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特開2023-70791接合材、部材の接合構造、および、接合材付き木製部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070791
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】接合材、部材の接合構造、および、接合材付き木製部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/48 20060101AFI20230515BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20230515BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20230515BHJP
   F16B 7/18 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
E04B1/48 J
F16B7/20 A
F16B35/00 T
F16B7/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183129
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】507397766
【氏名又は名称】株式会社スクリムテックジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】河野 泰之
【テーマコード(参考)】
2E125
3J039
【Fターム(参考)】
2E125AF05
2E125AG13
2E125BB08
2E125BB33
2E125BD01
2E125BE07
2E125BF01
2E125CA79
2E125CA81
3J039AA01
3J039AA08
3J039BB03
3J039GA06
3J039GA07
3J039LA02
(57)【要約】
【課題】衝撃力等の力が加わった場合であっても充填剤の剥離を極力防止することができる接合材を提供する。
【解決手段】棒状の芯材19と、筒状に形成され芯材19が貫通するようにして芯材19の長手方向の中間部に設置される中間材21と、筒状に形成され外周面に凹凸が形成されており芯材19が貫通し中間材21に接するようにして芯材19の長手方向の一方の端側に設置される第1の定着部材23と、芯材19の長手方向の一方の端側であって第1の定着部材23よりもさらなる端側で第1の定着部材23に接するようにして芯材19に設置されている第1の端部材25とを有する接合材7。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製の部材に設けられている孔に挿入され、充填剤を介して前記木製の部材に定着される定着部と、
長手方向の一端で前記定着部の長手方向の一端を支持し、長手方向の他端部側の部位が前記定着部の長手方向の他端から延出しており、長手方向での引張荷重がかかったときの、前記定着部と前記充填剤との接合部にかかる応力を軽減するために、前記引張荷重によって弾性変形または塑性変形する変形部と、
を有する接合材。
【請求項2】
棒状の芯材と、
筒状に形成され、前記芯材が貫通するようにして前記芯材の長手方向の中間部に設置される中間材と、
筒状に形成され、外周面に凹凸が形成されており、前記芯材が貫通し、前記中間材に接するか前記中間材から僅かに離れるようにして、前記芯材の長手方向の一方の端側に設置される第1の定着部材と、
前記芯材の長手方向の一方の端側であって前記第1の定着部材よりもさらなる端側で、前記第1の定着部材に接するか前記第1の定着部材から僅かに離れるようにして、前記芯材に設置されている第1の端部材と、
を有する接合材。
【請求項3】
筒状に形成され、外周面に凹凸が形成されており、前記芯材が貫通し、前記中間材に接するか前記中間材から僅かに離れるようにして、前記芯材の長手方向の他方の端側に設置される第2の定着部材と、
前記芯材の長手方向の他方の端側であって前記第2の定着部材よりもさらなる端側で、前記第2の定着部材に接するか前記第2の定着部材から僅かに離れるようにして、前記芯材に設置されている第2の端部材と、
を有する請求項2に記載の接合材。
【請求項4】
孔が設けられている第1の木製の部材と、
孔が設けられており、前記孔と前記第1の木製の部材の孔とがつながるようにして、前記第1の木製の部材と接している第2の木製の部材と、
前記第1の木製の部材の孔と前記第2の木製の部材の孔とに入り込んでいる請求項3に記載の接合材と、
前記第1の木製の部材の孔と前記第2の木製の部材の孔とに充填されている充填剤と、
を有する部材の接合構造。
【請求項5】
前記充填剤は、前記第1の木製の部材の孔の内うちの、前記第1の定着部材と前記第1の端部材とが入り込んでいる部位と、前記第2の木製の部材の孔の内うちの、前記第2の定着部材と前記第2の端部材とが入り込んでいる部位とに充填されている請求項4に記載の部材の接合構造。
【請求項6】
前記芯材の長手方向の他方の端部には、金属製のコネクタに設けられている設置部に設置される被設置部が設けられている請求項2に記載の接合材。
【請求項7】
請求項6に記載の接合材と、
孔が設けられている木製の部材と、
前記中間材と前記第1の定着部材と前記第1の端部材とが前記木製の部材の孔に入り込んでおり、
前記被設置部が前記木製の部材から突出しており、
前記被設置部が前記金属製のコネクタの設置部に設置されており、前記金属製のコネクタが前記木製の部材に接している接合材付き木製部材。
【請求項8】
棒状の芯材と、
筒状に形成され、外周面に凹凸が形成されており、前記芯材が貫通するようにして、前記芯材の長手方向の一方の端側に設置される第1の定着部材と、
前記芯材の長手方向の一方の端側であって前記第1の定着部材よりもさらなる端側で、前記第1の定着部材に接するか前記第1の定着部材から僅かに離れるようにして、前記芯材に設置されている第1の端部材と、
を有する接合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材、部材の接合構造、および、接合材付き木製部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製のオスネジ材と接着剤とを用いた木製の部材の接合構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
従来の木製の部材の接合構造では、孔が設けられている一方の木製の部材と、孔が設けられている他方の木製の部材とを、各孔同士が通じるようにして、一方の木製の部材の端面と他方の木製の部材の端面とを合わせている。
【0004】
