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特開2023-70897需要管理システム、電力品質管理システム、並びに方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070897
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】需要管理システム、電力品質管理システム、並びに方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
H02J3/00 130
H02J3/00 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183340
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】友部 修
(72)【発明者】
【氏名】足立 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】松田 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亮
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA01
5G066AA02
5G066AA03
5G066AE01
5G066AE04
5G066AE09
5G066DA04
(57)【要約】
【課題】新規電力需要家を含む需要家の情報から電力需要を推定し、活用する電力需要管理システム、電力品質管理システム、並びに方法を提供する。
【解決手段】複数項目で構成された需要家の情報について、不明な項目の情報を補完する需要家情報補完手段と,複数項目で構成された既存需要家の情報について、既存需要家の情報と類似の情報を有する需要家を抽出し、既存需要家を分類する既存需要家クラスタリング手段と,類似の情報を有する需要家の集合における需要パターンから、新規需要家の需要パターンを生成する需要パターン生成手段と、新規需要家の需要パターンと既存需要家の需要パターンに基づいて、配電系統の各地点の負荷量を需要想定情報として算出する各地点の需要量算出部を有すること特徴とする需要管理システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数項目で構成された需要家の情報について、不明な項目の情報を補完する需要家情報補完手段と,複数項目で構成された既存需要家の情報について、既存需要家の情報と類似の情報を有する需要家を抽出し、既存需要家を分類する既存需要家クラスタリング手段と,前記類似の情報を有する需要家の集合における需要パターンから、新規需要家の需要パターンを生成する需要パターン生成手段と、新規需要家の需要パターンと既存需要家の需要パターンに基づいて、配電系統の各地点の負荷量を需要想定情報として算出する各地点の需要量算出部を有すること特徴とする需要管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の需要管理システムであって、
前記需要家の情報を補完する需要家情報補完部は,新規需要家の不明な項目の情報をその他の需要家の情報から補完することを特徴とする需要管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の需要管理システムであって,
需要家の不明な項目の情報をその他の需要家の情報から補完する手段として,最尤推定計算をすることを特徴とする需要管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の需要管理システムであって,
需要家クラスタリング部は,K-means法を用いることを特徴とする需要管理システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の需要管理システムにおいて求めた配電系統の各地点の負荷量である前記需要想定情報を用いて配電系統の電力品質を管理する電力品質管理システムであって、
電力品質管理システムは、配電系統に配置され整定値に応じて二次側タップ位置を調整するSVCの制御装置を含み、前記整定値の算出に前記配電系統の各地点の負荷量である前記需要想定情報を用いることを特徴とする電力品質管理システム。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の需要管理システムにおいて求めた配電系統の各地点の負荷量である前記需要想定情報を用いて配電系統の電力需要予測を行う電力品質管理システムであって、
電力品質管理システムは、配電系統の電力需要予測を行うにあたり、前記配電系統の各地点の負荷量である前記需要想定情報を用いることを特徴とする電力品質管理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の電力品質管理システムであって、
電力品質管理システムは配電系統の電力需要予測を行うにあたり,電力需要の要因を非線形関数により近似し、前記非線形関数の各座標における偏微分係数により感度分析を多次元で行う手段と,前記偏微分値に基づき確率密度関数を決定の上,需要家応答確率を算出する手段を有することを特徴とする電力品質管理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の電力品質管理システムであって、
