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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070802
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
E03C1/042 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183145
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 弘輝
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BC30
2D060BE11
(57)【要約】
【課題】ハンドルを水栓本体の操作軸に見栄えを損なわないように取り付けることが可能な水栓装置を提供すること。
【解決手段】水栓装置1は、手動による回転操作が可能な操作軸16Aを備える水栓本体10と、操作軸16Aに装着される中間部材30と、中間部材30に取り付けられるハンドル20とを有する。また、水栓装置1は、中間部材30を操作軸16Aに対して半径方向の差し込みにより回転方向と軸方向とに一体的に嵌合させられるスライド嵌合構造S1を有する。また、水栓装置1は、ハンドル20を中間部材30に対して軸方向の差し込みにより、半径方向の撓みを伴って軸方向に抜け止めするように嵌合させるスナップフィットと、回転方向に一体的に嵌合させる回転方向の固定と、半径方向に対向させて中間部材30の操作軸16Aからの半径方向の抜けを阻止する抜止めと、がなされるように取り付けられるスナップフィット嵌合構造S2を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動による回転操作が可能な操作軸を備える水栓本体と、前記操作軸に一体的に取り付けられる回転操作用のハンドルと、を有する水栓装置であって、
前記操作軸に装着されて該操作軸に対する前記ハンドルの取付け部を成す中間部材と、
該中間部材を、前記操作軸に対して、半径方向の差し込みにより、回転方向と軸方向とに一体的となるように嵌合させることが可能なスライド嵌合構造と、
前記ハンドルを、前記中間部材に対して、軸方向の差し込みにより、半径方向の撓みを伴って軸方向の抜け止めをするように嵌合させるスナップフィットと、回転方向に一体的となるように嵌合させる回転方向の固定と、半径方向に対向させて前記中間部材の前記操作軸からの半径方向の抜けを阻止する抜止めと、がなされるように取り付けることが可能なスナップフィット嵌合構造と、を有する水栓装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水栓装置であって、
前記中間部材が、前記操作軸から軸方向に突出する位置に、前記ハンドルの軸方向の差し込みにより半径方向の撓みを伴って前記ハンドルに嵌合される前記スナップフィットを行う可撓爪を有する水栓装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の水栓装置であって、
前記水栓本体に対する螺合により前記操作軸を取り囲むように配置されて前記操作軸の軸方向の抜けを阻止する固定部材を更に有し、
該固定部材により、前記中間部材の前記ハンドルが差し込まれる前の組み付け状態における前記操作軸からの半径方向の脱落が阻止される水栓装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水栓装置であって、
前記ハンドルが、前記中間部材に対する軸方向の差し込みにより前記中間部材と前記固定部材との間に半径方向に挟まれるように配置されて前記中間部材の半径方向の抜けを阻止する前記抜止めを行う係合部を有する水栓装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の水栓装置であって、
