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特開2023-70928トナー、トナー収容ユニット及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070928
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】トナー、トナー収容ユニット及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20230515BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/097 372
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183408
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆太
(72)【発明者】
【氏名】武井 章生
(72)【発明者】
【氏名】山口 亮平
(72)【発明者】
【氏名】竹林 冬馬
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA10
2H500BA10
2H500BA16
2H500CA03
2H500CA06
2H500CA14
2H500EA12A
2H500EA12B
2H500EA38A
2H500EA42D
2H500EA57A
2H500EA59A
(57)【要約】
【課題】低温定着性、耐熱保存性、クリーニング性及び転写性に優れるトナー。
【解決手段】
結着樹脂を含有するトナー母体粒子と、前記トナー母体粒子の表面に樹脂微粒子と、を有するトナーであって、トナーの示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目におけるガラス転移温度が20℃以上50℃以下であり、前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)に不溶な成分のDSCによる昇温1回目におけるガラス転移温度が-40℃以上10℃以下であり、前記トナーの平均円形度が0.970以上0.985以下であり、前記平均円形度の標準偏差が0.020以下であるトナーである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含有するトナー母体粒子と、
前記トナー母体粒子の表面に樹脂微粒子と、を有するトナーであって、
前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目におけるガラス転移温度が20℃以上50℃以下であり、
前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)に不溶な成分のDSCによる昇温1回目におけるガラス転移温度が-40℃以上10℃以下であり、
前記トナーの平均円形度が0.970以上0.985以下であり、
前記平均円形度の標準偏差が0.020以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記平均円形度の標準偏差が0.014以下である、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目におけるガラス転移温度(Tg)が、40℃以上50℃以下であり、
前記トナーのTHFに不溶な成分のDSCによる昇温1回目におけるガラス転移温度が-40℃以上5℃以下であり、
前記トナーのTHFに可溶な成分のDSCによる昇温2回目におけるガラス転移温度(Tg)が、20℃以上65℃以下である、請求項1から2のいずれかに記載のトナー。
【請求項4】
前記樹脂微粒子の含有量が、前記トナーに対して0.2質量%以上5質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂であり、
前記ポリエステル樹脂が、3価又は4価の炭素数3以上10以下の脂肪族多価アルコール成分を含む、請求項1から4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂がジオール成分を含み、
前記ジオール成分が、主鎖となる部分の炭素数が3以上9以下であり、アルキル基を側鎖に有する、請求項5に記載のトナー。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂が、ウレタン結合及びウレア結合の少なくともいずれかを有する、請求項5から6のいずれかに記載のトナー。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のトナーを収容することを特徴とするトナー収容ユニット。
【請求項9】
請求項8に記載のトナー収容ユニットを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載のトナーを有する画像形成装置であって、
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成するトナーを備える現像手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、トナー収容ユニット及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トナーには、出力画像の高品質化のための小粒径化と耐高温オフセット性、省エネルギー化のための低温定着性、及び製造後の保管時や運搬時における高温高湿に耐えうる耐熱保存性が要求されている。特に、定着時における消費電力は画像形成工程における消費電力の多くを占めるため、トナーの低温定着性の向上は非常に重要である。
トナーの低温定着性を向上させるためには、前記トナーに低融点の材料を使用する必要があるが、低融点の材料を用いて製造したトナーは、耐熱保存性が悪くなり、低温定着性と耐熱保存性とはトレードオフの関係にある。
【0003】
従来、混練粉砕法で作製されたトナーが使用されてきた。しかし、混練粉砕法で作製されたトナーは、小粒径化が困難であるとともに、その形状が不定形かつ粒径分布がブロードであることから出力画像の品質が十分ではないこと、定着エネルギーが高いことなどの問題があった。また、定着性向上のためにワックス(離型剤)を添加している場合、混練粉砕法で作製されたトナーは、粉砕の際にワックスの界面で割れて、ワックスがトナー表面に多く存在してしまう。そのため、離型効果が出る一方で、キャリア、感光体及びブレードへのトナーの付着(フィルミング)が起こりやすくなり、全体的な性能としては、満足のいくものではないという問題があった。
【0004】
クリーニング性を向上させる手段として、トナーの形状を球形ではなく、異形に形状制御することでクリーニング部材でのすり抜けを抑制する効果が得られることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低温定着性、耐熱保存性、クリーニング性及び転写性に優れるトナーを提供することを目的とする。
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明のトナーは、
結着樹脂を含有するトナー母体粒子と、
前記トナー母体粒子の表面に樹脂微粒子と、を有するトナーであって、
トナーの示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目におけるガラス転移温度が20℃以上50℃以下であり、
前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)に不溶な成分のDSCによる昇温1回目におけるガラス転移温度が-40℃以上10℃以下であり、
前記トナーの平均円形度が0.970以上0.985以下であり、
前記平均円形度の標準偏差が、0.020以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、本発明は、低温定着性、耐熱保存性、クリーニング性及び転写性に優れるトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
図3図3は、本発明におけるトナー表面上の樹脂微粒子の存在状態の一例を示す図である。
【0009】
(トナー)
本発明は、結着樹脂を含有するトナー母体粒子と、
前記トナー母体粒子の表面に樹脂微粒子と、を有するトナーであって、
トナーの示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目におけるガラス転移温度が20℃以上50℃以下であり、
前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)に不溶な成分のDSCによる昇温1回目におけるガラス転移温度が-40℃以上10℃以下であり、
前記トナーの平均円形度が0.970以上0.985以下であり、
前記平均円形度の標準偏差が、0.020以下である。
【0010】
特許文献1に記載のトナーでは、形状を異形化するだけでは画像形成の際に、印刷用紙に直接的に、又は中間転写体を介して間接的に、像担持体上の画像を転写する転写工程においてトナーの転写性が悪化するという問題があった。
そこで、本発明者が鋭意検討を行ったところ、トナーのガラス転移温度を20℃以上50℃以下とし、トナーのTHF(テトラヒドロフラン)不溶分のガラス転移温度を-40℃以上10℃以下とすることで、トナー粒子全体が耐熱保存性を維持しつつ、トナーを構成する樹脂の一部が低温でも変形しやすくなり、定着時の熱と加圧による記録媒体への接着を促進できることを知見した。また、トナーの平均円形度を0.970以上0.985以下とすることで、耐熱保存性と転写性が向上し、前記平均円形度の標準偏差を0.020以下とすることで、耐熱保存性とクリーニング性が向上することを知見した。
【0011】
<平均円形度>
本発明におけるトナーは、トナーの平均円形度が0.970以上0.985以下であり、0.975以上0.980以下が好ましい。前記平均円形度は、トナー表面の凹凸の度合いを表しており、前記平均円形度が0.970以上であると、樹脂微粒子や外添剤を、トナー表面に均一に付着させることができ、耐熱保存性及び転写性が向上する。前記平均円形度が0.985以下であると、トナーが転がるときの摩擦力が大きくなるため、クリーニングブレードをすり抜けにくくなり、クリーニング性に優れる。
【0012】
<平均円形度の標準偏差>
本発明におけるトナーは、トナーの平均円形度の標準偏差が0.020以下であり、0.014以下が好ましい。前記平均円形度の標準偏差が、0.020以下であると、各トナーの表面状態のばらつきを少なくすることができるため、耐熱保存性とクリーニング性に優れる。
【0013】
前記平均円形度、及び前記平均円形度の標準偏差を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フロー式粒子像分析装置(「FPIA-2100」、シスメックス社製)と、解析ソフト(FPIA-2100 Data Processing Program for FPIA version00-10)を用いて測定することができる。
具体的には、ガラス製100mlビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC-A、第一工業製薬株式会社製)を0.1ml~0.5ml以下添加し、トナー0.1g~0.5gを添加してミクロスパーテルでかき混ぜて、イオン交換水80mLを添加する。得られた分散液を超音波分散器(本多電子株式会社製)で3分間分散処理し、前記分散液を、前記解析ソフトFPIA-2100を用いて、トナーの濃度が5,000個/μL~15,000個/μLとなるまでトナーの形状及び分布を測定する。
上記測定法では、平均円形度の測定における再現性の点から、前記分散液濃度を5,000個/μL~15,000個/μLにすることが重要となる。
界面活性剤量は前述したトナー粒径の測定と同様にトナーの疎水性により必要量が異なり、多く添加すると泡によるノイズが発生し、少ないとトナーを十分に濡らすことができないため、分散が不十分となる。
またトナー添加量は粒径により異なり、小粒径の場合は少なく、また大粒径の場合は多くする必要があり、トナー粒径が3μm~10μmの場合、トナー量を0.1g~0.5g添加することにより分散液濃度を5,000個/μL~15,000個/μLに合わせることが可能となる。
【0014】
前記トナーの平均円形度、及び平均円形度の標準偏差を制御する手段としては、トナー母体粒子の製造における油相の調製の際に、トナーの構成材料を混合するときのビーズミルのディスク周速度、トナーの単位体積当たりのビーズミルの通過回数などを調整することで、トナーの平均円形度、及び平均円形度の標準偏差を制御することができる。
【0015】
<ガラス転移温度(Tg)>
本発明のトナーは、前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目のDSC曲線から求められるガラス転移温度(Tg)が、20℃以上50℃以下であり、40℃以上50℃以下が好ましい。前記ガラス転移温度が20℃以上であると、トナーが熱によって変形しにくくなり耐熱保存性が向上する。前記ガラス転移温度が50℃以下であると、定着時にトナーが熱によって適切に流動し、低温でもトナーが定着しやすくなるため、低温定着性に優れる。
【0016】
本発明のトナーは、前記トナーのTHF不溶分のDSCによる昇温1回目のDSC曲線から求められるガラス転移温度(Tg)が、-40℃以上10℃以下であり、-40℃以上5℃以下が好ましい。前記ガラス転移温度が-40℃以上であると、耐熱保存性に対する阻害が少なくなる。前記ガラス転移温度が10℃以下であると、トナーを構成する樹脂の一部が低温でも変形しやすくなるため、低温定着性に優れる。
【0017】
本発明のトナーは、前記トナーのTHF可溶分のDSCによる昇温1回目のDSC曲線から求められるガラス転移温度(Tg)が、20℃以上65℃以下が好ましい。前記ガラス転移温度が20℃以上であると、優れた耐熱保存性が得られる。前記ガラス転移温度が65℃以下であると優れた低温定着性が得られる。
【0018】
前記ガラス転移温度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、示差走査熱量測定(DSC)によるDSC曲線から求めることができる。
具体的には、トナー1gを100mLのテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、ソックスレー抽出を行い、トナー中のTHF不溶分とTHF可溶分とを得る。得られたTHF不溶分とTHF可溶分とをそれぞれ真空乾燥機にて24時間乾燥させ、それぞれTHF不溶のポリエステル樹脂成分及びTHF可溶のポリエステル樹脂成分を得る。以下において、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度の測定では対象試料として前記THF不溶のポリエステル樹脂成分を用いて、トナーのTHFに可溶な成分のガラス転移温度の測定では対象試料として前記THF可溶のポリエステル樹脂成分を用いた。また、トナーのガラス転移温度の測定には、対象試料としてトナーを用いた。
次に、対象試料5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。
次に、窒素雰囲気下にて、昇温速度1.0℃/minで-80℃から150℃まで加熱する(昇温1回目)。
次に、降温速度1.0℃/minで150℃から-80℃まで冷却させ、昇温速度1.0℃/minで-80℃から150℃まで加熱する(昇温2回目)。
上記昇温1回目、及び昇温2回目において、示差走査熱量計(Q-200、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測し、得られたDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択して昇温1回目におけるガラス転移温度Tg1stを求める。同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択して昇温2回目におけるガラス転移温度Tg2ndを求める。
【0019】
本発明のトナーは、トナー母体粒子を有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0020】
<トナー母体粒子>
前記トナー母体粒子(以下、「トナー母体」、「母体粒子」とも称することがある)は、結着樹脂を含有し、着色剤、及びワックスを含有することが好ましく、更に必要に応じてその他成分を含有する。
また、前記トナー母体粒子は、表面に樹脂微粒子を有する。
【0021】
<<結着樹脂>>
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、ポリオール樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トナーに可撓性を与えることができる点から、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0022】
<<<ポリエステル樹脂>>>
前記ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂非晶性ハイブリッド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
-非晶性ポリエステル樹脂-
前記非晶性ポリエステル樹脂(以下、「非晶性ポリエステル」、「非晶質ポリエステル」、「非晶質ポリエステル樹脂」、「未変性ポリエステル樹脂」、「ポリエステル樹脂成分A」とも称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られる非晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
なお、本発明において非晶性ポリエステル樹脂とは、上記のごとく、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、後述するプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる変性ポリエステル樹脂は、本発明においては前記非晶性ポリエステル樹脂には含めず、変性ポリエステル樹脂として扱う。
また、未変性ポリエステル樹脂とは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体を用いて得られるポリエステル樹脂であって、イソシアネート化合物などにより変性されていないものを指す。
前記非晶性ポリエステルは、テトラヒドロフラン(THF)に可溶なポリエステル樹脂成分である。
前記非晶性ポリエステル(ポリエステル樹脂成分A)としては、線状のポリエステル樹脂が好ましい。
【0024】
前記ポリオールとしては、例えば、ジオールなどが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記ポリオールとしては、アルキレングリコールを40モル%以上含有することが好ましい。
【0025】
前記ポリカルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸などが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1~20のアルキル基;炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸などが挙げられる。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記ポリカルボン酸としては、テレフタル酸を50モル%以上含有することが好ましい。
【0026】
前記非晶性ポリエステル樹脂は、酸価、水酸基価を調整するため、その樹脂鎖の末端に3価以上のカルボン酸及び/又は3価以上のアルコール、3価以上のエポキシ化合物等を含んでもよい。
これらの中でも、ムラが発生しにくく、十分な光沢や画像濃度が得られるという観点から、3価以上の脂肪族アルコールを含有することが好ましく、3価又は4価の炭素数3以上10以下の脂肪族多価アルコールがより好ましい。
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はそれらの酸無水物などが挙げられる。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0027】
また、非晶性ポリエステル樹脂成分は架橋成分を含むことが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂成分の架橋成分として、3価以上のカルボン酸やエポキシ化合物等を用いることもできるが、ムラが発生しにくく、十分な光沢や画像濃度が得られるという観点から架橋成分として3価以上の脂肪族アルコールを含有することがより好ましい。
架橋成分として、3価以上の脂肪族アルコールを含有することが好ましく、定着画像の光沢及び画像濃度の点から、3価又は4価の脂肪族アルコールを含むことがより好ましい。3価又は4価の脂肪族アルコールとしては、3価又は4価の炭素数3~10の脂肪族多価アルコール成分であることが好ましい。前記架橋成分は、前記3価以上の脂肪族アルコールのみであってもよい。
