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  • 特開-放射温度計の校正用温度計 図1
  • 特開-放射温度計の校正用温度計 図2
  • 特開-放射温度計の校正用温度計 図3
  • 特開-放射温度計の校正用温度計 図4
  • 特開-放射温度計の校正用温度計 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071011
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】放射温度計の校正用温度計
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/00 20220101AFI20230515BHJP
   B23K 1/005 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
G01J5/00 B
B23K1/005 A
B23K1/005 C
G01J5/00 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183560
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】390014834
【氏名又は名称】株式会社ジャパンユニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100188743
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】浅葉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】酒川 友一
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AB10
2G066AC11
2G066CA15
2G066CB01
(57)【要約】
【課題】放射温度計の校正を短時間で手軽に行うことができる校正用温度計を提供する。
【解決手段】ボディ16の上面に形成された測定室17の内部に、温度センサ-19と、温度測定の対象となる測温用ハンダ20とが収容され、前記温度センサ-19は、2本の異種金属線19a,19bを相互に接続し、接続点を温度測定のための測温部19cとした熱電対からなっていて、前記測温部19cに前記測温用ハンダ20が接着されており、前記測定室17の上面の開口部17aには、前記測温用ハンダ20の酸化を防止するための酸化防止ガラス23が取り付けられ、該酸化防止ガラス23の下面に前記測温用ハンダ20が隙間なく密に接着されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディの上面に形成された測定室の内部に、温度センサ-と、温度測定の対象となる測温用ハンダとが収容され、
前記温度センサ-は、2本の異種金属線を相互に接続し、接続点を温度測定のための測温部とした熱電対からなっていて、前記測温部に前記測温用ハンダが接着されており、
前記測定室の上面の開口部には、前記測温用ハンダの酸化を防止するための酸化防止ガラスが取り付けられ、該酸化防止ガラスの下面に前記測温用ハンダが隙間なく密に接着されている、
ことを特徴とする放射温度計の校正用温度計。
【請求項2】
前記測温用ハンダは、前記ガラス板に超音波ハンダ付けによって接着されていることを特徴とする請求項1に記載の校正用温度計。
【請求項3】
照射ヘッドからレーザー光を前記ガラス板を通して前記測温用ハンダに照射可能であると共に、加熱された前記測温用ハンダから放射される赤外光を前記ガラス板を通して放射温度計で受光することにより、前記測温用ハンダの温度を前記放射温度計により測定可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の校正用温度計。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の校正用温度計を、前記ハンダ付け部位があるハンダ付けエリアの近傍に配置したことを特徴とするレーザーハンダ付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射温度計の校正を行うための校正用温度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、レーザー光を使用して電子部品等をプリント基板にハンダ付けするレーザーハンダ付けの分野においては、溶融したハンダの温度を放射温度計で測定し、その温度情報をフィードバックしてレーザー光の出力を調整するようにしている。そのため、放射温度計で測定したハンダの温度がレーザー光の出力に直結し、ハンダ付けの精度に大きな影響を及ぼすことになる。そこで、前記放射温度計は、その測定精度を定期的に管理し、必要な校正を施すことによって測定精度を一定に維持することが重要である。
【0003】
前記放射温度計の校正は、通常、例えば特許文献1に記載されているように、黒体炉を用いて行われる。このように黒体炉を使用する場合には、校正時に該黒体炉をはんだ付け装置の適宜位置に設置する必要があるが、その設置場所の選定及び設置は容易ではなく、しかも、設置後に該黒体炉を必要な温度まで昇温させるのに30分以上の時間を要するなどの問題がある。このため、ハンダ付け工程の途中に放射温度計の校正を行う必要が生じた場合には、ハンダ付けを長時間中断しなければならず、生産効率の低下を来すことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-81816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、黒体炉を使用することなく放射温度計の校正を短時間で手軽に行うことができるようにした校正用温度計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の校正用温度計は、ボディに形成された測定室の内部に、温度センサ-と、温度測定の対象となる測温用ハンダとが収容され、前記温度センサ-は、2本の異種金属線を相互に接続し、接続点を温度測定のための測温部とした熱電対からなっていて、前記測温部に前記測温用ハンダが接着されており、前記測定室の上面の開放窓には、該測定室を大気から遮断するための透明で耐熱性を有するガラス板が気密に取り付けられ、該ガラス板の内面に前記測温用ハンダが隙間なく密に接着されている、ことを特徴とする。
