(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071020
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】インテリア箱体およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
A47B 55/00 20060101AFI20230515BHJP
A47K 1/00 20060101ALI20230515BHJP
A47K 1/02 20060101ALI20230515BHJP
A47B 67/02 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A47B55/00
A47K1/00 Z
A47K1/02 Z
A47B67/02 502L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183578
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】千枝 邦洋
【テーマコード(参考)】
3B067
【Fターム(参考)】
3B067AA00
3B067BA01
3B067DA03
(57)【要約】
【課題】居住空間を犠牲にすることなく簡単な設置工事で施工できるインテリア箱体を、その施工方法とともに提供することを課題とする。
【解決手段】本開示技術は、居住空間内に背面を壁に対面させて設置されるインテリア箱体1を対象とする。本開示技術に係るインテリア箱体1は、箱本体17と、背桟木10とを有するものである。本開示技術における背桟木10は、箱本体17における設置時に壁に向けられる面である背面の任意の位置に取り付けられるものである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
居住空間内に背面を壁に対面させて設置されるインテリア箱体であって、
箱本体と、
前記箱本体における設置時に壁に向けられる面である背面の任意の位置に取り付けられる背桟木とを有するインテリア箱体。
【請求項2】
請求項1に記載のインテリア箱体であって、
前記背面における設置時に壁に対して間隔を置く位置に配置された背面板と、
前記背面板よりも壁側に突出する一対の突出部とを有し、
前記一対の突出部における前記突出部同士が対向する対向面に一対の溝が形成されており、
前記背桟木は、
前記一対の溝に挿入されるサイズの一対の突起部を有するとともに、
前記一対の突起部が前記一対の溝にそれぞれ挿入されており、前記背面板の壁側の板面上にて前記一対の溝に沿ってスライド移動が可能であり、かつ前記箱本体から分離しないように保持されているインテリア箱体。
【請求項3】
請求項1に記載のインテリア箱体であって、
前記背桟木は、前記箱本体から分離した状態とされているインテリア箱体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載のインテリア箱体であって、
前記箱本体の上部に洗面ユニットが取り付けられているインテリア箱体。
【請求項5】
居住空間内に背面を壁に対面させて設置されるインテリア箱体を設置場所に固定するインテリア箱体の施工方法であって、
前記インテリア箱体の箱本体における設置時に壁に向けられる面である背面の任意の位置に背桟木を固定し、
前記背桟木の固定がなされた前記箱本体を、前記背面を壁に対面させつつ設置場所に置き、
前記背桟木を壁に固定することにより前記箱本体の位置を設置場所に固定するインテリア箱体の施工方法。
【請求項6】
請求項5に記載のインテリア箱体の施工方法であって、
前記背桟木の前記背面への固定位置として、壁における補強材のある箇所と対面する位置を採用するインテリア箱体の施工方法。
【請求項7】
請求項5と請求項6とのいずれか1つに記載のインテリア箱体の施工方法であって、
前記箱本体は、上部に洗面ユニットが取り付けられているものであり、
前記背桟木の前記背面への固定位置として、前記洗面ユニットと壁との間の配管を通す位置を避けた位置を採用するインテリア箱体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、インテリア箱体およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗面台その他の壁付け型のインテリア箱体について、古くなったものを撤去して代わりに新たなものを設置したいという需要がある。そのような需要に対応できる先行技術の例として特許文献1の「キャビネットの設置構造」を挙げることができる。同文献の技術では、壁に引掛部を設けるとともにキャビネットに被掛止部を設ける。被掛止部を引掛部に掛止することでキャビネットを壁に取付設置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術を用いれば、壁に補強材を追加することなく、キャビネットを壁に取付設置することができる。しかし特許文献1では、壁に設ける引掛部とキャビネットに設ける被掛止部との位置関係を正確に合わせる必要がある。
【0005】
本開示技術の課題とするところは、居住空間を犠牲にすることなく簡単な設置工事で施工できるインテリア箱体を、その施工方法とともに提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様におけるインテリア箱体は、居住空間内に背面を壁に対面させて設置されるインテリア箱体であって、箱本体と、箱本体における設置時に壁に向けられる面である背面の任意の位置に取り付けられる背桟木とを有しているものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係る洗面台を正面側から見た斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る洗面台を背面側から見た斜視図である。
