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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070789
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】燃料の製造方法及び固形燃料
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/48 20060101AFI20230515BHJP
   C10L 5/44 20060101ALI20230515BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20230515BHJP
   B09B 3/30 20220101ALI20230515BHJP
【FI】
C10L5/48
C10L5/44
B29B17/04 ZAB
B09B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183127
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】591212028
【氏名又は名称】信光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 亮治
(72)【発明者】
【氏名】荒井 和章
(72)【発明者】
【氏名】荒井 将尋
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 演夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正彦
(72)【発明者】
【氏名】菅原 二三男
(72)【発明者】
【氏名】柿原 敏明
(72)【発明者】
【氏名】難波 茂一
【テーマコード(参考)】
4D004
4F401
4H015
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA12
4D004BA03
4D004CA04
4D004CA08
4D004CA40
4D004CA42
4D004CA48
4D004CC03
4D004DA03
4D004DA20
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA17
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
4F401AA26
4F401AC10
4F401AC11
4F401BA04
4F401CA14
4F401FA08Z
4H015AA02
4H015AA03
4H015AA17
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA09
4H015BA13
4H015BB01
4H015BB03
4H015BB04
4H015BB10
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】 各種機器のエネルギー源に利用可能にして汎用性及び発展性を高めるとともに、繁雑な処理工程を不要にして容易かつ低コストに実施可能にする。
【解決手段】 廃菌床Cを解した後、乾燥させ、粒状化した廃菌床粒Cgを得る廃菌床粒状化処理工程と、使用済の廃プラスチックPを粉砕し、廃プラスチックPを粒状化した廃プラスチック粒Pgを得る廃プラスチック粒状化処理工程と、廃菌床粒状化処理工程から得た廃菌床粒Cgと廃プラスチック粒状化処理工程から得た廃プラスチック粒Pgを、所定の配合比で混合してペレット原体を生成するペレット原体生成工程と、このペレット原体生成工程から得たペレット原体から所定の大きさを有する固形燃料1となる燃料ペレットEpを生成する燃料ペレット生成工程とを少なくとも具備する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコを栽培した後の廃菌床を用いた燃料の製造方法であって、前記廃菌床を解し、かつ乾燥させた後、少なくとも前記廃菌床を粒状化した廃菌床粒を得る廃菌床粒状化処理工程と、使用済の廃プラスチックの粉砕後、少なくとも前記廃プラスチックを粒状化した廃プラスチック粒を得る廃プラスチック粒状化処理工程と、前記廃菌床粒状化処理工程から得た廃菌床粒と前記廃プラスチック粒状化処理工程から得た廃プラスチック粒を所定の配合比で混合してペレット材料を得る混合工程と、この混合工程から得たペレット材料から所定の大きさを有する固形の燃料ペレットを生成する燃料ペレット生成工程とを少なくとも具備してなることを特徴とする燃料の製造方法。
