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特開2023-71104エンジン制御装置及びエンジン制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071104
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】エンジン制御装置及びエンジン制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 23/02 20060101AFI20230515BHJP
   F02D 41/40 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
F02D23/02 H
F02D41/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183714
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 健吾
(72)【発明者】
【氏名】今森 祐介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 壮太
(72)【発明者】
【氏名】田村 太郎
【テーマコード(参考)】
3G092
3G301
【Fターム(参考)】
3G092AA02
3G092AA18
3G092AC08
3G092BB06
3G092EA04
3G092EA08
3G092EA11
3G092FA18
3G092HB02Z
3G301HA02
3G301HA11
3G301HA27
3G301JA26
3G301MA18
3G301MA26
3G301NE12
3G301PB05Z
(57)【要約】
【課題】HCの排出量の増大を抑制しつつ良好な負荷投入性能を実現することができるエンジン制御装置を提供する。
【解決手段】過給機付きエンジンを制御するためのエンジン制御装置であって、回転数増加モードは、エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも1段の燃料噴射を含み、ハイアイドルモードは、エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも2段の燃料噴射を含み、ハイアイドルモード実行部は、ハイアイドルモードにおけるエンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミングを、回転数増加モードにおけるエンジンの1燃焼サイクルにおける1段目の燃料噴射のタイミングよりもリタードするように構成される。
【選択図】 図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機付きエンジンを制御するためのエンジン制御装置であって、
前記エンジンを無負荷で運転しながら前記エンジンの回転数を増加させるモードである、回転数増加モードを実行するように構成された回転数増加モード実行部と、
前記回転数増加モードにおいて前記エンジンの運転状態に関する第1パラメータが閾値に到達した場合に、前記エンジンを無負荷で運転するモードであって前記回転数増加モードとは異なるモードであるハイアイドルモードを実行するように構成されたハイアイドルモード実行部と、
前記ハイアイドルモードを実行した後に、前記エンジンに負荷を投入するモードである負荷投入モードを実行するように構成された負荷投入モード実行部と、
を備え、
前記回転数増加モードは、前記エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも1段の燃料噴射を含み、
前記ハイアイドルモードは、前記エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも2段の燃料噴射を含み、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミングを、前記回転数増加モードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける1段目の燃料噴射のタイミングよりもリタードするように構成された、エンジン制御装置。
【請求項2】
前記回転数増加モード実行部は、前記回転数増加モードにおいて、前記エンジンの1燃焼サイクルにおける第1クランク角度範囲に亘って燃料噴射を行い、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記ハイアイドルモードにおいて、前記エンジンの1燃焼サイクルにおける第2クランク角度範囲に亘って燃料噴射を行い、該1燃焼サイクルにおける前記第2クランク角度範囲に対して遅角側に間隔を空けた第3クランク角度範囲に亘って燃料噴射を行うように構成され、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記ハイアイドルモードにおける前記第3クランク角度範囲の終点を、前記回転数増加モードにおける前記第1クランク角度範囲の終点よりも遅角側に制御するように構成された、請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記ハイアイドルモード実行部は、前記ハイアイドルモードにおける前記第3クランク角度範囲の始点を、前記回転数増加モードにおける前記第1クランク角度範囲の終点よりも進角側に制御するように構成された、請求項2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記第1パラメータは、前記エンジンの回転数、前記エンジンの燃料噴射量又は前記過給機の回転数である、請求項1乃至3の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記ハイアイドルモード実行部は、前記エンジンの運転状態に関する第2パラメータが目標範囲に収まるように、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける前記2段目の燃料噴射のタイミングを調節するように構成された、請求項1乃至4の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記ハイアイドルモード実行部は、前記エンジンの運転状態に関する第2パラメータが目標範囲に収まるように、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける1段目の燃料噴射による燃料噴射量と、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射による燃料噴射量との比を調節するように構成された、請求項1乃至4の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記第2パラメータは、前記エンジンの燃料噴射量、前記過給機の回転数又は前記エンジンの給気圧力であり、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記第2パラメータが前記目標範囲の上限を超えている場合に、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける前記2段目の燃料噴射のタイミングを進角させ、前記第2パラメータが前記目標範囲の下限を下回っている場合に、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける前記2段目の燃料噴射のタイミングを遅角させる、請求項5に記載のエンジン制御装置。
【請求項8】
前記第2パラメータは、前記エンジンの燃料噴射量、前記過給機の回転数又は前記エンジンの給気圧力であり、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記第2パラメータが前記目標範囲の上限を超えている場合に、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける1段目の燃料噴射による燃料噴射量F1と、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射による燃料噴射量F2との比F2/F1を減少させ、前記第2パラメータが前記目標範囲の下限を下回っている場合に、前記比F2/F1を増加させるように構成された、請求項6に記載のエンジン制御装置。
