(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071097
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】環境制御システム、仮眠システム、エアカーテンシステム、環境制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/64 20180101AFI20230515BHJP
F24F 11/66 20180101ALI20230515BHJP
F24F 120/10 20180101ALN20230515BHJP
【FI】
F24F11/64
F24F11/66
F24F120:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183707
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 沙季
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA01
3L260CA01
3L260EA02
3L260EA19
3L260FA01
(57)【要約】
【課題】現実空間内の人が快適であると感じるように、現実空間の空気環境を精度よく調整することができる環境制御システム、仮眠システム、エアカーテンシステム、環境制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】環境制御システム1では、人情報取得部11は、現実空間RS1内の人H1の生体情報を含む人情報を取得する。空気環境検出部12は、現実空気環境を検出する。記憶部14は、現実空間RS1を模擬した仮想空間VS1に人H1を模擬したヒューマンモデルHM1が存在するシミュレーションモデルSM1のデータを記憶している。推定部15は、シミュレーションモデルSM1に人情報及び現実空気環境を適用して、人H1の状態を推定する。空調制御部16は、人H1の状態が目標状態となるように、空調システム2を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実空間の空気環境である現実空気環境を調整する空調システムを制御する環境制御システムであって、
前記現実空間内の人の生体情報を含む人情報を取得する人情報取得部と、
前記現実空気環境を検出する空気環境検出部と、
前記現実空間を模擬した仮想空間に前記人を模擬したヒューマンモデルが存在するシミュレーションモデルのデータを記憶している記憶部と、
前記シミュレーションモデルに前記人情報及び前記現実空気環境を適用して、前記人の状態を推定する推定部と、
前記人の状態が目標状態となるように、前記空調システムを制御する空調制御部と、を備える
環境制御システム。
【請求項2】
前記人が前記現実空間に入ったときの前記生体情報を、初期生体情報として取得する初期情報取得部を更に備え、
前記推定部は、前記シミュレーションモデルに前記人情報、前記現実空気環境、及び前記初期生体情報を適用して、前記人の状態を推定する
請求項1の環境制御システム。
【請求項3】
前記推定部は、前記人の状態を、前記人の部位毎に推定する
請求項1又は2の環境制御システム。
【請求項4】
前記推定部が推定する前記人の状態は、前記人の皮膚温、深部体温、及び皮膚濡れ率の少なくとも1つである
請求項1乃至3のいずれか1つの環境制御システム。
【請求項5】
前記現実空気環境に関する前記人の要望を取得する要望取得部を更に備え、
前記空調制御部は、前記人の要望に基づいて前記空調システムを制御する要望制御を、前記人の状態が目標状態となるように前記空調システムを制御する推定制御より優先させる
請求項1乃至4のいずれか1つの環境制御システム。
【請求項6】
前記人情報は、前記人の出生地、生育地、及び人種の少なくとも1つを含む
請求項1乃至5のいずれか1つの環境制御システム。
【請求項7】
前記空調制御部は、前記人の出生地、生育地、及び人種の少なくとも1つから、前記人の季節性サーカディアンリズムを推定し、前記季節性サーカディアンリズムに基づいて、前記目標状態を決定する
請求項6の環境制御システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つの環境制御システムと、
前記空調システムと、
前記現実空間として、前記人が仮眠をとるための仮眠スペースを有する仮眠ボックスと、を備える
仮眠システム。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1つの環境制御システムと、
前記空調システムと、を備え、
前記空調システムは、前記現実空間に空気を吹き出すことによってエアカーテンを形成する
エアカーテンシステム。
【請求項10】
現実空間の空気環境である現実空気環境を調整する空調システムを制御する環境制御方法であって、
前記現実空間内の人の生体情報を含む人情報を取得する人情報取得ステップと、
前記現実空気環境を検出する空気環境検出ステップと、
前記現実空間を模擬した仮想空間に前記人を模擬したヒューマンモデルが存在するシミュレーションモデルに、前記人情報及び前記現実空気環境を適用して、前記人の状態を推定する推定ステップと、
前記人の状態が目標状態となるように、前記空調システムを制御する空調制御ステップと、を含む
環境制御方法。
【請求項11】
コンピュータシステムに請求項10記載の環境制御方法を実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境制御システム、仮眠システム、エアカーテンシステム、環境制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の評価システムは、ヒューマンモデルの状態の評価の精度の向上を目的とする。評価システムは、第1取得部と、第2取得部と、評価部と、を備える。第1取得部は、モデル情報を取得する。モデル情報は、仮想空間に配置される人のモデルデータからなるヒューマンモデルに関する情報である。第2取得部は、環境情報を取得する。環境情報は、仮想空間に対応付けられておりヒューマンモデルに対して特定の作用を及ぼし得る環境に関する情報であり、環境は、温度(熱)、照明(光)、音、匂い及び空気質等のうちの1以上の要素を含む。評価部は、モデル情報と環境情報とに基づいて、ヒューマンモデルの状態を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、空間の空気環境を調整する空調システムを制御する制御システムがある。このような制御システムは、空間(現実空間)内の人が快適であると感じるように空間の空気環境を精度よく調整することが求められている。
