(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070979
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】ベプリジルを含有する錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/40 20060101AFI20230515BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230515BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230515BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230515BHJP
A61K 9/26 20060101ALI20230515BHJP
A61K 9/36 20060101ALI20230515BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230515BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A61K31/40
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/32
A61K9/26
A61K9/36
A61P9/00
A61P9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183516
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000109831
【氏名又は名称】トーアエイヨー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 裕貴
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA41
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC11
4C076CC13
4C076EE16
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086NA20
4C086ZA36
(57)【要約】
【課題】溶出性のばらつきが小さいベプリジル含有錠剤の提供。
【解決手段】以下の成分(a)及び成分(b)を含有する錠剤。
(a)ベプリジル若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物
(b)平均粒子径が100μm以上のセルロース
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(a)及び成分(b)を含有する錠剤。
(a)ベプリジル若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物
(b)平均粒子径が100μm以上のセルロース
【請求項2】
成分(b)の平均粒子径が100μm以上500μm以下である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
タルクを実質的に含まない、請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項4】
錠剤の絶対硬度が0.8N/mm2以上3.6N/mm2以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項5】
成分(a)の含有量が、錠剤全質量に対して15質量%以上95質量%以下であり、成分(b)の含有量が、錠剤全質量に対して5質量%以上80質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項6】
(c)ポビドンを更に含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項7】
添加剤層と当該添加剤層中に分散している顆粒とを含み、前記顆粒が成分(a)を含有し、且つ前記添加剤層が成分(b)を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項8】
フィルムコーティングされている、請求項1~7のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項9】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースでフィルムコーティングされている、請求項1~7のいずれか1項に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベプリジルを含有する錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤は、医薬品において多用されている剤形である。錠剤の多くは、経口投与されたときに胃内等で有効成分が溶出し、小腸等で吸収されることにより薬効を発揮する。
