電率検出装置においては、検出手段は、内部空間に収容されている対象流体の導電率を検出する。そして、温度調整手段は、限定収容部が有する内部空間に収容されている対象流体の温度を調整する。
【0012】
このため、限定収容部が有する内部空間に収容されている対象流体の温度を、導電率の検出に適した温度に調整した上で、対象流体の導電率を検出することができる。したがって、導電率を補正するための演算処理を行う必要がなく、しかも精度の高い導電率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願に係る導電率検出装置の第1の実施形態を示す導電率検出器1が設けられたドレンタンク50の全体のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る導電率検出装置の下記の要素に対応している。
【0015】
導電率検出器1・・・導電率検出装置
検出カバー2・・・限定収容部
ドレン孔2a、2b、2c・・・流入孔
冷却水路3・・・温度調整手段、温度調整路
冷却コイル3a・・・周回部
導電率センサ4・・・導電率検出手段
温度センサ6・・・温度検出手段
コントローラー8・・・制御手段
ドレン60・・・対象流体
冷却水・・・調整用流体
なお、限定領域とは、より広い領域との対比で限定された狭い領域を意味し、実施形態においてはドレンタンク50の内部の領域との対比で限定された検出カバー2の内部の領域を指す。
【0016】
[第1の実施形態]
本願に係る導電率検出装置の第1の実施形態を説明する。本実施形態では、導電率検出装置としての導電率検出器1を用いてドレンタンク50に貯留されたドレン60の水質管理を行うために、ドレン60の導電率を検出する例を掲げる。
【0017】
(全体構成の説明)
図1に示すように、ドレンタンク50にはドレン回収路51が接続されおり、配管系統の各所から排出されたドレン60がドレン回収路51で集中的に回収されてドレンタンク50の内部に導かれて貯留される。
【0018】
ドレンタンク50の下部には、下部流路52が設けられている。そして、この下部流路52はメカニカルポンプ58を介してドレン導出路53に接続されている。メカニカルポンプは蒸気圧等を動力源として対象流体を圧送するポンプであり、本実施形態におけるメカニカルポンプ58は供給される蒸気圧を利用して、下部流路52からドレン導出路53に向けてドレン60を圧送する。ドレン導出路53を通じて導出されるドレン60は他の機器で再利用される。
【0019】
ドレン導出路53には分岐してドレン排出路54が接続されている。ドレン排出路54にはドレン排出バルブ59が設けられており、ドレン排出路54を流れるドレン60はドレン排出バルブ59の開閉動作に従い外部に排出される。
【0020】
ドレンタンク50の内部の底面近傍には、導電率検出器1が設けられている。この導電率検出器1は検出カバー2を有しており、この検出カバー2には小孔であるドレン孔2a、2b、2cが形成されている。検出カバー2の他の部位は閉じられているため、検出カバー2にはドレン孔2a、2b、2cからのみドレン60が内部に流入する。
【0021】
導電率検出器1の検出カバー2の内部には、導電率センサ4が設けられている。本実施形態における導電率センサ4は、例えば2極式導電率センサであり、一対の電極(図示せず)の間に交流化した電流を流し、電極間に発生する電圧を検出して導電率を測定する。導電率センサ4が検出した導電率は導電率信号として、ドレンタンク50の外部に設けられたコントローラー8に与えられる。
【0022】
また、ドレンタンク50内には、冷却水が通過する冷却水路3が配置されている。ドレンタンク50の外側に位置する冷却水路3には冷却水バルブ9が設けられており、冷却水バルブ9の開閉に応じて冷却水路3内の冷却水の流れが許容又は遮断される。なお、冷却水バルブ9は、例えば電磁弁であり、コントローラー8からの開弁信号又は閉弁信号に従って開閉動作を行う。
【0023】
冷却水路3はドレンタンク50内において、さらに導電率検出器1の検出カバー2の内部領域に挿入されて配置されている。そして、冷却水路3は検出カバー2内でコイル状に屈曲して冷却コイル3aを形成しており、この冷却コイル3a内に導電率センサ4が配置されている。すなわち、冷却水路3の冷却コイル3aは導電率センサ4を周回して位置している。なお、冷却コイル3aに連続して延びる冷却水路3はドレンタンク50の下部から外部に貫通しており、冷却水路3の冷却水はドレンタンク50を通過して外部に導出される。
【0024】
さらに、導電率検出器1の検出カバー2内の上部には、温度センサ6が設けられており、この温度センサ6によって検出カバー2内のドレン60の温度が検出される。温度センサ6が検出した温度は温度信号としてコントローラー8に送信される。なお、コントローラー8には、モニター15が接続されており、コントローラー8の制御に従ってモニター15には所定の表示が行われる。
【0025】
(動作の説明)
