IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電池株式会社の特許一覧 ▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧

特開2023-71048双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法
<>
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図1
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図2
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図3
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図4
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図5
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図6
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図7
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図8
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図9
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図10
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図11
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図12
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図13
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図14
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図15
  • 特開-双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071048
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/14 20060101AFI20230515BHJP
   H01M 10/18 20060101ALI20230515BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
H01M4/14 Q
H01M10/18
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183626
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平 芳延
(72)【発明者】
【氏名】廣田 憲治
【テーマコード(参考)】
5H017
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA01
5H017EE02
5H028AA05
5H028CC11
5H028CC19
5H050AA02
5H050AA19
5H050BA09
5H050CA06
5H050CB15
5H050DA05
5H050FA03
(57)【要約】
【課題】活物質層が脱落することを可能な限り回避することで、正極側と負極側とが短絡することによる電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図るとともに、各部の配置位置の精度を高めつつ製造時における手間を省き、製造時間の短縮を図る。
【解決手段】正極用活物質層111bは正極用活物質111bを、負極用活物質層112bは負極用活物質112bをそれぞれ有し、正極用活物質層111bと負極用活物質層112bは、その両方、或いは、いずれか一方が活物質フレーム170を備え、活物質フレーム170は、活物質保持部173と、フレーム部175と、を有し、正極用活物質層111bと負極用活物質層112bの両方、或いは、いずれか一方が活物質フレーム170を備える場合に、正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bは、それぞれの活物質フレーム170A,170Bにおける活物質保持部173によって保持されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、
複数の前記セル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、前記セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、
を有し、
前記正極用活物質層は正極用活物質を、前記負極用活物質層は負極用活物質をそれぞれ有し、
前記正極用活物質層と前記負極用活物質層は、その両方、或いは、いずれか一方が活物質フレームを備え、
前記活物質フレームは、活物質保持部と、フレーム部と、を有し、
前記正極用活物質層と前記負極用活物質層の両方、或いは、いずれか一方が前記活物質フレームを備える場合に、前記正極用活物質、或いは、前記負極用活物質は、それぞれの前記活物質フレームにおける前記活物質保持部によって保持されていることを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項2】
前記活物質保持部は、骨組みであることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項3】
前記フレーム部は、前記電解質層を保持する保持部材が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の双極型蓄電池。
【請求項4】
前記活物質フレームと前記電解質層との間には、接着層が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項5】
前記活物質フレームの前記電解質層と対向する面であって、少なくとも前記フレーム部の一辺の一端から他端に亘ってトラップが形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項6】
前記トラップは、前記セル部材が水平方向に積層配置された際に、前記活物質フレームの鉛直方向下側に位置する前記フレーム部に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の双極型電池。
【請求項7】
前記フレーム部は、前記基板との嵌め合わせに用いる第1の嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項8】
前記基板には、前記フレーム部との嵌め合わせに用いる第2の嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項9】
前記第1の嵌合部と前記第2の嵌合部とが嵌め合わせられた際に、前記活物質フレームと前記基板との互いに対向する面が平坦となるように前記活物質フレームと前記基板とが接合されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の双極型蓄電池。
【請求項10】
前記正極用集電体及び前記負極用集電体は、鉛又は鉛合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の双極型蓄電池。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用した発電設備が増えている。このような発電設備においては、発電量を制御することができないことから、蓄電池を利用して電力負荷の平準化を図るようにしている。すなわち、発電量が消費量よりも多いときには差分を蓄電池に充電する一方、発電量が消費量よりも小さいときには差分を蓄電池から放電するようにしている。上述した蓄電池としては、経済性や安全性等の観点から、鉛蓄電池が多用されている。このような従来の鉛蓄電池としては、例えば、下記特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載された鉛蓄電池では、額縁形をなす樹脂からなるフレーム(リム)の内側に、樹脂からなる基板が取り付けられている。基板の一方面及び他方面には、正極用集電体及び負極用集電体が設けられている。正極用集電体には、正極用活物質層が隣接している。負極用集電体には、負極用活物質層が隣接している。そして、これらがまとまってバイポーラ極板を構成している。また、額縁形をなす樹脂からなるスペーサの内側には、電解液を含有するガラスマット(電解層)が配設されている。そして、フレームとスペーサとが交互に複数積層されて組み付けられている。
【0004】
当該特許文献1に開示されている鉛蓄電池用バイポーラ極板は、正極用集電体及び負極用集電体に凹凸が設けられている。そしてこの凹凸部に正極用活物質、負極用活物質が充填されるため、平坦なシートに活物質を塗布する構造のバイポーラ極板に比べ活物質の脱落や剥離がおきにくい、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-045275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されているように、集電体に凹凸部を設けて活物質を充填したとしても活物質の脱落を完全になくすことはできない。活物質が脱落してしまうと、例えば正極側及び負極側においてそれぞれ脱落した活物質が互いに接触することで短絡が生じてしまい、電池性能の低下を招来する可能性がある。
【0007】
また、このように集電体に凹凸部を設けてしまうと、活物質を充填しやすくなる一方で、例えば当該集電体を確実に基板に設けることが困難になる可能性がある等、様々な別の問題が生ずる可能性を否定できない。
【0008】
さらに、この他にも活物質をメッシュ状の部材に充填する方法等も考えられるが、充填の仕方によっては、例えば、当該部材の中で活物質が途切れてしまうこともあり、活物質の脱落につながりかねない。
【0009】
また、活物質が軟化し脱落する場合、活物質の、例えば中央部から脱落するよりも、まず活物質の角部から脱落することが考えられる。この角部が脱落してしまうと、その他の領域についても徐々に脱落が進んでしまうことになりかねず、角部を維持しておくことができれば、活物質の脱落を阻止、或いは、遅延させることができ、それだけ電池性能を維持することが可能となる。
【0010】
さらには、基板には、例えばその中央部に隣接する基板同士を連結し支持する柱部(ピラー)が設けられていることがある。また、このような基板同士の間には、正極と負極、そして正極と負極との間に介在する電解質層からなるセル部材が配置される。
【0011】
