(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007081
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】防護柵
(51)【国際特許分類】
E01F 7/04 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
E01F7/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110096
(22)【出願日】2021-07-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】398054845
【氏名又は名称】株式会社プロテックエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】西田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】山本 満明
(72)【発明者】
【氏名】石井 太一
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001PA05
2D001PA06
2D001PB04
2D001PC03
2D001PD06
2D001PD11
(57)【要約】
【課題】簡易な手法により柵高の低下を抑制できる、落石雪崩予防兼用の防護柵を提供すること。
【解決手段】複数の支柱30と三角ネット性の防護ネット30とを有する防護柵であって、防護ネット30の一部と支柱20の下部または斜面谷側アンカー45との間に牽引装置50を張設し、融雪後に支柱が斜面谷側へ向けた傾倒を抑止し得るように、牽引装置50に予め導入した初期張力により、防護ネット30を斜面谷側へ向けて常時弾力的に付勢するように構成した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を隔てて立設した複数の支柱と、前記支柱上部に懸架して山側斜面との間に掛け渡した防護ネットとを有する防護柵であって、
前記防護ネットは三角形の枠ロープの内方に内接ネットを配置してた複数の三角ネットの正逆を交互に配置して帯状の阻止面を形成し、
前記防護ネットの一部と静止部材との間に単数または複数の牽引装置を張設し、
融雪後に支柱が斜面谷側へ向けた傾倒を抑止し得るように、前記牽引装置に予め導入した初期張力により防護ネットを斜面谷側へ向けて常時弾力的に付勢していることを特徴とする、
防護柵。
【請求項2】
前記牽引装置は少なくとも単数または複数の弾性引張材を具備し、該弾性引張材を防護ネットの一部と静止部材との間に張設したことを特徴とする、請求項1に記載の防護柵。
【請求項3】
前記牽引装置は緊張ロープと、緊張ロープの一部に介装した単数または複数の弾性引張材とを具備し、緊張ロープを介して防護ネットの一部と静止部材との間に弾性引張材を張設したことを特徴とする、請求項1または2に記載の防護柵。
【請求項4】
前記三角ネットを構成する枠ロープの側辺の一部に前記牽引装置の一端を連結したことを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の防護柵。
【請求項5】
前記静止部材が支柱の下部または斜面谷側アンカーであることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の防護柵。
【請求項6】
前記支柱の上部と斜面谷側アンカーとの間に谷側控えロープが配設してあることを特徴とする、請求項1に記載の防護柵。
【請求項7】
前記支柱の下部と斜面山側アンカーとの間に配設した山側下部ロープと、前記支柱の下部と斜面谷側アンカーとの間に配設した谷側下部ロープとにより支柱を定位置に位置決めしたことを特徴とする、請求項1または6に記載の防護柵。
【請求項8】
前記防護柵が落石用防護柵と雪崩予防柵の兼用であることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか一項に記載の防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柵高の低下を抑止できる落石防護柵と雪崩予防柵を兼用する防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の支柱間に帯状の防護ネットを張り巡らした防護柵は広く知られている。
そのなかでも、複数の三角ネットを正逆交互に配置して帯状に形成した防護ネットを具備した防護柵が知られている(特許文献1~4)。
【0003】
