(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070786
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】眼科画像処理装置および眼科画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183111
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】近藤 萌恵
(72)【発明者】
【氏名】藤生 賢士朗
(72)【発明者】
【氏名】加納 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸弘
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA10
4C316AB02
4C316AB11
4C316AB12
4C316AB16
4C316FB01
4C316FB06
4C316FB12
4C316FB13
4C316FB16
4C316FB21
4C316FB24
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】 撮影した断層画像の取得位置と、また断層画像の撮影の良否と、を検者が直感的に把握しやすい眼科画像処理装置および眼科画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】 被検眼の画像を処理する眼科画像処理装置であって、眼科画像処理装置の制御部は、被検眼の正面画像を取得する第1取得ステップと、被検眼上の1又は複数の取得位置においてOCT光学系を介して撮影された被検眼の断層画像を取得する第2取得ステップと、取得位置毎の断層画像の撮影の良否に関する情報として良否情報を取得する第3取得ステップと、正面画像と、断層画像の取得位置を正面画像上において示す取得位置グラフィックと、をモニタ上に表示し、更に、良否情報を、取得位置毎の取得位置グラフィックと位置的に対応付けて視覚的に表現する、表示制御ステップと、を実行する眼科画像処理装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の画像を処理する眼科画像処理装置であって、
前記眼科画像処理装置の制御部は、
被検眼の正面画像を取得する第1取得ステップと、
被検眼上の1又は複数の取得位置においてOCT光学系を介して撮影された被検眼の断層画像を取得する第2取得ステップと、
取得位置毎の前記断層画像の撮影の良否に関する情報として良否情報を取得する第3取得ステップと、
前記正面画像と、前記断層画像の取得位置を前記正面画像上において示す取得位置グラフィックと、をモニタ上に表示し、更に、前記良否情報を、取得位置毎の前記取得位置グラフィックと位置的に対応付けて視覚的に表現する、表示制御ステップと、
を実行する眼科画像処理装置。
【請求項2】
前記第2取得ステップでは、被検眼上の取得位置が互いに異なる複数の断層画像を取得し、
前記表示制御ステップでは、取得位置毎の前記取得位置グラフィックと対応付けて、複数の断層画像のうち何れかを選択断層画像として表示する請求項1記載の眼科画像処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記良否情報が前記正面画像上に表示された状態で、前記断層画像について再撮影を実行するための信号を、検者が入力するための入力ステップと、
前記信号が入力された場合に、前記取得位置グラフィックで示された被検眼上の位置について、前記OCT光学系を介して、再度断層画像を撮影して取得する再撮影ステップと、を実行する請求項2に記載の眼科画像処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記表示制御ステップにおいて、前記取得位置グラフィックによって、前記断層画像の取得位置を前記正面画像上において示すとともに、前記取得位置グラフィックを前記良否情報に応じた態様に変化させることで、前記良否情報を視覚的に表現する、請求項1から3のいずれかに記載の眼科画像処理装置。
【請求項5】
前記取得位置グラフィックは、前記良否情報に基づいて定められた色で表示される、請求項4に記載の眼科画像処理装置。
【請求項6】
前記第2取得ステップでは、前記一又は複数の取得位置のそれぞれについて、OCT光学系を介して、同一の取得位置に対して複数枚の断層画像を撮影し、
前記複数枚の断層画像それぞれについて、合成処理に用いるか否かを判定し、
前記判定の結果に基づいて、前記複数枚の断層画像を前記合成処理することで、合成画像を取得し、
前記第3取得ステップでは、前記良否情報として、前記一又は複数の取得位置のそれぞれについて、前記合成処理に用いられた前記撮影画像の枚数に関する情報を取得する、請求項1から5のいずれかに記載の眼科画像処理装置。
【請求項7】
前記第3取得ステップでは、前記良否情報として、前記断層画像の画質に関する情報を取得する、請求項1から5のいずれかの眼科画像処理装置。
【請求項8】
眼科画像処理プログラムであって、
眼科画像処理装置のプロセッサにおいて実行されることで、
被検眼の正面画像を取得する第1取得ステップと、
被検眼上の1又は複数の取得位置においてOCT光学系を介して撮影された被検眼の断層画像を取得する第2取得ステップと、
取得位置毎の前記断層画像の撮影の良否に関する情報として良否情報を取得する第3取得ステップと、
前記正面画像と、前記断層画像の取得位置を前記正面画像上において示す取得位置グラフィックと、をモニタ上に表示し、更に、前記良否情報を、取得位置毎の前記取得位置グラフィックと位置的に対応付けて視覚的に表現する、表示制御ステップと、
を眼科画像処理装置に実行させる、眼科画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科画像処理装置および眼科画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科施設において、OCT(Optical Coherence Tomography)デバイスが普及している。OCTデバイスは、光干渉の原理によって被検者眼の眼底の断層画像を撮影する。例えば、断層画像を取得した位置を、被検眼の正面画像上で表示する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1に記載の装置では、異なる横断位置での走査(複数のスキャン)を組み合わせて構成されたスキャンパターン(例えば、ラスタースキャン、ラジアルスキャン、マルチスキャン等)にて、一度の撮影で複数の断層画像を取得する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような装置を用いる際に、それぞれのスキャン位置で、断層画像が適切に撮影されているか否かが正面画像を見ただけでは把握し難く、不便だった。
【0006】
本開示は、上記課題を鑑み、撮影した断層画像の取得位置と、また断層画像の撮影の良否と、を検者が直感的に把握しやすい眼科画像処理装置および眼科画像処理プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1)被検眼の画像を処理する眼科画像処理装置であって、前記眼科画像処理装置の制御部は、被検眼の正面画像を取得する第1取得ステップと、被検眼上の1又は複数の取得位置においてOCT光学系を介して撮影された被検眼の断層画像を取得する第2取得ステップと、取得位置毎の前記断層画像の撮影の良否に関する情報として良否情報を取得する第3取得ステップと、前記正面画像と、前記断層画像の取得位置を前記正面画像上において示す取得位置グラフィックと、をモニタ上に表示し、更に、前記良否情報を、取得位置毎の前記取得位置グラフィックと位置的に対応付けて視覚的に表現する、表示制御ステップと、を実行する眼科画像処理装置。
