(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071123
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】フォトマスクブランクスの製造方法及びフォトマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/32 20120101AFI20230515BHJP
G03F 1/00 20120101ALI20230515BHJP
G03F 1/58 20120101ALI20230515BHJP
G03F 1/80 20120101ALI20230515BHJP
【FI】
G03F1/32
G03F1/00 Z
G03F1/58
G03F1/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183761
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】302003244
【氏名又は名称】株式会社エスケーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】山田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】森山 久美子
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BB03
2H195BB14
2H195BB17
2H195BB35
2H195BC05
2H195BC09
2H195BC11
(57)【要約】
【課題】フォトマスクの製造時にパターンの寸法制御を容易とし、フォトマスクにおいてパターンの寸法精度を向上することができるフォトマスクブランクスの製造方法及びフォトマスクの製造方法を提供する。
【解決手段】フォトマスクブランクスの製造方法は、透明基板3の表面が第1のパターンの領域と第2のパターンの領域とに区画され、第1のパターンの領域に第1の機能性膜4が形成され、第2のパターンの領域に第2の機能性膜5が形成されるフォトマスクブランクス2を製造するものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の表面が第1のパターンの領域と第2のパターンの領域とに区画され、第1のパターンの領域に第1の機能性膜が形成され、第2のパターンの領域に第2の機能性膜が形成されるフォトマスクブランクスの製造方法であって、
透明基板の上に第1の機能性膜が形成された第1次フォトマスクブランクスを準備するフォトマスクブランクス準備工程と、
第1の機能性膜を第1のパターンの領域に対応するパターンでパターニングし、第2のパターンの領域における第1の機能性膜を除去する第1のパターニング工程と、
第1の機能性膜が除去された透明基板の露出部分及び第1の機能性膜の上に第2の機能性膜を形成する機能性膜形成工程と、
第2の機能性膜を第2のパターンの領域に対応するパターンでパターニングし、第1のパターンの領域における第2の機能性膜を除去する第2のパターニング工程とを備える
フォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項2】
第1次フォトマスクブランクスとして、透明基板の上に第1の機能性膜が形成され、第1の機能性膜の上に、第1の機能性膜と異なるエッチング特性を有する中間膜が形成されたフォトマスクブランクスを用い、
第2の機能性膜として、第1の機能性膜と同じエッチング特性を有する膜を用いる
請求項1に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項3】
第1の機能性膜及び第2の機能性膜として、Cr系の材質の膜を用いる
請求項2に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項4】
第1の機能性膜として、露光光の光学特性を調整する機能を有する膜を用い、
第2の機能性膜として、露光光の光学特性を調整する機能であって第1の機能性膜と異なる機能を有する膜を用いる
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項5】
第1の機能性膜又は第2の機能性膜のいずれか一方として、位相シフト膜又はハーフトーン膜を用い、
第1の機能性膜又は第2の機能性膜のいずれか他方として、遮光膜を用いる
請求項4に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法により製造されたフォトマスクブランクスを準備するフォトマスクブランクス準備工程と、
第1の機能性膜及び第2の機能性膜を所定のパターンでパターニングするパターニング工程とを備える
フォトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクブランクスの製造方法及びフォトマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ技術として、位相シフトマスクやハーフトーンマスクが知られている。位相シフトマスクは、透明基板の一部に位相シフト膜を備え、この部分を通過する光の位相や強度を変えることにより、解像度を向上する機能や焦点深度(DOF)を改善する機能を有するフォトマスクである。ハーフトーンマスクは、透明基板の一部にハーフトーン膜を備え、この部分を通過する光の強度を変えることにより、3階調以上の多階調を実現する機能を有するフォトマスクである。
