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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070842
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】可搬式作業台および安全監視システム
(51)【国際特許分類】
   E06C 1/39 20060101AFI20230515BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230515BHJP
   E04G 1/32 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
E06C1/39 Z
G06T7/00 C
E04G1/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183193
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】影嶋 宏一
(72)【発明者】
【氏名】森 大樹
(72)【発明者】
【氏名】皆内 佳奈子
【テーマコード(参考)】
2E044
5L096
【Fターム(参考)】
2E044AA06
2E044EE09
2E044EE11
5L096CA02
5L096EA26
5L096FA02
5L096FA15
5L096FA67
(57)【要約】
【課題】画像で認識可能な可搬式作業台を提供すること。
【解決手段】可搬式作業台は、一対の梯子状の支持脚と、一対の梯子状の支持脚の間に架け渡される天板と、天板の下面の中心から吊り下げられる下げ振りと、を含み、下げ振りは、錘と、錘を保持する紐状部材と、を含む。錘は、所定のマーカーを含んでもよい。錘は、紐状部材に対して垂直な円形状の上面を含んでもよい。錘は、側面を含み、所定のマーカーは、上面に付される第1のマーカーおよび側面に付される第2のマーカーを含み、第1のマーカーは、第2のマーカーと異なってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の梯子状の支持脚と、
前記一対の梯子状の支持脚の間に架け渡される天板と、
前記天板の下面の中心から吊り下げられる下げ振りと、を含み、
前記下げ振りは、
錘と、
前記錘を保持する紐状部材と、を含む、可搬式作業台。
【請求項2】
前記錘は、所定のマーカーを含む、請求項1に記載の可搬式作業台。
【請求項3】
前記錘は、前記紐状部材に対して垂直な円形状の上面を含む、請求項2に記載の可搬式作業台。
【請求項4】
前記錘は、側面を含み、
前記所定のマーカーは、前記上面に付される第1のマーカーおよび前記側面に付される第2のマーカーを含み、
前記第1のマーカーは、前記第2のマーカーと異なる、請求項3に記載の可搬式作業台。
【請求項5】
画像に含まれる所定のマーカーに基づき、前記画像の中の可搬式作業台の下げ振りを特定する下げ振り特定部と、
特定された前記下げ振りに基づき、前記画像の中の前記可搬式作業台の天板を特定する天板特定部と、
特定された前記下げ振りおよび前記天板に基づき、前記天板の水平状態を表す天板状態値を生成する天板状態検出部と、
前記天板状態値に基づき、前記可搬式作業台の水平度を判定する判定部と、を含む、安全監視システム。
【請求項6】
前記天板状態検出部は、前記天板の二次元座標を三次元座標に変換し、変換された前記三次元座標に基づき、前記天板状態値を生成する、請求項5に記載の安全監視システム。
【請求項7】
さらに、前記画像の中の前記可搬式作業台の開き止め金具の状態を表す開き止め金具状態情報を生成する開き止め金具状態検出部を含み、
前記判定部は、さらに、前記開き止め金具状態情報に基づき、前記可搬式作業台の前記開き止め金具が正しく使用されているか否かを判定する、請求項5または請求項6に記載の安全監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、可搬式作業台を用いた作業現場の安全性を監視する安全監視システムに関する。また、本発明の一実施形態は、安全監視システムで使用される可搬式作業台に関する。
【背景技術】
【0002】