【0005】
本開示は上記課題に鑑みてなされ、現実空間内の人が快適であると感じるように、現実空間の空気環境を精度よく調整することができる環境制御システム、仮眠システム、エアカーテンシステム、環境制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る環境制御システムは、現実空間の空気環境である現実空気環境を調整する空調システムを制御する。前記環境制御システムは、人情報取得部と、空気環境検出部と、記憶部と、推定部と、空調制御部と、を備える。前記人情報取得部は、前記現実空間内の人の生体情報を含む人情報を取得する。前記空気環境検出部は、前記現実空気環境を検出する。前記記憶部は、前記現実空間を模擬した仮想空間に前記人を模擬したヒューマンモデルが存在するシミュレーションモデルのデータを記憶している。前記推定部は、前記シミュレーションモデルに前記人情報及び前記現実空気環境を適用して、前記人の状態を推定する。前記空調制御部は、前記人の状態が目標状態となるように、前記空調システムを制御する。
【0007】
本開示の一態様に係る仮眠システムは、上述の環境制御システムと、前記空調システムと、前記現実空間として、前記人が仮眠をとるための仮眠スペースを有する仮眠ボックスと、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係るエアカーテンシステムは、上述の環境制御システムと、前記空調システムと、を備え、前記空調システムは、前記現実空間に空気を吹き出すことによってエアカーテンを形成する。
【0009】
本開示の一態様に係る環境制御方法は、現実空間の空気環境である現実空気環境を調整する空調システムを制御する。前記環境制御方法は、人情報取得ステップと、空気環境検出ステップと、推定ステップと、空調制御ステップと、を含む。前記人情報取得ステップは、前記現実空間内の人の生体情報を含む人情報を取得する。前記空気環境検出ステップは、前記現実空気環境を検出する。前記推定ステップは、前記現実空間を模擬した仮想空間に前記人を模擬したヒューマンモデルが存在するシミュレーションモデルに、前記人情報及び前記現実空気環境を適用して、前記人の状態を推定する。前記空調制御ステップは、前記人の状態が目標状態となるように、前記空調システムを制御する。
【0010】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに上述の環境制御方法を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によると、現実空間内の人が快適であると感じるように、現実空間の空気環境を精度よく調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態の環境制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、同上の環境制御システムの現実空間を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の環境制御システムのシミュレーションモデルを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態の環境制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、同上の第1変形例の環境制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、同上の環境制御システムを備える仮眠システムの仮眠ボックスを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、同上の仮眠システムの構成を示す概略図である。
【
図8】
図8は、同上の環境制御システムを備えるエアカーテンシステムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施形態は、一般に環境制御システム、仮眠システム、エアカーテンシステム、環境制御方法、及びプログラムに関する。より詳細に、以下の実施形態は、現実空間の空気環境である現実空気環境を調整する空調システムを制御する環境制御システム、仮眠システム、エアカーテンシステム、環境制御方法、及びプログラムに関する。
【0014】
なお、以下に説明する各実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、各実施形態及び変形例に限定されない。これらの実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0015】
(1)概要
図1に示す環境制御システム1は、現実空間RS1内の人H1が快適であると感じるように、現実空間RS1の空気環境である現実空気環境を精度よく調整するシステムである。
【0016】
現実空間RS1は、屋内空間、及び屋外空間のいずれでもよい。
【0017】
屋内空間は、例えば建物、部屋、共有スペース、及び箱型の構造物などを想定している。建物は、例えばオフィスビル、事務所、工場、商業施設、病院、高齢者施設、集合住宅、戸建て住宅、及び学校などである。部屋は、オフィス、ワーキングスペース、会議室、店舗、居間、病室、及び教室などである。共有スペースは、ロビー、及び待合室などである。箱型の構造物は、人を収容可能な中空の構造物であり、例えば仮眠ボックス、及びカラオケボックスなどである。
【0018】
屋外空間は、例えば、屋外店舗、屋外休憩所、屋外競技場、及び屋外イベント会場、などを想定している。
【0019】
但し、現実空間RS1は、特定の空間に限定されるものではない。
【0020】
