(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071082
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】マグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池、及びその非水電解液
(51)【国際特許分類】
H01M 10/054 20100101AFI20230515BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20230515BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20230515BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
H01M10/054
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183676
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】富士フイルム和光純薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100202898
【弁理士】
【氏名又は名称】植松 拓己
(72)【発明者】
【氏名】里 和彦
(72)【発明者】
【氏名】安部 浩司
(72)【発明者】
【氏名】トドロフ ヤンコ マリノフ
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA15
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB11
5H050HA01
(57)【要約】
【課題】より高電圧で充放電させることのでき、高容量でサイクル特性にも優れたマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池、及びこの二次電池の電解液として好適な非水電解液を提供する。
【解決手段】アルカリ金属を含有する正極活物質層と、マグネシウム及びマグネシウム合金の少なくも1種を含有する負極活物質層と、マグネシウム塩及びアルカリ金属塩を溶媒中に含有してなる非水電解液で構成されるマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池であって、上記非水電解液中のアルカリ金属塩がアルカリ金属イオンとフッ素含有アニオンとからなり、上記非水電解液の上記溶媒が鎖状スルホン化合物を含む、マグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池、及びマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池用非水電解液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属を含有する正極活物質層と、
マグネシウム及びマグネシウム合金の少なくも1種を含有する負極活物質層と、
マグネシウム塩及びアルカリ金属塩を溶媒中に含有してなる非水電解液で構成されるマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池であって、
前記非水電解液中のアルカリ金属塩がアルカリ金属イオンとフッ素含有アニオンとからなり、前記非水電解液の前記溶媒が鎖状スルホン化合物を含む、マグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池。
【請求項2】
前記正極活物質層が前記アルカリ金属としてリチウムを含有する、請求項1に記載のマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池。
【請求項3】
前記鎖状スルホン化合物がアルキルスルホン化合物である、請求項1又は2に記載のマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池。
【請求項4】
前記非水電解液中の前記アルカリ金属塩が、リチウム塩及びナトリウム塩の少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載のマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池。
【請求項5】
前記非水電解液中の前記アルカリ金属塩がリチウム塩である、請求項1~4のいずれか1項に記載のマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池。
【請求項6】
前記非水電解液中の前記アルカリ金属塩が前記フッ素含有アニオンとして、BF4
-、PF6
-及び(CF3SO2)2N-の少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池。
【請求項7】
前記非水電解液の前記溶媒に占める前記鎖状スルホン化合物の割合が10質量%以上100質量%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池。