電解質層はセパレータからなるが、当該セパレータには上述した柱部を通すための孔が設けられている。但し、セパレータの位置決めの精度や柱部を接合する際の振れ等を考慮すると、柱部に接触するような位置関係となるように孔を設けることは困難であり、どうしても当該孔を柱部よりも大きくせざるを得ない。
【0012】
このような状態では柱部とセパレータの孔との隙間ができるため、落下した活物質が当該隙間を介して正負極の間で接触し短絡してしまうことが起きやすくなる。そのため隙間をできるだけなくすために柱部とセパレータの孔とが可能な限り近接するようにしたい。
【0013】
また、正極用集電体の周縁部には、当該周縁部を抑えるためのエッジカバー(カバープレート)が配置されることがある。但しこのエッジカバーの厚み、すなわち、正極用集電体との接触面から当該接触面に対向するエッジカバーの対向面までの距離は、正極用活物質の厚み(正極用集電体との接触面からセパレータとの接触面までの距離)よりも短く、薄い。
【0014】
そのため、例えば、蓄電池の製造後、正極用集電体、正極用活物質、セパレータ、負極用活物質、負極用集電体が水平方向に積層されるように蓄電池が設置される場合に、エッジカバーが配置される領域における正極用活物質の端部、エッジカバー、セパレータとの間に生ずる隙間から脱落した活物質が落下し、正負極の間で接触し短絡してしまうことも考えられる。
【0015】
本発明は、例えば、使用による軟化により活物質層が脱落することを可能な限り回避することで、正極側と負極側とが短絡することによる電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図るとともに、各部の配置位置の精度を高めつつ製造時における手間を省き、製造時間の短縮を図ることができる双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、を有し、正極用活物質層は正極用活物質を、負極用活物質層は負極用活物質をそれぞれ有し、正極用活物質層と負極用活物質層は、その両方、或いは、いずれか一方が活物質フレームを備え、活物質フレームは、活物質保持部と、フレーム部と、を有し、正極用活物質層と負極用活物質層の両方、或いは、いずれか一方が活物質フレームを備える場合に、正極用活物質、或いは、負極用活物質は、それぞれの活物質フレームにおける活物質保持部によって保持されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、を有し、正極用活物質層は正極用活物質を、負極用活物質層は負極用活物質をそれぞれ有し、正極用活物質層と負極用活物質層は、その両方、或いは、いずれか一方が活物質フレームを備え、活物質フレームは、活物質保持部と、フレーム部と、を有し、正極用活物質層と負極用活物質層の両方、或いは、いずれか一方が活物質フレームを備える場合に、正極用活物質、或いは、負極用活物質は、それぞれの活物質フレームにおける活物質保持部によって保持されている。このような構成を採用することによって、活物質層が脱落することを可能な限り回避することで、正極側と負極側とが短絡することによる電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図るとともに、各部の配置位置の精度を高めつつ製造時における手間を省き、製造時間の短縮を図ることができる双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池の構造の概略を示す概略断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る活物質フレームの構造を表面の側から示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る活物質フレームの表面を示す平面図である。
図4図2に示す本発明の実施の形態に係る活物質フレームの構造の一部を拡大して示す拡大斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係る活物質フレームの構造を表面とは反対の裏面から示す斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る活物質フレームに活物質を充填した状態を示す斜視図である。
図7】本発明の実施の形態に係る活物質フレームにセパレータを載置した状態を示す斜視図である。
図8】本発明の実施の形態に係るバイポーラプレートの構造を示す斜視図である。
図9】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池の製造の流れの一部を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池の製造の流れの一部を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池の製造工程における、バイポーラプレート及び活物質フレームの状態を示す斜視図である。
図12】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池の製造工程において、バイポーラプレートに活物質フレームが嵌め合わされた状態を示す斜視図である。
図13】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池の製造工程において、さらに活物質フレームにセパレータが嵌め合わされた状態を示す斜視図である。
図14】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池において、バイポーラプレートに活物質フレームが嵌め合わされた状態における柱部付近を示す拡大断面斜視図である。
図15】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池において、バイポーラプレートに活物質フレームが嵌め合わされた状態における枠体付近を示す拡大断面斜視図である。
図16】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池において、バイポーラプレートに活物質フレームが嵌め合わされた状態における枠体付近を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施の形態は、本発明の一例を示したものである。また、これらの各実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。これらの各実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。なお、以下においては、様々な蓄電池の中から鉛蓄電池を例に挙げて説明する。
【0020】
〔全体構成〕
まず、本発明の実施の形態における双極型鉛蓄電池の全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の構造の概略を示す概略断面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態の双極型鉛蓄電池100は、複数のセル部材110と、複数枚のバイポーラプレート(空間形成部材)120と、第1のエンドプレート(空間形成部材)130と、第2のエンドプレート(空間形成部材)140とを有する。
【0022】
ここで、図1ではセル部材110が3個積層された双極型鉛蓄電池100を示しているが、セル部材110の数は電池設計により決定される。また、バイポーラプレート120の数はセル部材110の数に応じて決まる。
【0023】
なお、以下においては、図1に示すように、セル部材110の積層方向をZ方向(図1の上下方向)とし、Z方向に垂直な方向で且つ互いに垂直な方向をX方向およびY方向とする。
【0024】
セル部材110は、正極111、負極112、およびセパレータ(電解質層)113を備えている。正極111は、正極用集電体である正極用鉛箔111aと正極用活物質層111bとを有する。負極112は、負極用集電体である負極用鉛箔112aと負極用活物質層112bとを有する。
【0025】
セパレータ113には電解液が含浸されている。セパレータ113は、正極111と負極112との間に介在している。セル部材110において、正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、セパレータ113、負極用活物質層112b、および負極用鉛箔112aは、この順に積層されている。
【0026】
正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法は、正極用活物質層111bのX方向およびY方向の寸法より大きい。同様に、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法は、負極用活物質層112bのX方向およびY方向の寸法より大きい。また、Z方向の寸法(厚さ)は、正極用鉛箔111aの方が負極用鉛箔112aより大きく(厚く)、正極用活物質層111bの方が負極用活物質層112bより大きい(厚い)。
【0027】
複数のセル部材110は、Z方向に間隔を開けて積層配置され、この間隔の部分にバイポーラプレート120の基板121が配置されている。すなわち、複数のセル部材110は、バイポーラプレート120の基板121の間に挟まれた状態で積層されている。
【0028】
このように、複数枚のバイポーラプレート120と第1のエンドプレート130と第2のエンドプレート140は、複数のセル部材110を個別に収容する複数の空間(セル)Cを形成するための空間形成部材である。
【0029】
すなわち、バイポーラプレート120は、セル部材110の正極側および負極側の両方を覆い、平面形状が長方形の基板121と、セル部材110の側面を囲うとともに基板121の4つの端面を覆うに枠体122と、を含む空間形成部材である。
【0030】
また、図1に示すように、バイポーラプレート120は、さらに基板121の両面から垂直に突出する柱部123を備える。当該基板121の各面から突出する柱部123の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0031】
バイポーラプレート120を構成する基板121と枠体122と柱部123は、一体に、例えば、熱可塑性樹脂で形成されている。バイポーラプレート120を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリプロピレンが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、成形性に優れているとともに耐硫酸性にも優れている。よって、バイポーラプレート120に電解液が接触したとしても、バイポーラプレート120に分解、劣化、腐食等が生じにくい。
【0032】
Z方向において、枠体122の寸法は基板121の寸法(厚さ)より大きく、柱部123の突出端面間の寸法は枠体122の寸法と同じである。そして、複数のバイポーラプレート120が枠体122および柱部123同士を接触させて積層されることにより、基板121と基板121との間に空間Cが形成され、互いに接触する柱部123同士により、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0033】