【請求項2】
前記廃菌床は、おが屑又はコーンコブを主成分としたキノコ栽培後のキノコ培地を用いることを特徴とする請求項1記載の燃料の製造方法。
【請求項3】
前記廃菌床粒は、大きさとして、2-30〔メッシュ〕の範囲に選定することを特徴とする請求項1又は2記載の燃料の製造方法。
【請求項4】
前記廃プラスチック粒は、大きさとして、1-30〔mm〕の範囲に選定することを特徴とする請求項1記載の燃料の製造方法。
【請求項5】
前記所定の配合比は、前記廃菌床粒と前記廃プラスチック粒の全体量を100〔重量%〕としたとき、前記廃菌床粒の配合量を30-70〔重量%〕の範囲に選定し、かつ前記廃プラスチック粒の配合量を30-70〔重量%〕の範囲に選定することを特徴とする請求項1記載の燃料の製造方法。
【請求項6】
前記燃料ペレット生成工程は、前記燃料ペレットを生成する生成時の加熱温度を、80-140〔℃〕の範囲に設定することを特徴とする請求項1記載の燃料の製造方法。
【請求項7】
前記混合工程は、添加剤として所定量の二酸化炭素削減剤を配合することを特徴とする請求項1記載の燃料の製造方法。
【請求項8】
キノコを栽培した後の廃菌床を含有する固形燃料であって、前記廃菌床を粒状化した廃菌床粒と使用済の廃プラスチックを粒状化した廃プラスチック粒を少なくとも所定の配合比で混合するとともに、固形の燃料ペレットとして生成してなることを特徴とする固形燃料。
【請求項9】
前記所定の配合比は、前記廃菌床粒と前記廃プラスチック粒の全体量を100〔重量%〕としたとき、前記廃菌床粒の配合量を30-70〔重量%〕の範囲に選定し、かつ前記廃プラスチック粒の配合量を30-70〔重量%〕の範囲に選定することを特徴とする請求項8記載の固形燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キノコを栽培した後の廃菌床(廃培地)を用いた燃料の製造方法及び固形燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エノキタケ等のキノコをビン栽培するキノコ栽培では、キノコの収穫後に大量の廃培地が発生するため、そのまま廃棄した場合には、地面などの上に山積放置されてしまう問題がある。
【0003】
このため、廃培地を、飼料や肥料等の他の用途に再利用する技術も提案されており、この種の技術としては、特許文献1で開示される飼料の製造方法及び特許文献2で開示されるキノコ廃培地等を利用した飼肥料等の製造方法が知られている。特許文献1の飼料の製造方法は、嗜好性の向上により、家畜の食欲を高めるとともに、消化を極めて良好にすることを目的とするものであり、具体的には、きのこを栽培した後の廃培地、即ち、コーンコブ,オカラ等を主成分として含む廃培地に、少なくとも有機酸生成菌を添加し、常温を含む所定温度の雰囲気中で所定時間放置して発酵させ、発酵した後の廃培地を直接飼料として利用するようにしたものである。また、特許文献2のキノコ廃培地等を利用した飼肥料等の製造方法は、キノコ栽培後のキノコ廃培地を飼料、肥料、土壌改良剤等とするのに好適な生成物に変換し、その有効利用を図ることを目的としたものであり、具体的には、蘇生の方向性を発揮する好気性微生物と嫌気性微生物とを抗酸化物質の存在下による特殊な方法で共存させた有用性微生物群(EM菌)を利用してキノコ栽培後のキノコ廃培地を発酵分解するとともに、キノコ廃培地に対して米ヌカ、油力ス、魚力ス、その他を混合することで水分含有率が35%前後となるよう調整したものである。
【0004】