前記非線形関数は、時刻方向に最大次数5次、気温方向に最大次数2次の項の積を有し、前記非線形関数の偏微分係数から射影する確率密度関数として,シグモイド関数を用いることを特徴とする電力品質管理システム。
【請求項9】
複数項目で構成された需要家の情報について、不明な項目の情報を補完し,複数項目で構成された既存需要家の情報について、既存需要家の情報と類似の情報を有する需要家を抽出し、既存需要家を分類し,前記類似の情報を有する需要家の集合における需要パターンから、新規需要家の需要パターンを生成し、新規需要家の需要パターンと既存需要家の需要パターンに基づいて、配電系統の各地点の負荷量を需要想定情報として算出すること特徴とする需要管理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の需要管理方法であって、
前記需要家の情報を補完するにあたり,新規需要家の不明な項目の情報をその他の需要家の情報から補完することを特徴とする需要管理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の需要管理方法であって,
需要家の不明な項目の情報をその他の需要家の情報から補完するにあたり,最尤推定計算をすることを特徴とする需要管理方法。
【請求項12】
請求項9に記載の需要管理方法であって,
既存需要家を分類するにあたり,K-means法を用いることを特徴とする需要管理方法。
【請求項13】
請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の需要管理方法において求めた配電系統の各地点の負荷量である前記需要想定情報を用いて配電系統の電力品質を管理する電力品質管理方法であって、
配電系統に配置され整定値に応じて二次側タップ位置を調整するSVCの制御において、前記整定値の算出に前記配電系統の各地点の負荷量である前記需要想定情報を用いることを特徴とする電力品質管理方法。
【請求項14】
請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の需要管理方法において求めた配電系統の各地点の負荷量である前記需要想定情報を用いて配電系統の電力需要予測を行う電力品質管理方法であって、
配電系統の電力需要予測を行うにあたり、前記配電系統の各地点の負荷量である前記需要想定情報を用いることを特徴とする電力品質管理方法。
【請求項15】
請求項14に記載の電力品質管理方法であって、
配電系統の電力需要予測を行うにあたり,電力需要の要因を非線形関数により近似し、前記非線形関数の各座標における偏微分係数により感度分析を多次元で行い,前記偏微分値に基づき確率密度関数を決定の上,需要家応答確率を算出することを特徴とする電力品質管理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の電力品質管理方法であって、
前記非線形関数は、時刻方向に最大次数5次、気温方向に最大次数2次の項の積を有し、前記非線形関数の偏微分係数から射影する確率密度関数として,シグモイド関数を用いることを特徴とする電力品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規電力需要家を含む需要家の情報から電力需要を推定し、活用する需要管理システム、電力品質管理システム、並びに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,再生可能エネルギーの増加、人口減少に伴う電力需要の減少といった中長期の電力需要の変化、新規事業体と既存電力インフラ事業者との間の関係性の変化、電力取引市場の設置など、エネルギー事業を取り巻く環境は大きく変化してきており、電力インフラ事業者はこれらの環境変化への対応が求められている。このため、配電系統における需要家の偏在化により、配電設備への過剰投資が懸念されており、設備投資を抑制したい要望が大きくなってきている。このため、既存系統を最大限に活用しつつ、安定供給性、環境適合性、効率性を向上するために、新たな電力ネットワークへの転換が必要である。こうした背景から、電力需要家の電力需要を適切に把握し誘導したいニーズが存在する。さらにはこのように把握した電力需要家に対し,新しいサービスを提供することへのニーズも高まってきている。
【0003】
本技術分野の背景技術として、特許文献1がある。特許文献1には、スマートメータが設置された各需要家の消費電力の各種情報を記憶した消費電力情報から複数の電力消費モデルを生成し、電力計は設置されるがスマートメータは設置されていない各需要家の各種情報を記憶した第2の消費電力情報に対し、複数のモデルの中から類似基準を満たす電力消費モデルを特定して消費電力量を推定することが開示されている。
【0004】
また特許文献2には、配電線上の設備情報と、一部ノードにある計測機器による計測情報とを用いて、計測機器が設置されていないノードに設置される負荷や電源の状態(有効電力、無効電力、電圧等)を推定する配電系統状態推定システムであり、配電系統の各地点のPQ量を求めることが開示されている。
【0005】
さらに,特許文献3には、各電力需要家の使用電力量の実績を所定期間採集し、複数の需要家の当該期間中の日数分の負荷パターンについて、すべての負荷パターンの形状を最もよく表す特徴量パラメータを計算し、特徴量パラメータの類似度に基づいてクラスタを作成することで、過去に蓄積された長期の使用電力量実績データから代表的負荷パターンが求められることが開示されている。