前記ハンドルと前記中間部材との間に形成される前記回転方向の固定を行うための嵌合面を成す互いの当接面が、前記操作軸の中心点を向く平面同士の面当接構造から成る水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置に関する。詳しくは、手動による回転操作が可能な操作軸を備える水栓本体と、操作軸に一体的に取り付けられる回転操作用のハンドルと、を有する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水栓本体に吐止/止水の切替操作を行うハンドルが取り付けられた水栓装置が開示されている。ハンドルは、水栓本体に設けられる操作軸に嵌められて、外側からビスで操作軸に締結されて一体的に連結される構成とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-8463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、ビスの頭部がハンドルから外部に露出してしまう見栄えの悪い構成となる。そこで、本発明は、ハンドルを水栓本体の操作軸に見栄えを損なわないように取り付けることが可能な水栓装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の水栓装置は次の手段をとる。すなわち、水栓装置は、手動による回転操作が可能な操作軸を備える水栓本体と、操作軸に一体的に取り付けられる回転操作用のハンドルと、を有する。また、水栓装置は、操作軸に装着されて操作軸に対するハンドルの取付け部を成す中間部材を有する。また、水栓装置は、中間部材を、操作軸に対して、半径方向の差し込みにより、回転方向と軸方向とに一体的となるように嵌合させることが可能なスライド嵌合構造を有する。また、水栓装置は、ハンドルを、中間部材に対して、軸方向の差し込みにより、半径方向の撓みを伴って軸方向の抜け止めをするように嵌合させるスナップフィットと、回転方向に一体的となるように嵌合させる回転方向の固定と、半径方向に対向させて中間部材の操作軸からの半径方向の抜けを阻止する抜止めと、がなされるように取り付けることが可能なスナップフィット嵌合構造を有する。
【0006】
上記構成によれば、中間部材を操作軸に半径方向に差し込んで装着し、この中間部材にハンドルを軸方向に差し込んで取り付けることで、ハンドルを操作軸に一体的に取り付けることが可能となる。したがって、ハンドルをビス等の締結部材を用いることなく操作軸に見栄え良く一体的に取り付けることができる。
【0007】
また、本発明の水栓装置は、更に次のように構成されていてもよい。中間部材が、操作軸から軸方向に突出する位置に、ハンドルの軸方向の差し込みにより半径方向の撓みを伴ってハンドルに嵌合される上記スナップフィットを行う可撓爪を有する。
【0008】
上記構成によれば、可撓爪を操作軸と干渉させることなく半径方向の内側に適切に撓ませることが可能となる。したがって、中間部材を半径方向に大型化することなく、可撓爪の撓み代を適切に確保することができる。
【0009】
また、本発明の水栓装置は、更に次のように構成されていてもよい。水栓装置が、水栓本体に対する螺合により操作軸を取り囲むように配置されて操作軸の軸方向の抜けを阻止する固定部材を更に有する。固定部材により、中間部材のハンドルが差し込まれる前の組み付け状態における操作軸からの半径方向の脱落が阻止される。
【0010】
上記構成によれば、固定部材により、ハンドルが差し込まれる前の中間部材を操作軸から半径方向に脱落させないように仮保持することができる。したがって、水栓装置の組み付け性の向上を図ることができる。
【0011】
また、本発明の水栓装置は、更に次のように構成されていてもよい。ハンドルが、中間部材に対する軸方向の差し込みにより中間部材と固定部材との間に半径方向に挟まれるように配置されて中間部材の半径方向の抜けを阻止する上記抜止めを行う係合部を有する。
【0012】
上記構成によれば、中間部材の半径方向の抜止めを行うハンドルの係合部が、固定部材により半径方向の外側から取り囲まれる配置となる。それにより、係合部によって中間部材の半径方向の抜止めをより適切に行うことができる。
【0013】
また、本発明の水栓装置は、更に次のように構成されていてもよい。ハンドルと中間部材との間に形成される上記回転方向の固定を行うための嵌合面を成す互いの当接面が、操作軸の中心点を向く平面同士の面当接構造から成る。
【0014】
上記構成によれば、ハンドルを中間部材に対して適切に回転動力の伝達を行える状態に取り付けることができる。このような構成とすることで、ハンドルと中間部材との面当接構造を、半径方向の立ち上がりの少ないコンパクトな構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る水栓装置の概略構成を表す斜視図である。
図2】水栓装置からハンドルを外した状態を表す分解斜視図である。
図3】更に中間部材と固定部材を外した分解斜視図である。
図4図1の要部を拡大した部分断面斜視図である。
図5図4に対応する断面図である。
図6図2のVI矢視図である。
図7】中間部材を奥側から見た斜視図である。