【請求項8】
マグネシウム塩及びアルカリ金属塩を溶媒中に含有してなるマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池用非水電解液であって、
前記アルカリ金属塩がアルカリ金属イオンとフッ素含有アニオンとからなり、前記溶媒が鎖状スルホン化合物を含む、マグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池用非水電解液。
【請求項9】
前記鎖状スルホン化合物がアルキルスルホン化合物である、請求項8に記載のマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池用非水電解液。
【請求項10】
前記アルカリ金属塩が、リチウム塩及びナトリウム塩の少なくとも1種である、請求項8又は9に記載のマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池用非水電解液。
【請求項11】
前記アルカリ金属塩がリチウム塩である、請求項8~10のいずれか1項に記載のマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池用非水電解液。
【請求項12】
前記アルカリ金属塩が前記フッ素含有アニオンとして、BF4
-、PF6
-及び(CF3SO2)2N-の少なくとも1種を含む、請求項8~11のいずれか1項に記載のマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池用非水電解液。
【請求項13】
前記溶媒に占める前記鎖状スルホン化合物の割合が10質量%以上100質量%以下である、請求項8~12のいずれか1項に記載のマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池用非水電解液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウムイオン及びアルカリ金属イオンによるハイブリッド型二次電池(以下、ハイブリッド型二次電池と呼ぶこともある)、及びその非水電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、パソコン、ビデオカメラ、携帯電話等のポータブル電子機器の動力源として用いられている。最近では、二酸化炭素排出量削減という地球規模の環境課題を背景に、自動車等の輸送機器の動力電源として、また、夜間電力、自然エネルギー発電による電力等の蓄電用途としても普及してきている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は今後も性能向上に伴うさらなる普及が期待されている。しかしながら、リチウムイオン二次電池には安全面及び原料供給面において、大きく分けて2つのリスクが指摘されている。
1つ目の安全面のリスクは、電池の内部ショートの問題である。リチウムイオン二次電池は、充電時に負極においてリチウムデンドライトが伸長し、電池の内部ショートを生じることである。負極にリチウム金属を用いたリチウムイオン二次電池は、リチウムデンドライトの問題がより顕在化するため、実用化には至っていない。
2つ目の原料供給面のリスクは、地球上でのリチウムの資源分布の地域的な偏在である。リチウムイオン二次電池材料の旺盛な需要拡大に伴い、リチウムの価格が上昇や、供給不足が生じている。
【0004】
このような状況下で、リチウム以外の金属を用いる試みがなされている。なかでもマグネシウムは、電極電位が比較的低く、体積エネルギー密度が高い材料であり、加えて安全性が高く、資源量が豊富で、かつ安価であることから負極材料として期待されている。また、マグネシウム金属を負極とするマグネシウム二次電池は、上記デンドライトの問題を生じない利点もあり、リチウムイオン二次電池に代わる次世代の電池として注目されている。
例えば、特許文献1の実施例2では、正極にFe2(SO4)2、負極にMg箔、非水電解液としてMg(ClO4)2をジプロピルスルホンとγ―ブチロラクトン(体積比2:1)の混合溶液に1M/L溶解する、ことが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、マグネシウム元素を含む負極を有する蓄電デバイス用の非水電解液であって、マグネシウム塩として過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)、とリチウム塩として過塩素酸リチウム(LiClO4)、溶媒としてγ-ブチロラクトンを含み、マグネシウム塩に対するリチウム塩の量が、0.13~1.08mol%である非水電解液が提案されている。特許文献2記載の技術によれば、上記非水電解液を用いることにより、電流値が大きく高容量の蓄電デバイスが低コストで得られるとされる。
また、非特許文献1には、PhMgCl、LiBF、AlCl3及びTHFを含む非水電解液と、負極として金属マグネシウムと、正極としてLiFePO4とを用いた、マグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池が提案されている。
