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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070967
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】建築材料用シート及び建築材料
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20230515BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20230515BHJP
   B32B 15/14 20060101ALI20230515BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20230515BHJP
【FI】
E04B1/94 R
B32B15/20
B32B15/14
B32B7/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183476
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】服部 絵美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭一
【テーマコード(参考)】
2E001
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001GA24
2E001HA33
2E001HB04
2E001LA04
4F100AB09A
4F100AB10A
4F100AB14A
4F100AB31A
4F100AB33A
4F100AG00B
4F100AK04C
4F100AK07C
4F100AK15C
4F100AK21B
4F100AP00C
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100DG01B
4F100DG15B
4F100EC182
4F100GB07
4F100JJ07
4F100JK02A
(57)【要約】
【課題】可燃性基材を不燃化する効果が高い建築材料用シート及び建築材料を提供すること。
【解決手段】建築材料用シートは、アルミニウム又はアルミニウム合金の箔から成る第1層と、無機繊維を含む第2層とを備える。前記第1層の引張強さは100N/m以上である。第2層は、例えば、ガラス繊維不織布である。前記アルミニウム又は前記アルミニウム合金は、例えば、H材である。前記第1層は、例えば、Mn及びMgを含有するアルミニウム合金の箔から成る。前記アルミニウム合金は、例えば、0.5質量%以上1.5質量%以下のMnと、0.5質量%以上2質量%以下のMgとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金の箔から成る第1層と、
無機繊維を含む第2層と、
を備え、
前記第1層の引張強さが100N/m以上である、
建築材料用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の建築材料用シートであって、
前記第2層はガラス繊維不織布である、
建築材料用シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建築材料用シートであって、
前記アルミニウム又は前記アルミニウム合金は、H材である、
建築材料用シート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の建築材料用シートであって、
前記第1層は、Mn及びMgを含有する前記アルミニウム合金の箔から成る、
建築材料用シート。
【請求項5】
請求項4に記載の建築材料用シートであって、
前記アルミニウム合金は、0.5質量%以上1.5質量%以下のMnと、0.5質量%以上2質量%以下のMgとを含む、
建築材料用シート。
【請求項6】
可燃性基材と、
請求項1~5のいずれか1項に記載の建築材料用シートと、
を備え、
前記建築材料用シートは、前記第2層が前記可燃性基材の側となるように、前記可燃性基材に取り付けられている、
建築材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は建築材料用シート及び建築材料に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に積層シートが開示されている。積層シートは、可燃性基材を不燃化するために、可燃性基材の表面に取り付けられる。積層シートは、アルミニウム箔層と、ロックウールの層とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-140539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可燃性基材を不燃化する効果(以下では不燃化効果とする)が一層高い建築材料用シートが求められている。本開示の1つの局面では、不燃化効果が高い建築材料用シート及び建築材料を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの局面は、アルミニウム又はアルミニウム合金の箔から成る第1層と、無機繊維を含む第2層と、を備え、前記第1層の引張強さが100N/m以上である建築材料用シートである。
