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特開2023-71069光干渉光学系および光干渉測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071069
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】光干渉光学系および光干渉測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 9/02 20220101AFI20230515BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
G01B9/02
G01B11/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183656
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】514277260
【氏名又は名称】シンクランド株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】志賀 代康
(72)【発明者】
【氏名】細田 真希
(72)【発明者】
【氏名】塩田 達俊
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
【Fターム(参考)】
2F064AA09
2F064EE04
2F064FF01
2F064GG23
2F064GG49
2F064HH08
2F064JJ01
2F065AA04
2F065AA53
2F065DD12
2F065FF52
2F065GG04
2F065HH13
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065LL04
2F065LL30
2F065LL37
2F065LL42
2F065UU07
(57)【要約】
【課題】マッハツェンダー光学系を用いた光干渉測定システムにおいて、測定光が参照光学系に紛れ込むことに起因する不要光を除去する。
【解決手段】測定対象物OBの表面の凹凸を測定するための光干渉測定システム1は、光源SC、光干渉光学系10、グレーティング20、カメラ30、および処理装置40を有する。光干渉光学系10には、測定光L1以外の第3の光である迷光がグレーティング20に導かれるのを阻止するためのスペイシャルフィルタ180が、リレーレンズ150とリレーレンズ160との間に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光が入射する第1のビームスプリッタと、
前記第1のビームスプリッタから分割された第1の光である測定光を測定対象物へ集光させるレンズと、
前記第1のビームスプリッタから分割された、前記第1の光以外の第2の光である参照光をグレーティングまで導く参照光学系と、
前記第1のビームスプリッタと前記レンズとの間に設けられ、前記第1の光を前記レンズへ導くとともに、前記測定対象物からの第1の戻り光を受光手段に導く一方、前記グレーティングからの第2の戻り光を前記受光手段に導く、第2のビームスプリッタと、
前記第2のビームスプリッタにて分割された、前記第1の光以外の第3の光である迷光が前記グレーティングに導かれるのを阻止するスペイシャルフィルタと、
を有する光干渉光学系。
【請求項2】
前記グレーティングと前記受光手段との間に第1のレンズおよび第2のレンズが設けられ、
前記スペイシャルフィルタは、前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間であって、前記グレーティングに対して光学的にフーリエ変換の関係にある位置に配置される、
請求項1に記載の光干渉光学系。
【請求項3】
前記グレーティングと前記受光手段との間に第1のレンズおよび第2のレンズが設けられ、
前記スペイシャルフィルタは、前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間であって、前記受光手段と光学的に共役の関係にある位置に配置される、
請求項1に記載の光干渉光学系。
【請求項4】
前記スペイシャルフィルタは、前記迷光が前記グレーティングに導かれるのを阻止するために光線を選択的に設定可能な液晶素子である
請求項1~3のいずれか一項に記載の光干渉光学系。
【請求項5】
前記スペイシャルフィルタは、円環状の開口部を有するオブストラクションターゲットである
請求項1~3のいずれか一項に記載の光干渉光学系。
【請求項6】
前記第1のビームスプリッタと前記第2のビームスプリッタは、偏光ビームスプリッタである
請求項1~5のいずれか一項に記載の光干渉光学系。
【請求項7】
前記測定対象物に入射する前記測定光のビーム形状は線状である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の光干渉光学系。
【請求項8】
光源と、
受光手段と、
グレーティングと、