また、非特許文献2には、0.2Mの[Mg2Cl2(DME)4][AlCl4]及び1.0MのLiTFSIを用いた非水電解液と、負極にマグネシウムと、正極にLiFePO4とを用いた、マグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-100347号公報
【特許文献2】特許6051923号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Mater. Chem. A, 2014, 2, 1144-1149
【非特許文献2】Chem. Commun. 2016, 52, 5379-5382
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ハイブリッド型二次電池には、リチウムイオン二次電池と同様の高容量及び高サイクル特性を示すことが期待されている。ハイブリッド型二次電池において高容量及び高サイクル特性を実現するためには、ハイブリッド型二次電池の作動電圧を高くする必要がある。本発明者らは、高作動電圧で駆動させるハイブリッド型二次電池に用いることができる非水電解液を得るために、マグネシウム塩とアルカリ金属塩が共存する非水電解液の酸化安定性を向上させることを目的として、正極、マグネシウム塩、アルカリ金属塩の組み合わせに着目し、検討を行った。
【0009】
本発明は、より高電圧で充放電させることのでき、高容量でサイクル特性にも優れたマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池、及びこの二次電池の電解液として好適な非水電解液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、正極に高電圧なアルカリ金属を含有する化合物を用い、非水電解液は、電解質として、アルカリ金属イオンとフッ素含有アニオンを持つアルカリ金属塩、及びマグネシウム塩を用い、さらに非水溶媒として鎖状スルホン化合物を組み合わせることにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の上記課題は以下の手段により解決された。
【0011】
アルカリ金属を含有する正極活物質層と、
マグネシウム及びマグネシウム合金の少なくも1種を含有する負極活物質層と、
マグネシウム塩及びアルカリ金属塩を溶媒中に含有してなる非水電解液で構成されるマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池であって、
上記非水電解液中のアルカリ金属塩がアルカリ金属イオンとフッ素含有アニオンとからなり、上記非水電解液の上記溶媒が鎖状スルホン化合物を含む、マグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池は、より高い電圧で充放電することができ、高容量でサイクル特性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、非水電解液二次電池の基本的な積層構成を模式化して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<マグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池用非水電解液>
(マグネシウム塩)
本発明のハイブリッド型電池用電解液に用いられるマグネシウム塩は特に制限されず、負極活物質層にマグネシウム又はマグネシウム合金を用いるマグネシウム二次電池の電解液において一般的に用いられるものを広く用いることができる。具体例としては、MgCl2、MgBr2及びMg(TFSI)2(「Mg(TFSI)2」は、「Mg〔(CF3SO2)2N〕2とも記載される。)が挙げられる。
マグネシウム塩は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
(アルカリ金属塩)
アルカリ金属イオンとしては例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンが挙げられ、リチウムイオン及びナトリウムイオンが好ましく、リチウムイオンがより好ましい。アルカリ金属塩にリチウムイオンを用いる場合には、正極活物質にリチウム含有化合物を用いるといったように、アルカリ金属種を同じにすることが好ましい。
フッ素含有アニオンとしては、例えば、BF4
-、PF6
-、(FSO2)2N-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(CF3SO2)(SO2C4F9)N-が挙げられ、(CF3SO2)2N-及び(FSO2)2N-が好ましい。
アルカリ金属塩は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
(溶媒)
本発明の非水電解液に使用される溶媒(非水溶媒)は鎖状スルホン化合物を含み、鎖状スルホン化合物として、例えば下記一般式(1)で表されるスルホン化合物が挙げられる。
【0017】
【化1】
式中、R
1及びR
2は各々独立して、アルキル基又はアルコキシ基(アルキルオキシ基)を示す。なおR
1及びR
2は結合して環を形成することはない。
【0018】