作業現場では、様々な装置または設備が使用されるが、安全な作業のためには、これらの装置または設備が正しく使用されることが重要である。例えば、可搬式作業台(立馬ともいう。)は、主に、中低所作業で使用される設備であり、作業者は安全帯(墜落制止用器具ともいう。)を装備することなく作業する場合が多い。そのため、可搬式作業台が水平に設置されていない場合、可搬式作業台の転倒や作業者の落下などの災害を招く。例えば、特許文献1には、作業者が可搬式作業台から転落することを防止する方法として、可搬式作業台の天板上の作業者の荷重パターンを検出し、作業者に注意喚起することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-4513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、可搬式作業台が正しく使用されていない場合には、たとえ作業者に注意喚起を促したとしても、そもそも、作業者は危険な状態で作業していることになる。そのため、作業現場において、第三者の視点から、可搬式作業台が正しく使用されているかを監視することの要求があった。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑み、画像で認識可能な可搬式作業台を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一実施形態は、可搬式作業台が正しく、安全に使用されているか否かを監視する安全監視システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る可搬式作業台は、一対の梯子状の支持脚と、一対の梯子状の支持脚の間に架け渡される天板と、天板の下面の中心から吊り下げられる下げ振りと、を含み、下げ振りは、錘と、錘を保持する紐状部材と、を含む。
【0007】
錘は、所定のマーカーを含んでもよい。
【0008】
錘は、紐状部材に対して垂直な円形状の上面を含んでもよい。
【0009】
錘は、側面を含み、所定のマーカーは、上面に付される第1のマーカーおよび側面に付される第2のマーカーを含み、第1のマーカーは、第2のマーカーと異なってもよい。
【0010】
本発明の一実施形態に係る安全監視システムは、画像に含まれる所定のマーカーに基づき、画像の中の可搬式作業台の下げ振りを特定する下げ振り特定部と、特定された下げ振りに基づき、画像の中の可搬式作業台の天板を特定する天板特定部と、特定された下げ振りおよび天板に基づき、天板の水平状態を表す天板状態値を生成する天板状態検出部と、天板状態値に基づき、可搬式作業台の水平度を判定する判定部と、を含む。
【0011】
天板状態検出部は、天板の二次元座標を三次元座標に変換し、変換された三次元座標に基づき、天板状態値を生成してもよい。
【0012】
安全監視システムは、さらに、画像の中の可搬式作業台の開き止め金具の状態を表す開き止め金具状態情報を生成する開き止め金具状態検出部を含み、判定部は、さらに、開き止め金具状態情報に基づき、可搬式作業台の開き止め金具が正しく使用されているか否かを判定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態に係る可搬式作業台は、撮影された画像の中で特定されやすいため、画像を用いて可搬式作業台の使用状況を確認することができる。また、本発明の一実施形態に係る安全監視システムは、画像を用いて可搬式作業台が正しく、安全に使用されているか否かを判定し、作業者に注意喚起を行うことができる。したがって、可搬式作業台を使用した作業において、作業者が可搬式作業台から転落するなどの災害を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る安全監視システムの構成を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る安全監視システムで使用される可搬式作業台の模式的な上面図および側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る安全監視システムで使用される可搬式作業台の下げ振りの構成を示す模式的な斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る安全監視システムの撮像装置および情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係る安全監視システムを用いる作業現場の監視処理を説明するフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る安全監視システムの情報処理装置で実行される監視処理を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、実施形態はあくまで一例にすぎず、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することによって容易に想到し得るものについても、当然に本発明の範囲に含有される。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0016】