また、従来の木製の部材の接合構造では、オスネジ材の長手方向の一方の端部が一方の木製の部材の孔に入っており、オスネジ材長手方向の他方の端部が他方の木製の部材の孔に入っている。
【0005】
さらに、従来の木製の部材の接合構造では、各孔とオスネジ材との間に接着剤を充填している。これにより、一方の木製の部材と他方の木製の部材との接合強度を高めている。そして、たとえば、大きな力が木製の部材にかかっても、一方の木製の部材と他方の木製の部材との接合が維持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-227800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の木製の部材の接合構造において、木製の部材に力(たとえば衝撃力)がかかったときに、オスネジ材と接着剤との接合部、接着剤と木製の部材との接合部での接着剤(充填剤)の剥離を阻止することが重要である。
【0008】
本発明は、衝撃力等の力が加わった場合であっても充填剤の剥離を極力防止することができる部材の接合構造、この木製の部材の接合構造に使用される接合材接合材付き木製の部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様に係る接合材は、木製の部材に設けられている孔に挿入され、充填剤を介して前記木製の部材に定着される定着部と、長手方向の一端で前記定着部の長手方向の一端を支持し、長手方向の他端部側の部位が前記定着部の長手方向の他端から延出しており、長手方向での引張荷重がかかったときの、前記定着部と前記充填剤との接合部にかかる応力を軽減するために、前記引張荷重によって弾性変形または塑性変形する変形部とを有する接合材である。
【0010】
また、本発明の態様に係る接合材は、棒状の芯材と、筒状に形成され、前記芯材が貫通するようにして前記芯材の長手方向の中間部に設置される中間材と、筒状に形成され、外周面に凹凸が形成されており、前記芯材が貫通し、前記中間材に接するか前記中間材から僅かに離れるようにして、前記芯材の長手方向の一方の端側に設置される第1の定着部材と、前記芯材の長手方向の一方の端側であって前記第1の定着部材よりもさらなる端側で、前記第1の定着部材に接するか前記第1の定着部材から僅かに離れるようにして、前記芯材に設置されている第1の端部材と、を有する接合材である。
【0011】
また、本発明の態様に係る接合材は、筒状に形成され、外周面に凹凸が形成されており、前記芯材が貫通し、前記中間材に接するか前記中間材から僅かに離れるようにして、前記芯材の長手方向の他方の端側に設置される第2の定着部材と、前記芯材の長手方向の他方の端側であって前記第2の定着部材よりもさらなる端側で、前記第2の定着部材に接するか前記第2の定着部材から僅かに離れるようにして、前記芯材に設置されている第2の端部材とを有する接合材である。
【0012】
本発明の態様に係る部材の接合構造は、孔が設けられている第1の木製の部材と、孔が設けられており、前記孔と前記第1の木製の部材の孔とがつながるようにして、前記第1の木製の部材と接している第2の木製の部材と、前記第1の木製の部材の孔と前記第2の木製の部材の孔とに入り込んでいる前記接合材と、前記第1の木製の部材の孔と前記第2の木製の部材の孔とに充填されている充填剤とを有する部材の接合構造である。
【0013】
本発明の態様に係る部材の接合構造では、前記充填剤が、前記第1の木製の部材の孔の内うちの、前記第1の定着部材と前記第1の端部材とが入り込んでいる部位と、前記第2の木製の部材の孔の内うちの、前記第2の定着部材と前記第2の端部材とが入り込んでいる部位とに充填されている。
【0014】
また、本発明の態様に係る接合材では、前記芯材の長手方向の他方の端部には、金属製のコネクタに設けられている設置部に設置される被設置部が設けられている。
【0015】
本発明の態様に係る接合材付き木製部材は、前記接合材と、孔が設けられている木製の部材と、前記中間材と前記第1の定着部材と前記第1の端部材とが前記木製の部材の孔に入り込んでおり、前記被設置部が前記木製の部材から突出しており、前記被設置部が前記金属製のコネクタの設置部に設置されており、前記金属製のコネクタが前記木製の部材に接している接合材付き木製部材である。
【0016】
また、本発明の態様に係る接合材は、棒状の芯材と、筒状に形成され、外周面に凹凸が形成されており、前記芯材が貫通するようにして、前記芯材の長手方向の一方の端側に設置される第1の定着部材と、前記芯材の長手方向の一方の端側であって前記第1の定着部材よりもさらなる端側で、前記第1の定着部材に接するか前記第1の定着部材から僅かに離れるようにして、前記芯材に設置されている第1の端部材とを有する接合材である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、衝撃力等の力が加わった場合であっても充填剤の剥離を極力防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る部材の接合構造に使用される接合材の分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る部材の接合構造に使用される接合材の斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る部材の接合構造の斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る部材の接合構造の断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る部材の接合構造に使用される接合材の断面図であり、(b)は(a)におけるVB部の拡大図であり、(b)は(a)におけるVC部の拡大図である。
図6】(a)は図5で示す接合材に使用される中間材の断面図であり、(b)は(a)で示す中間材の変形例を示す図であり、(c)は(a)で示す中間材の別の変形例を示す図である。
図7図4に対応する図であって、1つ目の変形例に係る部材の接合構造の断面図である。
図8図7におけるVIII-VIII矢視図である。
図9】(a)は接合材付き木製部材が使用されている2つ目の変形例に係る部材の接合構造の断面図であり、(b)は金属製のコネクタの側面図である。
図10】(a)は3つ目の変形例に係る部材の接合構造の断面図であり、(b)は4つ目の変形例に係る部材の接合構造の断面図である。
図11】さらなる変形例に係る接合材の斜視図である。
図12】さらなる変形例に係る接合材の斜視図である。
図13】比較例に係る部材の接合構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る部材の接合構造1は、木製の部材同士の接合で使用されるものであり、図3図4で示すように、第1の木製の部材3と第2の木製の部材5と接合材7と充填剤(たとえば、接着性を有する充填剤)9とを備えて構成されている。