正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112a、およびセパレータ113には、柱部123を貫通させる貫通穴111c,112c,113aがそれぞれ形成されている。
【0034】
バイポーラプレート120の基板121は、板面を貫通する複数の貫通穴121aを有する。基板121の一方の面に第1の凹部121bが、他方の面に第2の凹部121cが形成されている。第1の凹部121bのZ方向の深さは第2の凹部121cのZ方向の深さより深い。第1の凹部121bおよび第2の凹部121cのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0035】
バイポーラプレート120の基板121は、Z方向で、隣り合うセル部材110の間に配置されている。そして、バイポーラプレート120の基板121の第1の凹部121bに、鉛又は鉛合金からなる正極用集電体である正極用鉛箔111aが配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121の第2の凹部121cに、鉛又は鉛合金からなる負極用集電体である負極用鉛箔112aが配置されている。
【0036】
具体的には、正極用鉛箔111aは、基板121の第1の凹部121bと正極用鉛箔111aの間に設けられる接着剤150を介して基板121の第1の凹部121bに接合されている。また、負極用鉛箔112aは、基板121の第2の凹部121cと負極用鉛箔112aの間に設けられる接着剤150を介して基板121の第2の凹部121cに接合されている。
【0037】
バイポーラプレート120の基板121の貫通穴121aには導通体160が配置されている。また、導通体160の両端面は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aと接触し、結合されている。すなわち、導通体160により正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとが電気的に接続されている。その結果、複数のセル部材110の全てが電気的に直列に接続されている。
【0038】
なお、正極及び負極をつなぎセル部材110同士を接続する方法として、上述した導通体160を用いる他、例えば、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aとを、基板121に複数形成された貫通穴121aの内部で直接的に接合される方法を採用することもできる。
【0039】
本発明の実施の形態における正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bは、それぞれ活物質フレーム170に正極用活物質、負極用活物質が充填されて図1に示すように層状に保持されている。以下、当該活物質フレーム170について、図1及び図2以下の各図を適宜使用して説明する。
【0040】
なお、以下においては、正極用活物質層111bを構成する正極用活物質についても符号111bを付して説明する。また同様に、負極用活物質層112bを構成する負極用活物質についても符号112bを付して説明する。
【0041】
図2は、本発明の実施の形態に係る活物質フレーム170の構造を表面の側から示す斜視図であり、図3は、本発明の実施の形態に係る活物質フレーム170の表面を示す平面図である。また、図4は、図2に示す本発明の実施の形態に係る活物質フレーム170の構造の一部を拡大して示す拡大斜視図である。さらに図5は、本発明の実施の形態に係る活物質フレーム170の構造を表面とは反対の裏面から示す斜視図である。
【0042】
なお実際には、正極用活物質111bを保持する活物質フレーム170と、負極用活物質112bを保持する活物質フレーム170とでは、若干その構造が異なる。そこで、両者に共通する内容については適宜「活物質フレーム170」と表して説明する。一方、異なる内容や区別する必要がある場合には、正極用活物質111bを保持する活物質フレーム170は「正極用の活物質フレーム170A」、負極用活物質112bを保持する活物質フレーム170は「負極用の活物質フレーム170B」と表す。
【0043】
活物質フレーム170は、これまで正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aに積層されていた正極用活物質層111b、或いは、負極用活物質層112bに代わり、正極用活物質、或いは、負極用活物質を保持して正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bを構成するものである。
【0044】
従って、正極用の活物質フレーム170A、負極用の活物質フレーム170Bについては、これまでの正極用活物質層111b、或いは、負極用活物質層112bとして求められる厚み(Z方向の厚み)を備えている。但し、正極用活物質層111bと負極用活物質層112bとの厚みに合わせて、正極用の活物質フレーム170Aと負極用の活物質フレーム170Bとでそれぞれ厚みが異なっていても良い。
【0045】
活物質フレーム170は、例えば、ABS樹脂、ポリプロピレンといった、熱可塑性樹脂や金属(鉛合金など)で形成されており、後述する活物質保持部173やフレーム部175等の活物質フレーム170の各部も一体に形成されている。活物質フレーム170は、このような熱可塑性樹脂で形成されていることから、基板121に嵌め合わせることで双極型鉛蓄電池100全体の剛性を向上させることができる。
【0046】
図2図3に示すように、活物質フレーム170は薄板状の形状をしており、図2手前側に示される活物質フレーム170の面は、セパレータ113が載置される表面171となる。一方表面171の反対の面が裏面172であり、基板121に積層された場合に、正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aと対向する面となる。
【0047】
活物質フレーム170の表面171及び裏面172の中央領域には、活物質保持部173が設けられている。当該活物質保持部173に正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bが充填されて正極用活物質層111b、或いは、負極用活物質層112bを構成する。
【0048】
この活物質保持部173には、骨組み173aが設けられている。充填された正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bが骨組み173aに接することで、骨組み173aによって活物質フレーム170に保持されることになる。
【0049】
当該骨組み173aは、図2等に示すように、本発明の実施の形態においては、活物質フレーム170の平行な2辺に平行な桟と、及び、これら平行な2辺に直行する平行な2辺と平行な桟とが組み合わせられ、いわゆるラーメン構造となるように形成されている。
【0050】
但し骨組み173aの構造としては、このような構造に限らず、例えば、ハニカム状に形成されていても良い。また、正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bが充填された後に脱落せず保持された状態が維持できるのであれば、骨組み173aはどのような構造を採用しても良い。
【0051】
正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bは、骨組み173aによって区画された全ての活物質保持部173の領域に充填される。すなわち、図1の断面図に示すように、正極用活物質111b及び負極用活物質112bは、骨組み173aを間に挟み、表面171と裏面172との間に充填される。
【0052】
すなわち、活物質保持部173に正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bが充填された際の厚み(Z方向の厚み)は、正極用活物質層111b、或いは、負極用活物質層112bとして求められる厚みとなるように形成される。また、この厚みは、後述するフレーム部175の厚みとなる。
【0053】
具体的には、活物質フレーム170を基板121と接合した際に、裏面172に露出する正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bが正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aと接触し、表面171に露出する正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bがセパレータ113と接触することができるように活物質保持部173に充填される。
【0054】
但し、正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bの充填量については、上述した量に限定されるわけではない。すなわち、例えば、裏面172側には正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aと接するに十分な量が充填される一方、セパレータ113が載置される表面171側には骨組み173aが露出するような量とすることもできる。
【0055】
このように活物質フレーム170に充填される正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bの量は、様々設定することができるが、いずれにしろ活物質フレーム170においてこれら正極用活物質111b及び負極用活物質112bが保持可能となる量である。
【0056】
そして、正極用活物質111b或いは負極用活物質112bは、活物質保持部173において面一となるように充填される。このように充填されることによって、正極用活物質111b及び負極用活物質112bは活物質フレーム170により確実に保持される。
【0057】
活物質保持部173の中央部には、基板121の柱部123を通すための貫通部174が設けられている。貫通部174には貫通穴174aが形成されており、この貫通穴174aが設けられていることによって、基板121と活物質フレーム170とを接合する場合に、柱部123を通すことができる。
【0058】
なお、本発明の実施の形態においては、基板121の中央部に柱部123が設けられていることから、柱部123の位置に合わせて活物質フレーム170の貫通穴174aも概ねその中央部に設けられているが、貫通穴174aの配置位置、配置数、形状については、柱部123の配置位置、配置数、形状に従う。
【0059】
また、貫通穴174aの直径は、柱部123の直径より概ね等しいか若干大きな値とされている。このように形成されることによって、高い位置精度をもって正極用活物質111b及び負極用活物質112bを配置することができる。
【0060】
このように、貫通穴174aが柱部123の外周に接する、或いは、両者の隙間を可能な限り少なくすることによって、この部分に正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bが落下したとしても、隙間を介して両活物質が接触し短絡することを防止することができる。