前記3価以上の脂肪族アルコールとしては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらの3価以上の脂肪族アルコールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記非晶性ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下の範囲であることが好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3,000以上10,000以下が好ましく、4,000以上7,000以下がより好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)としては、1,000以上4,000以下が好ましく、1,500以上3,000以下がより好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂の分子量の比(Mw/Mn)としては、1.0以上4.0以下が好ましく、1.0以上3.5以下がより好ましい。
前記分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定できる。
前記分子量が上記の範囲が好ましい理由としては、分子量が低すぎると、トナーの耐熱保存性、現像機内での撹拌等のストレスに対する耐久性に劣る場合があり、分子量が高すぎると、トナーの溶融時の粘弾性が高くなり低温定着性に劣る場合がある。また分子量600以下の成分が多すぎると、トナーの耐熱保存性、現像機内での撹拌等のストレスに対する耐久性に劣る場合があり、分子量600以下の成分が少なすぎると、低温定着性に劣る場合がある。
【0029】
THF可溶分の分子量600以下の成分は2質量%以上10質量%以下が好ましい。
この成分の含有量を調節する方法としては、非晶性ポリエステル樹脂をメタノールにより抽出し、分子量600以下の成分を除去し、精製する方法が挙げられる。
【0030】
前記非晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下が好ましく、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下がより好ましい。前記酸価が1mgKOH/g以上であると、トナーが負帯電性となりやすく、更には、紙への定着時に紙とトナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。一方、前記酸価が、50mgKOH/g以下であると、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下するという不具合を防止できる。
【0031】
前記非晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mgKOH/g以上が好ましい。
【0032】
前記非晶性ポリエステル樹脂のTgとしては、40℃以上65℃以下が好ましく、45℃以上65℃以下がより好ましく、50℃以上60℃以下がさらに好ましい。前記Tgが40℃以上であると、トナーの耐熱保存性、及び現像機内での撹拌等のストレスに対する耐久性が向上し、また、耐フィルミング性が向上する。一方、前記Tgが65℃以下であると、トナーの定着時における加熱及び加圧による変形が良好になり、低温定着性が向上する。
【0033】
前記非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー100質量部に対して、80質量部以上90質量部以下が好ましい。
【0034】
-結晶性ポリエステル樹脂-
前記結晶性ポリエステル樹脂(以下、「結晶性ポリエステル」、「ポリエステル樹脂成分D」とも称する)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られる結晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0035】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、高い結晶性をもつために、定着開始温度付近において急激な粘度低下を示す熱溶融特性を示す。
このような特性を有する前記結晶性ポリエステル樹脂を前記非晶性ポリエステル樹脂と共に用いることで、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性がよく、溶融開始温度では結晶性ポリエステル樹脂の融解による急激な粘度低下(シャープメルト)を起こし、それに伴い前記非晶性ポリエステル樹脂と相溶し、共に急激に粘度低下することで定着することから、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。また、離型幅(定着下限温度と耐高温オフセット発生温度との差)についても、良好な結果を示す。
【0036】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコール(ポリオール)と、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られる。
なお、本発明において結晶性ポリエステル樹脂とは、上記のごとく、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、前記プレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0037】
--多価アルコール(ポリオール)--
前記多価アルコール(ポリオール)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコールなどが挙げられる。
【0038】
前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。
前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、結晶性を向上させ、かつ融点の低下を防ぐことができる点から、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。
前記飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる場合がある。炭素数としては12以下であることがより好ましい。
【0039】
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンジオールなどが挙げられる。
これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
【0040】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0041】
--多価カルボン酸(ポリカルボン酸)--
前記多価カルボン酸(ポリカルボン酸)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸などが挙げられる。
【0042】
前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸、これらの無水物、これらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。
【0043】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。
【0044】
前記ポリカルボン酸としては、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸が含まれていてもよい。更に、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸を含有してもよい。 これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。即ち、前記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4以上12以下の飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位と、炭素数2以上12以下の飽和脂肪族ジオールに由来する構成単位とを有することが好ましい。そうすることにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れることから、優れた低温定着性を発揮できる点で好ましい。
【0046】
本発明での結晶性ポリエステル樹脂の結晶性の有無は、結晶解析X線回折装置(例えばX’Pert Pro MRD フィリップス社製)により確認することができる。以下測定方法を記す。
まず、対象試料を乳鉢によりすり潰し試料粉体を作成し、得られた試料粉体を試料ホルダーに均一に塗布する。その後、回折装置内に試料ホルダーをセットし、測定を行い、回折スペクトルを得る。
得られた回折ピークに20°<2θ<25°の範囲に得られたピークのうち最もピーク強度が大きいピークのピーク半値幅が2.0以下である場合結晶性を有すると判断する
結晶性ポリエステル樹脂に対し、上記状態を示さないポリエステル樹脂を、本発明では、非晶性ポリエステル樹脂という。
以下にX線回折の測定条件を記す。
〔測定条件〕
Tension kV: 45kV
Current: 40mA
MPSS
Upper
Gonio
Scanmode: continuos
Start angle : 3°
End angle : 35°
Angle Step:0.02°
Lucident beam optics
Divergence slit : Div slit 1/2
Difflection beam optics
Anti scatter slit: As Fixed 1/2
Receiving slit : Prog rec slit
【0047】
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下であることが好ましい。前記融点が、60℃以上であると、結晶性ポリエステル樹脂が低温で溶融しやすく、トナーの耐熱保存性が低下する不具合を防止でき、80℃以下であると、定着時の加熱による結晶性ポリエステル樹脂の溶融が不十分で、低温定着性が低下するという不具合を防止できる。
【0048】
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分が、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)が3,000~30,000が好ましく、5,000~15,000がより好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分が、GPC測定において、数平均分子量(Mn)が1,000~10,000が好ましく、2,000~10,000がより好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子量の比Mw/Mnとしては、1.0~10が好ましく、1.0~5.0がより好ましい。
これは、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、かつ分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が低下するためである。
【0049】
前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、紙と樹脂との親和性の観点から、所望の低温定着性を達成するためには、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。一方、耐高温オフセット性を向上させるには、45mgKOH/g以下が好ましい。
【0050】
前記結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所望の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには、0mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~50mgKOH/gがより好ましい。
【0051】
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。 簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1又は990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを結晶性ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0052】
前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、3質量部以上20質量部以下が好ましく、5質量部以上15質量部以下がより好ましい。前記含有量が、3質量部以上であると、結晶性ポリエステル樹脂によるシャープメルト化が不十分なため低温定着性に劣るという不具合を防止できる。また、20質量部以下であると、耐熱保存性が低下すること、画像のかぶりが生じやすくなるという不具合を防止できる。
【0053】
-非晶性ハイブリッド樹脂-
前記非晶性ハイブリッド樹脂は、縮重合系樹脂とスチレン系樹脂とを含む複合樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を含み、各々独立した反応経路を有する二つの重合系樹脂成分が部分的に化学結合してなり、かつその少なくとも一方がポリエステル樹脂と同じ重合系の樹脂成分からなる樹脂である。なお、本明細書においては、非晶性ハイブリッド樹脂を、単にハイブリット樹脂と称することがある。
前記非晶性ハイブリッド樹脂を含有することにより、結晶性ポリエステル樹脂のトナー中での分散性を改良することができる。
前記非晶性ハイブリッド樹脂は、結晶性ポリエステルのトナー表面への露出を制御するとともに、トナー内部で闕所性ポリエステルを均一に分散させることで、低温定着性と耐熱保存性の両立に寄与できる。
前記非晶性ハイブリッド樹脂としては、例えば、各々独立した反応経路を有する二つの重合系樹脂の原料モノマーの混合物に加えて、さらに原料モノマーの一つとして該二つの重合系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得るモノマー(両反応性モノマー)を混合して得られた樹脂が好ましい。
【0054】
前記両反応性モノマーとしては、例えば、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基と、エチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましい。このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性を向上させることができる。
前記両反応性モノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸、フマル酸、メタクリル酸、シトラコン酸、マレイン酸等が挙げられる。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸が好ましい。
【0055】
前記両反応性モノマーの含有量としては、縮重合系樹脂の原料モノマー100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましい。なお、本発明において、前記両反応性モノマーはその性能の特異性から、縮重合系樹脂の原料モノマー、付加重合系樹脂の原料モノマーとは別のモノマーとして扱う。
【0056】
本発明において、前記非晶性ハイブリッド樹脂を、以上の原料モノマー混合物及び前記両反応性モノマーを用いて、二つの重合反応を行わせて得る際には、重合反応の進行及び完結が時間的に同時である必要はなく、それぞれの反応機構に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させればよい。
前記非晶性ハイブリッド樹脂の製造方法としては、例えば、縮重合系樹脂の原料モノマー、付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー、重合開始剤等の触媒等を混合し、まず、主として50℃~180℃でラジカル重合反応により縮重合反応が可能な官能基を有する付加重合系樹脂成分を得、次いで反応温度を190℃~270℃に上昇させた後、主として縮重合反応により縮重合系樹脂成分の形成を行わせることが好ましい。
【0057】
前記非晶性ハイブリッド樹脂の軟化点としては、80℃以上170℃以下が好ましく、90℃以上160℃以下がより好ましく、95℃以上155℃以下であることがさらに好ましい。
【0058】
前記結晶性ポリエステル樹脂と前記非晶性ハイブリッド樹脂の重量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ポリエステル樹脂:前記非晶性ハイブリッド樹脂の重量比が50/100~200/100が好ましい。
【0059】
前記縮重合系樹脂の原料モノマーとしては、カルボン酸成分として、コハク酸系誘導体が用いられることが好ましい。
【0060】
前記スチレン系樹脂の原料モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体が用いられる。
【0061】
前記スチレン誘導体の含有量は、前記スチレン系樹脂の原料モノマー中、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0062】
前記スチレン誘導体以外に用いられ得るスチレン系樹脂の原料モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類等が挙げられる。
これらの中では、トナーの低温定着性及び帯電安定性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、上記の観点から、1~22が好ましく、8~18がより好ましい。
なお、前記アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数を言う。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、スチレン系樹脂の原料モノマー中、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0064】
前記ハイブリッド樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結晶性ポリエステルの部数に対して15質量%以上であることが好ましい。前記含有量が15質量%未満であると、結晶性ポリエステルを内部分散する効果が弱く、結晶性ポリエステルが過剰に表面に配置されてしまうことがある。
【0065】
-変性ポリエステル樹脂―
前記変性ポリエステル樹脂(以下、「変性ポリエステル」、「ポリエステル樹脂成分C」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂(本明細書において、「プレポリマー」、「ポリエステルプレポリマー」と称することがある。)との反応生成物などが挙げられる。
前記変性ポリエステルは、テトラヒドロフラン(THF)に不溶なポリエステル樹脂である。テトラヒドロフラン(THF)に不溶なポリエステル樹脂成分は、Tgや溶融粘性を低下させ、低温定着性を担保しつつ、分子骨格中に分岐構造を有し、分子鎖が三次元的な網目構造となるため、低温で変形するが流動しないというゴム的な性質を有することになる。
前記変性ポリエステル樹脂は、下記一般式1)~3)のいずれかで表される構造を有し、ポリエステル又は変性ポリエステル部分であるR2と、分岐構造に相当するR1とをウレタン又はウレア基により結合させた構造を持つ。
一般式1) R1-(NHCONH-R2)n-
一般式2) R1-(NHCOO-R2)n-
一般式3) R1-(OCONH-R2)n-
(上記式中、n=3であり、R1はイソシアヌレート骨格を表し、R2はポリカルボン酸及びポリオールを含むポリエステル、またはポリエステルがイソシアネート変性された変性ポリエステルのいずれかの樹脂に由来する基を表す。)
前記変性ポリエステル樹脂は、分岐構造部分にウレタン結合及びウレア結合の少なくともいずれかを有しているため、ウレタン結合又はウレア結合が擬似架橋点のような挙動を示し、変性ポリエステル樹脂のゴム的性質が強くなり、耐熱保存性、耐高温オフセット性に優れたトナーを作製することができる。
前記変性ポリエステル樹脂は、構成成分として、ジオール成分を含み、更に好ましくは構成成分としてジカルボン酸成分を含む。
【0066】
前記変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル又は変性ポリエステル部に相当するR2と分岐構造部分に相当するR1とをウレタンまたはウレア基により結合させたものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記R1とR2との結合方法としては、特に制限されるものではないが、例えば以下のような方法がある。
a)ジオール成分とジカルボン酸成分とをエステル反応させ、末端が水酸基になるポリエステルポリオール(R2)を作製し、得られたポリエステルポリオールをイソシアヌレート類(R1)と反応させる方法。
b)ジオール成分とジカルボン酸成分とをエステル反応させ、末端が水酸基になるポリエステルポリオール(R2)を作製し、得られたポリエステルポリオールを2価のポリイソシアネートと反応させ、イソシアネート変性ポリエステル(R2)を作製し、純水の存在下、得られたイソシアネート変性ポリエステルにイソシアヌレート類(R1)を反応させる方法。
上記a)~b)のいずれかにより得られたポリオールに残留した水酸基を更に2価以上のポリイソシアネートと反応させポリエステルプレポリマーとし、トナー作製プロセスにおいて硬化剤と反応させ使用することも可能である。
トナー作製プロセス中において、硬化剤との反応によりウレタン、ウレア結合を生成し、強い架橋点のような挙動を示すことで、変性ポリエステルのゴム的性質が強くなり、耐熱保存性、耐高温オフセット性に更に優れることから、R2の部分がイソシアネートにより変性された変性ポリエステルの樹脂とすることが更に好ましい。