【請求項9】
前記負荷投入モード実行部は、前記エンジンの運転状態に関する第2パラメータが目標範囲に収まった状態で、前記負荷投入モードを実行するように構成された、請求項5乃至8の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
【請求項10】
過給機付きエンジンを制御するためのエンジン制御方法であって、
前記エンジンを無負荷で運転しながら前記エンジンの回転数を増加させるモードである、回転数増加モードを実行する回転数増加モード実行ステップと、
前記回転数増加モードにおいて前記エンジンの運転状態に関する第1パラメータが閾値に到達した場合に、前記エンジンを無負荷で運転するモードであって前記回転数増加モードとは異なるモードであるハイアイドルモードを実行するハイアイドルモード実行ステップと、
前記ハイアイドルモードを実行した後に、前記エンジンに負荷を投入するモードである負荷投入モードを実行する負荷投入モード実行ステップと、
を備え、
前記回転数増加モードは、前記エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも1段の燃料噴射を含み、
前記ハイアイドルモードは、前記エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも2段の燃料噴射を含み、
前記ハイアイドルモード実行ステップでは、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミングを、前記回転数増加モードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける1段目の燃料噴射のタイミングよりもリタードする、エンジン制御方法。
【請求項11】
過給機付きエンジンを制御するためのエンジン制御装置であって、
前記エンジンを無負荷で運転しながら前記エンジンの回転数を増加させるモードである、回転数増加モードを実行するように構成された回転数増加モード実行部と、
前記回転数増加モードにおいて前記エンジンの運転状態に関する第1パラメータが閾値に到達した場合に、前記エンジンを無負荷で運転するモードであって前記回転数増加モードとは異なるモードであるハイアイドルモードを実行するように構成されたハイアイドルモード実行部と、
前記ハイアイドルモードを実行した後に、前記エンジンに負荷を投入するモードである負荷投入モードを実行するように構成された負荷投入モード実行部と、
を備え、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記エンジンの運転状態に関する第2パラメータが目標範囲に収まるように、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける燃料噴射のタイミングを調節するように構成された、エンジン制御装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジン制御装置及びエンジン制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発電用のエンジンは、特に非常に速やかな電力供給が求められることから、負荷投入性能が重視されている。負荷投入性能の向上のためには、過給機を早く作動させる必要がある。このため、例えば特許文献1に記載されるように、ディーゼルエンジンへの負荷投入の前のハイアイドル時に燃料噴射タイミングをリタードする(遅角させる)ことで、エンジンの排気エネルギーを高めて過給機を早く作動させる手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-288057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハイアイドル時に燃料噴射タイミングを過度にリタードすると燃焼が不安定となり、HCが大量に排出されて白煙を生じることから、環境影響が懸念される。このため、燃料噴射タイミングのリタード量には限界があり、燃料噴射タイミングのリタード量の調整による負荷投入性能の向上効果は限定的である。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、HCの排出量の増大を抑制しつつ良好な負荷投入性能を実現することができるエンジン制御装置及びエンジン制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン制御装置は、
過給機付きエンジンを制御するためのエンジン制御装置であって、
前記エンジンを無負荷で運転しながら前記エンジンの回転数を増加させるモードである、回転数増加モードを実行するように構成された回転数増加モード実行部と、
前記回転数増加モードにおいて前記エンジンの運転状態に関する第1パラメータが閾値に到達した場合に、前記エンジンを無負荷で運転するモードであって前記回転数増加モードとは異なるモードであるハイアイドルモードを実行するように構成されたハイアイドルモード実行部と、
前記ハイアイドルモードを実行した後に、前記エンジンに負荷を投入するモードである負荷投入モードを実行するように構成された負荷投入モード実行部と、
を備え、
前記回転数増加モードは、前記エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも1段の燃料噴射を含み、
前記ハイアイドルモードは、前記エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも2段の燃料噴射を含み、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミングを、前記回転数増加モードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける1段目の燃料噴射のタイミングよりもリタードするように構成される。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン制御方法は、
過給機付きエンジンを制御するためのエンジン制御方法であって、
前記エンジンを無負荷で運転しながら前記エンジンの回転数を増加させるモードである、回転数増加モードを実行する回転数増加モード実行ステップと、
前記回転数増加モードにおいて前記エンジンの運転状態に関する第1パラメータが閾値に到達した場合に、前記エンジンを無負荷で運転するモードであって前記回転数増加モードとは異なるモードであるハイアイドルモードを実行するハイアイドルモード実行ステップと、
前記ハイアイドルモードを実行した後に、前記エンジンに負荷を投入するモードである負荷投入モードを実行する負荷投入モード実行ステップと、
を備え、
前記回転数増加モードは、前記エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも1段の燃料噴射を含み、
前記ハイアイドルモードは、前記エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも2段の燃料噴射を含み、
前記ハイアイドルモード実行ステップでは、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミングを、前記回転数増加モードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける1段目の燃料噴射のタイミングよりもリタードする。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン制御装置は、
過給機付きエンジンを制御するためのエンジン制御装置であって、
前記エンジンを無負荷で運転しながら前記エンジンの回転数を増加させるモードである、回転数増加モードを実行するように構成された回転数増加モード実行部と、
前記回転数増加モードにおいて前記エンジンの運転状態に関する第1パラメータが閾値に到達した場合に、前記エンジンを無負荷で運転するモードであって前記回転数増加モードとは異なるモードであるハイアイドルモードを実行するように構成されたハイアイドルモード実行部と、
前記ハイアイドルモードを実行した後に、前記エンジンに負荷を投入するモードである負荷投入モードを実行するように構成された負荷投入モード実行部と、