(2)眼科画像処理プログラムであって、眼科画像処理装置のプロセッサにおいて実行されることで、被検眼の正面画像を取得する第1取得ステップと、被検眼上の1又は複数の取得位置においてOCT光学系を介して撮影された被検眼の断層画像を取得する第2取得ステップと、取得位置毎の前記断層画像の撮影の良否に関する情報として良否情報を取得する第3取得ステップと、前記正面画像と、前記断層画像の取得位置を前記正面画像上において示す取得位置グラフィックと、をモニタ上に表示し、更に、前記良否情報を、取得位置毎の前記取得位置グラフィックと位置的に対応付けて視覚的に表現する、表示制御ステップと、を眼科画像処理装置に実行させる、眼科画像処理プログラム。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例に係る眼科画像処理装置の構成を説明する概略構成図である。
【
図2】本実施例に係る眼科画像処理装置の制御動作を説明するフローチャートである。
【
図3】ラジアルスキャンにて撮影を行う場合にモニタに表示される撮影画面の一例である。
【
図4】ラジアルスキャンでの撮影後の確認画面の一例を示す図である。
【
図5】マップスキャンでの撮影後の確認画面の一例を示す図である。
【
図6】マップスキャンでの撮影後の確認画面の一例を示す図である。
【
図7】マップスキャンでの撮影後の確認画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[概要]
本開示に係る眼科画像処理装置の実施形態を説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用され得る。
【0010】
以下に説明する実施形態では、眼科画像を得るために用いられる光学系(例えば、OCT光学系100、正面撮影光学系200、固視標投影ユニット300)及び光学系を制御して眼科画像を撮影する演算制御器(例えば、制御部70)が、眼科画像処理装置と一体にされている場合を例に説明する。例えば、眼科画像処理装置と、光学系及び光学系を制御する演算制御器と、が別体とされていてもよい。その場合、眼科画像処理装置に、有線あるいは無線で光学系及び光学系を制御する演算制御器が接続されていてもよい。
【0011】
<OCT光学系>
本実施形態の眼科画像処理装置は、OCT光学系を備える。OCT光学系は、被検者の眼底に照射された測定光と、参照光との干渉信号に基づいて断層画像を撮影するために利用される。OCT光学系は、走査手段(光スキャナ)、検出器を有し、被検眼の断層画像を得る。光スキャナは、光源から発せられた光を被検眼上で二次元的に走査する。検出器は、光源から発せられた測定光と参照光との干渉状態を検出する。OCT光学系は、フーリエドメインOCT光学系を基本的構成としてもよい。例えば、OCT光学系は、スペクトルドメインOCT(SD-OCT)光学系であってもよいし、波長掃引式OCT(SS-OCT)光学系であってもよい。また、Time-domain OCT(TD-OCT)光学系であってもよい。
【0012】
なお、断層画像はOCT光学系によって取得されるOCTデータの一例であって、これに限定されない。例えば、OCT光学系によって取得されるOCTデータは、モーションコントラストデータであってもよい。モーションコントラストデータは、例えば、被検眼の血流、及び網膜組織の動的変化、などを捉えた情報である。モーションコントラストデータは、例えば、被検眼の同一位置に関して時間的に異なる複数のOCTデータを処理することによって取得される。なお、モーションコントラストデータを取得するためのOCT信号の演算方法としては、例えば、複素OCT信号の強度差を算出する方法、複素OCT信号の位相差を算出する方法、複素OCT信号のベクトル差分を算出する方法、複素OCT信号の位相差及びベクトル差分を掛け合わせる方法、信号の相関を用いる方法(コリレーションマッピング)などが挙げられる。なお、演算手法の一つとして、例えば、特開2015-131107号公報を参照されたい。例えば、モーションコントラストデータとしては、Aスキャンデータ(例えば、Aスキャン断層画像データ等)、Bスキャンデータ(例えば、Bスキャン断層画像データ、二次元OCTアンジオデータ、等)、三次元データ(例えば、三次元断層画像データ、三次元OCTアンジオデータ、等)の少なくともいずれかであってもよい。
【0013】
<正面撮影光学系>
本実施形態の眼科画像処理装置は、被検眼の正面画像を取得するための正面撮影光学系(例えば、正面撮影光学系200)を備える。例えば、正面撮影光学系によって、動画の正面画像が取得されてもよいし、静止画の正面画像が取得されてもよい。例えば、正面撮影光学系によって取得される正面画像は、診断や、OCT光学系の撮影位置の位置調整、等に用いられてもよい。正面撮影光学系としては、被検眼に赤外光を照射し、被検眼からの反射光を受光する受光素子を有し、受光素子からの受光信号に基づいて被検眼の正面画像を得るものが挙げられる。例えば、SLOや眼底カメラが挙げられる。また、正面撮影光学系としてOCT光学系が用いられてもよい。この場合、OCT光学系によって取得された三次元OCTデータに基づいて、被検眼の正面画像が取得される。
【0014】
正面画像は、赤外光で撮影された正面画像に限定されず、例えば、カラーの正面画像、後述する解析マップ、及びモーションコントラストデータの正面画像、等であってもよい。
【0015】
<制御部>
本実施形態において、眼科画像処理装置は、眼科画像を処理及び表示するための制御部(例えば、制御部70)を備える。例えば、制御部によって眼科画像処理装置を制御する制御プログラムが実行されてもよい。例えば、該制御プログラムは制御部からアクセス可能なメモリに予め格納されている。
【0016】
制御部は、前述の光学系によって撮影された眼科画像を処理し、モニタ上に表示する。以下では、眼科画像を処理するための制御部が、OCT光学系及び正面撮影光学系を制御して眼科画像を撮影する演算制御器を兼ねる場合を例に説明するが、制御部と、演算制御器と、は別の構成としてそれぞれ備えられてもよい。なお、モニタは、眼科画像処理装置に設けられたディスプレイが用いられてもよい。例えば、モニタはタッチパネルであってもよく、その場合は、モニタは眼科画像処理装置の操作を行うための操作部として機能してもよい。
【0017】
例えば、制御部は、被検眼の正面画像を取得する第1取得ステップを実行する。第1取得ステップの一例として、制御部は正面撮影光学系によって撮影された正面画像を取得してもよい。その場合、制御部は正面撮影光学系を制御して、正面画像の撮影を行ってもよい。なお、正面画像は予め取得され、メモリに保存されていてもよい。その場合は、正面画像が、同一の被検眼に対して過去に撮影され、保存されていてもよい。
【0018】
例えば、制御部は、被検眼上の1又は複数の取得位置においてOCT光学系を介して撮影された被検眼の断層画像を取得する第2取得ステップを実行する。第2取得ステップの一例として、制御部はOCT光学系を制御して断層画像の撮影を行ってもよい。なお、断層画像は予め取得され、メモリに保存されていてもよい。その場合は、断層画像が、同一の被検眼に対して過去に撮影され、保存されていてもよい。
【0019】
例えば、複数の取得位置に対してOCT光学系を制御してスキャンを行う場合、そのスキャンパターンは、マルチスキャン、ラジアルスキャン、ラスタースキャン、クロススキャン、等のいずれかであってもよい。なお、上記のスキャンパターンは一例であって、これらに限定されない。また、スキャンパターンは、複数のスキャンパターンの組み合わせによって構成されるスキャンパターンであってもよい。
【0020】
