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特開2023-7077運転整理システム、及び運転整理案の生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007077
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】運転整理システム、及び運転整理案の生成方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/00 20220101AFI20230111BHJP
【FI】
B61L27/00 G
B61L27/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110092
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森 靖英
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄一
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐子
(72)【発明者】
【氏名】石戸 優美子
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ32
5H161JJ36
(57)【要約】
【課題】多くの運転整理案を効率的に生成する。
【解決手段】運転整理案を生成する運転整理システムであって、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを備え、前記演算装置が、予測ダイヤを生成するダイヤ予測部と、前記演算装置が、前記予測ダイヤに偽収束状態が含まれるかを判定する状態判定部と、前記演算装置が、膠着状態が発生しているかを判定する膠着箇所抽出部とを有し、前記偽収束状態とは、前記ダイヤ予測部が出力する予測ダイヤに膠着箇所が生じており、評価が高い予測ダイヤを生成できない状態であり、前記膠着箇所とは、前記偽収束状態を解消する運転整理における要点となる箇所である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転整理案を生成する運転整理システムであって、
所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを備え、
前記演算装置が、予測ダイヤを生成するダイヤ予測部と、
前記演算装置が、前記予測ダイヤに偽収束状態が含まれるかを判定する状態判定部と、
前記演算装置が、膠着状態が発生しているかを判定する膠着箇所抽出部とを有し、
前記偽収束状態とは、前記ダイヤ予測部が出力する予測ダイヤに膠着箇所が生じており、評価が高い予測ダイヤを生成できない状態であり、
前記膠着箇所とは、前記偽収束状態を解消する運転整理における要点となる箇所であることを特徴とする運転整理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の運転整理システムであって、
前記状態判定部は、前記ダイヤ予測部で繰り返し生成される予測ダイヤが収束した場合、前記評価が所定の閾値より低ければ、偽収束状態であると判定することを特徴とする運転整理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の運転整理システムであって、
前記膠着箇所抽出部は、遅延が列車及び駅の特定の範囲に集中している、列車及び駅が遅延の先頭である、列車及び駅で矛盾が発生している、及び優等列車が関与しているの少なくとも一つの条件を満たす場合、膠着箇所があると判定することを特徴とする運転整理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の運転整理システムであって、
前記演算装置が、前記判定された膠着の要因を推定する要因推定部と、
前記演算装置が、摂動を生成し、生成された摂動を加えた運転整理案を生成する摂動生成部と、
前記演算装置が、前記推定された膠着の要因に従って探索重みを決定する重み決定部とを有し、
前記摂動生成部は、前記決定された重みに従って、ダイヤに反映される箇所を変えて摂動を生成することを特徴とする運転整理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の運転整理システムであって、
前記重み決定部は、過去の類似する膠着状態における整理内容に合致する整理手順の重みを大きく設定することを特徴とする運転整理システム。
【請求項6】
請求項4に記載の運転整理システムであって、
前記要因推定部は、所定の膠着のパターンに合致するかによって、膠着の要因を推定し、