【0006】
さらに、特許文献4には、電圧監視制御システム、電圧監視制御装置、計測装置および電圧監視制御方法において、通信負荷を増大させることなく、配電系統の電圧変動にも追従して電圧を維持するとともに、変圧器型の電圧制御機器に対して適切な電圧範囲を指令することで、スマメデータの統計値から負荷を推定して電圧範囲を決定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-106952号公報
【特許文献2】特開2010-263754号公報
【特許文献3】特開2008-15921号公報
【特許文献4】WO14/207849
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている方法を用いれば、他の既存の需要家情報と近い需要家を抽出する需要家抽出手段と電力使用量の負荷パターンごとに需要家を分類する既存需要家負荷パターンクラスタリング部と需要家の電力使用量を推定する手段と推定した電力使用量を、前記需要家抽出手段により抽出された需要家の集合のうち類似する負荷パターンとマッチングする需要家負荷パターンマッチング部による,電力需要マッチング手段を提供することができる。
【0009】
しかしながら,特許文献1に記載の方法では、マッチングした結果に基づいて配電系統の各地点のPQ量を算出するPQ量算出部と,算出したPQ量に基づいて需要家の負荷パターンを修正して配電設備計画を決定する電力需要感度分析部とを有することについては,開示されていない。
【0010】
特許文献2に開示されている方法を用いれば、マッチングした結果に基づいて配電系統の各地点のPQ量を算出するPQ量算出部と,算出したPQ量に基づいて需要家の負荷パターンを修正して配電設備計画を決定する電力需要感度分析部とを有する。しかしながら,特許文献2に記載の方法では、需要家情報に基づいた手段に関しては開示されていない。
【0011】
特許文献3に開示されている方法を用いれば、推定した電力使用量を、前記需要家抽出手段により抽出された需要家の集合のうち類似する負荷パターンとマッチングする需要家負荷パターンマッチング部による電力需要マッチングを提供することができる。しかしながら,特許文献3に記載の方法では、他の既存の需要家情報と近い需要家を抽出する需要家抽出手段と電力使用量の負荷パターンごとに需要家を分類する既存需要家負荷パターンクラスタリング部と需要家の電力使用量を推定する手段とマッチングした結果に基づいて配電系統の各地点のPQ量を算出するPQ量算出部と,算出したPQ量に基づいて需要家の負荷パターンを修正して配電設備計画を決定する電力需要感度分析部とを有することについては開示されていない。
【0012】
特許文献4に開示されている方法を用いれば、電圧をスマメデータを活用しながら通信負荷を増大させることなく、配電系統の電圧変動にも追従して電圧を維持するとともに、変圧器型の電圧制御機器に対して適切な電圧範囲を指令することで、集中電圧管理が可能となる。
【0013】
しかしながら、新規需要家のスマメデータは蓄積が少なく負荷の推定が困難であり、新規需要家の負荷を精度よく推定する方法については開示されていない。
【0014】
前述の特許文献1,特許文献2,特許文献3、特許文献4では,類似する需要家の具体的な抽出方法,ならびに,需要家負荷パターンの修正手段まで踏み込んださらに不確定な条件下での,高精度な需要家の電力需要に関する特性把握と需要家に対する情報提供に対する応答把握の両面を実現したいといったニーズを同時に満たす手段,ならびにシステムは,開示されていないのが実情である。
【0015】
本発明は、前記の課題を鑑みてなされたものであり、新規電力需要家を含む需要家の情報から電力需要を推定し、活用する需要管理システム、電力品質管理システム、並びに方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以上のことから本発明においては、「複数項目で構成された需要家の情報について、不明な項目の情報を補完する需要家情報補完手段と,複数項目で構成された既存需要家の情報について、既存需要家の情報と類似の情報を有する需要家を抽出し、既存需要家を分類する既存需要家クラスタリング手段と,類似の情報を有する需要家の集合における需要パターンから、新規需要家の需要パターンを生成する需要パターン生成手段と、新規需要家の需要パターンと既存需要家の需要パターンに基づいて、配電系統の各地点の負荷量を需要想定情報として算出する各地点の需要量算出部を有すること特徴とする需要管理システム」としたものである。
【0017】
また本発明においては、「需要管理システムにおいて求めた配電系統の各地点の負荷量である需要想定情報を用いて配電系統の電力品質を管理する電力品質管理システムであって、電力品質管理システムは、配電系統に配置され整定値に応じて二次側タップ位置を調整するSVCの制御装置を含み、整定値の算出に配電系統の各地点の負荷量である需要想定情報を用いることを特徴とする電力品質管理システム」としたものである。
【0018】