【0003】
この種のフォトマスクは、i)透明基板の上に遮光膜が形成されたフォトマスクブランクスを準備する工程、ii)遮光膜の上にレジスト膜を形成する工程、iii)レジスト膜に所定のレジストパターンを描画し、不要なレジスト膜を現像により除去し、所定のレジストパターンを形成する工程、iv)レジストパターンをマスクとして、遮光膜の露出部分をエッチングにより除去する工程、v)残存するレジスト膜を除去する工程、vi)遮光膜が除去された透明基板の露出部分及び遮光膜の上に位相シフト膜又はハーフトーン膜を形成する工程、vii)位相シフト膜又はハーフトーン膜の上にレジスト膜を形成する工程、viii)レジスト膜に所定のレジストパターンを描画し、不要なレジスト膜を現像により除去し、所定のレジストパターンを形成する工程、ix)レジストパターンをマスクとして、位相シフト膜又はハーフトーン膜の露出部分及び遮光膜の露出部分をエッチングにより除去する工程、x)残存するレジスト膜を除去する工程、を経て製造される。たとえば特許文献1には、工程vi)としてハーフトーン膜を形成するフォトマスクの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のフォトマスクの製造方法によれば、遮光部は、遮光膜と位相シフト膜又はハーフトーン膜との積層部で構成される。このため、遮光部をパターニングする際、位相シフト膜又はハーフトーン膜と遮光膜の両方をエッチングする必要がある。しかし、両者のエッチングレートが異なる場合、位相シフト膜又はハーフトーン膜と遮光膜とでサイドエッチング量に差が生じる。この結果、遮光部のエッジにエッジラフネスが生じ、遮光部の寸法精度(遮光部の透過部に対するエッジ位置精度)を所期のとおりに仕上げることが困難となる。また、積層部であることでエッチング時間が単層の場合に比べて長くなることもあり、遮光部の寸法制御(遮光部の透過部に対するエッジ位置制御(CD(Critical Dimension:限界寸法)制御)が困難となる。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、フォトマスクの製造時にパターンの寸法制御を容易とし、フォトマスクにおいてパターンの寸法精度を向上することができるフォトマスクブランクスの製造方法及びフォトマスクの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフォトマスクブランクスの製造方法は、
透明基板の表面が第1のパターンの領域と第2のパターンの領域とに区画され、第1のパターンの領域に第1の機能性膜が形成され、第2のパターンの領域に第2の機能性膜が形成されるフォトマスクブランクスの製造方法であって、
透明基板の上に第1の機能性膜が形成された第1次フォトマスクブランクスを準備するフォトマスクブランクス準備工程と、
第1の機能性膜を第1のパターンの領域に対応するパターンでパターニングし、第2のパターンの領域における第1の機能性膜を除去する第1のパターニング工程と、
第1の機能性膜が除去された透明基板の露出部分及び第1の機能性膜の上に第2の機能性膜を形成する機能性膜形成工程と、
第2の機能性膜を第2のパターンの領域に対応するパターンでパターニングし、第1のパターンの領域における第2の機能性膜を除去する第2のパターニング工程とを備える
フォトマスクブランクスの製造方法である。
【0008】
ここで、本発明に係るフォトマスクブランクスの製造方法の一態様として、
第1次フォトマスクブランクスとして、透明基板の上に第1の機能性膜が形成され、第1の機能性膜の上に、第1の機能性膜と異なるエッチング特性を有する中間膜が形成されたフォトマスクブランクスを用い、
第2の機能性膜として、第1の機能性膜と同じエッチング特性を有する膜を用いる
との構成を採用することができる。
【0009】
この場合、
第1の機能性膜及び第2の機能性膜として、Cr系の材質の膜を用いる
との構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明に係るフォトマスクブランクスの製造方法の他態様として、
第1の機能性膜として、露光光の光学特性を調整する機能を有する膜を用い、
第2の機能性膜として、露光光の光学特性を調整する機能であって第1の機能性膜と異なる機能を有する膜を用いる
との構成を採用することができる。
【0011】
この場合、
第1の機能性膜又は第2の機能性膜のいずれか一方として、位相シフト膜又はハーフトーン膜を用い、
第1の機能性膜又は第2の機能性膜のいずれか他方として、遮光膜を用いる
との構成を採用することができる。
【0012】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
上記いずれかのフォトマスクブランクスの製造方法により製造されたフォトマスクブランクスを準備するフォトマスクブランクス準備工程と、
第1の機能性膜及び第2の機能性膜を所定のパターンでパターニングするパターニング工程とを備える