前記重み決定部は、前記推定された膠着の要因の箇所の摂動が多く生成されるような重みを決定することを特徴とする運転整理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の運転整理システムであって、
前記予測ダイヤに膠着箇所を重畳して表示するための表示データを出力する表示部を備えることを特徴とする運転整理システム。
【請求項8】
運転整理システムが実行する運転整理案の生成方法であって、
前記運転整理システムは、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを有し、
前記運転整理案の生成方法は、
前記演算装置が、予測ダイヤを生成するダイヤ予測手順と、
前記演算装置が、前記予測ダイヤに偽収束状態が含まれるかを判定する状態判定手順と、
前記演算装置が、膠着状態が発生しているかを判定する膠着箇所抽出手順とを有し、
前記偽収束状態とは、前記ダイヤ予測部が出力する予測ダイヤに膠着箇所が生じており、評価が高い予測ダイヤを生成できない状態であり、
前記膠着箇所とは、前記偽収束状態を解消する運転整理における要点となる箇所であることを特徴とする運転整理案の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多くの運転整理案を効率的に生成する運転整理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転整理案を出力する運転整理システムがある。
【0003】
本技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(特開2019-209797号公報)には、運転整理案作成システムと、運転整理案作成システムに学習用データを送信する学習用データ生成部と、運転整理案作成システムに運転整理用ダイヤデータを送信し運転整理案を受信する運行管理部を備え、運転整理アクション学習部は、学習用ダイヤデータを受けダイヤ変更アクションの適合度を出力するシミュレーション実行部と、適合度から探索ルールを作成する探索ルール更新部を備え、運転整理案探索部は、更新された探索ルールに従って運転整理案を探索し、運行管理部に出力する運行計画管理システムが記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-209797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転整理システムから出力される運転整理案には誤りがあったり、不十分なことがあり、十分な教師データを用いた学習が必要となる。しかし、列車の小さな遅延による運転整理は頻繁に生じるものの、運行障害による列車の大きな遅延は頻度が低いため、学習用の教師データ(運転整理データ)が十分に集まらない。ランダムに運転整理案を生成するランダム生成法では、良い運転整理案がなかなか生成されず、教師データの生成効率が悪い。このため、運転整理の整理の要所を見付け出し、この要所に対応する教師データを効率的に増加して、機械学習を行うことが望まれている。
【0006】
本発明は、多くの運転整理案を効率的に生成する運転整理システムの実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、運転整理案を生成する運転整理システムであって、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを備え、前記演算装置が、予測ダイヤを生成するダイヤ予測部と、前記演算装置が、前記予測ダイヤに偽収束状態が含まれるかを判定する状態判定部と、前記演算装置が、膠着状態が発生しているかを判定する膠着箇所抽出部とを有し、前記偽収束状態とは、前記ダイヤ予測部が出力する予測ダイヤに膠着箇所が生じており、評価が高い予測ダイヤを生成できない状態であり、前記膠着箇所とは、前記偽収束状態を解消する運転整理における要点となる箇所であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、多くの運転整理案を効率的に生成できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例の運転整理システムの論理的な構成を示すブロック図である。
図2】本実施例の運転整理システムの物理的な構成を示すブロック図である。
図3】本実施例の計画ダイヤデータの構成例を示す図である。
図4】本実施例の特徴量データの構成例を示す図である。
図5】本実施例の運転整理データの構成例を示す図である。
図6】本実施例の運転整理システムが実行する処理のフローチャートである。