図8】ハンドルを奥側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
《第1の実施形態》
(水栓装置1の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る水栓装置1の構成について、図1図8を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。各図中に示す方向は、それぞれ、水栓装置1の正面に立つ使用者から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図8のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る水栓装置1は、不図示の奥側の壁に埋設された配管から供給される水を洗濯機へと吐出するための洗濯機用送り座水栓として構成される。水栓装置1は、上記奥側の壁に埋設された不図示の配管と通水可能なように接続される水栓本体10と、水栓本体10の図示手前側部に取り付けられた手動による吐水/止水の切り替え操作を行うための樹脂製のハンドル20と、を備える。
【0019】
また、水栓装置1は、図2に示すように、上記ハンドル20を後述する水栓本体10の操作軸16Aに取り付けるための仲介部材となる樹脂製の中間部材30を更に備える。中間部材30は、図3に示すように、操作軸16Aの先端部に半径方向の外側(図示右側)から差し込まれることで、操作軸16Aに回転方向と軸方向とに一体的となる状態に装着される構成とされる。
【0020】
上記中間部材30は、図2に示すように、操作軸16Aに装着された状態から、ハンドル20が軸方向に差し込まれることで、ハンドル20と嵌合して、ハンドル20を操作軸16Aに対して一体的に連結するようになっている。以下、水栓装置1の各部の具体的な構成について、詳しく説明する。
【0021】
(水栓本体10の構成)
図1に示すように、水栓本体10は、中空箱状の本体部11と、本体部11の図示奥側の面中央部から奥側へ円管状に延出する接続管部12と、本体部11の図示下側の面中央部から下側へ円管状に延出する吐水管部13と、を有する。また、水栓本体10は、本体部11の図示手前側の面中央部から手前側へ円筒状に張り出す張出筒部14を有する。接続管部12と吐水管部13とは、中空箱状の本体部11を介して互いに通水可能なように連通した構成とされる。
【0022】
また、水栓本体10は、図2図5に示すように、本体部11の中空内部に組み込まれて本体部11内の通水路を成す樹脂製円筒状の固定筒部15と、固定筒部15の筒内部に組み込まれてハンドル20により回転操作される樹脂製円筒状の可動筒部16と、を有する。また、水栓本体10は、張出筒部14の筒内部に図示手前側から螺合されて固定筒部15及び可動筒部16の筒軸方向の抜けを防止する金属製円筒状の固定部材17を有する。
【0023】
図1に示すように、接続管部12の管壁の外周面には、雄ねじ12Aが形成されている。接続管部12は、上記雄ねじ12Aを不図示の奥側の壁に埋設された配管の接続端部に図示手前側から螺合させることで、壁側の配管に通水可能なように接続される構成とされる。
【0024】
吐水管部13も、その管壁の外周面に雄ねじ13Aが形成された構成とされる。吐水管部13は、その雄ねじ13Aに不図示の洗濯機に繋げられる給水ホースの接続端部が図示下側から螺合されることで、不図示の給水ホースが通水可能なように接続される構成とされる。
【0025】
図3に示すように、張出筒部14は、その筒壁の内周面に雌ねじ14Aが形成された構成とされる。また、張出筒部14は、その筒壁の上下2箇所の位置に、図示手前側の筒端部から奥側に向かって筒軸方向に長孔状に刳り貫かれる形に延びる刳り貫き14Bがそれぞれ形成された構成とされる。
【0026】
図4図5に示すように、固定筒部15は、張出筒部14の筒内部に図示手前側から差し込まれて、本体部11の中空内部に固定された状態に組み付けられる。具体的には、固定筒部15は、張出筒部14の筒の内径よりも僅かに小さな外径を備える円筒形状とされる。
【0027】
また、図3に示すように、固定筒部15の図示手前側の筒端部には、その上下2箇所の位置に、筒径方向の外側に突出する係合突起15Aがそれぞれ形成されている。これら係合突起15Aは、上述した張出筒部14の上下2箇所の位置に形成された各刳り貫き14Bと対応する筒周方向の位置にそれぞれ形成されている。
【0028】
固定筒部15は、張出筒部14の筒内部に図示手前側から差し込まれると共に、各係合突起15Aを張出筒部14の対応する各刳り貫き14Bへと通すことにより、本体部11の筒内部へと深く差し込まれる。この差し込みにより、固定筒部15は、各係合突起15Aが張出筒部14の対応する各刳り貫き14Bの図示奥側の端部に当たって係止される位置まで張出筒部14内に差し込まれる。