本発明細書において、説明の便宜上、「上」、「上方」、もしくは「上方部」、または「下」、「下方」、もしくは「下方部」という語句を用いて説明するが、各構成の上下関係を説明しているに過ぎない。例えば、構造物の構成の位置関係を説明する場合、構造物の通常使用する態様を基準とし、構造物が設置される面側(例えば、床面側)を「下」、「下方」、または「下方部」とすることがある。
【0017】
本明細書において、各構成に付記される「第1」、「第2」、または「第3」の文字は、各構成を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限り、それ以上の意味を有さない。
【0018】
本明細書および図面において、同一又は類似する複数の構成を総じて表記する際には同一の符号を用い、これら複数の構成のそれぞれを区別して表記する際には、大文字又は小文字のアルファベットを添えて表記する場合がある。また、一つの構成のうちの複数の部分を区別して表記する際には、ハイフンと自然数を用いる場合がある。
【0019】
図1図6を参照して、本発明の一実施形態に係る安全監視システム10の構成および安全監視システム10を用いる作業現場の監視処理について説明する。
【0020】
[1.安全監視システム10の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る安全監視システム10の構成を示す模式図である。安全監視システム10は、可搬式作業台100、撮像装置200、および情報処理装置300を含む。撮像装置200は、作業現場に設置された可搬式作業台100を撮影することができる。撮像装置200は、情報処理装置300と通信可能に接続されているため、撮像装置200によって撮影された画像は、情報処理装置300に送信される。情報処理装置300では、撮影された画像に基づき、可搬式作業台100が正しく使用されているか否かを判定することができる。すなわち、安全監視システム10は、可搬式作業台100が使用される作業現場の安全性を監視するシステムである。
【0021】
[1-1.可搬式作業台100の構成]
始めに、安全監視システム10で使用される可搬式作業台100の構成について説明する。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態に係る安全監視システム10で使用される可搬式作業台100の模式的な上面図および側面図である。具体的には、図2(A)は、可搬式作業台100の上面図であり、図2(B)および図2(C)は、可搬式作業台100の側面図である。可搬式作業台100は、天板110、一対の支持脚120、開き止め金具130、および下げ振り140を含む。
【0023】
天板110は、2つの長辺(y方向)および2つの短辺(x方向)を含む四角形状を有する。天板110の2つの短辺の各々は支持脚120によって支持され、天板110は、一対の支持脚120の間に架け渡されている。
【0024】
支持脚120は、2本の支柱122および複数本の踏桟124を含む。複数本の踏桟124は、2本の支柱122間に架け渡されている。すなわち、支持脚120は、梯子状を有する。2本の支柱122の幅は、下方に向かって広がっている。そのため、2本の支柱122の間に架け渡される踏桟124の長さは、上段に位置するものよりも下段に位置するものの方が長い。なお、踏桟124の本数および間隔は、特に限定されない。踏桟124の本数および間隔は、作業者の歩幅などを考慮して、適宜決定される。
【0025】
支柱122は、伸縮可能であってもよい。例えば、支柱122は、上部支柱(外管)および下部支柱(内管)を含み、上部支柱内に下部支柱が挿入されていてもよい。この場合、上部支柱から下部支柱を引き出すことにより、支柱122を伸長することができる。
【0026】
支持脚120は、天板110の底面側に折り畳むことができる。作業現場では、折り畳まれた支持脚120を開き、天板110に対して支持脚120が一定の角度を有するように、天板110と支持脚120との位置が開き止め金具130によって固定される。開き止め金具130は、一端が天板110に固定され、他端が支持脚120に固定されて、折曲可能に設けられていてもよい。この場合、可搬式作業台100を使用するときには、開き止め金具130は、直線状となるように使用される。可搬式作業台100を使用しないときには、開き止め金具130が折り曲げられることにより、支持脚120を天板110の底面側に折り畳むことができる。また、開き止め金具130は、直線状を有し、一端が天板110および支持脚120の一方に回転可能に固定され、他端が天板110および支持脚120の他方に係止可能に設けられていてもよい。この場合、可搬式作業台100を使用するときには、支持脚120を開き、開き止め金具130を天板110と支持脚120との間に係止する。いずれの場合においても、可搬式作業台100を使用しているときには、開き止め金具130は、天板110と支持脚120との間で直線状を有する。