また本発明においては、「需要管理システムにおいて求めた配電系統の各地点の負荷量である需要想定情報を用いて配電系統の電力需要予測を行う電力品質管理システムであって、電力品質管理システムは、配電系統の電力需要予測を行うにあたり、配電系統の各地点の負荷量である需要想定情報を用いることを特徴とする電力品質管理システム」としたものである。
【0019】
また本発明においては、「複数項目で構成された需要家の情報について、不明な項目の情報を補完し,複数項目で構成された既存需要家の情報について、既存需要家の情報と類似の情報を有する需要家を抽出し、既存需要家を分類し,類似の情報を有する需要家の集合における需要パターンから、新規需要家の需要パターンを生成し、新規需要家の需要パターンと既存需要家の需要パターンに基づいて、配電系統の各地点の負荷量を需要想定情報として算出すること特徴とする需要管理方法」としたものである。
【0020】
また本発明においては、「需要管理方法において求めた配電系統の各地点の負荷量である需要想定情報を用いて配電系統の電力品質を管理する電力品質管理方法であって、配電系統に配置され整定値に応じて二次側タップ位置を調整するSVCの制御において、整定値の算出に配電系統の各地点の負荷量である需要想定情報を用いることを特徴とする電力品質管理方法」としたものである。
【0021】
また本発明においては、「需要管理方法において求めた配電系統の各地点の負荷量である需要想定情報を用いて配電系統の電力需要予測を行う電力品質管理方法であって、配電系統の電力需要予測を行うにあたり、配電系統の各地点の負荷量である需要想定情報を用いることを特徴とする電力品質管理方法」としたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の代表的な一形態によれば、需要家の有効な電力需要の把握や情報提供に対する応答特性を得ることができるため,より適切な需要家の誘導による事業性の向上といった効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例に係る電力需要管理システム10の全体構成例を示す図。
図2】新規需要家情報データベースDB1のデータ構造例を示す図。
図3】新規需要家情報補完部30における処理フローを示す図。
図4】既存需要家クラスタリング部40における処理フローを示す。
図5】需要パターン生成部50における処理フローを示す。
図6】各地点の需要量算出部60における処理フローを示す。
図7】需要想定情報データベースDB2のデータ構造例を示す図。
図8】電力品質管理システムの適用事例としてSVRに適用した事例を示す図。
図9】電力品質管理システムのさらに多様な適用のための一般的な処理内容事例を示す図。
図10】電力品質管理システムの一例として配電線の需要予測を行う配電線需要予測システムに適用した事例を示す図。
図11】非線形を考慮した需要量(予測)と誘導量(予測)の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例0025】
実施例1では、電力需要管理システムについて説明する。図1に,本発明の実施例1に係る電力需要管理システム10の全体構成例を示す。
【0026】
計算機を用いて形成される電力需要管理システム10は,新規需要家の情報D1を予め保持する新規需要家情報データベースDB1と需要管理計画実施後の需要想定情報D2を保持する需要想定情報データベースDB2を備える。また計算機における演算部の処理内容を機能的に表すと,新規需要家情報補完部30,既存需要家クラスタリング部40,需要パターン生成部50,各地点の需要量算出部60の各機能を少なくとも含んで構成されている。
【0027】
図1に例示する実施例1の構成により、電力需要管理システム10においては、既存需要家の情報に新規需要家の情報D1を加味して、想定される新たな電力系統における電力需要を地域的及び時系列的に推定した需要想定情報D2を求めるものである。特にこの際、入手可能な情報が不足しがちとなる新規需要家の情報D1について、情報を補充し、豊富化することで需要想定情報D2の推定精度を高めるものである。
【0028】
図2に,新規需要家情報データベースDB1のデータ構造例を示す。新規需要家情報データベースDB1は,新規需要家情報D1として、需要家ID(D11),住所D12,契約情報D13,契約容量D14,業態D15,居住者人数D16,保存する家電D17,日中在宅率D18などを含んで構成される。
【0029】
これらの情報は,需要家と電力会社が契約を締結したタイミング,もしくは需要家へのアンケートなどに基づき,電力会社が需要家から公に入手する情報であり,電力会社が契約した電力需要家毎に値が決まるものもあるが,居住者人数D16や保存する家電D17,日中在宅率D18といった情報については,当該需要家から必ずしも正確に情報が得られるとは限らないない。
【0030】
この結果必要に応じて、日中在宅率D18については,本実施例の一つとしてNHKが公開している「国民生活統計」による1時間毎の,日中在宅率に関する統計調査の値(%)をベースに,同一の契約容量D14と居住者人数D16から,案分して決定する。もしも居住者人数D18が得られていない場合には,契約容量D14のみから決定するなどの対応が必要となる場合がある。但しこれらの対応は、適宜人手により行われることになる。
【0031】
このように図2の新規需要家情報データベースDB1は、その全ての項目が充足されているわけではなく、項目の補充は人手に頼るほかないといった現状がある。
【0032】