【0020】
ここで、説明の便宜のために、部材の接合構造1における所定の一方向を縦方向とし、縦方向に対して直交する所定の一方向を横方向とし、縦方向と横方向とに対して直交する方向を高さ方向とする。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0021】
第1の木製の部材3には、孔(止まり孔)11が設けられている。第2の木製の部材5にも、孔(止まり孔)13が設けられている。また、第2の木製の部材5は、この孔13と第1の木製の部材3の孔11とがお互いにつながるようにして、第1の木製の部材3に接している。
【0022】
接合材7は、第1の木製の部材3の孔11と第2の木製の部材5の孔13とに入り込んでいる。充填剤9は、第1の木製の部材3の孔11と第2の木製の部材5の孔13とに充填されている。さらに説明すると、充填剤9は、第1の木製の部材3の孔11の内面と第2の木製の部材5の孔13の内面と接合材7との間に形成されている間隙47の総てに充填されている。なお、図3では、孔11、13、充填剤9の表示を省略している。
【0023】
接合材7は、図1図2図5、10(a)等で示すように、定着部15と、変形部(靭性担保部)17とを備えて構成されている。
【0024】
定着部15は、木製の部材3(5)に設けられている孔11(13)に挿入されるようになっている。そして、孔11(13)に充填され固化した充填剤(たとえば、合成樹脂で構成された接着剤)9を介して定着部15が木製の部材3(5)に定着され一体的に設置されるようになっている。
【0025】
変形部17は、この長手方向の一端(たとえば一端面もしくは一端面からこの近傍にかけての部位)で、定着部15の長手方向の一端(たとえば一端面もしくは一端面からこの近傍にかけて部位)を支持している。すなわち、変形部17は、この長手方向の一端から他端まで所定の長さ延びている。定着部15は、定着部15(変形部17)の長手方向の一端から他端に向けて、変形部17よりも短い所定の長さ延びている。これにより、接合材7では、この長手方向における定着部15のところで、定着部15と変形部17とが互いがならんで延びている。
【0026】
また、変形部17は、この長手方向の他端部側の部位が定着部15の長手方向の他端から長く延出(突出)している。変形部17は、この長手方向での引張荷重(たとえば衝撃引張荷重)がかかったときに、定着部15と充填剤9との接合部(定着部)にかかる応力を軽減するために設けられている。また、変形部17は、木製の部材3(5)の孔11(13)の内面と充填剤9との接合部(定着部)にかかる応力を軽減するために設けられている。変形部17は、引張荷重によって一時的に弾性変形することで、上記応力を軽減するようになっている。
【0027】
接合材7では、定着部15の長手方向と変形部17の長手方向とがお互いに一致している。定着部15が木製の部材3(5)に充填剤9で固定されている状態で、変形部17の定着部15から延出している部位(たとえば、変形部17の長手方向の他端部)に衝撃引張荷重がかかる。
【0028】
すると、変形部17がこの長手方向で一時的に弾性変形するようになっている。この一時的な弾性変形によって、衝撃引張荷重のエネルギーが吸収され、定着部15と充填剤9との接合部等にかかる応力が軽減されるようになっている。
【0029】
定着部15の長手方向の一端が変形部17の長手方向の一端で支持されていることで、定着部15と変形部17とがお互いに一体化している。なお、上記支持がされていることで、接合材7が長手方向の一方の力にのみ抵抗力を有していてもよい。
【0030】
すなわち、変形部17を固定しておいて、定着部15を長手方向の一端側に移動させる力を定着部15に加えても、定着部15が変形部17に対して移動しないようになっている。一方、変形部17を固定しておいて、定着部15を長手方向の他端側に移動させる力を定着部15に加えると、変形部17に対して定着部15が移動するようになっていてもよい。
【0031】
図4図10(a)で示すように、接合材7が充填剤9とともに木製の部材3(5)に設置された状態では、定着部15と変形部17の一部(少なくとも長手方向で定着部15と同じところにある部位)とが、木製の部材3(5)の孔11(13)に挿入されている。また、変形部17の長手方向の他端部側の部位が木製の部材3(5)の孔から突出している。充填剤9は、たとえば、木製の部材3(5)の孔11(13)の底部から開口部のところまで充填されており孔11(13)を埋めている。
【0032】
接合材7が充填剤9とともに木製の部材3(5)に設置され充填剤9が固まり定着部15が木製の部材3(5)に充填剤9で固定されている。この状態で、接合材7の長手方向の力であって木製の部材3(5)から接合材7を引きぬく方向の小さな力が変形部17に加わったとする。上記力の値を次第に増やしていく。すると、上記力の値が所定の大きな値になるまでは、変形部17が伸びる。一方、定着部15は充填剤9に固着されたままであり、充填剤9は、孔11(13)に固着されたままになっている。
【0033】
ここで、変形部17と定着部15の長手方向での変形部17と定着部15との支持位置についてさらに説明する。上述した説明では、変形部17の長手方向の一端で定着部15の長手方向の一端を支持しているが、一端に限定することなく一端を一端部にしてもよい。ここで、一端部とは、一端よりも僅かに広い範囲を示しており、一端から他端側に僅かに離れた箇所との間の部位である。
【0034】
さらに、変形部17の長手方向の一端部で定着部15の長手方向の中間部を支持してもよいし、変形部17の長手方向の中間部で定着部15の長手方向の一端部を支持してもよいし、変形部17の長手方向の中間部で定着部15の長手方向の中間部を支持してもよい。この場合、上記中間部は長手方向での中間よりも一端側に位置していることが望ましい。
【0035】
ここで、接合材7について図1図2図5を参照しつつさらに具体的に説明する。
【0036】
接合材7は、変形部17を構成している棒状の芯材19と、中間材21と、定着部15を構成している第1の定着部材23と、変形部17で定着部15を支持するための第1の端部材25とを備えて構成されている。
【0037】
芯材19は、たとえば、背の高い円柱状に形成されている。円柱状ということなので、棒状の芯材19は、完全な円柱形状ではなく円柱に近似した形状になっている。たとえば、芯材19の長手方向の端部には所定の長さにわたってオスネジ27が形成されている。これにより、芯材19が細長い円柱状に形成されていることになる。オスネジ27は、たとえば、円柱の材料を転造することによって形成されている。転造によって形成された場合には、オスネジ27の山径の値は、オスネジ27が形成されていない芯材19の長手方向の中間部の外径の値とよりも僅かに大きくなっている。なお、オスネジ27が、切削加工によって形成されていてもよい。切削加工によって形成されている場合には、芯材19のオスネジ27の山径の値は、オスネジ27が形成されていない芯材19の長手方向の中間部の外径の値とほぼ等しくなっている。なお、芯材19の長手方向は、たとえば、図3図4等で示す縦方向と一致している。