【0061】
そして貫通穴174aの周囲には接続部174bが設けられている。この接続部174bには、活物質保持部173の骨組み173aが接続されるとともに、活物質フレーム170の表面171に載置されるセパレータ113とも接続される。
【0062】
具体的には、貫通部174の表面171側には、載置されたセパレータ113を接合するために用いる接着剤を保持しておく接着溝174cが設けられている。活物質フレーム170とセパレータ113とを接着剤を用いて接合することによって、接続部174bにおいて活物質フレーム170とセパレータ113とを固定することができる。そのため貫通穴174aの周囲を封止することができ、たとえ正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bが脱落したとしても両者が接触して短絡することを防止することができる。
【0063】
なお、本発明の実施の形態における活物質フレーム170においては、貫通部174の表面側に設けられる接着溝174cは、貫通穴174aの形状に合わせた円形状に形成されている。但し、このような形状のみならず、その他の形状に形成されていても良い。
【0064】
また、貫通部174の接続部174bにおける活物質フレーム170とセパレータ113との接合に当たっては、必ずしも接着剤150を使用しなくても良い。例えば、接着剤150の代わりに両面テープといった、両者を接合するための様々な部材を使用することができる。
【0065】
そして当該活物質保持部173の周縁には、フレーム部175が設けられている。フレーム部175は、活物質フレーム170を基板121と接合した際に、正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aの外縁部を覆い、いわば、エッジカバー(カバープレート)の役割を果たすものである。
【0066】
このようなフレーム部175により、たとえ電解液の漏洩が生じた場合であっても電解液が正極用鉛箔111aと基板121(接着剤150)との間に浸入することを防止することができる。従って、電解液が正極から負極に滲出することによる短絡を防止し、電池性能の維持、長寿命化を図ることができる。
【0067】
フレーム部175は薄板状に形成されており、長方形の内形線および外形線を有する。そして、内形線は、活物質保持部173と接するとともに、当該内形線と外形線との間の領域の一部において正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aの外縁部と重なる。一方、フレーム部175の外形線が基板121の一方の面の第1の凹部121bの周縁部、或いは、他方の面の第2の凹部121cの周縁部と重なっている。
【0068】
なお、本発明の実施の形態における双極型鉛蓄電池100においては、図1においてはその図示を省略しているが、接着剤150が、正極用鉛箔111aの端面から第1の凹部121bの開口側の外縁部まで回り込んで、フレーム部175と対向する正極用鉛箔111aの外縁部及び基板121の一面との間に配置されている。
【0069】
すなわち、正極用の活物質フレーム170Aのフレーム部175は、接着剤150により基板121の一方の面の第1の凹部121bの周縁部と正極用鉛箔111aの外縁部とに亘って固定されている。これにより、正極用鉛箔111aの外縁部は、第1の凹部121bの周縁部との境界部においてもフレーム部175で覆われている。
【0070】
また正極側と同様、負極側においても接着剤150が負極用鉛箔112aの端面から第2の凹部121cの開口側の周縁部まで回り込んで、フレーム部175と対向する負極用鉛箔112aの外縁部及び基板121の一面との間に配置されている。
【0071】
そのため、負極用の活物質フレーム170Bのフレーム部175は、接着剤150により基板121の他方の面の第2の凹部121cの周縁部と負極用鉛箔112aの外縁部とに亘って固定されている。これにより、負極用鉛箔112aの外縁部は、第2の凹部121cの周縁部との境界部においてもフレーム部175で覆われている。
【0072】
フレーム部175の領域には、表面171に載置するセパレータ113を保持するセパレータ保持部材176が設けられている。すなわち、セパレータ113は活物質フレーム170の表面171上に載置されることから、セパレータ113が表面171上でずれることがないよう、当該セパレータ保持部材176がセパレータ113の周囲に接して保持することができるようにされている。
【0073】
図4に示す活物質フレーム170の構造の一部を拡大して示す拡大斜視図に明らかなように、セパレータ保持部材176は、フレーム部175からZ方向に立ち上がるように設けられている。そしてさらに、X方向、或いは、Y方向に突出している。すなわち、当該セパレータ保持部材176の断面をX-Y平面でみると、略逆L字状に形成されている。
【0074】
セパレータ保持部材176をこのような形状に形成することにより、活物質フレーム170の表面171に載置されたセパレータ113は、X,Y,Zのいずれの方向にもずれることなく確実に保持される。
【0075】
なお、本発明の実施の形態における活物質フレーム170においては、セパレータ保持部材176はフレーム部175が形成されている活物質フレーム170の各辺において、それぞれ2つずつ設けられている。但し、活物質フレーム170に設けられるセパレータ保持部材176の数や配置位置、大きさ、或いは、形状については、任意に設定することができる。
【0076】
また、本発明の実施の形態においては、セパレータ保持部材176は上述した位置、形状とされているが、セパレータ保持部材176の位置、形状はこのようなものに限定されない。例えば、セパレータ保持部材176をフレーム部175の四隅に、隣接する2辺をつなぐようなL字となるように形成することも可能である。
【0077】
セパレータ保持部材176がこのような形状に形成された場合には、活物質フレーム170の表面171に載置されるセパレータ113は、その四隅がセパレータ保持部材176に嵌め込まれて保持されることになる。
【0078】
フレーム部175の領域であって、活物質保持部173とセパレータ保持部材176との間には、図2図3に示されているように、活物質保持部173を取り囲むように接着溝177が設けられている。接着溝177は、活物質フレーム170にセパレータ113が載置された場合に、活物質フレーム170とセパレータ113とを接着するための接着剤150を保持しておくために設けられたものである。
【0079】
上述した接着溝174cと同様、活物質フレーム170とセパレータ113とを接着溝177に充填された接着剤150を用いて接合することによって、フレーム部175において活物質フレーム170とセパレータ113とをその四辺において固定することができる。このように活物質が充填される領域の周囲に設けられる接着溝177の部分においてセパレータ113がフレーム部175に固定されているので、たとえ活物質が脱落したとしても当該接着溝177の部分において脱落した活物質をせき止めることができる。
【0080】
なお、フレーム部175の周囲における活物質フレーム170とセパレータ113との接合に当たっては、必ずしも接着溝177に充填される接着剤150を使用しなくても良い。例えば、接着剤150の代わりに両面テープといった、両者を接合するための様々な部材を使用することができる。
【0081】
次に、正極用の活物質フレーム170Aの表面171、すなわち、セパレータ113と対向する面であって、双極型鉛蓄電池100を設置した際に鉛直方向下側には、落下した正極用活物質111bを受け止めるトラップ178が設けられている。図2、或いは、図3に示す正極用の活物質フレーム170Aにおいては、X方向の下端であって、Y方向の幅いっぱい、すなわちフレーム部175の一辺の一端から他端に亘ってZ方向に突出するようにトラップ178が設けられている。
【0082】
一方図5に明らかなように、トラップ178は正極用の活物質フレーム170Aの裏面172には設けられていない。上述したように、裏面172は正極用鉛箔111aと接する面であり、Z方向にトラップ178が突出していると正極用鉛箔111aに正極用活物質111bを十分に接触させることができなくなるからである。
【0083】
ここで双極型鉛蓄電池100が設置される場合、セル部材110同士が天地方向に積層されるような場合と、90度傾けた水平方向に積層されるような場合と、に大別される。いずれの場合も、電池の劣化等によりセル部材110が膨張してしまうと、例えば、正極用鉛箔111aと正極用活物質層111bとが分離して正極用鉛箔111aから正極用活物質層111bが脱落してしまうおそれがある。
【0084】
特に、活物質フレーム170が、例えば、図2図5に示されるような方向となるような、セル部材110が水平方向に積層される場合は、重力の影響を受けやすく、正極用鉛箔111aから正極用活物質層111bが脱落しやすくなってしまうことが考えられる。
【0085】
当該正極用活物質層111bの脱落に対しては、上述したような接着溝177に充填された接着剤150によって活物質フレーム170とセパレータ113とが固定されることから、一旦当該接着溝177の部分で脱落した活物質をせき止めることができる。
【0086】
但し、脱落した正極用活物質層111bは細かな粒子であり、接着溝177の部分でせき止めたとしても、セパレータ113の隙間からさらに下方へと脱落してしまう可能性も考えられる。この脱落が生じると短絡が生じてしまうことは上述した通りである。
【0087】
そこで例えば、水平方向に積層され設置された双極型鉛蓄電池100において、活物質保持部173の領域に充填された正極用活物質111bが脱落した場合に、双極型鉛蓄電池100の下部において、この脱落した正極用活物質111bを受け止めることができるようにトラップ178が設けられる。
【0088】
すなわち上述したように、活物質フレーム170とセパレータ113とを接着する接着剤150が充填される接着溝174c及び接着溝177が設けられる等、活物質フレーム170においては、活物質が落下、脱落することを防止する機構が設けられている。但し、当該機構のみならず、さらにトラップ178を設けることによって、たとえ正極用活物質111bが脱落して落下してもより確実に受け止め、短絡を防止しようとするものである。そしてこのように何重もの落下防止用の機構を設けることによって、双極型鉛蓄電池100の信頼性をより向上させることができる。
【0089】
当該トラップ178は、正極用の活物質フレーム170A及び負極用の活物質フレーム170Bのいずれにも設けても良いが、少なくとも正極用の活物質フレーム170Aには設けることが好ましい。それは、正極用活物質は、電池反応により軟化及び脱落が発生しやすいため、トラップを設けることで正極用活物質111bが負極用活物質112bに接触することを遅らせることにより効果的だからである。
【0090】
なお、本発明の実施の形態におけるトラップ178は、上述したようにY方向の幅いっぱいに設けられているが、少なくともこのように設けられていれば良いのであって、例えば、トラップ178の両端部が活物質保持部173とフレーム部175との境界直下となるような幅となるように設けられていても良い。