フォトマスクの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透明基板の上に第1の機能性膜及び第2の機能性膜が互いにエッジを接して同一平面状に並ぶように形成される複合型のフォトマスクブランクスが製造される。このフォトマスクブランクスにおいて、第1の機能性膜及び第2の機能性膜の実質的な積層部は存在せず、フォトマスクのパターンのエッジは、それぞれ実質的に単層である第1の機能性膜及び第2の機能性膜の上に規定される。これは、フォトマスクのパターンのエッジにエッジラフネスが生じにくいこと、そして、エッチング時間が短くなることを意味する。このため、本発明によれば、フォトマスクの製造時にパターンの寸法制御を容易とし、フォトマスクにおいてパターンの寸法精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るフォトマスクの要部拡大平面図である。
図1(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の一実施形態に係るフォトマスクブランクスであって、
図1のフォトマスクの元となるフォトマスクブランクスの要部拡大平面図である。
図2(b)は、
図2(a)のB-B線断面図である。
【
図3】
図3(a)~(d)は、本発明の実施形態1に係るフォトマスクブランクスの製造方法の説明図である。
【
図7】
図7(a)~(d)は、本発明の実施形態2に係るフォトマスクブランクスの製造方法の説明図である。
【
図11】
図11(a)~(d)は、本発明の実施形態3に係るフォトマスクブランクスの製造方法の説明図である。
【
図15】
図15(a)~(d)は、本発明の一実施形態に係るフォトマスクの製造方法の説明図である。
【
図19】
図19(a)~(d)は、本発明の他実施形態に係るフォトマスクブランクスの製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<フォトマスクの構成>
まず、本発明の一実施形態に係るフォトマスクの構成について説明する。
【0016】
図1に示すように、フォトマスク1は、透過部(白抜き部分)と、半透過部(ハッチング部分)と、遮光部(黒塗り部分)とを備える3階調の多階調フォトマスクである。透過部は、透明基板3で構成され、半透過部は、半透過膜4で構成され、遮光部は、遮光膜5で構成される。すなわち、半透過膜4及び遮光膜5が積層されていない透明基板3の露出部分が透過部となり、透明基板3の上に半透過膜4が積層される部分が半透過部となり、透明基板3の上に遮光膜5が積層される部分が遮光部となる。
【0017】
半透過部は、所定形状(本実施形態においては、矩形状)の単位要素(アイランド(島))が互いに所定間隔を有して2次元配列されるアイランドパターンの形態で形成される。遮光部は、半透過部の領域以外の領域を埋めるように形成される。透過部は、所定形状(本実施形態においては、矩形状)の単位要素(ホール(穴)7A,7B)が互いに所定間隔を有してかつ半透過部の領域及び遮光部の領域のそれぞれに内在するようにして2次元配列されるホールパターン7の形態で形成される。
【0018】
透明基板3は、合成石英ガラス等の基板である。透明基板3は、フォトマスク1を用いた露光工程で使用される露光光に含まれる代表波長(たとえば、i線、h線又はg線)に対して95%以上の透過率を有する。なお、露光光は、たとえば、i線、h線又はg線であってもよく、又はこれらの少なくとも2つの光を含む混合光であってもよい。あるいは、露光光は、これらの光に対して波長帯域が短波長側及び/又は長波長側へシフト又は拡張されたものであってもよい。一例として、露光光の波長帯域は、365nm~436nmのブロードバンドから300nm~450nmに拡張されたものが適用可能である。ただし、露光光は、これらに限定されるものではない。
【0019】
半透過膜4は、Cr又はCr系化合物、Ni又はNi系化合物、Ti又はTi系化合物、Si系化合物、金属シリサイド化合物等の公知の材質のうち、Cr系の材質が用いられる。本実施形態においては、半透過膜4は、Cr系化合物が用いられる。半透過膜4は、位相シフト膜である。あるいは、半透過膜4は、ハーフトーン膜であってもよい。半透過膜4は、露光光に含まれる代表波長に対し、透明基板3の透過率よりも低く、遮光膜5の透過率よりも高い透過率を有し、代表波長に対して5%ないし70%の透過率になるように設定される。なお、半透過膜4は、窒素含有量を調整することで、フォトマスク1の面内での透過率分布を改善した半透過型金属膜であってもよい。また、半透過膜4は、他の元素を含有させることで、半透過部における光学濃度(OD値)を変更することも可能である。半透過膜4は、スパッタ法、蒸着法等により、透明基板3の上に成膜される。
【0020】
遮光膜5は、半透過膜4と同じ材質が用いられる。本実施形態においては、遮光膜5は、Cr系化合物が用いられる。遮光膜5は、露光光に含まれる代表波長に対して1%以下の透過率を有する。あるいは、遮光部における光学濃度(OD値)が2.7以上を満たせばよい。一例として、遮光膜5は、第1成膜層と、第2成膜層とを備える積層構造である。第1成膜層は、Cr膜で構成され、遮光性を目的とする。第2成膜層は、酸化クロム膜で構成され、反射抑制を目的とする。この場合、第1成膜層の透過率が1%より高くても、第1成膜層及び第2成膜層の積層透過率が1%以下であればよい。遮光膜5は、スパッタ法、蒸着法等により、透明基板3の上に成膜される。
【0021】