例えば、制御部は、断層画像を取得する場合に、同一の位置に対して複数回のスキャンを行い、複数枚の断層画像を取得してもよい。また、制御部は同一の位置に対して取得された複数枚の断層画像を合成することで、合成画像を取得してもよい。例えば、合成画像は、合成前の断層画像よりも画質が向上した断層画像であってもよい。複数枚の断層画像について合成処理を行う場合、制御部は、合成に用いるか否かの判定を複数枚の断層画像それぞれに対して行い、その判定結果に基づいて合成処理を行ってもよい。なお、合成処理とは、例えば、同一の位置に対して複数回撮影を行った場合において、被検眼の動き等によって複数の画像間に細かい位置ズレが生じる場合がある。合成処理は、位置ズレを補正した上で合成を行い、ピクセル間の画素を補完することで解像度を上げる処理であってもよい。別の一例として、合成処理は、時間方向にフィルタリングをしてノイズを除去する処理であってもよい。具体的には、合成処理は、複数枚の断層画像について位置ズレを補正し、各画素について時間的な中央値を取ることでノイズを除去する処理であってもよい。
【0021】
例えば、制御部は、取得位置毎の断層画像の撮影の良否に関する情報として良否情報を取得する第3取得ステップを実行する。例えば、撮影の良否に関する情報とは、断層画像を取得する際に得られる情報であってもよい。その一例として、前述のように複数枚の断層画像を合成して合成画像を取得する場合に、合成に用いられた断層画像の枚数が、良否情報として取得されてもよい。また、撮影の良否に関する情報とは、断層画像を解析することで取得される情報であってもよい。断層画像を解析して、画質を評価することで得られる評価値が、良否情報として取得されてもよい。その一例として、画像の背景領域に対する、被検眼の断層像の信号の強さに基づいて、評価値が取得されてもよい。なお、評価値の求め方は、特開2012-213489号公報記載の方法を利用できる。
【0022】
例えば、複数の取得位置で断層画像を取得する場合、ある断層画像について、スキャンラインの異なる他の断層画像との整合性が、良否情報として取得されてもよい。その一例として、複数のスキャンラインが交差するようなスキャンパターンの場合(例えば、クロススキャン、ラジアルスキャン等)において、断層画像上に被検眼の組織(例えば、網膜の断層像)の層構造の厚さに基づいて撮影の良否が判定され、その判定結果が良否情報として取得されてもよい。一例として、ある断層画像において、スキャンラインの交点における、被検眼の層構造の厚さを求める。そして、求められた層構造の厚さが、スキャンラインの異なる他の断層画像における、該スキャンラインの交点での、層構造の厚さ、と異なるか否かを判定し、その判定結果が良否情報として取得されてもよい。なお、判定とは厳密に厚みが同じか、あるいは異なるか、といった判定でなくてもよく、厚みの差が所定の閾値以上か否か、といった判定であってもよい。
【0023】
また、別の一例として、ある断層画像において、被検眼の組織が映っている深さ方向の位置(例えば、ゼロディレイから被検眼の組織までの距離)を求めてもよい。そして、求められた組織の深さ方向の位置が、スキャンラインの異なる他の断層画像における、組織の深さ方向の位置と異なるか否か(あるいは、組織の深さ方向の位置のズレ量が閾値以上か否か)を判定し、その判定結果が良否情報として取得されてもよい。例えば、深さ方向の位置以外にも、水平方向の位置が異なるか否か、についての判定結果が良否情報として取得されてもよい。例えば、被検眼の眼底形状をマップスキャン等によって予め取得しておき、該眼底形状に基づいて、被検眼の組織が写っている位置が適切か否かを判定してもよい。
【0024】
例えば、撮影の良否に関する情報とは、撮影の成否に関する情報であってもよい。例えば、断層画像が取得される際に、被検眼の動きの有無や、瞬きの有無によっては、撮影が適切に行われない場合がある。例えば、制御部は断層画像を取得する時に並行して、正面撮影光学系を制御して連続的に正面画像を取得してもよい。そして、制御部は、該正面画像の撮影結果に基づいて、断層画像が取得される際における、被検眼の動きの有無や、瞬きの有無、等を判定し、その判定結果を良否情報として取得してもよい。例えば、眼科画像処理装置に被検眼の前眼部を観察可能な光学系等が備えられる場合、同様の判定は、前眼部画像等に基づいて行われてもよい。
【0025】
なお、良否情報として取得される撮影の良否に関する情報は、上記に限定されず、種々の変容例を含む。
【0026】
例えば、制御部は、正面画像と、断層画像の取得位置を正面画像上において示す取得位置グラフィックと、をモニタ上に表示し、更に、良否情報を、取得位置毎の取得位置グラフィックと位置的に対応付けて視覚的に表現する、表示制御ステップを実行する。
【0027】
例えば、制御部は、正面撮影光学系がSLOや眼底カメラの場合、正面撮影光学系によって取得された正面画像と、干渉光学系によって取得された正面画像(例えば、三次元画像データに基づくOCT正面画像(例えば、積算画像))との位置合わせ(マッチング)をする。これにより、干渉光学系によって取得された断層画像と、正面撮影光学系によって取得された正面画像との対応付けが行われる。
【0028】
例えば、取得位置グラフィックとは、正面画像上において、OCT光学系の光源からの光が被検眼上で走査された軌跡を示す、スキャンライン(例えば、スキャンライン26)であってもよい。なお、取得位置グラフィックはこれに限定されない。例えば、複数の取得位置で断層画像を取得する場合において、取得位置グラフィックは、断層画像が取得された領域を示すグラフィック(例えば、光がスキャンされた領域を覆う図形や、その枠線等)であってもよい。例えば、複数の取得位置で断層画像を取得する場合において、それぞれの取得位置を示す取得位置グラフィックは、同時に正面画像上に表示されてもよいし、異なるタイミングで正面画像上に表示されてもよい。
【0029】
取得位置が異なる断層画像の取得位置グラフィックが、正面画像上で同時に表示される場合において、それぞれの取得位置と対応する良否情報は、更に同時に表示されてもよい。良否情報は、正面画像上で、グラフィカルに表現されてもよい。例えば、取得位置グラフィックそのものが、良否情報に応じた態様に変化することによって、良否情報は視覚的に表現されてもよい。また、取得位置グラフィックとは異なるグラフィックとして良否情報を示すグラフィックを、各取得位置の取得位置グラフィックの近傍に表示することによって、良否情報は視覚的に表現されてもよい。また、良否情報は、数値やテキストとして視覚的に表現されてもよい。さらにまた、良否情報は、音声や、検者が装置を操作するための操作部(例えば、ジョイスティック等のコントローラ)の振動等によって、取得位置グラフィックと対応付けて表現されてもよい。
【0030】
上記のように、表示制御ステップでは、正面画像上で、断層画像を取得した位置を示す取得位置グラフィックが示され、また、その断層画像を取得した位置での、断層画像の撮影の良否が対応付けて表示される。このため、検者は正面画像を確認すれば、どの位置で断層画像が取得され、また断層画像は好適に撮影されたかを直感的に把握しやすい。
【0031】
また、例えば制御部は、上記のように、表示制御ステップにおいて、取得位置グラフィックを、断層画像の取得位置を正面画像上において示すとともに、良否情報に応じた態様に変化させることで、良否情報を視覚的に表現してもよい。この場合、検者は取得位置グラフィックを確認した際に、より直感的に、撮影の良否を把握しやすい。
【0032】
取得位置グラフィックが良否情報に応じて変化する態様の例として、取得位置グラフィックは、良否情報に基づいて定められた色で表示されてもよい。この場合、検者は撮影が成功したものと失敗したものとをより判別しやすい。例えば、スキャンラインの数が多い場合であっても、撮影が成功したものと失敗したものとを直感的に判別しやすい。なお、取得位置グラフィックの色は良否情報に応じて変化する態様の例であって、これに限定されない。例えば、取得位置グラフィックの点滅、等が挙げられる。例えば、取得位置グラフィックが線を用いて表現される場合、その線種や線の太さが良否情報に応じて変化されてもよい。
【0033】