【0091】
また、図2図3に示す活物質フレーム170においては、トラップ178は、上述した通り、X方向の下端に設けられている。但し、トラップ178が設けられる位置はこの位置に限られず、双極型鉛蓄電池100の設置状態を考慮して、活物質フレーム170の4辺のいずれに設けられていても良く、フレーム部175の周縁部に設けられていれば良い。
【0092】
さらにフレーム部175の領域には、活物質フレーム170と基板121との嵌め合わせる際に用いる第1の嵌合部179が設けられている。本発明の実施の形態における活物質フレーム170においては、第1の嵌合部179は、活物質フレーム170の四隅と各辺に2つずつ設けられている。
【0093】
第1の嵌合部179は、活物質フレーム170を貫通するように設けられている。すなわち後述するが、基板121に設けられている第2の嵌合部124は凸状に形成されており、当該第2の嵌合部124を第1の嵌合部179に嵌め合わせることで、簡単、確実に活物質フレーム170と基板121とを嵌め合わせることができるようにされている。
【0094】
このように第1の嵌合部179は、活物質フレーム170を貫通するように設けられているが、本発明の実施の形態における第1の嵌合部179の形状は単なる貫通孔ではない。すなわち、後述するように基板121と活物質フレーム170とを接合する場合、第1の嵌合部179に嵌め合わされた基板121に設けられる第2の嵌合部124の凸部に熱を加えながら潰すことになるが、このとき、溶融した当該凸部を収容する空間が必要となる。
【0095】
つまり、つぶれた第2の嵌合部124の凸部が活物質フレーム170の上に広がってしまうと、第1の嵌合部179の周囲において溶融した凸部の動きを管理することができず、思わぬ弊害を生ずることになりかねない。また、第1の嵌合部179の上にはセパレータ113が載置されることになるが、活物質フレーム170の表面171に凹凸が生じてしまうと載置されたセパレータ113が浮いてしまう。
【0096】
そこで、第1の嵌合部179は、活物質フレーム170を貫通するように設けられるとともに、表面171側の開口と裏面172の開口との大きさが異なるように形成される。すなわち、例えば、裏面172の開口部の大きさは、少なくとも基板121の第2の嵌合部124が通る大きさに形成され、裏面172から表面171に向けて徐々に開口が大きくなるように貫通穴がテーパ状に形成される。また、溶融された凸部が収容できる空間を確保できるのであれば、第1の嵌合部179の形状としてテーパ状の形状以外の形状も採用することができる。
【0097】
なお、第1の嵌合部179の配置位置や個数については、任意に設定することができる。また、正極用活物質111bを保持する正極用の活物質フレーム170Aと負極用活物質112bを保持する負極用の活物質フレーム170Bとで、第1の嵌合部179が設けられる位置を変更することもできる。このように正極側と負極側とで第1の嵌合部179の配置位置を異ならせておくことで、基板121に取り付ける活物質フレーム170を取り違えるといったミスを防止することができる。
【0098】
また、フレーム部175におけるセパレータ保持部材176の配置位置と第1の嵌合部179の配置位置との関係を見てみると、例えば、図3図4に明らかなように、セパレータ保持部材176の方がよりフレーム部175の内形線の側に寄って、一方第1の嵌合部179の方は外形線の側に寄っている。
【0099】
これは、第1の嵌合部179がセパレータ保持部材176とX方向、或いは、Y方向において同じ線上、或いは、より内形線側に寄って配置されると、活物質フレーム170と基板121とを嵌め合わせる際に、表面171上に載置されたセパレータ113に接触することになり、嵌め合わせの処理を困難にするからである。
【0100】
そこで、本発明の実施の形態における活物質フレーム170においては、第1の嵌合部179の配置位置をセパレータ保持部材176よりもより外縁とすることで、活物質フレーム170と基板121との接合の前にセパレータ113が表面171に配置されたとしてもセパレータ113に干渉されることなく接合することができる。
【0101】
このように本発明の実施の形態においては、セパレータ保持部材176と第1の嵌合部179の位置を上述したような位置に配置した。しかしながら、例えば、載置されたセパレータ113と第1の嵌合部179とが被ったとしても、両者が重複する位置においてセパレータ113が切り欠かれていたり、或いは、活物質フレーム170と基板121とを先に嵌め合わせた後にセパレータ113を載置する等、セパレータ113の形状や製造工程を工夫して活物質フレーム170と基板121との嵌め合わせの処理に支障を来さないのであれば、セパレータ保持部材176と第1の嵌合部179の位置は任意に設定することができる。
【0102】
次に図6は、本発明の実施の形態に係る活物質フレーム170に正極用活物質111bや負極用活物質112bを充填した状態を示す斜視図である。正極用活物質111bや負極用活物質112bは活物質保持部173に充填され、その厚みは、上述したようにフレーム部175の厚みと略同じである。
【0103】
また、図6における活物質フレーム170においては、骨組み173aは充填された活物質の内部に埋まってしまっており、見えていない。さらに、上述したように、正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bは、活物質保持部173の領域において面一となるように充填されている。
【0104】
そしてこのように正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bが充填された活物質フレーム170の表面171に、セパレータ113が載置される。セパレータ113と活物質フレーム170との接着に当たっては、上述した接着溝174c、接着溝177に充填された接着剤150を介して行われる。図7は、本発明の実施の形態に係る活物質フレーム170にセパレータ113を載置した状態を示す斜視図である。
【0105】
セパレータ113は、活物質保持部173の領域のみならずフレーム部175の一部領域までを覆う一方、セパレータ113が第1の嵌合部179を覆うことはない。そして、セパレータ113の4辺は、セパレータ保持部材176にて保持される。
【0106】
このように活物質が充填される活物質保持部173の領域よりも大きな領域を覆うようにセパレータ113が載置される。従って、正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bは、セパレータ113によって、正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aの側の全面に向けて力を掛けることができることになるため、正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bは脱落、落下しにくくなる。
【0107】
そして、上述したように、セパレータ113は、セパレータ保持部材176にてその4辺が保持されるとともに、活物質フレーム170の接続部174bにおいて固定される。従って、セパレータ113は、活物質フレーム170により密着した形で載置されることになるため、正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bの脱落、落下を防止することができる。
【0108】
さらに、上述したバイポーラプレート120の基本構成に追加して、本発明の実施の形態におけるバイポーラプレート120の特徴について説明する。図8は、本発明の実施の形態に係るバイポーラプレート120の構造を示す斜視図である。なお、図8に示すバイポーラプレート120については、上述した貫通穴121aについては、その図示を省略している。
【0109】
図8におけるバイポーラプレート120の基本的な構造は上述した通りであるが、本発明の実施の形態におけるバイポーラプレート120は、さらに基板121の周縁部であって、枠体122の近傍に、活物質フレーム170と嵌め合わせるための第2の嵌合部124が設けられている。
【0110】
図8に示すバイポーラプレート120は、正極用鉛箔111aが配置される基板121の第1の凹部121bが示されていることから、嵌め合わせの対象となる活物質フレーム170は正極用の活物質フレーム170Aである。従って、バイポーラプレート120に設けられる第2の嵌合部124の配置位置は、正極用の活物質フレーム170Aに設けられる第1の嵌合部179の配置位置と同じ位置である。
【0111】
第2の嵌合部124は、凸状に形成されている。そのため、バイポーラプレート120と活物質フレーム170とを嵌め合わせる場合には、フレーム部175を貫通するように形成される正極用の活物質フレーム170Aの第1の嵌合部179に第2の嵌合部124を通すように嵌め合わせる。
【0112】
さらに、単に両者を嵌め合わせるだけではなく、例えば第2の嵌合部124の凸部を熱等によって溶融させながら正極用の活物質フレーム170A側に押す(かしめる)ことによって凸部を潰し、第1の嵌合部179に埋没させる。上述したように、第1の嵌合部179は第2の嵌合部124の凸部を貫通させるとともに、潰れた当該凸部を収容できるように形成されている。そのため、潰された第2の嵌合部124の凸部を第1の嵌合部179に確実に埋没させることができる。
【0113】
また、これまでは活物質フレーム170は、バイポーラプレート120と接合することを前提に説明してきたが、活物質フレーム170は、後述する第1のエンドプレート130及び第2のエンドプレート140と接合することも可能である。
【0114】
すなわち後述するように、本発明の実施の形態においては、第1のエンドプレート130、第2のエンドプレート140に設けられる正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aと対向する位置に配置される正極用活物質111b及び負極用活物質112bは、例えば、図1に示すように、正極用の活物質フレーム170A、負極用の活物質フレーム170Bに充填されている。
【0115】
図1に戻り、第1のエンドプレート130は、セル部材110の正極側を覆う基板131と、セル部材110の側面を囲う枠体132と、を含む空間形成部材である。また、基板131の一面(最も正極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部133を備える。
【0116】
基板131の平面形状は長方形であり、基板131の4つの端面が枠体132で覆われ、基板131と枠体132と柱部133が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板131の一面から突出する柱部133の数は1つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部133と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0117】