半透過膜4及び遮光膜5は、同じ材質が用いられることにより、エッチング特性が同じである。しかし、半透過膜4及び遮光膜5と、後述する中間膜6とは、材質が異なることにより、エッチング特性が異なる。すなわち、半透過膜4及び遮光膜5は、中間膜6に対してエッチング選択性を有し、中間膜6は、半透過膜4及び遮光膜5に対してエッチング選択性を有する。
【0022】
<フォトマスクブランクスの構成>
次に、本発明の一実施形態に係るフォトマスクブランクスであって、フォトマスク1の元となるフォトマスクブランクスの構成について説明する。
【0023】
図2に示すように、フォトマスクブランクス2は、フォトマスク1のホールパターン7が形成される前の状態のものである。すなわち、フォトマスクブランクス2は、透明基板3の表面(の有効領域)全面に透過部を有さずに半透過膜4及び遮光膜5が互いにエッジを接して同一平面状に並ぶように形成されたものである。なお、同一平面状ということではあるが、半透過膜4及び遮光膜5の各膜厚が必ずしも同じ厚みということではない。たとえば、半透過膜4の膜厚が遮光膜5の膜厚よりも小さい場合やこの逆の場合は当然にあり得る。
【0024】
<フォトマスクブランクスの第1の製造方法>
次に、本発明の実施形態1に係るフォトマスクブランクス2の製造方法(フォトマスクブランクス2の第1の製造方法)について説明する。
【0025】
概略的には、当該製造方法は、透明基板3の表面が第1のパターンの領域と第2のパターンの領域とに区画され、第1のパターンの領域に第1の機能性膜が形成され、第2のパターンの領域に第2の機能性膜が形成されるフォトマスクブランクス2であって、第1のパターンの領域が半透過膜4の領域であり、第2のパターンの領域が遮光膜5の領域であり、第1の機能性膜が半透過膜4であり、第2の機能膜が遮光膜5であるフォトマスクブランクス2の製造方法である。なお、機能性膜とは、露光光の光学特性を調整する機能を有する膜をいう。機能性膜には、露光光の位相を変える機能を有する位相シフト膜、露光光の透過率を調整する機能を有する半透過膜、露光光を遮光する機能を有する遮光膜などがある。
【0026】
具体的には、当該製造方法は、
i)フォトマスクブランクス準備工程(工程1)
ii)レジスト膜形成工程(工程2)
iii)描画工程(工程3)
iv)現像工程(工程4)
v)中間膜エッチング工程(工程5)
vi)半透過膜エッチング工程(工程6)
vii)レジスト膜除去工程(工程7)
viii)遮光膜形成工程(工程8)
ix)レジスト膜形成工程(工程9)
x)描画工程(工程10)
xi)現像工程(工程11)
xii)遮光膜エッチング工程(工程12)
xiii)中間膜エッチング工程(工程13)
xiv)レジスト膜除去工程(工程14)
xv)仕上げ工程(工程15)
を備える。
【0027】
なお、レジスト膜形成工程(工程2)からレジスト膜除去工程(工程7)まで、レジスト膜形成工程(工程9)からレジスト膜除去工程(工程14)まで、をそれぞれパターニング工程という。前者のパターニング工程では、フォトマスクブランクス2の半透過膜4がパターニングされ、後者のパターニング工程では、フォトマスクブランクス2の遮光膜5がパターニングされる。
【0028】
フォトマスクブランクス準備工程(工程1)では、
図3(a)に示すように、透明基板3の上に半透過膜4が形成され、半透過膜4の上に中間膜(エッチングストッパ膜)6が形成され、これにより、透明基板3の上に半透過膜4及び中間膜6が積層形成されたフォトマスクブランクス(第1次フォトマスクブランクス)が準備される。中間膜6は、非Cr系の材質が用いられる。本実施形態においては、中間膜6は、Ni、Ti又はモリブデンシリサイド化合物が用いられる。半透過膜4及び中間膜6は、それぞれ、スパッタ法、蒸着法等により成膜される。
【0029】
1回目のレジスト膜形成工程(工程2)では、
図3(b)に示すように、中間膜6の上にレジストが均一に塗布されて、レジスト膜8が形成される。レジストは、塗布法やスプレイ法により塗布される。
【0030】
1回目の描画工程(工程3)では、
図3(c)に示すように、描画装置の電子ビーム又はレーザを用いてレジスト膜8に露光光が照射され、フォトマスクブランクス2の半透過膜4の領域に対応するレジストパターンが描画される。なお、1回目の描画工程(工程3)では、レジストパターンの描画に加え、2回目の描画工程(工程10)における描画の位置を合わせるためのマーク(アライメントマーク)が描画される。図示しないが、アライメントマークは、たとえば、レジストパターンを囲う外囲領域の適宜の3箇所又は4箇所に形成される。
【0031】
1回目の現像工程(工程4)では、
図3(d)に示すように、不要なレジスト膜8(部分8a)が現像により除去され、レジストパターンが形成される。現像は、現像液に浸漬することにより行われる。なお、描画工程(工程3)及び現像工程(工程4)を合わせて、レジストパターン形成工程という。
【0032】
中間膜エッチング工程(工程5)では、
図4(a)に示すように、レジストパターンをエッチング処理用マスクとして、中間膜6の露出部分がエッチングにより除去される。エッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれでも構わないが、大型サイズのフォトマスクであれば、ウェットエッチングが好ましい。エッチャントは、エッチング液やエッチングガスが用いられる。いずれのエッチャントであっても、中間膜6に対するエッチング選択性を有するエッチャント(半透過膜4をエッチングしないエッチャント)が用いられる。
