(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070840
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】熱伝導式ガスセンサおよびガス検知器
(51)【国際特許分類】
G01N 27/18 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
G01N27/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183191
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000250421
【氏名又は名称】理研計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】松坂 効
(72)【発明者】
【氏名】朝田 隆二
(72)【発明者】
【氏名】信澤 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】笹原 和弘
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA02
2G060AB18
2G060AE19
2G060AF07
2G060AG03
2G060BA05
2G060BB02
2G060BD08
2G060JA01
2G060KA01
(57)【要約】
【課題】熱伝導式ガスセンサの向きや周辺環境の圧力が変わっても、検知対象ガスの濃度を高い精度で検知することができる熱伝導式ガスセンサおよびガス検知器を提供する。
【解決手段】内部に被検ガスを導入するガス導入口を有するケーシングと、前記ケーシング内に配置された、コイル状の機能部を有する熱伝導素子と、前記ケーシング内において前記熱伝導素子を収納する熱伝導素子収納部材とを備えてなり、前記熱伝導素子収納部材は、前記熱伝導素子が収納される収納室と、前記収納室に被検ガスを導入する通気口とを有し、前記収納室において、前記熱伝導素子における前記機能部は、前記通気口を除き、気流を遮断する壁面によって取り囲まれていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に被検ガスを導入するガス導入口を有するケーシングと、
前記ケーシング内に配置された、コイル状の機能部を有する熱伝導素子と、
前記ケーシング内において前記熱伝導素子を収納する熱伝導素子収納部材と
を備えてなり、
前記熱伝導素子収納部材は、前記熱伝導素子が収納される収納室と、前記収納室に被検ガスを導入する通気口とを有し、
前記収納室において、前記熱伝導素子における前記機能部は、前記通気口を除き、気流を遮断する壁面によって取り囲まれていることを特徴とする熱伝導式ガスセンサ。
【請求項2】
前記機能部と前記機能部を取り囲む前記壁面との離間距離が0.2~2.0mmであり、前記機能部と前記通気口との離間距離が0.8~2.2mmであることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導式ガスセンサ。
【請求項3】
前記機能部の径が0.2~0.4mmであることを特徴とする請求項2に記載の熱伝導式ガスセンサ。
【請求項4】
前記通気口を通過する気流を規制する、通気性を有する気流規制部材が、前記通気口を覆うよう配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の熱伝導式ガスセンサ。
【請求項5】
前記気流規制部材がガラスウールよりなることを特徴とする請求項4に記載の熱伝導式ガスセンサ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱伝導式ガスセンサを備えてなることを特徴とするガス検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導式ガスセンサおよびこれを備えたガス検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば可燃性ガスなどを検知するガスセンサとしては、熱伝導式ガスセンサが知られている。この熱伝導式ガスセンサは、ガスの種類や濃度によって環境雰囲気の熱伝導率が異なることを利用したものであり、被検ガスにおける熱伝導率の変化を検知対象ガスの濃度として検知するものである。