一方、廃培地を焼却、即ち、動力源(燃料)として利用する方法も特許文献3で開示されるキノコ廃培地の処理方法(キノコ廃培地乾燥装置)が知られている。この処理方法(乾燥装置)は、廃熱蒸気を取得して廃熱ボイラーの動力源等として利用し、きのこ廃培地の焼却処理(乾燥)を確実に行うことを目的としたものであり、具体的には、きのこ栽培後に発生した廃培地が投入される受入ホッパからの廃培地と後記戻りコンベアからの乾燥粉体とを含水率調整のために混合する混合機と、混合機からの混合廃培地を粉砕する流動乾燥粉砕機と、乾粉回収機で回収された乾燥粉体を2系統に配分し、1系統の乾燥粉体について混合機に搬送する戻りコンベアと、他の1系統の乾燥粉体について粗状と細状に篩い分けを行う振動篩機と、振動篩機による細状乾燥粉体を比重選別して乾燥製品を得る比重選別機とを備える一方、スクリューコンベアからの粗状乾燥粉体を気体と焼却灰に分離するサイクロン焼却機とを設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-167033号公報
【特許文献2】特開平8-000181号公報
【特許文献3】特開2016-5822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した廃培地の再利用方法、特に、特許文献3で開示される動力源(燃料)として利用する方法は、次のような問題点があった。
【0007】
第一に、基本的には、廃培地を乾燥させ、直接焼却して利用するものである。即ち、同文献3に開示されるように、サイクロン焼却機の動力源として使用し、そのサイクロン焼却機との熱交換による廃熱ボイラーに利用できるに過ぎないため、他のボイラーやストーブ等の各種機器の燃料(エネルギー源)として利用できない。結局、汎用的な燃料として構築できないなど、汎用性及び発展性に欠ける。
【0008】
第二に、燃焼させた際に生じる熱量を利用するため、エネルギー効率や発熱量の観点からは、必ずしも良好な燃料とは言えない。即ち、基本的には、廃棄物を直接燃焼させる焼却処理の範疇に過ぎないため、燃料類の商品として商業的に販売することができない。しかも、可燃ごみを蒸し焼きにしてごみ炭にする工程が必要になるなど、処理設備が大掛かりとなり、全体の処理コストが無視できない。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した燃料の製造方法及び固形燃料の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る燃料の製造方法は、上述した課題を解決するため、キノコMを栽培した後の廃菌床Cを用いて燃料を製造するに際し、廃菌床Cを解した後、乾燥させ、粒状化した廃菌床粒Cgを得る廃菌床粒状化処理工程(S4-S7)と、使用済の廃プラスチックPを粉砕し、廃プラスチックPを粒状化した廃プラスチック粒Pgを得る廃プラスチック粒状化処理工程(S8-S10)と、廃菌床粒状化処理工程(S4-S7)から得た廃菌床粒Cgと廃プラスチック粒状化処理工程(S8-S10)から得た廃プラスチック粒Pgを、所定の配合比で混合してペレット原体を生成するペレット原体生成工程(S12-S14)と、このペレット原体生成工程(S12-S14)から得たペレット原体から所定の大きさを有する固形燃料1となる燃料ペレットEpを生成する燃料ペレット生成工程(S15-S16)とを少なくとも具備してなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る固形燃料1は、上述した課題を解決するため、キノコMを栽培した後の廃菌床Cを含有する固形燃料であって、廃菌床Cを粒状化した廃菌床粒Cgと使用済の廃プラスチックPを粒状化した廃プラスチック粒Pgを少なくとも所定の配合比で混合し、固形の燃料ペレットEpとして生成してなることを特徴とする。
【0012】