図7Aを参照して説明すると、三角ネット製の防護ネットaの上辺側は支柱bの上部で支持し、防護ネットaの下辺側は斜面山側アンカーcに固定することで、防護ネットaを斜面山側で斜めに傾けて取り付けている。
支柱bの上部と斜面谷側アンカーdとの間には控えロープeを連結して支柱bの斜面山側へ向けた傾倒を阻止している。
【0004】
また斜面山側に配置した防護ネットaを斜めに傾けて取り付けた防護柵において、防護ネットaの一部と支柱bの基部との間に補助ロープfを取り付けて防護ネットaの形状を保持することが知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-322615号公報
【特許文献2】特開2002-322616号公報
【特許文献3】特開2002-348817号公報
【特許文献4】特開2003-3425号公報
【特許文献5】特開2009-102855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
斜面山側に配置した防護ネットaを斜めに傾けて取り付けた防護柵にはつぎのような問題点を内包している。
<1>受撃前における防護柵の柵高
図7Aは受撃前の防護柵を示していて、防護柵は所定の柵高H
1を有している。
【0007】
<2>積雪期
図7Bは積雪期の防護柵を示している。積雪期においては、防護ネットaの阻止面に斜面谷側へ向けた積雪gの雪圧Wが作用すると、防護ネットaと支柱bを経由して雪圧Wを斜面山側アンカーcと斜面谷側アンカーdで支持する。
両アンカーc,dに作用する雪圧が想定を超えると、両アンカーc,dの頭部位置が支柱bの接近方向に向けて変位する。
両アンカーc,dの頭部位置が互いの接近方向に向けて変位すると、その変位量に応じて支柱bが斜面山側へ傾倒する。
【0008】
<3>融雪後における防護柵の柵高
雪が解けて雪圧Wが消失しても、両アンカーc,dの頭部位置は変位したままであり、初期の位置には戻らない。
雪圧Wが消失することで積雪期に斜面山側へ傾倒していた支柱bは、その自重で斜面谷側へ向けて傾倒し、防護ネットaがのびきることで支柱bの傾倒が保持される。
支柱bが斜面谷側へ向けて傾倒したことに伴い、防護ネットaの上辺の高さが低下する。
すなわち、建設初期における防護柵の柵高H
1に対して、
図7Cに示した融雪後における防護柵では柵高H
2が減少する。
そのため、防護柵の柵高H
2が低くなって、落石が防護ネットを乗り越える可能性がある。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、簡易な手法により柵高の低下を抑制できる、落石雪崩予防兼用の防護柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は所定の間隔を隔てて立設した複数の支柱と、前記支柱上部に懸架して山側斜面との間に掛け渡した防護ネットとを有する防護柵であって、前記防護ネットは三角形の枠ロープの内方に内接ネットを配置してた複数の三角ネットの正逆を交互に配置して帯状の阻止面を形成し、前記防護ネットの一部と静止部材との間に単数または複数の牽引装置を張設し、融雪後に支柱が斜面谷側へ向けた傾倒を抑止し得るように、前記牽引装置に予め導入した初期張力により防護ネットを斜面谷側へ向けて常時弾力的に付勢するように構成した。
本発明の他の形態において、前記牽引装置は少なくとも単数または複数の弾性引張材を具備し、該弾性引張材を防護ネットの一部と静止部材との間に張設した。
本発明の他の形態において、前記牽引装置は緊張ロープと、緊張ロープの一部に介装した単数または複数の弾性引張材とを具備し、緊張ロープを介して防護ネットの一部と静止部材との間に弾性引張材を張設した。
本発明の他の形態において、前記三角ネットを構成する枠ロープの側辺の一部に前記牽引装置の一端を連結した。
本発明の他の形態において、前記静止部材が支柱の下部または斜面谷側アンカーである。
本発明の他の形態において、前記支柱の上部と斜面谷側アンカーとの間に谷側控えロープが配設してある。
本発明の他の形態において、前記支柱の下部と斜面山側アンカーとの間に配設した山側下部ロープと、前記支柱の下部と斜面谷側アンカーとの間に配設した谷側下部ロープとにより支柱を定位置に位置決めしてある。
本発明の他の形態において、前記防護柵が落石用防護柵と雪崩予防柵の兼用である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は少なくとつぎのひとつの効果を得ることができる。
<1>防護ネットの一部と静止部材との間に牽引装置を張設するだけの簡易な手法により、融雪後において柵高の低下を抑制して、防護柵の初期の柵高とほぼ同じ高さを維持することができる。