【0006】
本開示の1つの局面である建築材料用シートは、第1層の引張強さが100N/m以上であることにより、不燃化効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第3層を備えない建築材料用シートの構成を表す断面図である。
図2】第3層を備える建築材料用シートの構成を表す断面図である。
図3】建築材料の構成を表す断面図である。
図4】建築材料用シートの一部が木口に取り付けられた建築材料の構成を表す断面図である。
図5】建築材料用シートが2つの可燃性基材に跨って取付けられた建築材料の構成を表す断面図である。
図6】火災時の炎により加熱された場合の建築材料の状態を表す説明図である。
図7】試験体S1~S6の構成を表す断面図である。
図8図8Aは試験体S1の測定結果を表すグラフであり、図8Bは試験体S2の測定結果を表すグラフである。
図9図9Aは試験体S3の測定結果を表すグラフであり、図9Bは試験体S4の測定結果を表すグラフである。
図10図10Aは試験体S5の測定結果を表すグラフであり、図10Bは試験体S6の測定結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
1.建築材料用シート1
(1)建築材料用シート1の全体構成
建築材料用シート1はシート状の形態を有する。建築材料用シート1の厚さは、0.4mm以上3.0mm以下であることが好ましい。建築材料用シート1の厚さが0.4mm以上である場合、不燃化効果が一層高い。建築材料用シート1の厚さが3.0mm以下である場合、建築材料11において建築材料用シート1が占める割合が過度に大きくなり難い。建築材料用シート1は不燃化効果を奏するため、例えば、不燃化シートとして機能する。建築材料用シート1は、例えば、工場等で製造され、施工現場に搬入されてもよいし、施工現場で製造されてもよい。
【0009】
(2)第1層3
図1に示すように、建築材料用シート1は、第1層3と、第2層5とを備える。第1層3は、アルミニウム又はアルミニウム合金の箔から成る。
【0010】
第1層3の引張強さは100N/m以上である。引張強さの測定方法は、「JISH4000 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条」で準用する「JISZ2241 金属材料引張試験方法」である。第1層3の引張強さが100N/m以上であることにより、不燃化効果が高い。第1層3の引張強さは130N/m以上であることが好ましい。第1層3の引張強さが130N/m以上である場合、不燃化効果が一層高い。
【0011】
第1層3を構成する箔に含まれるアルミニウム又はアルミニウム合金は、例えば、O材、又はH材である。O材は、軟質であり、焼きなまししたものである。H材は、硬質であり、加工硬化したものである。なお、軟質及び硬質とは、「JISH0001 アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金-質別記号」において規定された意味を有する。
【0012】
第1層3を構成する箔に含まれるアルミニウム又はアルミニウム合金は、H材であることが好ましい。第1層3を構成する箔に含まれるアルミニウム又はアルミニウム合金がH材である場合、第1層3の引張強さが一層高くなる。
【0013】
第1層3は、例えば、Mn及びMgを含有するアルミニウム合金の箔から成る。第1層3が、Mn及びMgを含有するアルミニウム合金の箔から成る場合、第1層3の引張強さが一層高くなる。アルミニウム合金は、例えば、0.5質量%以上1.5質量%以下のMnと、0.5質量%以上2質量%以下のMgとを含む。アルミニウム合金が、0.5質量%以上1.5質量%以下のMnと、0.5質量%以上2質量%以下のMgとを含む場合、第1層3の引張強さが一層高くなる。
【0014】
第1層3は、例えば、国際アルミニウム合金名が3304であるアルミニウム合金の箔から成る。第1層3が、国際アルミニウム合金名が3304であるアルミニウム合金の箔から成る場合、第1層3の引張強さが一層高くなる。
【0015】
第1層3は、例えば、引張強さが100N/m以上であるアルミニウム合金の箔から成る。引張強さが100N/m以上であるアルミニウム合金のJIS材質記号として、例えば、1N30-H18、1060-H18、1100-H18、3003-O、3003-H18、3105-O、3105-H18、5505-O、5505-H18、5056-O、5056-H18、6N01-O、6N01-T5等がある。
【0016】