【0027】
下げ振り140は、錘142および紐状部材144を含む。下げ振り140は、天板110に吊り下げられている。具体的には、紐状部材144の一端は、錘142の上面に接続され、紐状部材144の他端は、天板110の底面に接続されている。錘142は、紐状部材144よりも十分に重い。そのため、下げ振り140は、紐状部材144の長さ方向が常に鉛直方向となる。紐状部材144は、下げ振り140が吊り下げられたときに錘142を保持し、長さ方向が鉛直方向を指し示すことができればよく、特に限定されない。例えば、紐状部材144の代わりに、糸状部材または棒状部材を用いることもできる。
【0028】
ここで、図3を参照して、下げ振り140の構成について説明する。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係る安全監視システム10で使用される可搬式作業台100の下げ振り140の構成を示す模式的な斜視図である。下げ振り140は、円形状の上面を含む円柱形状を有する。下げ振り140は、少なくとも円形状の上面を含んでいればよく、外観形状は特に限定されない。例えば、下げ振り140は、円形状の上面を含む円錐形状または円錐台形状であってもよい。また、紐状部材144の一端は、錘142の上面の中心、すなわち、円の中心に接続されている。但し、紐状部材144の一端の接続位置は、これに限られない。紐状部材144の一端は、紐状部材144が鉛直方向を指し示したときに、錘142の上面の法線方向が紐状部材144の長さ方向に常に平行となるように、錘142と接続されていればよい。なお、紐状部材144の他端は、天板110の底面の中心、すなわち、四角形状の対角線の交点の位置に接続されている。但し、紐状部材144の他端の位置は、これに限られない。例えば、紐状部材144の他端は、天板110の隅(四角形状の頂点)に接続されていてもよい。
【0030】
錘142は、所定のマーカーを有する。マーカーは、形状、模様、もしくは色彩、またはこれらの結合であってもよい。マーカーは、錘142の上面とそれ以外の面とが区別できるものであることが好ましい。例えば、マーカーは、錘142の上面に第1の色を塗布し、それ以外の面に第1の色とは異なる第2の色を塗布することによって形成することができる。また、マーカーは、錘142の上面に第1の方向に沿って走る第1の縞模様を設け、それ以外の面に第1の方向と異なる方向に沿って走る第2の縞模様を設けることによって形成することができる。
【0031】
詳細は後述するが、可搬式作業台100は下げ振り140を含み、下げ振り140がマーカーを有しているため、作業現場を撮影した画像の中のマーカーを検出し、画像の中の下げ振りおよび可搬式作業台を容易に特定することができる。
【0032】
[1-2.撮像装置200および情報処理装置300の構成]
続いて、安全監視システム10の撮像装置200および情報処理装置300の構成について説明する。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態に係る安全監視システム10の撮像装置200および情報処理装置の構成を示すブロック図である。撮像装置200は、ネットワークNWを介して、情報処理装置300と通信可能に接続される。ネットワークNWは、無線であることが好ましく、例えば、インターネットなどである。撮像装置200は、撮像部210および通信部220を含む。情報処理装置300は、下げ振り特定部310、可搬式作業台特定部320、天板状態検出部330、開き止め金具状態検出部340、判定部350、通信部360、および記憶部370を含む。
【0034】
撮像部210は、作業現場を撮影し、画像を生成することが生成することができる。撮像部210は、例えば、CD(Charge-Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary MOS)イメージセンサなどの固体撮像素子を含むカメラである。
【0035】
通信部220は、情報またはデータを送受信可能な通信インターフェースであり、撮像部210によって撮影された画像を情報処理装置300に送信することができる。
【0036】
撮像装置200は、作業現場の所定の位置に設置され、画角内の作業現場を撮影するものであってもよく、作業者のヘルメットなどに取り付けられ、作業者とともに移動しながら作業現場を撮影するものであってもよい。また、撮像装置200は、ドローンまたは自律走行型ロボットなどのように、作業現場を移動可能な移動体に搭載されていてもよい。
【0037】