そして、環境制御システム1は、現実空間RS1の空気環境である現実空気環境を調整する空調システム2を制御する。環境制御システム1は、人情報取得部11と、空気環境検出部12と、記憶部14と、推定部15と、空調制御部16と、を備える。人情報取得部11は、現実空間RS1内の人H1の生体情報を含む人情報を取得する。空気環境検出部12は、現実空気環境を検出する。記憶部14は、現実空間RS1を模擬した仮想空間VS1に人H1を模擬したヒューマンモデルHM1が存在するシミュレーションモデルSM1のデータを記憶している。推定部15は、シミュレーションモデルSM1に人情報及び現実空気環境を適用して、人H1の状態を推定する。空調制御部16は、人H1の状態が目標状態となるように、空調システム2を制御する。
【0021】
すなわち、環境制御システム1は、人情報、現実空気環境、及びシミュレーションモデルSM1を用いて、現実空間RS1内の人H1の状態を推定し、人H1の状態が目標状態となるように空調システム2を制御する。この結果、環境制御システム1は、現実空間RS1内の人H1が快適であると感じるように、現実空間RS1の空気環境を精度よく調整することができる。
【0022】
(2)詳細
環境制御システム1は、空調制御システム10、人情報取得部11、空気環境検出部12、及び初期情報取得部13を備えて、空調システム2を制御する。空調システム2は、現実空間RS1の空気環境である現実空気環境を調整する。
【0023】
(2.1)現実空間
本実施形態の現実空間RS1は、
図2に示すように、壁91、床92、天井93で囲まれた矩形体形状の屋内空間を想定している。壁91には、ドア94が設置されており、人は、ドア94を通って、現実空間RS1への進入、及び現実空間RS1からの退出を行う。
図2では、1人の人H1が現実空間RS1の外部からドア94を通って現実空間RS1に進入し、現実空間RS1に存在している。
【0024】
(2.2)空調システム
空調システム2は、現実空間RS1の空気環境である現実空気環境を調整する。
【0025】
図2に示すように、本実施形態の空調システム2は、送風機21、及び換気装置22を備える。
【0026】
送風機21は、現実空間RS1の空気を吸い込み、現実空間RS1に空気を吹き出す。すなわち、送風機21は、現実空間RS1に存在している人H1に向かって送風する。
【0027】
換気装置22は、換気扇及び現実空間RS1の窓開閉装置の少なくとも一方を備える。換気扇は、現実空間RS1の外部の空気を現実空間RS1に導入する。窓開閉装置は、モータ又はシリンダなどを用いて現実空間RS1の窓を開くことで、現実空間RS1の外部の空気を現実空間RS1に導入する。
【0028】
すなわち、空調システム2は、現実空間RS1での送風、及び現実空間RS1への外気導入を調整することで、現実空気環境として現実空間RS1内の温度、湿度、及び風量を調整することができる。
【0029】
(2.3)人情報取得部
人情報取得部11は、現実空間RS1内の人H1の人情報を取得し、取得した人情報を空調制御システム10に出力する。
【0030】
具体的に、人情報取得部11は、人H1の人情報として、人H1の生体情報、及び民族・地理情報を取得する。
【0031】
(生体情報)
生体情報は、人H1の身長、体重、年齢、性別、皮膚温度、体脂肪率、基礎代謝量、活動量、心拍、呼吸、血中酸素、BMI(Body Mass Index)、姿勢、及び動作などである。
【0032】
人情報取得部11は、例えば現実空間RS1を撮像する撮像装置を有している。この場合、人情報取得部11は、撮像装置の撮像画像に画像認識処理を施すことで、生体情報として身長、体重、年齢、性別、BMI、姿勢、及び動作などを推定できる。また、撮像装置が赤外線カメラの機能を有していれば、人情報取得部11は、撮像画像に基づいて、生体情報として皮膚温度などを推定できる。
【0033】
人情報取得部11は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した無線通信を行う通信部を有している。この場合、人情報取得部11は、皮膚温度、体脂肪率、基礎代謝量、活動量、心拍、呼吸、及び血中酸素などの生体情報を、人H1が装着しているウェアラブル端末又はスマートウオッチなどから取得できる。また、皮膚温度、活動量、心拍、呼吸、及び血中酸素などは、人H1が現実空間RS1に存在している間に経時変化する生体情報であり、人情報取得部11は、皮膚温度、活動量、心拍、呼吸、及び血中酸素などを間欠的(周期的)に取得することができる。
【0034】
(民族・地理情報)
民族・地理情報は、人H1の出生地、生育地、及び人種の少なくとも1つの情報を含む。出生地、生育地、及び人種などは、人H1の個人の温冷感に影響する。
【0035】
出生地及び生育地の気候帯(熱帯、乾燥帯、温帯、冷帯、高山気候など)は、人の温冷感に影響を及ぼすことがある。例えば、熱帯で育った人は、一般に寒さに弱い傾向にあり、冷帯で育った人は、一般に暑さに弱い傾向にある。また、温帯で育った人は、一般に季節に応じて変動するサーカディアンリズム(季節性サーカディアンリズム)を有しており、温冷感も季節に応じて変動する傾向にある。
【0036】
さらに、人種も人の温冷感に影響を及ぼすことがある。例えば、一般に欧米系の人は、アジア系の人に比べて寒さに強い傾向にある。
【0037】
人情報取得部11は、無線通信を行う通信部を有していれば、人H1が携行している個人認証用媒体(社員証、会員証、又はIDカードなどのICカード、スマートフォン、及びタブレット端末など)から民族・地理情報を取得できる。
【0038】
(2.4)空気環境検出部
空気環境検出部12は、現実空間RS1の現実空気環境を検出し、検出した現実空気環境の情報を空調制御システム10に出力する。
【0039】
空気環境検出部12は、例えば温度センサ、湿度センサ、及び風量センサなどを有している。この場合、空気環境検出部12は、現実空気環境として、現実空間RS1の複数箇所のそれぞれにおける温度、湿度、及び風量などを検出する。
【0040】
また、空気環境検出部12は、空調システム2の動作を監視しており、空調システム2の動作状態も現実空気環境として検出する。具体的に、空気環境検出部12は、送風機21の動作状態、及び換気装置22の動作状態も現実空気環境として検出する。送風機21の動作状態は、送風機21から現実空間RS1に送り出される空気の量(風量)、向き(風向)である。換気装置22の動作状態は、換気装置22によって現実空間RS1に導入される外気の量(外気導入量)、外気の温度(外気温)である。