を備え、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記エンジンの運転状態に関する第2パラメータが目標範囲に収まるように、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける燃料噴射のタイミングを調節するように構成される。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、HCの排出量の増大を抑制しつつ良好な負荷投入性能を実現することができるエンジン制御装置及びエンジン制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るディーゼルエンジンシステム100の概略構成を模式的に示す図である。
図2】一実施形態に係るECU4のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図1及び図2に示したECU4の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図4図3に示したECU4によるエンジン2に負荷を投入する負荷投入フローの概要を示す図である。
図5図4に示した負荷投入フローの制御によるエンジン運転状態を示す図である。
図6】ハイアイドルモード及び回転数増加モードの各々について、エンジン2の1燃焼サイクルにおけるクランク角度と燃料噴射弁の開度との関係を示す図である。
図7】経過時間とエンジン2の空気過剰率との関係、経過時間と排気タービン前温度との関係、経過時間とエンジン2の排気中のHCの濃度との関係、を示している。
図8図3に示したECU4によるハイアイドルモードを経てエンジン2に負荷を投入する負荷投入フローの一例を示す図である。
図9図8に示した負荷投入フローにおけるエンジン2の給気温度が高い場合と低い場合について、エンジン2の2段目の燃料噴射タイミングと燃料噴射量Fとの関係、エンジン2の2段目の燃料噴射タイミングと過給機回転数N2との関係、エンジン2の2段目の燃料噴射タイミングとエンジン2の給気圧力Psとの関係、を示す図である。
図10図8に示した負荷投入フローにおけるエンジン2の給気温度が高い場合と低い場合について、エンジン2の2段目の燃料噴射タイミングと限界負荷投入率との関係、エンジン2の2段目の燃料噴射タイミングとハイアイドルモードにおけるエンジン2の排気中のHCの濃度との関係、を示す図である。
図11図3に示したECU4によるハイアイドルモードを経てエンジン2に負荷を投入する負荷投入フローの一例を示す図である。
図12図11に示した負荷投入フローにおけるエンジン2の給気温度が高い場合と低い場合について、後述の比F2/F1と燃料噴射量Fとの関係、比F2/F1と過給機回転数N2との関係、比F2/F1とエンジン2の給気圧力Psとの関係、を示す図である。
図13図11に示した負荷投入フローにおけるエンジン2の給気温度が高い場合と低い場合について、後述の比F2/F1と限界負荷投入率との関係、比F2/F1とハイアイドルモードにおけるエンジン2の排気中のHCの濃度との関係、を示す図である。
図14図3に示したECU4によるハイアイドルモードを経てエンジン2に負荷を投入する負荷投入フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係るディーゼルエンジンシステム100の概略構成を模式的に示す図である。
図1に示すようにディーゼルエンジンシステム100は、過給機付きディーゼルエンジン2(以下、単にエンジン2と記載する。)と、エンジン2を制御するための制御装置としてのECU(engine control unit)4とを備える。エンジン2は例えば発電用のエンジンであり、エンジン2が生成する回転エネルギーは発電機25によって電力に変換される。
【0013】
図1に示すように、エンジン2は、内部で燃料を燃焼させることで動力を発生させるように構成されたエンジン本体6と、エンジン本体6に給気(気体、例えば空気)を圧縮して供給するための給気ライン8と、エンジン本体6から排出された排気をエンジン2の外部に導くための排気ライン10と、エンジン本体6の内部に液体燃料を噴射するように構成された燃料噴射装置(燃料噴射弁)12と、過給機16と、インタークーラ18とを備える。また、エンジン2は、エンジン2の回転数N1を計測するエンジン回転数計32と、過給機16の回転数N2を計測する過給機回転数計34と、エンジン2の給気の温度である給気温度Ts(図示する例では給気ライン8におけるインタークーラ18後の温度)を計測するための給気温度計35と、エンジン2の給気の圧力である給気圧力Ps(図示する例では給気ライン8におけるインタークーラ18後の圧力)を計測するための給気圧力計36とを備える。
【0014】
過給機16は、排気ライン10に設けられた排気タービン16aと、排気タービン16aと回転軸を介して連結され、給気ライン8に設けられたコンプレッサ16bとを備える。エンジン本体6の排気が排気ライン10を介して排気タービン16aに供給されると排気タービン16aが回転し、これに伴い、排気タービン16aに回転軸を介して連結されたコンプレッサ16bが給気ライン8を流れる空気を圧縮してエンジン本体6に供給する。過給機16のコンプレッサ16bにより圧縮された空気は、インタークーラ18により冷却され、エンジン本体6に供給される。
【0015】
エンジン本体6は、少なくとも1つのシリンダ20と、少なくとも1つのシリンダ20の内部に各々が軸方向に沿って往復動可能に収容された少なくとも1つのピストン22とを含む。エンジン本体6は、シリンダ20とピストン22とにより区画された燃焼室26を内部に有する。エンジン本体6は、給気ライン8から給気弁28を通って燃焼室26に供給された気体をピストン22により、上記液体燃料の発火点以上に圧縮加熱する。この圧縮加熱された気体に、ECU4からの燃料噴射指令14によって燃料噴射装置12から液体燃料を噴射することで、液体燃料を自己着火させる。自己着火により生じた燃焼ガスの膨張によりピストン22が押し出される。そして、ピストン22の往復動がコンロッド23を介して不図示のクランクシャフトにより回転力(動力)に変換され、クランクシャフトの回転力が発電機25に伝達されて発電機25によって電力に変換される。燃焼室26の燃焼ガスは、燃焼室26から排気弁30を通って排出され、排気ライン10を介して過給機16の排気タービン16aに導かれる。
【0016】
図2は、一実施形態に係るECU4のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、ECU4は、例えばプロセッサ72、RAM(Random Access Memory)74、ROM(Read Only Memory)76、入力I/F80、及び出力I/F82を含み、これらがバス84を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。なお、ECU4のハードウェア構成は上記に限定されず、制御回路と記憶装置との組み合わせにより構成されてもよい。またECU4は、ECU4の各機能を実現するプログラムをコンピュータが実行することにより構成される。以下で説明するECU4における各部の機能は、例えばROM76に保持されるプログラムをRAM74にロードしてプロセッサ72で実行するとともに、RAM74やROM76におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0017】
図3は、図1及び図2に示したECU4の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図4は、図3に示したECU4によるエンジン2に負荷を投入する負荷投入フローの一例を示す図である。図5は、図4に示した負荷投入フローの制御の詳細を示す図である。図5は、経過時間とエンジン負荷との関係、経過時間とエンジン回転数との関係、経過時間と燃料噴射量との関係、経過時間と燃料噴射タイミングとの関係、及び、経過時間と給気圧力との関係、を示しており、図5に示す横軸(経過時間)は上記関係の各々に共通のものである。図5において、実線は以下で説明する実施形態を示しており、破線は従来の負荷投入フローの制御(ハイアイドルモードで1燃焼サイクル中に1段(1回)の燃料噴射を行う制御)を示している。
【0018】