【0007】
本発明において、前記測温用ハンダは、前記ガラス板に超音波ハンダ付けによって接着されていることが好ましい。
また、本発明の校正用温度計は、前記ガラス板を通して前記測温用ハンダにレーザー光を照射可能であると共に、加熱された前記測温用ハンダから放射される赤外光を前記ガラス板を通して放射温度計で受光することにより、前記測温用ハンダの温度を測定可能である。
【0008】
また、本発明によれば、前記校正用温度計を、ハンダ付け時にハンダ付け対象であるプリント基板が置かれるハンダ付けエリアの近傍に配置したレーザーハンダ付け装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の校正用温度計は、ハンダ付け装置におけるプリント基板が配設されるハンダ付けエリアの近傍に設置し、放射温度計の校正時に、照射ヘッドからレーザー光を測温用ハンダに照射し、溶融した該測温用ハンダの温度を校正用温度計の温度センサ-と放射温度計とにより測定し、両者の温度差に応じて算出する放射率オフセット量に応じて放射温度計の放射率をオフセットするものであるため、該放射温度計の校正を黒体炉を使用する場合に比べて非常に短時間(20-30秒程度)で手軽に行うことができ、また、照射するレーザー光の出力は数W程度の低出力で良いため、消費電力が少なく、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る校正用温度計を備えたレーザーハンダ付け装置の正面図である。
図2図1の平面図である。
図3】本発明に係る校正用温度計の斜視図である。
図4図3の中央縦断面図である。
図5】放射温度計の校正システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る校正用温度計の一実施形態を図に基づいて詳細に説明する。図1及び図2には、本発明に係る校正用温度計を備えたレーザーハンダ付け装置の一例が示されている。このハンダ付け装置1は、ガントリータイプのハンダ付けロボットであって、盤状をしたベース2と、該ベース2から立ち上がった左右の支柱3,3と、該左右の支柱3及び3の上端にそれぞれ装置の前後方向(Y方向)に延在するように配設された第1ガイド4aと、左右の第1ガイド4a,4a間に掛け渡されて該第1ガイド4aに沿って前後方向に変位自在の第2ガイド4bと、該第2ガイド4bに沿って左右方向(X方向に)変位自在のスライド部材5と、該スライド部材5に支持された照射ヘッド6と、該照射ヘッド6又は前記スライド部材5に支持された放射温度計7と、ハンダ付けするプリント基板9を載置するためのテーブル8と、ハンダ付け装置1全体を制御するコントローラ10とを有している。前記照射ヘッド6は、光ファイバー11を通じてレーザー発振器12に接続され、該レーザー発振器12及び前記放射温度計7は、それぞれ電気ケーブル12a及び7aを通じて前記コントローラ10に接続されている。なお、前記放射温度計7の放射率は、ハンダの主成分である錫に設定されている。
【0012】
前記ハンダ付けロボット1により、前記基板載置テーブル8上のハンダ付けエリア8aに置かれたハンダ付け対象、即ち、プリント基板9と電子部品13とをハンダ付けするときは、前記照射ヘッド6からレーザー光Lをハンダ付け部位に向けて照射し、不図示のはんだ供給ノズルから供給されたハンダを溶融させてハンダ付けを行う。その際、ハンダ付け部位の温度、即ち、溶融したハンダの温度が、前記放射温度計7により測定され、その測定結果が前記コントローラ10にフィードバックされ、その測定結果に応じて前記レーザー発振器12が制御されることにより、前記照射ヘッド6から照射されるレ-ザー光Lの出力が調整される。
【0013】
前記放射温度計7は、その測定精度がハンダ付けの精度に重大な影響を及ぼすため、定期的に校正を行うことにより、その精度を一定に維持する必要がある。このため、前記はんだ付けロボット1には、前記放射温度計7の校正を行うための校正用温度計15が、前記テーブル8におけるハンダ付けエリア8aの近傍に設置されている。
【0014】
前記校正用温度計15は、図3及び図4に示すように、四角いブロック形をしたボディ16を有している。このボディ16は、ファイン・セラミックス等の耐熱性及び非導電性を有する非金属無機素材で形成することができる。
【0015】
前記ボディ16の上面には、四角い窪みからなる測定室17が形成され、該測定室17の内部に、薄肉で幅狭の仕切板18が、左右の室壁間に掛け渡された状態に取り付けられ、該仕切板18の下面に温度センサ-19が取り付けられると共に、該仕切板18の上面に、前記温度センサ-19による温度測定の対象となる測温用ハンダ20が配置されている。しかし、前記仕切板18は、前記測定室17の室幅と同程度の板幅を有していて、該測定室17を完全に上下に仕切るものであっても構わない。
【0016】