第1層3は、火災時の燃焼による輻射熱を反射する効果を奏する。第1層3は、アルミニウム又はアルミニウム合金の箔から成るため、軽量である。第1層3の厚さは、30μm以上200μm以下であることが好ましく、55μm以上100μm以下であることが一層好ましい。第1層3の厚さが30μm以上200μm以下である場合、第1層3の輻射熱反射性が一層優れる。第1層3の厚さが55μm以上100μm以下である場合、第1層3の輻射熱反射性が特に優れる。
【0017】
建築材料用シート1を使用するとき、第1層3は、例えば、火災時に炎15にさらされる側に配置される。この場合、建築材料用シート1の不燃化効果が一層高い。
(3)第2層5
第2層5は、無機繊維を含む。無機繊維として、例えば、ロックウール、ガラス繊維等が挙げられる。
【0018】
第2層5は、対流による伝熱を遅らせる効果を奏する。また、火災時に炎15にさらされることで、建築材料用シート1に含まれる接着剤等の有機物が分解し、分解ガスが発生した場合でも、第2層5内に分解ガスが滞留するため、第1層3の膨らみを抑制できる。
【0019】
第2層5の厚さは、0.4mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上1.2mm以下であることが一層好ましく、0.7mm以上1.0mm以下であることが特に好ましい。第2層5の厚さが0.4mm以上3.0mm以下である場合、火災時に第1層3が破れることを抑制できるという効果を奏する。この効果を奏する理由は以下のように推測される。火災時の燃焼熱により、層間接着剤、シート接着剤等が分解ガスを発生する。分解ガスは第1層3を膨張させる。仮に、第1層3が過度に膨張すると、第1層3は破れる。第2層5の厚さが0.4mm以上3.0mm以下である場合、分解ガスは第2層5内に拡散するため、第1層3の膨張が抑制される。その結果、第1層3は破れ難くなる。第2層5の厚さが0.5mm以上1.2mm以下である場合、その効果が一層高く、第2層5の厚さが0.7mm以上1.0mm以下である場合、その効果が特に高い。
【0020】
第2層5の1m当たりの質量は50g以上200g以下であることが好ましい。第2層5の1m当たりの質量が50g以上200g以下である場合、火災時に上述した分解ガスの発生量が少なくなる。その結果、第1層3が破れ難くなる。
【0021】
第2層5は、例えば、ガラス繊維不織布である。第2層5がガラス繊維不織布である場合、不燃化効果が一層高い。
ガラス繊維不織布は、例えば、ガラス短繊維を抄造等によりシート状に成形したものである。ガラス繊維不織布は、結合材を含有していてもよい。結合材として、例えば、合成樹脂等が挙げられる。合成樹脂として、例えば、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。
【0022】
ガラス繊維不織布は、無機材料を含有していてもよい。無機材料として、例えば、他の無機繊維、結晶水を含有する無機材料等が挙げられる。結晶水を含有する無機材料として、例えば、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0023】
第1層3と第2層5とを、例えば、接着剤により接着することができる。第1層3と第2層5とを接着する接着剤を層間接着剤とする。層間接着剤として、例えば、ポリエチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、レゾシノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂等を含む接着剤が挙げられる。
【0024】
層間接着剤として、ホットメルト接着剤が好ましい。ホットメルト接着剤として、EMMA(エチレン-メタクリル酸メチル共重合樹脂)接着剤が好ましい。EMMA接着剤を用いた場合、第1層3と第2層5との接着性が増すとともに、オレフィン系合成樹脂を含む層間接着剤を用いた場合と比べて発熱量が抑制される。また、第1層3と第2層5とを、例えば、両面テープ等で固定してもよい。
【0025】
不揮発性有機物の単位面積当たりの質量を有機量とする。不揮発性有機物とは常温下で揮発しない有機物を意味する。有機量の測定方法は熱重量測定(TG)である。第1層3と第2層5とを接着している層間接着剤の有機量は、10g/m以上50g/m以下であることが好ましく、15g/m以上30g/m以下であることが一層好ましい。層間接着剤の有機量が10g/m以上50g/m以下である場合、火災時に上述した分解ガスの発生量が少なくなる。その結果、第1層3が破れ難くなるという効果を奏する。層間接着剤の有機量が15g/m以上30g/m以下である場合、前記の効果が一層高い。
【0026】
(4)第3層7
図2に示すように、建築材料用シート1は、第1層3及び第2層5に加えて、第3層7をさらに備えていてもよい。第3層7は、第1層3に隣接する。第3層7として、例えば、突板、加飾性フィルム、壁紙、和紙等が挙げられる。
【0027】
突板とは、木材を刃物で薄く削そぎ取った板である。突板を構成する木材の樹種は特に限定されない。突板を構成する木材の樹種として、例えば、針葉樹、広葉樹等が挙げられる。針葉樹として、例えば、桐、スギ、カラマツ、ヒノキ、イチイ等が挙げられる。広葉樹として、例えば、サクラ、ケヤキ、ブナ、クヌギ、ナラ等が挙げられる。
【0028】