図3に,新規需要家情報補完部30における処理フローを示す。まず初めに処理ステップS301では,新規需要家に対しアンケートを実施しアンケート設問に対する回答を数値化する。この場合にアンケート設問は、図2の新規需要家情報データベースDB1のデータ項目が得られるように決定されるわけであるが、実際には項目に対応する回答が得られず、不明な情報を生じていることが考えられる。
【0033】
処理ステップS302では、設問数Nに対するN次元空間上で各需要家のユークリッド距離を算出する。次に処理ステップS303では、需要家間のユークリッド距離が小さくなるようなグループを探索する。これは例えば回答者がaさんであるとき、aさんと類似の回答傾向を示す他の新規需要家同士をグループAとして抽出したものである。これにより、例えば独身者、若年夫婦世帯、子育て家庭などが、類似の回答傾向を示すグループとして把握されると考えられる。
【0034】
さらに処理ステップS304では、各グループの回答の平均を求め、重心ベクトルを算出する。なお、需要家データから需要家情報を抽出後、需要家情報を0~1の範囲に正規化した上で,他の需要家情報における各データに関する平均と分散といった統計情報を算出する。これにより、同じグループ内であっても、さらには働き方の相違、収入の相違、などを反映したグループ内の分布が表れてくることが想定される。
【0035】
その後処理ステップS305では,特定の需要家情報における,平均からの乖離量÷分散による特徴量を算出する。そのうえで,需要家情報の特徴ベクトルが各々の需要家に対して得られたことになり,特徴ベクトルに基づく,分類木を生成する。分類木に基づき分類された個々の需要家グループにおける需要家情報データのうち,不明な情報を有する場合には,同じ分類された需要家のベクトル成分からの平均値と信頼度区間などの情報付きで,需要家の情報を補完などしてもよい。
【0036】
これにより、例えば同じ分類木における特徴として「フルタイムの2人共働き世帯」である確率が高いと判定された場合には、不明とされていた「居住者人数」、「日中在宅率」の項目に「2人」、「0%」などを追記する事でのデータ補充が可能である。
【0037】
図4に,既存需要家クラスタリング部40の処理を示す。まず処理ステップS401では、既存需要家の特徴ベクトルをそれぞれ算出する。なお、図1には図示していないが別途既存需要家についても、図2と同じ構成のデータを保有しているものとする。また、特徴ベクトルの算出は、既存需要家の情報ばかりではなく、さらに新規需要家の情報を含んで行うものであってもよい。
【0038】
処理ステップS402では、需要家の特徴ベクトルをクラスタリングする。クラスタリング手法としては、Kmeans法やWard法、ランダムフォレスト等があげられる。
【0039】
処理ステップS403では、例えば信頼度90%となる組み合わせパターンをそれぞれ抽出し、処理ステップS404では需要家の特徴ベクトルを複数の需要家グループに分類する。処理ステップS405における分類が完了したことの確認処理により、分類が完了していなければ処理ステップS407に移動して各需要家の特徴ベクトルの値を更新して処理ステップS404の処理へ戻り、分類完了まで反復する。
【0040】
図5に、需要パターン生成部50の処理を示す。需要パターン生成部50の処理では新規需要家情報補完部30で補完された需要家情報について,住所D12,契約情報D13,契約容量D14,業態D15,居住者人数D16,日中在宅率D18と,新規需要家情報と気象情報を紐づけし,負荷パターンに基づくクラスタリング処理を実施する。
【0041】
そのうえで得られた,負荷パターンに基づく需要家グループから,補完された需要家情報に基づく,住所D12,契約情報D13,契約容量D14,業態D15,居住者人数D16,日中在宅率D18にて,決定木を作成する。そうすることで,類似の負荷パターンの中でさらに需要家の特徴に基づいて再分類したことになる。
【0042】
例えば、補完された需要家情報によれば、aさん宅は「フルタイムの2人共働き世帯」である確率が高く、他の「フルタイムの2人共働き世帯」における類似の負荷パターンが、朝8時から夜8時ごろまでの平日の需要が低く、夜8時から午前2時に負荷需要が高いというものである場合に、aさん宅の負荷パターンを、係る類似の負荷パターンと同様なものとして推定することができる。なお負荷パターンは、日、週、月、季節、平日、休日などの単位で、適宜形成しておくことができる。
【0043】
図6に,各地点の需要量の算出部60の処理を示す。図6のフローではまず処理ステップS601において、エリアを決定する。エリアは、行政区画や地図メッシュに対応する。処理ステップS602では、該当するエリアにおける需要家を住所に基づき選択する。処理ステップS603では、選択された需要家の集合に対し、推定された需要と実際の需要量を各時刻断面における合計としての負荷を算出する。なお、需要家を代表する情報が地点として与えられる場合があってもよい。この場合における地点は,緯度経度であっても,地図を10kmx10kmのメッシュに区切った範囲内における負荷の合計でもよい。
【0044】