【0067】
前記変性ポリエステル樹脂のTgを低くし、低温で変形する性質を付与しやすくするために、前記変性ポリエステルは、構成成分にジオール成分を含み、前記ジオール成分が、主鎖となる部分の炭素数が3以上9以下の奇数であり、アルキル基を側鎖に有することが好ましく、炭素数4以上12以下の脂肪族ジオールを含有することがより好ましい。
【0068】
前記変性ポリエステル樹脂において、前記炭素数3~12の脂肪族ジオールを50mol%以上含有することが好ましく、80mol%以上含有することがより好ましく、90mol%以上含有することがさらに好ましい。
【0069】
前記炭素数3~12の脂肪族ジオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールなどが挙げられる。
特に、前記変性ポリエステル樹脂において、前記ジオール成分が、炭素数3以上9以下の脂肪族ジオールであって、ジオール成分の主鎖となる部分の炭素数が、奇数であり、前記ジオール成分が、アルキル基を側鎖に有するものであることがさらに好ましい。
主鎖となる部分の炭素数が奇数であり、アルキル基を側鎖に有する炭素数4~12の脂肪族ジオールとして、例えば、下記一般式(1)で表される脂肪族ジオールが挙げられる。
HO-(CR1R2)n-OH ・・・一般式(1)
ただし、前記一般式(1)中、R1、及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~3のアルキル基を表す。nは、3~9の奇数を表す。n個の繰り返し単位において、R1は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、n個の繰り返し単位において、R2は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0070】
また、前記変性ポリエステル樹脂のTgを低くし、低温で変形する性質を付与しやすくするために、前記非晶性ポリエステル樹脂Cは、全アルコール成分中に炭素数3以上12以下の脂肪族ジオールを50mol%以上含有することが好ましい。
【0071】
前記変性ポリエステル樹脂のTgを低くし、低温で変形する性質を付与しやすくするために、前記非晶性ポリエステル樹脂Cは、構成成分にジカルボン酸成分を含み、前記ジカルボン酸成分は、炭素数4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸を含有することが好ましい。
【0072】
前記ポリエステル樹脂において、前記炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸を、30mol%以上含有することが好ましい。
前記炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などが挙げられる。
【0073】
-ジオール成分-
前記ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の脂肪族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。これらの中でも、炭素数4~12の脂肪族ジオールが好ましい。
これらのジオールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
-ジカルボン酸成分-
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、これらの無水物を用いてもよいし、低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物を用いてもよいし、ハロゲン化物を用いてもよい。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
前記炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
これらの中でも、炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
これらのジカルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
-3価以上のアルコール-
前記3価以上のアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3価以上の脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記3価以上の脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。 前記3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどが挙げられる。
前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物としては、例えば、3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したものなどが挙げられる。
【0076】
-ポリイソシアネート-
前記ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジイソシアネート、3価以上のイソシアネートなどが挙げられる。
前記ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたものなどが挙げられる。
前記3価以上のイソシアネートとしては、例えばリジントリイソシアネート、又は3価以上のアルコールをジイソシアネートで反応させたもの、ポリイソシアネートを反応させ、イソシアヌレート化させたものなどが挙げられる。
これらの中でも、より強い架橋点として作用し、耐熱保存性、耐高温オフセット性に更に優れることから、イソシアヌレート骨格を有するポリイソシアネートを使用することが更に好ましい。
【0077】
3価のイソシアネート成分は、前記トナーのTHF不溶分中の樹脂組成分に対して0.2mol%以上1.0mol%以下であることが好ましい。
3価のイソシアネート成分により架橋構造を形成する場合、架橋点におけるウレタンまたはウレア結合による擬似架橋により分子鎖の凝集力が高くなることにより、少ない架橋密度でも耐熱保存性を向上させることができ、低温定着性を高いレベルで達成することができる。
3価のイソシアネート成分が0.2mol%未満である場合、分岐構造の形成が不十分になり、網目構造が不均一になる部分が起点となることにより耐熱保存性、耐フィルミング性が悪化する場合がある。
3価のイソシアネート成分が1.0mol%より大きい場合、緻密な架橋構造を形成することによって低温定着性が悪化する場合がある。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトカプロン酸メチル、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトジフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルジフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3-メチルジフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナト-ジフェニルエーテルなどが挙げられる。 前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記イソシアヌレート類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトシクロアルキル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
これらのポリイソシアネートは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
<樹脂微粒子>
前記樹脂微粒子は、トナー母体粒子の表面に存在している。
【0079】
前記樹脂微粒子としては、コア樹脂(芯部)と前記コア樹脂の少なくとも一部の表面を被覆するシェル樹脂(外殻部)とを有することが好ましく、コア樹脂(以下、「樹脂(b2)」とも表現する)とシェル樹脂(以下「樹脂(b1)」とも表現する)からなることがより好ましく、シェル樹脂(b1)、コア樹脂(b2)がビニル系ユニットを有することが更に好ましい。
前記シェル樹脂、及び前記コア樹脂における前記ビニル系ユニットとしては、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーが好ましい。
【0080】
前記ビニルモノマーとしては、例えば、下記(1)~(10)が挙げられる。
(1)ビニル炭化水素
ビニル炭化水素としては、例えば、(1-1)脂肪族ビニル炭化水素、(1-2)脂環式ビニル炭化水素及び(1-3)芳香族ビニル炭化水素などが挙げられる。
【0081】
(1-1)脂肪族ビニル炭化水素
脂肪族ビニル炭化水素としては、例えば、アルケン、アルカジエンなどが挙げられる。
前記アルケンの具体的な例としては、エチレン、プロピレン、α-オレフィンなどが挙げられる。
前記アルカジエンの具体的な例としては、ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、1,7-オクタジエンなどが挙げられる。
【0082】
(1-2)脂環式ビニル炭化水素
脂環式ビニル炭化水素としては、モノ-もしくはジ-シクロアルケン及びアルカジエンが挙げられ、具体的な例としては(ジ)シクロペンタジエン、テルペン等が挙げられる。
【0083】
(1-3)芳香族ビニル炭化水素
芳香族ビニル炭化水素としては、スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体等が挙げられ、具体的にはα-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン及びビニルナフタレン等が挙げられる。
【0084】
(2)カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩
前記カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩としては、例えば、炭素数3~30の不飽和モノカルボン酸(塩)、不飽和ジカルボン酸(塩)並びにその無水物(塩)及びそのモノアルキル(炭素数1~24)エステル又はその塩などが挙げられる。
具体的には、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマー及びこれらの金属塩などが挙げられる。
【0085】
本発明において「(塩)」とは、酸又はその塩を意味する。
例えば、炭素数3~30の不飽和モノカルボン酸(塩)とは、不飽和モノカルボン酸又はその塩を意味する。
本発明において「(メタ)アクリル」とは、メタクリル酸又はアクリル酸を意味する。
本発明において「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイル又はアクリロイルを意味する。
本発明において「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0086】
(3)スルホン酸基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物及びこれらの塩
前記スルホン酸基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物及びこれらの塩としては、例えば、炭素数2~14のアルケンスルホン酸(塩)、炭素数2~24のアルキルスルホン酸(塩)、スルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリレート(塩)、又は(メタ)アクリルアミド(塩)、アルキルアリルスルホコハク酸(塩)などが挙げられる。
具体的には、炭素数2~14のアルケンスルホン酸としては、ビニルスルホン酸(塩)などが挙げられ、炭素数2~24のアルキルスルホン酸(塩)としては、α-メチルスチレンスルホン酸(塩)などが挙げられ、スルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリレート(塩)、又は(メタ)アクリルアミド(塩)としては、スルホプロピル(メタ)アクリレート(塩)、硫酸エステル(塩)、又はスルホン酸基含有ビニルモノマー(塩)などが挙げられる。
【0087】
(4)燐酸基含有ビニルモノマー及びその塩
燐酸基含有ビニルモノマー及びその塩としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)燐酸モノエステル(塩)、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)ホスホン酸(塩)などが挙げられる。
前記(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)燐酸モノエステル(塩)の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート(塩)、フェニル-2-アクリロイロキシエチルホスフェート(塩)などが挙げられる。
前記(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)ホスホン酸(塩)の具体例としては、2-アクリロイルオキシエチルホスホン酸(塩)などが挙げられる。
【0088】
上記(2)~(4)の塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩、4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0089】
(5)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー
前記ヒドロキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール、2-ブテン-1,4-ジオール、プロパルギルアルコール、2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、蔗糖アリルエーテルなどが挙げられる。
【0090】
(6)含窒素ビニルモノマー
前記含窒素ビニルモノマーとしては、例えば、(6-1)アミノ基含有ビニルモノマー、(6-2)アミド基含有ビニルモノマー、(6-3)ニトリル基含有ビニルモノマー、(6-4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマー、(6-5)ニトロ基含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0091】
(6-1)アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0092】
(6-2)アミド基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0093】
(6-3)ニトリル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレートなどが挙げられる。
【0094】
(6-4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びジアリルアミン等の3級アミン基含有ビニルモノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)などが挙げられる。
【0095】
(6-5)ニトロ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ニトロスチレンなどが挙げられる。
【0096】
(7)エポキシ基含有ビニルモノマー
前記エポキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート及びp-ビニルフェニルフェニルオキサイドなどが挙げられる。
【0097】
(8)ハロゲン元素含有ビニルモノマー
前記ハロゲン元素含有ビニルモノマーとしては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレンなどが挙げられる。
【0098】
(9)ビニルエステル、ビニル(チオ)エーテル、ビニルケトン
前記ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4-ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα-エトキシアクリレート、炭素数1~50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等)]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2~8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2~8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等]等、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニルモノマー[ポリエチレングリコール(分子量300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート[多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]などが挙げられる。
ビニル(チオ)エーテルとしては、例えば、ビニルメチルエーテルなどが挙げられる。
ビニルケトンとしては、例えば、ビニルメチルケトンなどが挙げられる。
【0099】
(10)その他のビニルモノマー
その他のビニルモノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、フルオロアクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート及びm-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートなどが挙げられる。
【0100】
前記シェル樹脂(b1)の合成には、上記(1)~(10)のビニルモノマーを1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記シェル樹脂(b1)としては、低温定着性の観点から、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましい。
前記シェル樹脂(b1)がカルボン酸を有することで、樹脂に酸価を付与し、樹脂微粒子がトナー粒子の表面に付着したトナー粒子を形成しやすくなる。
【0101】
前記コア樹脂(b2)に用いられるビニルモノマーは、シェル樹脂(b1)がと同様のものが挙げられる。
前記コア樹脂(b2)の合成には、上記シェル樹脂(b1)で挙げた(1)~(10)のビニルモノマーを1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記コア樹脂(b2)としては、低温定着性の観点から、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましい。
【0102】
前記シェル樹脂(b1)の周波数1Hzでの100℃における粘弾性特性損失弾性率G”としては、1.5MPa以上100MPa以下が好ましく、1.7MPa以上30MPa以下がより好ましく、2.0MPa以上10MPa以下が更に好ましい。
前記樹脂(b2)の周波数1Hzでの100℃における粘弾性特性の損失弾性率G”としては、0.01MPa以上1.0MPa以下が好ましく、0.02MPa以上0.5MPa以下がより好ましく、0.05MPa以上0.3MPa以下が更に好ましい。
前記粘弾性特性損失弾性率G”がこの範囲であれば、シェル樹脂(b1)とコア樹脂(b2)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子がトナー粒子の表面に付着したトナー粒子を形成しやすい。
【0103】
前記シェル樹脂(b1)及びコア樹脂(b2)の周波数1Hzでの100℃における粘弾性特性の損失弾性率G”は、構成モノマーの種類及びその構成比を変えることや、重合条件(開始剤、連鎖移動剤の種類及び使用量、並びに反応温度等)で調整することができる。
具体的には、例えば以下のような組成にすることで各々のG”を前述の範囲に調整することが可能となる。
(1)シェル樹脂(b1)の構成単量体から計算されるガラス転移温度(Tg1)、及びコア樹脂(b2)の構成単量体から計算されるガラス転移温度(Tg2)について、Tg1を好ましくは0℃以上150℃以下、更に好ましくは50℃以上100℃以下とし、Tg2を好ましくは-30℃以上100℃以下、更に好ましくは0℃以上80℃以下、最も好ましくは30℃以上60℃以下とする。
なお、構成単量体から計算されるガラス転移温度(Tg)とは、Fox法により計算することができる値である。
ここで、Fox法[T.G.Fox,Phys.Rev.,86,652(1952)]とは、下記式で示される個々の単独重合体のTgから共重合体のTgを推算する方法である。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
[式中、Tgは共重合体のガラス転移温度(絶対温度表示)、Tg1、Tg2・・・Tgnは各単量体成分の単独重合体のガラス転移温度(絶対温度表示)、W1、W2・・・Wnは各単量体成分の重量分率を示す。]