前記光源から出射された光が入射する第1のビームスプリッタと、
前記第1のビームスプリッタから分割された第1の光である測定光を測定対象物へ集光させるレンズと、
前記第1のビームスプリッタから分割された、前記第1の光以外の第2の光である参照光を前記グレーティングまで導く参照光学系と、
前記第1のビームスプリッタと前記レンズとの間に設けられ、前記第1の光を前記レンズへ導くとともに、前記測定対象物からの第1の戻り光を前記受光手段に導く一方、前記グレーティングからの第2の戻り光を前記受光手段に導く、第2のビームスプリッタと、
前記第2のビームスプリッタにて分割された、前記第1の光以外の第3の光である迷光が前記グレーティングに導かれるのを阻止するスペイシャルフィルタと、
前記受光手段にて受光された前記第1の戻り光と前記第2の戻り光とによって生じる干渉によって前記測定対象物を測定する手段と
を有する光干渉測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の表面の凹凸等の表面形状を計測する計測技術の一例として、マッハツェンダー光学系を利用する光干渉測定システムが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。この種の光干渉測定システムでは、光源から発せられた光を測定対象物に照射する測定光と参照光とに分離し、測定対象物により反射された測定光と参照光とを合成した合成光(干渉光)の干渉縞を測定することで測定対象物の表面形状が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-099239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マッハツェンダー光学系を用いた光干渉測定システムには、光源から発せられる光を測定光と参照光とに分割するための第1のビームスプリッタと、測定光を測定対象物へ導くとともに測定対象物による測定光の反射光をカメラ等に導く第2のビームスプリッタとが含まれる場合がある。また、この種の光干渉測定システムには、参照光をグレーティングに導く参照光学系が含まれ、この参照光学系にはミラーと第3のビームスプリッタとが含まれる場合がある。第2および第3のビームスプリッタを有する光干渉測定システムでは、グレーティングによる参照光の回折光または反射光は、第2および第3のビームスプリッタによって、干渉縞を測定するためのカメラに導かれる。
【0005】
マッハツェンダー光学系を用いた光干渉測定システムにおいて、測定対象物の表面形状の測定に必要となる光は、測定光と参照光の2つである。しかし、前述の第1、第2および第3のビームスプリッタを有する光干渉測定システムでは、測定光が参照光学系に紛れ込むことにより、測定の妨げとなる不要光が発生する場合がある。具体的には、第1のビームスプリッタにより分割された測定光が第2のビームスプリッタおよび第3のビームスプリッタによりグレーティングに導かれ、グレーティングによる当該測定光の回折光または反射光(以下、迷光)が第3のビームスプリッタおよび第2のビームスプリッタによってカメラに導かれると、当該迷光は不要光となる。
【0006】
本発明は、マッハツェンダー光学系を用いた光干渉測定システムにおいて、測定光が参照光学系に紛れ込むことに起因する不要光を除去できるようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一の態様において、本発明に係る光干渉光学系は、第1および第2のビームスプリッタと、レンズと、参照光学系と、スペイシャルフィルタと、を有する。第1のビームスプリッタには、光源から出射された光が入射する。第1のビームスプリッタは、入射した光を第1の光である測定光と、第1の光以外の第2の光とに分割する。レンズは、第1の光を測定対象物へ集光させる。参照光学系は、第2の光をグレーティングまで導く。第2のビームスプリッタは、第1のビームスプリッタとレンズとの間に設けられる。第2のビームスプリッタは、第1の光をレンズへ導くとともに、測定対象物からの第1の戻り光を受光手段に導く一方、グレーティングからの第2の戻り光を受光手段に導く。スペイシャルフィルタは、第2のビームスプリッタにて分割された、第1の光以外の第3の光である迷光がグレーティングに導かれるのを阻止する。
【0008】
より好ましい態様の光干渉光学系では、グレーティングと受光手段との間に第1のレンズおよび第2のレンズが設けられ、スペイシャルフィルタは、第1のレンズと第2のレンズとの間であって、グレーティングに対して光学的にフーリエ変換の関係にある位置に配置されてもよく、また、グレーティングと受光手段との間に第1のレンズおよび第2のレンズが設けられ、グレーティングは、第1のレンズと第2のレンズとの間であって、受光手段と光学的に共役の関係にある位置に配置されてもよい。
【0009】
更に好ましい態様の光干渉光学系では、上記各態様において、スペイシャルフィルタは、第2のビームスプリッタにて分割された、第1の光以外の第3の光である迷光がグレーティングに導かれるのを阻止するために光線を選択的に設定可能な液晶素子であってもよく、また、スペイシャルフィルタは、円環状の開口部を有するオブストラクションターゲットであってもよい。