【0038】
中間材21は、筒状に形成されており、芯材19が貫通するようにして芯材19の長手方向の中間部に設置されている。中間材21は、たとえば、完全な円筒形状になっている。中間材21の内径の値は、芯材19の外径の値よりも僅かに大きくなっている。中間材21の長さ寸法の値(中心軸の延伸方向における寸法の値)は、芯材19の長さ寸法の値(中心軸の延伸方向における寸法の値)よりも小さくなっている。
【0039】
第1の定着部材23は、筒状に形成されており、外周面に凹凸が形成されており、芯材19が貫通し中間材21に接するか中間材21から僅かに離れるようにして、芯材19の長手方向の一方の端側(第1の端側)に設置されている。第1の定着部材23の凹凸は、第1の定着部材23と充填剤9との接合強度を高めるために設けられている。
【0040】
第1の定着部材23は、外周面に凹凸が形成されていないとすれば、完全な円筒形状になっている。第1の定着部材23の内径の値は、芯材19の外径の値よりも僅かに大きくなっている。第1の定着部材23の長さ寸法の値(中心軸の延伸方向における寸法の値)は、芯材19の長さ寸法の値(中心軸の延伸方向における寸法の値)よりも小さくなっている。
【0041】
第1の定着部材23の外周面の最大外径の値は、中間材21の外径の値とほぼ等しくなっている。第1の定着部材23の外周面の凹凸は、たとえば、オスネジ29で形成されている。オスネジ29は、たとえば、中間材21と同様な材料を転造することによって形成されている。転造することによって形成されている場合には、第1の定着部材23のオスネジ29の山径の値は、中間材21の外径の値よりも僅かに大きくなっている。なお、オスネジ29は、たとえば、中間材21と同様な材料に切削加工を施すことで形成されていてもよい。切削加工で形成されている場合には、オスネジ29の山径の値が、中間材21の外径の値とほぼ等しくなっている。
【0042】
第1の端部材25は、芯材19の長手方向の一方の端側(第1の端側)あって第1の定着部材23よりもさらなる端側で、第1の定着部材23に接するか第1の定着部材23から僅かに離れるようにして、芯材19に一体的に設置されている。
【0043】
第1の端部材25はたとえばナットで構成されている。ナット25は、棒状の芯材19の長手方向の一方の端部に形成されているオスネジ29に螺合している。ナット25の最大外径の値は、たとえば、中間材21の外径の値とほぼ等しくなっている。
【0044】
芯材19に中間材21と第1の定着部材23と第1の端部材25とが設置されていることで、接合材7が形成されている。そして、接合材7の外形が概ね棒状(たとえば円柱状)に形成されている。なお、芯材19の長手方向の一方の端部は、第1の端部材25から僅かに突出している。また、詳しくは後述する第2の定着部材31と第2の端部材33とが設けられていないとすれば、芯材19の長手方向の他方の端部は、中間材21から所定の長さ突出している。
【0045】
接合材7では、第1の端部材25が設けられていることで、第1の定着部材23と中間材21とが、芯材19に対して芯材19の長手方向の一方の端側に移動して芯材19から外れ落ちてしまうことが防止されるようになっている。
【0046】
また、接合材7には、定着部15を構成している第2の定着部材31と、変形部17が定着部15を支持するための第2の端部材33とを備えて構成されている。第2の定着部材31は、たとえば、第1の定着部材23と同形状に形成されている。すなわち、第2の定着部材31は、筒状に形成されており、外周面に凹凸が形成されている。また、第2の定着部材31は、芯材19が貫通し、中間材21に接するか中間材21から僅かに離れるようにして、芯材19の長手方向の他方の端側(第2の端側)に設置されている。
【0047】
第2の端部材33は、芯材19の長手方向の他方の端側(第2の端側)あって第2の定着部材31よりもさらなる端側で、第2の定着部材31に接するか第2の定着部材31から僅かに離れるようにして、芯材19に設置されている。
【0048】
第2の端部材33も、第1の端部材25と同様に、たとえばナットで構成されている。ナット33は、棒状の芯材19の長手方向の他方の端部に形成されているオスネジ35に螺合している。
【0049】
芯材19に中間材21と第1の定着部材23と第2の定着部材31と第1の端部材25と第2の端部材33とが設置されていることでも、接合材7が形成されている。そして、接合材7の外形が棒状(たとえば円柱状)に形成されている。
【0050】
第2の定着部材31と第2の端部材33とが設けられている接合材7では、芯材19の長手方向の一方の端から他方の端に向かうにしたがって、第1の部材25、第1の定着部材23、中間材21、第2の定着部材31、第2の端部材33とがこの順にならんでいる。また、第2の定着部材31等が設けられている接合材7では、芯材19の長手方向の一端部が第1の端部材25から僅かに突出しており、芯材19の長手方向の他端部が第2の端部材33から僅かに突出している。
【0051】
なお、芯材19の長手方向の一端部が第1の端部材25から突出しておらず、芯材19の長手方向の他端部が第2の端部材33から突出していない形態になっていてもよい。
【0052】
さらに、接合材7では、第1の端部材25と第2の端部材33とが設けられていることで、第1の定着部材23と中間材21と第2の定着部材31とが、芯材19から外れてしまうことが防止されている。ただし、第1の端部材25と第2の端部材33とで、芯材19の長手方向で、第1の定着部材23と中間材21と第2の定着部材31とが締め付けられてはいない。なお、第1の端部材25と第2の端部材33とで、芯材19の長手方向で、第1の定着部材23と中間材21と第2の定着部材31とが、付勢力をもって締め付けられていてもよい。
【0053】
芯材19は、鋼等の金属で構成されている。中間材21、第1の定着部材23、第2の定着部材31、第1の端部材25、第2の端部材33も鋼等の金属で構成されている。なお、中間材21、第1の定着部材23、第2の定着部材31については、これらが、硬質の合成樹脂、セラミックス等の金属以外の材料である非金属材料で構成されていてもよい。
【0054】
また、芯材19と、中間材21および第1の定着部材23および第2の定着部材31との間の僅かな間隙37が、合成樹脂等の充填剤9で充填されていてもよいし、充填剤で充填されておらず空洞状態になっていてもよい。間隙37は、接合材7の径方向における円筒状の間隙である。充填剤9は、木製の部材3(5)の孔11(13)に充填されている充填剤と同じ充填剤になっている。なお、充填剤9が、木製の部材3(5)の孔11(13)に充填されている充填剤と異なる仕様の充填剤になっていてもよい。