【
図5】配送段階での第1の形態の洗面台を背面側から見た斜視図である。
【
図6】配送段階での第2の形態の洗面台を背面側から見た斜視図である。
【
図7】第2の形態における背桟木を単独で示す斜視図である。
【
図8】第2の形態における溝部を示す拡大断面図である。
【
図10】背桟木を壁に対して固定した状況を示す断面図である。
【
図11】実施の形態に係る洗面台の別の例を正面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は、
図1に示す洗面台1に本開示技術を適用したものである。洗面台1は、全体形状が箱状であり、上部に洗面ユニット2が取り付けられているものである。洗面台1における洗面ユニット2の下には、扉3が設けられている。これにより、洗面台1の内部空間をユーザーが収納空間として利用できるようになっている。洗面台1は、居住空間内に背面を壁に対面させて設置されるインテリア箱体の一例である。
【0009】
洗面台1の背面は、
図2に示すように、背面板5により覆われている。背面板5の四辺には、突出部6-9が設けられている。突出部6-9は全体として四角形状の枠体を構成している。左辺の突出部6と右辺の突出部7との間に背桟木10が配置されている。背桟木10は、背面板5と比較して厚みがある強度部材である。洗面台1の壁への固定は、背桟木10と壁との間で行われる。
図2に示される洗面台1の背面は、壁に対面する面であり、洗面台1を施工した後では、ユーザーが通常目にすることのない面である。
【0010】
洗面台1は、
図3および
図4に示すように、左右の側面板11、12と、底面板13とを有している。これらは、洗面台1の構造体を構成する構造部材である。
図3は洗面台1の左右方向中央での断面図であり、
図4は背桟木10のある高さ位置での水平断面図である。
図3に示すように洗面台1は、背面板5および背桟木10の側の面である背面を壁15に向けた状態にて床16の上に置かれている。
【0011】
工場出荷後施工前の配送段階における洗面台1について説明する。この段階における洗面台1のうち背桟木10を除いた部分を以下、箱本体という。配送段階における洗面台1には、第1の形態と第2の形態とがある。第1の形態の洗面台1は配送段階では、
図5に示すように、箱本体17と背桟木10とが分離している状態にある。背桟木10は箱本体17に対して全く位置決めされていない状態にある。
【0012】
第2の形態の洗面台1は配送段階では、
図6に示すように背桟木10が下辺の突出部9のすぐ上の位置にある。ただしこの位置に固定されてはいない。第2の形態における背桟木10を単体として見ると、
図7に示すように主桟18と、添え木19とにより構成されている。
図6にて突出部9に接しているのは添え木19である。
図7の背桟木10はさらに、薄肉状に突出する一対の突起部20を両端に有している。
【0013】
第2の形態の洗面台1では
図6に示されるように、背面板5と右辺の突出部7との間に溝21が設けられている。
図8に示すように、左辺の突出部6と背面板5との間にも溝21が設けられている。一対の溝21は、突出部6、7における突出部同士が対向する対向面22に設けられている。溝21は対向面22より凹んでいる。溝21が形成されている位置は、背面板5よりも壁側の位置である。溝21は、突出部6、7の上下方向に沿って上端から下端までにわたって設けられている。溝21の幅および深さは、突起部20を収納して
図6中にて上下方向に摺動させることができる程度のものである。言い換えると、突起部20のサイズは、溝21に挿入されるサイズである。
【0014】
図6中における背桟木10は、一対の突起部20が一対の溝21に挿入された状態にある。この背桟木10は、箱本体17から分離しない。ただし背桟木10は、溝21に沿って上下に摺動可能である。つまり第2の形態における背桟木10は配送段階では、上下方向の位置が位置決めされていない状態にある。背桟木10のこの保持構造は、背面板5に突出部6-9より先に背桟木10をあてがっておき、その上に突出部6-9を取り付けることで実現できる。あるいは、突出部6、7、9を背面板5に取り付けておいて背桟木10を上方から差し込み、その後に上辺の突出部8を取り付けることでも実現できる。
【0015】
図5に示した第1の形態の場合の背桟木10は、突起部20が無いが、それ以外の点では
図7に示されるものと同様のものである。第1の形態の場合の突出部6、7には、溝21は不要である。
【0016】
実施の形態の洗面台1の施工方法を説明する。施工方法の説明においては、第1の形態と第2の形態と区別については、区別が必要な場面でのみ言及する。洗面台1が施工場所に届けられた時点では、前述のように背桟木10が、少なくとも上下方向に対しては位置決めされていない状態にある。
【0017】
施工者が最初に行うのは、背桟木10を固定する位置を決定することである。背桟木10の固定位置として求められるのは、次の2つの条件を満たすことである。第1の条件は、壁15の内部に補強材がある位置であることである。第2の条件は、洗面ユニット2と壁15との間の配管23を邪魔しない位置であることである(
図9参照)。ただし第2の条件は、洗面ユニット2の接続を壁15との間ではなく床16との間で行う施工場所である場合は無用である。特にリフォーム物件の場合には、これらの条件については現場でないと分からないことが多い。施工者は、現場の壁15の状況を見て、背桟木10を固定する高さ方向位置を決定する。