【0029】
それにより、固定筒部15は、張出筒部14及び本体部11の筒内部にそれぞれ緩やかに嵌め込まれて、これらに対して筒径方向のガタつきを抑制された状態にセットされる。詳しくは、固定筒部15は、その外周部に装着される不図示の止水シール材としてのOリングを介して、張出筒部14及び本体部11の筒内部に水密な状態にセットされる。
【0030】
また、固定筒部15は、各係合突起15Aが張出筒部14の対応する各刳り貫き14Bに通されることで、各係合突起15Aが各刳り貫き14Bに対して筒周方向のガタつきを抑制された状態に嵌合する。それにより、固定筒部15は、張出筒部14に対して、筒径方向にも筒周方向にもガタつきを生じない状態として組み付けられる。
【0031】
上記組み付けにより、固定筒部15は、その図示奥側の筒端部に形成された不図示の接続側連通口が、図1で前述した接続管部12と連通した状態にセットされる。また、固定筒部15は、その図示下側の筒壁部に形成された不図示の吐水側連通口が、図1で前述した吐水管部13と連通した状態にセットされる。
【0032】
図4図5に示すように、可動筒部16は、予め、固定筒部15の筒内部に筒周方向に回転可能となるように嵌合された状態に組み付けられて、固定筒部15と共に本体部11の筒内部に組み込まれる構成とされる。可動筒部16は、固定筒部15と同様に、その図示奥側の筒端部が開口して、図1で前述した接続管部12と連通した状態に設けられる構成とされる。上記構成により、可動筒部16は、接続管部12から供給される水がその筒内部へと流入される構成とされる。
【0033】
可動筒部16は、その筒壁部の一部に、筒径方向に貫通する不図示の可動側連通口が形成された構成とされる。可動筒部16は、その固定筒部15に対する回転により、不図示の可動側連通口が固定筒部15の図示しない吐水側連通口と筒径方向に合わされる位置へと動かされることで、その筒内部に流入した水を不図示の各連通口から吐水管部13へと流出させる吐水状態へと切り替えられる。
【0034】
また、可動筒部16は、上記固定筒部15に対する回転により、上記不図示の可動側連通口が固定筒部15の図示しない吐水側連通口との筒径方向の重なりから外れる位置へと動かされることで、その筒内部に流入した水を吐水管部13へと流出させることなく内部に留める止水状態へと切り替えられる。
【0035】
図3に示すように、可動筒部16は、固定筒部15の図示手前側の筒端部の中心部にあけられた丸孔状の開口から筒軸方向の手前側に向かって四角棒状に突出する操作軸16Aを一体的に備える。操作軸16Aの図示手前側に突出した先の図示上側と下側の各面部には、それぞれ、図示左右方向に横切る形に刳り貫かれたスライド溝16Bが形成されている。
【0036】
これらスライド溝16Bは、四角棒状に突出する操作軸16Aの互いに平行な背中合わせの面を成す図示上側と下側の各面部に形成されている。各スライド溝16Bは、互いに図示左右方向に平行に延びる対称形状に形成されている。各スライド溝16Bは、操作軸16Aの軸方向と直交する方向に真っ直ぐ延びる形に形成されている。
【0037】
上記操作軸16Aは、その各スライド溝16Bが形成された先端部に中間部材30が図示右方から差し込まれることにより、中間部材30が回転方向と軸方向とにそれぞれ一体的となる状態に装着される構成とされる。具体的には、操作軸16Aと中間部材30との間には、上記差し込みによって互いを回転方向と軸方向とに一体的となる状態に嵌合させることが可能なスライド嵌合構造S1が形成されている。詳細は後述する。
【0038】
上記操作軸16Aは、図2に示すように、その先端部に中間部材30が装着された後、中間部材30にハンドル20が図示手前側から差し込まれて取り付けられることにより、中間部材30を介してハンドル20と一体的に連結される。それにより、操作軸16Aは、ハンドル20が使用者によって図示左右方向に回される操作により、ハンドル20と一体的となって左右方向に回されるようになる。
【0039】
図3に示すように、固定部材17は、その筒壁の外周面に雄ねじ17Aが形成された構成とされる。固定部材17は、その雄ねじ17Aを張出筒部14の雌ねじ14Aに図示手前側から螺合させることで、張出筒部14の筒内部に差し込まれた状態にセットされる。上記組み付けにより、固定部材17は、先に張出筒部14の筒内部に差し込まれた固定筒部15及び可動筒部16の張出筒部14からの筒軸方向の抜けを阻止する(図2及び図4図5参照)。