(2)シェル樹脂(b1)の計算酸価(AV1)及びコア樹脂(b2)の計算酸価(AV2)について、(AV1)を、好ましくは75mgKOH/g以上400mgKOH/g以下、更に好ましくは150mgKOH/g以上300mgKOH/g以下とし、(AV2)を0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下、更に好ましくは0mgKOH/g以上20mgKOH/g以下、最も好ましくは0mgKOH/gとする。
なお、計算酸価とは、構成単量体中に含有される酸性基のモル量と、構成モノマーの総重量から計算される理論酸価である。
【0104】
(1)及び(2)の条件を満たす構成単量体として、シェル樹脂(b1)については、例えばシェル樹脂(b1)の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを好ましくは10質量%以上80質量%以下、更に好ましくは30質量%以上60質量%以下含有し、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を好ましくは合計10質量%以上60質量%以下、更に好ましくは合計30質量%以上50質量%以下含有する樹脂が挙げられる。
また、コア樹脂(b2)については、例えばコア樹脂(b2)の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを好ましくは10質量%以上100質量%以下、更に好ましくは30質量%以上90質量%以下含有し、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を樹脂(b2)の合計質量に基づいて、好ましくは合計0質量%以上7.5質量%以下、更に好ましくは合計0質量%以上2.5質量%以下含有する樹脂が挙げられる。
【0105】
(3)重合条件(開始剤、連鎖移動剤の種類及び使用量、並びに反応温度等)を調整する。具体的には、シェル樹脂(b1)及びコア樹脂(b2)の数平均分子量(Mn1)及び(Mn2)について、(Mn1)を、好ましくは2,000以上2,000,000以下、更に好ましくは20,000以上200,000以下とし、(Mn2)を、好ましくは1,000以上1,000,000以下、更に好ましくは10,000以上100,000以下とする。
【0106】
本発明における粘弾性特性の損失弾性率G”は、例えば下記粘弾性測定装置を用いて測定される。
装置:ARES-24A(レオメトリック社製)
治具:25mmパラレルプレート
周波数:1Hz
歪み率:10%
昇温速度:5℃/min
【0107】
前記シェル樹脂(b1)の酸価(AVb1)としては、75mgKOH/g以上400mgKOH/g以下が好ましく、150mgKOH/g以上300mgKOH/g以下がより好ましい。
前記酸価がこの範囲であれば、シェル樹脂(b1)とコア樹脂(b2)とを同一粒子内に構成成分として含むビニル系ユニットを含有する樹脂微粒子がトナーの表面に付着した粒子を形成しやすい。
前記酸価がこの範囲にあるシェル樹脂(b1)は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸をシェル樹脂(b1)の合計質量に基づいて、好ましくは合計10質量%以上60質量%以下、更に好ましくは合計30質量%以上50質量%以下含有する樹脂である。
【0108】
前記コア樹脂(b2)の酸価(AVb2)としては、低温定着性の観点から、0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下が好ましく、0mgKOH/g以上20mgKOH/g以下がより好ましく、0mgKOH/gが更に好ましい。
前記酸価がこの範囲にあるコア樹脂(b2)は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸をコア樹脂(b2)の合計質量に基づいて、好ましくは合計0質量%以上7.5質量%以下、更に好ましくは合計0質量%以上2.5質量%以下含有する樹脂である。
本発明における酸価は、JIS K0070:1992の方法で測定する。
【0109】
前記シェル樹脂(b1)のガラス転移温度としては、前記コア樹脂(b2)のガラス転移温度より高いことが好ましく、10℃以上高いことがより好ましく、20℃以上高いことが更に好ましい。
この範囲であれば樹脂微粒子がトナーの表面に付着したトナー粒子の形成しやすさと、本発明のトナー粒子の低温定着性のバランスに優れる。
【0110】
前記シェル樹脂(b1)のガラス転移温度(以下Tgと略記する)としては、0℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上100℃以下がより好ましい。
ガラス転移温度が、0℃以上であれば、耐熱保存性を向上させることができ、150℃以下であれば、低温定着性に対する阻害が少ない。
前記コア樹脂(b2)のTgとしては、-30℃以上100℃以下が好ましく、0℃以上80℃以下がより好ましく、30℃以上60℃以下が更に好ましい。ガラス転移温度が、-30℃以上であれば、耐熱保存性を向上させることができ、100℃以下であれば、低温定着性に対する阻害が少ない。
【0111】
本発明におけるTgは、「DSC20、SSC/580」[セイコー電子工業株式会社製]を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC)で測定する。
【0112】
前記シェル樹脂(b1)の溶解性パラメータ(以下SP値と略記する)としては、トナー粒子の形成しやすさの観点から、9(cal/cm1/2以上13(cal/cm1/2以下が好ましく、9.5(cal/cm1/2以上12.5(cal/cm1/2以下がより好ましく、10.5(cal/cm1/2以上11.5(cal/cm1/2以下が更に好ましい。
前記シェル樹脂(b1)のSP値は、構成するモノマーの種類及びその構成比を変えることで調整することができる。
前記コア樹脂(b2)のSP値としては、トナー粒子の形成しやすさの観点から、8.5(cal/cm1/2以上12.5(cal/cm1/2以下が好ましく、9(cal/cm1/2以上12(cal/cm1/2以下がより好ましく、10(cal/cm1/2以上11(cal/cm1/2以下が更に好ましい。
前記コア樹脂(b2)のSP値は、構成するモノマーの種類及びその構成比を変えることで調整することができる。
【0113】
本発明におけるSP値は、Fedorsによる方法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]により計算する。
【0114】
前記シェル樹脂(b1)のTg及びその他モノマーとの共重合性の観点から、前記シェル樹脂(b1)中に、シェル樹脂(b1)の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを10質量%以上80質量%以下含有することが好ましく、30質量%以上60質量%以下含有することがより好ましい。
前記コア樹脂(b2)のTg及びその他ビニルモノマーとの共重合性の観点から、前記コア樹脂(b2)中に、前記コア樹脂(b2)の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを10質量%以上100質量%以下含有することが好ましく、30質量%以上90質量%以下含有することがより好ましい。
【0115】
前記シェル樹脂(b1)の数平均分子量(Mn)としては、2,000以上2,000,000以下が好ましく、20,000以上200,000以下がより好ましい。数平均分子量が2,000以上であれば、耐熱保存性が向上し、2,000,000以下であれば、トナーの低温定着性に対する阻害が少ない。
【0116】
前記シェル樹脂(b1)の重量平均分子量としては、前記コア樹脂(b2)の重量平均分子量より大きいことが好ましく、前記コア樹脂(b2)の重量平均分子量より1.5倍以上大きいことがより好ましく、前記コア樹脂(b2)の重量平均分子量より2.0倍以上大きいことが更に好ましい。この範囲であれば、トナー粒子の形成しやすさと、低温定着性のバランスに優れる。
【0117】
前記シェル樹脂(b1)の重量平均分子量(Mw)としては、20,000以上20,000,000以下が好ましく、200,000以上2,000,000以下がより好ましい。重量平均分子量が、20,000以上であれば、耐熱保存性が向上し、20,000,000以下であれば、低温定着性に対する阻害が少ない。
【0118】
前記コア樹脂(b2)のMnとしては、1,000以上1,000,000以下が好ましく、10,000以上100,000以下がより好ましい。Mnが、1,000以上であれば、トナーの耐熱保存性が向上し、1,000,000以下であれば、トナーの低温定着性に対する阻害が少ない。
【0119】
前記コア樹脂(b2)のMwとしては、10,000以上10,000,000以下が好ましく、100,000以上1,000,000以下がより好ましい。Mwが、10,000以上であれば、トナーの耐熱保存性が向上し、10,000,000以下であれば、トナーの低温定着性に対する阻害が少ない。
【0120】
これらの中でも、前記シェル樹脂(b1)のMwが200,000以上2,000,000以下で、コア樹脂(b2)のMwが100,000以上500,000以下で、かつ「(b1)のMw」>「(b2)のMw」であることが好ましい。
【0121】
本発明におけるMn及びMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定することができる。
装置(一例):「HLC-8120」[東ソー株式会社製]
カラム(一例):「TSK GEL GMH6」[東ソー株式会社製]2本
測定温度:40℃
試料溶液:0.25質量%のテトラヒドロフラン溶液(不溶解分をグラスフィルターでろ別したもの)
溶液注入量:100μl
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー株式会社製]
【0122】
前記樹脂微粒子中の前記シェル樹脂(b1)と前記コア樹脂(b2)との重量比(シェル樹脂(b1)/コア樹脂(b2))率は、5/95以上95/5以下が好ましく、25/75以上75/25以下がより好ましく、40/60以上60/40以下が更に好ましい。前記シェル樹脂(b1)と前記コア樹脂(b2)との重量比率が5/95以上であれば、トナーの耐熱保存性に優れ、前記シェル樹脂(b1)と前記コア樹脂(b2)との重量比率が95/5以下であれば、前記樹脂微粒子がトナー樹脂粒子の表面に付着したトナー粒子を形成しやすい。
【0123】
また、前記樹脂微粒子を単独で用いることもできるが、2種類のスチレンアクリル樹脂(樹脂b1及びb2)から成る樹脂微粒子と1種類のスチレンアクリル樹脂から成る樹脂微粒子を併用することで本発明のトナーが得られる。
乳化中に予め混合した前記樹脂微粒子がトナー表面に均一に付着し、後述する洗浄工程により前記トナー表面に付着した樹脂微粒子と樹脂b1の全てまたは一部が取り除かれることで隙間を空けて樹脂微粒子を均一に付着させることができる。
【0124】
前記樹脂微粒子を製造する方法としては公知の製造方法が挙げられるが、例えば次のような製造方法(I)~(V)等が挙げられる。
(I)水性分散液中のシェル樹脂(b1)の微粒子をシードとして、コア樹脂(b2)の構成モノマーをシード重合する方法。
(II)水性分散液中のコア樹脂(b2)の微粒子をシードとして、シェル樹脂(b1)の構成モノマーをシード重合する方法。
(III)シェル樹脂(b1)及びコア樹脂(b2)の混合物を水性媒体に乳化して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法。
(IV)シェル樹脂(b1)とコア樹脂(b2)の構成モノマーの混合物とを水性媒体に乳化した後に、コア樹脂(b2)の構成モノマーを重合して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法。
(V)コア樹脂(b2)とシェル樹脂(b1)の構成モノマーの混合物とを水性媒体に乳化した後に、シェル樹脂(b1)の構成モノマーを重合して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法。
【0125】
前記樹脂微粒子が、シェル樹脂(b1)とコア樹脂(b2)とを同一粒子内に構成成分として含むことは、前記樹脂微粒子の切断面を公知の表面元素分析装置(TOF-SIMSEDX-SEM等)を用いて元素マッピング画像の観察、及びシェル樹脂(b1)とコア樹脂(b2)に含まれる官能基に応じた染色剤で染色した樹脂微粒子の切断面の電子顕微鏡観察画像の観察を行うことにより確認することができる。
またこの方法で得られる樹脂微粒子は、前記シェル樹脂(b1)と前記コア樹脂(b2)とを同一粒子内に構成成分として含む前記樹脂微粒子の他に前記シェル樹脂(b1)のみを構成樹脂成分とする樹脂微粒子及び前記コア樹脂(b2)のみを構成樹脂成分とする樹脂微粒子を含む混合物として得られる場合があるが、後述する複合化工程においては、混合物のまま用いてもよく、前記樹脂微粒子だけを単離して用いてもよい。
【0126】
(I)の具体例としては、(b1)の構成モノマーを滴下重合して(b1)を含む樹脂微粒子の水性分散液を製造した後、これをシードとして(b2)の構成モノマーをシード重合する方法及びあらかじめ溶液重合等で製造した(b1)を水に乳化分散した後、これをシードとして(b2)の構成モノマーをシード重合する方法などが挙げられる。
【0127】
(II)の具体例としては、(b2)の構成モノマーを滴下重合して(b2)を含む樹脂微粒子の水性分散液を製造した後、これをシードとして(b1)の構成モノマーをシード重合する方法及びあらかじめ溶液重合等で製造した(b2)を水に乳化分散した後、これをシードとして(b1)の構成モノマーをシード重合する方法などが挙げられる。
【0128】
(III)の具体例としては、あらかじめ溶液重合等で製造した(b1)及び(b2)の溶液又は溶融物を混合した後、これを水性媒体に乳化分散する方法などが挙げられる。
【0129】
(IV)の具体例としては、あらかじめ溶液重合等で製造した(b1)を(b2)の構成モノマーと混合し、これを水性媒体に乳化分散した後、(b2)の構成モノマーを重合する方法及び(b2)の構成モノマー中で(b1)を製造した後、その混合物を水性媒体に乳化分散した後、(b2)の構成モノマーを重合する方法などが挙げられる。
【0130】
(V)の具体例としては、あらかじめ溶液重合等で製造した(b2)を(b1)の構成モノマーと混合し、これを水性媒体に乳化分散した後、(b1)の構成モノマーを重合する方法、(b1)の構成モノマー中で(a2)を製造した後、その混合物を水性媒体に乳化分散した後、(b1)の構成モノマーを重合する方法などが挙げられる。
【0131】
本発明においては、上記(I)~(V)のいずれの製造方法も好適である。
【0132】
前記樹脂微粒子は、水性の樹脂微粒子分散液として用いることが好ましい。
前記樹脂微粒子分散液中の前記樹脂微粒子の体積平均粒径としては、10nm以上40nm以下が好ましい。前記体積平均一次粒子径が、10nm以上であるとトナーの耐熱保存性が向上し、40nm以下であると、低温定着性が向上する。
【0133】
<トナー表面における樹脂微粒子の粒径測定>
トナー表面に存在する樹脂微粒子の粒径は以下のようにして確認することができる。
-外添剤の遊離方法-
[1]100mlのスクリュー管に、界面活性剤を含有した5質量%水溶液(商品名ノイゲンET-165、第一工業製薬株式会社製)を50ml添加し、その混合液にトナー3gを加えて静かに上下左右に動かした。その後、トナーが分散溶液になじむようにボールミルで30min撹拌した。
[2]その後、超音波ホモジナイザー(商品名homogenizer、形式VCX750、CV33、SONICS&MATERIALS有限会社製)を用いて、出力40Wに設定し、60分間超音波エネルギーを付与した。
-超音波条件-
・振動時間:60分連続
・振幅:40W
・振動開始温度:23±1.5℃
・振動中温度:23±1.5℃
[3](1)分散液をろ紙(商品名定性ろ紙(No.2、110mm)、アドバンテック東洋株式会社製)で吸引ろ過し、再度イオン交換水で2回洗浄しろ過し、遊離した添加剤を除去後、トナー粒子を乾燥させた。
(2)(1)で得られたトナーを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する。まず、反射電子像を観察することでSiを含有する外添剤やフィラーを検出した。
(3)(1)の画像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化し、前記外添剤とフィラーを排除した。
次に、(1)と同じ位置で二次電子画像を観察する。有機微粒子(OMS)樹脂微粒子は反射電子画像では観察されず、二次電子画像でのみ観察されるため、(3)で得られた画像と照合し、残存外添剤とフィラー以外の部分((3)で排除した以外の部分)に存在する微粒子を樹脂微粒子とし前記画像処理ソフトを使用し、樹脂微粒子の粒径を算出する。
【0134】
前記水性分散液に用いられるもの(水性媒体)としては、水に溶解するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、界面活性剤(D)、緩衝剤、保護コロイドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記水性分散液に用いる、水性媒体としては、水を必須とする液体であれば。特に制限はなく用いることができ、例えば、水に含有させた水溶液などが挙げられる。
前記樹脂微粒子は、水性分散液として用いることが好ましく、分散液の水性媒体としては、水を必須構成成分とする液体であれば制限なく使用でき、水に界面活性剤(D)を含有させた水溶液等が挙げられる。
【0135】
前記界面活性剤(D)としては、例えば、ノニオン性界面活性剤(D1)、アニオン性界面活性剤(D2)、カチオン性界面活性剤(D3)、両性界面活性剤(D4)、その他の乳化分散剤(D5)などが挙げられる。
【0136】
前記ノニオン性界面活性剤(D1)としては、例えば、AO(アルキレンオキサイド)付加型ノニオン性界面活性剤、多価アルコール型ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。
前記AO付加型ノニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数10~20の脂肪族アルコールのEO付加物、フェノールのEO付加物、ノニルフェノールのEO(エチレンオキサイド)付加物、炭素数8~22のアルキルアミンのEO付加物、ポリ(オキシプロピレン)グリコールのEO付加物などが挙げられる。
前記多価アルコール型ノニオン性界面活性剤としては、例えば、多価(3~8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2~30)の脂肪酸(炭素数8~24)エステル(例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート等)、アルキル(炭素数4~24)ポリ(重合度1~10)グリコシドなどが挙げられる。
【0137】
前記アニオン性界面活性剤(D2)としては、例えば、炭素数8~24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩、炭素数8~24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩、炭素数8~24の炭化水素基を有するスルホン酸塩、炭素数8~24の炭化水素基を1個又は2個有するスルホコハク酸塩、炭素数8~24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩、炭素数8~24の炭化水素基を有する脂肪酸塩、炭素数8~24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩などが挙げられる。
炭素数8~24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩としては、例えば、ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
炭素数8~24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
炭素数8~24の炭化水素基を有するスルホン酸塩としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
炭素数8~24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩としては、例えば、ラウリルリン酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
炭素数8~24の炭化水素基を有する脂肪酸塩としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミンなどが挙げられる。
炭素数8~24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩としては、例えば、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウムなどが挙げられる。
【0138】
前記カチオン性界面活性剤(D3)としては、例えば、第4級アンモニウム塩型、アミン塩型などが挙げられる。
前記第4級アンモニウム塩型としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウムなどが挙げられる。
前記アミン塩型としては、例えば、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩、オレイルアミン乳酸塩などが挙げられる。
【0139】