アルキル基は直鎖及び分枝のいずれでもよく、アルキル基の炭素数は1~12が好ましく、1~6が更に好ましい。アルコキシ基中のアルキル基は、上記アルキル基と同義であり、好ましい範囲も同じである。なお、アルコキシ基中のアルキル基は、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)で置換されていてもよい。
鎖状スルホン化合物の具体例としては、メチルメタンスルホネート、エチルメタンスルホネート、プロピルメタンスルホネート、イソプロピルメタンスルホネート、ブチルメタンスルホネート、イソブチルメタンスルホネート、2-メトキシメチルメタンスルホネート、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチル-n-プロピルスルホン、メチルイソプロピルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、イソブチルメチルスルホン、sec-ブチルメチルスルホン、tert-ブチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチル-n-プロピルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、n-ブチルエチルスルホン、イソブチルエチルスルホン、sec-ブチルエチルスルホン、tert-ブチルエチルスルホン、ジ-n-プロピルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n-ブチル-n-プロピルスルホン及びジ-n-ブチルスルホンが挙げられる。
鎖状スルホン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明に用いられる非水溶媒は、鎖状スルホン化合物以外の溶媒を含んでもよく、例えば、エーテル化合物及びリン酸エステル化合物等の有機溶媒が挙げられ、エーテル化合物が好ましい。鎖状スルホン化合物以外の溶媒の具体例として、テトラヒドロフラン(THF)、リン酸トリエチル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)及びテトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)等が挙げられる。
【0020】
本発明において、鎖状スルホン化合物の割合は特に制限されず、例えば、5質量%以上とすることができ、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、本発明のハイブリッド型電池用電解液の溶媒のすべてが鎖状スルホン化合物、すなわち、本発明のハイブリッド型電池用電解液の溶媒に占める鎖状スルホン化合物の割合が100質量%であってもよく、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
【0021】
本発明のハイブリッド型電池用電解液中のマグネシウム塩及びアルカリ金属塩の含有量は特に制限されず、マグネシウム塩及びアルカリ金属塩の重量モル濃度の合計で、例えば、0.5~4.0mol/kgとすることができ、1.0~3.0mol/kgとしてもよい。
電解液中のマグネシウム塩とアルカリ金属塩との含有量の比は特に制限されず、マグネシウム塩とアルカリ金属塩のモル比を、[マグネシウム塩]:[アルカリ金属塩]=1:5~5:1とすることができ、1:3~2:1が好ましい。
【0022】
本発明のハイブリッド型電池用電解液は、本発明の効果を損なわない範囲内で、非水電解液に通常用いられる各種の添加剤、例えば、被膜形成剤、過充電防止剤、脱酸素剤、脱水剤及び難燃剤等の添加剤、並びに、クラウンエーテル等の配位性の添加剤を含有してもよい。
【0023】
本発明のハイブリッド型電池用電解液は、マグネシウム塩と、アルカリ金属塩と、鎖状スルホン化合物と、必要に応じて鎖状スルホン化合物以外の溶媒、その他の添加剤とを混合することにより調製することができる。混合の過程で必要に応じて加熱してもよく、また、濃縮してもよい。上記加熱の条件は、例えば、30~150℃の条件で5分間~24時間とすることができる。
なお、本発明のハイブリッド型電池用電解液の調製は、不活性ガスで満たされたグローブボックス中で行ってもよい。
【0024】
続いて、本発明のハイブリッド型電池について説明する。
【0025】
<マグネシウムイオン/アルカリ金属イオン-ハイブリッド型二次電池>
本発明のハイブリッド型電池は、アルカリ金属を含む正極活物質層と、マグネシウム及びマグネシウム合金の少なくとも1種を含む負極活物質層と、正極活物質層と負極活物質層との間を満たす上述した本発明のハイブリッド型電池用電解液とを具備する。上記正極活物質層は、通常、正極活物質として機能するアルカリ金属含有化合物(アルカリ金属含有正極活物質)の構成原子としてアルカリ金属を含有する。
【0026】
上記正極活物質層を構成する正極活物質としては、アルカリ金属としてリチウム、ナトリウム及びカリウムの少なくとも1種を含む正極活物質が挙げられる。このアルカリ金属はリチウム及びナトリウムの少なくとも1種が好ましく、リチウムがより好ましい。