図7】本実施例の膠着箇所検出処理のフローチャートである。
図8】本実施例の探索重み決定処理のフローチャートである。
図9】本実施例の膠着箇所表示画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の実施例の運転整理システム100の概要を説明する。本実施例の運転整理システム100は、運転整理案の生成とダイヤシミュレータ(ダイヤ評価・予測部11)の動作過程において偽収束状態と膠着箇所を検出する。膠着箇所への対応をユーザが入力する、又は過去に成功した運転整理を参照し、膠着箇所の列車ダイヤが変更されやすいように摂動を生成するための重みを変更する。
【0011】
例えば、相対的に遅延が大きい状態で、ダイヤシミュレータが繰り返し演算を行っても膠着を解消する運転整理案が生成されない又は膠着箇所周辺の列車だけ遅延が大きくなる場合に偽収束状態となる。すなわち、偽収束状態は、ダイヤシミュレータが出力する予測ダイヤに特定の範囲(時刻や駅)で膠着箇所が生じており、KPIをさらに小さくする予測ダイヤを生成できない状態である。また、膠着箇所は、ある駅である列車の運転整理が必要な状態、すなわち、偽収束状態を解消するための要点(ボトルネック)となる箇所である。
【0012】
図1は、本実施例の運転整理システム100の論理的な構成を示すブロック図である。
【0013】
本実施例の運転整理システム100は、ダイヤ評価・予測部11、推論部12、摂動生成部13、状態判定部14、膠着箇所抽出部15、表示部16、要因推定部17、重み決定部18及びデータ記録部19を有する。
【0014】
図2は、本実施例の運転整理システム100の物理的な構成を示すブロック図である。
【0015】
本実施例の運転整理システム100は、処理部110、記憶装置120、入出力インターフェース130及び通信インターフェース140を有する計算機によって構成される。
【0016】
処理部110は、プロセッサ(CPU)及びメモリを有する演算装置である。プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する。プロセッサが、各種プログラム(例えば、ダイヤ評価・予測プログラム111、運転整理学習・提案プログラム112、摂動生成プログラム113、状態判定プログラム114、膠着箇所抽出プログラム115、要因推定プログラム117、重み決定プログラム118など)を実行することによって、運転整理システム100の各部(例えば、ダイヤ評価・予測部11、推論部12、摂動生成部13、状態判定部14、膠着箇所抽出部15、表示部16、要因推定部17、重み決定部18、データ記録部19など)による機能が実現される。なお、プロセッサがプログラムを実行して行う処理の一部を、他の演算装置(例えば、ASIC、FPGA等のハードウェア)で実行してもよい。
【0017】
メモリは、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、プロセッサが実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
【0018】
記憶装置120は、例えば、磁気記憶装置(HDD)、フラッシュメモリ(SSD)等の大容量かつ不揮発性の記憶装置である。また、記憶装置120は、プロセッサがプログラムの実行時に使用するデータ(例えば、計画ダイヤデータ121、予測ダイヤデータ122、特徴量データ123、運転整理データ124、成功事例データ125など)、及びプロセッサが実行するプログラムを格納する。すなわち、プログラムは、記憶装置120から読み出されて、メモリにロードされて、プロセッサによって実行されることによって、運転整理システム100の各機能を実現する。
【0019】
入出力インターフェース130は、キーボードやマウスなどの入力装置160及びディスプレイ装置やプリンタ(図示省略)などの出力装置170が接続され、ユーザからの入力を受け、プログラムの実行結果をユーザが視認可能な形式で出力するインターフェースである。なお、運転整理システム100にネットワークを介して接続されたユーザ端末が入力装置160及び出力装置170を提供してもよい。この場合、運転整理システム100がウェブサーバの機能を有し、ユーザ端末が運転整理システム100に所定のプロトコル(例えばhttp)でアクセスしてもよい。
【0020】
通信インターフェース140は、所定のプロトコルに従って、他の装置との通信を制御するネットワークインターフェース装置である。
【0021】