具体的には、熱伝導式ガスセンサは例えば金属コイルよりなる熱伝導素子を有し、この熱伝導素子に通電した状態で検知対象ガスが接触すると、当該検知対象ガス固有の熱伝導率により熱放散の状態が変化し、これにより、熱伝導素子の温度が変化する。そして、熱伝導素子の温度変化に伴い、当該熱伝導素子を構成する金属コイルの抵抗値が変化し、この抵抗値の変化量に基づいて検知対象ガスの濃度が測定される。
【0003】
このような熱伝導式ガスセンサとしては、ガス導入口を有するケーシング(キャップ)と、このケーシング内に配置された熱伝導素子を備え、熱伝導素子が、白金よりなる芯線の表面に金よりなる被覆膜が形成された構成のものが知られている(特許文献1参照。)。
この熱伝導式ガスセンサにおいては、検知対象ガス例えばブタンやプロパン等の可燃性ガスを含む被検ガスが、ガス導入口からケーシング内に流入すると、熱伝導素子に検知対象ガスが接触することにより、発熱した熱伝導素子の温度が、検知対象ガスの濃度に応じて変化するため、当該熱伝導素子の抵抗値が変化し、この抵抗値の変化量に基づいて検知対象ガスの濃度が算出されて出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような熱伝導式ガスセンサを備えたガス検出器においては、当該熱伝導式ガスセンサの向きが変わると濃度指示値が変動する方向依存性や、周辺環境の圧力が変わると濃度指示値が変動する圧力依存性を有するという問題がある。このような問題が生じる理由は、以下のように推測される。
熱伝導式ガスセンサに通電した状態では、熱伝導素子は、例えば400℃程度の高温に発熱し、この熱伝導素子の発熱によって当該熱伝導素子の周辺において気流が生じる。そして、熱伝導式ガスセンサの向きが変わったり、周辺環境の圧力が変わったりすると、気流の状態が変化する結果、熱伝導に差が生じることにより、濃度指示値が変動する。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、熱伝導式ガスセンサの向きや周辺環境の圧力が変わっても、検知対象ガスの濃度を高い精度で検知することができる熱伝導式ガスセンサおよびガス検知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱伝導式ガスセンサは、内部に被検ガスを導入するガス導入口を有するケーシングと、
前記ケーシング内に配置された、コイル状の機能部を有する熱伝導素子と、
前記ケーシング内において前記熱伝導素子を収納する熱伝導素子収納部材と
を備えてなり、
前記熱伝導素子収納部材は、前記熱伝導素子が収納される収納室と、前記収納室に被検ガスを導入する通気口とを有し、
前記収納室において、前記熱伝導素子における前記機能部は、前記通気口を除き、気流を遮断する壁面によって取り囲まれていることを特徴とする。
【0008】
本発明の熱伝導式ガスセンサにおいては、前記機能部と前記機能部を取り囲む前記壁面との離間距離が0.2~2.0mmであり、前記機能部と前記通気口との離間距離が0.8~2.2mmであることが好ましい。
また、前記機能部の径が0.2~0.4mmであることが好ましい。
【0009】
また、本発明の熱伝導式ガスセンサにおいては、前記通気口を通過する気流を規制する、通気性を有する気流規制部材が、前記通気口を覆うよう配置されていることが好ましい。
また、前記気流規制部材がガラスウールよりなることが好ましい。
【0010】
本発明のガス検知器は、上記の熱伝導式ガスセンサを備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱伝導素子が収納される収納室において、当該熱伝導素子における機能部が、通気口を除き、気流を遮断する壁面によって取り囲まれているため、熱伝導式ガスセンサの向きや周辺環境の圧力が変わっても、検知対象ガスの濃度を高い精度で検知することができる。
また、通気口を通過する気流を規制する気流規制部材が、通気口を覆うよう配置されることにより、検知対象ガスの濃度をより一層高い精度で検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の熱伝導式ガスセンサの一例における構成を示す説明用断面図である。
【
図2】
図1に示す熱伝導式ガスセンサを分解して示す説明図である。
【
図3】
図2に示す熱伝導式ガスセンサにおける熱伝導素子の構成を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は長手方向に切断した断面図、(c)は長手方向に垂直な方向に切断した断面図である。
【