一方、本発明は、発明の好適な態様により、燃料を製造するに際して、廃菌床Cは、おが屑又はコーンコブを主成分としたキノコ栽培後の廃培地を用いることができる。さらに、廃菌床粒Cgは、大きさWmとして、2-30〔メッシュ〕の範囲に選定することが望ましいとともに、廃プラスチック粒Pgは、大きさWpとして、1-30〔mm〕の範囲に選定することが望ましい。また、所定の配合比は、廃菌床粒Cgと廃プラスチック粒Pgの全体量を100〔重量%〕としたとき、廃菌床粒Cgの配合量を30-70〔重量%〕の範囲に選定し、かつ廃プラスチック粒Pgの配合量を30-70〔重量%〕の範囲に選定することができる。なお、ペレット原体生成工程(S12-S14)では、生成時の加熱温度を、80-140〔℃〕の範囲に設定することが望ましい。さらに、ペレット原体生成工程(S12-S14)では、添加剤として所定量の二酸化炭素削減剤を配合することが望ましい(S11-S12)。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に係る燃料の製造方法及び固形燃料1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 固形燃料1は、廃菌床Cを粒状化した廃菌床粒Cgと使用済の廃プラスチックPを粒状化した廃プラスチック粒Pgを、所定の配合比で混合するとともに、固形の燃料ペレットEpとして生成してなるため、ボイラーやストーブ等の各種機器のエネルギー源(動力源)として利用できるなど、汎用性及び発展性に優れる。しかも、廃プラスチック粒Pgを部分的に含むため、エネルギー効率や発熱量の観点から良好な燃料として構築できるため、燃料商品として商業的に販売することができる。
【0015】
(2) 大掛かりな設備や繁雑な処理工程が不要になるため、容易かつ低コストに実施することができるとともに、社会的な問題になっている廃プラスチックや廃培地を有効に再利用できるとともに、廃プラスチック及び廃培地を含む廃棄物の削減に寄与することができる。
【0016】
(3) 好適な態様により、燃料を製造するに際し、廃菌床Cとして、おが屑又はコーンコブを主成分としたキノコ栽培後の廃培地を用いれば、広く普及している一般的なキノコ培地(廃培地)を利用できるため、発明の良好なパフォーマンスを得る観点から最適な形態として実施できる。
【0017】
(4) 好適な態様により、燃料を製造するに際し、廃菌床粒Cgの大きさWmを、2-30〔メッシュ〕の範囲に選定すれば、廃菌床Cを解し、かつ乾燥させて得られる廃菌床中に、最も多く含まれる廃菌床粒Cgをそのまま利用できるため、粉砕処理等の別途の処理工程を不要にできる。即ち、そのまま篩にかける等の選別工程のみで実施できるため、処理工程を削減しつつ目的の廃菌床粒Cgを効率的に得ることができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、燃料を製造するに際し、廃プラスチック粒Pgの大きさWpを、1-4〔mm〕の範囲に選定すれば、ペレット原体生成工程における加熱温度と併せ、良質な燃焼ペレットEpを生成する観点から最適な態様として実施できる。
【0019】
(6) 好適な態様により、所定の配合比を設定するに際し、廃菌床粒Cgと廃プラスチック粒Pgの全体量を100〔重量%〕としたとき、廃菌床粒Cgの配合量を30-70〔重量%〕の範囲に選定し、かつ廃プラスチック粒Pgの配合量を30-70〔重量%〕の範囲に選定すれば、十分な燃焼効率を確保する観点から望ましい配合比を設定できるとともに、燃焼効率の最適化を容易に図ることができる。
【0020】
(7) 好適な態様により、ペレット原体生成工程(S12-S14)における生成時の加熱温度を、80-140〔℃〕の範囲に設定すれば、特に、廃プラスチック粒Pgの良好な粘性状態を確保できるため、燃料ペレットEpを生成の観点から最適な態様として実施することができる。
【0021】
(8) 好適な態様により、ペレット原体生成工程(S12-S14)において、添加剤として所定量の二酸化炭素削減剤を配合すれば、固形燃料1の燃焼時における二酸化炭素の発生を効果的に抑制できるため、使用時の二酸化炭素排出削減に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の好適実施形態に係る燃料の製造方法を順を追って説明するためのフローチャート、
図2】同燃料の製造方法に使用する廃菌床粒の説明図、
図3】同燃料の製造方法に使用する廃プラスチック粒の説明図、
図4】本発明の好適実施形態に係る固形燃料(燃料ペレット)の外観図、
図5】同固形燃料の総発熱量を示す棒グラフ、
図6】同固形燃料の廃菌床粒の大きさ対総発熱量の相関関係を示す特性グラフ、
図7】同固形燃料を含む各種燃料を比較して示す総発熱量の棒グラフ、
