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  • 特開-蒸気湿り度調整システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070882
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】蒸気湿り度調整システム
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
F22B35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183291
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】小野本 泰介
【テーマコード(参考)】
3L021
【Fターム(参考)】
3L021AA05
3L021DA02
3L021FA02
3L021FA03
(57)【要約】
【課題】湿り度を適切に調整することができ、さらに排出されるドレンを有効利用することができる蒸気湿り度調整システムの提供。
【解決手段】フラッシュタンク2で生成されたフラッシュ蒸気は、気液分離器4に与えられ、蒸気とドレンとが分離される。分離されたドレンは回流ドレンとしてフラッシュタンク2に与えられて回流し、有効利用される。また、分離された蒸気は混合用蒸気としてモイスナー6に与えられ、モイスナー6は混合用ドレンと混合して導出蒸気を噴出する。導出蒸気の湿り度は湿度センサ15で検出され、この検出湿り度に基づいてコントローラー8は、蒸気バルブ11及びドレンバルブ12を制御し、導出蒸気の湿り度を調整する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気が凝縮して発生した凝縮水を取り込み、当該凝縮水を再蒸発させて再蒸発蒸気を生成する再蒸発手段、
前記再蒸発蒸気を取り込み、当該再蒸発蒸気を分離蒸気と分離水とに分離する分離手段、
前記分離水を、前記再蒸発手段に供給して回流させる回流手段、
前記分離蒸気を取り込み、湿り度調整流体と混合して最終蒸気を生成する混合手段、
前記最終蒸気の湿り度を検出して検出信号を出力する検出手段、
前記検出信号に基づいて、前記混合手段における分離蒸気と湿り度調整流体との混合の度合いを制御し、所望の湿り度を有する最終蒸気を生成させる制御手段、
を備えたことを特徴とする蒸気湿り度調整システム。
【請求項2】
請求項1に係る蒸気湿り度調整システムにおいて、
前記湿り度調整流体は、再蒸発手段が取り込んだ前記凝縮水、及び回流手段が再蒸発手段に供給した前記分離水である、
ことを特徴とする蒸気湿り度調整システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る蒸気湿り度調整システムは、所望の湿り度の蒸気を得るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気湿り度調整システムは、例えば対象となる製品を加湿するための機器に関して用いられる。蒸気湿り度調整システムとしては、後記特許文献1及び後記特許文献2にそれぞれ開示されている技術がある。
【0003】
まず、特許文献1に開示された段ボールシートの紙粉付着防止装置においては、過熱蒸気を熱源とする複数の熱板2a、2b、2cが直線状に配設されており、これらの熱板2a、2b、2cの上面と相対するようにキャンバスベルト3が周回している。そして、熱板2a、2b、2cとキャンバスベルト3の間に、糊付けされたコルゲート紙6aにライナー紙6bを重ねて挿入し、加熱しながらコルゲート紙6aとライナー紙6bとを接着させる。
【0004】
熱板2a、2b、2cの熱源として用いられた過熱蒸気は、フラッシュタンク12に取り込まれて気水分離される。そして、このフラッシュタンク12から抽出された蒸気はノズル14を通じてキャンバスベルト3に吹き付けられる。また、フラッシュタンク12から抽出された蒸気は、ノズル13a、13bを通じて、複数の熱板2a、2b、2cの隙間からライナー紙8に直接吹き付けられる。これによって、段ボールシートの製造過程における静電気の発生を抑え、静電気によって段ボールシートに紙粉が付着することを防止し印刷不良を減少させる。
【0005】
次に、特許文献2に開示された蒸気の質制御装置においては、蒸気管路1を通じて移送された蒸気は、圧力制御弁2で所定の圧力まで減圧されて気液分離器3に供給される。そして、気液分離器3で蒸気中に混入していた復水は分離され、蒸気トラップ10と排出管11から系外へ排出される。
【0006】
復水が取り除かれた蒸気は、蒸気流量計5を経て加熱冷却手段6に供給され、加熱冷却手段6において蒸気には高圧高温蒸気と冷却水との混合が噴射される。これによって蒸気に所定の加熱又は冷却が行われ、所望の湿り度等の蒸気を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-194979号公報