【0010】
更に好ましい態様の光干渉光学系では、上記各態様において、第1のビームスプリッタと第2のビームスプリッタは、偏光ビームスプリッタであってもよい。
【0011】
更に好ましい態様の光干渉光学系では、測定対象物に入射する前記測定光のビーム形状は線状であってもよい。
【0012】
また、他の観点において、本発明は、光源と、受光手段と、グレーティングと、前記光源から出射された光が入射する第1のビームスプリッタと、前記第1のビームスプリッタから分割された第1の光である測定光を測定対象物へ集光させるレンズと、前記第1のビームスプリッタから分割された、前記第1の光以外の第2の光である参照光を前記グレーティングまで導く参照光学系と、前記第1のビームスプリッタと前記レンズとの間に設けられ、前記第1の光を前記レンズへ導くとともに、前記測定対象物からの第1の戻り光を前記受光手段に導く一方、前記グレーティングからの第2の戻り光を前記受光手段に導く、第2のビームスプリッタと、前記第2のビームスプリッタにて分割された、前記第1の光以外の第3の光である迷光が前記グレーティングに導かれるのを阻止するスペイシャルフィルタと、前記受光手段にて受光された前記第1の戻り光と前記第2の戻り光とによって生じる干渉によって前記測定対象物を測定する手段とを有する光干渉測定システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による光干渉測定システム1の構成例を示す図である。
図2】リレーレンズ150の集光スポットサイズを説明するための図である。
図3】スペイシャルフィルタ180による遮光の様子を分光に主眼を置いて説明するための図である。
図4】スペイシャルフィルタ180による遮光の様子を結像に主眼を置いて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に述べる各実施形態には技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本発明の実施形態は、以下に述べる形態に限られるものではない。
【0015】
A.実施形態
図1は、本発明の一実施形態による光干渉測定システム1の構成例を示す図である。光干渉測定システム1は、測定対象物OBの表面の凹凸、即ち測定対象物OBの表面形状を測定するためのシステムである。図1では、光干渉測定システム1の他に測定対象物OBが図示されている。図1に示されるように、光干渉測定システム1は、光源SCと、光干渉光学系10と、グレーティング(回折格子)20と、カメラ30と、処理装置40と、を有する。本実施形態では、光干渉測定システム1による表面形状の測定対象となる測定対象物OBの面の法線に沿った軸はZ軸と称される。Z軸に直交する2つの軸のうちの一方はX軸と称され、他方はY軸と称される。
【0016】
光干渉光学系10は、マッハツェンダー光学系であり、ビームスプリッタ(図1では、BSと略記、以下、本明細書においても同様)110、BS120およびBS130と、ミラー140と、リレーレンズ150、リレーレンズ160、およびリレーレンズ170と、スペイシャルフィルタ180と、レンズ190と、を含む。BS110、120およびBS130の各々は、偏光ビームスプリッタである。BS110、BS120およびBS130として偏光ビームスプリッタを用いるのは、各々における透過光と反射光の強度を調整し易いからである。
【0017】
図1に示されるようにBS110には、光源SCから出射された光Lが入射する。好ましい態様において、光源SCは、超短パルスレーザーからの出射光に非線形効果を与えることで生じる、位相のそろった広帯域で高強度のパルス光源である。その波長域は、赤色、緑色および青色の各色の光をカバーすることが好ましい。
BS110は、入射した光Lを当該BS110の透過光である測定光L1と当該BS110による反射光である参照光L2とに分割する。BS110は、本発明における第1のビームスプリッタの一例である。本実施形態では、BS110の透過光を測定光L1としたが、BS110による光Lの反射光が測定光L1とされ、透過光が参照光L2とされてもよい。測定光L1は本発明における第1光の一例である。参照光L2は、本発明における第2の光、即ち第1の光とは異なる第2の光の一例である。
【0018】
参照光L2は、ミラー140による反射を経てBS130へ入射する。参照光L2は、BS130による案内を経てグレーティング20に入射する。つまり、ミラー140およびBS130は、参照光L2をグレーティング20まで導く参照光学系の一例である。
【0019】
グレーティング20における参照光L2の入射面には、鋸歯状に複数の溝が設けられている。図1では、これら複数の溝の内の一つが図示されている。グレーティング20は入射した参照光L2を回折させる。グレーティング20による参照光L2の回折光R2は、本発明における第2の戻り光の一例である。本実施形態では、回折光R2が第2の戻り光であるが、グレーティング20による参照光L2の反射光が第2の戻り光であってもよい。以下では、回折光R2は第2の戻り光R2とも称される。