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
まず、本実施形態に係る燃料(固形燃料Ep)の製造方法について、図2図4を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0025】
固形燃料Epの製造に際しては、第一の材料として、キノコMを栽培した後の廃菌床Cを用意する(ステップS1)。また、第二の材料として、使用済の廃プラスチックPを用意する(ステップS2)。
【0026】
第一の材料となる廃菌床Cには、おが屑又はコーンコブを主成分としたキノコ培地(廃培地)を用いることができる。廃菌床Cとして、おが屑又はコーンコブを主成分とした廃培地を用いれば、広く普及している一般的なキノコ培地を利用できるため、発明の良好なパフォーマンスを得る観点から最適な形態として実施できる。このような廃菌床Cは、キノコ栽培農家等から廃棄物として回収することができる。
【0027】
図2は、キノコMとして、仮想線で示すエノキタケMeをビン栽培した後のおが屑Rを用いた廃菌床(廃培地)Cを示す。おが屑Rには、広葉樹を用いたおが屑と杉等の針葉樹を用いたおが屑がある。一般に、広葉樹のおが屑は、シイタケ,ナメコ,マイタケ等に用いられ、針葉樹のおが屑は、ヒラタケ,エリンギ,ブナシメジ,エノキタケ等に用いられる。また、他のキノコ培地としては、コーンコブ(トウモロコシの穂軸)を主成分とした廃菌床Cも好適である。
【0028】
さらに、廃菌床Cを用意したなら、廃菌床Cに対する粒状化処理を行う。最初に、前処理工程を実施する(ステップS3)。この前処理工程は、必須の工程ではないが、例えば、廃菌床Cに含まれる希少糖を高純度で採取する糖化処理等を実施することができる。次いで、回収した廃菌床Cを細かく解す、解し工程を実施する(ステップS4)。次いで、解した廃菌床Cは、必要に応じて、洗浄工程により洗浄処理を行う(ステップS5)。燃料としての機能のみを得る限りでは、洗浄処理は必要ないが、商品性をより高める観点から脱色や脱臭等を目的として行うことができる。洗浄は、解した廃菌床Cを水(又は60〔℃〕の温水)に収容し、10分間程度の静置洗浄又は回転洗浄を行うことができる。この場合、廃菌床Cと水の容量比は、1:1にすることが望ましい。また、必要により塩素系漂白剤の水溶液により脱色処理してもよい。なお、次亜塩素酸ストリウム水溶液を使用する場合、濃度は、0.02-0.1〔%〕、望ましくは0.05〔%〕程度に調製する。洗浄した場合、5分間の遠心分離を行って濾別することが望ましい。
【0029】
次いで、乾燥工程により乾燥処理を行う(ステップS6)。未処理の廃菌床Cの含水率は、通常、60〔%〕であるため、乾燥処理により、含水率を5-20〔重量%〕に低下させる。なお、乾燥方法は、特定の方法に限定されるものでなく、天日乾燥,熱風乾燥,接触乾燥,赤外線乾燥等の公知の乾燥方法を利用できる。
【0030】
解し及び乾燥した後の廃菌床Cは、選別工程(粒状化処理工程)により選別処理を行う(ステップS7)。即ち、篩等を利用し、図2に示すように、大きさWmが2-30〔メッシュ〕の範囲、より望ましくは6-20〔メッシュ〕の範囲となる廃菌床粒Cgを確保する。具体的には、6〔メッシュ〕の篩にかけて、6〔メッシュ〕よりも小さい廃菌床Cや小石等の異物を除去するとともに、この後、20〔メッシュ〕の篩にかけることにより、20〔メッシュ〕よりも大きい廃菌床Cや異物を篩上に残して除去する。図2は粒状化した廃菌床粒Cgを模式的なイメージで示す。
【0031】
このように、廃菌床粒Cgの大きさWmを、2-30〔メッシュ〕の範囲に選定すれば、廃菌床Cを解し、かつ乾燥させて得られる廃菌床中に、最も多く含まれる廃菌床粒Cgをそのまま利用できるため、粉砕処理等の別途の処理工程を不要にできる。即ち、そのまま篩にかける等の選別工程のみで実施できるため、処理工程を削減しつつ目的の廃菌床粒Cgを効率的に得ることができる。
【0032】
これにより、廃菌床Cを粒状化した目的の廃菌床粒Cgを得ることができる。したがって、上述したステップS4-S7が、廃菌床Cを解した後、乾燥させ、粒状化した廃菌床粒Cgを得る廃菌床粒状化処理工程となり、特に、ステップS7の選別工程が廃菌床粒Cgを得るための実質的な粒状化処理工程となる。