両性界面活性剤(D4)としては、ベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤などが挙げられる。
前記ベタイン型両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタインなどが挙げられる。
アミノ酸型両性界面活性剤としては、例えば、β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0140】
その他の乳化分散剤(D5)としては、例えば、反応性活性剤が挙げられる。
前記反応性活性剤としては、ラジカル反応性を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、アデカリアソープ(登録商標)SE-10N、SR-10、SR-20、SR-30、ER-20、ER-30(以上、株式会社ADEKA製)、アクアロン(登録商標)、HS-10、KH-05、KH-10、KH-1025(以上、第一工業製薬株式会社製)、エレミノール(登録商標)JS-20(三洋化成工業株式会社製)、ラテムル(登録商標)D-104、PD-420、PD-430(以上、花王株式会社製)、イオネット(登録商標)MO-200(三洋化成工業株式会社製)、ポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体並びにポリアクリル酸ソーダ等のカルボキシル基含有(共)重合体及び米国特許第5906704号明細書に記載のウレタン基又はエステル基を有する乳化分散剤(例えばポリカプロラクトンポリオールとポリエーテルジオールをポリイソシアネートで連結させたもの)などが挙げられる。
【0141】
界面活性剤(D)としては、乳化及び分散させる際に、油滴を安定化させ、所望の形状を得ながら、粒度分布をシャープにする観点から、(D1)、(D2)、(D5)、及びこれらの併用好ましく、(D1)と(D5)との併用、及び(D2)と(D5)との併用がより好ましい。
【0142】
前記緩衝剤としては、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウなど等が挙げられる。
前記保護コロイドとしては、水溶性セルロース化合物、ポリメタクリル酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0143】
前記樹脂微粒子は、シェル樹脂(b1)及びコア樹脂(b2)に加え、その他の樹脂成分、開始剤(及びその残渣)、連鎖移動剤、酸化防止剤、可塑剤、防腐剤、還元剤、有機溶剤などを含有していてもよい。
【0144】
前記その他の樹脂成分としては、シェル樹脂(b1)及びコア樹脂(b2)に用いた樹脂以外のビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0145】
前記開始剤(及びその残渣)としては、公知のラジカル重合開始剤等が挙げられ、具体的には、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩開始剤;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ開始剤;過酸化ベンゾイル、クメンヒドロパーオキサイド、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;過酸化水素などが挙げられる。
【0146】
連鎖移動剤としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、2-メルカプトエタノール、β-メルカプトプロピオン酸、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0147】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール化合物、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
【0148】
フェノール化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレン-ビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-チオビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3′-ビス(4′-ヒドロキシ-3′-t-ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ-ルエステル、トコフェロールなどが挙げられる。
【0149】
パラフェニレンジアミンとしては、例えば、N-フェニル-N′-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジメチル-N,N′-ジ-t-ブチル-p-フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0150】
ハイドロキノンとしては、例えば、2,5-ジ-t-オクチルハイドロキノン、2,6-ジドデシルハイドロキノン、2-ドデシルハイドロキノン、2-ドデシル-5-クロロハイドロキノン、2-t-オクチル-5-メチルハイドロキノン、2-(2-オクタデセニル)-5-メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
【0151】
有機硫黄化合物としては、例えば、ジラウリル-3,3′-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3′-チオジプロピオネート、ジテトラデシル-3,3′-チオジプロピオネートなどが挙げられる。
【0152】
有機燐化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4-ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
【0153】
前記可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、脂肪族2塩基酸エステル、トリメリット酸エステル、燐酸エステル、脂肪酸エステルなどが挙げられる。
フタル酸エステルとしては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソデシルなどが挙げられる。
脂肪族2塩基酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸-2-エチルヘキシルなどが挙げられる。
トリメリット酸エステルとしては、例えば、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチルなどが挙げられる。
燐酸エステルとしては、例えば、リン酸トリエチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸トリクレジールなどが挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、例えば、オレイン酸ブチルなどが挙げられる。
【0154】
前記防腐剤としては、例えば、有機窒素硫黄化合物防腐剤、有機硫黄ハロゲン化物防腐剤などが挙げられる。
【0155】
前記還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩等の還元性有機化合物;チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物などが挙げられる。
【0156】
前記有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン(以下、MEKと略記)等のケトン溶媒;酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル溶媒;THF(テトラヒドロフラン)等のエーテル溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム等のアミド溶媒;イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒などが挙げられる。
【0157】
前記樹脂微粒子の含有量としては、トナーに対して、0.2質量%以上5質量%以下が好ましい。シェル樹脂(b1)、コア樹脂(b2)の和が、この範囲にあることで、低温定着性と耐熱保存性とが向上する。トナーに対して、0.2質量%以上であると耐熱保存性が悪化するという不具合を防止でき、5質量%以下であると、低温定着性が低下するという不具合を防止できる。
【0158】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、離型剤、着色材、帯電制御剤、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料などが挙げられる。
【0159】
-離型剤-
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックスなどの天然ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックスなどが挙げられる。これらの中でも、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどの炭化水素系ワックスが好ましい。
【0160】
前記離型剤としては、更に、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド系化合物;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。
【0161】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下が好ましい。
前記融点が、60℃未満であると、低温で離型剤が溶融しやすくなり、耐熱保存性が劣る場合がある。
前記融点が、80℃を超えると、樹脂が溶融して定着温度領域にある場合でも、離型剤が充分溶融せずに定着オフセットを生じ、画像の欠損を生じる場合がある。
【0162】
前記離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、2質量部~10質量部が好ましく、3質量部~8質量部がより好ましい。
【0163】
-着色剤-
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。
【0164】
前記着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、1質量部~15質量部が好ましく、3質量部~10質量部がより好ましい。
【0165】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練される樹脂としては、例えば、前記他のポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp-クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0166】
-外添剤-
前記外添剤としては酸化物微粒子、無機微粒子、疎水化処理無機微粒子を併用することができるが、疎水化処理された一次粒子の平均粒径は1nm~100nmが好ましく、5nm~70nmの無機微粒子がより好ましい。
【0167】
また、疎水化処理された一次粒子の平均粒径が20nm以下の無機微粒子を少なくとも1種類以上含み、かつ30nm以上の無機微粒子を少なくとも1種類含むことが好ましい。
また、BET法による比表面積は、20m/g~500m/gであることが好ましい。
【0168】
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ微粒子、疎水性シリカ、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等)、金属酸化物(例えば、チタニア、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモン等)、フルオロポリマーなどが挙げられる。
【0169】
好適な添加剤としては、疎水化されたシリカ、チタニア、酸化チタン、アルミナ微粒子が挙げられる。 シリカ微粒子としては、例えば、R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(いずれも、日本アエロジル株式会社製)などが挙げられる。また、チタニア微粒子としては、例えばP-25(日本アエロジル株式会社製)、STT-30、STT-65C-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-140(富士チタン工業株式会社製)、MT-150W、MT-500B、MT-600B、MT-150A(いずれも、テイカ株式会社製)などが挙げられる。
【0170】
疎水化処理された酸化チタン微粒子としては、例えば、T-805(日本アエロジル株式会社製)、STT-30A、STT-65S-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-500T、TAF-1500T(いずれも、富士チタン工業株式会社製)、MT-100S、MT-100T(いずれも、テイカ株式会社製)、IT-S(石原産業株式会社製)などが挙げられる。
【0171】
前記シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0172】
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。これらの中でも、シリカと二酸化チタンが特に好ましい。
【0173】
前記外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、0.1質量部~5質量部が好ましく、0.3質量部~3質量部がより好ましい。
【0174】
前記無機微粒子の一次粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm以下が好ましく、3nm以上70nm以下がより好ましい。
【0175】
-流動性向上剤-
前記流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
前記シリカ、前記酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0176】
-クリーニング性向上剤-
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。
該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm~1μmのものが好適である。
【0177】
-磁性材料-
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライトなどが挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0178】
<トナーの製造方法>
トナーの製造方法には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリエステル樹脂成分を含み、更に必要に応じて、前記結晶性ポリエステル樹脂や離型剤、着色剤などを含む油相を水系媒体中で分散させることにより造粒することが好ましい。
また必要に応じて、前記変性ポリエステル、前記硬化剤、離型剤、着色剤などを含む油相を水系媒体中で分散させることにより造粒することが更に好ましい。
【0179】
このようなトナーの製造方法として、公知の溶解懸濁法が挙げられる。
その一例として、前記プレポリマーと前記硬化剤との伸長反応及び架橋反応の少なくともいずれかによりポリエステル樹脂を生成させながら、トナー母体粒子を形成する方法を示す。
この方法では、水系媒体の調製、トナー材料を含有する油相の調製、トナー材料の乳化及び分散、有機溶媒の除去を行う。
【0180】
-水系媒体(水相)の調製-
前記水系媒体の調製は、例えば樹脂粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。前記樹脂粒子の水系媒体中の添加量には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水系媒体100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましい。
前記水系媒体には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
【0181】
前記水と混和可能な溶媒には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類、低級ケトン類などが挙げられる。前記アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどが挙げられる。前記低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0182】
-油相の調製-
本実施形態における前記トナー材料を含有する油相の調製は、ウレタン結合及び/又はウレア結合を有するプレポリマーであるポリエステル樹脂A、Bと、ウレタン結合及び/又はウレア結合を有しないポリエステル樹脂Cを含み、更に必要に応じて前記結晶性ポリエステル樹脂、硬化剤、離型剤、着色剤などを含むトナー材料を、有機溶媒中に溶解及び分散させることにより行うことができる。
【0183】
前記有機溶媒には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶媒が好ましい。
【0184】
前記沸点が150℃未満の有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0185】
-乳化及び分散-
前記トナー材料の乳化及び分散は、前記トナー材料を含有する油相を、前記水系媒体中に分散させることにより行うことができる。そして、前記トナー材料を乳化及び分散させる際に、前記硬化剤と前記プレポリマーとを伸長反応及び架橋反応の少なくともいずれかをすることができる。
【0186】
前記プレポリマーを生成させるための反応条件(反応時間、反応温度)としては、特に制限はなく、前記硬化剤と前記プレポリマーとの組み合わせに応じて、適宜選択することができる。前記反応時間は10分間~40時間が好ましく、2~24時間がより好ましい。前記反応温度は、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。
【0187】
前記水系媒体中において、前記プレポリマーを含有する分散液を安定に形成する方法には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。その例としては、水系媒体相中に、トナー材料を溶媒に溶解及び分散させて調製した油相を添加し、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
【0188】
前記分散のための分散機には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機などが挙げられる。これらの中でも分散体(油滴)の粒子径を2~20μmに制御することができる点で、高速せん断式分散機が好ましい。
【0189】
前記高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。前記回転数は、1,000~30,000rpmが好ましく、5,000~20,000rpmがより好ましい。前記分散時間は、バッチ方式の場合、0.1~5分間が好ましい。前記分散温度は、加圧下において、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。なお、一般に、前記分散温度が高温である方が分散は容易である。
【0190】
前記トナー材料を乳化及び分散させる際の水系媒体の使用量には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100質量部に対して、50~2,000質量部が好ましく、100~1,000質量部がより好ましい。水系媒体の使用量が50質量部未満では、前記トナー材料の分散状態が悪くなって、所定の粒子径のトナー母体粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
【0191】
前記トナー材料を含有する油相を乳化及び分散する際には、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にするとともに粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
前記分散剤には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイドなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0192】
前記界面活性剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。前記陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0193】
-有機溶媒の除去-
前記乳化スラリー等の分散液から有機溶媒を除去する方法には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。その例としては、反応系全体を徐々に昇温させて油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して油滴中の有機溶媒を除去する方法などが挙げられる。