次に、導電率検出器1等の動作を説明する。前述のように、導電率検出器1は、導電率センサ4によって検出カバー2内のドレン60の導電率を検出するが、ドレンタンク50内に貯留されるドレン60は高温高圧の蒸気の凝縮水であることから、一般にドレン60は高温である。
【0026】
ここで、導電率は液温の影響を受けて変動する性質を有していることから、ISO(国際標準化機構)、JIS(日本産業規格)その他の規格によって、導電率は液温25°Cの数値で示すことになっている(ISO7888、JIS K0130等)。このため、一般には検出した導電率を基に、25°Cの時の導電率を演算して数値を求めて表示している。これに対して本実施形態では、導電率センサ4を周回している冷却水路3の冷却コイル3aによって、検出カバー2内のドレン60自体の温度を25°Cに調整して導電率を検出する。
【0027】
すなわち、コントローラー8は温度センサ6が出力する温度信号に基づいて検出カバー2内のドレン60の現在温度を把握し、現在温度が25°Cを上回っている場合は、冷却水導入バルブ9に開弁信号を与えて冷却水導入バルブ9を開弁する。これによって冷却水路3には冷却水が流れ、冷却水がドレン60との間で熱交換を行い、導電率センサ4周辺のドレン60の温度が低下する。
【0028】
この際、検出カバー2の内部の領域はドレンタンク50の内部の領域よりも狭く限定されており、この限定された領域に導電率センサ4が配置されると共に冷却水路3の冷却コイル3aが設けられているため、短時間で効率的に導電率センサ4周辺のドレン60の温度を低下させることができる。また、検出カバー2内のドレン60とドレンタンク50内のドレン60とはドレン孔2a、2b、2cを通じて流通するだけであるため、検出カバー2の内部の温度低下がドレンタンク50内のドレン60全体に及ぼす影響を低く抑えることができる。
【0029】
検出カバー2内のドレン60の現在温度が低下し、25°Cに達した時点でコントローラー8は冷却水導入バルブ9に閉弁信号を与えて冷却水導入バルブ9を閉弁し、冷却水路3の冷却水の流れを停止する。
【0030】
コントローラー8はこのような処理を必要に応じて繰り返し、検出カバー2内のドレン60の温度を常時25°Cに維持する。そして、導電率センサ4は、所定のタイミングで定期的に検出カバー2内のドレン60の導電率を検出し、導電率信号をコントローラー8に向けて出力する。コントローラー8は、この導電率信号が示す導電率をモニター15に表示する。導電率信号が示す導電率は、もともと25°Cのドレン60の導電率であるため、検出した導電率について演算を行う必要はない。
【0031】
なお、検出カバー2内のドレン60の温度を25°Cに維持するための処理を常時、実行するのではなく、導電率の検出のタイミングに合わせて実行してもよい。また、導電率の検出を常時行い、常にモニター15に導電率の経時的変化を表示することもできる。
【0032】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、対象流体としてドレン60を例示したが、導電率の検出対象となるものであれば他の流体を対象とすることができる。
【0033】
また、前述の実施形態においては、導電率検出手段として2極式導電率センサである導電率センサ4を例示したが、対象流体の導電率を検出するものであれば4極式導電率センサ等、他の機器を用いてもよい。
【0034】
また、前述の実施形態においては、限定収容部として検出カバー2を例示したが、他の形状、構造のものを採用してもよい。さらに、検出カバー2に流入孔である3つのドレン孔2a、2b、2cが形成されている例を掲げたが、2以下又は4以上の流入孔を形成することができ、形成する箇所は限定収容部(検出カバー2等)の側周方向における異なる位置であってもよい。また、限定収容部(検出カバー2等)の平面部又は底面部に流入孔を形成することもできる。
【0035】
また、前述の実施形態においては、温度調整手段又は温度調整路として冷却水路3を例示したが、限定収容部(検出カバー2等)内部の対象流体(ドレン60等)の温度を調整することが可能なものであれば他の形状、構造を採用することができる。
【0036】
さらに、周回部として冷却コイル3aを例示したが、導電率検出手段(温度センサ6等)を周回するものであれば、他の形状、構造を採用してもよい。たとえば、周回数を冷却コイル3aよりも少なく又は多くしてもよい。
【0037】
また、調整用流体として冷却水を例示したが、温度調整路(冷却水路3等)を通過して対象流体(ドレン60等)の温度を調整することが可能なものであれば他の流体を用いることができる。
【0038】
さらに、前述の実施形態においては、温度検出手段として検出カバー2内の上部に配置された温度センサ6を例示したが、対象流体(ドレン60等)の温度を検出することが可能である限り、限定収容部(検出カバー2等)内の下部又は中央部や、周回部(冷却コイル3a等)の内側に配置してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1:導電率検出器 2:検出カバー 2a、2b、2c:ドレン孔 3:冷却水路
3a:冷却コイル 4:導電率センサ 6:温度センサ 8:コントローラー
60:ドレン

図1