一方、ベプリジルは、下記式(1)で表される塩基性薬物であり、持続性心房細動、頻脈性不整脈及び狭心症等の治療に効果を有する(非特許文献1、特許文献1)。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「ベプリコール錠50mg/ベプリコール錠100mg」添付文書 第一三共株式会社 2016年1月改訂(第17版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、ベプリジルは、BCSクラス分類でクラスIIに分類され、溶出性が低いとされているものの、ベプリジルを錠剤とした場合にロット間での溶出性のばらつきが大きくなるという報告はこれまでにない。
このような背景の下、ベプリジル含有錠剤について本発明者らが検討を行ったところ、ロット間での溶出性のばらつきが大きいという問題があることがわかった。胃内等における錠剤からの溶出性にばらつきがある場合、薬効の発現時間や強さのばらつきの発生という低溶出性とは別の問題が生じ得る。
【0007】
したがって、本発明の課題は、溶出性のばらつきが小さいベプリジル含有錠剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは更に検討を進めた結果、ベプリジルとともに平均粒子径100μm以上のセルロースを組み合わせて用いることによって、ベプリジルを含有しながらも溶出性のばらつきが小さい錠剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の<1>~<10>に関するものである。
<1> 以下の成分(a)及び成分(b)を含有する錠剤。
(a)ベプリジル若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物
(b)平均粒子径が100μm以上のセルロース
【0010】
<2> 成分(b)の平均粒子径が100μm以上500μm以下である、<1>に記載の錠剤。
<3> タルクを実質的に含まない、<1>又は<2>に記載の錠剤。
<4> 錠剤の絶対硬度が0.8N/mm2以上3.6N/mm2以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の錠剤。
<5> 成分(a)の含有量が、錠剤全質量に対して15質量%以上95質量%以下であり、成分(b)の含有量が、錠剤全質量に対して5質量%以上80質量%以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の錠剤。
【0011】
<6> (c)ポビドンを更に含有する、<1>~<5>のいずれかに記載の錠剤。
<7> 添加剤層と当該添加剤層中に分散している顆粒とを含み、前記顆粒が成分(a)を含有し、且つ前記添加剤層が成分(b)を含有する、<1>~<5>のいずれかに記載の錠剤。
<8> フィルムコーティングされている、<1>~<7>のいずれかに記載の錠剤。
<9> ヒドロキシプロピルメチルセルロースでフィルムコーティングされている、<1>~<7>のいずれかに記載の錠剤。
【0012】
<10> 以下の成分(a)を含有する顆粒と、以下の成分(b)を含有する添加剤とを混合し、得られた混合物を打錠する打錠工程を含む、錠剤の製造方法。
(a)ベプリジル若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物
(b)平均粒子径が100μm以上のセルロース
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溶出性のばらつきが小さいベプリジル含有錠剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の錠剤は、以下の成分(a)及び成分(b)を含有するものである。
(a)ベプリジル若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物
(b)平均粒子径が100μm以上のセルロース
【0015】
(成分(a))
ベプリジル(化学名:N-ベンジル-N-[3-イソブトキシ-2-(1-ピロリジニル)プロピル]アニリン)は、下記式(1)
【0016】
【0017】
で表される化合物である。
【0018】
ベプリジル若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物は特に限定されないが、例えば、ベプリジル;ベプリジル塩酸塩等のベプリジル無機酸塩;ベプリジル酢酸塩等のベプリジル有機酸塩;これらの水和物やアルコール和物等が挙げられる。これらの中でも、ベプリジル無機酸塩、ベプリジル無機酸塩の溶媒和物が好ましく、ベプリジル無機酸塩の水和物がより好ましい。塩と溶媒和物との組み合わせとしては、塩酸塩水和物が好ましく、一塩酸塩一水和物が特に好ましい。
【0019】
成分(a)の含有量は特に限定されないが、溶出性のばらつきのなさ、錠剤のサイズ、服薬コンプライアンス等の観点から、本発明の錠剤全質量に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、また、成型性や流動性等の観点から、本発明の錠剤全質量に対して、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。具体的な範囲としては、本発明の錠剤全質量に対して、15質量%以上95質量%以下が好ましく、30質量%以上85質量%以下がより好ましく、50質量%以上75質量%以下がさらに好ましく、50質量%以上70質量%以下が特に好ましい。なお、本発明によれば、このようにして成分(a)を高含量で用いた場合であっても、溶出性のばらつきを抑えることができる。
【0020】