【0033】
半透過膜エッチング工程(工程6)では、
図4(b)に示すように、中間膜6をエッチング処理用マスクとして、半透過膜4の露出部分がエッチングにより除去される。エッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれでも構わないが、大型サイズのフォトマスクであれば、ウェットエッチングが好ましい。エッチャントは、エッチング液やエッチングガスが用いられる。いずれのエッチャントであっても、半透過膜4に対するエッチング選択性を有するエッチャント(中間膜6をエッチングしないエッチャント)が用いられる。
【0034】
1回目のレジスト膜除去工程(工程7)では、
図4(c)に示すように、レジスト膜8が除去される。レジスト膜8の除去は、アッシング法やレジスト剥離液に浸漬することにより行われる。
【0035】
遮光膜形成工程(工程8)では、
図5(a)に示すように、半透過膜4が除去された透明基板3の露出部分及び半透過膜4の上に遮光膜5が形成される。遮光膜5は、スパッタ法、蒸着法等により成膜される。
【0036】
2回目のレジスト膜形成工程(工程9)では、1回目のレジスト膜形成工程(工程2)と同様、
図5(b)に示すように、遮光膜5の上にレジストが塗布されて、レジスト膜8が形成される。レジストは、塗布法やスプレイ法により塗布される。
【0037】
2回目の描画工程(工程10)では、1回目の描画工程(工程3)と同様、
図5(c)に示すように、描画装置の電子ビーム又はレーザを用いてレジスト膜8に露光光が照射され、フォトマスクブランクス2の遮光膜5の領域に対応するレジストパターンが描画される。描画装置は、1回目の描画工程(工程3)で使用された描画装置と同じ装置である。2回目の描画工程(工程10)にあたり、描画装置は、1回目の描画工程(工程3)において形成されたアライメントマークを検出し、透明基板3の位置合わせを行う。
【0038】
ただし、アライメントの精度を上げても、アライメントずれを完全になくすことは非常に困難である。そこで、2回目の描画工程(工程10)では、アライメントずれを考慮したレジストパターンが設定される。具体的には、フォトマスクブランクス2の遮光膜5のエッジを外側にオフセット(+オフセット)することにより、半透過膜4、中間膜6及び遮光膜5の積層部のエッジ部にラップ量Lでラップする(重なる)ようなレジストパターンが設定される。ラップ量Lは、たとえば0.3μm以上0.5μm以下の値である。
【0039】
2回目の現像工程(工程11)では、1回目の現像工程(工程4)と同様、
図5(d)に示すように、不要なレジスト膜8(部分8a)が現像により除去され、レジストパターンが形成される。現像は、現像液に浸漬することにより行われる。なお、描画工程(工程10)及び現像工程(工程11)を合わせて、レジストパターン形成工程という。
【0040】
遮光膜エッチング工程(工程12)では、
図6(a)に示すように、レジストパターンをエッチング処理用マスクとして、遮光膜5の露出部分がエッチングにより除去される。エッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれでも構わないが、大型サイズのフォトマスクであれば、ウェットエッチングが好ましい。エッチャントは、エッチング液やエッチングガスが用いられる。いずれのエッチャントであっても、遮光膜5に対するエッチング選択性を有するエッチャント(中間膜6をエッチングしないエッチャント)が用いられる。
【0041】
中間膜エッチング工程(工程13)では、
図6(b)に示すように、遮光膜5(遮光膜5が残存しない場合は、レジストパターン)をエッチング処理用マスクとして、中間膜6の露出部分がエッチングにより除去される。エッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれでも構わないが、大型サイズのフォトマスクであれば、ウェットエッチングが好ましい。エッチャントは、エッチング液やエッチングガスが用いられる。いずれのエッチャントであっても、中間膜6に対するエッチング選択性を有するエッチャント(半透過膜4をエッチングしないエッチャント)が用いられる。
【0042】
2回目のレジスト膜除去工程(工程14)では、1回目のレジスト膜除去工程(工程7)と同様、
図6(c)に示すように、レジスト膜8が除去される。レジスト膜8の除去は、アッシング法やレジスト剥離液に浸漬することにより行われる。
【0043】
仕上げ工程(工程15)では、
図6(d)に示すように、上記ラップによって残存する中間膜6及び遮光膜5の残渣9が除去される。残渣9は、幅が狭く、剛性が低いため、洗浄等により簡単に除去することができる。あるいは、遮光膜エッチング工程(工程12)において遮光膜5がサイドエッチングされ、中間膜エッチング工程(工程13)において中間膜6がサイドエッチングされることにより、残渣9が残存しないようであれば、仕上げ工程(工程15)は不要である。
【0044】
以上の工程1ないし工程15を経て、第2次フォトマスクブランクスであるフォトマスクブランクス2が完成する。
【0045】
<フォトマスクブランクスの第2の製造方法>
次に、本発明の実施形態2に係るフォトマスクブランクス2の製造方法(フォトマスクブランクス2の第2の製造方法)について説明する。