【0055】
なお、上記説明では、定着部材23(31)は、外周にオスネジ27が形成されている円筒状になっているが、外周に他の態様で凹凸が形成されているもよい。たとえば、図6(a)で示すように、大径部39と小径部41とが、筒の中心軸の延伸方向で、交互にならんでいる態様であってもよい。
【0056】
図6(a)で示す定着部材23(31)では、外周の断面形状が三角波の形状になっているが、外周の断面形状が矩形波の形状になっていてもよいし、等脚台形波等の台形波の形状になっていてもよい。さらに、外周の断面形状が正弦波等の他の形状になっていてもよいし、不規則な形態で定着部材23(31)の外周に凹凸が形成されていてもよい。
【0057】
図6(b)で示す定着部材23(31)では、図6(a)で示す定着部材23(31)におて、定着部材23(31)がこの中心軸の延伸方向で複数の部材23A、23B、23C、23D(31A、31B、31C、31D)に分割されている。これにより、定着部材23(31)の長さ寸法(筒の中心軸の延伸方向における寸法)の値を容易に調整することができるとともに、定着部材23(31)の長さ寸法の値が大きくなっても、筒にするための貫通孔を機械加工によって容易に設けることができる。
【0058】
各部材23A、23B、23C、23D(31A、31B、31C、31D)の寸法(筒の中心軸の延伸方向における寸法)の値は、たとえば、お互い異なっている。なお、各部材23A、23B、23C、23D(31A、31B、31C、31D)のうちの少なくとも一部のもので、寸法(筒の中心軸の延伸方向における寸法)の値がお互いに一致していてもよい。
【0059】
図6(c)で示す定着部材23(31)は、金属製のフレキシブルチューブを所定の長さに切断したことで形成されている。図6(c)で示す定着部材23(31)では、筒の外周だけでなく、筒の内周にも繰り返し凹凸が形成されている。
【0060】
また、定着部材23(31)を、鉄筋コンクリートに使用される異形鉄筋を素材として形成してもよい。すなわち、異形鉄筋を所定の長さに切断し、この切断した異形鉄筋に貫通孔を設けて筒状に形成し、これを定着部材23(31)として採用してもよい。
【0061】
部材の接合構造1では、第1の木製の部材3が四角柱状に形成されている。第2の木製の部材5も四角柱状に形成されている。第1の木製の部材3の長手方向は高さ方向になっている。第2の木製の部材5の長手方向は縦方向になっている。
【0062】
部材の接合構造1では、第1の木製の部材3の側面の一部(長手方向の中間部)に第2の木製の部材5の長手方向の端面が接している。
【0063】
第1の木製の部材3の孔11は、第1の木製の部材3の一方の側面からこの一方の側面に対向している他方の側面側に凹んでいる。第2の木製の部材5の孔13は、第2の木製の部材5の長手方向の一方の端面からこの一方の端面に対向している他方の端面側に凹んでいる。
【0064】
第1の木製の部材3の孔11と第2の木製の部材5の孔13とは、上述したようにお互いがつながっているとともに、これらの中心軸がお互いに一致している。これにより、1つの孔11と1つの孔13とで、1つの円柱状の閉鎖された空間43が形成されている。
【0065】
なお、上記説明では、第1の木製の部材3の孔11(第2の木製の部材5の孔13)が円柱状に形成されていることになる。ここで、第1の木製の部材3の孔11(第2の木製の部材5の孔13)をメスネジで形成する等し、第1の木製の部材3の孔11(第2の木製の部材5の孔13)の側面に凹凸が繰り返し現れる形態にしてもよい。
【0066】
円柱形状の空間43の長手方向(円柱の高さ方向)は縦方向になっている。なお、空間43は、詳しくは後述する充填剤の導入孔45が形成されているので、厳密には閉鎖されていないが、ここでは、閉鎖された空間とする。閉鎖された空間43は、複数(たとえば2つ)設けられている。複数の空間43は、お互いが所定の距離だけ離れて配置されている。
【0067】
空間43の円柱の径は、接合材7の外径よりもわずかに大きくなっており、空間43の円柱の高さ寸法の値は、接合材7の高さ寸法の値よりもわずかに大きくなっている。そして、空間43に接合材7が配置されていることで、空間43の内壁面と接合材7との間には、間隙47が形成されている。充填剤9は、間隙47の総てにわたって充填されている。
【0068】
空間43に接合材7が配置されている状態では、接合材7の中間材21の長手方向の一方の部位と第1の定着部材23と第1の端部材25とが第1の木製の部材3の孔11に入り込んでいる。また、空間43に接合材7が配置されている状態では、接合材7の中間材21の長手方向の他方の部位と第2の定着部材31と第2の端部材33とが第2の木製の部材5の孔13に入り込んでいる。
【0069】
充填剤の導入孔45は、第1の木製の部材3、第2の木製の部材5のそれぞれに設けられている小孔で形成されている。小孔45は、第1の木製の部材3、第2の木製の部材5の外部と空間43をつないでいる。第1の木製の部材3の小孔45は、空間43の長手方向の一方の端部で、空間43につながっている。第2の木製の部材5の小孔45は、空間43の長手方向の他方の端部で、空間43につながっている。
【0070】
小孔45は、充填剤9を空間43内に充填するために使用される他、充填剤9を充填しているときに空間43内の空気を排出するためのエアー抜き孔としても使用されるようになっている。
【0071】
なお、図4で示す部材の接合構造1では、空間43の総てが充填剤9で満たされているが、中間材21のところに、充填剤9が存在しておらず空隙になっていてもよい。すなわち、中間材21の外周面が充填剤9と接触していない構成であってもよい。
【0072】
ここで、部材の接合構造1での組立手順について説明する。
【0073】
第1の木製の部材3の孔11に接合材7の一方の端部を挿入して状態で、第2の木製の部材5の孔13に接合材7の他方の端部が入るようにして、第1の木製の部材3に第2の木製の部材5を設置する。これにより、接合材7が入っている空間43が形成される。
【0074】
続いて、小孔45を用いて空間43内に流動体状の充填剤9を充填し、この後、充填剤9を硬化させることで、部材の接合構造1が得られる。
【0075】
次に、部材の接合構造1に荷重が加えられた場合について説明する。
【0076】
第1の木製の部材3を固定しておき、図4に矢印A1で示す衝撃力(引張衝撃荷重)を第2の木製の部材5に加える。すると、充填剤9と第1の木製の部材3の孔11の内面との接合部、充填剤9と第2の木製の部材5の孔13の内面との接合部に、応力が発生する。また、充填剤9と第1の定着部材23との接合部、充填剤9と第2の定着部材31との接合部、および、芯材19に応力が発生する。