また、本発明の錠剤としては、溶出性のばらつきのなさ、錠剤のサイズ、服薬コンプライアンス等の観点から、成分(a)を1錠あたりに、10mg以上400mg以下含有するものが好ましく、25mg以上200mg以下含有するものがより好ましく、50mg以上100mg以下含有するものがさらに好ましく、50mg以上80mg以下含有するものが特に好ましい。
【0021】
(成分(b))
成分(b)のセルロースとしては、粉末セルロース、結晶セルロースが挙げられるが、結晶セルロースが好ましい。
また、本発明の錠剤に含まれるセルロースの平均粒子径は100μm以上である。セルロースの平均粒子径を100μm以上とすることにより、溶出性のばらつきが小さくなる。
セルロースの平均粒子径は、溶出性のばらつきのなさ等の観点から、好ましくは120μm以上、より好ましくは150μm以上であり、また、溶出性のばらつきのなさ、製造工程における打錠障害の抑制、搬送時における欠けの抑制等の観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは250μm以下、特に好ましくは200μm以下である。具体的な範囲としては、100μm以上500μm以下が好ましく、120μm以上300μm以下がより好ましく、150μm以上250μm以下がさらに好ましく、150μm以上200μm以下が特に好ましい。なお、セルロースの平均粒子径を300μm以下とした場合に、溶出性のばらつきが特に小さくなり、さらに製造工程における打錠障害や錠剤搬送時における欠けが特に生じにくくなる。
なお、本明細書において、セルロースの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて乾式法によって測定されたメディアン径(累積50%粒子径、D50)を意味し、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置MT3200II(日機装社製)を使用して測定することができる。
【0022】
また、本発明の錠剤に含まれるセルロースの粒子のアスペクト比としては、溶出性のばらつきのなさ等の観点から、2以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましい。また、アスペクト比は、通常1以上、好ましくは1.1以上である。
なお、本明細書において、セルロースのアスペクト比は、セルロース粒子の長幅の数平均幅(μm)/短幅の数平均幅(μm)を意味するものであり、走査電子顕微鏡(SEM)の観察画像から短幅の数平均幅と長幅の数平均幅(数平均繊維長)を算出することで測定できる。ここで、短幅の数平均幅は、最低10本について目視で読み取った短幅を相加平均することで算出し、また、長幅の数平均幅は、最低10本について目視で読み取った繊維の始点から終点までの長幅(繊維長)を相加平均することで算出する。なお、枝分かれしている繊維については、その繊維の最も長い部分の長さを長幅とする。
【0023】
成分(b)のセルロースの平均重合度は、10以上440以下が好ましく、100以上350以下がより好ましい。
なお、本明細書において、セルロースの平均重合度は、第十七改正日本薬局方に記載の銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法で測定した値をいう。
【0024】
成分(b)の含有量は特に限定されないが、溶出性のばらつきのなさ、錠剤の成形性や崩壊性等の観点から、本発明の錠剤全質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、また、錠剤のサイズ、服薬コンプライアンス等の観点から、本発明の錠剤全質量に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは35質量%以下である。具体的な範囲としては、本発明の錠剤全質量に対して、5質量%以上80質量%以下が好ましく、15質量%以上65質量%以下がより好ましく、20質量%以上50質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上35質量%以下が特に好ましい。
【0025】
また、成分(a)に対する成分(b)の含有質量比〔(b)/(a)〕は、溶出性のばらつきのなさ、混合均一性等の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.2以上であり、また、易服用性等の観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下、特に好ましくは0.75以下である。具体的な範囲としては、0.01以上2以下が好ましく、0.05以上1.5以下がより好ましく、0.1以上1以下がさらに好ましく、0.2以上0.75以下が特に好ましい。
【0026】
(成分(c))
本発明の錠剤としては、付着性改善の観点から、成分(a)及び成分(b)に加えてさらに(c)結合剤を含有するものが好ましい。
結合剤としては、例えば、ポビドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルメロースナトリウム等が挙げられる。これらの結合剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら結合剤の中でも、溶出性のばらつきのなさ、付着性改善の観点から、ポビドンが好ましい。ポビドンにおいてK値は、12以上90以下が好ましく、25以上90以下がより好ましい。なお、本明細書において、ポビドンのK値は、日本薬局方粘度測定第1法で測定し、Fikentscherの粘度算出式より誘導した式にて換算した値をいう。