処理ステップS604では、エリアにおける負荷力率を設定する。負荷力率により処理ステップS605では、需要量から有効電力Pならびに無効電力Qを時間断面毎に計算する。そのうえで,許容される最大負荷に対する合計負荷の差が各地点の負荷の余裕量である。負荷の余裕量は,力率を与えれば,有効電力Pおよび無効電力Qに計算できる。なお、当該エリアにおいて配電線に連系太陽光発電などの分散電源の設備容量データと気象データを組み合わせることで発電の有効電力、無効電力を把握することが可能である。また、発電と負荷がスマメデータの背後に存在する場合であっても気象データが存在する場合、気象データから発電量を想定の上スマメデータに対して加算することで、実負荷を把握することも可能である。
【0045】
図7に需要想定情報データベースDB2のデータ構造例を示す。需要想定情報D2は、エリアIDD21、時刻ごとの有効電力D22、無効電力D23、接続配電線D24などから構成される。
【0046】
図6の処理により得られて、図7の需要想定情報データベースDB2に保管された需要想定情報D2によれば、既存需要家に新規需要家を含めた地理的(エリアID,D21)な、新たな電力系統構成上での負荷(有効電力D22、無効電力D23)の分布が把握可能となる。またこの負荷の分布は、地理的であると同時に日、週、月といった時系列的(有効電力D22及び無効電力D23の縦軸)な需要の変動も含めて把握可能となる。さらにここで把握された地理的な負荷の分布は、住所情報を含んでいることから、電力系統(接続配電線D24)における配電線上の開閉器や断路器といった機器位置や、配電線の分岐の情報と関連して把握されることになる。
【0047】
実施例1に例示した電力需要管理システム10によれば、新規需要家についての不足情報を補完することで、需要家データ精度が向上しており、この結果最終的に得られる需要想定情報D2の精度向上が可能となる。
【実施例0048】
実施例2では、実施例1の電力需要管理システムで推定された需要想定情報D2を電力系統の監視制御などに反映した電力品質管理システムについて説明する。電力品質管理システムの利用により、各配電線に対する需要想定情報D2が精度よく想定されることになることから、電力品質管理に対する応用が可能である。
【0049】
図8は、電力品質管理システムの適用事例としてSVR(Step Voltage Regulator)に適用した事例を示している。図8において左側には電力需要管理システム10(負荷管理部)と、ここで推定された需要想定情報D2を示している。図8の右側には、電力品質管理システムの一例として、SVRの整定値を決定する整定部30の機能を実現することを示している。なお、DB3は、既存需要家情報D3を蓄積した既存需要家情報データベースである。
【0050】
ここで、SVR設置の必要性について簡単に述べると、まず配電線の電圧は、負荷電力による線路電圧降下のため、供給地点、時間帯によって変動する。高圧電圧調整器は高圧配電線の電圧が、規定の電圧範囲に納まるように調整する目的で線路途中に設置されるが、この代表事例として、一般にSVRが使用されている。SVRは単巻変圧器を用いたものが使用されており、そのタップを自動的に切り替えすることにより電圧制御が行われる。SVRの送り出し電圧は、基準電圧およびLDC動作条件を設定することにより、基準電圧をベースとして、これに負荷電流の大きさに比例したLDC補償値(SVR設置点からそれ以降の負荷中心点までの線路電圧降下値)を加えた値に制御される。なおLDC(Line Drop Compensation)は、一定地点の電圧を一定にする方式である。
【0051】
図8の整定部30内の電圧計算部31では、電力需要管理システム10(負荷管理部)で求めた需要想定情報D2に基づき、配電系統情報に格納されている配電線に関するネットワークトポロジ―や線路インピーダンスから潮流計算を用いて配電系統の電圧計算を実施する。この計算により配電線の各ノード(地点)における電流及び電圧値が時間断面毎に計算することが可能である。
【0052】
この結果に基づき整定部30内の電圧調整器整定部32では、配電線の負荷中心点電圧を推定するための整定値33(Vref,R,X)を算出する。この算出手法が、LDCである。配電線に設置されたSVCは、整定値33に応じてタップ制御が行われ、配電線の電圧を制御している。
【0053】
なお、この整定値33は、配電線ごとに決められた期間用いられるものである。期間は、1年など数年オーダーで共通に利用する場合もあれば、休平日毎に使い分ける場合もある。さらには、季節ごとに使い分ける場合、昼間と夜間で使い分ける場合など、が可能である。
【0054】
こうした整定値の値は、スマメデータなどにより需要家の電力使用のふるまいをつぶさに把握することで算出が可能である。電力需要管理システム10により、新規需要家のふるまいを精度よく想定できることで、整定値をさらに精度よく様々な時間間隔で算出することが可能である。
【0055】
図9は、電力品質管理システムのさらに多様な適用のための一般的な処理内容事例を示したものであり、電圧ばかりでなく、一般的な電力解析に電力需要管理システムで推定された需要想定情報D2を用いるときの処理の流れを示している。なお図9のフローは、電圧計算部31で実施される電圧推定などの解析処理の事例を示している。
【0056】
図9の吹き出し部分上部には、一般的な監視対象である配電系統の一例が示されている。配電線は変電所出口の遮断器FCBから、センサ付き開閉器DS、手動開閉器DShなどを介して適宜分岐配置されている。係る配電系統の品質管理のためには、各所における電圧情報などを入手する必要があり、現状ではセンサ付き開閉器DSからの計測データ、スマメ(計測データ:使用電力量(30分値))データ、お客様負荷データが利用可能である。