突板の厚さは、0.2mm以上0.5mm以下であることが好ましく、0.25mm以上0.4mm以下であることが一層好ましい。
例えば、接着剤により、突板を第1層3に接着することができる。突板の接着に用いられる接着剤を突板接着剤とする。突板接着剤として、例えば、アクリル樹脂接着剤、エチレン酢酸ビニル樹脂接着剤、酢酸ビニル樹脂接着剤、アクリル樹脂接着剤、ポリビニルアルコール接着剤、ウレタン樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤等が挙げられる。
【0029】
突板接着剤の有機量は、15g/m以上200g/m以下であることが好ましく、25g/m以上100g/m以下であることが一層好ましく、30g/m以上60g/m以下であることが特に好ましい。
【0030】
また、両面テープ等を用いて突板を第1層3に取り付けてもよい。突板の表面に塗装を行い、塗膜を形成してもよい。突板の表面にクリヤー塗装をすることができる。この場合、突板の木目を生かしたまま、突板の耐久性を向上させることができる。
【0031】
突板の塗装に用いる塗料は任意に設定することができる。突板の塗装に用いる塗料として、例えば、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、メラミン樹脂塗料等が挙げられる。
火災時に、炎15が突板に達するか、雰囲気温度が木材の発火温度である約260℃を超えた場合、例えば、突板は燃焼して消失する。
【0032】
建築材料用シート1の有機量をシート有機量とする。シート有機量は、層間接着剤の有機量、突板の有機量、突板接着剤の有機量、及び、突板の塗膜の有機量の合計である。なお、建築材料用シート1が層間接着剤を含まない場合、層間接着剤の有機量は0g/mである。また、建築材料用シート1が突板を含まない場合、突板の有機量、突板接着剤の有機量、及び、突板の塗膜の有機量はそれぞれ0g/mである。
【0033】
シート有機量は、20g/m以上400g/m以下であることが好ましく、30g/m以上300g/m以下であることが一層好ましく、50g/m以上250g/m以下であることが特に好ましい。
【0034】
シート有機量が20g/m以上400g/m以下である場合、火災時に上述した分解ガスの発生量が少なくなるという効果を奏する。シート有機量が30g/m以上300g/m以下である場合、前記の効果が一層高い。シート有機量が50g/m以上250g/m以下である場合、前記の効果が特に高い。
【0035】
2.建築材料11
図3図5に示すように、本開示の建築材料11は、可燃性基材9と、建築材料用シート1と、を備える。建築材料用シート1は、前記「1.建築材料用シート1」の項で述べたものである。建築材料用シート1は、第2層5が可燃性基材9の側となるように、可燃性基材9に取り付けられている。建築材料11は、例えば、工場等で製造され、施工現場に搬入されてもよいし、施工現場で製造されてもよい。
【0036】
図3に示す建築材料11は、1つの可燃性基材9と、1つの建築材料用シート1とから構成される。建築材料用シート1は、可燃性基材9における1つの面9Aに取付けられている。面9Aは、例えば、板状の可燃性基材9の主面である。
【0037】
図4に示す建築材料11は、1つの可燃性基材9と、1つの建築材料用シート1とから構成される。建築材料用シート1は、可燃性基材9における2つの面9A、9Bに取付けられている。面9Aは、例えば、板状の可燃性基材9の主面である。面9Bは、例えば、板状の可燃性基材9の木口である。図4に示す建築材料11は、面9A、9Bの両方において、火災時の燃焼熱が可燃性基材9に侵入することを抑制できる。
【0038】
図5に示す建築材料11は、2つの可燃性基材9、9と、1つの建築材料用シート1とから構成される。2つの可燃性基材9、9の面9B同士は突き合わされている。面9Bは木口である。2つの可燃性基材9、9の面9B同士が突き合わされている部分を、以下では突き合わせ部13とする。建築材料用シート1は、2つの可燃性基材9、9に跨って取付けられている。建築材料用シート1は、突き合わせ部13を覆っている。図5に示す建築材料11は、火災時の燃焼熱が突き合わせ部13から侵入することを抑制できる。
【0039】
第1層3は、例えば、火災時に炎15にさらされる側に設けられている。この場合、不燃化効果が一層高い。
可燃性基材9として、例えば、木質基材、プラスチック基材等が挙げられる。木質基材として、例えば、合板、製材、単板積層板(LVL)、集成材、直交集成板(CLT)等が挙げられる。プラスチック基材を構成するプラスチックとして、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0040】
木質基材の樹種として、例えば、針葉樹、広葉樹等が挙げられる。針葉樹として、例えば、スギ、カラマツ、ヒノキ、イチイ等が挙げられる。広葉樹として、例えば、ラワン、サクラ、ケヤキ、ブナ、クヌギ、ナラ等が挙げられる。
【0041】
可燃性基材9の幅、長さ、厚さは任意に設定することができる。可燃性基材9として、例えば、幅910mm、長さ1820mm、厚さ12mmのラワン合板等が挙げられる。