【0077】
上記衝撃力によって、芯材19に発生する引張応力によって芯材19が、縦方向にたとえば弾性限度内で一時的に延び、または、塑性変形により延び、上記衝撃力のエネルギーを吸収する。これにより、充填剤9と孔11の内面との接合部、充填剤9と孔13の内面との接合部、充填剤9と第1の定着部材23との接合部、充填剤9と第2の定着部材31との接合部における充填剤9の剥離、損傷等が防止される。
【0078】
また、図5で示す間隙37に充填剤9が充填されている態様で第1の木製の部材3を固定しておき、図4に矢印A1で示す衝撃力(引張衝撃荷重)を第2の木製の部材5に加える。すると、芯材19と充填剤9との接合部で芯材19から充填剤9が先に剥離し、芯材19が縦方向にたとえば弾性限度内で一時的に延び、または、塑性変形により延びる。そして、上記衝撃力のエネルギーを吸収する。
【0079】
なお、芯材19と充填剤9との接合部で芯材19から充填剤9が先に剥離する理由は、芯材19の外径が小さく芯材19と充填剤9との接合部(円柱側面状の接合部)の面積が小さくなっているからである。また、芯材19と充填剤9との接合部で芯材19から充填剤9が先に剥離する理由は、芯材19がこの長手方向で僅かに延びることにより、ポアソン比に応じて、芯材19の外径が僅かに小さくなるからである。
【0080】
なお、図4に矢印A1で示す引張衝撃荷重に代えてもしくは加えて、図4に矢印A2で示すモーメント(衝撃荷重に相当するモーメント)を第2の木製の部材5に加える。これによっても、矢印A1で示す引張衝撃荷重の場合と同様にして、上述した充填剤9の剥離、損傷等が防止される。
【0081】
部材の接合構造1では、定着部15が木製の部材3(5)に設けられている孔11(13)に挿入され充填剤9を介して木製の部材3(5)に定着されるように構成されており、変形部17が長手方向の一端で定着部15の長手方向の一端を支持している。また、変形部17の長手方向の他端部側の部位が定着部15の長手方向の他端から延出している。
【0082】
そして、変形部17にこの長手方向の引張荷重(たとえば衝撃引張荷重)がかかったときの、定着部15と充填剤9との接合部等にかかる応力を軽減するために、上記引張荷重によって変形部17が一時的に弾性変形し、または、塑性変形する。
【0083】
これにより、木製の部材3(5)に衝撃力等の力が加わった場合であっても充填剤9と接合材7との接合部、充填剤9と木製の部材3(5)との接合部に係る応力が低減され、充填剤9の剥離等が極力防止される。
【0084】
さらに、接合材7では、変形部17の長手方向の端部だけで定着部15の長手方向の端部だけを支持している。これにより、変形部17の長手方向の一部で、定着部15をこの長手方向の全長にわたって支持する場合に比べて、変形部17において弾性変形する部位の長さを長くすることができ、接合材7を次に述べる比較例に係るものより短くしても衝撃力を十分に吸収することができる。
【0085】
ここで、比較例に係る部材の接合構造301について、図13を参照しつつ説明する。
【0086】
接合構造301では、孔307が設けられている一方の木製の部材309と、同様にして孔311が設けられている他方の木製の部材313とを、孔307と孔311とが通じるようにして、木製の部材309端面と木製の部材313の端面とを合わせている。
【0087】
また、接合構造301では、オスネジ材303の長手方向の一方の端部が一方の木製の部材309の孔307に入っており、オスネジ材303の長手方向の他方の端部が他方の木製の部材313の孔311に入っている。
【0088】
さらに、接合構造301では、孔307、311とオスネジ材303との間に接着剤305を充填している。これにより、一方の木製の部材309と他方の木製の部材313との接合強度を高めている。たとえば、図13に矢印で示す力(ある程度の大きさの力)が、木製の部材309、313にかかっても、一方の木製の部材309と他方の木製の部材313との接合が維持されるようになっている。
【0089】
ところで、従来の接合構造301において、図13に矢印で示す力(たとえば衝撃力)がかかったときに、オスネジ材303と接着剤305との接合部での接着剤(充填剤)305の剥離等が発生する事態の発生が懸念される。また、接着剤305と木製の部材309、313との接合部での接着剤(充填剤)305の剥離等が発生する事態の発生が懸念される。この理由は、衝撃力に対するオスネジ材303の伸び量が不十分で衝撃力のエネルギーを十分に吸収することができないからである。衝撃力のエネルギーを十分に吸収させるためには、オスネジ材303の長さ寸法の値をさらに大きくする等の形状変更が必要になる。
【0090】
また、部材の接合構造1で使用される接合材7が、棒状の芯材19と、筒状に形成され芯材19が貫通するようにして芯材19の長手方向の中間部に設置される中間材21とを備えて構成されている。また、接合材7が、第1の定着部材23と第1の端部材25とを備えて構成されている。
【0091】
ここで、第1の定着部材23が筒状に形成されており外周面に凹凸が形成されており芯材19が貫通し中間材21に接するようにして芯材19の長手方向の一方の端側(第1の端側)に設置されている。また、第1の端部材25が、芯材19の長手方向の一方の端側(第1の端側)あって第1の定着部材23よりもさらなる端側で、第1の定着部材23に接するようにして、芯材19に設置されている。
【0092】
これにより、接合材7が使用された部材の接合構造1では、木製の部材3(5)に衝撃力等の力が加わった場合に、棒状の芯材19がこの長手方向で弾性変形して一時的に延び、または、塑性変形により延び、衝撃力のエネルギーを吸収するようになっている。そして、部材の接合構造1において、充填剤9と接合材7との接合部、充填剤9と木製の部材3(5)との接合部に係る応力が低減され、充填剤9の剥離等が極力防止される。
【0093】
接合材7では、芯材19の長手方向の両端部のそれぞれに、第1の定着部材23と第2の定着部材31とが配置されている。これにより、第1の木製の部材3と第2の木製の部材5との接合に使用されたときに、衝撃力等の力に対する第1の木製の部材3と第2の木製の部材5との接合強度を確保することができる。また、第1の定着部材23と第2の定着部材31との内側に位置している部位が存在することで、芯材19の長さを確保することができ、衝撃力のエネルギーを的確に吸収することができる。
【0094】
ところで、接合材7において、中間材21を削除してもよい。
【0095】
すなわち、接合材7を、棒状の芯材19と第1の定着部材23と第1の端部材25とを備えた構成にしてもよい。さらに、接合材7が、第2の定着部材31と第2の端部材33とを備えた構成されていてもよい。
【0096】
