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  • 特開-放射パネル 図1
  • 特開-放射パネル 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070960
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】放射パネル
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/12 20060101AFI20230515BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20230515BHJP
   F24D 3/16 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
F28F3/12 Z
F24F5/00 101B
F24D3/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183463
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】前羽 誠
【テーマコード(参考)】
3L070
【Fターム(参考)】
3L070BD03
3L070BD16
3L070BD19
(57)【要約】
【課題】 伝熱性の向上により空調を効率良く行うことができる放射パネルを提供する。
【解決手段】 パネル本体10と、パネル本体10の一方面側に配置されて内部を熱媒流体が通過する円管状のパイプ20と、パイプ20を被覆するシート状の伝熱部材30と、伝熱部材30を介してパイプ20をパネル本体10に向けて押圧する押圧部材40とを備え、伝熱部材30は、可撓性を有するグラファイトシートからなり、パイプ20の外周面に密着するように湾曲し、パイプ20を挟んだ両側でパネル本体10の一方面に密着する放射パネル1である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル本体と、
前記パネル本体の一方面側に配置されて内部を熱媒流体が通過する円管状のパイプと、
前記パイプを被覆するシート状の伝熱部材と、
前記伝熱部材を介して前記パイプを前記パネル本体に向けて押圧する押圧部材とを備え、
前記伝熱部材は、可撓性を有するグラファイトシートからなり、前記パイプの外周面に密着するように湾曲し、前記パイプを挟んだ両側で前記パネル本体の一方面に密着する放射パネル。
【請求項2】
前記伝熱部材は、前記パネル本体の一方面および前記パイプの外周面の双方に沿うように、前記パネル本体に向けて凸となる折曲部が形成されている請求項1に記載の放射パネル。
【請求項3】
前記伝熱部材は、前記折曲部が前記パネル本体の一方面と前記パイプの外周面との間に挟み込まれて固定されている請求項2に記載の放射パネル。
【請求項4】
前記パネル本体は、前記パイプが装着される断面円弧状の装着部を備えており、
前記装着部は、円弧状の両端部が前記パネル本体の一方面側に突出し、
前記伝熱部材は、前記折曲部が前記パネル本体の一方面と前記装着部の外周面との間に挟み込まれている請求項2に記載の放射パネル。
【請求項5】
前記伝熱部材によって被覆される前記パネル本体と前記パイプとの間には、放熱グリスが介在されている請求項1から4のいずれかに記載の放射パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
室内の冷暖房を行うため、天井等に放射パネルを施工することが従来から行われている。図6に示すように、例えば特許文献1には、パネル本体101と、パネル本体101の裏面側に配置された熱伝導ユニット102とを備える輻射パネル100が開示されている。熱伝導ユニット102は、管状部材103と、波状に形成された主熱伝導シート104と、平板状の副熱伝導シート105とを備えており、主熱伝導シート104の谷部104aに管状部材103が収容されて、山部104bが副熱伝導シート105に接着されることで、全体がユニット化されている。管状部材103を通過する熱媒体の熱は、主熱伝導シート104および副熱伝導シート105を介して、パネル本体101に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-240744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の輻射パネル100は、熱伝導ユニット102にねじれ等の変形が生じると、主熱伝導シート104および副熱伝導シート105と管状部材103との間や、副熱伝導シート105とパネル本体101との間に隙間が生じ易くなり、これによって伝熱性が低下するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、伝熱性の向上により空調を効率良く行うことができる放射パネルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、パネル本体と、前記パネル本体の一方面側に配置されて内部を熱媒流体が通過する円管状のパイプと、前記パイプを被覆するシート状の伝熱部材と、前記伝熱部材を介して前記パイプを前記パネル本体に向けて押圧する押圧部材とを備え、前記伝熱部材は、可撓性を有するグラファイトシートからなり、前記パイプの外周面に密着するように湾曲し、前記パイプを挟んだ両側で前記パネル本体の一方面に密着する放射パネルにより達成される。