【0046】
概略的には、当該製造方法は、透明基板3の表面が第1のパターンの領域と第2のパターンの領域とに区画され、第1のパターンの領域に第1の機能性膜が形成され、第2のパターンの領域に第2の機能性膜が形成されるフォトマスクブランクス2であって、第1のパターンの領域が遮光膜5の領域であり、第2のパターンの領域が半透過膜4の領域であり、第1の機能性膜が遮光膜5であり、第2の機能膜が半透過膜4であるフォトマスクブランクス2の製造方法である。
【0047】
具体的には、当該製造方法は、
i)フォトマスクブランクス準備工程(工程1)
ii)レジスト膜形成工程(工程2)
iii)描画工程(工程3)
iv)現像工程(工程4)
v)中間膜エッチング工程(工程5)
vi)遮光膜エッチング工程(工程6)
vii)レジスト膜除去工程(工程7)
viii)半透過膜形成工程(工程8)
ix)レジスト膜形成工程(工程9)
x)描画工程(工程10)
xi)現像工程(工程11)
xii)半透過膜エッチング工程(工程12)
xiii)中間膜エッチング工程(工程13)
xiv)レジスト膜除去工程(工程14)
xv)仕上げ工程(工程15)
を備える。
【0048】
なお、レジスト膜形成工程(工程2)からレジスト膜除去工程(工程7)まで、レジスト膜形成工程(工程9)からレジスト膜除去工程(工程14)まで、をそれぞれパターニング工程という。前者のパターニング工程では、フォトマスクブランクス2の遮光膜5がパターニングされ、後者のパターニング工程では、フォトマスクブランクス2の半透過膜4がパターニングされる。
【0049】
第2の製造方法が第1の製造方法と異なる点は、第1の製造方法では、半透過膜4が先にパターニングされ、遮光膜5が後にパターニングされるのに対し、第2の製造方法では、遮光膜5が先にパターニングされ、半透過膜4が後にパターニングされる点である。これに関連する事項以外については、両者は、同じである。そこで、以下においては、異なる点について記載し、同じ点については、第1の製造方法についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0050】
フォトマスクブランクス準備工程(工程1)では、
図7(a)に示すように、透明基板3の上に遮光膜5が形成され、遮光膜5の上に中間膜(エッチングストッパ膜)6が形成され、これにより、透明基板3の上に遮光膜5及び中間膜6が積層形成されたフォトマスクブランクス(第1次フォトマスクブランクス)が準備される。
【0051】
1回目の描画工程(工程3)では、
図7(c)に示すように、フォトマスクブランクス2の遮光膜5の領域に対応するレジストパターンが描画される。
【0052】
中間膜エッチング工程(工程5)では、
図8(a)に示すように、レジストパターンをエッチング処理用マスクとして、中間膜6の露出部分がエッチングにより除去される。エッチャントは、中間膜6に対するエッチング選択性を有するエッチャント(遮光膜5をエッチングしないエッチャント)が用いられる。
【0053】
遮光膜エッチング工程(工程6)では、
図8(b)に示すように、中間膜6をエッチング処理用マスクとして、遮光膜5の露出部分がエッチングにより除去される。エッチャントは、遮光膜5に対するエッチング選択性を有するエッチャント(中間膜6をエッチングしないエッチャント)が用いられる。
【0054】
半透過膜形成工程(工程8)では、
図9(a)に示すように、遮光膜5が除去された透明基板3の露出部分及び遮光膜5の上に半透過膜4が形成される。
【0055】
2回目の描画工程(工程10)では、
図9(c)に示すように、フォトマスクブランクス2の半透過膜4の領域に対応するレジストパターンが描画される。ただし、レジストパターンは、フォトマスクブランクス2の半透過膜4のエッジを外側にオフセット(+オフセット)することにより、遮光膜5、中間膜6及び半透過膜4の積層部のエッジ部にラップ量Lでラップする(重なる)ようなレジストパターンである。
【0056】
半透過膜エッチング工程(工程12)では、
図10(a)に示すように、レジストパターンをエッチング処理用マスクとして、半透過膜4の露出部分がエッチングにより除去される。エッチャントは、半透過膜4に対するエッチング選択性を有するエッチャント(中間膜6をエッチングしないエッチャント)が用いられる。
【0057】
中間膜エッチング工程(工程13)では、
図10(b)に示すように、半透過膜4(半透過膜4が残存しない場合は、レジストパターン)をエッチング処理用マスクとして、中間膜6の露出部分がエッチングにより除去される。エッチャントは、中間膜6に対するエッチング選択性を有するエッチャント(遮光膜5をエッチングしないエッチャント)が用いられる。
【0058】
<フォトマスクブランクスの第3の製造方法>
次に、本発明の実施形態3に係るフォトマスクブランクス2の製造方法(フォトマスクブランクス2の第3の製造方法)について説明する。
【0059】
概略的には、当該製造方法は、透明基板3の表面が第1のパターンの領域と第2のパターンの領域とに区画され、第1のパターンの領域に第1の機能性膜が形成され、第2のパターンの領域に第2の機能性膜が形成されるフォトマスクブランクス2であって、第1のパターンの領域が半透過膜4の領域であり、第2のパターンの領域が遮光膜5の領域であり、第1の機能性膜が半透過膜4であり、第2の機能膜が遮光膜5であるフォトマスクブランクス2の製造方法である。