【0033】
一方、第二の材料となる使用済の廃プラスチックPには、例えば、廃プラ回収業者が回収した図3に示す様々な種類のプラスチック容器やプラスチックボトル等のプラスチック廃棄物から選別して使用することができる。使用できる廃プラスチックPは、特に限定されるものではなく、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET),ポリエチレン樹脂(PE),ポリプロピレン樹脂(PP),ポリスチレン樹脂(PS),ポリカーボネート樹脂(PC),アクリルブタジェンスチレン樹脂(ABS),ポリアミド樹脂(PA),ポリウレタン(PU)等の各種プラスチック類が使用可能である。
【0034】
そして、廃プラスチックPについても必要な粒状化処理を行う。まず、裁断工程により廃プラスチックPに対する裁断処理を行う(ステップS8)。裁断処理では、裁断機を用いて廃プラスチックPを比較的粗い断片に裁断する。次いで、裁断した廃プラスチックPは、粉砕機を用いた粉砕工程により、大きさが1-30〔mm〕の範囲、望ましくは3-6〔mm〕となる大きさWpに粉砕処理する(ステップS9)。図3は、粒状化した廃プラスチック粒Pgを模式的なイメージで示す。図3中、廃プラスチック粒Pgの大きさWpは、1-30〔mm〕の範囲となる。
【0035】
このように、廃プラスチック粒Pgの大きさWpを、1-30〔mm〕の範囲に選定すれば、ペレット原体生成工程における加熱温度と併せ、良質な燃焼ペレットEpを生成する観点から最適な態様として実施できる。
【0036】
なお、粉砕処理した1-30〔mm〕の大きさの廃プラスチック粒は、目的の廃プラスチック粒Pgとして用いることができるが、後述するペレット原体生成工程において、廃プラスチックPの種類によっては大きすぎる場合がある。このため、廃菌床粒Cgとの混ざり状態をより良好にするため、粉状化機を用いた粉状化工程により、更に、細かな廃プラスチック粒Pgとなる粉状化処理を行ってもよい(ステップS10)。この場合、粉状化工程は、粉砕工程の一部となる。したがって、上述したステップS8-S10は、使用済の廃プラスチックPを粉砕し、廃プラスチックPを粒状化した廃プラスチック粒Pgを得る廃プラスチック粒状化処理工程となる。
【0037】
他方、廃菌床粒Cgと廃プラスチック粒Pgが得られたなら、廃菌床粒Cgと廃プラスチック粒Pgを所定の配合比で配合する(ステップS12)。配合比は、廃菌床粒Cgと廃プラスチック粒Pgの全体量を100〔重量%〕としたとき、廃菌床粒Cgの配合量を30-70〔重量%〕の範囲に選定し、かつ廃プラスチック粒Pgの配合量を30-70〔重量%〕の範囲に選定する。本実施形態では、廃菌床粒Cgの配合量を50〔重量%〕に選定し、かつ廃プラスチック粒Pgの配合量を50〔重量%〕に選定した。このような配合比に選定すれば、十分な燃焼効率を確保する観点から望ましい配合比を設定できるとともに、燃焼効率の最適化を容易に図ることができる。
【0038】
また、配合工程では、添加剤として所定量の二酸化炭素削減剤を配合することが望ましい(ステップS11,S12)。二酸化炭素削減剤には、二酸化炭素吸収剤を用いることができる。この二酸化炭素吸収剤は、二酸化炭素を吸収する多孔質無機化合物を発泡緩衝材に添加したものであり、燃焼時の高温下で二酸化炭素と反応して炭酸塩となる。この結果、二酸化炭素を大気中に放出することなく灰として残留させることができる。この二酸化炭素吸収剤を使用する場合には、廃菌床粒Cgと廃プラスチック粒Pgの全体量に対して、0.01-10〔重量%〕の配合量を添加することが望ましい。
【0039】
この配合工程は、後述するペレット原体生成工程の一部となる。このように、ペレット原体生成工程において、添加剤として所定量の二酸化炭素削減剤を配合すれば、
後述する固形燃料1の燃焼時における二酸化炭素の発生を効果的に抑制できるため、使用時の二酸化炭素排出削減に寄与できる。
【0040】