【0040】
また、上記組み付けにより、固定部材17は、図2に示すように、先に操作軸16Aに装着された中間部材30を半径方向の外側から全周に亘って取り囲んだ状態にセットされる。それにより、固定部材17は、ハンドル20が差し込まれる前の中間部材30を操作軸16Aから半径方向に脱落させないように仮保持することができる状態とされる。
【0041】
(ハンドル20の構成)
図3に示すように、ハンドル20は、図示手前側の筒端部に天板を備える有天円筒状の部材から成る。上記ハンドル20は、その外周部の筒周方向の一部に、筒軸方向に沿って筋状に延びる形に突出する指掛突起21が形成された構成とされる。指掛突起21は、使用者がハンドル20を握って左右に回転操作する際に指を引っ掛ける突起として機能する。
【0042】
また、図8に示すように、ハンドル20は、その天板の奥側面の中央部に、図示奥側に向かって円筒状に突出する取付筒部22が形成された構成とされる。取付筒部22は、ハンドル20の円筒と同心状の円筒形状を成す。
【0043】
取付筒部22は、その筒内部が、図示奥側から手前側に向かって内周面が2段階に狭められる形に凹んだ形状とされる。具体的には、取付筒部22は、その筒内部の図示奥側(浅い側)の内周面が、略矩形状の内周面を有する第1の凹部22Aとして形成されている。第1の凹部22Aは、図7で後述する中間部材30の装着部31を内部に回転方向に一体的となる状態に嵌合させることのできる形状とされる。
【0044】
また、図8に示すように、取付筒部22は、その筒内部の図示手前側(深い側)の内周面が、第1の凹部22Aよりも凹み幅の狭い略円形状の内周面を有する第2の凹部22Bとして形成されている。第2の凹部22Bは、図7で後述する中間部材30の各可撓爪32を内部にスナップフィット嵌合させることのできる形状とされる。
【0045】
図8に示すように、第1の凹部22Aの図示右側の内周面には、筒軸方向に沿って筋状に延びる形に凹む誤組付防止溝22Cが形成されている。誤組付防止溝22Cは、図6図7に示すように、中間部材30に形成された誤組付防止突起31Bを筒軸方向に差し込んで嵌合させることが可能な溝部として機能する。上記構成により、ハンドル20(図8参照)は、誤組付防止溝22Cに誤組付防止突起31B(図7参照)が嵌まる向きでしか中間部材30に差し込めないように誤組み付けが防止される構成とされる。
【0046】
図8に示すように、第2の凹部22Bの内周面には、筒周方向に沿って円弧状に延びる形に突出する左右一対の掛突起22Dが形成されている。これら掛突起22Dは、図5に示すように、中間部材30に形成された左右一対の可撓爪32を第2の凹部22B内に差し込むことで、これらの先端の爪部32Aをそれぞれ筒径方向の内側からスナップフィット嵌合させることが可能な掛部として機能する。
【0047】
(中間部材30の構成)
図3に示すように、中間部材30は、図示左方に開口する背面視コ字板状の装着部31と、装着部31の図示手前側の側板の中央部から手前側に円筒状を成す形に突出する4つの可撓爪32と、を有する。装着部31は、その上下に対向する天板の下面と底板の上面の前後方向の中間部に、図示左右方向に延びる形に突出するスライド突起31Aがそれぞれ形成された構成とされる。
【0048】
各スライド突起31Aは、図7に示すように、互いに図示左右方向に平行に延びる対称形状に形成されている。各スライド突起31Aは、装着部31の天板の下面と底板の上面における図示左側の端部から図示右側の側板と繋がる位置まで図示左右方向に連続的に真っ直ぐ延びる形に形成されている。
【0049】
図3に示すように、装着部31は、操作軸16Aの各スライド溝16Bが形成された先端部に図示右方(半径方向の外側)から差し込まれることにより、操作軸16Aの先端部に被せられた状態に組み付けられる。具体的には、装着部31は、各スライド突起31Aを対応する各スライド溝16Bに通しながらその天板と底板との間に操作軸16Aを差し込むことにより、各スライド突起31Aが対応する各スライド溝16Bにそれぞれ嵌合した状態に組み付けられる。
【0050】
上記組み付けにより、装着部31は、図4図5に示すように、その天板と底板とが操作軸16Aの図示上側の面部と下側の面部とにそれぞれ面当接する状態にセットされる。これらの面当接構造は、操作軸16Aの中心点を向く平面同士の面当接構造とされる。また、装着部31は、その図示右側の側板(図7参照)が、操作軸16Aの図示右側の面部に面当接する状態にセットされる。また、装着部31は、その図示手前側の側板が、操作軸16Aの図示手前側の端面部に面当接した状態にセットされる。
【0051】