例えば、制御部は、第2取得ステップでは被検眼上の取得位置が互いに異なる複数の断層画像を取得し、表示制御ステップでは、取得位置毎の取得位置グラフィックと対応付けて、複数の断層画像のうち何れかを選択断層画像として表示してもよい。この場合、撮影の良否に関する情報を良否情報に基づいて認識した検者が、スムーズに取得位置グラフィックと対応する断層画像を確認できる。一例として、検者によって複数の取得位置グラフィックの中の何れかが選択された場合に、その選択された取得位置グラフィックと対応する断層画像を選択断層画像として表示してもよい。なお、取得位置グラフィックと対応付けて複数の断層画像のうちの何れかを表示する方法はこれに限定されない。
【0034】
例えば、制御部は、良否情報が正面画像上に表示された状態で、断層画像について再撮影を実行するための信号を、検者が入力するための入力ステップと、信号が入力された場合に、取得位置グラフィックで示された被検眼上の位置について、OCT光学系を介して、再度断層画像を撮影して取得する再撮影ステップと、を実行してもよい。この場合、検者は良否情報(撮影の良否に関する情報)を正面画像上で確認しつつ、制御部に再撮影を実行させることができるため、検者は、正面画像を確認して撮影の良否に関する情報を認識してから、スムーズに、その断層画像について再撮影を行わせることができる。
【0035】
本実施形態において、制御部は良否情報を正面画像上に表示した状態で、再撮影を実行する信号を受け付ける。一例として、制御部は、検者にスキャンラインを選択させ、再撮影を開始する信号を入力させるためのグラフィックユーザーインターフェースをモニタ上に表示してもよい。その場合、検者は操作部を介して入力を行うことで、制御部に再撮影を実行させることができる。
【0036】
例えば、再撮影手段は、本実施例において制御部(演算制御器)が兼用する。例えば、上記の操作部を介して検者から再撮影を実行する信号が入力された場合、制御部は、OCT光学系を介して、再撮影を行う。例えば制御部は、位置又は複数の断層画像の取得位置のうち、検者によって選択された取得位置について再撮影を行ってもよい。その場合、検者によって選択される取得位置の数は、一つでも、複数であってもよい。なお、検者は、再撮影を行うか否かを選択すればよく、必ずしも再撮影を行う取得位置を選択せずともよい。例えば、再撮影が行うと選択された場合、制御部が良否情報に基づいて再撮影を行う取得位置を選択し、再撮影を行ってもよい。
【0037】
[実施例]
以下、本実施形態に係る実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本実施例に係る眼科撮影装置の構成について説明する概略構成図である。以下の説明においては、眼科撮影装置として、被検眼の眼底撮影を行う眼底撮影装置を例に挙げて説明を行う。もちろん、眼科撮影装置としては、眼底撮影装置に限定されず、被検眼の前眼部撮影を行う前眼部撮影装置等が挙げられる。
【0038】
装置構成の概略を説明する。本装置は、被検者眼Eの眼底Efの断層画像を撮影するための光コヒーレンストモグラフィーデバイス(OCTデバイス)10である。OCTデバイス10は、干渉光学系(OCT光学系)100と、正面撮影光学系200と、固視標投影ユニット300と、演算制御部(CPU)70と、を含む。
【0039】
OCT光学系100は、眼底に測定光を照射する。OCT光学系100は、眼底から反射された測定光と、参照光との干渉状態を受光素子(検出器120)によって検出する。OCT光学系100は、眼底Ef上の撮像位置を変更するため、眼底Ef上における測定光の照射位置を変更する照射位置変更ユニット(例えば、光スキャナ108、固視標投影ユニット300)を備える。制御部70は、設定された撮像位置情報に基づいて照射位置変更ユニットの動作を制御し、検出器120からの受光信号に基づいて断層画像を取得する。
【0040】
<OCT光学系>
OCT光学系100は、いわゆる眼科用光干渉断層計(OCT:Optical coherence tomography)の装置構成を持ち、眼Eの断層画像を撮像する。OCT光学系100は、測定光源102から出射された光をカップラー(光分割器)104によって測定光(試料光)と参照光に分割する。そして、OCT光学系100は、測定光学系106によって測定光を眼Eの眼底Efに導き,また、参照光を参照光学系110に導く。その後、眼底Efによって反射された測定光と,参照光との合成による干渉光を検出器(受光素子)120に受光させる。
【0041】
検出器120は、測定光と参照光との干渉状態を検出する。フーリエドメインOCTの場合では、干渉光のスペクトル強度が検出器120によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって所定範囲における深さプロファイル(Aスキャン信号)が取得される。
【0042】
光スキャナ108は、測定光源から発せられた光を被検眼眼底上で走査させる。例えば、光スキャナ108は、眼底上で二次元的(XY方向(横断方向))に測定光を走査させる。光スキャナ108は、瞳孔と略共役な位置に配置される。光スキャナ108は、例えば、2つのガルバノミラーであり、その反射角度が駆動機構50によって任意に調整される。
【0043】
これにより、光源102から出射された光束はその反射(進行)方向が変化され、眼底上で任意の方向に走査される。これにより、眼底Ef上における撮像位置が変更される。光スキャナ108としては、光を偏向させる構成であればよい。例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられる。
【0044】
参照光学系110は、眼底Efでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系110は、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー)によって形成され、カップラー104からの光を反射光学系により反射することにより再度カップラー104に戻し、検出器120に導く。他の例としては、参照光学系110は、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成され、カップラー104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導く。
【0045】
参照光学系110は、参照光路中の光学部材を移動させることにより、測定光と参照光との光路長差を変更する構成を有する。例えば、参照ミラーが光軸方向に移動される。光路長差を変更するための構成は、測定光学系106の測定光路中に配置されてもよい。
【0046】
<正面撮影光学系>
正面撮影光学系(正面画像観察デバイス)200は、眼底Efの正面画像を得るために設けられている。正面撮影光学系200は、例えば、光源から発せられた測定光(例えば、赤外光)を眼底上で二次元的に走査させる光スキャナと、眼底と略共役位置に配置された共焦点開口を介して眼底反射光を受光する第2の受光素子と、を備え、いわゆる眼科用走査型レーザ検眼鏡(SLO)の装置構成を持つ。
【0047】
なお、正面撮影光学系200の構成としては、いわゆる眼底カメラタイプの構成であってもよい。また、OCT光学系100は、正面撮影光学系200を兼用してもよい。すなわち、正面画像は、二次元的に得られた断層画像を形成するデータを用いて取得されるようにしてもよい(例えば、三次元断層画像の深さ方向への積算画像、XY各位置でのスペクトルデータの積算値、ある一定の深さ方向におけるXY各位置での輝度データ、網膜表層画像、等)。
【0048】
<固視標投影ユニット>
固視標投影ユニット300は、眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。投影ユニット300は、眼Eに呈示する固視標を有し、複数の方向に眼Eを誘導できる。
【0049】
例えば、固視標投影ユニット300は、可視光を発する可視光源を有し、視標の呈示位置を二次元的に変更させる。これにより、視線方向が変更され、結果的に撮像部位が変更される。例えば、撮影光軸と同方向から固視標が呈示されると、眼底の中心部が撮像部位として設定される。また、撮影光軸に対して固視標が上方に呈示されると、眼底の上部が撮像部位として設定される。すなわち、撮影光軸に対する視標の位置に応じて撮影部位が変更される。