【特許文献2】特開2005-121262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特許文献1に開示された技術においては、フラッシュタンク12から抽出された蒸気は、ノズル14やノズル13a、13bを通じて対象物に吹き付けられる。このため、吹き付けられる蒸気の乾き度を適切に調整することができない。
【0009】
これに対して特許文献2に開示された技術においては、気液分離器3が蒸気から復水を分離して排出管11から系外へ排出すると共に、復水が分離された蒸気を加熱冷却手段6に供給する。そして、加熱冷却手段6で高圧高温蒸気と冷却水との混合を噴射することによって、所望の湿り度等の蒸気を得る。しかし、気液分離器3で分離された復水は系外へ排出されるため、復水の有効利用を図ることはできない。
【0010】
そこで、本願に係る蒸気湿り度調整システムは、湿り度を適切に調整することができ、さらに排出されるドレンを有効利用することができる蒸気湿り度調整システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に係る蒸気湿り度調整システムは、
蒸気が凝縮して発生した凝縮水を取り込み、当該凝縮水を再蒸発させて再蒸発蒸気を生成する再蒸発手段、
前記再蒸発蒸気を取り込み、当該再蒸発蒸気を分離蒸気と分離水とに分離する分離手段、
前記分離水を、前記再蒸発手段に供給して回流させる回流手段、
前記分離蒸気を取り込み、湿り度調整流体と混合して最終蒸気を生成する混合手段、
前記最終蒸気の湿り度を検出して検出信号を出力する検出手段、
前記検出信号に基づいて、前記混合手段における分離蒸気と湿り度調整流体との混合の度合いを制御し、所望の湿り度を有する最終蒸気を生成させる制御手段、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願に係る蒸気湿り度調整システムにおいては、検出手段が最終蒸気の湿り度を検出して検出信号を出力し、制御手段はこの検出信号に基づいて、混合手段における分離蒸気と湿り度調整流体との混合の度合いを制御し、所望の湿り度を有する最終蒸気を生成させる。このため、最終蒸気の湿り度を適切に調整することができる。
【0013】
また、回流手段は、分離水を再蒸発手段に供給して回流させる。このため、分離手段が分離した分離水を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願に係る蒸気湿り度調整システムの第1の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る蒸気湿り度調整システムの下記の要素に対応している。
【0016】
フラッシュタンク2・・・再蒸発手段
気液分離器4・・・分離手段
モイスナー6・・・混合手段
コントローラー8・・・制御手段
湿度センサ15・・・検出手段
回流路61・・・回流手段
ドレン・・・凝縮水
フラッシュ蒸気・・・再蒸発蒸気
混合用蒸気・・・分離蒸気
混合用ドレン・・・湿り度調整流体
回流ドレン・・・分離水
導出蒸気・・・最終蒸気
【0017】
[第1の実施形態]
本願に係る蒸気湿り度調整システムの第1の実施形態を図1に基づいて説明する。図1は本実施形態における蒸気湿り度調整システムのブロック図である。
【0018】
産業プラント等にはボイラーで生成された蒸気を移送するための配管系統が設置されていることがあり、蒸気はこの配管系統を通じて各機器に送られ熱源等として使用される。蒸気は移送途中の放熱や各機器における熱交換によって凝縮し、配管系統にはドレン(凝縮水)が発生する。
【0019】
図1に示す移送管51にはこのようなドレンが流れ込み、この移送管51にはスチームトラップ20が設けられている。スチームトラップ20は、ドレンを適宜、配管外に排出し、かつ蒸気を極力漏らさないように動作する自働弁である。
【0020】
スチームトラップには種々の構造のものがあるが、フロート式トラップは弁室に中空のフロートを内蔵している。そして、通常時においては、このフロートは弁室の底部付近に形成されたドレン排出口を塞いでおり(閉弁状態)、ドレンの弁室の通過を遮断している。これに対して、弁室にドレンが流入した場合、ドレンの滞留に従って作動時においてはこのフロートが浮上し(開弁状態)、自動的にドレン排出口を開放して開弁する。
【0021】
ドレン排出口が開放されたことによってドレンの弁室の通過が許容され、弁室内に滞留したドレンは、配管内の高圧の勢いを受けて自動的にドレン排出口から排出される。ドレンの排出後はフロートが下降して復位し、再びドレン排出口を閉塞する。なお、このようにフロートは浮上及び下降を繰り返してドレンを排出するが、ドレン排出口は常時、ドレンに埋没した状態にあるため、スチームトラップから蒸気漏れは生じない。
【0022】
スチームトラップ20が排出したドレンは、フラッシュタンク2に導入されてタンク内に貯留される。フラッシュタンク2は、圧力差によって導入されたドレンを再蒸発させ、フラッシュ蒸気(再蒸発蒸気ともいう。)を発生させるものである。なお、フラッシュタンク2内において、所定のレベルを超える余剰のドレンは、オーバーフロー管53を通じて外部に排出される。