なお、装着部31の図示手前側の側板には、その中央部に、丸孔状に貫通した貫通孔31C(図7参照)が形成されている。装着部31の図示手前側の側板は、その貫通孔31Cの周囲の板部分が、操作軸16Aの図示手前側の端面部に面当接した状態にセットされる。
【0052】
その結果、装着部31は、操作軸16Aに対して、回転方向に一体的となる状態に嵌合される。また、装着部31は、操作軸16Aに対して、各スライド突起31Aの各スライド溝16Bへの嵌合により、軸方向にも一体的となる状態に嵌合される。このように、中間部材30の装着部31と操作軸16Aの先端部との間には、上記差し込みによって互いを回転方向と軸方向とに一体的となる状態に嵌合させることが可能なスライド嵌合構造S1が形成されている。
【0053】
図7に示すように、装着部31の図示右側の側板の右側面には、その上下方向の中央部に、前後方向に延びる形に突出する誤組付防止突起31Bが形成されている。誤組付防止突起31Bは、図8で前述したように、ハンドル20を中間部材30(図7参照)に組み付ける際に、ハンドル20に形成された誤組付防止溝22Cを誤組付防止突起31Bに差し込める向きでしか、ハンドル20を中間部材30に組み付けられないようにする誤組み付け防止部として機能するものである。
【0054】
図3に示すように、4つの可撓爪32は、装着部31の図示手前側の側板にあけられた丸孔状の貫通孔31C(図7参照)の周縁に沿って、図示手前側に円筒状を成す形に突出するように形成されている。詳しくは、各可撓爪32は、上記装着部31の貫通孔31Cの周縁に沿って、互いに周方向に同心円上の位置に並んで形成されている。
【0055】
各可撓爪32は、互いに同一形状とされており、貫通孔31Cの周縁に沿った図示上端と下端と左端と右端とに相当する周方向の4箇所の位置に分かれて形成されている。各可撓爪32は、それらの周方向に並ぶ隣同士の間がスリットにより切り分けられた構成とされる。それにより、各可撓爪32は、各々が装着部31と繋がる基端を支点に、片持ち梁の撓み形態のように半径方向の内外に個別に撓むことができる構成とされる。
【0056】
各可撓爪32は、それらの突出した先の外周部に、周方向に延びる形に突出する爪部32Aが形成された構成とされる。各可撓爪32は、図5に示すように、これらによって形成される円筒の外径が、ハンドル20の第2の凹部22Bの内径よりも僅かに小さな形状とされる。
【0057】
しかし、各可撓爪32は、それらの爪部32Aが突出する先端部分によって形成される円筒部分の外径が、ハンドル20の第2の凹部22Bの内径と略同一となる形状とされる。各爪部32Aは、それらの図示手前側の端部が、図示手前側に向かって半径方向の内側に傾斜した先細り形状とされる。また、各爪部32Aは、それらの図示奥側の端部も、図示奥側に向かって半径方向の内側に傾斜した先細り形状とされる。
【0058】
上記中間部材30は、図3に示すように、操作軸16Aに装着された状態から、ハンドル20の取付筒部22(図8参照)が図示手前側から差し込まれることにより、取付筒部22に一体的に嵌合した状態に組み付けられる。具体的には、図5図6に示すように、中間部材30は、上記ハンドル20の差し込みにより、各可撓爪32が取付筒部22の第2の凹部22B内に通される。
【0059】
それにより、各可撓爪32は、これらの具体的な挙動の図示は省略されているが、それらのうちの左右2つの可撓爪32の爪部32Aの先端側の傾斜面が、第2の凹部22Bの内周面上の左右2箇所の位置から突出する対応する各掛突起22Dと当接して、半径方向の内側に撓まされる。その後、各可撓爪32は、更なるハンドル20の差し込みにより、上記左右2つの可撓爪32の爪部32Aが、各掛突起22Dを図示手前側へと乗り越えて、各掛突起22Dの図示手前側の端面に復元に伴う弾発力によりスナップフィット嵌合する。それにより、左右2つの各可撓爪32が、ハンドル20の各掛突起22Dに対して、軸方向に抜けない状態に嵌合する。
【0060】
また、上記差し込みにより、中間部材30の装着部31が、ハンドル20の取付筒部22の第1の凹部22A内に通されて、第1の凹部22Aに対して互いの図示上下面と右側面とが面当接した状態にセットされる。それにより、中間部材30の装着部31が、ハンドル20の取付筒部22に対して回転方向に一体的となる状態に嵌合する。
【0061】
また、中間部材30の装着部31が、その図示右側の側板と取付筒部22の第1の凹部22Aの図示右側面との半径方向の当たりにより、操作軸16Aから図示右側に抜けることが阻止される。ここで、取付筒部22が、本発明の「係合部」に相当する。更に、中間部材30の装着部31に形成された誤組付防止突起31B(図7参照)が、図8に示す第1の凹部22Aの図示右側面に形成された誤組付防止溝22C内に差し込まれて嵌合する。