アルカリ金属含有正極活物質の具体例としては、例えばLiCoO2、LiNiO2、LiNixMnyCozO2(x+y+z=1)、LiMn2O4、LiCrO2、LiFePO4、Li2FePO4F、NaFePO4、Na2FeP2O7、Na2-xFe1+x/2P2O7(0<x<0.44)、NaxMnyFe1-yO2(0.0<x≦1.0,0.0<y≦1.0)、NaMn1-x-y-zFexCoyAlzO2(0.0<Na≦1.0,0.0<x≦1.0,0<y≦1.0,0<z≦0.5)、Na3V2(PO4)3、Na3V2(PO)2F3、Na2VTi(PO4)3、NaTi2(PO4)3、NaCrO2、Na0.7CoO2、NaNixMnyFezO2(x+y+z=1)及びNa3MnTi(PO4)3が挙げられる。
本発明のハイブリッド型電池は、正極活物質層に1種又は2種以上の正極活物質を用いることができる。
【0027】
正極活物質としてリチウムを含む正極活物質を用いる場合、本発明のハイブリッド型電池用電解液におけるアルカリ金属塩としてはリチウム塩又はナトリウム塩が好ましく、リチウム塩がより好ましい。
一方、正極活物質としてナトリウムを含む正極活物質を用いる場合、本発明のハイブリッド型電池用電解液におけるアルカリ金属塩としてはナトリウム塩が好ましい。
【0028】
正極活物質層中のアルカリ金属含有正極活物質の含有量は特に制限されず、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
上記正極活物質層は、本発明の効果を損なわない範囲内で、導電助剤、結着剤、支持塩、及びイオン伝導性ポリマー等を含んでいてもよい。
【0029】
本発明のハイブリッド型電池は、必要に応じて正極集電体を有していてもよい。正極集電体を構成する素材として、例えば、アルミニウム、モリブデン、ステンレス、白金、金及び炭素材料等が挙げられ、アルミニウム及びモリブデンが好ましい。
【0030】
本発明のハイブリッド型電池の負極活物質層は負極活物質として、マグネシウム(金属マグネシウム)及びマグネシウム合金の少なくとも1種を含む。
【0031】
上記マグネシウム合金としては、具体的には例えば、Mg-Bi合金、Mg-Sb合金、Mg-In合金、Mg-Zn合金、Mg-Zr合金、Mg-Sn合金、Mg-Cd合金、Mg-Co合金、Mg-Mn合金、Mg-Ga合金、Mg-Pb合金、Mg-Ni合金、Mg-Cu合金、Mg-Al合金、Mg-Ca合金、Mg-Li合金、Mg-Bi-Sb合金、Mg-Al-Zn合金、Mg-Zn-Zr合金及びMg-In-Ni合金が挙げられ、また他に希土類元素を含む合金等が挙げられる。
【0032】
負極活物質層中のマグネシウム及びマグネシウム合金の含有量は特に制限されず、マグネシウム及びマグネシウム合金の各含有量の合計が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
上記負極活物質層は、本発明の効果を損なわない範囲内で、導電助剤、結着剤、支持塩、及びイオン伝導性ポリマー等を含んでいてもよい。
【0033】
本発明のハイブリッド型電池は、必要に応じて負極集電体を有していてもよい。負極集電体を構成する素材として、例えば、モリブデン、アルミニウム、ステンレス、白金、金、銅及び炭素材料等が挙げられる。
【0034】
また、本発明のハイブリッド型電池は、通常セパレータを有している。セパレータとしては、正極活物質層と負極活物質層とを電気的に絶縁し、かつマグネシウムイオン及びアルカリ金属イオンが透過可能なものであればよく、例えば、ガラス繊維(グラスファイバー)及び多孔性ポリオレフィン等の微多孔性高分子や不織布が挙げられる。多孔性ポリオレフィンの具体例としては、例えば、多孔性ポリエチレン単独又は多孔性ポリエチレンと多孔性ポリプロピレンとを重ね合わせて複層としたもの等が挙げられる。
【0035】
本発明のハイブリッド型電池は、正極材料、負極材料、電解液、セパレータ等として上記で説明したものを用いること以外は、通常の非水電解液二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池等)と同様にして製造することができる。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態のハイブリッド型電池10の積層構造を、電池として作動させる際の作動電極も含めて、模式化して示す断面図である。ハイブリッド型電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、セパレータ3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に有する積層構造を有している。負極活物質層と正極活物質層との間は本発明のハイブリッド型電池用電解液(図示せず)で満たされ、かつセパレータ3で分断されている。セパレータ3は空孔を有し、通常の電池の使用状態では電解液及びイオンを透過しながら正負極間を絶縁する正負極分離膜として機能する。
リチウムを含有する正極活物質層を有し、ハイブリッド型電池用電解液のアルカリ金属塩としてリチウム塩を用いたハイブリッド型電池を例にとって充放電について説明する。このハイブリッド型電池用電解液では、充電時には外部回路を通って負極側に電子(e
-)が供給され、同時にハイブリッド型電池用電解液中のマグネシウムイオン(Mg