【0060】
具体的には、当該製造方法は、
i)フォトマスクブランクス準備工程(工程1)
ii)レジスト膜形成工程(工程2)
iii)描画工程(工程3)
iv)現像工程(工程4)
v)半透過膜エッチング工程(工程5)
vi)レジスト膜除去工程(工程6)
vii)遮光膜形成工程(工程7)
viii)レジスト膜形成工程(工程8)
ix)描画工程(工程9)
x)現像工程(工程10)
xi)遮光膜エッチング工程(工程11)
xii)レジスト膜除去工程(工程12)
xiii)仕上げ工程(工程13)
を備える。
【0061】
なお、レジスト膜形成工程(工程2)からレジスト膜除去工程(工程6)まで、レジスト膜形成工程(工程8)からレジスト膜除去工程(工程12)まで、をそれぞれパターニング工程という。前者のパターニング工程では、フォトマスクブランクス2の半透過膜4がパターニングされ、後者のパターニング工程では、フォトマスクブランクス2の遮光膜5がパターニングされる。
【0062】
第3の製造方法が第1の製造方法と異なる点は、第3の製造方法では、i)中間膜6が積層されず、透明基板3の上に半透過膜4のみが形成されるフォトマスクブランクスを第1次フォトマスクブランクスとして使用する点、及び、これに伴い、第1の製造方法の中間膜エッチング工程(工程5)及び中間膜エッチング工程(工程13)が無い点、ii)半透過膜4又は遮光膜5のいずれか一方は、たとえばCr系の材質の膜が用いられ、いずれか他方は、非Cr系の材質の膜が用いられ、これにより、半透過膜4と遮光膜5とは、材質が異なることにより、エッチング特性が異なる点、及び、これに伴い、使用するエッチャントが異なる点である。これに関連する事項以外については、両者は、同じである。そこで、第3の製造方法については、第1の製造方法についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0063】
<フォトマスクブランクスの第4の製造方法>
次に、本発明の実施形態4に係るフォトマスクブランクス2の製造方法(フォトマスクブランクス2の第4の製造方法)について説明する。
【0064】
概略的には、当該製造方法は、透明基板3の表面が第1のパターンの領域と第2のパターンの領域とに区画され、第1のパターンの領域に第1の機能性膜が形成され、第2のパターンの領域に第2の機能性膜が形成されるフォトマスクブランクス2であって、第1のパターンの領域が遮光膜5の領域であり、第2のパターンの領域が半透過膜4の領域であり、第1の機能性膜が遮光膜5であり、第2の機能膜が半透過膜4であるフォトマスクブランクス2の製造方法である。
【0065】
具体的には、当該製造方法は、
i)フォトマスクブランクス準備工程(工程1)
ii)レジスト膜形成工程(工程2)
iii)描画工程(工程3)
iv)現像工程(工程4)
v)遮光膜エッチング工程(工程5)
vi)レジスト膜除去工程(工程6)
vii)半透過膜形成工程(工程7)
viii)レジスト膜形成工程(工程8)
ix)描画工程(工程9)
x)現像工程(工程10)
xi)半透過膜エッチング工程(工程11)
xii)レジスト膜除去工程(工程12)
xiii)仕上げ工程(工程13)
を備える。
【0066】
なお、レジスト膜形成工程(工程2)からレジスト膜除去工程(工程6)まで、レジスト膜形成工程(工程8)からレジスト膜除去工程(工程12)まで、をそれぞれパターニング工程という。前者のパターニング工程では、フォトマスクブランクス2の遮光膜5がパターニングされ、後者のパターニング工程では、フォトマスクブランクス2の半透過膜4がパターニングされる。
【0067】
第4の製造方法が第3の製造方法と異なる点は、第3の製造方法では、半透過膜4が先にパターニングされ、遮光膜5が後にパターニングされるのに対し、第4の製造方法では、遮光膜5が先にパターニングされ、半透過膜4が後にパターニングされる点である。これに関連する事項以外については、両者は、同じである。そこで、第4の製造方法については、第1の製造方法及び第2の製造方法についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0068】
<フォトマスクの製造方法>
次に、本発明の一実施形態に係るフォトマスク1の製造方法について説明する。
【0069】
当該製造方法は、
i)フォトマスクブランクス準備工程(工程1)
ii)レジスト膜形成工程(工程2)
iii)描画工程(工程3)
iv)現像工程(工程4)
v)膜エッチング工程(工程5)
vi)レジスト膜除去工程(工程6)
を備える。
【0070】
なお、レジスト膜形成工程(工程2)からレジスト膜除去工程(工程7)までをパターニング工程という。パターニング工程では、フォトマスク1の透過部がパターニングされる。
【0071】
フォトマスクブランクス準備工程(工程1)では、
図15(a)に示すように、上記フォトマスクブランクス2のいずれかの製造方法により製造されたフォトマスクブランクス2(第2次フォトマスクブランクス)が準備される。
【0072】
レジスト膜形成工程(工程2)では、
図15(b)に示すように、半透過膜4及び遮光膜5の上にレジストが均一に塗布されて、レジスト膜8が形成される。レジストは、塗布法やスプレイ法により塗布される。
【0073】
描画工程(工程3)では、