【0023】
フラッシュタンク2で発生したフラッシュ蒸気は、フラッシュ蒸気管55を通じて気液分離器4に与えられる。気液分離器4は、例えば内部に旋回羽根を備えており(図示せず)、取り込んだフラッシュ蒸気を旋回させ、遠心力により質量の大きな水分(ドレン)を外周へ振り出しながら、質量の小さな蒸気を中心部から流出させる。これによって、気体としての蒸気と、液体としてのドレンとを分離することができる。
【0024】
気液分離器4においてフラッシュ蒸気から分離されたドレンは、本実施形態では回流路61を通じ、回流ドレンとしてフラッシュタンク2に与えられて回流する。これによって、気液分離器4が分離したドレンを有効利用することができる。
【0025】
また、気液分離器4においてフラッシュ蒸気から分離された蒸気は、蒸気管59を通じて混合用蒸気としてモイスナー6に取り込まれる。そして、蒸気管59には、モイスナー6の直前に蒸気バルブ11が設けられており、コントローラー8からの開弁信号又は閉弁信号に従って開閉動作を行い、蒸気バルブ11の開度が微調整される。
【0026】
また、上述のフラッシュタンク2にはドレン管57が接続されており、フラッシュタンク2に貯留されているドレンは、このドレン管57を通じて混合用ドレンとしてモイスナー6に取り込まれる。ドレン管57にはポンプ25が設けられており、混合用ドレンをフラッシュタンク2からモイスナー6に圧送している。また、ドレン管57には、モイスナー6の直前にドレンバルブ12が設けられており、コントローラー8からの開弁信号又は閉弁信号に従って開閉動作を行い、ドレンバルブ12の開度が微調整される。
【0027】
こうしてモイスナー6には混合用蒸気と混合用ドレンとが取り込まれる。モイスナー6は、混合用蒸気と混合用ドレンとを混合し、これを導出蒸気として導出路63を通じて外部に噴射する。噴射された導出蒸気は、例えば対象となる製品を加湿するために用いられる。
【0028】
本実施形態においては、導出路63に湿度センサ15が設けられており、導出蒸気の湿り度を検出し検出信号を出力している。この検出信号はコントローラー8に与えられ、コントローラー8は、導出蒸気の現在の湿り度を「検出湿り度」として把握する。また、コントローラー8は、導出蒸気についての所望の湿り度を「設定湿り度」として、予め内部メモリ(図示せず)に記憶している。このため、コントローラー8は、「設定湿り度」と「検出湿り度」とを比較して、「検出湿り度」が「設定湿り度」に一致するように蒸気バルブ11及びドレンバルブ12の開度を制御する。
【0029】
すなわち、「検出湿り度」が「設定湿り度」よりも高い場合、コントローラー8は蒸気バルブ11に向けての開弁信号、又はドレンバルブ12に向けての閉弁信号のいずれか一方又は双方を出力し、モイスナー6における蒸気の混合量がドレンの混合量よりも相対的に多くなるように調整する。これによって、「検出湿り度」が低くなるように調整され、「検出湿り度」を「設定湿り度」に一致させることができる。
【0030】
上記とは反対に、「検出湿り度」が「設定湿り度」よりも低い場合、コントローラー8は蒸気バルブ11に向けての閉弁信号、又はドレンバルブ12に向けての開弁信号のいずれか一方又は双方を出力し、モイスナー6におけるドレンの混合量が蒸気の混合量よりも相対的に多くなるように調整する。これによって、「検出湿り度」が高くなるように調整され、「検出湿り度」を「設定湿り度」に一致させることができる。
【0031】
以上のように、コントローラー8は、「設定湿り度」と「検出湿り度」とを比較し、「検出湿り度」が「設定湿り度」に一致するように蒸気バルブ11及びドレンバルブ12を制御するため、導出蒸気の湿り度を「設定湿り度」に調整することができ、適切な湿り度の導出蒸気を得ることができる。
【0032】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、再蒸発手段としてフラッシュタンク2を例示したが、ドレンを再蒸発させて再蒸発蒸気を生成するものであれば、他の構成を用いることができる。また、前述の実施形態においては、分離手段として気液分離器4を例示したが、再蒸発蒸気を取り込み、蒸気(分離蒸気)とドレン(分離水)とに分離するものであれば他の構成を用いることができる。
【0033】
さらに、前述の実施形態においては、回流手段として回流路61を例示したが、ドレン(分離水)を再蒸発手段(フラッシュタンク2等)に供給して回流させるものであれば、他の形状、構造のものを採用してもよい。
【0034】
また、前述の実施形態においては、混合手段としてモイスナー6を例示したが、蒸気(分離蒸気)とドレン(湿り度調整流体)を取り込み、両者を混合した蒸気(最終蒸気)を生成するものであれば他の構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0035】
2:フラッシュタンク
4:気液分離器
6:モイスナー
8:コントローラー
15:湿度センサ
61:回流路

図1