【0041】
すなわち、空気環境検出部12は、現実空間RS1における温度、湿度、及び風量などの空間的な分布を検出する。
【0042】
(2.5)初期情報取得部
初期情報取得部13は、人H1が現実空間RS1に入ったときの生体情報を、初期生体情報として取得し、取得した初期生体情報を空調制御システム10に出力する。
【0043】
具体的に、初期情報取得部13は、人H1の初期生体情報として、現実空間RS1に入る直前又は直後の人H1の深部体温、皮膚温度、及び心拍を検出する。
【0044】
初期情報取得部13は、例えば接触式の深部体温計を有している。この場合、初期情報取得部13は、現実空間RS1に入る直前又は直後の人H1の深部体温を測定することで、人H1の深部体温の初期値を検出できる。
【0045】
また、初期情報取得部13は、上述の人情報取得部11が生体情報として取得した皮膚温度、及び心拍の初期値(現実空間RS1に入った直後の値)を、初期生体情報として取得する。
【0046】
(2.6)空調制御システム
空調制御システム10は、記憶部14、推定部15、及び空調制御部16を備える。
【0047】
なお、空調制御システム10は、コンピュータシステムを備えていることが好ましい。コンピュータシステムがプログラムを実行することによって、空調制御システム10の一部又は全部の機能が実現される。コンピュータシステムは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)を含む一つ又は複数の電子回路で構成される。ここでは、ICやLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)若しくはULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができる再構成可能な論理デバイスも同じ目的で使うことができる。複数の電子回路は、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されていてもよい。
【0048】
コンピュータシステムは、1台のコンピュータ装置、及び互いに連携した複数台のコンピュータ装置のいずれで実現されていてもよい。また、コンピュータシステムは、クラウドコンピューティングシステムとして構築されていてもよい。
【0049】
(2.6.1)記憶部
記憶部14は、
図3に示すシミュレーションモデルSM1のデータを記憶している。シミュレーションモデルSM1は、仮想空間VS1にヒューマンモデルHM1が存在する仮想モデルである。仮想空間VS1は、現実空間RS1を模擬した仮想モデルである。ヒューマンモデルHM1は、人H1を模擬した仮想の人体モデルである。なお、記憶部14は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、又はフラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリであることが好ましい。
【0050】
(仮想空間)
仮想空間VS1は、現実空間RS1を模擬しており、壁モデル91M、床モデル92M、及び天井モデル93Mで囲まれた矩形体形状の仮想空間である。壁モデル91M、床モデル92M、及び天井モデル93Mのそれぞれは、壁91、床92、及び天井93の各仮想モデルである。壁モデル91Mには、ドア94の仮想モデルであるドアモデル94Mが配置されている。すなわち、仮想空間VS1は、仮想空間VS1の形状及び大きさ、壁モデル91M、床モデル92M、及び天井モデル93Mの材質、ドアモデル94Mの位置及び材質、並びに仮想空間VS1における温度、湿度、及び風量の空間的な分布などの各空間属性を有する空間の仮想モデルである。
【0051】
さらに、仮想空間VS1は、現実空間RS1に設置されている空調システム2の仮想モデルとして、空調モデル2Mを更に有する。本実施形態の空調モデル2Mは、送風機21の仮想モデルである送風機モデル21M、及び換気装置22の仮想モデルである換気モデル22Mを含む。送風機モデル21Mは、風量、風向などの各属性を有する仮想モデルである。換気モデル22Mは、外気導入量、外気温などの各属性を有する仮想モデルである。
【0052】
仮想空間VS1は、現実空間RS1における熱の移動、伝導、収支、及び損失をシミュレーション可能な仮想モデルである。さらに、仮想空間VS1は、現実空間RS1の内部と現実空間RS1の外部との間の熱収支をシミュレーション可能な仮想モデルであることが好ましい。
【0053】
言い換えると、仮想空間VS1は、空調システム2を備える現実空間RS1における温度、湿度、及び風量の空間的な分布を解析可能な仮想モデルである。
【0054】
(ヒューマンモデル)
ヒューマンモデルHM1は、人H1を模擬した仮想の人体モデルである。
【0055】
ヒューマンモデルHM1は、少なくともヒューマンモデルHM1が人体を模した形状を成すためのモデル属性を有している。モデル属性は、人体の構造、姿勢、及び動作などに関する属性である。
【0056】
モデル属性は、例えば、人体の頭部、胸部、腹部、脚部及び腕部等の部位毎の属性、目、耳、鼻及び口等の器官毎の属性を含んでいる。また、モデル属性は、人体の骨、筋肉、血液及び皮膚等の組織毎の属性を更に含んでいる。
【0057】
さらに、ヒューマンモデルHM1は、人体と同様又は人体を簡素化した形の骨格及び関節を有しており、人体と同様に動作可能である。そのため、ヒューマンモデルHM1は、例えば、立位、臥位、及び座位等の姿勢となったり、歩行、腕上げ、物品の把持等の動作(行動)を行ったりすることも可能である。これらのヒューマンモデルHM1の姿勢及び動作等に関する属性も、モデル属性に含まれる。
【0058】
さらに、ヒューマンモデルHM1は、人H1の個人情報を設定するための個人属性も有している。個人属性は、体重、年齢、性別、皮膚温度、深部温度、皮膚濡れ率、体脂肪率、基礎代謝量、活動量、心拍、呼吸、血中酸素、BMI、姿勢、動作、出生地、生育地、及び人種などのような人毎の個人情報を設定される属性である。すなわち、個人属性は、人毎に異なる個人的な情報が設定される。
【0059】
ヒューマンモデルHM1は、上述のモデル属性及び個人属性を有する仮想モデルとして、仮想空間VS1に存在する。