図4】熱伝導素子収納部材における凹所を拡大して示す平面図である。
【
図5】熱伝導素子収納部材における凹所およびその周辺部分を熱伝導素子の長手方向に沿って切断して示す説明用断面図である。
【
図6】熱伝導素子収納部材における凹所およびその周辺部分を熱伝導素子の長手方向に垂直な方向に沿って切断して示す説明用断面図である。
【
図7】本発明のガス検知器の一例における構成の概略を示すブロック図である。
【
図8】実施例の方向依存性試験において、熱伝導式センサにおける熱伝導素子収納部材の向きを示す説明図である。
【
図9】実施例の方向依存性試験の結果を示すグラフである。
【
図10】実施例の圧力依存性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のガス検知器の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の熱伝導式ガスセンサの一例における構成を示す説明用断面図である。
図2は、
図1に示す熱伝導式ガスセンサ10を分解して示す説明図である。この熱伝導式ガスセンサ10は、円筒状のケーシング11を有する。このケーシング11においては、一端側(
図1において上端側)の開口がケーシング11内に被検ガスを導入するガス導入口11aとされている。ケーシング11内には、略円形の基板15が、ケーシング11の軸方向に垂直な面に沿って配置されている。この基板15には、被検ガスの温度および湿度を測定する温湿度検知素子16や、複数のスタッド17が実装されている。また、基板15には、後述する導電ピン24が挿通される、それぞれ基板15の厚み方向に貫通する2つの貫通孔18が形成されている。
【0014】
ケーシング11内における基板15上には、熱伝導素子25を収納する、円盤上の熱伝導素子収納部材20が配置されている。この熱伝導素子収納部材20は、絶縁性および耐熱性を有する樹脂材料、例えばガラス繊維等の繊維を含有するポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂によって構成されている。
熱伝導素子収納部材20の表面(
図2において上面)には、熱伝導素子25が収納された収納室Sを形成する凹所26が形成されている。また、熱伝導素子収納部材20には、温湿度検知素子16に被検ガスを導入する通気路21が、当該熱伝導素子収納部材20の表面から裏面に貫通して伸びるよう形成されている。
【0015】
熱伝導素子25は、
図3(a)に示すように、コイル状の機能部25aと、この機能部25aの両端の各々に一体に連結されたリード部25bとにより構成されている。また、熱伝導素子25は、
図3(b)および(c)に示すように、芯線25cと、この芯線25cの表面に形成された被覆膜25dとによって構成されている。
芯線25は、温度抵抗係数が高く、高温における耐蝕性が良好な金属例えば白金などにより構成されている。
被覆膜25bは、検知対象ガスに対して不活性な金属例えば金などによって構成されている。被覆膜25bの厚みは例えば0.1μmである。被覆膜25bを形成する方法としては、スパッタリングなどの適宜の薄膜形成法を利用することができる。
【0016】
熱伝導素子25における機能部25aの径(コイル径)は0.2~0.4mmであることが好ましい。
また、熱伝導素子25における機能部25aの長さ(コイル長)は、例えば0.3~1.2mmである。
また、機能部25aを構成するコイルの巻き数は、例えば8~12ターンである。
熱伝導素子25の寸法の一例を挙げると、素線の線径が20μm、機能部25aの径が0.3mm、機能部25aの長さが1.0mmであり、機能部25aを構成するコイルの巻き数は11ターンである。
【0017】
この例における熱伝導素子収納部材20の凹所26は、
図4にも示すように、熱伝導素子25の長手方向(機能部25を構成するコイルの軸方向)と同方向に伸びる長尺な平面形状を有し、凹所26における中央領域に収納室Sが形成されている。また、この凹所26の開口は収納室Sに被検ガスを導入する通気口27とされている。この通気口27は、ケーシング11のガス導入口11aに対向するよう形成されている。
【0018】