【0007】
この放射パネルにおいて、前記伝熱部材は、前記パネル本体の一方面および前記パイプの外周面の双方に沿うように、前記パネル本体に向けて凸となる折曲部が形成されていることが好ましい。
【0008】
前記伝熱部材は、前記折曲部が前記パネル本体の一方面と前記パイプの外周面との間に挟み込まれて固定されていることが好ましい。
【0009】
前記パネル本体は、前記パイプが装着される断面円弧状の装着部を備えることができ、前記装着部は、円弧状の両端部が前記パネル本体の一方面側に突出するように構成することができる。この構成において、前記伝熱部材は、前記折曲部が前記パネル本体の一方面と前記装着部の外周面との間に挟み込まれていることが好ましい。
【0010】
前記伝熱部材によって被覆される前記パネル本体と前記パイプとの間には、放熱グリスが介在されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の放射パネルによれば、伝熱性の向上により空調を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る放射パネルの平面図である。
図2図1のA-A断面の要部拡大図である。
図3図2の変形例を示す断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る放射パネルの要部拡大断面図である。
図5図4の変形例を示す断面図である。
図6】従来の放射パネルの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る放射パネルの平面図である。図1に示す放射パネル1は、屋内の天井に取り付けられる冷暖房用の放射パネルであり、パネル本体10と、パネル本体10の上面側に配置されて内部を熱媒流体が通過する円管状のパイプ20と、パイプ20を被覆するシート状の伝熱部材30と、伝熱部材30を介してパイプ20をパネル本体10に向けて押圧する押圧部材40とを備えている。
【0014】
パネル本体10は、アルミニウム等の熱伝導率が高い金属材料等からなる平面視矩形状の平板状の部材である。パネル本体10は、後述するパイプ20の直線部21の並列方向両側に側壁11,12が設けられており、直線部21の並列方向と直交する方向の両側に、パネル本体10の上面10aから略直角に起立する起立壁13,14が設けられている。パネル本体10の下面側は、本実施形態においては平坦状に形成されているが、複数のリブや湾曲部等を設けてもよい。パネル本体10の上面10aには、パネル本体10の材料よりも熱伝導率が高い材料(例えば、グラファイト等)からなる伝熱層を設けてもよい。パネル本体10には、必要に応じてパンチング孔等の多数の小孔を形成してもよい。
【0015】
パイプ20は、互いに平行に配置された複数の直線部21の隣接する端部同士が曲線部22を介して接続されることで、流路が蛇行するように配置されており、一方端部側23から他方端部側24に向けて熱媒流体を通過させることができる。なお、図1においては、パイプ20の両端部近傍の図示を省略している。パイプ20の材料は特に限定されないが、アルミニウムや銅、グラファイト等の高い熱伝導性を有する材料からなる伝熱管を用いてパイプ20を構成することが好ましい。パイプ20は、伝熱管の単層管以外に、伝熱管の内面のみがポリエチレン等の樹脂コーティング層で被覆された二層管、あるいは、伝熱管の内外面が樹脂コーティング層で被覆された三層管のいずれであってもよい。パイプ20が単層管または二層管の場合には、伝熱部材30が伝熱管に直接密着するため、伝熱部材30を介してパイプ20の熱をパネル本体10に効率良く伝達することができる。
【0016】
伝熱部材30は、グラファイト(膨張黒鉛)をシート状に圧延する等して得られた可撓性を有するグラファイトシートからなる。グラファイトシートの厚さは特に限定されないが、一例として、10~500μmであることが好ましく、60~250μmであることがより好ましい。グラファイトシートの熱伝導率も制限はないが、面方向熱伝導率が30W/m・K以上であることが好ましく、50W/m・Kがより好ましい。面方向熱伝導率λ1の厚さ方向熱伝導率λ2に対する比(λ1/λ2)は、10倍以上であることが好ましく、30倍以上であることがより好ましい。
【0017】
本実施形態の伝熱部材30は、帯状に形成されてパイプ20の各直線部21に沿って複数配置されており、直線部21を個別に被覆しているが、複数の直線部21を単一の伝熱部材30で一体的に被覆してもよい。伝熱部材30は、本実施形態のようにパイプ20の大部分を被覆することが好ましいが、パイプ20の全体に対する被覆部分の割合は、特に限定されるものではない。
【0018】
押圧部材40は、桟状の部材からなり、パイプ20の各直線部21と直交するように、間隔をあけて複数(本実施形態では3つ)配置されている。各押圧部材40は、下方が開口する断面コ字状に形成されており、下端部が伝熱部材30を介してパイプ20を押圧するように、長手方向両端部がパネル本体10の側壁11,12にリベットやボルト等で固定されている。
【0019】
図2は、図1のA-A断面の要部拡大図である。図2に示すように、伝熱部材30は、パイプ20の直線部21の外周面に密着するように円弧状に湾曲しており、パイプ20を挟んだ両側でパネル本体10の上面10aに密着している。伝熱部材30は、パネル本体10およびパイプ20のそれぞれと密着する部分の間に、パネル本体10に向けて斜め下方に凸となる折曲部31,32が形成されており、この折曲部31,32がパネル本体10とパイプ20との間に挟み込まれている。