<2>牽引装置は防護柵の既存の支柱や斜面谷側アンカーを活用して取り付けできるので、牽引装置の取り付けが簡単である。
<3>牽引装置を構成する弾性引張材を選択することで、初期張力の調整および設定を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一部を省略した本発明に係る防護柵の組立斜視図
【
図4】牽引装置の他の取付例を説明するための防護柵の縦断面図
【
図7A】初期の柵高を説明するための従来の防護柵のモデル図
【発明を実施するための形態】
【0013】
【0014】
<1>落石雪崩予防兼用の防護柵
図1~3を参照して落石と雪崩予防の兼用の防護柵10について説明する。
本発明に係る防護柵10は、間隔を隔てて斜面に立設した複数の支柱20と、支柱20の山側斜面側に配置し、複数の三角ネット33の集合体からなる防護ネット30と、支柱20の位置決めと倒立を支える複数のロープ要素と、支柱20または斜面谷側アンカー45から反力を得て防護ネット30を斜面谷側へ向けて常時弾力的に牽引する牽引装置50とを具備する。
支柱20を間に挟んで斜面の上下にそれぞれ複数の斜面山側アンカー40と斜面谷側アンカー45を設ける。
【0015】
<2>支柱
支柱20は、H鋼やコンクリートを充填した鋼管、PC鋼材を内挿しコンクリートを充填したコンクリート充填鋼管等の剛性部材である。
【0016】
<2.1>支柱の位置決め手段
本例で例示した支柱20の位置決め手段について説明する。
支柱20の下部に設けた基板21を斜面に着地させると共に、各支柱20の下部と斜面山側アンカー40の間に配設した山側下部ロープ41と、各支柱20の下部と斜面谷側アンカー45の間に配設した谷側下部ロープ42等により、支柱20下部を定位置に位置決めする。
図示を省略するが、必要に応じて隣り合う支柱20の下部間に下部横ロープを追加してもよい。
【0017】
<2.2>支柱の控えロープ
図1を参照して説明すると、各支柱20の上部と斜面谷側アンカー45の間には複数の谷側控えロープ43が配設してあり、これら複数の谷側控えロープ43が各支柱20の山側斜面へ向けた傾倒と、各支柱20の左右方向へ向けた傾倒を阻止する。
端末の支柱20の上部と側方アンカーの間には側方控えロープ44が配設してあり、側方控えロープ44が端末の支柱20の左右方向へ向けた傾倒を阻止する。
【0018】
支柱20の立設構造は本例で例示した形態に限定されず、支柱20の下部を地中に建て込む杭式構造や、支柱20の下部をコンクリート基礎に立設するコンクリート基礎式構造を適用してもよい。
【0019】
<3>防護ネット
防護ネット30はその上辺側を支柱20の上部で支持し、防護ネット30の下辺側を斜面山側アンカー40に固定することで、防護ネット30を斜面山側で斜めに傾けて取り付ける。
【0020】
図1~3に例示した防護ネット30について説明すると、防護ネット30は帯状の阻止面を有するネット状物であり、複数の三角ネット33からなる。
防護ネット30は必要に応じて三角ネット33の片面に金網を重合させて追加配置する形態も含む。
【0021】
<3.1>三角ネット
三角ネット33は三角形を呈する枠ロープ31と、枠ロープ31の内方に一体に編成した内接ネット32とを有し、その素材はワイヤロープ、PC鋼線、PC鋼より線、炭素繊維等のロープ材からなる。
複数の三角ネット33を連続して繋ぎ合わせることで形成される防護ネット30の阻止面が、可撓性と連続性を有することで、落石用防護柵としてだけでなく、雪崩予防柵としても機能する。
【0022】
<3.1.1>枠ロープ
枠ロープ31は三角ネット33の周縁部に位置する無端構造のロープ材で、正三角形または二等辺三角形を呈する。
各三角ネット33は枠ロープ31を介して支柱20の上部や斜面山側アンカー40に取り付け可能である。
【0023】
<3.1.2>内接ネット
内接ネット32は枠ロープ31の内方に位置させた網状物である。
本例では内接ネット32の網目が菱形の形態について示しているが、網目形状はその他に三角形やリング形等でもよい。内接ネット32の網目形状は特に制約がない。
【0024】
<3.2>三角ネットの配列
三角ネット33は、従来と同様に三角形の底辺を下位に位置させる正立三角形の形態と、三角形の底辺を上位に位置させる逆三角形の形態を交互に配置し、三角ネット33の隣り合う側辺間をロープ材等で連結して帯状の防護ネット30を組み立てる。
【0025】
正立三角形の形態で配置した三角ネット33は、その頂部を支柱20の上部に取り付けて懸架すると共に、三角ネット33の底部の左右の角部を斜面山側アンカー40,40にそれぞれ取り付ける。
【0026】