図3に示すように、ECU4は、負荷投入指令受付部38と、回転数増加モード実行部40と、ハイアイドルモード実行部42と、負荷投入モード実行部44と、記憶部46とを含む。なお、回転数増加モード実行部40、ハイアイドルモード実行部42及び負荷投入モード実行部44は、それぞれ、以下で説明する回転数増加モード、ハイアイドルモード及び負荷投入モードを実行する主体であるが、これらの各モードを実行するスケジュール等を決定する主体は、例えばECU4とは別の制御装置(例えば発電機25を制御する制御装置等)であってもよい。すなわち、ECU4は、ECU4とは別の制御装置(例えば発電機25を制御する制御装置等)から受けた上記各モードを実行するスケジュール等を示す指令に基づいて上記各モードを実行してもよい。例えば、エンジン2が発電用のエンジンの場合、上記「ECU4とは別の制御装置」は、発電機25を制御する制御装置であってもよい。すなわち、ECU4は、発電機25を制御する制御装置から受けた上記各モードを実行するスケジュール等を示す指令に基づいて上記各モードを実行してもよい。
【0019】
図4に示すように、S101において、負荷投入指令受付部38は、エンジン2に負荷を投入する指令(要求)である負荷投入指令をECU4の外部(例えば発電機25を制御する制御装置等)から受けたか否かを判定する。S101において負荷投入指令を受けていないと負荷投入指令受付部38が判定した場合には、負荷投入指令受付部38は負荷投入指令を受けるまで待機する。S101において負荷投入指令を受けたと負荷投入指令受付部38が判定した場合に、S102において、回転数増加モード実行部40は、エンジン2を無負荷で運転しながらエンジン2の回転数を増加させるモードである、回転数増加モード(図5参照)を実行する。なお、ここでの「エンジン2に負荷を投入する」とは、エンジン2が無負荷の状態からエンジン2に初期負荷(図1に示す構成では発電機25による初期負荷)を与えることを意味する。また、ECU4は、S101で負荷投入指令受付部38が負荷投入指令を受けた場合において、回転数増加モードを実行する前に、エンジン2を無負荷かつ所定の回転数(ローアイドル回転数)で一定期間運転するローアイドルモードを実行してもよい。
【0020】
図5に示すように、回転数増加モードでは、回転数増加モード実行部40は、エンジン2を無負荷で運転しながら、エンジン2の1燃焼サイクル中に燃料噴射装置12によって噴射する燃料の量である燃料噴射量Fを時間が経過するにつれて増加させることにより、エンジン2の回転数を時間が経過するにつれて増加させる。
【0021】
S103では、回転数増加モード実行部40は、上記回転数増加モードにおいてエンジン2の運転状態に関する第1パラメータP1が予め規定された閾値Pthに到達したか否かを判断する。ここでの第1パラメータP1、例えば、図1に示したエンジン回転数計32によって計測したエンジン2の回転数N1であってもよく、図1に示した過給機回転数計34によって計測した過給機16の回転数N2であってもよく、ECU4で認識される、燃料噴射装置12の燃料通電期間(パルス幅)又は燃料噴射量Fであってもよい。
【0022】
S103において、上記第1パラメータP1が閾値Pthに到達した場合に、S104において、ハイアイドルモード実行部42は、エンジン2を無負荷で運転するモードであって回転数増加モードとは異なるモードであるハイアイドルモード(図5参照)を予め定められた所定期間(例えば予め定められたエンジン2の燃焼サイクル数に対応する期間)に亘って実行する。
【0023】
図5に示すように、ハイアイドルモードでは、ハイアイドルモード実行部42は、エンジン2を無負荷で運転しながら燃料噴射装置12の燃料噴射量を一定に維持することにより、エンジン2の回転数を一定に維持する。図6に示すように、回転数増加モードは、前記エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも1段(1回)の燃料噴射を含み、ハイアイドルモードは、エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも2段(2回)の燃料噴射を含む。ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードを実行する期間の少なくとも一部におけるエンジン2の1燃焼サイクル当りの燃料噴射の段数(回数)が、回転数増加モードを実行する期間の少なくとも一部におけるエンジンの1燃焼サイクル当りの燃料噴射の段数(回数)よりも多くなるように、燃料噴射装置12を制御してもよい。
【0024】
図6に示す例では、回転数増加モードにおけるエンジンの1燃焼サイクル当りの燃料噴射の段数は1段であり、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の1燃焼サイクル当りの燃料噴射の段数は2段である。
【0025】
また、図6に示す例では、回転数増加モード実行部40は、回転数増加モードにおいて、エンジン2の1燃焼サイクルにおける予め規定されたクランク角度の範囲である第1クランク角度範囲A1に亘って燃料噴射を行うように燃料噴射装置12を制御する。また、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおいて、エンジンの1燃焼サイクルのうち予め規定されたクランク角度の範囲である第2クランク角度範囲A2に亘って燃料噴射を行い、該1燃焼サイクルにおける第2クランク角度範囲A2に対して遅角側に間隔を空けた第3クランク角度範囲A3に亘って燃料噴射を行うように燃料噴射装置12を制御する。ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおいて、第2クランク角度範囲A2の終点A2eと第3クランク角度範囲A3の始点A3sとの間では燃料噴射を行わないように燃料噴射装置12を制御する。
【0026】
このように、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおけるエンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミング(始点A3sのタイミング)を、回転数増加モードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける1段目の燃料噴射のタイミング(第1クランク角度範囲の始点A1sのタイミング)よりもリタードするように構成されている。なお、「リタードする」とは、エンジン2の1燃焼サイクルにおけるタイミングを遅角側にずらすことを意味する。
【0027】
また、図6に示す例では、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおける第3クランク角度範囲A3の終点A3eを、回転数増加モードにおける第1クランク角度範囲A1の終点A1eよりも遅角側に制御する。また、図6に示す例では、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおける第3クランク角度範囲A3の始点A3sを、回転数増加モードにおける第1クランク角度範囲A1の終点A1eよりも進角側に制御する。また、図6に示す例では、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおける第2クランク角度範囲A2の終点A2eが、回転数増加モードにおける第1クランク角度範囲A1の始点A1sと終点A1eとの間となるように、燃料噴射装置12を制御する。ただし、終点A2eは始点A1sと終点A1eとの間でなくてもよい。
【0028】
図4に戻り、ハイアイドルモードの実行後に、S105において、負荷投入モード実行部44は、エンジン2に負荷を投入するモードである負荷投入モードを実行する。
【0029】
図5に示すように、負荷投入モードでは、エンジン2への負荷の投入に伴うエンジン2の回転数の低下量を回復させるように、時間が経過するにつれて燃料噴射量を増大させ、エンジン2の回転数が予め規定された回転数に到達すると、燃料噴射量を一定に制御する。また、負荷投入モードでは、上記2段の燃料噴射のタイミングの各々を時間が経過するにつれて進角側に変化させ、且つ、1段目の燃料噴射のタイミングと2段目の燃料噴射のタイミングとの間隔(図6における終点A2eのタイミングと始点A3sのタイミングとの間隔)を時間が経過するにつれて小さくし、該間隔を0とすることで1燃焼サイクルにおける燃料噴射の段数を2段から1段に変更している。