【0027】
本発明の錠剤が成分(c)を含有する場合、成分(c)の含有量は特に限定されないが、溶出性のばらつきのなさ、付着性改善、製造工程におけるハンドリング性の観点から、本発明の錠剤全質量に対して、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、また、溶出性のばらつきのなさ、製造工程における打錠障害の抑制、搬送時における欠けの抑制、崩壊性等の観点から、本発明の錠剤全質量に対して、好ましくは8質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。具体的な範囲としては、本発明の錠剤全質量に対して、0.2質量%以上8質量%以下が好ましく、0.5質量%以上7質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上4質量%以下がさらに好ましい。
【0028】
また、成分(a)に対する成分(c)の含有質量比〔(c)/(a)〕は、溶出性のばらつきのなさ、付着性改善、製造工程におけるハンドリング性の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、さらに好ましくは0.01以上であり、また、溶出性のばらつきのなさ、製造工程における打錠障害の抑制、搬送時における欠けの抑制崩壊性等の観点から、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.04以下である。具体的な範囲としては、0.001以上0.5以下が好ましく、0.005以上0.1以下がより好ましく、0.01以上0.04以下がさらに好ましい。
【0029】
(成分(d))
本発明の錠剤としては、成分(a)及び成分(b)に加えてさらに(d)滑沢剤(但し、タルクを除く)を含有するものが好ましい。なお、成分(c)と成分(d)を組み合わせて用いてもよい。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの滑沢剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら滑沢剤の中でも、錠剤の崩壊性、展延性等の観点から、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0030】
本発明の錠剤が成分(d)を含有する場合、成分(d)の含有量としては、錠剤の崩壊性、製造工程における打錠障害の抑制の観点から、本発明の錠剤全質量に対して、0.1質量%以上8質量%以下が好ましく、0.2質量%以上7質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上4質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以上1質量%以下が特に好ましい。
【0031】
また、成分(b)に対する成分(d)の含有質量比〔(d)/(b)〕は、錠剤の崩壊性等の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、さらに好ましくは0.01以上であり、また、錠剤の崩壊性、製造工程における打錠障害の抑制の観点から、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.05以下であり、特に好ましくは0.04以下である。具体的な範囲としては、0.001以上0.15以下が好ましく、0.005以上0.1以下がより好ましく、0.01以上0.05以下がさらに好ましい。
【0032】
また、本発明の錠剤としては、溶出性のばらつきのなさの観点から、タルクを実質的に含まないものが好ましい。本明細書において、「実質的に含まない」とは、その含有量が錠剤全質量に対して0.1質量%以下であることを意味する。タルクの含有量としては、本発明の錠剤全質量に対して、0質量%以上0.005質量%以下が好ましく、0質量%がより好ましい。
【0033】
また、本発明の錠剤としては、溶出性のばらつきのなさ、含量均一性等の観点から、添加剤層と当該添加剤層中に分散している顆粒とを含み、前記顆粒が成分(a)を含有し、且つ前記添加剤層が成分(b)を含有する錠剤(以下、この錠剤を「錠剤(α)」とも称する)が好ましい。なお、錠剤(α)に含まれる顆粒は少なくとも一部が添加剤層中に分散していればよく、少なくとも一部の顆粒が添加剤層中に分散している限り、添加剤層中の複数の顆粒が互いに接触していてもよい。添加剤層は、好ましくは固体状添加剤層である。
【0034】
本発明の錠剤が錠剤(α)である場合、成分(a)の含有量としては、顆粒全質量に対して、70質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%未満がより好ましく、90質量%以上99質量%以下がさらに好ましい。
本発明の錠剤が錠剤(α)である場合、成分(b)の含有量としては、添加剤層全質量に対して、70質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%未満がより好ましく、90質量%以上99質量%以下がさらに好ましい。
【0035】
また、錠剤(α)が成分(c)を含有する場合、錠剤(α)としては、溶出性のばらつきのなさ、含量均一性等の観点から、顆粒中に成分(c)を含有するものが好ましい。この場合、成分(c)の含有量としては、顆粒全質量に対して、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましく、1質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