【0050】
固視標投影ユニット300としては、例えば、マトリクス状に配列されたLEDの点灯位置により固視位置を調整する構成、光源からの光を光スキャナを用いて走査させ、光源の点灯制御により固視位置を調整する構成、等、種々の構成が考えられる。また、投影ユニット300は、内部固視灯タイプであってもよいし、外部固視灯タイプであってもよい。
【0051】
<制御部>
制御部70は、各構成100~300の各部材など、装置全体を制御する。また、制御部70は、取得された画像を処理する画像処理部、取得された画像を解析する画像解析部、などを兼用する。制御部70は、一般的なCPU(Central Processing Unit)等で実現される。制御部70は、以下に示すように、断層画像に基づいて眼底Efを解析する。
【0052】
制御部70は、OCT光学系100の検出器120から出力される受光信号に基づいて画像処理により断層画像を取得すると共に、正面撮影光学系200の受光素子から出力される受光信号に基づいて正面画像を取得する。また、制御部70は、固視標投影ユニット300を制御して固視位置を変更する。
【0053】
メモリ(記憶部)72、モニタ75、コントロール部(操作部)74は、それぞれ制御部70と電気的に接続されている。制御部70は、モニタ75の表示画面を制御する。取得された眼底像は、モニタ75に静止画又は動画として出力される他、メモリ72に記憶される。メモリ72は、例えば、撮影された断層画像(例えば、三次元断層画像)、正面画像、各断層画像の撮影位置情報等の撮影に係る各種情報を記録する。また、メモリ72は、眼科撮影装置の動作を制御するための制御プログラム(眼科撮影プログラム)を記憶している。制御部70は、操作部74から出力される操作信号に基づいて、OCT光学系100、正面撮影光学系200、固視標投影ユニット300の各部材を制御する。操作部74は、検者によって操作される操作部材としてマウス74a、操作ノブ74b、74c等が接続されている。
【0054】
なお、マウス74aには、検者の手によってマウス74a本体が二次元的に移動されたときの移動信号を検出するセンサと、検者の手によって、押圧されたことを検知するための左右2つのマウスボタンと、左右2つのマウスボタンの間に前後方向に回転可能なホイール機構とが設けられている。
【0055】
なお、操作ノブ74b、74cは、左右方向に回転可能な構成となっている。
【0056】
モニタ75は、装置本体に搭載された表示モニタであってもよいし、パーソナルコンピュータの表示モニタであってもよい。また、これらが併用された構成であってもよい。
【0057】
[動作]
以上のような構成を備える装置において、その制御動作について説明する。
図2は、制御動作の流れについて説明するフローチャートである。制御部70は、メモリ72に記憶された制御プログラムに従って、
図2に示す処理を実行する。検者は、固視標投影ユニット300の固視標を注視するように被検者に指示した後、図示無き前眼部観察用カメラで撮影される前眼部観察像をモニタ75で見ながら、被検眼の瞳孔中心に測定光軸がくるように、操作部74(例えば、図示無きジョイスティック)を用いて、アライメント操作を行う。
【0058】
そして、制御部70は、光スキャナ108の駆動を制御し、眼底上で測定光を所定方向に関して走査させ、走査中に検出器120から出力される出力信号から所定の走査領域に対応する受光信号を取得して断層画像を形成する。また、制御部70は、OCT光学系100を制御し、断層画像を取得すると共に、正面撮影光学系200を制御し、眼底正面画像を取得する。そして、制御部70は、OCT光学系100によって断層画像、正面撮影光学系200によって眼底正面画像(正面画像)を随時取得する。
【0059】
なお、本実施例においては、異なる横断位置での複数のスキャンを組み合わせて構成されたスキャンパターンで断層画像が取得される。以下の説明においては、スキャンパターンとして、ラジアルスキャンを例に挙げて説明をする。本実施例のラジアルスキャンとしては、例えば、被検眼の黄斑を中心に、24ラインのスキャンラインが、放射状に形成されるラジアルスキャンを例に挙げて説明する。本実施例においてスキャンラインとは、測定光が走査された軌跡を表すグラフィックであり、断層画像を取得した位置を正面画像上で示すグラフィックの一例である。なお、スキャンラインのライン数や、ラジアルスキャンの中心となる位置は、これに限定されず、変更可能である。また、本開示は、ラジアルスキャンへの適用のみに限定されない。異なる横断位置での複数のスキャンを組み合わせて構成されたスキャンパターンに適用可能である。例えば、ラスタースキャン、マルチスキャン、クロススキャン等に適用可能である。
【0060】
図3は、ラジアルスキャンにて撮影を行う場合におけるモニタ75に表示される撮影画面の一例を示す図である。制御部70は、モニタ75上に、正面撮影光学系200によって取得された正面画像と、OCT光学系100によって取得された断層画像と、目標位置グラフィック25と、を表示する。目標位置グラフィック25は、正面画像上における断層画像の測定位置(取得位置)及びスキャンパターンを表す。本実施例において、目標位置グラフィックに沿って測定光が走査されることで、断層画像が撮影される。なお、前述のスキャンラインと、目標位置グラフィックの形状とは、本実施例においては一致するとする。例えば、スキャンパターンが変更されると、制御部70は、変更されたスキャンパターンに基づいて、目標位置グラフィックの表示パターンを変更する。目標位置グラフィック25は、目標位置グラフィック75上の正面画像上に重畳表示される。なお、本実施例において、モニタ上の正面画像を表示する領域を、正面画像表示部20と称する場合がある。また、本実施例において、モニタ上の断層画像を表示する領域を、断層画像表示部30と称する場合がある。
【0061】
本実施例において、断層画像表示部30には、目標位置グラフィック25に沿ってスキャンされ、取得された被検眼の断層画像が表示される。例えば、ラジアルスキャンが行われる場合、デフォルトの状態では、断層画像表示部30には、ラジアルスキャンの水平方向に対応するスキャン(
図3における目標位置グラフィック25a参照)の断層画像が表示される。また、例えば、断層画像表示部30に表示される断層画像は、操作部の操作によって変更可能である。一例として、検者がマウス74aを操作し、断層画像を確認したいスキャンラインを選択すると、選択されたスキャンラインで取得された断層画像へと表示が変更される。
【0062】
以下、断層画像の撮影方法について説明する。
図3に示されるように、断層画像及び正面画像が同一画面上に表示されたら、検者は、リアルタイムで観察されるモニタ75上の正面画像から検者の撮影したい断層画像の位置を設定する。ここで、検者は、マウス74aを用いて、ドラッグ操作を行うことによって、正面画像に対して目標位置グラフィック25を移動させていき、走査位置を設定する。
【0063】
検者によって目標位置グラフィック25が正面画像に対して移動されると、制御部70は、随時走査位置の設定を行い、これに対応する走査位置の断層画像を取得する。そして、取得された断層画像を随時モニタ75の表示画面上に表示する。また、制御部70は、マウス74aから出力される操作信号に基づいて測定光の走査位置を変更すると共に、変更された走査位置に対応する表示位置に目標位置グラフィック25を表示する。なお、走査位置の変更とともに、スキャンパターン設定欄35を操作部74によって選択することによって、スキャンパターンを変更することが可能である。
【0064】
検者によって、スキャンパターンや走査位置等が設定され、図示無き撮影スイッチが選択されると、制御部70は、設定された走査位置に基づいて、正面画像及び断層画像の取得を行う。
【0065】