前記有機溶媒が除去されると、トナー母体粒子が形成される。トナー母体粒子に対しては、洗浄及び乾燥等を行うことができ、更に分級等を行うことができる。前記分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離などにより、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
【0194】
前記洗浄工程において、樹脂(b1)の一部又は全部を除去する方法としては、化学的方法で(b1)の一部又は全部を除去する方法が挙げられる。
化学的方法による除去工程のうち、好ましいのはトナー母体粒子にアルカリ水溶液を加えて混合し、樹脂(b1)の一部又は全部を溶解する方法が挙げられる。
【0195】
アルカリ水溶液中のアルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物等やアンモニア等が挙げられる。
樹脂(a1)を溶解させやすいという観点から、好ましくは水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムである。
【0196】
アルカリ水溶液に含まれるアルカリのpHは8~14が好ましく、更に好ましくは10~12である。
【0197】
洗浄工程におけるトナー母体粒子とアルカリ水溶液との混合は、撹拌下においてトナー母体スラリーにアルカリ水溶液を滴下する方法等で行うことができる。
更に酸水溶液を滴下して中和してもよい。
【0198】
前記得られたトナー母体粒子は、前記外添剤、前記帯電制御剤等の粒子と混合してもよい。このとき、機械的衝撃力を印加することにより、トナー母体粒子の表面から前記外添剤等の粒子が脱離するのを抑制することができる。
前記機械的衝撃力を印加する方法には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。その例としては、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などが挙げられる。
【0199】
前記方法に用いる装置には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。その例としてはオングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、I式ミル(日本ニューマチック株式会社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(株式会社奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
【0200】
(現像剤)
本発明の現像剤は、少なくとも本発明のトナーを含み、必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含む。このため、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定に形成することができる。なお、現像剤は、一成分現像剤であっても二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命が向上することから、二成分現像剤が好ましい。
【0201】
前記現像剤を一成分現像剤として用いる場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0202】
前記現像剤を二成分現像剤として用いる場合、長期に亘るトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0203】
<キャリア>
前記キャリアには特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有するものが好ましい。
【0204】
-芯材-
前記芯材の材料には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50~90emu/gのマンガン-ストロンチウム系材料、50~90emu/gのマンガン-マグネシウム系材料などが挙げられる。また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75~120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30~80emu/gの銅-亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0205】
前記芯材の体積平均粒子径には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10~150μmが好ましく、40~100μmがより好ましい。体積平均粒子径が10μm未満では、キャリア中に微粉が多くなり、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることがある。一方、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0206】
本発明のトナーは、前記キャリアと混合して二成分系現像剤に用いることができる。
前記二成分現像剤中の前記キャリアの含有量には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記二成分現像剤100質量部に対して、90~98質量部が好ましく、93~97質量部がより好ましい。
本発明の現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0207】
(トナー収容ユニット)
本発明のトナー収容ユニットは、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、容器本体とキャップを有するもの等が挙げられる。
また、容器本体の大きさ、形状、構造、材質等も特に限定されないが、形状は円筒状等であることが好ましい。特に内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより内容物である現像剤が排出口側に移行することが可能であり、スパイラル状の凹凸の一部又は全てが蛇腹機能を有することが好ましい。また、材質は寸法精度がよいものが好ましい。その例としては、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂成分ABS樹脂、ポリアセタール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0208】
前記トナー収容ユニットは、保存、搬送等が容易であり、取扱性に優れるため、後述するプロセスカートリッジ、画像形成装置等に着脱可能に取り付け、現像剤の補給に使用することができる。
【0209】
前記トナー収容ユニットは、各種画像形成装置に着脱可能に成型されており、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に担持された静電潜像を本発明の現像剤で現像してトナー像を形成する現像手段を少なくとも有する。なお、前記トナー収容ユニットは、必要に応じて、他の手段をさらに有していてもよい。
【0210】
前記現像手段としては、本発明の現像剤を収容する現像剤収容部と、現像剤収容部内に収容された現像剤を担持するとともに搬送する現像剤担持体を少なくとも有する。なお、現像手段は、担持する現像剤の厚さを規制するため規制部材等をさらに有してもよい。
【0211】
(画像形成装置、及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
本発明に関する画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0212】
<静電潜像担持体>
前記静電潜像担持体の材質、構造、大きさとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、その材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコンが好ましい。
静電潜像担持体の線速としては、300mm/s以上であることが好ましい。
【0213】
<静電潜像形成手段及び静電潜像形成工程>
前記静電潜像形成手段としては、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光部材とを少なくとも有する手段などが挙げられる。
【0214】
前記静電潜像形成工程としては、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段を用いて行うことができる。
【0215】
<<帯電部材及び帯電>>
前記帯電部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器などが挙げられる。
【0216】
前記帯電は、例えば、前記帯電部材を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電部材の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等どのような形態をとってもよく、前記画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択することができる。
【0217】
前記帯電部材としては、前記接触式の帯電部材に限定されるものではないが、帯電部材から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電部材を用いることが好ましい。
【0218】
<<露光部材及び露光>>
前記露光部材としては、前記帯電部材により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光部材などが挙げられる。
【0219】
前記露光部材に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般などが挙げられる。
【0220】
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
【0221】
前記露光は、例えば、前記露光部材を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0222】
<現像手段及び現像工程>
前記現像手段としては、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像であるトナー像を形成する、トナーを備える現像手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記現像工程としては、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像であるトナー像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段としては、前記トナーを摩擦撹拌させて帯電させる撹拌器と、内部に固定された磁界発生手段を有し、かつ表面に前記トナーを含む現像剤を担持して回転可能な現像剤担持体を有する現像装置が好ましい。
【0223】
<その他の手段及びその他の工程>
前記その他の手段としては、例えば、転写手段、定着手段、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、制御手段などが挙げられる。
前記その他の工程としては、例えば、転写工程、定着工程、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程、制御工程などが挙げられる。
【0224】
<<転写手段及び転写工程>>
前記転写手段としては、可視像を記録媒体に転写する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
前記転写工程としては、可視像を記録媒体に転写する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。
前記転写工程は、例えば、前記可視像を、転写帯電器を用いて前記感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。
【0225】
ここで、前記記録媒体上に二次転写される画像が複数色のトナーからなるカラー画像である場合に、前記転写手段により、前記中間転写体上に各色のトナーを順次重ね合わせて当該中間転写体上に画像を形成し、前記中間転写手段により、当該中間転写体上の画像を前記記録媒体上に一括で二次転写する構成とすることができる。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルトなどが好適に挙げられる。
【0226】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写器としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器などが挙げられる。
なお、前記記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0227】
<<定着手段及び定着工程>>
前記定着手段としては、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、公知の加熱加圧部材が好ましい。前記加熱加圧部材としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせなどが挙げられる。
前記定着工程としては、前記記録媒体に転写された可視像を定着させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写するごとに行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0228】
前記定着工程は、前記定着手段により行うことができる。
前記加熱加圧部材における加熱は、80℃~200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着手段とともにあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
前記定着工程における面圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm~80N/cmであることが好ましい。
【0229】
<<クリーニング手段及びクリーニング工程>>
前記クリーニング手段としては、前記感光体上に残留する前記トナーを除去できる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどが挙げられる。
前記クリーニング工程としては、前記感光体上に残留する前記トナーを除去できる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記クリーニング手段により行うことができる。
【0230】
<<除電手段及び除電工程>>
前記除電手段としては、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除電ランプなどが挙げられる。
前記除電工程としては、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記除電手段により行うことができる。
【0231】
<<リサイクル手段及びリサイクル工程>>
前記リサイクル手段としては、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像装置にリサイクルさせる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の搬送手段などが挙げられる。
前記リサイクル工程としては、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像装置にリサイクルさせる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記リサイクル手段により行うことができる。
【0232】
次に、本発明の画像形成装置により画像を形成する方法を実施する一の態様について、図2を参照しながら説明する。本実施形態の画像形成装置としては、プリンタが例として示されているが、画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、複合機等のトナーを用いて画像を形成することが可能であれば、特に限定されない。
画像形成装置は、給紙部210と、搬送部220と、作像部230と、転写部240と、定着器250とを備えている。
給紙部210は、給紙される紙Pが積載された給紙カセット211と、給紙カセット211に積載された紙Pを一枚ずつ給紙する給紙ローラ212を備えている。
【0233】
搬送部220は、給紙ローラ212により給紙された紙Pを転写部240の方向へ搬送するローラ221と、ローラ221により搬送された紙Pの先端部を挟み込んで待機し、紙を所定のタイミングで転写部240に送り出す一対のタイミングローラ222と、カラートナー像が定着した紙Pを排紙トレイ224に排出する排紙ローラ223を備えている。
【0234】
作像部230は、所定の間隔をおいて、図中、左方から右方に向かって順に、イエロートナーを有した現像剤を用いて画像を形成する画像形成ユニットYと、シアントナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットCと、マゼンタトナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットMと、ブラックトナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットKと、露光器233を備えている。
なお、画像形成ユニット(Y,C,M,K)のうち、任意の画像形成ユニットを示す場合には、画像形成ユニットという。
【0235】
また、現像剤は、トナーとキャリアを有する。4つの画像形成ユニット(Y,C,M,K)は、それぞれに用いられる現像剤が異なるのみで、機械的な構成は実質的に同一である。
【0236】
転写部240は、駆動ローラ241及び従動ローラ242と、駆動ローラ241の駆動に伴い、図中、反時計回りに回転することが可能な中間転写ベルト243と、中間転写ベルト243を挟んで、感光体ドラム231に対向して設けられた一次転写ローラ(244Y,244C,244M,244K)と、トナー像の紙への転写位置において中間転写ベルト243を挟んで対向して設けられた二次対向ローラ245及び二次転写ローラ246を備えている。
【0237】
定着器250は、ヒータが内部に設けられており、紙Pを加熱する定着ベルト251を、定着ベルト251に対して、回転可能に加圧することによりニップを形成する加圧ローラ252を備えている。これにより、紙P上のカラートナー像に熱と圧力が印加されて、カラートナー像が定着する。カラートナー像が定着した紙Pは、排紙ローラ223により排紙トレイ224に排紙され、一連の画像形成プロセスが完了する。
【実施例0238】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0239】
<非晶性ポリエステル樹脂の合成例1>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物、テレフタル酸、アジピン酸、及びトリメチロールプロパンを、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物とビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物とがモル比(ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物)で85/15であり、テレフタル酸とアジピン酸とがモル比(テレフタル酸/アジピン酸)で75/25であり、全モノマー中におけるトリメチロールプロパンの量が1mol%であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.2となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)とともに常圧で、230℃で8時間反応し、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧で3時間反応し、非晶性ポリエステル樹脂1を得た。
【0240】
<非晶性ポリエステル樹脂の合成例2>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物、テレフタル酸、アジピン酸、及びトリメチロールプロパンを、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物とビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物とがモル比(ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物)で85/15であり、テレフタル酸とアジピン酸とがモル比(テレフタル酸/アジピン酸)で85/15であり、全モノマー中におけるトリメチロールプロパンの量が1mol%であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.04となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)とともに常圧で、230℃で8時間反応し、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧で3時間反応し、非晶性ポリエステル樹脂2を得た。
【0241】