また、錠剤(α)が成分(d)を含有する場合、錠剤(α)としては、溶出性のばらつきのなさ、含量均一性等の観点から、添加剤層中に成分(d)を含有するものが好ましい。この場合、成分(d)の含有量としては、添加剤層全質量に対して、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましく、1質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
【0036】
また、上記の顆粒と添加剤層との合計含有量としては、錠剤(α)全質量に対して、80質量%以上100質量%以下が好ましく、85質量%以上99質量%以下がより好ましく、90質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。
【0037】
錠剤(α)中の(A)顆粒に対する(B)添加剤層の含有質量比〔(B)/(A)〕としては、溶出性のばらつきのなさ、含量均一性等の観点から、0.05以上1以下が好ましく、0.15以上0.8以下がより好ましく、0.3以上0.6以下がさらに好ましい。
【0038】
また、本発明の錠剤は、好ましくは経口投与用である。本発明の錠剤の具体的な剤形としては、例えば、通常錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠、腸溶錠、徐放錠等が挙げられる。
また、本発明の錠剤は、フィルムコーティングされているものでもフィルムコーティングされていないものでもよく、例えば、素錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、多層錠、有核錠等が挙げられるが、安定性や製造の均一性等の観点から、フィルムコーティングされているもの(フィルムコーティング錠)が好ましい。
【0039】
フィルムコーティングは、フィルムコーティング剤、並びに必要に応じて可塑剤及び着色剤から選ばれる1種以上を用いて行えばよい。
フィルムコーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、PVP、エチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルアセテートフタレート等が挙げられる。これらのフィルムコーティング剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。フィルムコーティング剤の中では、HPMCが好ましい。HPMCのヒドロキシプロポキシ基含有量は、好ましくは4質量%以上32質量%以下であり、HPMCのメトキシ基含有量は、好ましくは16.5質量%以上30質量%以下である。
【0040】
フィルムコーティング剤の含有量としては、本発明の錠剤全質量に対して、0.2質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上9質量%以下がより好ましく、1質量%以上8質量%以下がさらに好ましい。
【0041】
可塑剤としては、例えば、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、トリアセチン等が挙げられる。これらの可塑剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの可塑剤の中でも、ポリエチレングリコールが好ましい。ポリエチレングリコールの数平均分子量は、好ましくは200以上20000以下、より好ましくは1000以上10000以下である。ポリエチレングリコールの数平均分子量は、JIS K 1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出できる。
【0042】
可塑剤の含有量としては、本発明の錠剤全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.2質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
【0043】
着色剤としては、例えば、食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号、食用レーキ色素、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、酸化チタン、β-カロチン、リボフラビン等が挙げられる。これらの着色剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの着色剤の中でも、光安定性の観点から、酸化チタンが好ましい。
着色剤の含有量としては、本発明の錠剤全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.2質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
【0044】
また、本発明の錠剤には、製剤分野において通常使用される上記成分以外の添加剤(以下、「他の添加剤」ともいう)を添加することもできる。
【0045】
他の添加剤としては、医薬的に許容されるものであればよく、例えば、賦形剤、流動化剤、甘味剤、矯味剤、着香剤・香料、安定化剤が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン等が挙げられる。乳糖、デンプンのような賦形剤を不使用とした場合又は低含量とした場合(本発明の錠剤全質量に対して好ましくは0質量%以上0.1質量%以下、より好ましくは0質量%以上0.005質量%以下)であっても、錠剤サイズを抑えることができ、服薬コンプライアンスを改善できる。