制御部70は、ラジアルスキャンでの撮影開始時に取得した正面画像と、その正面画像上で設定されたラジアルスキャンの走査位置の情報をメモリ72に記憶させる。なお、正面画像は、再撮影時のトラッキング制御時に用いられる(詳細は後述する)。
【0066】
また、制御部70は、正面画像上に設定された目標位置グラフィック25の表示位置に基づいて、目標位置グラフィック25の位置に対応する眼底の断層画像が得られるように、光スキャナ108を駆動させて測定光を走査させる。なお、目標位置グラフィック25の表示位置(モニタ75上における座標位置)と光スキャナ108による測定光の走査位置との関係は、予め定まっているので、制御部70は、設定した目標位置グラフィック25の表示位置に対応する走査範囲に対して測定光が走査されるように、光スキャナ108の2つのガルバノミラーを適宜駆動制御する。
【0067】
複数のスキャンラインで構成されるスキャンパターンで撮影し、断層画像を取得する場合、制御部70は、スキャンライン毎に順に断層画像の取得を行う。例えば、上記記載のラジアルスキャンで撮影を行う場合は、目標位置グラフィック25aの水平方向のスキャンから、時計回りに、各目標位置グラフィックに沿って順にスキャンを行っていく。
【0068】
本実施例において、目標位置グラフィック毎での断層画像の撮影が複数回行われる。言い換えれば、同一の目標位置グラフィックに対して複数回、断層画像の撮影が行われる。例えば、水平方向の目標位置グラフィック25aの位置での撮影を複数回行った後、次の目標位置グラフィックの撮影位置へと移行をする。例えば、制御部70は、各目標位置グラフィックで複数の断層画像を取得しながら、断層画像間の加算平均処理を行い、目標位置グラフィック毎に複数の断層画像から加算平均画像(以下、加算画像と称する)を取得する。
【0069】
ここで、加算平均処理について説明する。例えば、制御部70は、OCT光学系100よって取得された複数の断層画像を加算平均処理することにより加算画像を取得する。本実施例において、制御部70は、同一の位置に対して所定の枚数の断層画像を取得した後、それぞれの断層画像について、合成を行うか否かを判定する。そして、合成を行うと判定された断層画像を用いて、加算平均処理を行う。このため、得られる加算画像ごとに、加算平均処理に用いられた断層画像の枚数が異なる場合がある。
【0070】
例えば、制御部70は、目標位置グラフィック毎に、各目標位置グラフィックの位置において、最初に取得された断層画像を基準画像として設定し、加算平均処理を行う。制御部70は、各目標位置グラフィックの位置で取得された断層画像毎に、基準画像とその他の複数の断層画像とのずれを画像処理により検出する。そして、制御部70は、ずれ検出結果に基づいて、加算処理の適否を判定処理すると共に、基準画像と各断層画像とのずれを補正し、基準画像に対して複数の断層画像を加算処理していく。なお、本実施形態においては、基準画像を最初に取得された断層画像(最新の撮影画像)に設定したがこれに限定されない。例えば、複数の断層画像の内で加算処理の基準とする基準画像を設定してもよい。
【0071】
制御部70は、基準画像に対して断層画像を順に加算平均処理していく。そして、各断層画像と基準画像とのずれ量を断層画像毎に検出し、基準画像に対して各断層画像の位置合わせを行う。すなわち、基準画像と各断層画像を比較して、基準画像に対する各断層画像の位置ずれ方向及び位置ずれ量を断層画像毎に、画像処理により検出する。
【0072】
ずれ量の検出方法としては、種々の画像処理手法(各種相関関数を用いる方法、フーリエ変換を利用する方法、特徴点のマッチングに基づく方法)を用いることが可能である。
【0073】
例えば、所定の基準画像(最初に取得した断層画像)又は対象画像(基準画像を除く断層画像)を1画素ずつ位置ずれさせ、基準画像と対象画像を比較し、両データが最も一致したとき(相関が最も高くなるとき)の両データ間の位置ずれ方向及び位置ずれ量を検出する手法が考えられる。また、所定の基準画像及び対象画像から共通する特徴点を抽出し、抽出された特徴点の位置ずれ方向及び位置ずれ量を検出する手法が考えられる。
【0074】
本実施例においては、基準画像に対する各断層画像を1画素単位でずらしながら、相関値(値が大きいほど画像間の相関が高くなる(最大1))を逐次算出する。そして、制御部70は、相関値が最大となるときの画素の偏位量(ずらした画素数)を位置ずれ量とし、また、ずらした方向を位置ずれ方向として算出する。
【0075】
判定方法として、ずれ検出時に算出した相関値を用いて判定を行う。例えば、相関値が所定の閾値(例えば、0.4)より小さい場合に、加算処理に用いる断層画像の対象から除外する。すなわち、相関値が小さい場合には、固視微動や装置と眼の間のずれ等が原因となって、基準画像と断層画像で、撮影領域が大きく異なっている可能性が高い。なお、加算処理に用いる画像として、適正な画像であるか否かの判定においてはこれに限定されない。例えば、検出される位置ずれ量が許容範囲を超えた断層画像を加算処理の対象から除外するようにしてもよい。
【0076】
以上のように、位置ずれ量及び位置ずれ方向が検出され、加算処理に用いる画像としての適否が判定される。そして、制御部70は、加算処理用の画像として適正であると判定された画像に対して、位置ずれが補正されるように、位置ずれ量分、各断層画像を基準画像に対して、それぞれ偏位させる。そして、位置ずれ補正後、制御部70は、基準画像に対して、断層画像の画素値を加算させる。
【0077】
このように、各目標位置グラフィックでの複数の断層画像を用いて、加算平均処理することによって、取得される加算画像の画質が向上する。
【0078】
各スキャンラインでの撮影及び加算平均処理が完了すると、制御部70は、取得した加算画像をメモリ72に記憶させる。そして、制御部70は、モニタ75上の表示を撮影画面から確認画面へ変更する。
【0079】
図4は、ラジアルスキャンでの撮影後の確認画面の一例を示す図である。制御部70は、モニタ75上に、正面画像表示部20、スキャンライン26、断層画像表示部30、を表示する。制御部70は、メモリ72より正面画像及び断層画像を呼び出して、それぞれ正面画像表示部20、及び断層画像表示部30、に表示する。
【0080】
例えば、確認画面の正面画像表示部20には、ラジアルスキャンでの撮影開始時に取得した正面画像が表示される。また、正面画像上には、ラジアルスキャンのスキャンライン26が電気的に重畳されて表示される。
【0081】
スキャンライン26の色について説明する。
図4において、点線のスキャンラインは緑色である。前述の通り、本実施例においては撮影した断層画像に対して、加算に用いられた断層画像の枚数が少なくなる場合がある。例えば、前述の断層画像の加算処理において、加算処理に用いられた断層画像が、所定枚数以上である場合、その断層画像に対応するスキャンラインの色は緑色で表示される。なお、本実施例において所定枚数とは、断層画像について、加算平均処理を行った場合に、検者が好適に診断を行えるような画質となる枚数であり、例えば予め検者によって設定される枚数である。すなわち、本実施例において、点線で示されているスキャンラインと対応する断層画像については、好適に診断を行える(一例として、画質がよい、画像のブレが少ない、信号に対するノイズの量が少ない、等)ことが期待できる。
【0082】
また、
図4において、実線のスキャンラインは赤色である。本実施例において、加算処理に用いられた断層画像が、前述の所定枚数未満である場合、その断層画像に対応するスキャンラインの色は赤色で表示される。本実施例において、実線で示されているスキャンラインと対応する断層画像について、検者が好適に診断を行うことが難しい(一例として、画質が所期する程度に満たない、画像がブレている、ノイズが多い、等)可能性がある。このようにスキャンラインが加算枚数に応じて色分けされているため、検者は、断層画像を必ずしも観察しなくとも、スキャンラインを確認すれば、そのスキャンラインと対応する断層画像の画質(すなわち、撮影の良否)を直感的に把握しやすい。なお、色分けは、各ラインとの相対的な評価に基づいて行われてもよい。一例として、スキャンラインごとの加算枚数の平均値が求められ、そして加算枚数が該平均値から所定以上小さい(または、大きい)か否かに応じて、色分けがされてもよい。