【0020】
第2の戻り光R2は、BS130、リレーレンズ150、およびリレーレンズ160による案内を経てBS120へ入射する。本実施形態では、リレーレンズ150とリレーレンズ160との間の焦点位置にはスペイシャルフィルタ180が配置される。スペイシャルフィルタ180の詳細については後に明らかにする。リレーレンズ150は本発明における第1のレンズの一例であり、リレーレンズ160は本発明における第2のレンズの一例である。
【0021】
図1に示されるように、BS120は、BS110とレンズ190との間に設けられる。BS120は、測定光L1をレンズ190へ導くとともに、測定対象物OBによる測定光L1の反射光R1をカメラ100に導く。測定光L1の測定対象物OBによる反射光R1は、本発明における第1の戻り光の一例である。以下では、反射光R1は第1の戻り光R1とも称される。また、BS120は、第2の戻り光R2をカメラ100に導く。BS120は本発明における第2のビームスプリッタの一例である。
【0022】
レンズ190は、入射する測定光L1をX軸に沿った線状に集光するシリンドリカルレンズである。本実施形態では、X軸に沿った長さが20mm、且つ幅が10ミクロンの線状の測定光L1を用いて測定対象物OBの表面形状の測定が行われる。X軸に沿った線状の測定光L1を用いて測定対象物OBの表面形状の測定が行われるので、本実施形態では、X軸方向の測定光L1の走査は不要であり、Y軸方向の測定光L1の走査のみが行われればよい。レンズ190から出射される線状の測定光L1はリレーレンズ170による集光を経て測定対象物OBの表面に照射される。測定光L1の測定対象物OBによる反射光R1、即ち第1の戻り光R1はリレーレンズ170、レンズ190、およびBS120による案内を経てカメラ30に入射する。
【0023】
カメラ30は、受光した光を表す画像信号GC、即ち第1の戻り光R1と第2の戻り光R2によって生じる干渉縞の画像を表す画像信号GCを処理装置40へ出力する。カメラ30は、本発明における受光手段の一例である。
【0024】
処理装置40は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、即ちコンピュータを含む。処理装置40は1つのコンピュータを含んでもよいし、複数のコンピュータを含んでもよい。処理装置40は、図1では図示を省略した記憶装置に記憶されているプログラムに従って作動することにより、カメラ30から与えられる画像信号GCに基づいて測定対象物OBの表面の凹凸を計測する。つまり、処理装置40は、第1の戻り光R1と第2の戻り光R2とによって生じる干渉によって測定対象物OBを測定する手段として機能する。なお、処理装置40と上記記憶装置とは、パーソナルコンピュータの一部であってもよい。
【0025】
前述したようにスペイシャルフィルタ180は、リレーレンズ150とリレーレンズ160との間の焦点位置に配置される。より詳細に説明すると、スペイシャルフィルタ180は、リレーレンズ150とリレーレンズ160との間の位置であって、カメラ30と光学的に共役の関係にある位置に配置される。また、スペイシャルフィルタ180は、リレーレンズ150とリレーレンズ160との間の位置であって、グレーティング20に対して光学的にフーリエ変換の関係にある位置に配置される。
【0026】
スペイシャルフィルタ180は、リレーレンズ160からリレーレンズ150へ向かう第3の戻り光R3(迷光)を遮蔽するとともに、リレーレンズ150からリレーレンズ160へ向かう光R2の光軸中心のみを円形または帯状に遮光するスペイシャル・ノッチ・フィルタである。なお、遮蔽とは、反射、吸収、散乱のいずれによって実現されてもよい。スペイシャルフィルタ180によって、参照光L2以外の光がグレーティング20に導かれるのが阻止される。具体的には、スペイシャルフィルタ180は、透過させる光の波長および透過率を選択的に設定可能な液晶素子によって構成されることができる。あるいは、円環状の開口部を有する、いわゆるオブストラクションターゲットであって、スペイシャルフィルタ180に到達した光線のうち当該開口部を介して光線を通過させ、開口部以外の場所に到達した光線を遮蔽する。
【0027】
スペイシャルフィルタ180は、上述した構成に限らず、例えば、ピンホールとレンズによって構成されてもよい。また、スペイシャルフィルタ180は、光線を、完全に透過する部分と完全に遮蔽する部分とに分離する(光線の形状を変更する)ものである必要はない。要するに、スペイシャルフィルタ180は、カメラ30へ導くべき必要な参照光を完全には遮蔽させない(少なくとも部分的には通過させる)一方、不要な光(迷光)についてはグレーティング20に導かれることがないように、スペイシャルフィルタ180に導かれる光線の強度分布を変更する光学素子であればよい。なお、本願発明においては、スペイシャルフィルタ180を設けない場合に比べて、カメラに導かれる回折光R2の光量は減少するが、迷光が除去されることで、カメラ30にて得られる干渉信号の精度(S/N)が向上する。また、スペイシャルフィルタ180は、結果的に、参照光の光量の調整機能を有していると把握できるので、スペイシャルフィルタ180の配置やサイズその他の特性は、必要に応じて要求される参照光の光量を加味して設計されてもよい。