【0062】
上記組み付けにより、図5図6に示すように、ハンドル20の取付筒部22が、中間部材30に対して、軸方向に抜け止めされると共に、半径方向と回転方向とに一体的に嵌合された状態に取り付けられる。上記取り付けにより、ハンドル20の取付筒部22が、中間部材30を介して、操作軸16Aに回転動力を適切に伝達できる状態に連結される。
【0063】
詳しくは、上記取り付けにより、ハンドル20の取付筒部22は、固定部材17の円筒内部に半径方向に僅かな隙間を挟んで入り込んだ状態にセットされる。それにより、ハンドル20の取付筒部22は、ハンドル20の回転操作時に中間部材30から反力を受けて半径方向の外側に押し撓まされることがあっても、固定部材17により外周側から強固に支えられる状態とされる。
【0064】
したがって、ハンドル20の取付筒部22が、操作軸16Aに対して、回転動力の伝達を適切に行える状態に連結される。上記ハンドル20は、その取付筒部22の第1の凹部22Aと第2の凹部22Bとの間の段差面に中間部材30の装着部31の図示手前側の側板の周縁部が軸方向に当接する位置まで中間部材30に差し込まれて係止される。
【0065】
このように、中間部材30とハンドル20との間には、上記差し込みによって互いを半径方向の撓みを伴って軸方向の抜け止めをするように嵌合させるスナップフィットと、回転方向に一体的となるように嵌合させる回転方向の固定と、半径方向に対向させて中間部材30の操作軸16Aからの半径方向の抜けを阻止する抜止めと、がなされるように取り付けることが可能なスナップフィット嵌合構造S2が形成されている。
【0066】
上記中間部材30を介した組み付けにより、ハンドル20をビス等の締結部材を用いることなく操作軸16Aに一体的に取り付けることができる。したがって、ハンドル20からビス等の締結部材が外部に露出することもないことから、ハンドル20を操作軸16Aに見栄え良く一体的に取り付けることができる。
【0067】
上記中間部材30に取り付けられたハンドル20は、使用者がハンドル20を上記スナップフィットの嵌合力を越える強い力で図示手前側に引き抜くことにより、各可撓爪32の撓みを伴って中間部材30から取り外される。したがって、工具を用いることなくハンドル20の取り外し作業を簡便に行うことができる。
【0068】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る水栓装置1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0069】
すなわち、水栓装置(1)は、手動による回転操作が可能な操作軸(16A)を備える水栓本体(10)と、操作軸(16A)に一体的に取り付けられる回転操作用のハンドル(20)と、を有する。また、水栓装置(1)は、操作軸(16A)に装着されて操作軸(16A)に対するハンドル(20)の取付け部を成す中間部材(30)を有する。また、水栓装置(1)は、中間部材(30)を、操作軸(16A)に対して、半径方向の差し込みにより、回転方向と軸方向とに一体的となるように嵌合させることが可能なスライド嵌合構造(S1)を有する。
【0070】
また、水栓装置(1)は、ハンドル(20)を、中間部材(30)に対して、軸方向の差し込みにより、半径方向の撓みを伴って軸方向の抜け止めをするように嵌合させるスナップフィットと、回転方向に一体的となるように嵌合させる回転方向の固定と、半径方向に対向させて中間部材(30)の操作軸(16A)からの半径方向の抜けを阻止する抜止めと、がなされるように取り付けることが可能なスナップフィット嵌合構造(S2)を有する。
【0071】
上記構成によれば、中間部材(30)を操作軸(16A)に半径方向に差し込んで装着し、この中間部材(30)にハンドル(20)を軸方向に差し込んで取り付けることで、ハンドル(20)を操作軸(16A)に一体的に取り付けることが可能となる。したがって、ハンドル(20)をビス等の締結部材を用いることなく操作軸(16A)に見栄え良く一体的に取り付けることができる。
【0072】
また、中間部材(30)が、操作軸(16A)から軸方向に突出する位置に、ハンドル(20)の軸方向の差し込みにより半径方向の撓みを伴ってハンドル(20)に嵌合される上記スナップフィットを行う可撓爪(32)を有する。上記構成によれば、可撓爪(32)を操作軸(16A)と干渉させることなく半径方向の内側に適切に撓ませることが可能となる。したがって、中間部材(30)を半径方向に大型化することなく、可撓爪(32)の撓み代を適切に確保することができる。