【0030】
(ECU4の上述の制御による作用効果)
上記制御によれば、回転数増加モードにおいてエンジン2の運転状態に関する第1パラメータP1が予め規定された閾値Pthに到達した場合に、1燃焼サイクル中に1段の燃料噴射を含む回転数増加モードから、1燃焼サイクル中に2段の燃料噴射を含むハイアイドルモードに切り替える。これにより、ハイアイドルモードにおける2段目の燃料噴射の開始時のエンジン2の燃焼室26のガス温度(筒内ガス温度)が高まるため、2段目の燃料噴射のタイミングをリタードした状態であっても、図7に示すように安定した燃焼を実現しつつエンジンの排気エネルギーを高めて排気タービン前温度(図1に示す構成では排気ライン10における排気弁30と排気タービン16aとの間の温度)を高めることができ、図5に示すようにエンジン2の給気圧力を上昇することができる。したがって、図7に示すようにハイアイドルモードにおけるエンジン2の排気中のHCの濃度の増加を抑制して白煙の排出量の増大を抑制しつつ、良好な負荷投入性能を実現することができる。
【0031】
また、ハイアイドルモードにおける第3クランク角度範囲A3の終点A3eを回転数増加モードにおける第1クランク角度範囲A1の終点A1eよりも遅角側に制御することにより、ハイアイドルモードにおける過給機16の排気タービン前温度を効果的に高めることができ、エンジン2の給気圧力を効果的に上昇することができる。したがって、負荷投入性能を効果的に向上することができる。
【0032】
また、ハイアイドルモードにおける第3クランク角度範囲A3の始点A3sを、回転数増加モードにおける第1クランク角度範囲A1のA1eよりも進角側に制御することにより、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の排気中のHCの濃度の増加を効果的に抑制することができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、例えば図8に示すように、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の運転状態に関する第2パラメータP2が所望の適切な目標範囲W(図9に示す例では下限をPL、上限をPHとする範囲)に収まるように、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミング(図6に示す例における始点A3sのタイミング)を複数の燃焼サイクルにおいて調節してもよい。
【0034】
ここでの第2パラメータP2は、例えば、図1に示した過給機回転数計34によって計測した過給機16の回転数N2であってもよく、給気圧力計36によって計測したエンジン2の給気圧力Psであってもよく、ECU4で認識される、燃料噴射装置12の燃料通電期間(パルス幅)又は燃料噴射量Fであってもよい。
【0035】
図8に示す例では、S201において、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおいて、燃料噴射装置12の燃料噴射パターンの調整を開始する。S202において、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおける第2パラメータP2が目標範囲Wの上限PHを超えているか否かを判断する。S202で第2パラメータP2が目標範囲Wの上限PHを超えていると判断した場合には、S203において、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミング(上記始点A3sのタイミング)を複数の燃焼サイクルに亘って進角させてS202に戻る。S202で第2パラメータP2が目標範囲Wの上限PHを超えていないと判断した場合には、S204において、第2パラメータP2が目標範囲Wの下限PLを下回っているか否かを判断する。S204で第2パラメータP2が目標範囲Wの下限PLを下回っていると判断した場合には、S205において、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミング(上記始点A3sのタイミング)を複数の燃焼サイクルに亘って遅角させてS202に戻る。S204において、第2パラメータP2が目標範囲Wの下限PLを下回っていないと判断した場合には、第2パラメータP2が目標範囲Wに収まっており、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミングが適正化されたと判断できるため、S206において燃料噴射装置12の燃料噴射パターンの調整を終了し、その後、エンジン2の負荷投入が行われる。なお、上記負荷投入モードにおいても、エンジン2の運転状態に関する第2パラメータP2が所望の適切な目標範囲に収まるように、負荷投入モードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける燃料噴射のタイミングを複数の燃焼サイクルにおいて調節してもよい。
【0036】
以下、図8を用いて説明した実施形態が奏する効果について説明する。
図9に示すように、例えばエンジン2の給気温度(雰囲気条件)によって、エンジン2の運転状態(図示する例では燃料噴射量F、過給機16の回転数N2及びエンジン2の給気圧力Ps)の適切な範囲Wに対応する燃料噴射の適切なタイミングは変化する。
【0037】
このため、上記のように、エンジン2の運転状態に関する第2パラメータP2が所望の適切な目標範囲W(図9に示す例では下限をPL、上限をPHとする範囲)に収まるように、エンジン2の1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミングを複数の燃焼サイクルにおいて調節することにより、図1図7を用いて説明した実施形態による効果に加えて、エンジン2の雰囲気条件(温度等)の変化に依らず、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の燃焼状態を良好に保つことができる。これにより、図10に示すように、エンジン2の給気温度によらず、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の排気中のHCの濃度を基準レベル以下に維持して白煙の排出量の増大を抑制しつつ、限界負荷投入率を基準レベル以上に維持して良好な負荷投入性能を実現することができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、例えば図11に示すように、ハイアイドルモード実行部42は、エンジン2の運転状態に関する第2パラメータP2が所望の適切な目標範囲W(図9に示す例では下限をPL、上限をPHとする範囲)に収まるように、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける1段目の燃料噴射による燃料噴射量F1(上記第2クランク角度範囲A2に対応する期間における燃料噴射量)と、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射による燃料噴射量F2(上記第3クランク角度範囲A3に対応する期間における燃料噴射量)との比F2/F1を複数の燃焼サイクルにおいて調節してもよい。
【0039】
ここでの第2パラメータP2は、例えば、図1に示した過給機回転数計34によって計測した過給機16の回転数N2であってもよく、給気圧力計36によって計測したエンジン2の給気圧力Psであってもよく、ECU4で認識される、燃料噴射装置12の燃料通電期間(パルス幅)又は燃料噴射量Fであってもよい。
【0040】