2+)が移動してきて負極に蓄積される。一方、放電時には、ハイブリッド型電池用電解液中のリチウムイオン(Li
+)が正極に蓄積され、負極ではMg
2+がハイブリッド型電池用電解液中に放出されて作動部位6には電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球を採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。
本発明において、負極集電体1と負極活物質層2とを合わせて負極と称し、正極活物質層4と正極集電体5とを合わせて正極と称している。
【0037】
本発明のハイブリッド型電池は、通常の二次電池と同様、種々の電子機器、電化製品、定置用電源等に用いることができる。
【実施例0038】
実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。下記実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明は、本発明で規定すること以外は、以下に示す実施例に限定して解釈されるものではない。
【0039】
<電解液の調製>
後記表1-1及び2~5に記載の電解液を調製した。
【0040】
電解液1の調製
塩化マグネシウム 0.29g(3.0mmol)を、メタノール 12.00gとジ-n-プロピルスルホン(DnPS) 2.70gの混合溶媒に溶解させた。得られた塩化マグネシウム溶液を、ダイアフラムポンプでの減圧下、120℃で3時間濃縮した。
濃縮後の塩化マグネシウム溶液を室温に戻した後、この溶液にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI) 0.49g(1.7mmol)を加えた。この溶液をダイアフラムポンプでの減圧下、120℃で30分間加熱して、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを溶解させ、電解液1[MgCl2-LiTFSI/DnPS]を得た。
電解液1中のMgCl2とLiTFSIとのモル比は約2:1である。
なお、電解液1が含有する溶媒に占める鎖状スルホン化合物(DnPS)の含有量の割合は、100質量%である。
【0041】
電解液c1の調製
塩化マグネシウム 0.29g(3.0mmol)と塩化リチウム 0.06g(1.5mmol)を、メタノール 12.00gとジ-n-プロピルスルホン 2.70gの混合溶媒に溶解させた。得られた塩化マグネシウム溶液を、ダイアフラムポンプでの減圧下、その混合液を120℃で3時間濃縮した。
濃縮後の塩化マグネシウム溶液を室温に戻して、電解液c1[MgCl2-LiCl/DnPS]を得た。
電解液c1中のMgCl2とLiClとのモル比は2:1である。
なお、メタノールは濃縮工程中に揮発するため、電解液c1が含有する溶媒に占める鎖状スルホン化合物(DnPS)の含有量の割合は、100質量%である。
【0042】
電解液11の調製
国際公開第2016/084924号に記載の方法で、トリフェニルシロキシマグネシウムクロリド(Ph3SiOMgCl)を合成した。
得られたトリフェニルシロキシマグネシウムクロリド 0.50g(1.5mmol)と塩化アルミニウム 0.20g(1.5mmol)を、エチルイソプロピルスルホン(EiPS) 2.73g(2.50mL)とテトラヒドロフラン(THF) 2.22g(2.50mL)の混合溶媒に溶解させた。得られた溶液にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 0.86g(3.0mmol)を加えて、室温で30分間攪拌して、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを溶解させ、電解液11[Ph3SiOMgCl-AlCl3-LiTFSI/EiPS-THF]を得た。
電解液11中のPh3SiOMgClとAlCl3とLiTFSIとのモル比は1:1:2である。
電解液11が含有する溶媒に占める鎖状スルホン化合物(EiPS)の含有量の割合は、55質量%である。
【0043】
後記表1-1及び2~5に記載の電解液1、c1及び11以外の電解液は、電解液1、c1又は11と同様にして調製した。
【0044】
<電池の作製>
後記表1-1及び2~5に記載するハイブリッド型電池を下記の通り作製した。
【0045】
電池1の作製
下記3成分を混合し、N-メチルピロリドン(富士フイルム和光純薬社製)を加えて正極用スラリーを調製した。
・リン酸鉄リチウム(LiFePO4)(正極活物質:宝泉社製) 87質量部
・アセチレンブラック(導電助剤:デンカ社製) 8質量部
・ポリフッ化ビニリデン(KFポリマーL#7305(商品名)、クレハ社製) 5質量部(固形分)
上記正極用スラリーをカーボンペーパー(東レ社製)に塗布し、80℃で1時間、120℃で5時間真空乾燥して正極活物質層用シートを得た。
負極活物質層としてマグネシウム合金AZ31(ナカガワメタル社製、マグネシウム:96質量%、アルミニウム:3質量%、亜鉛:1質量%)(厚さ500μm)、セパレータとしてガラスろ紙(アドバンテック東洋社製)を用いた。負極集電体としてモリブデンの電極押え(イーシーフロンティア社製)、正極集電体としてアルミニウム箔(宝泉社製)(厚さ20μm)を用いた。