可燃性基材9の形状は特に限定されない。可燃性基材9の形状として、例えば、板状、角柱状、円柱状、ブロック形状、不規則な形状等が挙げられる。
【0042】
建築材料用シート1は、可燃性基材9の表面のうち、全部に取り付けられていてもよいし、一部に取り付けられていてもよい。
建築材料用シート1を可燃性基材9に取り付ける方法として、例えば、接着剤を用いて接着する方法、両面テープを用いて固定する方法、建築用ステープルを用いて固定する方法等が挙げられる。
【0043】
建築材料用シート1を可燃性基材9に取り付けるために用いられる接着剤をシート接着剤とする。シート接着剤として、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂接着剤、酢酸ビニル樹脂接着剤、アクリル樹脂接着剤、ポリビニルアルコール接着剤、ウレタン樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤、レゾシノール樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤等が挙げられる。
【0044】
シート接着剤の有機量は、20g/m以上400g/m以下であることが好ましく、30g/m以上300g/m以下であることが一層好ましく、50g/m以上250g/m以下であることが特に好ましい。
【0045】
シート接着剤の有機量が20g/m以上400g/m以下である場合、火災時に上述した分解ガスの発生量が少なくなるという効果を奏する。シート接着剤の有機量が30g/m以上300g/m以下である場合、前記の効果が一層高い。シート接着剤の有機量が50g/m以上250g/m以下である場合、前記の効果が特に高い。
【0046】
建築材料11は、例えば、天井材、壁材、床材、柱材、梁材、扉として用いることができる。また、建築材料11は、例えば、家具の一部であってもよい。家具として、例えば、椅子、机等が挙げられる。
【0047】
3.建築材料用シート1及び建築材料11が奏する効果
(1A)建築材料用シート1は、第1層3の引張強さが100N/m以上であることにより、不燃化効果が高い。不燃化効果が高い理由は以下のように推測される。図6に示すように、火災時の炎15により建築材料11が加熱された場合、第2層5に含まれる合成樹脂、層間接着剤に含まれる合成樹脂、シート接着材に含まれる合成樹脂等が分解し、ガスが発生する。発生したガスにより、建築材料用シート1は膨張し、第1層3に張力が加わる。仮に、張力によって第1層3が破れると、建築材料用シート1の内部に輻射熱が侵入し、可燃性基材9が着火する。第1層3の引張強さが100N/m以上であるため、第1層3に張力が加わっても、第1層3は破れ難い。その結果、建築材料用シート1の不燃化効果は高い。
【0048】
(1B)第2層5は、例えば、ガラス繊維不織布である。この場合、建築材料用シート1の不燃化効果は一層高い。
(1C)第1層3の箔を構成するアルミニウム又はアルミニウム合金は、例えば、H材である。H材は引張強さが高い。そのため、第1層3の箔を構成するアルミニウム又はアルミニウム合金がH材である場合、建築材料用シート1の不燃化効果は一層高い。
【0049】
(1D)第1層3は、例えば、Mn及びMgを含有するアルミニウム合金の箔から成る。Mn及びMgを含有するアルミニウム合金の箔は、引張強さが高い。そのため、第1層3が、Mn及びMgを含有するアルミニウム合金の箔から成る場合、建築材料用シート1の不燃化効果は一層高い。
【0050】
(1E)第1層3は、例えば、0.5質量%以上1.5質量%以下のMnと、0.5質量%以上2質量%以下のMgとを含むアルミニウム合金の箔から成る。0.5質量%以上1.5質量%以下のMnと、0.5質量%以上2質量%以下のMgとを含むアルミニウム合金の箔は、引張強さが高い。そのため、第1層3が、0.5質量%以上1.5質量%以下のMnと、0.5質量%以上2質量%以下のMgとを含むアルミニウム合金の箔から成る場合、建築材料用シート1の不燃化効果は一層高い。
【0051】
(1F)建築材料11は、可燃性基材9と、建築材料用シート1とを備える。建築材料用シート1は、第2層5が可燃性基材9の側となるように、可燃性基材9に取り付けられている。建築材料用シート1は前記(1A)~(1E)の効果の少なくとも一部を奏するため、建築材料11の不燃性は高い。
【0052】
4.実施例
(4-1)試験体S1~S6の製造
表1に示すように、建築材料11に対応する試験体S1~S6を製造した。
【0053】
【表1】
【0054】
図7に示すように、試験体S1~S6は、それぞれ、可燃性基材9と、建築材料用シート1と、を備えていた。試験体S1~S6のいずれにおいても、建築材料用シート1は、第2層5が可燃性基材9の側となるように、可燃性基材9に取り付けられていた。また、試験体S1~S6のいずれにおいても、建築材料用シート1は、可燃性基材9の一方の表面のみに取り付けられていた。
【0055】
試験体S1~S6のいずれにおいても、可燃性基材9の寸法は、縦99mm、横99mm、厚さ30mmであった。試験体S1~S6において、可燃性基材9の材質は、表1に示すとおりであった。