図11に示す例では、S301において、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおいて、燃料噴射装置12の燃料噴射パターンの調整を開始する。S302において、ハイアイドルモード実行部42は、第2パラメータP2が目標範囲Wの上限PHを超えているか否かを判断する。S302で第2パラメータP2が目標範囲Wの上限PHを超えていると判断した場合には、S303において、ハイアイドルモード実行部42は、複数の燃焼サイクルに亘って上記比F2/F1を減少させてS302に戻る。S302で第2パラメータP2が目標範囲Wの上限PHを超えていないと判断した場合には、S304において、第2パラメータP2が目標範囲Wの下限PLを下回っているか否かを判断する。S304で第2パラメータP2が目標範囲Wの下限PLを下回っていると判断した場合には、S305において、ハイアイドルモード実行部42は、複数の燃焼サイクルに亘って上記比F2/F1を増加させてS301に戻る。S304において、第2パラメータP2が目標範囲Wの下限PLを複数の燃焼サイクルに亘って下回っていないと判断した場合には、第2パラメータP2が目標範囲Wに収まっており、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける上記比F2/F1が適正化されたと判断できるため、S306において燃料噴射装置12の燃料噴射パターンの調整を終了し、その後、エンジン2の負荷投入が行われる。
【0041】
以下、図11を用いて説明した実施形態が奏する効果について説明する。
図12に示すように、例えばエンジン2の給気温度(雰囲気条件)によって、エンジン2の運転状態(図示する例では燃料噴射量F,過給機16の回転数N2及びエンジン2の給気圧力Ps)の適切な範囲Wに対応する上記比F2/F1は変化する。
【0042】
このため、上記のように、エンジン2の運転状態に関する第2パラメータP2が所望の適切な目標範囲W(図11に示す例では下限をPL、上限をPHとする範囲)に収まるように、複数の燃焼サイクルにおいて上記比F2/F1を調節することにより、図1図7を用いて説明した実施形態による効果に加えて、エンジン2の雰囲気条件(温度等)の変化に依らず、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の燃焼状態を良好に保つことができる。これにより、図13に示すように、エンジン2の雰囲気条件によらず、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の排気中のHCの濃度を基準レベル以下に維持して白煙の排出量の増大を抑制しつつ、限界負荷投入率を基準レベル以上に維持して良好な負荷投入性能を実現することができる。
【0043】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0044】
上述した幾つかの実施形態では、ハイアイドルモードにおいてエンジン2の1燃焼サイクルに2段の燃料噴射を行う制御を例示したが、他の実施形態では、ハイアイドルモードにおいてエンジン2の1燃焼サイクルにおける燃料噴射の段数は1段であってもよい。この場合、以下で説明するように、ハイアイドルモード実行部42は、エンジン2の運転状態に関する第2パラメータP2が目標範囲Wに収まるように、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける燃料噴射のタイミングを調節することにより、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の排気中のHCの濃度の増加を抑制して白煙の排出量の増大を抑制しつつ、良好な負荷投入性能を実現することができる。
【0045】
図14は、ハイアイドルモードにおいてエンジン2の1燃焼サイクルにおける燃料噴射の段数を1段とする場合の燃料噴射制御フローの一例を示す図である。
幾つかの実施形態では、例えば図14に示すように、ハイアイドルモード実行部42は、エンジン2の運転状態に関する第2パラメータP2が所望の適切な目標範囲W(図14に示す例では下限をPL、上限をPHとする範囲)に収まるように、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける燃料噴射のタイミングを複数の燃焼サイクルにおいて調節してもよい。
【0046】
ここでの第2パラメータP2は、例えば、図1に示した過給機回転数計34によって計測した過給機16の回転数N2であってもよく、給気圧力計36によって計測したエンジン2の給気圧力Psであってもよく、ECU4で認識される、燃料噴射装置12の燃料通電期間(パルス幅)又は燃料噴射量Fであってもよい。
【0047】
図14に示す例では、S401において、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおいて、燃料噴射装置12の燃料噴射パターンの調整を開始する。S402において、ハイアイドルモード実行部42は、第2パラメータP2が目標範囲Wの上限PHを超えているか否かを判断する。S402で第2パラメータP2が目標範囲Wの上限PHを超えていると判断した場合には、S403において、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおけるエンジンの1燃焼サイクルにおける燃料噴射のタイミングを進角させてS402に戻る。S402で第2パラメータP2が目標範囲Wの上限PHを超えていないと判断した場合には、S404において、第2パラメータP2が目標範囲Wの下限PLを下回っているか否かを判断する。S404で第2パラメータP2が目標範囲Wの下限PLを下回っていると判断した場合には、S405において、ハイアイドルモード実行部42は、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける燃料噴射のタイミングを遅角させてS402に戻る。S404において、第2パラメータP2が目標範囲Wの下限PLを複数の燃焼サイクルに亘って下回っていないと判断した場合には、第2パラメータP2が目標範囲Wに収まっており、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける燃料噴射のタイミングが適正化された状態で、S406において負荷投入モード実行部44が負荷投入モードを実行する。なお、負荷投入モードにおいても、上記S402~S405と同様に、エンジン2の運転状態に関する第2パラメータP2が所望の適切な目標範囲に収まるように、負荷投入モードにおけるエンジン2の1燃焼サイクルにおける燃料噴射のタイミングを複数の燃焼サイクルにおいて調節してもよい。
【0048】
図14に示した制御によれば、図8に示した制御と同様の理由により、エンジン2の雰囲気条件(温度等)の変化に依らず、ハイアイドルモードにおけるエンジンの燃焼状態を良好に保つことができる。これにより、エンジン2の雰囲気条件によらず、ハイアイドルモードにおけるエンジン2の排気中のHCの濃度を基準レベル以下に維持して白煙の排出量の増大を抑制しつつ、限界負荷投入率を基準レベル以上に維持して良好な負荷投入性能を実現することができる。
【0049】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0050】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン制御装置(例えば上述のECU4)は、
過給機付きエンジン(例えば上述の過給機付きディーゼルエンジン2)を制御するためのエンジン制御装置であって、
前記エンジンを無負荷で運転しながら前記エンジンの回転数を増加させるモードである、回転数増加モードを実行するように構成された回転数増加モード実行部(例えば上述の回転数増加モード実行部40)と、
前記回転数増加モードにおいて前記エンジンの運転状態に関する第1パラメータ(例えば上述の第1パラメータP1)が閾値(例えば上述の閾値Pth)に到達した場合に、前記エンジンを無負荷で運転するモードであって前記回転数増加モードとは異なるモードであるハイアイドルモードを実行するように構成されたハイアイドルモード実行部(例えば上述のハイアイドルモード実行部42)と、
前記ハイアイドルモードを実行した後に、前記エンジンに負荷を投入するモードである負荷投入モードを実行するように構成された負荷投入モード実行部(例えば上述の負荷投入モード実行部44)と、
を備え、
前記回転数増加モードは、前記エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも1段の燃料噴射を含み、
前記ハイアイドルモードは、前記エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも2段の燃料噴射を含み、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミング(例えば上述の始点A3sのタイミング)を、前記回転数増加モードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける1段目の燃料噴射のタイミング(例えば上述の始点A1sのタイミング)よりもリタードするように構成される。