電池評価用樹脂2極セル(SB8(商品名)、イーシーフロンティア社製)に、正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層、負極集電体の順に積層し、電解液1で満たして、電池1を作製した。
【0046】
電池21の作製
Journal of The Electrochemical Society, 162 (1) A176-A180 (2015)に記載の方法に準じて、Na1.8Fe1.1P2O7を作製した。
当該文献の記載に対して、リン酸の原料としてNH4H2PO4と(NH4)2HPO4を1:1のモル比で使用する点、及び、還元雰囲気を維持するために6質量%砂糖を入れる点を変更した。
下記3成分を混合し、N-メチルピロリドン(富士フイルム和光純薬社製)を加えて正極用スラリーを調製した。
・Na1.8Fe1.1P2O7 70質量部
・アセチレンブラック(導電助剤:デンカ社製) 15質量部
・ポリフッ化ビニリデン(KFポリマーL#7305(商品名)、クレハ社製) 15質量部(固形分)
上記正極用スラリーをカーボンペーパー(東レ社製)に塗布し、80℃で1時間、120℃で5時間真空乾燥して正極活物質層用シートを得た。
負極活物質層としてマグネシウム合金AZ31(ナカガワメタル社製)(厚さ500μm)、セパレータとしてガラスろ紙(アドバンテック東洋社製)を用いた。負極集電体としてモリブデンの電極押え(イーシーフロンティア社製)、正極集電体としてモリブデン板(イーシーフロンティア社製)(厚さ1mm)を用いた。
電池評価用樹脂2極セル(SB8(商品名)、イーシーフロンティア社製)に、正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層、負極集電体の順に積層し、電解液21で満たして、電池21を作製した。
【0047】
後記表1-1及び2~5に記載の電池1及び21以外の電池は、電池1又は21と同様にして調製した。
【0048】
<試験例>
上記で調製した電解液1~16、21、22及びc1~c11、並びに上記で作製した電池1~16、21、22及びc1~c11について下記試験を行った。試験例3の結果を後記表1-2、2及び5に、試験例4の結果を後記表3及び4に記載する。
【0049】
試験例1-リニアスイープボルタンメトリー試験
アルゴンで満たされたグローブボックス内で、アルミニウム箔(ニラコ社製)を作用極、マグネシウム棒(ニラコ社製)を参照極及び対極に用い、電解液を浸した三極式のビーカーセルで、リニアスイープボルタンメトリー試験が実施された。
リニアスイープボルタンメトリー試験は、5mV/sの走査速度で、開回路電位から3.5V vs Mg参照極の範囲で行われた。
上記リニアスイープボルタンメトリー試験において電流密度が0.01mA/cm2を超えたときの電位を、各電解液の酸化分解電位とした。
実施例の電解液(No.1~16、21及び22)の酸化分解電位はすべて3V以上であり、比較例の電解液(No.c1~c11)のうち、No.c4以外の酸化分解電位はすべて2.8V未満であった。
【0050】
試験例2-サイクリックボルタンメトリー試験
アルゴンで満たされたグローブボックス内で、白金電極(ビー・エー・エス社製)を作用極、マグネシウム棒(ニラコ社製)を参照極及び対極に用い、電解液を浸した三極式のビーカーセルで、サイクリックボルタンメトリー試験が実施された。
サイクリックボルタンメトリー試験は、5mV/sの走査速度で、Mg参照極に対して-1.5~+2.0Vの範囲で行われた。
上記サイクリックボルタンメトリー試験において、酸化電流/還元電流として流れた電気量の比を、マグネシウムの放出/吸蔵の効率として算出した。
実施例の電解液(No.1~16、21及び22)は、いずれも15%以上のマグネシウムの吸蔵/放出の効率を示した。比較例の電解液(No.c1~c11)のうちNo.c1~c3、c5~c6及びc9は、いずれも15%以上のマグネシウムの吸蔵/放出の効率を示したが、比較電解液c4、c7、c8、c10及びc11は15%未満であった。
【0051】
試験例3-定電流充放電試験
作製した電池1~9及びc1~c10、電池21及び22に対して、30℃の恒温槽内で、下記条件の定電流充放電を3サイクル行った。
・充電終止電圧:3.0V
・放電終止電圧:1.2V
・0.05Cレート
上記試験には、電気化学測定システム(VMP3(商品名)、Bio-Logic Science Instruments社製)を使用した。
1~3サイクル目の放電容量(mAh/g)を後記表1及び2に、それぞれ「容量1」、「容量2」、「容量3」として記載する。
また、下記式から得られる放電容量維持率(サイクル特性)(%)を後記表1及び2に「容量維持率」として記載する。
放電容量維持率(%)=100×3サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量
【0052】
試験例4-定電流充放電試験
作製した電池10~16及びc11に対して、充電終止電圧:3.2Vであること以外、試験例3に準じて行った。
【0053】
【0054】
<表の注>