<非晶性ポリエステル樹脂の合成例3>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物、テレフタル酸、アジピン酸、及びトリメチロールプロパンを、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物とビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物とがモル比(ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物)で85/15であり、テレフタル酸とアジピン酸とがモル比(テレフタル酸/アジピン酸)で30/70であり、全モノマー中におけるトリメチロールプロパンの量が1mol%であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.26となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)とともに常圧で、230℃で8時間反応し、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧で3時間反応し、非晶性ポリエステル樹脂3を得た。
【0242】
<結晶性ポリエステル樹脂の合成例>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、セバシン酸、及び1,6-ヘキサンジオールを、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが0.9となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)とともに、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、更に8.3kPaの圧力にて2時間反応し、結晶性ポリエステル樹脂1を得た。
【0243】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液の調製例>
撹拌棒、及び温度計をセットした容器に[結晶性ポリエステル樹脂1]60質量部、及び酢酸エチル400質量部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で分散を行い、結晶性ポリエステル樹脂分散液1を得た。
【0244】
<プレポリマーの合成例1>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、イソフタル酸、アジピン酸、及び無水トリメリット酸を、水酸基とカルボキシル基のモル比であるOH/COOHが1.5であり、ジオール成分の構成が3-メチル-1,5-ペンタンジオール100mol%であり、ジカルボン酸成分の構成がイソフタル酸40mol%及びアジピン酸60mol%であり、全モノマー中における無水トリメリット酸の量が1mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。
その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。
その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応し、[中間体ポリエステル1]を得た。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]とイソホロンジイソシアネート(IPDI)とをモル比(IPDIのイソシアネート基/中間体ポリエステルの水酸基)2.0で投入し、酢酸エチルで50%酢酸エチル溶液となるように希釈後、100℃で5時間反応させ、[プレポリマー1]を得た。
【0245】
<プレポリマーの合成例2>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、イソフタル酸、及び無水トリメリット酸を、水酸基とカルボキシル基のモル比であるOH/COOHが1.5であり、ジオール成分の構成が3-メチル-1,5-ペンタンジオール100mol%であり、ジカルボン酸成分の構成がイソフタル酸100mol%であり、全モノマー中における無水トリメリット酸の量が1mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。
その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。
その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応し、[中間体ポリエステル2]を得た。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル2]とイソホロンジイソシアネート(IPDI)とをモル比(IPDIのイソシアネート基/中間体ポリエステルの水酸基)2.0で投入し、酢酸エチルで50%酢酸エチル溶液となるように希釈後、100℃で5時間反応させ、[プレポリマー2]を得た。
【0246】
<プレポリマーの合成例3>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、デカン2酸、及び無水トリメリット酸を、水酸基とカルボキシル基のモル比であるOH/COOHが1.5であり、ジオール成分の構成が3-メチル-1,5-ペンタンジオール100mol%であり、ジカルボン酸成分の構成がデカン2酸100mol%であり、全モノマー中における無水トリメリット酸の量が1mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。
その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。
その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応し、[中間体ポリエステル3]を得た。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル3]とイソホロンジイソシアネート(IPDI)とをモル比(IPDIのイソシアネート基/中間体ポリエステルの水酸基)2.0で投入し、酢酸エチルで50%酢酸エチル溶液となるように希釈後、100℃で5時間反応させ、[プレポリマー3]を得た。
【0247】
<樹脂微粒子の分散液の合成例1>
撹拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3,710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬製、アクアロンKH-1025)200質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化し、75℃まで昇温させた後、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部、スチレン450質量部、ブチルアクリレート250質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。
滴下後、75℃で4時間熟成させることで前記モノマー及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムが共重合したポリマーである樹脂(a1-1)を含む[微粒子分散液(W0-1)]を得た。[微粒子分散液(W0-1)]中の樹脂微粒子の体積平均粒径は、動的光散乱法(光散乱電気泳動装置:大塚電子株式会社製、ELS-8000)で測定したところ、15nmであった。また、[微粒子分散液(W0-1)]の一部を乾燥して樹脂(a1-1)を単離したところ、樹脂成分のTgは53℃、酸価は195mgKOH/gであった。
次に、撹拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に[微粒子分散液(W0-1)]を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた後、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部、及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。
滴下後、70℃で4時間熟成させることで(W0-1)中の樹脂(a1-1)をシードとして前記モノマーが共重合したポリマーである樹脂(a2-1)と前記樹脂(a1-1)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(A-1)の微粒子分散液を得た。得られた微粒子分散液を固形分濃度20%になるように水を加え、樹脂微粒子分散液(W-1)を得た。[樹脂微粒子(A-1)]の体積平均粒径は、動的光散乱法(光散乱電気泳動装置:大塚電子株式会社製、ELS-8000)で測定したところ、17.3nmであった。また、[樹脂微粒子分散液(W-1)]を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで樹脂(a2-1)を単離したところ、樹脂成分のTgは53℃、酸価は195mgKOH/gであった。
【0248】
<樹脂微粒子の分散液の合成例2>
撹拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3,760質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬製、アクアロンKH-1025)150質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化し、75℃まで昇温させた後、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部、スチレン430質量部、ブチルアクリレート270質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。
滴下後、75℃で4時間熟成させることで前記モノマー及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムが共重合したポリマーである樹脂(a2-1)を含む[微粒子分散液(W0-2)]を得た。[微粒子分散液(W0-2)]中の樹脂微粒子の体積平均粒径は、動的光散乱法(光散乱電気泳動装置:大塚電子株式会社製、ELS-8000)で測定したところ、30nmであった。また、[微粒子分散液(W0-2)]の一部を乾燥して樹脂(a2-1)を単離したところ、樹脂成分のTgは53℃、酸価は195mgKOH/gであった。
次に、撹拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に[微粒子分散液(W0-2)]を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた後、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部、及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。
滴下後、70℃で4時間熟成させることで(W0-2)中の樹脂(a2-1)をシードとして前記モノマーが共重合したポリマーである樹脂(a2-2)と前記樹脂(a2-1)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(A-2)の微粒子分散液を得た。得られた微粒子分散液を固形分濃度20%になるように水を加え、樹脂微粒子分散液(W-2)を得た。[樹脂微粒子(A-2)]の体積平均粒径は、動的光散乱法(光散乱電気泳動装置:大塚電子株式会社製、ELS-8000)で測定したところ、34.3nmであった。また、[樹脂微粒子分散液(W-2)]を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで樹脂(a2-2)を単離したところ、樹脂成分のTgは53℃、酸価は195mgKOH/gであった。
【0249】
<樹脂微粒子の分散液の合成例3>
撹拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3,810質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬株式会社製、アクアロンKH-1025)100質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化し、75℃まで昇温させた後、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部、スチレン400質量部、ブチルアクリレート300質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。
滴下後、75℃で4時間熟成させることで前記モノマー及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムが共重合したポリマーである樹脂(a3-1)を含む[微粒子分散液(W0-3)]を得た。[微粒子分散液(W0-3)]中の樹脂微粒子の体積平均粒径は、動的光散乱法(光散乱電気泳動装置:大塚電子株式会社製、ELS-8000)で測定したところ、45nmであった。また、[微粒子分散液(W0-3)]の一部を乾燥して樹脂(a3-1)を単離したところ、樹脂成分のTgは53℃、酸価は195mgKOH/gであった。
次に、撹拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に[微粒子分散液(W0-3)]を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた後、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部、及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。
滴下後、70℃で4時間熟成させることで(W0-3)中の樹脂(a3-1)をシードとして前記モノマーが共重合したポリマーである樹脂(a3-2)と前記樹脂(a3-1)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(A-3)の微粒子分散液を得た。得られた微粒子分散液を固形分濃度20%になるように水を加え、樹脂微粒子分散液(W-3)を得た。[樹脂微粒子(A-3)]の体積平均粒径は、動的光散乱法(光散乱電気泳動装置:大塚電子株式会社製、ELS-8000)で測定したところ、51.5nmであった。また、[樹脂微粒子分散液(W-3)]を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで樹脂(a3-2)を単離したところ、樹脂成分のTgは53℃、酸価は195mgKOH/gであった。
【0250】
<ワックス分散液の調製例>
撹拌機、加熱冷却装置、温度計及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、キシレン454質量部、低分子量ポリエチレン(三洋化成工業株式会社製、サンワックスLEL-400)150質量部を投入し、窒素置換後、撹拌下170℃に昇温し、同温度でスチレン595質量部、メタクリル酸メチル255質量部、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート34質量部及びキシレン119質量部の混合液を3時間かけて滴下し、更に同温度で30分間保持した。次いで0.039MPaの減圧下でキシレンを留去し、変性ワックスを得た。
変性ワックスのグラフト鎖のsp値は10.35(cal/cm1/2、Mnは1,900、Mwは5200、Tgは57℃であった。
撹拌棒、及び温度計をセットした容器に、パラフィンワックス50質量部(日本精鑞株式会社製、HNP-9、炭化水素系ワックス、融点75℃、SP値8.8)、前記変性ワックス 5質量部、及び酢酸エチル165質量部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。その後、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で分散し、ワックス分散液を得た。
【0251】
<マスターバッチの調製例1>
水1,200質量部、カーボンブラック(Printex35、デクサ社製)〔DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5〕500質量部、及び[非晶性ポリエステル樹脂1]500質量部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で混合し、得られた混合物を、2本ロールを用いて150℃で30分間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕し、マスターバッチ1を得た。
【0252】
<マスターバッチの調製例2>
モンモリロナイト100質量部を200mLの水に十分に分散し、予め水に十分に溶解させたジメチルステアリルベンジルアンモニウムクロライド(423.5g/mol)38.1質量部を添加、混合し、洗浄、脱水、乾燥して有機物イオン変性率100%の有機変性層状無機鉱物を作製した。
水2,400質量部、前記有機変性層状無機鉱物1,919質量部、及び[非晶性ポリエステル樹脂1]1,570質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて混合した。得られた混合物を、2本ロールで150℃にて30分混練した後に冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕し、マスターバッチ2を得た。
【0253】
(実施例1)
<油相の調製例>
[ワックス分散液]21質量部、[結晶性ポリエステル分散液]47質量部、[非晶性ポリエステル樹脂1]49質量部、[マスターバッチ1]17質量部、[マスターバッチ2]17質量部、及び酢酸エチル30質量部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化株式会社製)で5,000rpmで60分間混合した。その後、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、ディスク周速度7m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを70体積%充填、パス回数(単位体積当たりのビーズミル通過回数)6回で分散を行い、[油相]を得た。この際、送液速度は1パスした際に油相全体が平均で0.5分間分散されるように調整した。
【0254】
<水相の調製例>
水256質量部、[微粒子分散液(W-1)]15質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)26質量部、酢酸エチル24質量部を混合撹拌し、[水相]を得た。
【0255】
前記[油相]181質量部、前記[プレポリマー1]14質量部、及び硬化剤としてイソホロンジアミン0.2質量部を加えて撹拌混合し、混合液を得た。得られた混合液に前記[水相]306質量部を加え、TKホモミキサーで、回転数13,000rpmで20分間混合した。次に、30℃で8時間脱溶剤した後に45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー]を得た。
【0256】
<洗浄及び乾燥>
前記[分散スラリー]100質量部を減圧濾過した後、以下の操作を行った。
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液をpH11になるまで加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸をpH4~5になるまで加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する、という前記(1)~(4)の操作を2回行い濾過ケーキを得た。
濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩いトナー母体粒子を得た。
【0257】
<外添処理>
[トナー母体粒子1]100質量部に対して、平均粒径100nmの疎水性シリカ0.6質量部と、平均粒径20nmの酸化チタン1.0質量部と、平均粒径15nmの疎水性シリカ微粉体を0.8質量部とをヘンシェルミキサーにて混合し、[トナー1]を得た。得られたトナーの平均円形度は0.98、円形度の標準偏差は0.016であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は42℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-37℃であり、トナーのTHFに可溶な成分のガラス転移温度は53℃であり、[樹脂微粒子(A-1)]の含有量は[トナー1]に対して3.0質量%であった。
図3に、トナー1の表面上の樹脂微粒子の存在状態の一例を示す。
【0258】
<平均円形度、及び平均円形度の標準偏差の測定方法>
ガラス製100mlビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC-A、第一工業製薬株式会社製)を0.1ml、[トナー1]0.1g、イオン交換水80mLを添加してミクロスパーテルでかき混ぜてトナーの分散液を得た後、得られたトナーの分散液を超音波分散器(本多電子株式会社製)で3分間分散処理し、トナーの濃度が5,000個/μL~15,000個/μLとなるまでフロー式粒子像分析装置(「FPIA-2100」、シスメックス社製)と解析ソフトFPIA-2100を用いて、トナーの平均円形度、及び平均円形度の標準偏差を測定した。
【0259】
<キャリアの作製>