【0060】
ヒューマンモデルHM1は、例えばASHRAE(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers)モデル、及びJOSモデル(Joint System Thermoregulation-Model)などのいずれかをベースにした仮想モデルであってもよい。但し、ヒューマンモデルHM1は、モデル属性及び個人属性を有する生体モデルであればよく、特定のモデルに限定されない。
【0061】
(2.6.2)推定部
推定部15は、シミュレーションモデルSM1に、現実空気環境、人情報(生体情報、及び民族・地理情報)、及び初期生体情報を適用して、現実空間RS1内の人H1の状態を推定する。本実施形態において、推定部15が推定する人H1の状態は、人H1の皮膚温、深部体温、及び皮膚濡れ率である。
【0062】
具体的に、推定部15は、仮想空間VS1の空間属性に現実空気環境を適用する。すなわち、推定部15は、仮想空間VS1の温度、湿度、及び風量の空間的な分布を、現実空間RS1の温度、湿度、及び風量の空間的な分布と同じにする。また、推定部15は、仮想空間VS1の空調モデル2Mの動作状態を、現実空間RS1の空調システム2の動作状態と同じにする。
【0063】
また、推定部15は、現実空間RS1のBIM(Building Information Modeling)データ、設計データ、又は施工データなどに基づいて、仮想空間VS1の形状及び大きさ、壁モデル91M、床モデル92M、及び天井モデル93Mの材質、並びにドアモデル94Mの位置及び材質などを設定する。現実空間RS1のBIMデータ、設計データ、又は施工データなどは、記憶部14に記憶させておいてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して外部のサーバから取得してもよい。
【0064】
さらに、推定部15は、シミュレーションを開始する前に、ヒューマンモデルHM1のモデル属性及び個人属性を設定(初期設定)する。
【0065】
モデル属性は、人体の構造、姿勢、及び動作に関する属性である。推定部15は、人体の構造に関するモデル属性に、人体の構造の標準データを設定する。推定部15は、姿勢及び動作に関するモデル属性に、生体情報(姿勢及び動作)に基づくデータを設定する。なお、姿勢及び動作に関するモデル属性は、現実空間RS1の人H1の姿勢及び動作が変化すると、同様に変化することが好ましい。
【0066】
個人属性は、体重、年齢、性別、皮膚温度、深部温度、皮膚濡れ率、体脂肪率、基礎代謝量、活動量、心拍、呼吸、血中酸素、BMI、姿勢、動作、出生地、生育地、及び人種などに関する属性である。推定部15は、人情報(生体情報、民族・地理情報)及び初期生体情報に基づくデータを、個人属性に設定する。初期生体情報は、人H1が現実空間RS1に入ったときの生体情報であり、現実空間RS1に入った後に変動する可能性のある生体情報の初期値として、個人属性に設定される。
【0067】
この結果、ヒューマンモデルHM1には、人H1の個人情報である体重、年齢、性別、皮膚温度、深部温度、皮膚濡れ率、体脂肪率、基礎代謝量、活動量、心拍、呼吸、血中酸素、BMI、姿勢、動作、出生地、生育地、及び人種などの情報が設定される。
【0068】
そして、推定部15は、仮想空間VS1にヒューマンモデルHM1が存在しているシミュレーションモデルSM1を用いた推定処理を開始する。すなわち、推定部15は、仮想空間VS1の空間熱解析、及びヒューマンモデルHM1の人体熱解析を行う。このとき、推定部15は、人情報取得部11が時間の経過に伴って間欠的に取得した人情報(生体情報、人分類情報)、及び空気環境検出部12が時間の経過に伴って間欠的に検出した現実空気環境をシミュレーションモデルSM1に反映させながら、仮想空間VS1の空間熱解析及びヒューマンモデルHM1の人体熱解析を行う。また、推定部15は、仮想空間VS1とヒューマンモデルHM1との間の熱交換を解析し、仮想空間VS1とヒューマンモデルHM1との間の熱的な相互作用も解析する。
【0069】
シミュレーションを開始した推定部15は、仮想空間VS1の熱分布とヒューマンモデルHM1の熱分布との相互作用を解析しながら、ヒューマンモデルHM1の熱分布の時間変化を解析する。すなわち、推定部15は、シミュレーションモデルSM1を用いて、ヒューマンモデルHM1の局所的な皮膚温度、深部体温、皮膚濡れ率を経時的に解析する。局所的な皮膚温度、深部体温、皮膚濡れ率は、ヒューマンモデルHM1の頭部、顔、耳たぶ、手の指、腕、胸部、腹部、太腿、ふくらはぎ、足の甲、及び足の指などの各部位の皮膚温度、深部体温、及び皮膚濡れ率である。
【0070】
そして、推定部15は、ヒューマンモデルHM1の局所的な皮膚温度、深部体温、皮膚濡れ率を、人H1の状態の推定結果とする。すなわち、推定部15は、ヒューマンモデルHM1の局所的な皮膚温度、深部体温、皮膚濡れ率を、人H1の局所的な皮膚温度、深部体温、皮膚濡れ率とみなすことで、人H1の状態を推定する。
【0071】
上述のように、推定部15は、人H1の身体的特徴、及び人H1の民族的・地理的特徴の両方に基づいて、人H1の状態を推定する。この結果、推定部15は、現実空間RS1内の人H1の状態を精度よく推定できる。
【0072】
(2.6.3)空調制御部
空調制御部16は、人H1の状態が目標状態となるように、空調システム2を制御する。本実施形態の目標状態は、人H1が快適であると感じる皮膚温度、深部体温、及び皮膚濡れ率である。
【0073】
まず、人H1は、人H1の身体的特徴によって温冷感が異なる。例えば、肥満型の人は、やせ型の人に比べて寒さに強く、暑さに弱い傾向にある。また、女性は、男性に比べて暑さに強く、寒さに弱い傾向にある。同様に、体脂肪率、基礎代謝量、活動量、心拍、呼吸、血中酸素、及びBMIなどの他の身体的特徴によっても温冷感が異なる。
【0074】
また、人H1は、人H1の民族的・地理的特徴によっても温冷感が異なる。例えば欧米系の人は、アジア系の人に比べて寒さに強い傾向にある。また、熱帯で育った人は、温帯又は冷帯で育った人に比べて寒さに弱い傾向にあり、冷帯で育った人は、温帯又は熱帯で育った人に比べて暑さに弱い傾向にある。また、温帯で育った人は、季節性サーカディアンリズムを有しており、温冷感も季節に応じて変動する傾向にある。