そして、配合工程により、廃菌床粒Cg,廃プラスチック粒Pg及び二酸化炭素削減剤を配合したなら、混合処理工程により十分に混合及び撹拌を行う(ステップS13)。これにより、均一なペレット原材料を得ることができる。次いで、ペレット原体生成工程により、ペレット原体を生成する(ステップS14)。ペレット原体は、図4に示す燃料ペレットEp…を得るための原体であり、ペレット用抽出機,ペレタイザー,押出成形機等を利用して生成することができる。
【0041】
一例として、押出成形機を用いる場合、混合処理工程で得られたペレット原材料を、押出成形機のホッパーに投入し、所定の温度により加熱処理及び混練処理を行うとともに、先端のノズルから所定の径を有するペレット原体を押出し処理する。これにより、線状の連続したペレット原体が生成される。この場合、ペレット原体生成工程における生成時の加熱温度は、80-140〔℃〕の範囲に設定することが望ましい。このような加熱温度を設定すれば、特に、廃プラスチック粒Pgの良好な粘性状態を確保できるため、燃料ペレットEpを生成の観点から最適な態様として実施することができる。
【0042】
また、押出成形機から押出された線状のペレット原体は、直ちに、冷却工程により冷却処理される(ステップS15)。冷却工程では、線状のペレット原体を、冷却槽を通過させることにより冷却処理する。そして、ペレット原体がある程度硬化したなら、ペレット製作工程、即ち、カッティング工程により、ペレット原体を一定長さ単位でカッティング処理する(ステップS16)。したがって、ペレット原体の硬化状態は、カッティング処理を良好に行うことができるように考慮する。
【0043】
これにより、図4に示す目的の燃料ペレットEp…を得ることができる。この燃料ペレットEp…の集合体が、本発明(本実施形態)により製造される固形燃料1となる。この場合、燃料ペレットEpは、図4に示すように、直径Ldが6〔mm〕,軸方向長さLeが20〔mm〕となり、基本的な大きさ及び形状は、「日本木質ペレット協会」の“木質ペレット品質規格”に準じて設定される。また、得られた固形燃料1の品質検査について、「一般財団法人上越環境科学センター」に依頼した結果、直径,長さ,密度,水分,微粉,機械的耐久性,発熱量,添加物,灰分,硫黄,窒素,塩素,重金属(ヒ素,カドニウム,全クロム,銅,水銀,ニッケル,鉛,亜鉛)の全項目において“木質ペレット品質規格”の基準を満たした。
【0044】
図5図7は、本実施形態に係る製造方法により得られた固形燃料1の性能を確認するための検証結果を示す。
【0045】
図5は、本実施形態に係る固形燃料1の総発熱量〔kcal/kg〕を示したものであり、Piは、廃菌床粒Cgを50〔重量%〕と廃プラスチック粒Pgを50〔重量%〕含有させた本実施形態に係る固形燃料1の総発熱量を示す。また、Prは、比較例として示す廃菌床粒Cgを100〔重量%〕として生成した固形燃料の総発熱量である。
【0046】
図5から明らかなように、本実施形態に係る固形燃料1の総発熱量Piは、8196〔kcal/kg〕であるのに対して、比較例として示した固形燃料の総発熱量Prは、4474〔kcal/kg〕であり、本実施形態に係る固形燃料1は、廃菌床粒Cgのみの場合に比べて、概ね二倍近い総発熱量が得られた。
【0047】
図6は、廃菌床粒Cgを50〔重量%〕と廃プラスチック粒Pgを50〔重量%〕含有する固形燃料1を生成するとともに、廃菌床粒Cgの大きさを0.5-3.5〔mm〕の範囲で変更して総発熱量の大きさを検証した特性グラフである。
【0048】
図6から明らかなように、廃菌床粒Cgの大きさは、小さい程、総発熱量は高くなる傾向はあるものの、総発熱量の全体に対しては、さほど大きく影響しないことを確認できる。したがって、廃菌床粒Cgの大きさは、製作性やコスト性などを考慮して選定することが可能である。
【0049】
図7は、各種燃料の総発熱量〔kcal/kg〕を示したものである。図7中、「A」はコーンコブを主成分とした廃菌床の廃菌床粒Cgを50〔重量%〕にPE(ポリエチレン)の廃プラスチック粒Pgを50〔重量%〕配合した本実施形態に係る固形燃料1、「B」はおが屑(杉)を主成分とした廃菌床の廃菌床粒Cgを50〔重量%〕にPEの廃プラスチック粒Pgを50〔重量%〕配合した本実施形態に係る固形燃料1、「C」はおが屑(杉)を主成分とした廃菌床Cの廃菌床粒Cgを100〔重量%〕とした固形燃料、「R1」は国産石炭、「R2」は発電用輸入石炭、「R3」はB重油、「R4」は発電用原油をそれぞれ示している。