Z方向において、枠体132の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、柱部133の突出端面間の寸法は枠体132の寸法と同じである。そして、第1のエンドプレート130は、最も外側(正極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体132および柱部133を接触させて積層される。
【0118】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第1のエンドプレート130の基板131との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第1のエンドプレート130の柱部133とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0119】
最も外側(正極側)に配置されるセル部材110の正極用鉛箔111aおよびセパレータ113には、柱部133を貫通させる貫通穴111c,113aがそれぞれ形成されている。
【0120】
第1のエンドプレート130の基板131の一面に凹部131bが形成されている。凹部131bのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。第1のエンドプレート130の基板131の凹部131bに、セル部材110の正極用鉛箔111aが上述したように接着剤150を介して配置されている。
【0121】
また、当該正極用鉛箔111aのZ方向に重ねて、上述した正極用活物質111bが充填された正極用の活物質フレーム170Aが積層され、さらに、その表面171にはセパレータ113が載置される。正極用の活物質フレーム170Aのフレーム部175は、基板131の一面側に固定され、正極用鉛箔111aの外縁部及び凹部131bの周縁部との境界部において、フレーム部175で覆われている。
【0122】
また、第1のエンドプレート130は、凹部131b内の正極用鉛箔111aと電気的に接続された、図1では図示されていない正極端子を備えている。
【0123】
第2のエンドプレート140は、セル部材110の負極側を覆う基板141と、セル部材110の側面を囲う枠体142と、を含む空間形成部材である。また、基板141の一面(最も負極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部143を備える。
【0124】
基板141の平面形状は長方形であり、基板141の4つの端面が枠体142で覆われ、基板141と枠体142と柱部143が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板141の一面から突出する柱部143の数は一つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部143と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0125】
Z方向において、枠体142の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、二つの柱部143の突出端面間の寸法は枠体142の寸法と同じである。そして、第2のエンドプレート140は、最も外側(負極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体142および柱部143を接触させて積層される。
【0126】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第2のエンドプレート140の基板141との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第2のエンドプレート140の柱部143とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0127】
最も外側(負極側)に配置されるセル部材110の負極用鉛箔112aおよびセパレータ113には、柱部143を貫通させる貫通穴112c,113aがそれぞれ形成されている。
【0128】
第2のエンドプレート140の基板141の一面に凹部141bが形成されている。凹部141bのX方向およびY方向の寸法は、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。第2のエンドプレート140の基板141の凹部141bに、セル部材110の負極用鉛箔112aが接着剤150を介して配置されている。
【0129】
また、当該負極用鉛箔112aのZ方向に重ねて、上述した負極用活物質112bが充填された負極用の活物質フレーム170Bが積層され、さらに、その表面171にはセパレータ113が載置される。負極用の活物質フレーム170Bのフレーム部175は、基板141の一面側に固定され、負極用鉛箔112aの外縁部及び凹部141bの周縁部との境界部において、フレーム部175で覆われている。
【0130】
また、第2のエンドプレート140は、凹部141b内の負極用鉛箔112aと電気的に接続された、図1では図示されていない負極端子を備えている。
【0131】
ここで、隣接するバイポーラプレート120同士、第1のエンドプレート130と隣接するバイポーラプレート120、或いは、第2のエンドプレート140と隣接するバイポーラプレート120との接合の際には、例えば、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着といった、各種溶着の方法を採用することができる。このうち振動溶着は、接合の際に接合の対象となる面を加圧しながら振動させることで溶着するものであり、溶着のサイクルが早く、再現性も良い。そのためより好適には、振動溶着が用いられる。
【0132】
なお、溶着の対象としては、互いに隣接するバイポーラプレート120、第1のエンドプレート130、第2のエンドプレート140において対向する位置に配置される枠体のみならず、各柱部も含まれる。
【0133】
なお図面には示されていないが、枠体が有する4つの端面のうちの1つの端面には、空間Cに電解液を入れるための注入穴を形成する切り欠き部が形成されている。この切り欠き部は、例えば図面右側に存在する枠体の側面に形成されている場合、枠体をX方向に貫通し、枠体のZ方向の両端面から半円弧状に凹む形状を有する。そして、この切り欠き部は上述の接合構造に関与せず、振動溶接により上述の接合構造が形成される際に、対向する切り欠き部によって円形の注入穴が形成される。
【0134】
〔製造方法〕
本発明の実施の形態における双極型鉛蓄電池100は、例えば、以下に説明する各工程を有する方法で製造することができる。そこで図9及び図10に示すフローチャートや活物質フレーム170、バイポーラプレート120等の図面を適宜用いつつ説明する。図9及び図10は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の製造の流れを示すフローチャートである。
【0135】
<正負極用鉛箔付きバイポーラプレートの作製工程>
先ず、バイポーラプレート120の基板121を、第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置き、第1の凹部121bに接着剤150を塗布し、第1の凹部121b内に正極用鉛箔111aを入れる。その際に、正極用鉛箔111aの貫通穴111cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。この接着剤150を硬化させて、基板121の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける(ST1)。
【0136】
そして、基板121の第2の凹部121c側を上に向けて作業台に置き、貫通穴121aに導通体160を挿入する(ST2)。また、第2の凹部121cに接着剤150を塗布し、第2の凹部121c内に負極用鉛箔112aを入れる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。この接着剤150を硬化させて、基板121の他方の面に負極用鉛箔112aを貼り付ける(ST3)。
【0137】
この状態で抵抗溶接を行って、正極用鉛箔111a、導通体160、及び、負極用鉛箔112aを接合する(ST4)。これにより、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を得る。
【0138】
なお、ここで用いられるバイポーラプレート120は、図8を用いて説明した、第2の嵌合部124が設けられているバイポーラプレート120である。
【0139】
<活物質フレームの作製工程>
次に、活物質フレーム170について、正極用と負極用の2種類の活物質フレーム170を用意する。そして、正極用活物質111bを正極用の活物質フレーム170Aに、また、負極用活物質112bを負極用の活物質フレーム170Bに充填する(ST5)。ここで正極用、負極用、それぞれの活物質フレーム170を用意するのは、上述したように、正極用の活物質フレーム170Aと負極用の活物質フレーム170Bとでは、第1の嵌合部179が設けられている位置が異なるからである。
【0140】
この時点で、正極用鉛箔111aが一方の面に、負極用鉛箔112aが他方の面に設けられたバイポーラプレート120と、正極用の活物質フレーム170A、負極用の活物質フレーム170Bが出来上がる。
【0141】
<アッセンブリの作製工程>
そこで、バイポーラプレート120の正極用鉛箔111aが設けられている一方の面に対して正極用の活物質フレーム170Aを、負極用鉛箔112aが設けられている他方の面に対して負極用の活物質フレーム170Bを取り付ける(ST6)。バイポーラプレート120に活物質フレーム170と組み合わせる場合には、活物質フレーム170の第1の嵌合部179をバイポーラプレート120の第2の嵌合部124に嵌め合わせる。
【0142】
両者を嵌め合わせると、第2の嵌合部124の凸部が第1の嵌合部179を貫通して突き出る形になる。そこで、第1の嵌合部179から突き出た第2の嵌合部124の凸部を加熱、溶融して潰し、バイポーラプレート120にそれぞれの活物質フレーム170を固定する。
【0143】
また、活物質フレーム170のフレーム部175は、接着剤150を介して正極用鉛箔111aの外縁部及び第1の凹部121bの周縁部にわたって、負極用鉛箔112aの外縁部及び第2の凹部121cの周縁部にわたって接合される。
【0144】
このようにバイポーラプレート120と一体になった正極用の活物質フレーム170Aと、負極用の活物質フレーム170Bのそれぞれの表面171上に、各々セパレータ113を取り付ける(ST7)。ここまででバイポーラプレート120の一方の面、他方の面の両面に鉛箔、活物質層、及び、セパレータが備えられた1個のアッセンブリが完成する。そして、これらアッセンブリを必要数作製する(ST8)。
【0145】