逆三角形の形態で配置した三角ネット33は、その底部の左右の角部を隣り合う支柱20,20の上部間に取り付けて懸架すると共に、三角ネット33の頂部を斜面山側アンカー40に取り付ける。
【0027】
<3.3>隣り合う三角ネットの角部の連結
隣り合う三つの三角ネット33の角部は、図外の連結ロープまたは連結具を介して支柱20の上部または斜面山側アンカー40にそれぞれ連結が可能である。
【0028】
<4>牽引装置
防護ネット30の一部と静止部材(支柱20の下部または斜面谷側アンカー45)の間に牽引装置50を張設する。
牽引装置50は、融雪後において支柱20が斜面谷側へ向けて傾倒しないように、防護ネット30を構成する各三角ネット33に対して斜面谷側へ向けて、常時、一定の付勢力(弾性引張力)を付与するための装置である。
牽引装置50は、緊張ロープ51と、緊張ロープ51の一部に介装した単数または複数の弾性引張材52とを具備する。
緊張ロープ51を省略して、弾性引張材52の両端を直接防護ネット30と静止部材との間に張設してもよい。
【0029】
<4.1>緊張ロープ
緊張ロープ51は鋼製または繊維製のロープ材または棒材である。
緊張ロープ51の一端51aは三角ネット33を構成する枠ロープ31の側辺の一部に連結し、緊張ロープ51の他端51bは支柱20の下部に連結する。
本例では緊張ロープ51の他端51bを支柱20の下部に連結した形態について説明するが、
図4に示すようには緊張ロープ51の他端51bを斜面谷側アンカー45に連結してもよい。
【0030】
<4.2>弾性引張材
弾性引張材52は防護ネット30に導入する初期張力源であり、支柱20や防護ネット30の自重などを考慮して適宜の引張力を選択する。
【0031】
具体的な弾性引張材52としては、例えばコイルスプリング、ゴム、ラバースプリング等の伸縮変形が可能な弾性引張材を適用できる。実用上はコイルスプリングが好適である。
【0032】
弾性引張材52の設置位置は、本例で示した緊張ロープ51の中間部に介装する形態に限定されず、緊張ロープ51の上端または下端に配置してもよい。
【0033】
<4.3>牽引装置の設置数
三角ネット33の左右の側辺に対して2つの牽引装置50を一組として配置する。
図1~3に示した形態では、各牽引装置50を構成する緊張ロープ51の一端51aを三角形の枠ロープ31の側辺の中間部の一箇所に連結する形態について説明するが、枠ロープ31の側辺の複数箇所に複数の牽引装置50を連結してもよい。
図4は枠ロープ31の側辺の二箇所に2組の牽引装置50,50の一端50a,50aを連結した形態を示している。
【0034】
なお、牽引装置50の一端50aを正逆一対の三角ネット33の側辺に取り付けるにあたり、牽引装置50の一端50aを正逆一対の三角ネット33,33の隣り合う2つの側辺に対して共有して連結する形態について示しているが、牽引装置50の一端50aを三角ネット33の側辺に対して個別に連結してもよい。
【0035】
[防護柵の施工方法]
つぎに防護ネットの施工方法について説明する。
【0036】
<1>アンカー工
三角ネット33の寸法と支柱20の設置間隔に応じて、斜面の所定の位置に斜面山側アンカー40と斜面谷側アンカー45を設ける。
【0037】
<2>支柱の組立て
現場へに搬入した支柱本体と付属部品をボルト連結して支柱20を組み立てる。
【0038】
<3>防護ネットの組立て
支柱20の立設前に、支柱20の上部に正逆の三角ネット33を取り付けると共に、支柱20の上部に複数の控えロープ43,44の一端を連結する。
【0039】
<4>支柱の吊り上げ
移動式クレーン等を使用して支柱20を吊り上げる。
【0040】
<5>防護ネットの組立て
支柱20の上部に垂下した正逆の三角ネット33を展開し、各三角ネット33の下端を斜面山側アンカー40に固定した後に、隣り合う三角ネット33の側辺間を連結ロープ等で編み込んで防護ネット30を組み立てる。
必要に応じて三角ネット33の片面に菱形金網を重ねて一体に取り付ける。
【0041】
さらに斜面山側アンカー40と支柱20の下部の間に山側下部ロープ41と谷側下部ロープ42を配索して、支柱20下部を定位置に位置決めする。
支柱20下部の位置決め作業と並行して、谷側控えロープ43の下端を斜面谷側アンカー45に固定して支柱20の傾倒を規制する。
【0042】
<6>牽引装置の張設
防護ネット30を構成する各三角ネット33の側辺の一部と、支柱20の下部との間に牽引装置50を張設して、防護柵10の施工を完了する。
【0043】
防護ネット30を構成する各三角ネット33の枠ロープ31に牽引装置50の引張力が斜面谷側へ向けて作用するので、各枠ロープ31の弛みがなくなって三角形ネット33の形状が保持される。
【0044】
[防護柵の作用]