プロセッサが実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介して運転整理システム100に提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性の記憶装置120に格納される。このため、運転整理システム100は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
【0022】
運転整理システム100は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。例えば、ダイヤ評価・予測部11、推論部12、摂動生成部13、状態判定部14、膠着箇所抽出部15、表示部16、要因推定部17、重み決定部18及びデータ記録部19は、各々別個の物理的又は論理的計算機上で動作するものでも、複数が組み合わされて一つの物理的又は論理的計算機上で動作するものでもよい。
【0023】
次に、各機能部及びプログラムの機能及び動作を説明する。
【0024】
ダイヤ評価・予測部11は、ダイヤ評価・予測プログラム111の実行によって、計画ダイヤデータ121と障害内容と摂動と膠着箇所に基づいて、予測ダイヤを生成するダイヤシミュレータである。生成された予測ダイヤは、予測ダイヤデータ122に格納される。また、ダイヤ評価・予測部11は、生成した予測ダイヤの評価指標であるKPIを計算する。KPIは、総遅延時間、特急などの優等列車の総遅延時間、運休本数、運休される列車の停車駅数、利用者の総遅延時間、ダイヤ回復までの時間などが使用でき、KPIが低い予測ダイヤはユーザの利便性が高いと言える。
【0025】
推論部12は、運転整理学習・提案プログラム112の実行によって、予測ダイヤの初期値を用いて運転整理案を算出する。
【0026】
摂動生成部13は、摂動生成プログラム113の実行によって、摂動を生成し、生成された摂動を加えた運転整理案を生成する。
【0027】
状態判定部14は、状態判定プログラム114の実行によって、予測ダイヤに偽収束状態が含まれるかを判定する。偽収束状態とは、前述したように、ダイヤシミュレータ(ダイヤ評価・予測部11)が出力する予測ダイヤに特定の範囲(時刻や駅)で膠着箇所が生じており、KPIをさらに小さくする予測ダイヤを生成できない状態である。
【0028】
膠着箇所抽出部15は、膠着箇所抽出プログラム115の実行によって、列車かつ駅毎に膠着状態となっている膠着箇所が発生しているかを判定する。膠着箇所とは、前述したように、ある駅である列車の運転整理が必要な状態、すなわち、偽収束状態を解消するための要点(ボトルネック)となる箇所であり、例えば、特定の範囲(時刻や駅)で周囲より遅延が大きい、特定の箇所(時刻や駅)以降で遅延が増大している(遅延の先頭になっている)、矛盾があり実現できない箇所である(例えば、待避線がない駅で追い越している)、優等列車(例えば、特急列車、有料の速達列車など)が関係している、ダイヤの修正による以後の時刻への影響度が大きい(例えば、膠着箇所以後の時刻をたどると遅延や不具合が増大しており、以後の列車に大きな影響がある)を、膠着が発生していると判定する。膠着箇所抽出部15による処理の詳細は図7を参照して説明する。
【0029】
表示部16は、膠着箇所表示画面900(図9)を表示し、オペレータから入力を受け付けるインターフェースである。
【0030】
要因推定部17は、要因推定プログラム117の実行によって、検出された膠着の要因を推定する。
【0031】
重み決定部18は、重み決定プログラム118の実行によって、推定された膠着の要因に従って探索重みを決定する。重み決定部18による処理の詳細は図8を参照して説明する。
【0032】
データ記録部19は、KPIが低い運転整理データを成功事例データ125に格納する。
【0033】
計画ダイヤデータ121は、列車の計画運行時刻のデータであり、その詳細は図3を参照して説明する。予測ダイヤデータ122は、列車の実際の運行時刻から予測される運行時刻のデータである。特徴量データ123は、列車ダイヤの修正量の特徴を示すデータであり、ダイヤ評価・予測部11が出力する。特徴量データ123の詳細は、図4を参照して説明する。運転整理データ124は、推論部12が推測した運転整理候補のデータであり、その詳細は図5を参照して説明する。成功事例データ125は、運転整理の結果、KPIが良好であったデータである。
【0034】
図3は、計画ダイヤデータ121の構成例を示す図である。
【0035】
計画ダイヤデータ121は、列車の一意の識別情報である列車ID、列車の出発駅、列車の行先、列車の種別(普通列車か優等列車か)、列車が停車又は通過する複数の駅の識別情報である駅ID、当該駅の着発番線、到着時刻及び出発時刻が列車かつ駅毎に記録されたデータである。なお、予測ダイヤデータ122も計画ダイヤデータ121と同じ形式でよい。
【0036】
図4は、特徴量データ123の構成例を示す図である。
【0037】