トルエン100質量部に、オルガノシロキサン結合のみからなるストレートシリコーン樹脂100質量部、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部、及びカーボンブラック10質量部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。流動床型コーティング装置を用いて、平均粒径50μmの球状マグネタイト1,000質量部の表面に前記樹脂層塗布液を塗布して、[キャリア]を作製した。
【0260】
<現像剤の作製>
ボールミルを用いて、[トナー1]5質量部と[キャリア]95質量部とを混合し、現像剤を作製した。
【0261】
<ガラス転移温度の測定方法>
トナー1gを100mLのテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、ソックスレー抽出を行い、トナー中のTHF不溶分とTHF可溶分とを得た。得られたTHF不溶分とTHF可溶分とをそれぞれ真空乾燥機にて24時間乾燥させ、それぞれTHF不溶のポリエステル樹脂成分及びTHF可溶のポリエステル樹脂成分を得た。以下において、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度の測定では対象試料として前記THF不溶のポリエステル樹脂成分を用いて、トナーのTHFに可溶な成分のガラス転移温度の測定では対象試料として前記THF可溶のポリエステル樹脂成分を用いた。また、トナーのガラス転移温度の測定には、対象試料としてトナーを用いた。
次に、対象試料5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。
次に、窒素雰囲気下にて、昇温速度1.0℃/minで-80℃から150℃まで加熱した(昇温1回目)。
次に、降温速度1.0℃/minで150℃から-80℃まで冷却させ、昇温速度1.0℃/minで-80℃から150℃まで加熱した(昇温2回目)。
上記昇温1回目、及び昇温2回目において、示差走査熱量計(Q-200、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測し、得られたDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択して昇温1回目におけるガラス転移温度Tg1stを求めた。同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択して昇温2回目におけるガラス転移温度Tg2ndを求めた。
【0262】
(実施例2)
実施例1において、水相の調製における[微粒子分散液(W-1)]を[微粒子分散液(W-2)]に変更した以外は、実施例1と同様にして、[トナー2]を作製した。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.98であり、平均円形度の標準偏差は0.016であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は42℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-37℃であり、トナーのTHFに可溶な成分のガラス転移温度は53℃であり、[樹脂微粒子(A-2)]の含有量は、[トナー2]に対して3.0質量%であった。
【0263】
(実施例3)
実施例1において、水相の調製における[微粒子分散液(W-1)]を[微粒子分散液(W-3)]に変更した以外は、実施例1と同様にして、[トナー3]を作製した。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.98であり、平均円形度の標準偏差は0.016であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は42℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-37℃であり、トナーのTHFに可溶な成分のガラス転移温度は53℃であり、[樹脂微粒子(A-3)]の含有量は、[トナー3]に対して3.0質量%であった。
【0264】
(実施例4)
実施例1において、油相の調製におけるビーズミルのディスク周速度を9m/秒間に変更した以外は、実施例1と同様にして、[トナー4]を作製した。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.972であり、平均円形度の標準偏差は0.017であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は42℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-37℃であり、トナーのTHFに可溶な成分のガラス転移温度は53℃であり、[樹脂微粒子(A-1)]の含有量は、[トナー4]に対して3.0質量%であった。
【0265】
(実施例5)
実施例1において、油相の調製におけるビーズミルのディスク周速度を7m/秒間とし、パス回数(単位体積当たりのビーズミル通過回数)を10回に変更した以外は、実施例1と同様にして、[トナー5]を作製した。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.976であり、平均円形度の標準偏差は0.014であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は42℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-37℃であり、トナーのTHFに可溶な成分のガラス転移温度は53℃であり、[樹脂微粒子(A-1)]の含有量は、[トナー5]に対して3.0質量%であった。
【0266】
(実施例6)
実施例1において、油相の調製におけるビーズミルのディスク周速度を6m/秒間に変更した以外は、実施例1と同様にして、[トナー6]を作製した。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.983であり、平均円形度の標準偏差は0.019であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は42℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-37℃であり、トナーのTHFに可溶な成分のガラス転移温度は53℃であり、[樹脂微粒子(A-1)]の含有量は、[トナー6]に対して3.0質量%であった。
【0267】
(実施例7)
実施例1において、洗浄及び乾燥にて濾過ケーキにイオン交換水300質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、プレート式熱交換器を用いて68℃まで昇温させて20分間保持し、その後プレート式熱交換器を用いて25℃まで冷却した以外は、実施例1と同様にして、[トナー7]を作製した。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.982であり、平均円形度の標準偏差は0.016であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は42℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-37℃であり、トナーのTHFに可溶な成分のガラス転移温度は53℃であり、[樹脂微粒子(A-1)]の含有量は、[トナー7]に対して3.0質量%であった。
【0268】
(実施例8)
実施例1において、水相の調製における[微粒子分散液(W-1)]の含有量を21質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、[トナー8]を作製した。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.981であり、平均円形度の標準偏差は0.019であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は42℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-37℃であり、トナーのTHFに可溶な成分のガラス転移温度は53℃であり、[樹脂微粒子(A-1)]の含有量は、[トナー8]に対して4.1質量%であった。
【0269】
(比較例1)
実施例1において、油相の調製においてビーズミル処理する工程を行わなかった以外は、実施例1同様にして、[トナー9]を得た。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.982、平均円形度の標準偏差は0.026であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は42℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-37℃であり、トナーのTHFに可溶な成分のガラス転移温度は53℃であり、[樹脂微粒子(A-1)]の含有量は、[トナー9]に対して3.0質量%であった。
【0270】
(比較例2)
実施例1において、油相の調製においてビーズミル処理する工程を行わず、洗浄及び乾燥にて濾過ケーキにイオン交換水300質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、プレート式熱交換器を用いて75℃まで昇温させ、80分間保持し、その後プレート式熱交換器を用いて25℃まで冷却した以外は、実施例1と同様にして、[トナー10]を作製した。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.986、平均円形度の標準偏差は0.019であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は42℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-37℃であり、トナーのTHFに可溶な成分のガラス転移温度は53℃であり、[樹脂微粒子(A-1)]の含有量は、[トナー10]に対して3.0質量%であった。
【0271】
(比較例3)
実施例1において、油相の調製におけるビーズミルのディスク周速度を9m/sとし、パス回数(単位体積当たりのビーズミル通過回数)を30回に変更した以外は、実施例1と同様にして、[トナー11]を作製した。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.968であり、平均円形度の標準偏差は0.018であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は42℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-37℃であり、トナーのTHFに可溶な成分のガラス転移温度は53℃であり、[樹脂微粒子(A-1)]の含有量は、[トナー11]に対して3.0質量%であった。
【0272】
(比較例4)
実施例1において、[非晶性ポリエステル1]を、[非晶性ポリエステル2]に変更した以外は、実施例1と同様にして、[トナー12]を得た。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.981であり、平均円形度の標準偏差は0.016であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は55℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-37℃であり、[樹脂微粒子(A-1)]の含有量は、[トナー12]に対して3.0質量%であった。
【0273】
(比較例5)
実施例1において、[非晶性ポリエステル1]を、[非晶性ポリエステル3]に変更し、[プレポリマー1]14質量部を、[プレポリマー1]21質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、[トナー13]を得た。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.980であり、平均円形度の標準偏差は0.016であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は18℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-39℃であり、[樹脂微粒子(A-1)]の含有量は、[トナー13]に対して3.0質量%であった。
【0274】
(比較例6)
実施例1において、[プレポリマー1]14質量部を、[プレポリマー2]7質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、[トナー14]を得た。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.980であり、平均円形度の標準偏差は0.016であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は48℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は13℃であり、[樹脂微粒子(A-1)]の含有量は、[トナー14]に対して3.0質量%であった。
【0275】
(比較例7)
実施例1において、[プレポリマー1]を[プレポリマー3]に変更した以外は、実施例1と同様にして、[トナー15]を得た。実施例1と同様の方法で平均円形度及び平均円形度の標準偏差を測定したところ、得られたトナーの平均円形度は0.981であり、平均円形度の標準偏差は0.016であった。
また、得られたトナーのガラス転移温度は35℃であり、トナーのTHFに不溶な成分のガラス転移温度は-55℃であり、[樹脂微粒子(A-1)]の含有量は、[トナー15]に対して3.0質量%であった。
【0276】
実施例1~8及び比較例1~7で得られたトナーについて、低温定着性、耐熱保存性、クリーニング性及び転写性を評価した。評価結果を下記表1から表3に示す。
【0277】
<低温定着性>
熱定着機を外したカラー複合機(imagio MP C4500、株式会社リコー製)を用いて、トナーを紙面(再生PPC用紙100、王子製紙株式会社製)上に0.8mg/cmとなるように均一に載せた。
この紙を、加圧ローラで定着速度(加熱ローラの周速)が213mm/sec、定着圧力(加圧ローラの圧力)が10kg/cmの条件で通した時の定着下限温度を測定した。下記評価基準に基づき、低温定着性を評価した。
[評価基準]
◎:定着下限温度が130℃以下
○:定着下限温度が130℃より大きく135℃以下
△:定着下限温度が135℃より大きく140℃以下
×:定着下限温度が140℃より大きい
【0278】
<耐熱保存性>
50mLのガラス容器にトナーを10g充填し、トナーを50℃で8時間保管した後、42メッシュの篩で2分間篩い、金網上(篩)に残存するトナーの質量を量り、篩に入れたトナーの質量に対する割合[(前記金網に残存したトナーの質量/篩に入れたトナーの質量)×100]から、トナーの残存率を測定し、下記評価基準に基づき、耐熱保存性を評価した。
[評価基準]
◎:残存率が5%未満
○:残存率が5%以上15%未満
△:残存率が15%以上30%未満
×:残存率が30%以上
【0279】
<クリーニング性>
前記画像形成装置を用い、実験室環境21℃、65%RH、画像面積率5%チャートを3プリント/ジョブで、50,000枚(A4サイズ横)を出力した。
その後、32℃、54%RHの実験室環境にて、評価画像として、縦帯パターン(紙進行方向に対して)43mm幅、3本チャートをA4サイズ横で、100枚出力し、得られた画像を目視で観察して、下記評価基準に基づき、クリーニング性を評価した。
[評価基準]
◎:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上に目視で確認できず、感光体上を長手方向に顕微鏡で観察してもトナーのスジ状のすり抜けが確認できない
○:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上にも目視で確認できない
×:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上にも目視で確認できる
【0280】
<転写性>
富士ゼロックス株式会社製のDocuColor 8000 Digital Pressを改造して、線速162mm/sec及び転写時間を40msecにチューニングした評価機を用い、各現像剤について、A4サイズ、トナー付着量0.6mg/cmのベタパターンをテスト画像として出力するランニング試験を行った。
テスト画像の初期及び100K出力後の一次転写における一次転写効率を下記式(3)により、二次転写における二次転写効率を下記式(4)によりそれぞれ求め、一次転写効率と二次転写効率の平均値を算出して、下記評価基準に基づき、転写性を評価した。
一次転写効率(%)=(中間転写体上に転写されたトナー量/電子写真感光体上に現像されたトナー量)×100・・・式(3)
二次転写効率(%)=(中間転写体上に転写されたトナー量-中間転写体上の転写残トナー量/中間転写体上に転写されたトナー量)×100・・・式(4)
[評価基準]
◎:90%以上
○:85%以上90%未満
△:80%以上85%未満
×:80%未満
【0281】
【表1】
【0282】
【表2】
【0283】
【表3】
【0284】
本発明の実施例1~8のトナーは、低温定着性、耐熱保存性、クリーニング性、及び転写性のいずれも優れた性能を示した。これに対し、比較例1~7のトナーは、低温定着性、耐熱保存性、クリーニング性、及び転写性の全てを両立させることは不可能であった。
【0285】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 結着樹脂を含有するトナー母体粒子と、
前記トナー母体粒子の表面に樹脂微粒子と、を有するトナーであって、
前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目におけるガラス転移温度が20℃以上50℃以下であり、
前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)に不溶な成分のDSCによる昇温1回目におけるガラス転移温度が-40℃以上10℃以下であり、
前記トナーの平均円形度が0.970以上0.985以下であり、
前記平均円形度の標準偏差が0.020以下であることを特徴とするトナーである。
<2> 前記平均円形度の標準偏差が0.014以下である、前記<1>に記載のトナーである。
<3> 前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)による昇温1回目におけるガラス転移温度(Tg)が、40℃以上50℃以下であり、
前記トナーのTHFに不溶な成分のDSCによる昇温1回目におけるガラス転移温度が-40℃以上5℃以下であり、
前記トナーのTHFに可溶な成分のDSCによる昇温2回目におけるガラス転移温度(Tg)が、20℃以上65℃以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載のトナーである。
<4> 前記樹脂微粒子の含有量が、前記トナーに対して0.2質量%以上5質量%以下である、前記<1>から<3>のいずれかに記載のトナーである。
<5> 前記結着樹脂が、ポリエステル樹脂であり、
前記ポリエステル樹脂が、3価又は4価の炭素数3以上10以下の脂肪族多価アルコール成分を含む、前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナーである。
<6> 前記ポリエステル樹脂が、ジオール成分を含み、
前記ジオール成分が、主鎖となる部分の炭素数が3以上9以下であり、アルキル基を側鎖に有する、前記<5>に記載のトナーである。
<7> 前記ポリエステル樹脂が、ウレタン結合及びウレア結合の少なくともいずれかを有する、前記<5>から<6>のいずれかに記載のトナーである。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載のトナーを収容することを特徴とするトナー収容ユニットである。
<9> 前記<8>に記載のトナー収容ユニットを有することを特徴とする画像形成装置である。
<10> 前記<1>から<7>のいずれかに記載のトナーを有する画像形成装置であって、
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成するトナーを備える現像手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0286】
前記<1>から<7>のいずれかに記載のトナー、前記<8>に記載のトナー収容ユニット、及び前記<9>から<10>のいずれかに記載の画像形成装置によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0287】
10 感光体ドラム
40 現像器
58 コロナ帯電器
80 転写ローラ
90 クリーニング装置
110 プロセスカートリッジ
210 給紙部
211 給紙カセット
212 給紙ローラ
220 搬送部
221 ローラ
222 タイミングローラ
223 排紙ローラ
224 排紙トレイ
230 作像部
233 露光器
240 転写部
241 駆動ローラ
242 従動ローラ
243 中間転写ベルト
244 一次転写ローラ
245 二次対向ローラ
246 二次転写ローラ
250 定着器
251 定着ベルト
252 加圧ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0288】
【特許文献1】特開2002-372806号公報
図1
図2
図3