情報処理装置300は、情報またはデータを用いて演算処理を行うことができる、いわゆるコンピュータである。情報処理装置300は、例えば、中央演算装置(CPU)、マイクロプロセッサ(MPU)、または画像処理装置(GPU)を含む。また、情報処理装置300は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)、もしくはソリッドステートドライブ(SSD)などの記憶装置、または通信インターフェースを含む。
【0038】
下げ振り特定部310、可搬式作業台特定部320、天板状態検出部330、開き止め金具状態検出部340、および判定部350は、コンピュータが記憶装置に格納されたプログラムを実行することによって機能することができる。通信部360は、撮像装置200から情報またはデータを受信することできる。具体的には、通信部360は、撮像装置200が撮影した作業現場の画像を受信することができる。また、通信部360は、後述する不安全行動情報を、作業現場の作業者または監督者の情報端末に送信することができる。記憶部370は、情報またはデータを格納することができ、記憶部370には、可搬式作業台データベース372が格納されている。可搬式作業台データベース372は、マーカーと可搬式作業台100とが紐付けられて登録されている。そのため、可搬式作業台データベース372を用いて、マーカーに紐付けられた可搬式作業台100のパラメータ(例えば、天板110の各頂点の三次元座標、短辺の長さ、および長辺の長さ、ならびに下げ振り140の上面の直径など)を取得することができる。
【0039】
下げ振り特定部310は、画像の中のマーカーを識別し、マーカーに基づき下げ振りを特定することができる。例えば、下げ振り140の錘142の上面に塗布された色がマーカーである場合、下げ振り特定部310は、画像の中のマーカーの色の領域と他の色の領域とを区別することにより、マーカー、すなわち、下げ振りの錘の上面を識別し、画像の中の下げ振りを特定することができる。なお、詳細は後述するが、下げ振り特定部310は、下げ振りの錘の上面を識別できることが好ましい。
【0040】
可搬式作業台特定部320は、画像の中の下げ振りの上方に位置する四角形状を天板として特定することができる。なお、画像の中の天板は、四角形状の対角線の交点を中心として、180度回転対称な図形として特定される。これにより、天板状態検出部330によって実行される天板の水平状態の計算における計算量を削減することができる。
【0041】
天板状態検出部330は、下げ振り特定部310によって特定された下げ振りおよび可搬式作業台特定部320によって特定された天板に基づき、画像の中の天板の水平状態を検出し、天板状態値を生成することができる。これにより、可搬式作業台100の水平度を把握し、可搬式作業台100が正しく設置されて使用されているか否かを判定することができる。
【0042】
開き止め金具状態検出部340は、画像の中の開き止め金具の状態を検出し、開き止め金具状態情報を生成することができる。これにより、可搬式作業台100の開き止め金具130の使用状態を把握し、開き止め金具130が正しく使用されているか否かを判定することができる。
【0043】
判定部350は、天板状態値に基づき、可搬式作業台100の天板110の水平状態を判定することができる。また、判定部350は、開き止め状態検出部に基づき、可搬式作業台100の開き止め金具130の使用状態を判定することができる。これらにより、作業現場において、可搬式作業台100が正しく、安全に使用されているか否かを把握することができる。なお、判定部350は、可搬式作業台100が正しく、安全に使用されていない場合には、不安全行動情報を生成することができる。不安全行動情報は、作業現場の作業者または監督者の情報端末に送信されてもよい。この場合、作業者または監督者に、作業現場の可搬式作業台100の不安全状態を通知し、注意喚起を行うことができる。
【0044】
[2.安全監視システム10を用いる作業現場の監視処理]
図5は、本発明の一実施形態に係る安全監視システム10を用いる作業現場の監視処理を説明するフローチャートである。安全監視システム10を用いる作業現場の監視処理は、撮像装置200によって作業現場が撮影されることによって開始される。図5に示すフローチャートでは、撮像装置200から送信された画像に基づき、情報処理装置300で実行される監視処理(ステップS110~ステップS170)について説明する。
【0045】
ステップS110では、下げ振り特定部310が、画像の中の下げ振りを特定する。換言すると、下げ振り特定部310は、画像の中に下げ振りが含まれるか否かを判定する。具体的には、下げ振り特定部310は、画像の中の下げ振りのマーカーを識別し、マーカーに基づき下げ振りを特定する。下げ振りが特定されたとき(ステップS110:YES)、ステップS120が実行される。下げ振りが特定されないとき(ステップS110:NO)、ステップS110が再度実行される。