特徴量データ123は、列車ダイヤの修正の特徴を示すデータであり、列車ID、駅ID、列車が発着する乗り場の識別情報である番線、行き先、予測ダイヤと計画ダイヤとの差である遅延時間が列車かつ駅毎に記録されたデータである。特徴量データ123は、図示したデータの他、列車の種別を含むとよい。特徴量データ123は、列車の運行遅延の原因となった支障情報を含んでもよい。支障情報は、支障が発生した列車、発生駅(又は区間)、支障列車の進行方向、発生時刻、及び再開時刻のデータを含むとよい。
【0038】
図5は、運転整理データ124の構成例を示す図である。
【0039】
運転整理データ124は、列車ID、駅ID、及び運転整理内容が列車ごとに記録されたデータである。運転整理内容は、図示した、着発順序変更、番線変更の他、部分運休、運用切断などがある。運転整理データ124は、図示したデータの他、運転整理にかかる時刻、運転整理が発生する番線を含んでもよい。
【0040】
図6は、運転整理システム100が実行する処理のフローチャートである。
【0041】
まず、入出力インターフェース130又は通信インターフェース140から入力される障害情報を受信する(1001)。
【0042】
次に、ダイヤ評価・予測部11は、入力された障害情報を計画ダイヤデータ121に適用し、予測ダイヤの初期値を算出する(1002)。
【0043】
次に、推論部12は、予測ダイヤの初期値を用いて運転整理案を算出する(1003)。
【0044】
次に、摂動生成部13は、摂動を生成し、生成された摂動を加えた運転整理案を生成する。例えば、運転整理内容やパラメータ(遅延時間、着発番線など)をランダムに変化する。
【0045】
次に、ダイヤ評価・予測部11は、生成された運転整理案を初期予測ダイヤに適用して、予測ダイヤデータ122を算出する(1005)。
【0046】
次に、状態判定部14は、算出された予測ダイヤデータ122に偽収束状態が含まれるかを判定する(1006)。例えば、ダイヤ評価・予測部11と状態判定部14のループで繰り返し算出される予測ダイヤのKPIの前回の予測ダイヤのKPIからの減少量が所定の閾値より小さく(すなわち、予測ダイヤのKPIが前回の予測ダイヤのKPIより増加した又は前回からの減少幅が所定の閾値より小さい)、予測ダイヤが収束した場合に、KPIが所定の閾値より大きければ、偽収束状態であると判定する。その結果、予測ダイヤデータ122が偽収束状態を含むと判定された場合、膠着箇所抽出部15は、予測ダイヤデータ122から膠着箇所を抽出する(1007)。膠着箇所抽出処理の詳細は図7を参照して説明する。
【0047】
次に、表示部16は、膠着箇所表示画面(図9)を表示するための表示データを出力して、オペレータに対応の選択を促す。
【0048】
次に、要因推定部17は、所定の膠着のパターンに合致するかによって、検出された膠着の要因を推定する(1009)。
【0049】
次に、重み決定部18は、要因推定部17が推定した膠着の要因に従って探索重みを決定し(1010)、ステップ1003に戻り、次の運転整理案を作成する。探索重み決定処理の詳細は図8を参照して説明する。決定された探索重みは、摂動生成部13が摂動を生成するために用いられる。膠着の要因となる部分の重みを大きくすることによって、膠着の要因を解消する運転整理案が多く作成される。
【0050】
要因推定部17による膠着要因の推定、及び重み決定部18による探索重みの決定には、例えば、以下のパターンがある。
(1)遅延した列車の追い越しを待つ列車がいて出発順序が変更できないため、順序を待つ列車と後続の列車で影響が増大するパターンがある。この場合、当該列車の出発順序を変更し、後続の列車も順序の変更が有効であり、出発順序の変更が多く出る重みを、重み決定部18が決定する。
(2)着発予定番線が空いていないので入線できない駅があり、後続の列車の遅延が増大するパターンがある。この場合、当該駅での着発番線の変更が有効であり、着発番線の変更が多く出る重みを、重み決定部18が決定する。
(3)障害発生区間を部分運休して、その手前で折り返すべきだが、折り返し列車に適切な後運用がないパターンがある。この場合、部分運休発生より後の時間の運用が多く出る重みを、重み決定部18が決定する。
(4)多くの要因が関係して主要因の判定が困難なパターンがある。この場合、当該列車及び当該時刻に可能な運転整理を多く生成する重みを、重み決定部18が決定する。
(5)膠着箇所が特定できない場合、特定の運転整理方法に重み付けをせず、全体的に摂動が発生するように重みを、重み決定部18が決定する。
【0051】