図11は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の製造工程における、バイポーラプレート120及び活物質フレーム170の状態を示す斜視図である。図11においては、バイポーラプレート120が1枚、活物質フレーム170が2枚の合計3枚が示されている。そして、真ん中にバイポーラプレート120が示され、手前に正極用の活物質フレーム170A、バイポーラプレート120を挟んで奥に負極用の活物質フレーム170Bが示されている。
【0146】
上述したように、バイポーラプレート120の一方の面には正極用鉛箔111aが、他方の面には負極用鉛箔112aが設けられている。図11においては、バイポーラプレート120の一方の面に設けられた正極用鉛箔111aが見えている一方、他方の面に設けられた負極用鉛箔112aは見えない。
【0147】
手前に示される正極用の活物質フレーム170Aの活物質保持部173の領域には、正極用活物質111bが充填されている。そして、当該正極用の活物質フレーム170Aは表面171が示されているので、フレーム部175の領域にセパレータ保持部材176や接着溝177、トラップ178、第1の嵌合部179も現れている。
【0148】
一方、負極用の活物質フレーム170Bにも、活物質保持部173の領域に負極用活物質112bが充填されている。但し図11においては、負極用の活物質フレーム170Bについては、裏面172が見えており、セパレータ保持部材176等については描画されていない。また、フレーム部175の領域には、第1の嵌合部179が設けられているが、上述したように、正極用の活物質フレーム170Aの第1の嵌合部179とは、配置位置が異なることがわかる。
【0149】
そして、図11に示すバイポーラプレート120、正極用の活物質フレーム170A及び負極用の活物質フレーム170Bをそれぞれ組み合わせる。すなわち、バイポーラプレート120に、正極用鉛箔111aと対向するように正極用の活物質フレーム170Aを、負極用鉛箔112aと対向するように負極用の活物質フレーム170Bを取り付ける。
【0150】
図12は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の製造工程において、バイポーラプレート120に活物質フレーム170が嵌め合わされた状態を示す斜視図である。この状態が、上述したステップST6で説明した状態である。図12では、正極用の活物質フレーム170Aが見えており、第1の嵌合部179とバイポーラプレート120の第2の嵌合部124とが嵌め合わされている。
【0151】
そして図12においては、第1の嵌合部179と第2の嵌合部124とは嵌め合わされて、さらに第2の嵌合部124の凸部が加熱、溶融されて第1の嵌合部179と接合されている状態が示されている。図12に示すように、溶融した第2の嵌合部124の凸部は第1の嵌合部179に収容されて正極用の活物質フレーム170Aのフレーム部175と面一となっている。
【0152】
さらに、図12では負極用の活物質フレーム170Bについては見えていないが、こちらについても同様に第1の嵌合部179が第2の嵌合部124と嵌め合わされて、バイポーラプレート120に負極用の活物質フレーム170Bが接合されている。
【0153】
そして、この状態で正極用の活物質フレーム170A及び負極用の活物質フレーム170Bの表面171に、それぞれセパレータ113が取り付けられる。この状態が、上述したステップST7で説明した状態である。図13は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の製造工程において、さらに活物質フレーム170にセパレータ113が嵌め合わされた状態を示す斜視図である。
【0154】
図13においても正極用の活物質フレーム170Aが見えており、セパレータ113が正極用活物質111bに接するように表面171に載置される。この際、セパレータ113は、接続部174bの接着溝174c及び接着溝177に充填される接着剤150を介して正極用の活物質フレーム170Aに接合される。また、セパレータ113の4辺は、フレーム部175に設けられるセパレータ保持部材176に接し、正極用の活物質フレーム170Aに保持される。
【0155】
なお、負極用の活物質フレーム170Bについては、図13では見えていないが、こちらについても同様にセパレータ113が表面171に載置され、接着溝174c及び接着溝177の接着剤150を介して負極用の活物質フレーム170Bに接合される。
【0156】
図14は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100において、バイポーラプレート120に活物質フレーム170が嵌め合わされた状態における柱部123付近を示す拡大断面斜視図である。なお、各部の寸法や縮尺が他の図面と若干異なっている部分もあるが、これは説明の都合上このように描画しているだけである。
【0157】
図14は、正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aが設けられたバイポーラプレート120に、正極用の活物質フレーム170A、負極用の活物質フレーム170Bを嵌め合わせ、さらにそれぞれの活物質フレーム170の表面にセパレータ113を取り付けたアッセンブリを2つ接合した状態を示している。さらに、接合された2枚のアッセンブリをX方向に切断し、柱部123近傍を拡大して示している。そして右側のバイポーラプレート120については、負極側が見えており、セパレータ113が載置された状態である。
【0158】
セパレータ113は、上述したように負極用の活物質フレーム170Bの表面171上に載置されているので、図14においては、セパレータ113の直下に負極用の活物質フレーム170が示されている。
【0159】
そのため、本来ならば、セパレータ113の直下にある負極用の活物質フレーム170Bの、例えば貫通部174は見えないが、図14では必要部分を破線で示し、柱部123近傍における構造が分かるようにしている。また以下においては、負極側を例に挙げて説明する。
【0160】
柱部123には、セパレータ113の貫通穴113a及び負極用の活物質フレーム170Bの貫通部174が嵌め込まれている。上述したように、貫通部174には、柱部123に嵌め込まれている貫通穴174aの周囲にセパレータ113との接続部174bが設けられている。そして、当該接続部174bには、接着剤150が充填される接着溝174cが形成される。
【0161】
負極用の活物質フレーム170Bに積層されるセパレータ113は、接続部174bにおいて負極用の活物質フレーム170Bと接着されるとともに、フレーム部175に設けられるセパレータ保持部材176にて保持される。そのため、負極用活物質112bは接するセパレータ113によって、いわば蓋がされた状態となる。
【0162】
このような構造を採用することから、充填された負極用活物質112bが活物質保持部173から脱落することを困難にし、たとえ負極用活物質112bが脱落したとしても、セパレータ113が存在することによって、落下することを低減できる。
【0163】
また、セパレータ113は負極用の活物質フレーム170Bに上述したように固定されることになるため、セパレータ113を基板121(柱部123)に対してより精度良く位置決めを行うことができる。
【0164】
そのため、柱部123とセパレータ113、負極用の活物質フレーム170Bとの間にできる隙間を可能な限り小さくすることができ、柱部123と貫通穴113a、貫通部174との間に生ずる隙間を介して正極側と負極側の活物質が接触することによる短絡を防止することができる。
【0165】
さらに、上述したように、セパレータ113は貫通穴113a近傍において、負極用の活物質フレーム170Bの接続部174bと接着剤150を介して接合される。そのため、例えば、X方向上部から下部に向けてセパレータ113と接する負極用活物質112bが落下したとしても、少なくとも接着溝174cに充填される接着剤150の部分においてせき止められることになる。この点からも、負極用活物質112bの脱落、落下を防止することができる。
【0166】
なお、負極用の活物質フレーム170Bの基板121側には負極用活物質112bと接するように負極用鉛箔112aが設けられている。そして、負極用鉛箔112aの柱部123を貫通する貫通穴112cと柱部123との間にも若干隙間が存在しうるが、この隙間は負極用鉛箔112aを基板121の他方の面に設ける際の接着剤150が充填されている。
【0167】
従って、負極用活物質112bが負極用鉛箔112a側から柱部123に向けて、例えば、X方向上部から下部に向けて脱落、落下したとしても、接着剤150の部分においてせき止められるため、脱落、落下した負極用活物質112bによる柱部123近傍における短絡を防止することができる。
【0168】
なお、基板121を挟んで反対側の基板121の一方の面には、正極用鉛箔111aが設けられており、正極用鉛箔111aに接して正極用の活物質フレーム170Aが積層され、正極用の活物質フレーム170Aにはセパレータ113が載置されている。従って、負極用の活物質フレーム170B等を用いて説明した通り、同様に、正極用活物質111bの脱落、落下に基づく負極用活物質112bとの接触、短絡を防止することができる。
【0169】
図15及び図16は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100において、バイポーラプレート120に活物質フレーム170が嵌め合わされた状態における枠体122付近を示す拡大断面斜視図である。図14と同様、2つのアッセンブリが接合されている状態であり、右側のバイポーラプレート120については、負極側が見えており、セパレータ113が載置された状態である。
【0170】
図15及び図16に示す負極用の活物質フレーム170Bの角には、第1の嵌合部179が設けられている。図15に示すように、第1の嵌合部179は裏面172側よりも表面171側の開口が大きくなるように形成されている。ここでは表面171側から裏面172側に向けて、その途中までテーパ状に形成されている。
【0171】
そしてこのような第1の嵌合部179に、バイポーラプレート120に設けられる第2の嵌合部124の凸部が挿入されることで、基板121に負極用の活物質フレーム170Bが嵌め合わされている。
【0172】
図15では、このように第1の嵌合部179が第2の嵌合部124に嵌め合わされた状態であるが、図16では、第2の嵌合部124の凸部が潰れて第1の嵌合部179のテーパ状に形成された窪みに埋め込まれている。
【0173】
すなわち、基板121に負極用の活物質フレーム170Bを嵌め合わせた後、第2の嵌合部124の凸部に熱を加えて溶融し、かしめる。溶融した第2の嵌合部124の凸部は、第1の嵌合部179の窪みに収容され、負極用の活物質フレーム170Bのセパレータ113と対向する面において略平坦となる。
【0174】
このように負極用の活物質フレーム170Bにおけるセパレータ113と対向する面を平坦にしておくことによって、例えばセパレータ113が第1の嵌合部179及び第2の嵌合部124の部分に重なったとしても、セパレータ113が浮き上がることを防止することができる。
【0175】