【0046】
ステップS120では、可搬式作業台特定部320が、画像の中の可搬式作業台を特定する。換言すると、可搬式作業台特定部320は、画像の中に可搬式作業台が含まれるか否かを判定する。具体的には、可搬式作業台特定部320は、特定された下げ振りの上方に位置する四角形状を天板として特定する。天板が特定されたとき(ステップS120:YES)、ステップS130が実行される。天板が特定されないとき(ステップS120:NO)、ステップS110が再度実行される。
【0047】
ステップS130では、天板状態検出部330が、特定された天板の水平状態を検出する。天板の水平状態の検出では、画像の中の天板の二次元座標を三次元座標にする変換が行われ、撮像装置200の撮影角度を補正する変換が行われ、鉛直方向に対して垂直な水平方向と比較した天板状態値の生成が行われる。以下、適宜、図6を参照しながら、順に説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る安全監視システムの情報処理装置300で実行される監視処理を説明する模式図である。
【0048】
始めに、画像の中の天板の二次元座標を三次元座標にする変換について説明する。図6(A)に示すように、画像は、二次元座標(u,v)を有するが、これを三次元座標(u,v,w)に拡張すると、画像面は、三次元座標(u,v,0)と表すことができる。
【0049】
天板状態検出部330は、画像の中の天板の二次元座標を取得し、これを画像面内の三次元座標に拡張する(以下、「第1の三次元座標」とする。)。次に、天板状態検出部330は、可搬式作業台データベース372からマーカーに紐付けられた可搬式作業台100の天板110の三次元座標を取得する。実際には、天板110の4つの頂点の三次元座標であるが、ここでは、便宜上、天板110の三次元座標として説明する。天板状態検出部330は、天板110の三次元座標を、縮小、拡大、または回転した三次元座標(以下、「第2の三次元座標」とする。)を生成し、第2の三次元座標が画像面に投影された三次元座標(以下、「第3の三次元座標」とする。)を第1の三次元座標と照合する。天板状態検出部330は、第3の三次元座標が第1の三次元座標と一致する(例えば、第1の三次元座標と第3の三次元座標とが所定の一致度以上を有する)ように、第2の三次元座標の生成および照合を繰り返す。天板状態検出部330は、第1の三次元座標と一致した第3の三次元座標に対応する第2の三次元座標を画像の中の天板の三次元座標(u,v,w)として取得する。
【0050】
なお、画面の中の天板および下げ振りの二次元座標を三次元座標に変換する方法は、上記の方法に限定されない。下げ振り特定部310および天板状態検出部330は、画像の中で特定された天板および下げ振りに基づいて、天板の三次元座標を取得することができればよい。
【0051】
次に、撮像装置200の撮影角度を補正する変換について説明する。
【0052】
図6(B)に示すように、天板状態検出部330は、画像の中の下げ振りの錘の上面の短軸の長さdおよび長軸の長さdを取得する。錘の上面に対する撮像装置200の撮影角度θは、式(1)で表される。
【0053】
【数1】
【0054】
また、天板状態検出部330は、画像の中の天板の中心および下げ振りの錘の上面の中心の各々の二次元座標を取得する。天板の中心と錘の上面の中心とを結ぶ直線方向が、画像の中の鉛直方向に相当する。天板状態検出部330は、天板の中心を通り、画像の中の鉛直方向に垂直な直線(以下、「中心線」とする。)を算出する。中心線は、画像の中の水平方向を表す。なお、中心線の二次元座標は、画像面内の三次元座標に拡張され、単位ベクトル(n,n,0)として表すことができる。
【0055】
なお、上述した説明は、下げ振り140の紐状部材144の他端が天板110の中心に接続されている場合の説明である。しかしながら、下げ振り140の紐状部材144の他端が天板110の中心以外であっても、天板110と紐状部材144の他端との接続位置を予め取得しておくことにより、中心線を算出することが可能である。
【0056】
水平方向は、錘の側面から眺めた方向であり、これは、中心線を軸として、角度-θで回転させることによって得られる。そこで、第2の三次元座標(u,v,w)を、単位ベクトル(n,n,0)を軸として、角度φ(=-θ)で回転させる変換を行うことにより、水平方向から眺めた天板の三次元座標(u’,v’,w’)を取得する。なお、変換式は、式(2)で表される。
【0057】
【数2】
【0058】