【0051】
上記(1)に記載のエンジン制御装置によれば、回転数増加モードにおいてエンジンの運転状態に関する第1パラメータが閾値に到達した場合に、1燃焼サイクル中に1段の燃料噴射を含む回転数増加モードから、1燃焼サイクル中に2段の燃料噴射を含むハイアイドルモードに切り替えられる。これにより、ハイアイドルモードにおける2段目の燃料噴射の開始時のエンジンの燃焼室のガス温度(筒内ガス温度)が高まるため、2段目の燃料噴射のタイミングをリタードした状態であっても、安定した燃焼を実現しつつエンジンの排気エネルギーを高めて過給機の排気タービン前温度を高めることができ、エンジンの給気圧力を上昇することができる。したがって、ハイアイドルモードにおけるエンジンの排気中のHCの濃度の増加を抑制して白煙の排出量の増大を抑制しつつ、良好な負荷投入性能を実現することができる。
【0052】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のエンジン制御装置において、
前記回転数増加モード実行部は、前記回転数増加モードにおいて、前記エンジンの1燃焼サイクルにおける第1クランク角度範囲(例えば上述の第1クランク角度範囲A1)に亘って燃料噴射を行い、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記ハイアイドルモードにおいて、前記エンジンの1燃焼サイクルにおける第2クランク角度範囲(例えば上述の第2クランク角度範囲A2)に亘って燃料噴射を行い、該1燃焼サイクルにおける前記第2クランク角度範囲に対して遅角側に間隔を空けた第3クランク角度範囲(例えば上述の第3クランク角度範囲A3)に亘って燃料噴射を行うように構成され、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記ハイアイドルモードにおける前記第3クランク角度範囲の終点(例えば上述の終点A3e)を、前記回転数増加モードにおける前記第1クランク角度範囲の終点(例えば上述の終点A1e)よりも遅角側に制御するように構成される。
【0053】
上記(2)に記載のエンジン制御装置によれば、ハイアイドルモードにおける第3クランク角度範囲の終点を回転数増加モードにおける第1クランク角度範囲の終点よりも遅角側に制御することにより、ハイアイドルモードにおける過給機の排気タービン前温度を効果的に高めることができ、エンジンの給気圧力を効果的に上昇することができる。したがって、負荷投入性能を効果的に向上することができる。
【0054】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載のエンジン制御装置において、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記ハイアイドルモードにおける前記第3クランク角度範囲の始点(例えば上述の始点A3s)を、前記回転数増加モードにおける前記第1クランク角度範囲の終点(例えば上述の終点A1e)よりも進角側に制御するように構成される。
【0055】
上記(3)に記載のエンジン制御装置によれば、ハイアイドルモードにおける第3クランク角度範囲の始点を回転数増加モードにおける第1クランク角度範囲の終点よりも進角側に制御することにより、ハイアイドルモードにおけるエンジンの排気中のHCの濃度の増加を効果的に抑制することができる。
【0056】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載のエンジン制御装置において、
前記第1パラメータは、前記エンジンの回転数(例えば上述の回転数N1)、前記エンジンの燃料噴射量(例えば上述の燃料噴射量F)又は前記過給機の回転数(例えば上述の回転数N2)である。
【0057】
上記(4)に記載のエンジン制御装置によれば、エンジンの回転数、エンジンの燃料噴射量又は過給機の回転数が閾値に到達した場合に上記ハイアイドルモードを実行することができる。
【0058】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかに記載のエンジン制御装置において、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記エンジンの運転状態に関する第2パラメータ(例えば上述の第2パラメータP2)が目標範囲(例えば上述の目標範囲W)に収まるように、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける前記2段目の燃料噴射のタイミング(例えば上述の始点A3sのタイミング)を調節するように構成される。
【0059】
エンジンの給気温度等の雰囲気条件によって、エンジンの適切な運転状態を実現する燃料噴射のタイミングは変化する。このため、上記(5)に記載のように、エンジンの運転状態に関する第2パラメータが所望の適切な目標範囲に収まるように、エンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミングを調節することにより、エンジンの雰囲気条件の変化に依らず、ハイアイドルモードにおけるエンジンの燃焼状態を良好に保つことができる。これにより、エンジンの雰囲気条件によらず、ハイアイドルモードにおけるエンジンの排気中のHCの濃度の増加を抑制しつつ良好な負荷投入性能を実現することができる。
【0060】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかに記載のエンジン制御装置において、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記エンジンの運転状態に関する第2パラメータ(例えば上述の第2パラメータP2)が目標範囲(例えば上述の目標範囲W)に収まるように、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける1段目の燃料噴射による燃料噴射量と、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射による燃料噴射量との比(例えば上述の比F2/F1)を調節するように構成される。
【0061】
エンジンの給気温度等の雰囲気条件によって、エンジンの適切な運転状態を実現できる上記比F2/F1は変化する。このため、上記(6)に記載のように、エンジンの運転状態に関する第2パラメータが所望の適切な目標範囲に収まるように上記比F2/F1を調節することにより、エンジンの雰囲気条件(温度等)の変化に依らず、ハイアイドルモードにおけるエンジンの燃焼状態を良好に保つことができる。これにより、エンジンの雰囲気条件によらず、ハイアイドルモードにおけるエンジンの排気中のHCの濃度の増加を抑制しつつ良好な負荷投入性能を実現することができる。
【0062】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載のエンジン制御装置において、
前記第2パラメータは、前記エンジンの燃料噴射量(例えば上述の燃料噴射量F)、前記過給機の回転数(例えば上述の回転数N2)又は前記エンジンの給気圧力(例えば上述の給気圧力Ps)であり、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記第2パラメータが前記目標範囲の上限(例えば上述の上限PH)を超えている場合に、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける前記2段目の燃料噴射のタイミングを進角させ、前記第2パラメータが前記目標範囲の下限(例えば上述の下限PL)を下回っている場合に、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける前記2段目の燃料噴射のタイミングを遅角させる。
【0063】
エンジンの給気温度等の雰囲気条件によって、エンジンの適切な運転状態を実現する燃料噴射のタイミングは変化する。このため、上記(7)に記載のように、エンジンの燃料噴射量、過給機の回転数又はエンジンの給気圧力が所望の適切な目標範囲に収まるように、エンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミングを適切に調節することにより、エンジンの雰囲気条件の変化に依らず、ハイアイドルモードにおけるエンジンの燃焼状態を良好に保つことができる。これにより、エンジンの雰囲気条件によらず、ハイアイドルモードにおけるエンジンの排気中のHCの濃度の増加を抑制しつつ良好な負荷投入性能を実現することができる。