そして、セパレータ113が浮き上がることなく負極用の活物質フレーム170Bと接触することによって、より良く負極用活物質112bを保持することができる。このことは、負極用活物質112bの脱落、落下を防止するとともに、たとえ落下しても正極用活物質111bとの接触による短絡を防止することにつながる。
【0176】
一方、図15、或いは、図16に示されているように、正極用の活物質フレーム170Aには、トラップ178が設けられている。従って、たとえ正極用の活物質フレーム170Aとセパレータ113とを接着する接着剤150が充填される接着溝177の部分において正極用活物質層111bをせき止めることができず、結果として正極用活物質111bがセパレータ113との間でX方向に脱落、落下したとしても、トラップ178によって受け止められる。
【0177】
そのため、トラップ178が設けられておらず、直接枠体122に接着溝177の部分でせき止めていた正極用活物質111bが落下していきなり負極用活物質112bと接触するという事態が生ずることを回避することができる。また、トラップ178によって正極用活物質111bのこれ以上の落下を防止する、或いは、さらなる落下を遅らせることができれば、短絡が生ずることを防止、或いは、遅らせることができる。
【0178】
<第1のエンドプレートの作製工程>
図10のフローチャートに戻り、第1のエンドプレート130の基板131を、凹部131b側を上に向けて作業台に置き、凹部131bに接着剤150を塗布し、凹部131b内に正極用鉛箔111aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、正極用鉛箔111aの貫通穴111cにエンドプレート130の柱部133を通す。この接着剤150を硬化させて、基板131の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける(図10のST9)。
【0179】
そして、別途用意した、正極用活物質111bが充填された正極用の活物質フレーム170Aを第1のエンドプレート130に取り付ける(ST10)。そして当該正極用の活物質フレーム170Aの表面171にセパレータ113を取り付ける(ST11)。これで第1のエンドプレート130の作製工程は終了である。
【0180】
<第2のエンドプレートの作製工程>
第2のエンドプレート140の基板141を、凹部141b側を上に向けて作業台に置き、凹部141bに接着剤150を塗布し、凹部141b内に負極用鉛箔112aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cに第2のエンドプレート140の柱部143を通す。この接着剤150を硬化させて、基板141の一面に負極用鉛箔112aが貼り付けられた第2のエンドプレート140を得る(ST12)。
【0181】
そして、別途用意した、負極用活物質112bが充填された負極用の活物質フレーム170Bを第2のエンドプレート140に取り付ける(ST13)。そして当該負極用の活物質フレーム170Bの表面171にセパレータ113を取り付ける(ST14)。これで第2のエンドプレート140の作製工程は終了である。
【0182】
<プレート同士を積層して接合する工程>
先ず、正極用鉛箔111a、正極用の活物質フレーム170A、及び、セパレータ113が固定された第1のエンドプレート130を、セパレータ113を上に向けて作業台に置く。そして、このセパレータ113の上に、セパレータ113、負極用の活物質フレーム170B、負極用鉛箔112a、バイポーラプレート120、正極用鉛箔111a、正極用の活物質フレーム170A、セパレータ113が順に積層されて1つのアセンブリになったものを載置し、接合する。
【0183】
さらに、上記アセンブリを必要な数だけ積層した後に、当該アセンブリの露出しているセパレータ113の上に、セパレータ113、負極用の活物質フレーム170B、及び、負極用鉛箔112aが固定された第2のエンドプレート140を載置し、接合する(ST15)。
【0184】
なお、各バイポーラプレート120間、第1のエンドプレート130とバイポーラプレート120、及び、第2のエンドプレート140とバイポーラプレート120との接合に当たっては、基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行うことで接合する。
【0185】
<注液および化成工程>
上述の各プレート同士の積層、接合工程において、枠体の対向面同士の振動溶接による接合構造が形成され、対向する枠体の切り欠き部によって、双極型鉛蓄電池100の例えばX方向の一端面の各空間Cの位置に、円形の注入穴が形成されている。この注入穴から各空間Cの内部に電解液を所定量注液し、セパレータ113に電解液を含浸させる。その上で所定の条件で化成することで、双極型鉛蓄電池100を作製できる(ST16)。
【0186】
以上説明したように、正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aに接する正極用活物質111b、或いは、負極用活物質112bは、いずれも活物質フレーム170に充填され、一体化されている。活物質フレーム170の活物質保持部173は、骨組み173aを備えていることから、活物質を確実に保持することができる。
【0187】
また、活物質フレーム170の表面171には、セパレータ113が載置され、セパレータ113は、柱部123を貫通させるために設けられる貫通部174及びフレーム部175において接着剤150を介して接合されるとともに、セパレータ保持部材176によって保持される。
【0188】
そのため、活物質フレーム170に保持された正極用活物質111b及び負極用活物質112bは、いずれもセパレータ113によって蓋をされたような状態になるため、正極用活物質111b及び負極用活物質112bが活物質フレーム170から脱落、落下することを回避、或いは、減少させることができる。また、たとえ落下したとしても、トラップ178によって落下した正極用活物質111bを受け止めることができ、さらなる信頼性の向上を図ることができる。
【0189】
また、活物質フレーム170は、例えば、第1の嵌合部179の配置位置等、正極用の活物質フレーム170Aと負極用の活物質フレーム170Bとでその構造を変えている。そのため、バイポーラプレート120に嵌め合わせる場合に正極、負極を間違えることがなく、製造時における正極、負極の確認に要する時間を短縮することができる。このことは、双極型鉛蓄電池100全体の製造時間の短縮を図ることにつながる。
【0190】
さらに、セパレータ保持部材176によってセパレータ113が保持されることによって、1つのセル部材110を構成する正極用の活物質フレーム170Aの表面171に載置されるセパレータ113と、負極用の活物質フレーム170Bの表面171に載置されるセパレータ113とは、セル部材110内においてその位置が揃った状態で配置される。
【0191】
このように隣接するセパレータ113の位置が、図1に示すように揃っていることで、セパレータ113と枠体122との間にあるまとまった空間を確保することができる。すなわち、電解液を注液する際に用いる注液口の近傍に空間が確保されることで、よりスムーズな注液を実施することができる。
【0192】
本発明の実施の形態における双極型蓄電池はこのような構造を採用していることから、活物質層が脱落することを可能な限り回避することで、正極側と負極側とが短絡することによる電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図るとともに、各部の配置位置の精度を高めつつ製造時における手間を省き、製造時間の短縮を図ることができる双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法を提供することができる。
【0193】
なお、上述したように、本発明の実施の形態においては双極型鉛蓄電池を例に挙げて説明した。但し、集電体に鉛ではなく他の金属を用いるような他の蓄電池においても上記説明内容が当てはまる場合には、当然その適用を排除するものではない。
【0194】
また、本発明の実施の形態においては、基板121に柱部123が設けられていることから、各構成要素にも当該柱部123を通すための貫通穴が設けられていることを前提に説明した。但し、柱部123については基板121に設けられていなくても上述した説明内容は当てはまる。
【0195】
さらに、本発明の実施の形態における双極型鉛蓄電池100の製造方法に関して、基板121に活物質フレーム170を嵌め合わせた後に正極用の活物質フレーム170Aの表面171及び負極用の活物質フレーム170Bの表面171のそれぞれにセパレータ113を設ける流れを説明した。但し、このような流れではなく、正極用の活物質フレーム170A及び負極用の活物質フレーム170Bのそれぞれの表面171にセパレータ113を取り付けた後に、基板121と嵌め合わせる流れを採用することもできる。
【0196】
また、これまでは活物質フレーム170に設けられた第1の嵌合部179は活物質フレーム170を貫通するように設けられ、基板121に設けられた第2の嵌合部124は凸状に設けられていることを前提に説明した。しかしながら、第1の嵌合部179及び第2の嵌合部124の形状はこのような形状に限定されず、例えば、第1の嵌合部179が凸状に形成され、第2の嵌合部124が基板121を貫通するように形成されていても良い。
【0197】
なお、これまでの説明においては、適宜正極用の活物質フレーム170A及び負極用の活物質フレーム170Bに言及してきた。但しこのことは、双極型蓄電池において必ずしも正極用の活物質フレーム170A及び負極用の活物質フレーム170Bの両者を備えていなければならないことを意味するものではない。
【0198】
すなわち、双極型蓄電池には、正極用の活物質フレーム170Aと負極用の活物質フレーム170Bの、両方、或いは、いずれか一方が備えられていれば良い。
【符号の説明】
【0199】
100・・・双極型鉛蓄電池
110・・・セル部材
111・・・正極
112・・・負極
111a・・・正極用鉛箔
112a・・・負極用鉛箔
111b・・・正極用活物質層
112b・・・負極用活物質層
113・・・セパレータ
120・・・バイプレート
121・・・バイプレートの基板
121a・・・基板の貫通穴
122・・・バイプレートの枠体
123・・・柱部
124・・・第2の嵌合部
130・・・第1のエンドプレート
131・・・第1のエンドプレートの基板
132・・・第1のエンドプレートの枠体
140・・・第2のエンドプレート
141・・・第2のエンドプレートの基板
142・・・第2のエンドプレートの枠体
150・・・接着剤
160・・・導通体
170・・・活物質フレーム
171・・・表面
172・・・裏面
173・・・活物質保持部
173a・・・骨組み
174・・・貫通部
174a・・・貫通穴
174b・・・接続部
174c・・・接着溝
175・・・フレーム部
176・・・セパレータ保持部材
177・・・接着溝
178・・・トラップ
179・・・第1の嵌合部
C・・・セル部材を収容する空間

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16