【0050】
図7から明らかなように、本実施形態に係る固形燃料1となる「A」及び「B」は、概ね7500-7900〔kcal/kg〕の総発熱量を得られるとともに、比較例として挙げた「R1」及び「R2」の石炭の総発熱量は、概ね5792-6231〔kcal/kg〕となり、「R3」及び「R4」の油類の総発熱量は、概ね9651-9436〔kcal/kg〕となる。したがって、本実施形態に係る固形燃料1は、発熱量の観点からは、石炭と油類の中間的な燃料として利用可能である。
【0051】
このように、本実施形態に係る燃料の製造方法及び同製造方法により得られる固形燃料1によれば、基本的な手法として、廃菌床Cを解した後、乾燥させ、粒状化した廃菌床粒Cgを得る廃菌床粒状化処理工程と、使用済の廃プラスチックPを粉砕し、廃プラスチックPを粒状化した廃プラスチック粒Pgを得る廃プラスチック粒状化処理工程と、廃菌床粒状化処理工程から得た廃菌床粒Cgと廃プラスチック粒状化処理工程から得た廃プラスチック粒Pgを、所定の配合比で混合してペレット原体を生成するペレット原体生成工程と、このペレット原体生成工程から得たペレット原体から所定の大きさを有する固形燃料1となる燃料ペレットEpを生成する燃料ペレット生成工程とを少なくとも具備してなるため、ボイラーやストーブ等の各種機器のエネルギー源(動力源)として利用できるなど、汎用性及び発展性に優れる。しかも、廃プラスチック粒Pgを部分的に含むため、エネルギー効率や発熱量の観点から良好な燃料として構築できるため、燃料商品として商業的に販売することができる。
【0052】
また、大掛かりな設備や繁雑な処理工程が不要になるため、容易かつ低コストに実施することができるとともに、社会的な問題になっている廃プラスチックや廃培地を有効に再利用できるとともに、廃プラスチック及び廃培地を含む廃棄物の削減に寄与することができる。
【0053】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0054】
例えば、廃菌床Cは、おが屑又はコーンコブを主成分としたキノコ栽培後のキノコ培地(廃培地)を用いることが望ましいが、主成分として燃焼可能な他の成分(オカラ,籾殻等)を用いた廃菌床Cを排除するものではない。また、廃菌床粒Cgの大きさWmとして、2-30〔メッシュ〕の範囲に選定することが望ましいが、使用目的等に応じて他の範囲に選定してもよい。同様に、廃プラスチック粒Pgの大きさWpとして、1-30〔mm〕の範囲に選定することが望ましいが、使用目的等に応じて他の範囲に選定してもよい。一方、所定の配合比として、廃菌床粒Cgと廃プラスチック粒Pgの全体量を100〔重量%〕としたとき、廃菌床粒Cgの配合量を30-70〔重量%〕の範囲に選定し、かつ廃プラスチック粒Pgの配合量を30-70〔重量%〕の範囲に選定することが望ましいが、使用目的等に応じて他の範囲に選定することを排除するものではない。ペレット原体生成工程において、生成時の加熱温度を、80-140〔℃〕の範囲に設定することが好適であるが、必須の構成要素となるものではない。さらに、添加剤として所定量の二酸化炭素削減剤を配合することが望ましいが、他の手段、例えば、燃焼後の排気ガスから二酸化炭素を除去する機器を備える場合などは、必ずしも配合することを要しない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る燃料の製造方法及び固形燃料は、ボイラー,ストーブ,発電等の各種エネルギー源として利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1:固形燃料,M:キノコ,C:廃菌床,Cg:廃菌床粒,P:廃プラスチック,Pg:廃プラスチック粒,Ep:燃料ペレット,Wm:廃菌床粒の大きさ,Wp:廃プラスチック粒の大きさ,(S4-S7):廃菌床粒状化処理工程,(S8-S10):廃プラスチック粒状化処理工程,(S12-S14):ペレット原体生成工程,(S15-S16):燃料ペレット生成工程,(S11):二酸化炭素削減剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7