【0064】
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載のエンジン制御装置において、
前記第2パラメータは、前記エンジンの燃料噴射量(例えば上述の燃料噴射量F)、前記過給機の回転数(例えば上述の回転数N2)又は前記エンジンの給気圧力(例えば上述の給気圧力Ps)であり、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記第2パラメータが前記目標範囲の上限を超えている場合に、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける1段目の燃料噴射による燃料噴射量F1と、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射による燃料噴射量F2との比F2/F1を減少させ、前記第2パラメータが前記目標範囲の下限を下回っている場合に、前記比F2/F1を増加させるように構成される。
【0065】
エンジンの給気温度等の雰囲気条件によって、エンジンの適切な運転状態を実現する上記比F2/F1は変化する。このため、上記(8)に記載のように、エンジンの燃料噴射量、過給機の回転数又はエンジンの給気圧力が所望の適切な目標範囲に収まるように上記比(F2/F1)を適切に調節することにより、エンジンの雰囲気条件の変化に依らず、ハイアイドルモードにおけるエンジンの燃焼状態を良好に保つことができる。これにより、エンジンの雰囲気条件によらず、ハイアイドルモードにおけるエンジンの排気中のHCの濃度の増加を抑制しつつ良好な負荷投入性能を実現することができる。
【0066】
(9)幾つかの実施形態では、上記(5)乃至(8)の何れかに記載のエンジン制御装置において、
前記負荷投入モード実行部は、前記エンジンの運転状態に関する第2パラメータが目標範囲に収まった場合に、前記負荷投入モードを実行するように構成される。
【0067】
上記(9)に記載のエンジン制御装置によれば、排気中のHCの濃度の増加抑制と高い負荷投入性能とを両立できる適切なエンジンの運転状態にてエンジンに負荷を投入することができる。
【0068】
負荷投入に際してエンジンが適切な運転状態となっているかどうかをエンジンの燃料噴射量、過給機の回転数又はエンジンの給気圧力に基づいて判断することができる。
【0069】
(10)本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン制御方法は、
過給機付きエンジン(例えば上述の過給機付きディーゼルエンジン2)を制御するためのエンジン制御方法であって、
前記エンジンを無負荷で運転しながら前記エンジンの回転数を増加させるモードである、回転数増加モードを実行する回転数増加モード実行ステップと、
前記回転数増加モードにおいて前記エンジンの運転状態に関する第1パラメータが閾値に到達した場合に、前記エンジンを無負荷で運転するモードであって前記回転数増加モードとは異なるモードであるハイアイドルモードを実行するハイアイドルモード実行ステップと、
前記ハイアイドルモードを実行した後に、前記エンジンに負荷を投入するモードである負荷投入モードを実行する負荷投入モード実行ステップと、
を備え、
前記回転数増加モードは、前記エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも1段の燃料噴射を含み、
前記ハイアイドルモードは、前記エンジンの1燃焼サイクルにおいて少なくとも2段の燃料噴射を含み、
前記ハイアイドルモード実行ステップでは、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける2段目の燃料噴射のタイミング(例えば上述の始点A3sのタイミング)を、前記回転数増加モードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける1段目の燃料噴射のタイミング(例えば上述の始点A1sのタイミング)よりもリタードする。
【0070】
上記(10)に記載のエンジン制御方法によれば、回転数増加モードにおいてエンジンの運転状態に関する第1パラメータが閾値に到達した場合に、1燃焼サイクル中に1段の燃料噴射を含む回転数増加モードから、1燃焼サイクル中に2段の燃料噴射を含むハイアイドルモードに切り替えられる。これにより、ハイアイドルモードにおける2段目の燃料噴射の開始時のエンジンの燃焼室のガス温度(筒内ガス温度)が高まるため、2段目の燃料噴射のタイミングをリタードした状態であっても、安定した燃焼を実現しつつエンジンの排気エネルギーを高めて過給機の排気タービン前温度を高めることができ、エンジンの給気圧力を上昇することができる。したがって、ハイアイドルモードにおけるエンジンの排気中のHCの濃度の増加を抑制して白煙の排出量の増大を抑制しつつ、良好な負荷投入性能を実現することができる。
【0071】
(11)本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン制御装置(例えば上述のECU4)は、
過給機付きエンジン(例えば上述の過給機付きディーゼルエンジン2)を制御するためのエンジン制御装置であって、
前記エンジンを無負荷で運転しながら前記エンジンの回転数を増加させるモードである、回転数増加モードを実行するように構成された回転数増加モード実行部(例えば上述の回転数増加モード実行部40)と、
前記回転数増加モードにおいて前記エンジンの運転状態に関する第1パラメータ(例えば上述の第1パラメータP1)が閾値(例えば上述の閾値Pth)に到達した場合に、前記エンジンを無負荷で運転するモードであって前記回転数増加モードとは異なるモードであるハイアイドルモードを実行するように構成されたハイアイドルモード実行部(例えば上述のハイアイドルモード実行部42)と、
前記ハイアイドルモードを実行した後に、前記エンジンに負荷を投入するモードである負荷投入モードを実行するように構成された負荷投入モード実行部(例えば上述の負荷投入モード実行部44)と、
を備え、
前記ハイアイドルモード実行部は、前記エンジンの運転状態に関する第2パラメータが目標範囲に収まるように、前記ハイアイドルモードにおける前記エンジンの1燃焼サイクルにおける燃料噴射のタイミングを調節するように構成される。
【0072】
エンジンの給気温度等の雰囲気条件によって、エンジンの適切な運転状態を実現する燃料噴射のタイミングは変化する。このため、上記(11)に記載のように、エンジンの運転状態に関する第2パラメータが所望の適切な目標範囲に収まるように、エンジンの1燃焼サイクルにおける燃料噴射のタイミングを適切に調節することにより、エンジンの雰囲気条件の変化に依らず、ハイアイドルモードにおけるエンジンの燃焼状態を良好に保つことができる。これにより、エンジンの雰囲気条件によらず、ハイアイドルモードにおけるエンジンの排気中のHCの濃度の増加を抑制しつつ良好な負荷投入性能を実現することができる。
【符号の説明】
【0073】
2 過給機付きディーゼルエンジン(エンジン)
4 ECU
6 エンジン本体
8 給気ライン
10 排気ライン
12 燃料噴射装置
14 燃料噴射指令
16 過給機
16a 排気タービン
16b コンプレッサ
18 インタークーラ
19 スロットル弁
20 シリンダ
22 ピストン
23 コンロッド
25 発電機
26 燃焼室
28 給気弁
30 排気弁
32 エンジン回転数計
34 過給機回転数計
35 給気温度計
36 給気圧力計
38 負荷投入指令受付部
40 回転数増加モード実行部
42 ハイアイドルモード実行部
44 負荷投入モード実行部
46 記憶部
72 プロセッサ
74 RAM
76 ROM
78 HDD
80 入力I/F
82 出力I/F
84 バス
100 ディーゼルエンジンシステム
図1
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図3
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