【0057】
然しながらいずれも、その普及は十分な数のものではなく、品質管理に必要なタイムスパンで得られるものばかりではなく、データの正確性の問題もある。データ正確性の上ではお客様負荷データが最も適しているが、普及度の問題もあり、配電系統上に非計測区間が生じてしまうことを避けられない。
【0058】
これらの現状における計測事情に対して、電力需要管理システム10による需要想定情報D2によれば、各配電線に対する需要データが地点に関わりなく、精度よく想定されることになることから、計画支援に対する応用が可能である。従来は,限られたセンサ付き開閉器DSにおける計測値を元にした簡易な監視であったが,電力需要管理システム10による需要想定情報D2の利用により、今後,更なる監視技術の高度化が可能である。
【0059】
他方において、配電系統の監視技術の高度化には,運用目的に応じて,以下のニーズがある。このニーズは、まず過負荷に関して設備(配電線・開閉器)の許容値逸脱が無いように最大値とその発生時刻の詳細把握することであり、また設備利用率に関して1日の使用電力量を詳細に管理し,設備計画時の設備容量検討時に利用することであり、また電圧分布に関してPV等の再エネ連系により,電圧上昇がいつ,どこで発生するかを詳細把握することである。
【0060】
上記のニーズに対して,現状の配電系統は,面的に広いために限られた箇所しかセンサが設置されていないために,非計測箇所である分岐区間や低圧系統の潮流,電圧の状態を正確に把握出来ない。
【0061】
そこで,実施例2においては需要想定情報D2を利用し,運用目的毎に監視強化となる特徴を抽出するために,クラスタリングを利用した方法を適用する。クラスタリングとは,複数の評価値を持つ個体について評価値が近い個体同士を同一グループとしてグループ分けし,特徴抽出する手法である。
【0062】
配電系統の現場では,過負荷,設備利用率,電圧分布に着目している。このため,電圧計算部31における処理を例示する図9において、最初の処理ステップS801では、管理項目に合わせた負荷モデルを生成する。これらは潮流管理における過負荷について最大値と発生時刻についてのモデルを生成(処理ステップS801a)し、潮流管理における設備利用率について月毎の使用電力量についてのモデルを生成(処理ステップS801b)し、電圧管理について時間ごとの電圧分布を求めるモデルを生成(処理ステップS801c)することである。
【0063】
これらのモデルについて、図9の吹き出し部分上部に示す配電系統ではセンサ設置区間と非計測区間を生じてしまうことから、処理ステップS802ではセンサ設置区間の負荷モデルを推定し、処理ステップS803では非計測区間の負荷モデルを推定して、補正した負荷モデルとする。
【0064】
なお、この推定にあたり、電力需要管理システム10による需要想定情報D2を用いるのがよい。例えば、図9の吹き出し部分上部に示す配電系統では2つのセンサ設置区間と2つの非計測区間の組み合わせとなる場合に、センサ設置区間の推定がセンサ検出値から精度良く行えるというときは計測データを使用して行い、センサ設置区間ではあるがセンサ精度が低いという問題があるときや、非計測区間であるときには、電力需要管理システム10による需要想定情報D2を用いるのがよい。
【0065】
これらのセンサ設置区間および非計測区間を地理的につなぎ合わせることで、変電所出口から配電線末端に至るまでの各地点における負荷状態を地理的に分布として求めることができる。また、図9の吹き出し部分下部に示すように、配電線上の特定地点における例えば電力量の時系列的な変化として求めることができ、この例では計測センサで求めた場合と、電力需要管理システム10による需要想定情報D2を用いた場合とを比較して求めたことを表している。これらの処理が、処理ステップS804で行われ、補正した負荷モデルで区間全域の例えば電圧、電流を求める。
【0066】
処理ステップS805では、解析結果をディスプレイ上に表示出力する。この時の表示形式は図9の吹き出し部分に記述したような表示形式とするのがよい。
【0067】
上記した実施例2によれば、区間毎の負荷分布を高精度に把握した電圧推定となり真値との乖離が小さくなる効果が得られる。
【実施例0068】
実施例2では、実施例1の電力需要管理システムで推定された需要想定情報D2を電力系統のVPP(Virtual Power Plant)やDR(Demand Response)などにおける需要管理に反映した電力品質管理システムについて説明する。
【0069】
なおVPPとは、需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、発電所と同等の機能を提供することであり、DRとは、需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させることである。
【0070】
一般的に基幹系統では,気温や日射等の各種情報を活用し,需要予測を綿密に行っている。一方で配電系統では,配電系統に設置されたセンサ情報のみを活用して簡易に予測している。今後,設備計画の更なる効率化を実現するために,配電線の需要予測の高度化が必要である。
【0071】