【0075】
すなわち、人H1の温冷感は、身体的特徴、及び民族的・地理的特徴に影響される。そこで、空調制御部16は、人H1の人情報(生体情報、及び民族・地理情報)に基づいて、目標状態を決定する。したがって、目標状態は、人H1の個人的な温冷感を考慮したものになる。
【0076】
また、人H1の温冷感は、民族的・地理的特徴に基づく季節性サーカディアンリズムにも影響される。そこで、空調制御部16は、人H1の民族・地理情報から、人H1の季節性サーカディアンリズムを推定し、推定した季節性サーカディアンリズムも用いて、目標状態を決定することが好ましい。
【0077】
そして、空調制御部16は、人H1の状態が目標状態となるように、空調システム2を制御する。言い換えると、空調制御部16は、ヒューマンモデルHM1の状態が目標状態となるように、空調システム2を制御する。
【0078】
具体的に、空調制御部16が、空調システム2を制御することによって現実空間RS1の現実空気環境(温度、湿度、及び風量)、及び人H1の生体情報は変化する。そこで、推定部15は、変化する現実空気環境及び人H1の生体情報をシミュレーションモデルSM1(仮想空間VS1、ヒューマンモデルHM1)に間欠的に反映させることで、人H1の状態を間欠的に推定し続ける。そして、空調制御部16は、人H1の状態(ヒューマンモデルHM1の状態)が目標状態に近づくように、空調システム2をフィードバック制御する。
【0079】
上述のように、空調制御部16は、人H1の身体的特徴、及び人H1の民族的・地理的特徴に基づいて、人H1の個人的な温冷感を考慮した空調制御(空調システム2の制御)を行う。この結果、空調制御部16は、現実空間RS1内の人H1が快適であると感じるように、現実空間RS1の空気環境を精度よく調整することができる。
【0080】
(2.7)利点
環境制御システム1は、ヒューマンモデルHM1に、人H1の生体情報だけでなく、人H1の民族・地理情報も適用することで、現実空間RS1内の人H1の状態を精度よく推定することができる。
【0081】
また、環境制御システム1は、人H1の生体情報だけでなく、人H1の民族・地理情報も用いることで、人H1の個人的な温冷感を精度よく推定することができる。また、環境制御システム1は、人H1の民族・地理情報から、人H1の季節性サーカディアンリズムを推定し、季節性サーカディアンリズムを更に用いることで、人H1の個人的な温冷感を更に精度よく推定することができる。
【0082】
また、環境制御システム1は、人H1の個人的な温冷感に基づいて、人H1が快適であると感じる皮膚温度、深部体温、及び皮膚濡れ率などの目標状態を決定することで、人H1が快適であると感じる目標状態を精度よく決定できる。
【0083】
そして、環境制御システム1は、人H1の状態が上述の目標状態となるように空調システム2を制御するので、現実空間RS1内の人H1が快適であると感じるように、現実空間RS1の空気環境を調整することができる。
【0084】
例えば、人H1が肥満体型であれば、環境制御システム1は、現実空間RS1の温度及び湿度のそれぞれを比較的低くし、風量及び外気導入量を比較的多くするように空調システム2を制御する。すなわち、環境制御システム1は、暑さを感じやすい肥満体型の人H1が快適であると感じるように、現実空気環境を調整することができる。
【0085】
また、環境制御システム1は、人H1の心拍数に基づいて、人H1の交感神経の状況を推定可能となり、空調システム2を制御することで、人H1の交感神経の状態を調整できる。すなわち、環境制御システム1は、人H1が快適と感じるように、交感神経の状態を調整することができる。
【0086】
また、環境制御システム1は、人H1の心拍の間隔が短ければ、人H1は運動直後であると推定できる。そこで、環境制御システム1は、最初は現実空間RS1の温度を比較的低くするが、汗によって体温が奪われることを抑えるために現実空間RS1の温度を経時的に上昇させるように、空調システム2を制御する。したがって、環境制御システム1は、運動後の人H1が快適であると感じるように、現実空気環境を調整することができる。
【0087】
さらに、環境制御システム1は、人H1の民族・地理情報を用いることで、人種、出生地、生育地などに影響される人H1の温冷感を考慮して、現実空間RS1の空気環境を調整することができる。また、環境制御システム1は、人H1の季節性サーカディアンリズムを考慮して、現実空間RS1の空気環境を調整することができる。すなわち、環境制御システム1は、人H1の民族的・地理的特徴によって異なる温冷感を考慮して、現実空気環境を調整することができる。
【0088】
(3)環境制御方法
環境制御システム1の上記動作をまとめると、環境制御システム1は、
図4に示す環境制御方法を実行する。
【0089】
環境制御方法は、現実空間RS1の空気環境である現実空気環境を調整する空調システム2を制御する。環境制御方法は、初期情報取得ステップS1と、人情報取得ステップS2と、空気環境検出ステップS3と、推定ステップS4と、空調制御ステップS5と、を含む。
【0090】
初期情報取得ステップS1では、初期情報取得部13は、人H1が現実空間RS1に入ったときの生体情報を、初期生体情報として取得し、取得した初期生体情報を空調制御システム10に出力する。
【0091】
人情報取得ステップS2では、人情報取得部11は、現実空間RS1内の人H1の人情報を取得し、取得した人情報を空調制御システム10に出力する。
【0092】
空気環境検出ステップS3では、空気環境検出部12は、現実空間RS1の現実空気環境を検出し、検出した現実空気環境の情報を空調制御システム10に出力する。
【0093】
推定ステップS4では、推定部15は、シミュレーションモデルSM1に、現実空気環境、人情報(生体情報、及び民族・地理情報)、及び初期生体情報を適用して、現実空間RS1内の人H1の状態を推定する。
【0094】
空調制御ステップS5では、空調制御部16は、人H1の状態が目標状態となるように、空調システム2を制御する。
【0095】
上述の環境制御方法は、現実空間RS1内の人H1が快適であると感じるように、現実空間RS1の空気環境を精度よく調整することができる。
【0096】
(4)第1変形例
図5に示すように、空調制御システム10は要望取得部17を更に備えていることが好ましい。