【0028】
スペイシャルフィルタ180のサイズは、リレーレンズ150の集光スポットサイズdと同等から2倍の大きさ(即ち、集光スポットサイズdの大きさの100%から200%の大きさ)であればよい。スペイシャルフィルタ180が円環状の開口部を有するオブストラクションターゲットである場合、スペイシャルフィルタ180のサイズとは当該開口部の径のことである。また、スペイシャルフィルタ180が、第2の戻り光R2の光軸中心のみを帯状に遮光する矩形状の液晶素子である場合、スペイシャルフィルタ180のサイズとは当該矩形の一辺の長さのことである。リレーレンズ150により集光される光の波長がλである場合、リレーレンズ150の集光スポットサイズdは、図2に示されるようにリレーレンズ150に入射する第2の戻り光R2のビーム径がDであり、リレーレンズ150の焦点距離がfである場合、以下の数1により表される。なお、数1においてπは円周率である。
【数1】
【0029】
図3は、スペイシャルフィルタ180による遮光の様子を、分光に主眼を置いて、概念的に説明するための図である。光干渉測定システム1では、第2の戻り光R2は、グレーティング20とリレーレンズ150とにより、リレーレンズ150の焦点位置において空間的に波長分離される。図3に示す例では、第2の戻り光R2に含まれる青色の光は破線で、同緑色の光は実線で、同赤色に光は一点鎖線で夫々図示されている。なお、図3では、図面が煩雑になることを避けるため、光干渉測定システム1の構成要素のうち、グレーティング20、BS130、リレーレンズ150、スペイシャルフィルタ180、リレーレンズ160、BS120、およびカメラ30のみが図示されている(図4についても同様である)。
【0030】
図3に示されるように、リレーレンズ150からリレーレンズ160に向かう第2の戻り光R2のうち、緑色の光はスペイシャルフィルタ180により遮光されるものの、青色および赤色の光はスペイシャルフィルタ180では遮光されず、カメラ30へ到達する。つまり、本実施形態では、第2の戻り光R2に含まれる光のうち青色および赤色の光によって測定対象物OBの表面の測定が行われる。また、図3では、測定光L1のBS120による反射光R3が点線で図示されている。反射光R3は、測定対象物OBの表面の凹凸の測定には不要な迷光であり、本発明における第3の光の一例である。図3に示されるように、反射光R3の全波長はリレーレンズ160の焦点に集光し、スペイシャルフィルタ180により遮光される。このため、本実施形態では、反射光R3がグレーティング20により反射されて戻って来ることが回避され、カメラ30への不要光が除去される
【0031】
図4は、スペイシャルフィルタ180による遮光の様子を、結像に主眼を置いて、概念的に説明するための図である。図4における符号PSC1、PSC2、およびPSC3は、グレーティング20の表面に設けられた各溝を点光源の配列と見立てた場合の各点光源を示す。図4では、図3における場合と同様に反射光R3が点線で図示されている。図4に示す例では、点光源PSC1、PSC2およびPSC3の各々から発せられた第2の戻り光R2のうち光軸方向に発せられた光はスペイシャルフィルタ180により遮光されるものの、他の光はスペイシャルフィルタ180では遮光されず、カメラ30に到達する。また、反射光R3がスペイシャルフィルタ180により遮光されることは図3における場合と同様である。
【0032】
以上説明したように本実施形態によれば、マッハツェンダー光学系を用いた光干渉測定システム1において測定光が参照光学系に紛れ込むことに起因する不要光が除去される。この結果、カメラ30のダイナミックレンジを有効に活用して測定対象物の表面形状を測定することが可能になる。
【0033】
B.変形
以上説明した各実施形態は、以下のように変形されてもよい。
(1)上記実施形態では、光源SC、光干渉光学系10、グレーティング20、カメラ30、および処理装置40を含む光干渉測定システム1が説明された。しかし、光干渉光学系10、即ちBS110、BS120、およびBS130と、ミラー140と、リレーレンズ150、リレーレンズ160、およびリレーレンズ170と、スペイシャルフィルタ180とを含む光干渉光学系が単体で実施されてもよい。
【0034】
(2)上記実施形態では、測定対象物OBに入射する直前の測定光L1のビーム形状は線状であった。しかし、X軸方向に加えてY軸方向の走査も行うのであれば、測定光L1のビーム形状は線状でなくてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…光干渉測定システム、SC…光源、10…光干渉光学系、110,120、130…ビームスプリッタ、140…ミラー、150,160,170…リレーレンズ、180…スペイシャルフィルタ、20…グレーティング、30…カメラ、40…処理装置。
図1
図2
図3
図4