熱伝導素子収納部材20の凹所26において、収納室Sの両側には、熱伝導素子25を支持する支持領域Rが形成されている。収納室Sの底面と支持領域Rの各々の底面との境界には段部が形成され、これにより、支持領域Rの各々の底面が収納室Sの底面より突出した状態とされている。そして、熱伝導素子収納部材20には、2つの導電ピン24が、熱伝導素子収納部材20の裏面から当該熱伝導素子収納部材20の厚み方向に伸びて支持領域Rに到達するよう設けられている。熱伝導素子25におけるリード部25bの各々の外端部は、導電ピン24の各々の端面に電気的に接続された状態で固定支持されており、導電ピン24の各々の端面は、エポキシ樹脂よりなるスポットコート23によって覆われている。また、支持領域Rの各々には、樹脂封止材28がスポットコート23を覆うよう充填されている。
【0019】
熱伝導素子収納部材20の収納室Sにおいて、熱伝導素子25における機能部25aは、通気口27を除き、気流を遮断する壁面によって取り囲まれている。この例では、
図6に示すように、熱伝導素子25における機能部25aは、熱伝導素子収納部材20の収納室Sにおける2つの側壁面W1,W2と、底壁面W3とによって取り囲まれている。
【0020】
収納空間Sにおいて、熱伝導素子25における機能部25aと、当該機能部25aを取り囲む壁面(図示の例では、側壁面W1,W2および底壁面W3の各々)との離間距離は、0.2~2.0mmであることが好ましい。また、機能部25aを取り囲む壁面のうち、通気口27に対向しない壁面(図示の例では側壁面W1,W2)と機能部25aとの離間距離は、0.2~1.2mmであることが好ましく、より好ましくは0.4~1.0mmである。
機能部25aと壁面との離間距離が過小である場合には、熱伝導素子25が放熱しすぎてしまうため、熱伝導素子25が必要な温度に到達しにくくなることがある。一方、機能部25aと壁面との離間距離が過大である場合には、通気口27の向きが上向きのときに熱伝導素子25からの上昇気流が大きくなり、通気口27の向きが下向きの場合と比べて、熱伝導素子25の放熱の状態が大きく異なるため、通気口27の向きが上向きから他の向き例えば下向きに変わったり、周辺環境の圧力が変わったりすると、濃度指示値が変動しやすくなることがある。
【0021】
また、収納空間Sにおいて、熱伝導素子25における機能部25aと、通気口27との離間距離は0.8~2.2mmであることが好ましく、より好ましくは1.2~1.8mmである。
機能部25aと通気口27との離間距離が過小である場合には、通気口27の向きが上向きのときに熱伝導素子25からの上昇気流が大きくなり、通気口27の向きが下向きの場合と比べて、熱伝導素子25の放熱の状態が大きく異なるため、通気口27の向きが上向きから他の向き例えば下向きに変わったり、周辺環境の圧力が変わったりすると、濃度指示値が変動しやすくなることがある。一方、機能部25aと通気口27との離間距離が過大である場合には、検知対象ガスを検知したときの出力が小さくなることがある。
【0022】
熱伝導素子収納部材20の表面上には、通気口27を通過する気流を規制する円形のシート状の気流規制部材12が、通気口27および通気路21の開口を覆うよう配置されている。
この気流規制部材12を構成する材料としては、通気性を有するものが用いられ、その具体例としては、ガラスウール、石英ウール、アルミナウールなどが挙げられる。
また、気流規制部材12の厚みは、例えば0.2~0.8mmである。
【0023】
気流規制部材12上には、例えばステンレス(SUS316)よりなる円形の焼結金網13が、その周縁部がケーシング11の内壁面に固定されて配置されており、焼結金網13と熱伝導素子収納部材20とによって、気流規制部材12が挟持されている。
また、ケーシング11内における基板15の下方には、例えばエポキシ樹脂接着剤などの接着剤が硬化されてなる封止剤14が、ケーシング11の下側の開口を塞ぐよう設けられている。
【0024】
図7は、本発明の熱伝導式ガスセンサを備えたガス検知器の一例における構成の概略を示すブロック図である。このガス検知器は、
図1に示す熱伝導式ガスセンサ10と、熱伝導式ガスセンサ10の動作を制御する制御部30とを備えてなる。
制御部30は、熱伝導素子用電源31と、温湿度検知素子用電源32と、熱伝導素子25の電流を測定する電流計35と、湿度測定用電圧計36と、温度測定用電圧計37とを有する。熱伝導素子用電源31および電流計35は、導電ピン24(
図2参照)を介して熱伝導素子25に電気的に接続されている。また、温湿度検知素子用電源32、湿度測定用電圧計36および温度測定用電圧計37は、スタッド17(
図2参照)を介して温湿度検知素子16に電気的に接続されている。
【0025】