つぎに防護ネットの作用について説明する。
【0045】
<1>積雪期
図5は積雪期の防護柵10を示している。
積雪期において、防護ネット30の阻止面に積雪60の雪圧Wが作用して、両アンカー40,45の頭部位置が支柱20の接近方向に変位すると、両アンカー40,45の変位量に応じて支柱20が斜面山側へ傾倒する。
支柱20が斜面山側へ傾倒しても、防護ネット30の一部と静止部材との間に配設した牽引装置50は緊張状態を維持している。
【0046】
<2>融雪後における防護柵の柵高
牽引装置50には融雪後に支柱20が斜面谷側へ向けた傾倒を抑止し得るように、予め初期張力が導入してある。
そのため、融雪により雪圧Wが消失しても、防護ネット30の一部と支柱20の下部の間に配設した牽引装置50が防護ネット30を斜面谷側へ向けて緊張するので、防護ネット30の伸長を抑えながら、支柱20の斜面山側へ向けた傾倒を効果的に阻止する。
このように牽引装置50は両アンカー40,45が互いの接近方向に変位しても、支柱20の斜面谷側へ向けた傾倒を小さく抑制することができる。
そのため、融雪後における防護柵の柵高H
3は、
図4に示した防護柵10の初期の柵高H
1と大差がなく、防護柵10における柵高変化を小さく抑えられるので、融雪後において防護柵10の落石に対する高い捕捉性能を保証できる。
このように本発明では、牽引装置50に所定の初期張力を付与しておくだけで、融雪後においても防護柵10の初期の柵高とほぼ同じ高さを維持することができる。
【0047】
<3>牽引装置の緩衝作用
さらに牽引装置50は弾力性を有していることから、落石の衝突時において牽引装置50が防護ネット30の自由な変形を抑制して運動エネルギーを吸収できるので、牽引装置50は緩衝装置としても機能する。
【符号の説明】
【0048】
10・・・・・防護柵
20・・・・・支柱
21・・・・・基板
30・・・・・防護ネット
31・・・・・枠ロープ
32・・・・・内接ネット
33・・・・・三角ネット
40・・・・・斜面山側アンカー
41・・・・・山側下部ロープ
42・・・・・谷側下部ロープ
43・・・・・谷側控えロープ
44・・・・・側方控えロープ
45・・・・・斜面谷側アンカー
50・・・・・牽引装置
51・・・・・緊張ロープ
52・・・・・弾性引張材
【手続補正書】
【提出日】2021-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を隔てて立設した複数の支柱と、前記支柱上部に懸架して山側斜面との間に掛け渡した防護ネットとを有し、前記防護ネットは三角形の枠ロープの内方に内接ネットを配置した複数の三角ネットの正逆を交互に配置し、正立三角形の形態で配置した三角ネットの底部の左右の角部を斜面山側アンカーに取り付けて帯状の阻止面を形成した防護柵であって、
隣り合う前記三角ネットを構成する枠ロープの左右の側辺の一部と静止部材との間に単数または複数の牽引装置を張設し、
前記牽引装置は少なくとも単数または複数の弾性引張材を具備し、
融雪後に支柱が斜面谷側へ向けた傾倒を抑止し得るように、前記牽引装置の弾性引張材に予め導入した初期張力により防護ネットを斜面谷側へ向けて常時弾力的に付勢していることを特徴とする、
防護柵。
【請求項2】
前記牽引装置は緊張ロープと、緊張ロープの一部に介装した単数または複数の弾性引張材とを具備し、緊張ロープを介して隣り合う前記三角ネットを構成する枠ロープの左右の側辺の一部と静止部材との間に弾性引張材を張設したことを特徴とする、請求項1に記載の防護柵。
【請求項3】
前記静止部材が支柱の下部または斜面谷側アンカーであることを特徴とする、請求項1または2に記載の防護柵。
【請求項4】
正立三角形の形態で配置した前記三角ネットの頂部を支柱の上部に取り付けて懸架すると共に、該三角ネットの底部の左右の角部を斜面山側アンカーにそれぞれ取り付け、逆三角形の形態で配置した三角ネットの底部の左右の角部を隣り合う支柱の上部間に取り付けて懸架すると共に、該三角ネットの頂部を斜面山側アンカーに取り付けたことを特徴とする、請求項1に記載の防護柵。
【請求項5】
前記支柱の上部と斜面谷側アンカーとの間に谷側控えロープが配設してあることを特徴とする、請求項1に記載の防護柵。
【請求項6】
前記支柱の下部と斜面山側アンカーとの間に配設した山側下部ロープと、前記支柱の下部と斜面谷側アンカーとの間に配設した谷側下部ロープとにより支柱を定位置に位置決めしたことを特徴とする、請求項1または5に記載の防護柵。
【請求項7】
前記防護柵が落石用防護柵と雪崩予防柵の兼用であることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載の防護柵。