次に、鉛直方向に対して垂直な水平方向と比較した天板状態値の生成について説明する。
【0059】
天板状態検出部330は、天板の三次元座標(u’,v’,w’)を画像面に投影した三次元座標(u’,v’,0)の中心線からの距離を算出する。中心線の単位ベクトルが水平方向であるため、中心線からの距離が小さいと天板の傾きが小さく、中心線からの距離が大きいと天板の傾きが大きいことを意味する。すなわち、算出される中心線からの距離は、天板の水平状態を表す天板状態値ということができる。
【0060】
ステップS130は、天板状態値が生成されることによって終了する。
【0061】
ステップS140では、開き止め金具状態検出部340が、画像の中の可搬式作業台の開き止め金具の状態を検出し、開き止め金具状態情報を生成する。具体的には、開き止め金具状態検出部340は、画像の中の天板の長辺から支持脚に、または支持脚から天板の長辺に向かって延在する形状を特定する。ここで特定される形状は、例えば、直線状または屈曲状などである。特定された形状が直線状であるとき、開き止め金具状態検出部340は、正常状態の開き止め金具状態情報を生成する。特定された形状が直線状以外であるとき、金具状態検出部340は、異常状態の開き止め金具状態情報を生成する。また、天板の長辺から支持脚に、または支持脚から天板の長辺に向かって延在する形状が特定されないとき(例えば、形状の端部が天板または支持脚と重畳しないときなど)、異常状態の開き止め金具状態情報が生成される。すなわち、可搬式作業台100の開き止め金具130が正常に使用されていないとき、異常状態の開き止め金具状態情報が生成される。
【0062】
ステップS150では、判定部350が、天板状態値に基づき、可搬式作業台100の天板110の水平状態を判定する。天板状態値が所定のしきい値以下であるとき(ステップS150:YES)、ステップS160が実行される。天板状態値が所定のしきい値を超えるとき(ステップS150:NO)、ステップS170が実行される。
【0063】
ステップS160では、判定部350が、開き止め金具状態情報に基づき、可搬式作業台100の開き止め金具130の使用状態を判定する。開き止め金具状態情報が正常状態であるとき(ステップS160:YES)、監視処理は終了する。開き止め金具状態情報が異常状態であるとき(ステップS160:NO)、ステップS170が実行される。
【0064】
ステップS170では、判定部350が、不安全行動情報を生成する。不安全行動情報は、可搬式作業台100が安全な状態で使用されていないことを示す情報である。ステップS170が実行されると、監視処理は終了する。なお、監視処理は、定期的に実施されることが好ましく、一定の周期で間欠的に実施されることが好ましい。監視処理が周期的に実施されることで、作業工程の変化が大きい作業現場(例えば、建設現場など)での安全を確保することができる。
【0065】
なお、詳細な説明は省略するが、生成された不安全行動情報は、作業現場の作業者または監督者の情報端末に送信されることにより、作業者または監督者に、作業現場の可搬式作業台100の不安全状態を通知し、注意喚起を行うことができる。
【0066】
以上、本発明の一実施形態に係る安全監視システム10によれば、可搬式作業台100を使用した作業現場を撮影した画像に基づき、可搬式作業台100が正しく、安全に使用されているか否かを判定することができる。したがって、安全監視システム10は、可搬式作業台100を使用した作業現場の安全性を監視することができる。また、本発明の一実施形態に係る可搬式作業台100は、錘142に所定のマーカーが付されているため、画像の中のマーカーを検出し、画像の中の天板および下げ振りを容易に特定することができる。
【0067】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または工程の追加、省略、もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0068】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0069】
10:安全監視システム、 100:可搬式作業台、 110:天板、 120:支持脚、 122:支柱、 124:踏桟、 130:金具、 142:錘、 144:紐状部材、 200:撮像装置、 210:撮像部、 220:通信部、 300:情報処理装置、 310:特定部、 320:可搬式作業台特定部、 330:天板状態検出部、 340:金具状態検出部、 350:判定部、 360:通信部、 370:記憶部、 372:可搬式作業台データベース
図1
図2
図3
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図5
図6