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが挙げられる。
甘味剤、矯味剤としては、例えば、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア、タウマチン、スクラロース、アセスルファムK等が挙げられる。これらの中では、アスパルテーム、スクラロースが好ましい。
着香剤、香料としては、例えば、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、メントール、ハッカ油、レモンオイル、オレンジオイル、グレープフルーツオイル、パインオイル、フルーツ系香料、ヨーグルトフレーバーが挙げられる。これらの中では、メントール、ハッカ油が好ましい。前述の甘味剤、矯味剤、着香剤、香料の配合によって、良好な服用感が得られる場合がある。
他の添加剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
本発明の錠剤の絶対硬度としては、溶出性のばらつきのなさの観点から、0.8N/mm2以上3.6N/mm2以下が好ましく、1.25N/mm2以上3.2N/mm2以下がより好ましく、1.5N/mm2以上3N/mm2以下がさらに好ましい。
なお、本明細書において、錠剤の絶対硬度は、ロードセル式錠剤硬度計PC-30(岡田精工)により求めた硬度を錠剤の破断面積で除して算出することができる。
【0047】
本発明の錠剤の服用量は、成分(a)を1日あたりに25mg以上400mg以下服用できる量が好ましく、1日あたりに50mg以上200mg以下服用できる量がより好ましい。また、成分(a)を1回あたりに25mg以上200mg以下服用できる量が好ましく、1回あたりに50mg以上100mg以下服用できる量がより好ましい。
【0048】
次に、本発明の錠剤の製造方法について説明する。
本発明の錠剤の製造方法は特に限定されないが、例えば、上記の成分(a)を含有する顆粒と、上記の成分(b)を含有する添加剤とを混合し、得られた混合物を打錠する打錠工程を含む方法によって製造することができる。
【0049】
上記の顆粒は、第十七改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の造粒方法にしたがい、成分(a)及び必要に応じて他の成分(成分(c)等)を含有する組成物(以下、造粒用組成物とも称する)を造粒する造粒工程によって得ることができる。
【0050】
造粒用組成物は、例えば、成分(a)及び必要に応じて他の成分を混合する手法や、成分(a)及び必要に応じて他の成分を水又は含水アルコール等の溶媒と練り合わせる手法により調製することができる。なお、造粒用組成物を調製するに先立って、造粒に使用する成分(a)を粉砕してもよい。
【0051】
造粒工程における造粒は、湿式造粒法で行っても乾式造粒法で行ってもよい。具体的には、押出造粒、転動造粒、撹拌造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒、破砕造粒等が挙げられる。
なお、造粒工程で得られた顆粒は、打錠工程に用いるに先立って乾燥させてもよい。
【0052】
上記の成分(b)を含有する添加剤としては、固体状のものが好ましく、粉末状のものがより好ましい。成分(b)を含有する添加剤は、成分(b)以外の医薬品添加物を含んでいてもよい。このような医薬品添加物としては、例えば、上記の成分(d)が挙げられる。
【0053】
打錠工程における打錠は、ロータリー打錠機、単発打錠機等を用いて常法に従って行えばよい。なお、顆粒と添加剤とを混合する前又は混合した後に、顆粒及び/又は添加剤の粒子径を、粉砕等の手法により整えることが好ましい。この操作によって、錠剤の含量均一性を改善することができる。
また、打錠工程で得られた素錠を、フィルムコーティング剤、並びに必要に応じて可塑剤及び着色剤から選ばれる1種以上を用いてフィルムコーティングしてもよい。
【0054】
なお、本発明の錠剤は、外部滑沢法を用いなくとも圧縮成型が可能であるが、外部滑沢法を用いて成型することもできる。この場合には、滑沢剤を除く成分を混合した後、滑沢剤を杵臼に噴霧しながら打錠を行うか、あるいは、滑沢剤の一部を、滑沢剤を除く成分とあらかじめ混合しておいた後、残りの滑沢剤を杵臼に噴霧しながら打錠を行えばよい。
【0055】
そして、上記のようにして得られる本発明の錠剤は、ベプリジルを含有しながらも溶出性のばらつきが小さく、ロット間での品質が一定に保たれたものである。
したがって、本発明の錠剤は、ベプリジルの薬効発現までの時間や薬効の強さがばらつきにくく、持続性心房細動、頻脈性不整脈及び狭心症から選ばれる疾患の治療薬として極めて有用である。
【実施例0056】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明を限定するものではない。
【0057】
本実施例における各測定の測定条件は、以下に示すとおりである。
(平均粒子径)
セルロースの平均粒子径(メディアン径(累積50%粒子径、D50))は、レーザー回折式粒度分布測定装置MT3200II(日機装社製)を用いて乾式法により測定した。
(アスペクト比)