Mg(TFSI)2:マグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
DME:1,2-ジメトキシエタン
GBL:γ-ブチロラクトン
比較例5では、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルマグネシウムクロリド-リチウムクロリド錯体(TMPMgCl-LiCl)のテトラヒドロフラン-トルエン溶液(シグマアルドリッチ社製、1M)を用いた。
【0055】
【0056】
<表の注>
割合(質量%):電解液が含有する溶媒に占める鎖状スルホン化合物の含有量の割合(質量%)(後記表2~5も同様である。)
0.1>:容量が0.1mAh/g未満であることを意味する。
容量が得られなかった電池(初期放電容量が0.1mAh/g未満の電池)については容量維持率を算出していない。
【0057】
No.c1及びc7の電解液は、電解質としてマグネシウム塩とフッ素含有アニオンを有しないリチウム塩を含有し、溶媒として鎖状スルホン化合物を含有しており、本発明で規定するリチウム塩(リチウムイオンとフッ素含有アニオンとからなるリチウム塩)を含有してない。これらの電解液を用いた二次電池は電解液の酸化分解電位が低く、充放電をしても容量を得ることができなかった。
No.c2、c5及びc9の電解液は、電解質としてマグネシウム塩とフッ素含有アニオンを有しないリチウム塩を含有し、溶媒として鎖状スルホン化合物以外の溶媒を含有しており、本発明で規定するリチウム塩及び本発明で規定する鎖状スルホン化合物を含有してない。これらの電解液を用いた二次電池は電解液の酸化分解電位が低く、充放電をしても容量を得ることができなかった。
No.c3、c4、c6、c8及びc10の電解液は、電解質としてリチウムイオンとフッ素含有アニオンとからなる塩及びマグネシウム塩を含有し、溶媒として鎖状スルホン化合物以外の溶媒を含有しており、本発明で規定する鎖状スルホン化合物を含有していない。これらの電解液のうち、No.c3、c6及びc8の電解液は、やはり酸化安定性が低く、充放電試験で容量を得ることができなかった。No.c4の電解液は、マグネシウム塩とリチウム塩がフッ素含有アニオンを有するもののみから構成されており、吸蔵/放出効率が著しく低いために、充放電をしても容量を得ることはできなかった。No.c10の電解液は、溶媒としてスルホン化合物を含有しているが、当該スルホン化合物は環状スルホンであり、マグネシウムの吸蔵/放出効率が著しく低いために、充放電をしても容量を得ることはできなかった。
すなわち、これらの電解液を用いたハイブリッド型電池は、電解液の酸化分解電位が低いか、マグネシウムの吸蔵/放出効率が著しく低いために、充放電をしても容量を得ることができなかった。
これに対して、No.1~5の本発明のハイブリッド型電解液は、マグネシウムに対して3V以上の酸化分解電位を有し、これらの電解液を用いた本発明のハイブリッド型電池は高電圧で動作させることができ、サイクル特性にも優れることが分かった。
【0058】
【0059】
【0060】
No.c11の電解液は、電解質としてリチウムイオンとフッ素含有アニオンとからなる塩及びマグネシウム塩を含有し、溶媒として鎖状スルホン化合物以外の溶媒を含有しており、本発明で規定する鎖状スルホン化合物を含有していない。No.c11の電解液は、マグネシウムの吸蔵/放出が起こりにくく、試験電圧上限まで充電しても正極活物質からLiイオンの脱離が起こらなかったため、容量が低く、サイクル特性が劣った。
これに対して、No.6~10の本発明のハイブリッド型電解液は、マグネシウムに対して3V以上の酸化分解電位を有し、これらの電解液を用いた本発明のハイブリッド型電池は高電圧で動作させることができ、サイクル特性にも優れることが分かった。特に、No.6~9の結果から、電解液が含有する溶媒に占める鎖状スルホン化合物の含有量の割合が20~80質量%であることにより、十分な初回放電容量を得ることができ、また、サイクル特性にも優れることが分かった。
【0061】
【0062】
<表の注>
LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド
【0063】
表1~4の実施例(No.1~16)の結果から、本発明のハイブリッド型電解液は、種々のマグネシウム塩と、本発明で規定する種々のアルカリ金属塩とを用いて、マグネシウムに対して3V以上の酸化分解電位を実現できることができ、これらの電解液を用いた本発明のハイブリッド型電池は高電圧で動作させることができ、サイクル特性にも優れることが分かった。
【0064】
【0065】
<表の注>
NaTFSI:ナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
EMS:エチルメチルスルホン
【0066】
No.21及び22の結果から、本発明のハイブリッド型電解液は、アルカリ金属塩としてナトリウムイオンとフッ素含有アニオンを用いた形態においても、マグネシウムに対して3V以上の酸化分解電位を有することが分かった。また、No.21及び22の結果から、上記電解液を用いて、正極活物質層がアルカリ金属としてナトリウムを含有する、本発明のハイブリッド型電池は高電圧で動作させることができ、サイクル特性にも優れることが分かった。