【0083】
例えば、検者によってマウス74aが操作され、正面画像上のスキャンライン26からいずれかが選択されると、断層画像表示部30に、選択されたスキャンラインに対応する断層画像が表示される。検者は断層画像を見て、好適に診断が行えるかを判断してもよい。例えば、検者は加算枚数が所定枚数に満たないスキャンライン(
図4における、実線のスキャンライン)を選択して対応する断層画像を確認することで、複数ある断層画像の中から、好適に診断を行うことが難しい可能性があるものについて、効率よく確認できる。言い換えれば、検者は必ずしも全ての断層画像を確認しなくても、好適に取得されなかった可能性がある断層画像を把握し、選択して確認できる。
【0084】
例えば、制御部70は、断層画像表示部30に表示される断層画像を、自動的に、順次切り替えてもよい。具体例として、正面画像上のスキャンライン26のうち、水平方向のスキャンライン26aと対応する断層画像をまず表示し、そして、時計回りに、各スキャンラインと対応する断層画像を順次切り替えて表示してもよい。このとき、加算枚数が少ない断層画像(すなわち、実線のスキャンラインと対応する断層画像)を表示する時間の長さを、点線のスキャンラインと対応する断層画像を表示する時間の長さよりも長くしてもよい。例えば、実線のスキャンラインと対応する断層画像を表示した際に、画像の切り替えを停止してもよい。例えば、実線のスキャンラインと対応する断層画像のみが、順次切り替えられて断層画像表示部30に表示されてもよい。
【0085】
本実施例において、ラジアルスキャンの複数のスキャンライン26のうち、検者によって選択された一部のスキャンラインについて選択的に再撮影(詳細は後述する)を行うことができる。例えば、検者は操作部74を操作して、制御部70に再撮影を実行させる。例えば、検者は実線のスキャンラインを選択して、断層画像表示部30に表示される断層画像を確認した上で、再撮影を実行させてもよいし、断層画像表示部30に表示される断層画像を確認せず、実線のスキャンラインと対応する断層画像について再撮影を実行させてもよい。以下の再撮影の説明においては、スキャンライン28の位置にて再撮影を行う場合を例として説明をする。
【0086】
例えば、検者によって、マウス74aが操作され、再撮影を行うスキャンラインが選択される。例えば、検者によって、実線のスキャンライン28が選択されると、制御部70は、目標位置グラフィック25の内、選択されたスキャンライン28を点滅させる。なお、ここでは選択されたスキャンラインと選択されていないスキャンラインが区別できるように、異なる態様で表わされればよい。例えば、選択されたスキャンラインのサイズや形状等が変更されてもよい。
【0087】
検者によって、再撮影を行うスキャンライン28の選択が完了し、再撮影スイッチ34が選択されると、制御部70は、選択されたスキャンライン28の撮影位置において、再撮影を行うために、モニタ75の表示を確認画面から撮影画面へと変更する。なお、本実施例においては、1つのスキャンラインの再撮影を行う構成としたがこれに限定されない。複数のスキャンラインをまとめて選択して、再撮影を行う構成としてもよい。この場合、例えば、複数のスキャンラインが選択され、選択されたスキャンラインが再撮影の候補として設定される。そして、再撮影スイッチ34が選択されると、候補として設定された全てのスキャンラインに対応する位置での、再撮影を行うようにする。
【0088】
再撮影を行う場合において、モニタ75には、正面画像表示部20と、断層画像表示部30が表示される。正面画像表示部20には、現在取得中の正面画像が表示されている。断層画像表示部30には、再撮影を行うスキャンラインとして選択されたスキャンライン28の位置で取得されている断層画像が表示される。
【0089】
このとき、被検眼の固視微動等によって、正面画像が走査位置(撮影位置)に対してずれた場合、走査位置を設定した位置と同一の位置の断層画像を取得するためには、走査位置を補正する必要がある。例えば、過去に撮影した際(ラジアルスキャン撮影時)のスキャンライン28の位置と、再撮影をする際のスキャンライン28の位置とで、撮影位置が異なる位置で撮影してしまうことがある。このため、制御部70は、トラッキング制御を行う。トラッキング制御としては、制御部70は、現在の正面画像と、メモリ72に記憶されたラジアルスキャンでの撮影開始時に取得した正面画像とを比較して位置ずれ量を得て、位置ずれ量を補正するように、光スキャナ108の2つのガルバノミラーを制御する方法が考えられる。例えば、トラッキング制御の方法としては、特開2014-83263号公報に記載の方法を参照してもよい。
【0090】
被検眼がずれた場合であっても、トラッキング制御によって、走査位置が補正され、撮影位置を設定した部位と同一の部位の断層画像が取得される。ここで、検者によって、図示無き撮影スイッチが選択されると、制御部70は、スキャンライン28の位置における断層画像を取得し、メモリ72に記憶させる。なお、複数のスキャンラインの位置において再撮影を行う場合、図示無き撮影スイッチが選択されると、各スキャンラインでの撮影が順に行われる。
【0091】
なお、上記トラッキング制御において、2つの画像間の位置ずれを検出する手法としては、上記記載の加算平均処理と同様にして、種々の画像処理手法(各種相関関数を用いる方法、フーリエ変換を利用する方法、特徴点のマッチングに基づく方法)を用いることが可能である。
【0092】
上記のようにして、再撮影が完了すると、制御部70は、モニタ75上の表示を撮影画面から確認画面へ変更する。制御部70は、再撮影を行った断層画像のデータと、再撮影前の断層画像のデータと、を置き換える。本実施例においては、スキャンライン28と対応する断層画像が、再撮影後の良好な断層画像と置き換えられる。
【0093】
なお、本実施例においては、再撮影を行った断層画像のデータと、再撮影前の断層画像のデータと、を置き換える構成としたが、これに限定されない。例えば、再撮影を行った断層画像のデータと、再撮影前の断層画像のデータと、を加算平均処理し、良好な断層画像を取得する構成としてもよい。
【0094】
検者は、再撮影が完了すると、決定スイッチ36を選択する。制御部70は、撮影を終了し、モニタ75の表示を確認画面から解析画面へと変更する。解析画面では、取得した画像とともに、断層画像の解析結果(例えば、層検出結果や層の厚みマップ等)が表示される。検者は解析結果を確認して、病変等の診断やフォローアップ撮影等の設定を行う。
【0095】
上記の説明では、加算枚数が少ないスキャンラインと対応する断層画像を確認し、再撮影を行う場合を説明した。しかし、例えば、検者は、加算枚数が少ないスキャンラインと対応する断層画像を確認した上で、再撮影を行う必要がないと判断する場合もある。一例として、検者が病変部位を正面画像から特定して、その部位について断層画像を観察する場合は、病変部位以外の部位については、画質が劣っていても診断に影響せず、再撮影を行う必要がないと判断される可能性も考えられる。
【0096】
再撮影を行わずに断層画像を保存する場合は、検者によって決定スイッチ36が選択され、制御部70は取得された断層画像をメモリ72に保存して、撮影を終了する。そして、上記と同様に、モニタ75の表示を確認画面から解析画面へと変更する。
【0097】
なお、必ずしも断層画像が断層画像表示部30に表示されて観察されることで、再撮影が行われるか否かの判断が行われるとは限らない。すなわち、スキャンラインの色と位置に基づいて、再撮影が行われるか否かの判断が、検者によって行われる場合もある。
【0098】
[変容例]
本実施例においては、制御部70は、スキャンラインによって断層画像の撮影位置を示す場合を説明したが、これに限定されない。例えば、