【0020】
押圧部材40は、伝熱部材30と接触する部分に切欠状の押圧部41が形成されており、押圧部41が伝熱部材30を介してパイプ20を下方に押圧することにより、伝熱部材30をパネル本体10およびパイプ20の双方に密着させている。押圧部41の形状は、本実施形態では矩形状に切り欠いた形状としているが、切欠部の形状は、円弧状など他の形状であってもよい。押圧部材40は、下面が平坦な押さえ板など、切欠部を備えない構成であってもよい。
【0021】
上記の構成を備える放射パネル1は、グラファイトシートからなる伝熱部材30がパネル本体10およびパイプ20に密着することで、パイプ20を通過する熱媒流体の熱を、伝熱部材30を介してパネル本体10に迅速且つ確実に拡散させることができるので、空調を効率良く行うことができる。
【0022】
伝熱部材30は、パネル本体20に向けて凸となる折曲部31,32が形成されているため、パネル本体10aおよびパイプ20との接触面積を増加させて、パイプ20からパネル本体10への伝熱を促すことができる。更に、この折曲部31,32が、パネル本体10の上面10aとパイプ20の外周面との間に挟み込まれて固定されることで、パネル本体10およびパイプ20と伝熱部材30との密着状態を確実に維持しつつ、接触面積の最大化を図ることができる。
【0023】
図3に示すように、伝熱部材30により覆われたパネル本体10の上面10aとパイプ20の外周面との間には、熱伝導性に優れる放熱グリス50を介在させてもよい。放熱グリス50をパネル本体10とパイプ20との間に供給した後に伝熱部材30により被覆することで、パネル本体10とパイプ20との隙間を放熱グリス50で確実に埋めることができるので、パイプ20からパネル本体10への熱伝達をより効率良く行うことができる。放熱グリス50は、例えば、シリコーンオイルにアルミナ等の熱伝導率が高い粉末を分散させた公知のものを使用することができる。
【0024】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態においては、パネル本体10の平坦な上面10aにパイプ20を載置しているが、パネル本体10の上面10a側にパイプ20の装着部を備える場合には、この装着部に装着されたパイプ20を伝熱部材30で被覆するように構成してもよい。
【0025】
図4は、パネル本体10の装着部にパイプ20が装着された放射パネルの一例を示す要部拡大断面図である。図4に示す装着部15は、パネル本体10に複数設けられており、各装着部15にパイプ20の直線部21が装着されている。なお、図4において、図2と同様の構成部分には同一の符号を付している。
【0026】
装着部15は、略一定の肉厚を有する断面円弧状に形成されており、円弧状の両端部15a,15bがパネル本体10の上面10a側に突出するように、パネル本体10の平坦部に一体的に固定されている。装着部15の円弧状の中央部15cは、パネル本体10の下面10b側に膨出しており、装着部15の外周面とパネル本体10の上面10aとの間には、くびれ部が形成されている。装着部15の中央部15cは、パネル本体10の下面10b側に膨出しない構成であってもよく、例えば、装着部15の中央部15cがパネル本体10の上面10aに固定された構成であってもよい。装着部15の肉厚は特に限定されないが、強度を維持しつつ熱伝達の妨げとならないように、例えば、パイプ20の肉厚と同程度にすることができる。
【0027】
装着部15は、円弧状長さが半円よりも若干長くなるように形成されており、パイプ20の直線部21が、上方からハンマー等で叩き込まれて装着される。装着部15の材料は、パネル本体10の平坦部と同じ材料であってもよく、あるいは、パネル本体10の平坦部の材料よりも熱伝導率の高い材料(例えば、グラファイト等)であってもよい。
【0028】
伝熱部材30は、パイプ20が装着部15の上方に露出する部分に密着しており、パイプ20を挟んだ両側で、装着部15の断面円弧状の外周面に沿って密着すると共にパネル本体10の上面10aに密着している。伝熱部材30の折曲部31,32は、パネル本体10の上面10aと装着部15の外周面との間のくびれ部に挟み込まれて固定されている。このような構成においても、パイプ20を通過する熱媒流体の熱を、伝熱部材30を介してパネル本体10に迅速且つ確実に拡散させることができるので、空調を効率良く行うことができる。
【0029】
図4に示す構成において、装着部15およびパイプ20が伝熱部材30によって被覆される部分には、放熱グリスを介在させてもよい。図5に示すように、パネル本体10の装着部15とパイプ20との間に放熱グリス50を介在させることで、パイプ20からパネル本体10への熱伝達をより効率良く行うことができる。更に、パネル本体10の上面10aと装着部15の外周面との間に放熱グリス51,52を介在させることで、パネル本体10と伝熱部材30との隙間を確実に埋めて、熱伝達ロスを抑制することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 放射パネル
10 パネル本体
15 装着部
20 パイプ
30 伝熱部材
31,32 折曲部
40 押圧部材
50 放熱グリス
図1
図2
図3
図4
図5
図6