走査電子顕微鏡(SEM(KEYENCE製VHX-700F))の観察画像からセルロース繊維の短幅の数平均幅と長幅の数平均幅(数平均繊維長)を算出し、短幅の数平均幅(μm)で長幅の数平均幅(μm)を割ることにより、セルロースのアスペクト比を算出した。
なお、短幅の数平均幅は、10本について目視で読み取った短幅の相加平均である。また、長幅の数平均幅は、10本について目視で読み取った繊維の始点から終点までの長幅(繊維長)の相加平均である。なお、枝分かれしている繊維については、その繊維の最も長い部分の長さを長幅とした。
(絶対硬度)
錠剤の絶対硬度は、ロードセル式錠剤硬度計PC-30(岡田精工)により求めた硬度を錠剤の破断面積で除することにより算出した。
【0058】
また、本実施例において、PVP、ステアリン酸マグネシウム、タルク、HPMC、PEG6000、酸化チタンは以下のものを用いた。
PVP(ポビドン):K30(BASFジャパン)、ステアリン酸マグネシウム:ステアリン酸マグネシウム-S(太平化学産業)、タルク:タルクMS(日本タルク)、HPMC(ヒプロメロース):TC-5M(信越化学)、PEG6000:マクロゴール6000(日油)、酸化チタン:酸化チタンFG(フロイント産業)
また、本実施例においてセルロースは、セオラスPH-200(旭化成)、セオラスKG-802(旭化成)、セオラスUF-702(旭化成)、セオラスPH-101(旭化成)、ARBOCEL A300(レッテンマイヤー)及びARBOCEL P290(レッテンマイヤー)からなる群から選択される1種又は2種以上を用いた。使用したセルロースの平均粒子径、アスペクト比を表1に示す。
【0059】
【0060】
(実施例1)
ベプリジル一塩酸塩一水和物を1錠あたりに100mg含有する錠剤(直径8mm・円形フィルムコーティング錠、絶対硬度1.67N/mm2)(実施例1)を、以下の工程により得た。
(1)PVP 0.003gを精製水 0.040mLに溶解させ、この溶液を、ベプリジル一塩酸塩一水和物0.100gに添加した後、乳鉢を用いて造粒(造粒工程)した。
(2)次に、上記造粒工程で得た造粒物を乾燥(乾燥工程)した後、JIS試験用ふるいを用いて整粒(整粒工程)した。
(3)次いで、上記整粒工程で得た整粒物に、表2に示す結晶セルロース 0.046g及びステアリン酸マグネシウム 0.001gを加えて混合(顆粒混合工程)した後、WPM-5S(岡田精工製)を用いて打錠(打錠工程)することで素錠を得た。
(4)その後、表2に記載の比率となるようにHPMC、PEG6000及び酸化チタンを精製水に溶解又は分散させ、この液状組成物を用いて、上記打錠工程で得た素錠をHC-FZ-LABO(フロイント製)にてコーティング(フィルムコーティング工程)することで、実施例1の錠剤を得た。
【0061】
(実施例2~4)
表2に記載の成分、その重量、比率に従う以外は実施例1と同様にして、べプリジル一塩酸塩一水和物を1錠あたりに50mg(直径6mm)又は100mg(直径8mm)含有する錠剤(円形フィルムコーティング錠、絶対硬度2.50N/mm2(実施例2)、絶対硬度1.43N/mm2(実施例3)、絶対硬度1.57N/mm2(実施例4))を調製した。
なお、以下の表2~4中のベプリジルはベプリジル一塩酸塩一水和物を意味し、また、比率は錠剤の重さを100%とした質量パーセントであり、小数点第二位を四捨五入した値である。
【0062】
【0063】
(比較例1~6)
表3、表4に記載の成分、その重量、比率に従う以外は実施例1と同様にして、比較例1~比較例6の錠剤を調製した。なお、比較例3及び比較例6において、タルクは、顆粒混合工程で結晶セルロース及びステアリン酸マグネシウムとともに添加するようにして使用した。
【0064】
【0065】
【0066】
(試験例1)
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例6の錠剤について、第十七改正日本薬局方の溶出試験法に従ってパドル法で溶出試験を行った。溶出条件は、パドル回転数:50rpm、試験液:第十七改正日本薬局方溶出試験第1液とし、本液900mLに試料を投入した。
各実施例、比較例の錠剤についてそれぞれ6錠ずつ溶出試験を行い、試験開始から60分間経過後におけるベプリジルの溶出率(%)をそれぞれ測定し、ばらつきのなさの指標である標準偏差、平均値、最大値、最小値を算出した。なお、溶出率は、吸光度法によりベプリジル標準溶液とのピーク面積の比から求めた。ベプリジル一塩酸塩一水和物を100mg含有する錠剤(100mg錠)についての結果を表5に示し、ベプリジル一塩酸塩一水和物を50mg含有する錠剤(50mg錠)についての結果を表6に示す。
【0067】
【0068】
【0069】
表5に示すように、実施例1、4の錠剤は、試験開始から60分間経過後における溶出率の標準偏差が10以下であり、ばらつきが小さいことが分かった。それに対して、平均粒子径100μm未満のセルロースを用いた比較例1~3の錠剤は、ばらつきが大きいことが分かった。
また、表6に示すように、実施例2、3の錠剤は、試験開始から60分間経過後における溶出率の標準偏差が10以下であり、ばらつきが小さいことが分かり、特に平均粒子径100μm以上300μm以下のセルロースを用いた実施例2の錠剤のばらつきが小さかった。それに対して、平均粒子径100μm未満のセルロースを用いた比較例4~6の錠剤は、ばらつきが大きいことが分かった。
さらに、製造直後の錠剤6錠について目視で観察を行ったところ、実施例1及び実施例2の錠剤については、製造中における錠剤の欠けの発生がみられなかった。