前記温度センサ-19は、2本の異種金属線19a,19bを相互に接続し、その接続点を温度測定のための測温部19cとした熱電対からなるもので、前記測温部19cは、前記仕切板18に形成した孔18aから該仕切板18の上面側に露出し、この測温部19cに前記測温用ハンダ20が、ハンダ付けの方法により接着されている。図中の符号21で示す部材は、前記温度センサ-19に接続されたリード線19dをコントローラ10(図2参照)に接続するための接続器である。
前記仕切板18は、ハンダに対する濡れ性を有さない素材で形成されているため、放射温度計7(図2参照)の校正時に、前記測温用ハンダ20がレーザー光で加熱されて溶融しても、溶融した測温用ハンダが該仕切板18上を濡れ広がることはない。
【0017】
前記測定室17の上部の開口部17aには、前記測温用ハンダ20の大気との接触による酸化を防止するための透明で耐熱性を有する酸化防止ガラス23が、該測温用ハンダ20を覆うように取り付けられ、該酸化防止ガラス23の下面に前記測温用ハンダ20が、超音波ハンダ付けによる方法で、該酸化防止ガラス23との間に隙間が介在しないように密に接着されている。前記酸化防止ガラス23の表面はハンダに対する濡れ性を有さないため、放射温度計7の校正時に、前記測温用ハンダ20がレーザー光で加熱されて溶融しても、該測温用ハンダ20が酸化防止ガラス23の下面に沿って濡れ広がることはない。
なお、前記酸化防止ガラス23は、前記測定室17を大気から遮断するように前記開口部17aに気密に取り付けられていても良い。
【0018】
前記校正用温度計15を使用して放射温度計7の校正を行うときは、図1及び図2おいて、前記照射ヘッド6及び放射温度計7が、同図に示すハンダ付け位置から、前記校正用温度計15が配置された位置(校正位置)に変位する。これにより、図5に示す校正システム25が構成される。この校正システム25は、前記校正用温度計15と、前記照射ヘッド6及び放射温度計7と、校正用のプログラムが入力された前記コントローラ10とで構成されるものである。
【0019】
前記校正システム25による放射温度計7の校正は、例えばはんだ付け作業の開始前等に、次のようにして行われる。
図5において、先ず、前記照射ヘッド6からレーザー光Lが、前記校正用温度計15の前記測温用ハンダ20に酸化防止ガラス23を通して照射される。このときの前記レーザー光Lの強度(出力)は、例えば数W程度の低出力に設定されている。
【0020】
続いて、前記レーザー光Lの照射で前記測温用ハンダ20が加熱されて溶融すると、溶融した測温用ハンダ20の温度が、該測温用ハンダ20に測温部19cが接続された前記温度センサ-19により直接測定され、その測定値T1(第1測定値)が前記コントローラ10に入力される。また、前記測温用ハンダ20の温度は、該測温用ハンダ20から放射される赤外光が前記酸化防止ガラス23を通して放射温度計7で受光されることにより、該放射温度計7によっても測定され、その測定値T2(第2測定値)が前記コントローラ10に入力される。これらの第1測定値T1及び第2測定値T2は、前記コントローラ10に設けるか又は該コントローラ10とは別の位置に設けた表示部(不図示)に表示することにより、作業者がそれを確認することができるようになっていることが望ましい。
【0021】
なお、前記測温用ハンダ20は、レーザー光Lで加熱されて溶融しても、前記仕切板18の表面及び酸化防止ガラス23の表面がハンダに対する濡れ性を持たないため、これら仕切板18及び酸化防止ガラス23の表面に沿って濡れ広がることはなく、溶融前の位置に止まったままである。
【0022】
次に、前記コントローラ10において、前記温度センサ-19による第1測定値T1と放射温度計7による第2測定値T2とが比較され、両者間に差がある場合には、その差(温度差)に応じた放射率オフセット量が算出され、算出された放射率オフセット量に応じて放射温度計7の放射率が自動的にオフセットされる。即ち、前記放射温度計7の放射率が、該放射温度計7による第2測定値T2が前記温度センサ-19による第1測定値T1に等しくなるような放射率に書き換えられ、それによって該放射温度計7の校正が終了する。
前記温度センサ-19による第1測定値T1と放射温度計7による第2測定値T2との間に差がない場合には、前記放射温度計7の放射率は書き換えられずに校正は終了する。
前記放射温度計7の校正が終了すると、前記照射ヘッド6及び放射温度計7は、図1及び図2に示すはんだ付け位置に復帰し、はんだ付け作業が開始される。
【0023】
このように、放射温度計7の校正を前記校正用温度計15を使用して行うことにより、その校正を、黒体炉を使用する場合に比べて非常に短時間(20-30秒程度)で手軽に校正を行うことができる。このため、はんだ付け工程中であっても、プリント基板9の交換中や、1つのバッチ処理が終わって次のバッチ処理に移行する間などに、ハンダ付け作業を中断することなく放射温度計7の校正を行うことが可能である。しかも、前記校正用温度計15は、はんだ付け時に前記プリント基板9が配置されるハンダ付けエリア8aの近くに簡単に設置することができるので、黒体炉を使用する場合よりもその設置が容易である。
【0024】
また、前記温度センサ-19による第1測定値T1と放射温度計7による第2測定値T2とに差があることを知ることにより、放射温度計7に発生した異常や、この放射温度計7の前面にヒュームやフラックス等の付着を防止するために取り付けられている保護ガラスの汚れ等を知ることができるため、メンテナンス性が向上する。
さらに、前記校正用温度計15に照射するレーザー光Lの出力は、数W程度の低出力で良いため、消費電力が少なく、経済的である。
【符号の説明】
【0025】
1 ハンダ付け装置
6 照射ヘッド
7 放射温度計
15 校正用温度計
16 ボディ
17 測定室
18a 開口部
19 温度センサ-
19a,19b 金属線
19c 測温部
20 測温用ハンダ
23 酸化防止ガラス
図1
図2
図3
図4
図5