【0097】
要望取得部17は、現実空気環境に関する人H1の要望を取得する機能を有する。そして、空調制御部16は、人H1の要望に基づいて空調システム2を制御する要望制御を、人H1の状態が目標状態となるように空調システム2を制御する推定制御より優先させる。
【0098】
具体的に、要望取得部17は、Wi-Fi、Bluetooth、ZigBee又は免許を必要としない小電力無線等の規格に準拠した無線通信を行うことで、人H1が携行しているスマートフォン又はタブレット端末などの携帯情報端末との間で信号の授受を行う。人H1は、携帯情報端末を操作することで、現実空気環境に対する要望(暑い、少し暑い、快適、少し寒い、寒い、など)の情報を含む要望信号を空調制御システム10へ送信する。
【0099】
空調制御システム10では、要望取得部17が要望信号を受信すると、空調制御部16は、人H1の要望に基づいて空調システム2を制御する要望制御を行う。空調制御部16は、例えば人H1の要望が「暑い」であれば、要望制御として、現実空間RS1の温度を下げるように空調システム2を制御する。空調制御部16は、例えば人H1の要望が「寒い」であれば、要望制御として、現実空間RS1の温度を上げるように空調システム2を制御する。
【0100】
空調制御部16は、推定制御を行っているときに要望取得部17が要望信号を受信すると、要望制御を推定制御よりも優先させる。推定制御は、上述の実施形態で説明したように、人H1の状態が目標状態となるように空調システム2をフィードバック制御する制御である。
【0101】
空調制御システム10は、要望取得部17を更に備えることで、人H1の要望に沿った現実空気環境を実現できる。
【0102】
(5)仮眠システム
上述の現実空間RS1は、
図6に示す仮眠ボックスNB1の仮眠スペースRS11であってもよい。仮眠ボックスNB1は矩形体状の箱であり、仮眠ボックスNB1の内部空間が仮眠スペースRS11となる。仮眠スペースRS11は、人H1が仮眠をとるための空間である。人H1は、例えば医療従事者、工場の作業者、及び工事従事者などのように、夜勤又は三交代勤務に従事している人、又は多忙な人を想定しているが、特定の人に限定されない。
【0103】
図7の仮眠システムNS1は、環境制御システム1と、空調システム2と、仮眠ボックスNB1と、を備える。空調システム2は、仮眠スペースRS11の空気環境である現実空気環境を調整する。環境制御システム1は、仮眠スペースRS11内の人H1が快適であると感じるように、現実空気環境を調整する。
【0104】
なお、仮眠ボックスNB1は、サイズが比較的コンパクトであるため、空調システム2としてエアコンなどの大型の空調装置を用いることが難しく、送風機21、及び換気装置22などのように比較的小型の空調装置を用いることが好ましい。
【0105】
(6)エアカーテンシステム
上述の環境制御システム1は、
図8に示すエアカーテンシステムCS1に用いられてもよい。エアカーテンシステムCS1は、環境制御システム1と、空調システム2と、を備える。なお、
図8では、上述の現実空間RS1として、現実空間RS12を例示している。
【0106】
空調システム2は、現実空間RS12の天井に設けられた送風装置23と、現実空間RS12の床面に設けられた吸気装置24と、を備える。送風装置23の送風口231は長尺形状であり、送風口231は、現実空間RS12の天井から床に向かって空気を吹き出す。吸気装置24の吸気口241は長尺形状であり、吸気口241は、送風口231の下方に位置して現実空間RS12内の空気を吸い込む。したがって、現実空間RS12の天井の送風口231から吹き出す空気は下方に向かって流れ、現実空間RS12の床面の吸気口241に吸い込まれる。したがって、送風口231から吸気口241に向かって流れる空気によって、現実空間RS12にはエアカーテンC1(エアスクリーン)が形成される。エアカーテンC1は、現実空間RS12の天井から床に向かう面形状の気流である。
【0107】
そして、人H1は、送風口231に下方(吸気口241の上方)に位置することで、エアカーテンC1に包まれる。人H1の周囲の空気中の飛沫及び埃などは、エアカーテンC1によって吸気口241に吸い込まれる。したがって、エアカーテンC1によって、人H1の周りの空気に含まれる飛沫及び埃などを低減させることができる。
【0108】
また、環境制御システム1は、人H1が快適であると感じるようにエアカーテンC1を生成することで、人H1が会話などの活動をしやすい環境を形成できる。
【0109】
(7)その他の変形例
空調制御部16は、機械学習によって構築された学習モデルにヒューマンモデルHM1の局所的な皮膚温度、深部体温、及び皮膚濡れ率、人情報(生体情報、及び民族・地理情報)、及び現実空気環境などを入力することで、空調システム2へのフィードバック制御(推定制御)の指示を学習モデルから取得してもよい。具体的に、多数の教師データを用いた学習による学習モデルを構築しておく。学習モデルは、ディープラーニング(Deep Learning)などの機械学習によって構築されたニューラルネットワークを用いることが好ましい。また、学習モデルは、サポートベクターマシン(Support Vector Machine)などの他のアルゴリズムを用いてもよい。
【0110】
推定部15が推定する人H1の状態は、人H1の皮膚温、深部体温、及び皮膚濡れ率の少なくとも1つであればよい。また、推定部15が推定する人H1の状態は、人H1の皮膚温、深部体温、及び皮膚濡れ率以外を含んでいてもよい。
【0111】
空調システム2は、現実空間RS1内の温度及び湿度を調整するエアコン装置を含んでいてもよい。
【0112】
(8)まとめ
上述の実施形態に係る第1の態様の環境制御システム(1)は、現実空間(RS1)の空気環境である現実空気環境を調整する空調システム(2)を制御する。環境制御システム(1)は、人情報取得部(11)と、空気環境検出部(12)と、記憶部(14)と、推定部(15)と、空調制御部(16)と、を備える。人情報取得部(11)は、現実空間(RS1)内の人(H1)の生体情報を含む人情報を取得する。空気環境検出部(12)は、現実空気環境を検出する。記憶部(14)は、現実空間(RS1)を模擬した仮想空間(VS1)に人(H1)を模擬したヒューマンモデル(HM1)が存在するシミュレーションモデル(SM1)のデータを記憶している。推定部(15)は、シミュレーションモデル(SM1)に人情報及び現実空気環境を適用して、人(H1)の状態を推定する。空調制御部(16)は、人(H1)の状態が目標状態となるように、空調システム(2)を制御する。