【0018】
施工者は次に、決定した高さ位置に、背桟木10を固定する。第1の形態の場合には、箱本体17から分離した状態で配送されてきた背桟木10を、背面板5上における当該決定した高さ位置の箇所に施工者が置いて固定する。第2の形態の場合には、施工者が背桟木10をスライドさせて、当該決定した高さ位置にて背面板5に固定する。固定そのものの方法は、ビス止めでも接着剤でも両面テープでもタッカー止めでも何でもよい。施工者がこのように背桟木10を固定することにより、背桟木10が、壁15における補強材がある箇所と対面する位置に固定される。背桟木10が、洗面ユニット2と壁15との間の配管を通す位置を避けた位置に固定される。
【0019】
施工者は次に、背桟木10への下穴開けを行う。そのため施工者は、背桟木10における下穴開け位置にマーキング24を付す(
図7参照)。そして施工者は、マーキング24の位置に対して外側から、ドリリング等の手段により下穴を開ける。施工者は、下穴が背桟木10と背面板5とをいずれも貫通するように開ける。
図7ではマーキング24を主桟18と添え木19との境目の位置に付しているがこれは一例である。下穴開け位置は、背桟木10における縁辺沿い位置を除いて任意である。
【0020】
背桟木10には、工場出荷の時点で最初からマーキング24が付されていてもよい。さらに背桟木10には、工場出荷の時点で下穴開けまで施されていてもよい。背桟木10に最初から下穴開けまで施されている場合には、現場での下穴開け作業では背面板5のみに穴開けすればよい。この場合でもドリリング作業は、背桟木10の固定後に外側から行う。施工者は、壁15にも下穴開けを行う。壁15における下穴の位置は当然、固定済みの背桟木10における下穴の位置に対応する位置である。この位置は、壁15の内部に補強材がある位置である。
【0021】
施工者は必要に応じて、配管23を通すための窓を背面板5に開ける。施工者は次に、洗面台1を設置位置に置く。このとき当然、施工者は、洗面台1の背面を壁15に対面させる。このように洗面台1を設置位置に置いた状態では、洗面台1のうち突出部6-9と、背桟木10と、側面板11、12の後端とが、壁15に接しているか、あるいはごく近接している。
【0022】
これにより、背桟木10および背面板5の下穴が壁15の下穴に重なる。施工者はこの状態にて、扉3を開けて洗面台1の内面側からビス留めを行う。このとき、施工者には背面板5の下穴が見えるのでそこにビスを打てばよい。こうして施工者は、
図10に示すように、背桟木10の下穴25を貫通するビス26により、背桟木10が壁15に固定されている状態を得ることができる。この状態では、背桟木10と壁15との固定を介して洗面台1が設置位置に固定されている。その後に施工者は配管23の接続を行う。以上が洗面台1の施工方法の手順である。
【0023】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、居住空間内に背面を壁に対面させて設置される洗面台1において、背桟木10を、施工前の配送段階では箱本体17に固定されていないこととした。これにより、現場の状況に合わせた適切な位置に背桟木10を現場で固定して、設置位置に施工できる洗面台1が、その施工方法とともに実現されている。本実施の形態ではリフォームボードの必要もなく、居住空間を犠牲にすることもない。第1の形態と第2の形態とを対比すると、背桟木10および突出部6、7の製造が容易であるという点では第1の形態が優れている。配送途中で背桟木10が紛失するおそれがないという点では第2の形態が優れている。
【0024】
本実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、第1の形態の場合、背桟木10の全長は、必ずしも突出部6から突出部7に至るものでなくてもよい。施工者は、背桟木10を必ずしも水平にして背面板5に固定しなければならない訳ではない。施工者の現場の判断により背桟木10を縦にして固定してもよいし斜めにして固定してもよい。
【0025】
第2の形態の場合、一対の溝21が突出部6、7ではなく突出部8、9に設けられる構成であってもよい。つまり、背桟木10が縦向きに保持されており水平方向にスライドできるものであってもよい。第2の形態の場合には、溝21および突起部20の位置は、背面板5に隣接する位置でなくてもよい。背桟木10および突出部6、7の厚みの範囲内の任意の位置でよい。
【0026】
第1の形態と第2の形態とのいずれの場合でも、背桟木10は、
図7に示した主桟18と添え木19とを有する構成でなくてもよい。添え木19を有しないものであってもよい。突出部6-9は独立部品でなくてもよい。側面板11、12等の構造部材のうち背面板5よりも壁15側に突出している部分を前述の突出部6-9として利用する構成であってもよい。背面板5は、箱本体17の背面の全面を塞ぐものでなくてもよい。背桟木10を固定するのに十分な程度の面積があれば、開口している部位があってもよい。
【0027】
洗面台1は、
図11に示す扉3と引き出し4とを有する複合タイプのものであってもよい。全幅にわたる引き出しを有するフルスライドタイプのものであってもよい。本開示技術は、本形態として示した洗面台1以外の種類のインテリア箱体にも適用可能である。その例としては、鏡付き洗面台、洗面ユニット2を持たない収納ボックス、洗面ユニット2の代わりに調理用シンク、食洗機、コンロのいずれかを備えたキッチン用箱体が挙げられる。内部空間をユーザーが収納空間として利用できることは必須ではない。
【符号の説明】
【0028】
1……洗面台、2……洗面ユニット、5……背面板、6-9……突出部、10……背桟木、15……壁、16……床、20……突起部、21……溝、22……対向面