また、部材の接合構造1において、上述したように、充填剤9が、中間材21のところに設けられていなくてもよい。すなわち、充填剤9が、第1の木製の部材3の孔11の内うちの、第1の定着部材23と第1の端部材25とが入り込んでいる部位のみに充填されていてもよい。また、充填剤9が、第2の木製の部材5の孔13の内うちの、第2の定着部材31と第2の端部材33とが入り込んでいる部位のみに充填されていてもよい。
【0097】
さらに説明すると、第1の木製の部材3の孔11の内うちの中間材21が入り込んでいる部位と、第2の木製の部材5の孔13の内うちの中間材21が入り込んでいる部位とには、充填剤9が入り込んでいないようにしてもよい。
【0098】
ここで、1つ目の変形例に係る部材の接合構造1aについて、図7図8を参照しつつ説明する。
【0099】
部材の接合構造1aでは、木製の部材3(5)の孔11(13)の孔の形態、接合材7の中間材21の形態が、部材の接合構造1と異なっているが、その他の箇所は、部材の接合構造1と同様に構成されている。
【0100】
すなわち、部材の接合構造1aでは、第1の木製の部材3の孔11が、奥側が小径部49になっており手前側が大径部51になっている。第2の木製の部材5の孔13も、奥側が小径部49になっており手前側が大径部51になっている。
【0101】
また、中間材21の外径の値が第1の定着部材23の外径の値および第2の定着部材31の外径の値よりも大きくなっている。
【0102】
そして、中間材21の長手方向における一部の部位が第1の木製の部材3の孔11の大径部51に入り込んでおり、中間材21の残りの部位が第2の木製の部材5の孔13の大径部51に入り込んでいる。第1の定着部材23と第1の端部材25とが第1の木製の部材3の孔11の小径部49に入り込んでいる。また、第2の定着部材31と第2の端部材33とが第2の木製の部材5の孔13の小径部に入り込んでいる。
【0103】
充填剤9が、第1の木製の部材3の孔11の小径部49と第2の木製の部材5の孔13の小径部49とに充填されている。
【0104】
部材の接合構造1aでは、中間材21の外径の値と大径部51の内径の値とはお互いが一致しているが、中間材21の外径の値が大径部51の内径の値よりもごくわずかに小さくっていてもよい。中間材21の外径の値が大径部51の内径の値よりもごくわずかに小さくっている態様では、中間材21の外面と大径部51の内面との間にごく僅かな間隙が形成されていることになる。このごく僅かな間隙には充填剤9で充填されておらず、ごく僅かな間隙は空洞になっている。なお、充填剤9が、中間材21のところ(上記ごく僅かな間隙)に充填されていてもよい。
【0105】
部材の接合構造1aでは、充填剤9が、第1の木製の部材3の孔11の内うちの、第1の定着部材23と第1の端部材25とが入り込んでいる部位に充填されている。また、第2の木製の部材5の孔13の内うちの、第2の定着部材31と第2の端部材33とが入り込んでいる部位に充填されている。そして、中間材21の部位には充填剤9が存在していない。
【0106】
これにより、充填剤9が木製の部材3(5)の孔11(13)から溢れることを的確に防止することができる。また、第1の木製の部材3の接合面と第2の木製の部材5の接合面とを平面の状態にすることができ、第1の木製の部材3と第2の木製の部材5との接合を正確にしかも容易にすることができる。
【0107】
また、部材の接合構造1aでは、中間材21の一部の部位が第1の木製の部材3の孔11の大径部51に入り込んでおり、中間材21の残りの部位が第2の木製の部材5の孔13の大径部51に入り込んでいる。
【0108】
ここで、中間材21の外径の値と大径部51の内径の値とがお互いが一致するようにすれば、第1の木製の部材3に対する第2の木製の部材5の位置決めを容易にすることができる。また、第1の木製の部材3に対する第2の木製の部材5の位置ずれを防止することできる。
【0109】
すなわち、第1の木製の部材3を固定した状態で第2の木製の部材5に図7に矢印A3で示す方向の力(高さ方向の力)を加えたときの、第1の木製の部材3に対する状態で第2の木製の部材5の位置ずれを阻止することができる。
【0110】
次に、2つ目の変形例に係る部材の接合構造1bについて、図9を参照しつつ説明する。
【0111】
部材の接合構造1bでは、木製の部材3に金属製のコネクタ53が設置されている点等が、部材の接合構造1と異なっているが、その他の箇所は、部材の接合構造1と同様に構成されている。
【0112】
すなわち、部材の接合構造1bは、接合材7と木製の部材3と金属製のコネクタ53とを備えて構成されている。接合材7における芯材19の長手方向の他方の端部(第2の端部)には、金属製のコネクタ53に設けられている設置部55に設置される被設置部57が設けられている。
【0113】
被設置部57はたとえばオスネジで構成されており、金属製のコネクタ53に設けられている設置部(たとえばメスネジ)55に被設置部57のオスネジが螺合するようになっている。これにより、芯材19(接合材7)が、金属製のコネクタ53に一体的に設置されるようになっている。
【0114】
さらに説明すると、木製の部材3には、孔11が設けられている。中間材21と第1の定着部材23と第1の端部材25とが第1の木製の部材3の孔11に入り込んでおり、被設置部57が木製の部材3から突出している。
【0115】
そして、被設置部57が金属製のコネクタ53の設置部55に設置されており、金属製のコネクタ53が木製の部材3に接している。なお、部材の接合構造1bにおける接合材7と木製の部材3と金属製のコネクタ53との構成物を接合材付き木製部材81と呼んでもよい。
【0116】
さらに詳しく説明すると、木製の部材3の高さ方向の端部であって横方向の両端部には、直方体状の切り欠きが設けられている。金属製のコネクタ53は、4つの辺状部を有する矩形な枠状に形成されており、1つの辺状部には設置部55を構成するメスネジが形成されている。メスネジが形成されている1つの辺状部に対向する他の1つの辺状部には貫通孔59が形成されている。
【0117】
被設置部57を構成しているオスネジの、設置部55を構成しているメスネジへの螺合が完了している状態では、2つの金属製のコネクタ53のそれぞれが、木製の部材3の2つの切り欠きのそれぞれにぴったり嵌まり込んでいる。これにより、金属製のコネクタ53が設置された木製の部材3は、切り欠きが消失した四角柱状になっている。なお、木製の部材3と金属製のコネクタ53とがさらに接着剤等によって互いにくっついていてもよい。
【0118】
部材の接合構造1bでは、金属製のコネクタ53が設置された木製の部材3が、他の構造物(たとえばコンクリートの土台)61に設置されるようになっている。
【0119】