【0056】
試験体S1~S6のいずれにおいても、建築材料用シート1は、第1層3と、第2層5と、第3層7とを備えていた。
試験体S1~S6のいずれにおいても、第1層3は、アルミニウム合金の箔であった。試験体S1~S6のいずれにおいても、箔の厚さは50μmであった。試験体S1~S6において、アルミニウム合金の合金番号、アルミニウム合金に含まれる各成分の質量比、アルミニウム合金がH材及びO材のいずれであるか、及び、第1層3の引張強さは、表1に示すとおりであった。
【0057】
試験体S1~S6のいずれにおいても、第2層5は、同一のガラス繊維不織布であった。ガラス繊維不織布の厚さは0.8mmであった。ガラス繊維不織布の単位面積当たりの質量は110g/mであった。ガラス繊維不織布の組成は、88質量%のガラス繊維と、12質量%のポリビニルアルコールとであった。ポリビニルアルコールは結合材であった。
【0058】
試験体S1~S6のいずれにおいても、第3層7は突板であった。試験体S1~S6において、突板の素材と厚さとは表1に示すとおりであった。
試験体S1~S6のいずれにおいても、層間接着剤により、第1層3は第2層5に接着されていた。試験体S1~S6において、層間接着剤の組成と塗布量とは、表1に示すとおりであった。層間接着剤はホットメルト接着剤であり、常温では固体であった。
【0059】
試験体S1~S6のいずれにおいても、シート接着剤により、建築材料用シート1は可燃性基材9に接着されていた。試験体S1~S6において、シート接着剤の組成と塗布量とは、表1に示すとおりであった。シート接着剤のうち、EVA接着剤は液体であり、不揮発分は50%であった。シート接着剤のうち、アクリル接着剤はホットメルト接着剤であり、常温では固体であった。
試験体S1~S6において、層間接着剤の有機量は30g/mであり、突板の有機量は80g/mであり、突板接着剤の有機量は30g/mであり、シート有機量は45g/mであり、シート接着剤の有機量は50g/mであった。
【0060】
(4-2)総発熱量及び最大発熱速度の測定
ISO5660-1に規定されているコーンカロリーメータ法により、試験体S1~S6に対して50kW/mの輻射強度で20分間加熱した場合の総発熱量及び発熱速度の測定を行った。
【0061】
試験体S1の測定結果を図8Aに示す。試験体S2の測定結果を図8Bに示す。試験体S3の測定結果を図9Aに示す。試験体S4の測定結果を図9Bに示す。試験体S5の測定結果を図10Aに示す。試験体S6の測定結果を図10Bに示す。
【0062】
試験体S1~S2、S4~S6では、総発熱量及び最大発熱速度が小さかった。試験体S3では、総発熱量及び最大発熱速度が大きかった。試験体S1~S2、S4~S6では、第1層3の引張強さが100N/m以上であった。試験体S3では、第1層3の引張強さが100N/m未満であった。本実施例の評価結果は、第1層3の引張強さが100N/m以上であることにより、不燃化効果が高められることを示している。
【0063】
また、試験体S3では、試験後、第1層3に孔が生じていた。試験体S1~S2、S4~S6では、試験後、第1層3に孔は生じていなかった。試験体S3において総発熱量及び最大発熱速度が大きかった理由は、加熱により発生したガスによって第1層3に張力が加わり、第1層3が破れて孔が生じ、その孔から輻射熱が侵入し、可燃性基材9が着火したためであると推測される。
【0064】
試験体S1~S2、S4~S6において総発熱量及び最大発熱速度が小さかった理由は、加熱により発生したガスによって第1層3に張力がかかっても、第1層3の引張強さが高いため、第1層3が破れなかったためであると推測される。
【0065】
5.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0066】
(5-1)建築材料用シート1は、第1層3と第2層5との間に他の層をさらに備えていてもよい。
(5-2)建築材料11は、可燃性基材9と建築材料用シート1との間に他の層をさらに備えていてもよい。
【0067】
(5-3)図3図5における建築材料用シート1は、図2に示す建築材料用シート1と同様に、第3層7をさらに備えていてもよい。
(5-4)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0068】
(5-5)上述した建築材料用シート1及び建築材料11の他、当該建築材料用シート1又は建築材料11を構成要素とするシステム、建築材料用シート1の製造方法、建築材料11の製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0069】
1…建築材料用シート、3…第1層、5…第2層、7…第3層、9…可燃性基材、9A、9B…面、11…建築材料、13…突き合わせ部、15…炎
図1
図2
図3
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図8
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図10