一方、ステップ1006で予測ダイヤデータ122が偽収束状態を含まないと判定された場合、ダイヤ評価・予測部11は、この予測ダイヤデータ122でKPIが減少しているかを判定する(1011)。KPIは、前述したように、総遅延時間、特急などの優等列車の総遅延時間、運休本数、運休される列車の停車駅数、利用者の総遅延時間、ダイヤ回復までの時間などである。その結果、KPIが減少していれば、当該運転整理案の運転整理データをデータ記録部19に送り、成功事例データ125に記録する(1012)。一方、KPIが減少していなければ、ステップ1003に戻り、別の運転整理案を算出する。
【0052】
図7は、膠着箇所検出処理のフローチャートである。
【0053】
具体的には、膠着箇所抽出部15は、予測ダイヤデータ122について、列車かつ駅毎に、遅延が当該列車及び駅付近の特定の範囲に集中しているか(1022)、当該列車及び駅が遅延の先頭であるか(1023)、当該列車及び駅で矛盾が発生しているか(1024)、及び優等列車が関与しているか(1025)を判定する。いずれの条件も満たしていなければ、当該列車及び駅を膠着箇所ではないと判定する(1026)。一方、いずれか一つの条件を満たしていれば、当該列車及び駅を膠着箇所であると判定する(1027)。全ての列車かつ駅の組み合わせについて膠着箇所であるかの判定を行った後、膠着箇所検出処理を終了し、呼び出し元の処理に戻る。
【0054】
図8は、探索重み決定処理のフローチャートである。
【0055】
まず、重み決定部18は、各膠着箇所について、膠着箇所表示画面900(図9)に対応の入力があったかを判定する(1032)。
【0056】
対応の入力があれば、重み決定部18は、入力内容に合致した整理内容の重みを大きく(例えば最大に)設定して、入力内容に関する摂動が多く発生するようにする(1033)。なお、ステップ1032で対応の入力があったかを判定せずに、ステップ1034で自動的に過去類似状態を検索してもよい。
【0057】
一方、対応の入力がなければ(図9の膠着箇所表示画面900で「操作せず」が選択されれば)、重み決定部18は、過去の類似する膠着状態を成功事例データ125から検索し(1034)、過去の類似する膠着状態における整理内容に合致する整理手順の重みを大きく(例えば最大に)設定して、検索された整理手順に関する摂動が多く発生するようにする(1035)。
【0058】
その後、重み決定部18は、全ての膠着箇所について探索重みを決定した後、探索重み決定処理を終了し、呼び出し元の処理に戻る。
【0059】
図9は、膠着箇所表示画面900の例を示す図である。
【0060】
膠着箇所表示画面900は、ダイヤ表示領域910と、膠着表示領域920と、対応選択入力領域930とを含む。
【0061】
ダイヤ表示領域910は、横軸が時刻、縦軸が駅(路線の起点駅からの距離)の領域に列車ダイヤをグラフ表示し、検出された膠着箇所を列車ダイヤ上に重畳表示する。膠着表示領域920は、検出された膠着箇所の情報を表示する。対応選択入力領域930は、検出された膠着箇所への対応案が表示され、いずれが選択可能となっている。複数の膠着箇所が検出された場合、検出された膠着箇所毎に対応が選択可能となっている。探索重み決定処理のステップ1032で対応の入力があったかを判定しない場合、対応選択入力領域930を表示しなくてもよい。
【0062】
以上、本発明の実施例について、鉄道の運行ダイヤを例にして説明したが、この他、旅客や貨物の輸送スケジュールのシミュレータに適用できる。
【0063】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0064】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0065】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0066】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0067】
11 予測部
12 推論部
13 摂動生成部
14 状態判定部
15 膠着箇所抽出部
16 表示部
17 要因推定部
18 重み決定部
19 データ記録部
100 運転整理システム
110 処理部
111 予測プログラム
112 提案プログラム
113 状態判定プログラム
114 膠着箇所抽出プログラム
115 要因推定プログラム
116 重み決定プログラム
117 摂動生成プログラム
120 記憶装置
121 計画ダイヤデータ
122 予測ダイヤデータ
123 特徴量データ
124 運転整理データ
125 成功事例データ
130 入出力インターフェース
140 通信インターフェース
160 入力装置
170 出力装置
900 膠着箇所表示画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9