さらに説明すると、他の構造物61の上面からは、オスネジ63が突出している。金属製のコネクタ53が、他の構造物61の上面に当接するようにして、金属製のコネクタ53の貫通孔59にオスネジ63を貫通させ、ナット65で金属製のコネクタ53の他の1つの辺状部を締め付ける。これにより、金属製のコネクタ53が設置された木製の部材3が、他の構造物61に一体的に設置されるようになっている。
【0120】
図9で示す接合材付き木製部材81を使用すれば、木製の部材3を、金属製のコネクタ53を用いて、他の部材(たとえばアンカーボルトが突出しているコンクリート等の構造物)61に強固に設置することができる。
【0121】
次に図10(a)を参照しつつ、3つ目の変形例に係る部材の接合構造1cについて説明する。3つ目の変形例に係る部材の接合構造1cは、図5等で示す接合材7のような端部材25(33)としてナットが使用されていない接合材が使用されていない点で、部材の接合構造1と異なる。
【0122】
すなわち、部材の接合構造1cで使用されている接合材7は、円柱状の芯材19と、円筒状の定着部15と、芯材19と円筒状の定着部15をつないでいる連結部67とを備えて構成されている。なお、図10(a)では示していないが、定着部15の外周面には、オスネジ等の凹凸が形成されている。
【0123】
筒状の定着部15の内径の値は、円柱状の芯材19の外径の値よりも大きくなっている。円柱状の芯材19の長さ寸法の1/2の値は、筒状の定着部15の長さ寸法(中心軸の延伸方向における寸法)に値よりも大きくなっている。
【0124】
連結部67は、芯材19の長手方向における端部と、定着部15の長手方向の端部とをつないでいる。芯材19の中心軸と定着部15の中心軸とはお互いが一致している。一対の定着部15のうちの一方の定着部15は、一方の連結部67から芯材19の長手方向の中央側に延出している。一対の定着部15のうちの他方の定着部15は、他方の連結部67から芯材19の長手方向の中央側に延出している。
【0125】
部材の接合構造1cで使用されている接合材7は、図10(a)では、一体成形されている態様で示されているが、部材の接合構造1cで使用されている接合材7の各部位が別途成形され、その後、溶接等によって適宜くっつけられていてもよい。
【0126】
次に図10(b)を参照しつつ、4つ目の変形例に係る部材の接合構造1dについて説明する。4つ目の変形例に係る部材の接合構造1dも、端部材25(33)としてナットが使用されていない点等が、部材の接合構造1と異なる。
【0127】
部材の接合構造1dでは接合材7が、変形部17を構成している柱状(たとえば円柱状)の小径部69と、定着部15を構成している柱状(たとえば円柱状)の大径部71とを備えて構成されている。大径部71は、鍛造プレスなどによって柱状(たとえば円柱状)に成形されている。また、大径部71は、小径部69の長手方向の両端部に設けられている。大径部71にも図示していないが凹凸が形成されている。
【0128】
なお、大径部71が、多角形柱状に形成されていてもよい。多角形柱状として三角形柱状(たとえば、底面、上面の形状が正三角である正三角柱状)、四角形柱状(たとえば、底面、上面の形状が正四角形である正四角形柱状)、以下、同様にして、五角形柱状、六角形柱状、八角形柱状等を掲げることができる。なお、大径部71の外周にも凹凸が形成されておらず、滑らかな面(複数の平面もしくは円柱側面状の曲面)になっていてもよい。
【0129】
次に、変形例に係る接合材7について図11図12を参照しつつ説明する。
【0130】
図11で示す接合材7は、長手方向の両端部にオスネジ73が形成されているスタッドボルト75と、オスネジ73に螺合しているナット77とを備えて構成されている。ナット77は、オスネジ73の最も奥側(スタッドボルト75の長手方向中央側)でオスネジ73に螺合している。
【0131】
図11で示す接合材7では、スタッドボルト75のオスネジ73とナット77とが定着部15を形成しており、スタッドボルト75の中央部(オスネジ73が形成されていない部位)が変形部17を形成している。
【0132】
図12(a)で示す接合材7では、図11で示す接合材7にさらにワッシャ83を設けた点が、図11で示す接合材7と異なる。ワッシャ83は、スタッドボルト75が貫通するようにして、オスネジ73のところで、ナット77に接してもしくはナット77から僅かに離れて設けられている。また、ワッシャ83は、スタッドボルト75の長手方向で、ナット77よりも中央側に位置している。
【0133】
図12(a)で示す接合材7では、接合材7の左下の端部のオスネジ73に、1つのワッシャ83と1つのナット77を設けてある。接合材7の右上の端部のオスネジ73に、1つのワッシャ83と2つのナット77を設けてあり、ワッシャ83を2つのナット77で挟み込んでいる。なお、図12(a)で示す接合材7において、接合材7の長手方向の両端部が、オスネジ73に、1つのワッシャ83と1つのナット77を設けた構成になっていてもよいし、接合材7の長手方向の両端部が、オスネジ73に、1つのワッシャ83と2つのナット77を設けた構成になっていてもよい。
【0134】
図12(b)で示す接合材7では、図11で示す接合材7にさらにナット79を設けた点が、図11で示す接合材7と異なる。ナット79は、スタッドボルト75の長手方向の両端でオスネジ73に螺合している。ナット79も定着部15を形成している。
【0135】
ここで、図10(b)で示すように大径部71を設ける態様で、図11図12で示すように、ナット(たとえば六角ナット)77、79等を設ける場合について説明する。この場合、大径部71もしくはナット77、79等の引っ掛かり面積に対する接着剤9の指圧強度が、引っ張り強度以上であり、かつ、降伏強度以上になっていることが望ましい。すなわち、指圧強度>引っ張り強度>降伏強度以上になっていることが望ましい。ここで、引っ張り強度とは、接着剤9が充填される孔11(13)の径の表面積(孔が円柱状である場合には円柱の側面の面積)で確保される強度である。降伏強度とは、芯材19の降伏強度である。指圧強度>引っ張り強度>降伏強度とすることで、大径部71と接着剤9との互いの接合部が破壊される前に、スチール製の芯材19が降伏点の強度に達することで、塑性変形を生じ、大径部71と接着剤9とが破壊され脆性破壊が生じることとを防ぐ効果がある。
【0136】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0137】
1、1a 部材の接合構造
3 第1の木製の部材
5 第2の木製の部材
7 接合材
9 充填剤
11、13 孔
15 定着部
17 変形部
19 芯材
21 中間材
23 第1の定着部材
25 第1の端部材
31 第2の定着部材
33 第2の端部材
53 金属製のコネクタ
55 設置部
57 被設置部
81 接合材付き木製部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13