【0073】
また、水栓装置(1)が、水栓本体(10)に対する螺合により操作軸(16A)を取り囲むように配置されて操作軸(16A)の軸方向の抜けを阻止する固定部材(17)を更に有する。固定部材(17)により、中間部材(30)のハンドル(20)が差し込まれる前の組み付け状態における操作軸(16A)からの半径方向の脱落が阻止される。上記構成によれば、固定部材(17)により、ハンドル(20)が差し込まれる前の中間部材(30)を操作軸(16A)から半径方向に脱落させないように仮保持することができる。したがって、水栓装置(1)の組み付け性の向上を図ることができる。
【0074】
また、ハンドル(20)が、中間部材(30)に対する軸方向の差し込みにより中間部材(30)と固定部材(17)との間に半径方向に挟まれるように配置されて中間部材(30)の半径方向の抜けを阻止する上記抜止めを行う係合部(22)を有する。上記構成によれば、中間部材(30)の半径方向の抜止めを行うハンドル(20)の係合部(22)が、固定部材(17)により半径方向の外側から取り囲まれる配置となる。それにより、係合部(22)によって中間部材(30)の半径方向の抜止めをより適切に行うことができる。
【0075】
また、ハンドル(20)と中間部材(30)との間に形成される上記回転方向の固定を行うための嵌合面を成す互いの当接面が、操作軸(16A)の中心点を向く平面同士の面当接構造から成る。上記構成によれば、ハンドル(20)を中間部材(30)に対して適切に回転動力の伝達を行える状態に取り付けることができる。このような構成とすることで、ハンドル(20)と中間部材(30)との面当接構造を、半径方向の立ち上がりの少ないコンパクトな構成とすることができる。
【0076】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0077】
1.本発明の水栓装置は、手動による回転操作が可能な操作軸を備える水栓本体と、操作軸に一体的に取り付けられる回転操作用のハンドルと、を有する様々な水栓装置に適用することができるものである。例えば、本発明の水栓装置は、洗濯機用送り座水栓の他、立形・横形の単水栓や壁付・台付の混合水栓であっても良い。また、ハンドルは、吐水/止水の切り替え操作を行う切替用ハンドルの他、吐水温度の調節を行う温度調節用ハンドルであってもよい。
【0078】
操作軸は、水栓本体からどの向きに延びるように設けられる構成であっても良い。操作軸は、四角棒状以外の角棒状の他、丸棒状に突出する形状から成るものであっても良い。
【0079】
2.中間部材を操作軸に対して半径方向の差し込みにより回転方向と軸方向とに一体的となるように嵌合させるスライド嵌合構造は、中間部材にスライド溝が形成され、操作軸にスライド突起が形成される構成であっても良い。
【0080】
3.中間部材の可撓爪、すなわち、ハンドルの軸方向の差し込みにより半径方向の撓みを伴ってハンドルに嵌合されるスナップフィットを行う可撓爪は、中間部材の操作軸と軸方向の配置が重なる部位に形成されていても良い。
【0081】
4.ハンドルを中間部材に対して軸方向の差し込みにより回転方向に一体的となるように嵌合させる回転方向の固定は、ハンドルと中間部材とをセレーション嵌合やスプライン嵌合により回転方向に一体的となるように嵌合させるものであっても良い。
【0082】
5.ハンドルの係合部、すなわち中間部材に対する軸方向の差し込みにより中間部材と固定部材との間に半径方向に挟まれるように配置されて中間部材の半径方向の抜けを阻止する係合部は、必ずしも中間部材を全周に亘って取り囲むものでなくても良く、少なくとも中間部材の操作軸に対する半径方向の抜けを阻止できる部分に設けられるものであれば良い。
【符号の説明】
【0083】
1 水栓装置
10 水栓本体
11 本体部
12 接続管部
12A 雄ねじ
13 吐水管部
13A 雄ねじ
14 張出筒部
14A 雌ねじ
14B 刳り貫き
15 固定筒部
15A 係合突起
16 可動筒部
16A 操作軸
16B スライド溝
17 固定部材
17A 雄ねじ
20 ハンドル
21 指掛突起
22 取付筒部(係合部)
22A 第1の凹部
22B 第2の凹部
22C 誤組付防止溝
22D 掛突起
30 中間部材
31 装着部
31A スライド突起
31B 誤組付防止突起
31C 貫通孔
32 可撓爪
32A 爪部
S1 スライド嵌合構造
S2 スナップフィット嵌合構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8