【0113】
上述の環境制御システム(1)は、現実空間(RS1)内の人(H1)が快適であると感じるように、現実空間(RS1)の空気環境を精度よく調整することができる。
【0114】
上述の実施形態に係る第2の態様の環境制御システム(1)は、第1の態様において、人(H1)が現実空間(RS1)に入ったときの生体情報を、初期生体情報として取得する初期情報取得部(13)を更に備えることが好ましい。推定部(15)は、シミュレーションモデル(SM1)に人情報、現実空気環境、及び初期生体情報を適用して、人(H1)の状態を推定する。
【0115】
上述の環境制御システム(1)は、現実空間(RS1)内の人(H1)が快適であると感じるように、現実空間(RS1)の空気環境を更に精度よく調整することができる。
【0116】
上述の実施形態に係る第3の態様の環境制御システム(1)では、第1又は第2の態様において、推定部(15)は、人(H1)の状態を、人(H1)の部位毎に推定することが好ましい。
【0117】
上述の環境制御システム(1)は、人(H1)の状態を詳細に推定することができる。
【0118】
上述の実施形態に係る第4の態様の環境制御システム(1)では、第1乃至第3の態様のいずれか1つにおいて、推定部(15)が推定する人(H1)の状態は、人(H1)の皮膚温、深部体温、及び皮膚濡れ率の少なくとも1つであることが好ましい。
【0119】
上述の環境制御システム(1)は、人(H1)の快適性により関係する人(H1)の状態を推定することができる。
【0120】
上述の実施形態に係る第5の態様の環境制御システム(1)は、第1乃至第4の態様のいずれか1つにおいて、現実空気環境に関する人(H1)の要望を取得する要望取得部(17)を更に備えることが好ましい。空調制御部(16)は、人(H1)の要望に基づいて空調システム(2)を制御する要望制御を、人(H1)の状態が目標状態となるように空調システム(2)を制御する推定制御より優先させる。
【0121】
上述の環境制御システム(1)は、人(H1)の要望に沿った現実空気環境を実現できる。
【0122】
上述の実施形態に係る第6の態様の環境制御システム(1)では、第1乃至第5の態様のいずれか1つにおいて、人情報は、人(H1)の出生地、生育地、及び人種の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0123】
上述の環境制御システム(1)は、人(H1)の個人的な温冷感を精度よく推定することができる。
【0124】
上述の実施形態に係る第7の態様の環境制御システム(1)では、第6の態様において、空調制御部(16)は、人(H1)の出生地、生育地、及び人種の少なくとも1つから、人(H1)の季節性サーカディアンリズムを推定し、季節性サーカディアンリズムに基づいて、目標状態を決定することが好ましい。
【0125】
上述の環境制御システム(1)は、人(H1)の個人的な温冷感をより精度よく推定することができる。
【0126】
上述の実施形態に係る第8の態様の仮眠システム(NS1)は、第1乃至第7の態様のいずれか1つの環境制御システム(1)と、空調システム(2)と、現実空間(RS1)として、人(H1)が仮眠をとるための仮眠スペース(RS11)を有する仮眠ボックス(NB1)と、を備える。
【0127】
上述の仮眠システム(NS1)は、現実空間(RS1)内の人(H1)が快適であると感じるように、現実空間(RS1)の空気環境を精度よく調整することができる。
【0128】
上述の実施形態に係る第9の態様のエアカーテンシステム(CS1)は、第1乃至第7の態様のいずれか1つの環境制御システム(1)と、空調システム(2)と、を備える。空調システム(2)は、現実空間(RS1)に空気を吹き出すことによってエアカーテン(C1)を形成する。
【0129】
上述のエアカーテンシステム(CS1)は、現実空間(RS1)内の人(H1)が快適であると感じるように、現実空間(RS1)の空気環境を精度よく調整することができる。さらに、エアカーテン(C1)によって、人(H1)の周りの空気に含まれる飛沫及び埃などを低減させることができる。
【0130】
上述の実施形態に係る第10の態様の環境制御方法は、現実空間(RS1)の空気環境である現実空気環境を調整する空調システム(2)を制御する。環境制御方法は、人情報取得ステップ(S2)と、空気環境検出ステップ(S3)と、推定ステップ(S4)と、空調制御ステップ(S5)と、を含む。人情報取得ステップ(S2)は、現実空間(RS1)内の人(H1)の生体情報を含む人情報を取得する。空気環境検出ステップ(S3)は、現実空気環境を検出する。推定ステップ(S4)は、現実空間(RS1)を模擬した仮想空間(VS1)に人(H1)を模擬したヒューマンモデル(HM1)が存在するシミュレーションモデル(SM1)に、人情報及び現実空気環境を適用して、人(H1)の状態を推定する。空調制御ステップ(S5)は、人(H1)の状態が目標状態となるように、空調システム(2)を制御する。
【0131】
上述の環境制御方法は、現実空間(RS1)内の人(H1)が快適であると感じるように、現実空間(RS1)の空気環境を精度よく調整することができる。
【0132】
上述の実施形態に係る第11の態様のプログラムは、コンピュータシステムに第10の態様の環境制御方法を実行させる。
【0133】
上述のプログラムは、現実空間(RS1)内の人(H1)が快適であると感じるように、現実空間(RS1)の空気環境を精度よく調整することができる。
【符号の説明】
【0134】
1 環境制御システム
11 人情報取得部
12 空気環境検出部
13 初期情報取得部
14 記憶部
15 推定部
16 空調制御部
17 要望取得部
2 空調システム
RS1 現実空間
H1 人
VS1 仮想空間
HM1 ヒューマンモデル
SM1 シミュレーションモデル
NS1 仮眠システム
RS11 仮眠スペース
CS1 エアカーテンシステム
C1 エアカーテン
S2 人情報取得ステップ
S3 空気環境検出ステップ
S4 推定ステップ
S5 空調制御ステップ