図5に示すように、撮影が行われた領域に図形80を重畳して表示することで、断層画像を撮影した位置を示してもよい。
図5は、スキャンパターンとして、矢印A方向に延びる1000本のスキャンラインによって構成される、マップスキャンが行われた場合の確認画面の一例を示す図である。もちろん、スキャンラインの本数は一例である。図形80は、半透明の四角形である。
図5における矢印Aは、スキャンパターンを説明するために便宜的に図面に記載したものである。また、1000本のスキャンラインは正面画像上に表示されても表示されなくてもよい。なお、図形80の形状は四角形に限定されず、円形等であってもよい。例えば、図形80の内側の領域について、色や、画像の明度といった表示態様を変更することで、断層画像を撮影した位置を示してもよい。その場合、必ずしも図形80の枠線は必要ない。
【0099】
上記のように撮影が行われた領域を示す場合、制御部70は、撮影の良否に関する情報に応じた態様で、該撮影が行われた領域を表示してもよい。一例として、撮影が行われた領域のうち、加算枚数が所定の枚数以上だった領域を緑色で、加算枚数が所定の枚数以下だった領域を赤色で表示してもよい。
図5において、点線で斜線が引かれている領域は、緑色で表示されている。また、
図5において、実線で斜線が引かれている領域は、赤色で表示されている。この場合、断層画像の撮影が行われた領域の色を確認することで、対応する断層画像の画質(すなわち、撮影の良否)を直感的に把握することができる。なお、色は撮影の良否に関する情報を示すための態様の一例であって、これに限定されない。
【0100】
また、上記のように断層画像の撮影が行われた領域を枠で示す場合、断層画像表示部30に表示する断層画像を設定する指標82が表示されてもよい。指標82は、例えば、光のスキャン方向(すなわち、矢印A方向)に延びる棒状の指標であり、図形80を横断するように表示される。その場合、例えば、指標82が配置された横断位置で取得された断層画像が断層画像表示部30に表示される。例えば、検者が操作部74を操作することによって指標82が縦方向に移動されると、指標82の位置に応じて、断層画像表示部30に表示される断層画像が変更される。
【0101】
ここで、指標82が表示される態様が、撮影の良否に応じて変更されてもよい。一例として、指標82は、加算枚数が所定以上の断層画像と対応する横断位置に配置される場合は、緑色で表示されてもよい。一方、加算枚数が所定未満の断層画像と対応する横断位置に配置される場合は、指標82は赤色で表示されてもよい。このように、断層画像表示部30に表示された断層画像の取得位置を示す指標の色が、撮影の良否に応じて変更されることで、検者は、断層画像と、撮影の良否の情報と、を直感的に把握しやすい。なお、色は撮影の良否を示すための表示態様の一例であって、これに限定されない。
【0102】
また、例えば、
図6に示すように、撮影の良否に関する情報を示すための指標85を、スキャンラインや、図形80とは別に表示してもよい。一例として、指標85は、マップ撮影が行われた場合に表示される、スキャン方向(矢印A方向)と直交する方向に延びる棒状の指標である。
図6において、指標85のうち斜線が付されている部分は赤色で表示されており、それ以外の部分は緑色で表示されている。この場合であっても検者は、指標85を、スキャンラインや図形80と併せて確認することで、断層画像を取得した位置と、その位置と対応する断層画像の撮影の良否と、を直感的に把握しやすい。なお、指標85は、撮影の良否に関する情報を示すための指標の一例であって、これに限定されない。また、指標85の色は、撮影の良否を示すための表示態様の一例であって、これに限定されない。
【0103】
例えば、撮影の良否に関する情報を示す指標が複数表示されてもよい。その場合、複数の指標が、それぞれ異なる情報を示してもよい。具体例として、図形80と、指標85とが同時に表示される場合を例に説明する。例えば、図形80は合成処理に用いられた断層画像の枚数に基づいて色分けされ、指標85は合成後の画像を解析して得られる、画質の評価値に基づいて色分けされてもよい。この場合、検者は複数の情報に基づいて撮影の良否を判別できる。例えば、加算枚数が少なくても画質が低くなければ撮影に成功していると判断される場合がある。
【0104】
上記実施例では、加算枚数が少なかった画像、すなわち良好に撮影されなかった断層画像について、再撮影を行う例を説明したが、これに限定されない。例えば、良好に撮影されなかった断層画像に対して、画像処理を行うことで、ノイズの除去(以下、ノイズ除去処理とする)を行ってもよい。一例として、機械学習アルゴリズムによって構築された数学モデルを用いることで、断層画像上のノイズ除去を行い、画質を向上させてもよい。より具体的には、WO20/003524に記載の方法を適用してもよい。この場合、再撮影を行うよりも、より短時間で画質の向上した断層画像を取得できる。なお、再撮影と、このノイズ除去処理と、のどちらが行われるかが選択可能であってもよい。その場合、例えば、確認画面上に再撮影とノイズ除去処理とのどちらかを選択するためのボタンが表示されてもよい。
【0105】
上記実施例では、正面画像上に取得位置グラフィックと良否情報を示す場合を例に説明したが、更にOCT画像を解析して得られる解析結果を示すグラフィックが、重畳して表示されてもよい。例えば、解析結果に応じた態様で該グラフィックが表示されてもよい。解析結果とは、例えば、被検眼の病変の有無に関わる情報(一例として、眼底の層厚に関する情報や、層構造の異常度を示す情報、等)である。なお、層構造の異常度は、画像中の組織を識別するための確率分布が取得される学習済みモデルに対し、3次元OCTデータを入力することで取得される確率分布に基づいて取得されてもよい(より詳しくは、特開2020-18794号公報を参照されたい)。例えば、解析結果とは、3次元モーションコントラストデータに基づいて取得される、血管密度に関する情報であってもよい。なお、上記の解析結果は一例であって、これらに限定されない。
【0106】
OCT画像の解析結果を示すグラフィックが更に正面画像上に重畳して表示されることで、検者は、病変がある可能性が高い箇所と対応する断層画像の撮影の良否を直感的に把握しやすい。よって、よりスムーズに診断を行うことができる。
【0107】
なお、正面画像上にOCT画像の解析結果を示すグラフィックを表示する代わりに、正面画像自体が、OCT画像の解析結果を反映した解析マップとして表示され、その上に取得位置グラフィック及び良否情報が重畳して表示されてもよい。その場合、正面画像は、被検眼に関する計測結果の二次元分布を示す2次元グラフであってもよい。より具体的には、正面画像は、計測値に応じて色分けされたカラーマップであってもよい。なお、上記の解析マップは一例であって、これに限定されない。
【0108】
上記実施例においては、正面画像上で良否情報を視覚的に表現する(例えば、スキャンライン26の色分け、等)場合を説明した。しかし、良否情報を取得位置毎の取得位置グラフィックと位置的に対応付けて視覚的に表現する方法はこれに限定されない。例えば、良否情報は、該良否情報と対応する取得位置グラフィックが、他の取得位置グラフィックよりも近い位置に表示されればよい。
【0109】
例えば、撮影の良否に関する情報(すなわち、良否情報)は正面画像上でなくとも、検者がOCTの取得位置を取得位置グラフィックによって確認した際に、一体的に確認できる範囲で視覚的に表現されてもよい。その場合の一例を、
図7に示す。
図7は、
図5及び
図6と同様に、マップスキャン後の確認画面の一例を示す図である。
図7では、撮影の良否に関する情報を示す指標85が、正面画像の横に表示されている。このような場合であっても、検者は正面画像を確認すれば、断層画像の取得位置と撮影の良否に関する情報とを一体的に確認できるため、断層画像を取得した位置と、断層画像の撮影の良否とを直感的に把握することができる。
【符号の説明】
【0110】
10 OCTデバイス
26 スキャンライン
70 制御部
75 モニタ