このようなガス検知器においては、熱伝導素子25に例えば0.2~2.0Vの電圧が印加された状態で、検知対象ガス例えばブタンやプロパン等の可燃性ガスを含む被検ガスが、焼結金網13および気流規制部材12を介して、熱伝導素子収納部材20の収納室Sに流入すると、熱伝導素子25に検知対象ガスが接触する。これにより、発熱した熱伝導素子25の温度が、検知対象ガスの濃度に応じて変化するため、当該熱伝導素子25の抵抗値が変化し、この抵抗値の変化量に基づいて検知対象ガスの濃度が算出されて出力される。
【0026】
上記の熱伝導式ガスセンサ10によれば、熱伝導素子25が収納される収納室Sにおいて、当該熱伝導素子25における機能部25aが、通気口27を除き、気流を遮断する壁面W1,W2,W3によって取り囲まれているため、熱伝導式ガスセンサ10の向きや周辺環境の圧力が変わっても、収納室S内における気流の状態の変化が抑制され、その結果、検知対象ガスの濃度を高い精度で検知することができる。
また、通気口27を通過する気流を規制する気流規制部材12が、通気口27を覆うよう配置されることにより、通気口27を通過する気流の状態の変化が抑制されるので、検知対象ガスの濃度をより一層高い精度で検知することができる。
【0027】
以上、本発明のガス検知器の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることができる。
例えば熱伝導素子収納部材20の収納室Sとしては、熱伝導素子25における機能部25aが、通気口27を除き、気流を遮断する壁面によって取り囲まれる構造であれば、
図4および
図5に示すものに限定されず、種々の形状のものを採用することができる。
また、熱伝導素子収納部材20における樹脂封止材28は必須のものではなく、スポットコート23が露出した状態とされていてもよい。
【実施例0028】
〈実施例1〉
図1乃至
図6に示す構成に従い、下記の仕様の熱伝導式センサを作製し、この熱伝導式センサを用いて、
図7に示す構成のガス検知器を作製した。
[ケーシング(11)]
材質:ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂
寸法:全長=16.6mm,ガス導入口(11a)の径=11.0mm
[気流規制部材(12)]
材質:ガラスウール
寸法:直径=12.8mm,厚み=0.40mm
[熱導電素子収納部材(20)]
材質:ガラス繊維を含有するポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂
寸法:直径=16.0mm,厚み=6.7mm
収納室(S)の寸法:長さ(熱伝導素子の長手方向の寸法)=2.5mm,幅=2.2mm,高さ=4mm
[熱伝導素子(25)]
構成:白金よりなる芯線(25c)の表面に金よりなる被覆膜(25d)が形成されて構成され、機能部(25a)における巻き数が11ターンである。
寸法:素線の線=20μm,機能部(25a)の径=0.3mm,機能部(25a)の長さ=1.0mmである。
以上において、熱伝導素子(25)の機能部(25a)と収納室(S)の側壁面(W1,W2)との離間距離は、それぞれ0.95mmであり、熱伝導素子(25)の機能部(25a)と収納室(S)の底壁面(W3)との離間距離は、1.75mmである。また、熱伝導素子(25)の機能部(25a)と通気口(27)との離間距離は1.95mmである。
【0029】
[方向依存性試験]
上記のガス検知器を、イソブタンガス(濃度100体積%)雰囲気下において運転させ、熱導電素子収納部材(20)の向きが
図8に示す方向となる姿勢1~姿勢6に変更しながら、出力値を測定し、姿勢1の出力値を100%としたときの相対出力値を求めた。ここで、各姿勢の出力値は、当該姿勢で30秒間保持した後に測定した。結果を
図9に示す。
【0030】
[圧力依存性試験]
上記のガス検知器を、イソブタンガス(濃度100体積%)雰囲気下において運転させ、環境圧力が基準圧力(常圧)であるときの出力値を100%とした場合に、環境圧力を変化させたときの相対出力値を調べた。結果を
図10に示す。
図10において、環境圧力の値はゲージ圧を示す。
【0031】
〈比較例1〉
熱導電素子収納部材を用いなかったこと以外は実施例1と同様の構成の熱伝導式ガスセンサおよびガス検知器を作製した。
このガス検知器について、実施例1と同様にして方向依存性試験および圧力依存性試験を行った。結果を
図9および
図10に示す。
【0032】
図9および
図10の結果から明らかなように、実施例1に係るガス検知器によれば、熱伝導式ガスセンサの向きや周辺環境の圧力が変わっても、検知対象ガスの濃度を高い精度で検知することができることが確認された。