配電系統の需要には,基幹系統と異なり,配電線・区間による地域の違い,お客さまの契約種別・容量,ライフスタイル(在宅の有無)に特徴がある。そのため,配電線予測手法には,詳細なスマメデータ,気温等のデータ分析結果を利用した予測手法が必要である。複数の配電線負荷を収集し,需要カーブ分析、スマメデータの変動要因をビッグデータ解析(クラスタリング技術・回帰分析適用等)が適用可能である。
【0072】
図10は、電力品質管理システムの一例として配電線の需要予測を行う配電線需要予測システムに適用した事例である。配電線需要予測システムでは、配電線情報データベースDB5と推定パラメータデータベースDB6を備えている。既存の配電線情報データベースDB5は、スマメデータ、センサ計測値、平均気温などを備えるものであるが、本発明の実施例3ではさらに実施例1の電力需要管理システムで推定された需要想定情報D2を保有するのがよい。
【0073】
そのうえで配電線需要予測システムの処理においては、具体的には,一般電灯需要家のスマメデータを収集し,需要カーブを分析し,地域,気象情報,需要家の契約種別・容量等の変動要因を明確にする。最終的に,次のパラメータ(曜日区分,時間区分,気温など)を利用して,将来の需要カーブを予測する手法を検討し,評価する。こうした予測に基づき,デマンドレスポンスを実施するか否かの計画案を立案する。
【0074】
図10の例では、配電線需要予測は,毎日起動され前日のスマメデータの統計処理(クラスタ分析・回帰分析)を実施し需要予測のパラメータを機械学習する部分と,需要予測の必要時に起動され配電線の需要予測を実施する部分で構成する。
【0075】
処理ステップS101において配電線情報データベースDB5の情報を用いて、前日の時間区分による需要カーブの分析(クラスタ分析)を行う。同様に処理ステップS102において配電線情報データベースDB5の情報を用いて、前日の曜日区分による需要カーブの分析(クラスタ分析)を行う。之により例えば、30分ごとの電力量に関して0時から24時までのうち、朝8時前後及びよる8時ごろの電力量に、曜日ごとの特徴的な動きが計測され、これらがそれぞれ新たな事象としてクラス分けされる。
【0076】
さらに処理ステップS103において配電線情報データベースDB5の情報を用いて、前日の平均気温と電力使用量の相関を回帰分析により求める。これにより、気温と電力の関係が明らかとなり、温度の影響を別要因として電力使用量の推定を可能とできる。処理ステップS104では、これらのクラスタリングやそうかんを考慮の上で、特徴量として推定パラメータを求め推定パラメータデータベースDB6に蓄積する。
【0077】
次に需要予測の処理において、処理ステップS105で需要予測が起動されると、処理ステップS106では需要予測対称とする配電線を決定し、処理ステップS107において推定パラメータデータベースDB6に蓄積したパラメータを用いて需要予測を行い、出力する。なお従来の配電線需要予測手法は,過去のセンサ計測値の伸び率から需要予測を実施している。
【0078】
本発明では、スマメデータや電力需要管理システムで推定された需要想定情報D2から得られた需要カーブの変動要因分析の結果に基き,配電線需要予測する。入力データとしてスマメデータ・時間区分・曜日区分,契約kW・気温を用いることで,需要家の個々の特徴を捉えた配電系統線需要予測高度化が可能となる。
【0079】
図11は、非線形を考慮した需要量(予測)と誘導量(予測)の関係を示している。図11の各軸は、時間、気温、電力量である。ここでは、非線形関数として、1日範囲において時刻方向に最大次数が5次、気温方向に最大次数が2次の積を有する多項式で表現すると、様々な気温における1日の電力需要のふるまいを模擬できる。その上で、各時刻と各気温の断面で偏微分係数を求める。この微分係数を気温や時刻の感度とみなしテーブルとして保持しておき、需要量や誘導量を算出する。
【0080】
なお、電力を使用する,電力を使用しない,といった人間の行動をモデル化するために,累積分布関数の一つである,シグモイド曲線を用いる。(1)式のシグモイド曲線は,横に伸ばしたS字の関数であり,-∞の極限において0の値を,+∞の極限において1の値を取る関数である。物理学において,磁性体の物質に対し外的に磁場を与えたときの上下方向の電子スピンの変化や,経済学における成長曲線や生物学における死亡率曲線なども,シグモイド曲線で近似できることが知られている。
【0081】
【数1】
【0082】
また,このシグモイド曲線は,微分により,元のシグモイド曲線の関数として(2)式で表現可能であることから,計算機シミュレーションで微分操作のための数値計算をする必要がなく計算が容易であるといった特徴を持つ。
【0083】
【数2】
【0084】
なお,シグモイド曲線は,x軸方向に平行移動させ,あるいは変曲点における傾きの大きさを式中のaの値により変えることが可能である。なお,数学的には,累積分布関数を微分すると,確率密度関数になる。本発明では、式中のaに前述の偏微分係数を割り当てることでシグモイド曲線(累積分布関数)ならびに、シグモイド曲線の微分により確率密度関数を得ることができる。これによりデマンドレスポンスへの応答確率を表現できる。
【符号の説明】
【0085】
10:需要管理システム
DB1:新規需要家情報データベース
30:新規需要家情報補完部
40:既存需要家クラスタリング部
50:需要パターン生成部
60:各地点の需要量算出部
DB2:需要想定情報データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11