図15(c)に示すように、描画装置の電子ビーム又はレーザを用いてレジスト膜8に露光光が照射され、フォトマスク1の透過部(ホールパターン7)の領域に対応するレジストパターンが描画される。
【0074】
ただし、半透過膜4及び遮光膜5はエッチング特性が同じであるものの、両者のエッチングレートが異なる場合、膜エッチング工程(工程5)において、半透過膜4と遮光膜5とでサイドエッチング量に差が生じる。この結果、フォトマスク1のホールパターン7のうち、半透過部の領域に内在するホール7A,…又は遮光部の領域に内在するホール7B,…の少なくとも一方の寸法精度(フォトマスク1の半透過部又は遮光部の少なくとも一方の透過部に対するエッジ位置精度)が悪くなる。そこで、描画工程(工程3)では、エッチングレートの差を考慮したレジストパターンが設定される。具体的には、たとえば半透過膜4が遮光膜5よりもエッチングレートが高いとした場合、
図17(a)及び(b)に示すホール7A,7Bが本来的な寸法形状であるのに対し、
図17(c)に示すように、半透過部の領域に内在するホール7A,…に対し、エッジを内側にオフセット(-オフセット)するか、
図17(d)に示すように、遮光部の領域に内在するホール7B,…に対し、エッジを外側にオフセット(+オフセット)するようなレジストパターンが設定される。もちろん、半透過膜4及び遮光膜5のエッチングレートが同じ又は近似する場合は、オフセット処理は不要である。
【0075】
なお、エッチングレートに関する別の手法としては、半透過膜4及び遮光膜5のエッチングレートが同じ又は近似するように半透過膜4及び遮光膜5を形成(成膜)するという方法が採用され得る。これは、フォトマスクブランクス2の製造段階において、半透過膜4の膜厚方向で含有化合物の組成比を変え、組成傾斜によりエッチングレートを調整するというものである。たとえば、膜厚方向でエッチングが進行する方向に向けてエッチング困難性を高くすることにより、エッチングレートを遅くするという方法が可能である。あるいは、その逆の調整方法も可能である。
【0076】
現像工程(工程4)では、
図15(d)に示すように、不要なレジスト膜8(部分8a)が現像により除去され、レジストパターンが形成される。現像は、現像液に浸漬することにより行われる。なお、描画工程(工程3)及び現像工程(工程4)を合わせて、レジストパターン形成工程という。
【0077】
膜エッチング工程(工程5)では、
図16(a)に示すように、レジストパターンをエッチング処理用マスクとして、半透過膜4及び遮光膜5の露出部分がエッチングにより除去される。エッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれでも構わないが、大型サイズのフォトマスクであれば、ウェットエッチングが好ましい。エッチャントは、エッチング液やエッチングガスが用いられる。
【0078】
ただし、上記フォトマスクブランクス2の第3の製造方法及び第4の製造方法により製造されたフォトマスクブランクス2である場合、半透過膜4と遮光膜5とはエッチング特性が異なり、使用するエッチャントが異なるため、膜エッチング工程(工程5)は、
図16(b)に示す、半透過膜エッチング工程(工程5-1)と、
図16(c)に示す、遮光膜エッチング工程(工程5-2)とに分けられる。順序はどちらが先でも構わない。
【0079】
レジスト膜除去工程(工程6)では、
図16(d)に示すように、レジスト膜8が除去される。レジスト膜8の除去は、アッシング法やレジスト剥離液に浸漬することにより行われる。
【0080】
以上の工程1ないし工程6を経て、フォトマスク1が完成する。
【0081】
<実施形態による効果>
上記フォトマスクブランクス2の各製造方法によれば、透明基板3の上に半透過膜4及び遮光膜5が互いにエッジを接して同一平面状に並ぶように形成される複合型のフォトマスクブランクス2、すなわち、光学特性が異なる2つの領域を有するフォトマスクブランクス2が製造される。このフォトマスクブランクス2において、半透過膜4及び遮光膜5の実質的な積層部は存在せず、フォトマスク1のパターンのエッジは、それぞれ実質的に単層である半透過膜4及び遮光膜5の上に規定される。すなわち、フォトマスク1のパターンは、全体的に膜厚が小さく、アスペクト比(パターンの寸法と高さの比)が小さいフォトマスクブランクス2にパターニングされる。これは、フォトマスク1のパターンのエッジにエッジラフネスが生じにくいこと、そして、エッチング時間が短くなることを意味する。このため、フォトマスク1の製造時にパターンの寸法制御を容易とし、フォトマスク1においてパターンの寸法精度を向上することができる。
【0082】
具体的には、
図18に示すように、半透過膜4及び遮光膜5は、それぞれ実質的に単層であり、フォトマスク1のホールパターン7のホール7A,…は、半透過膜4の領域に形成され、ホール7B,…は、遮光膜5の領域に形成される。このため、フォトマスク1において、各ホール7Aの寸法SA及び各ホール7Bの寸法SBは、設計に忠実な仕上がりとなる。これにより、積層部にホールパターンを形成する場合に比べ、各ホール7A,7Bの寸法精度を向上することができ、設計に忠実な高精度なホールパターン7をパターニングすることができる。
【0083】
また、上記フォトマスク1の製造方法によれば、半透過膜4に対するホール7A,…のパターニングと、遮光膜5に対するホール7B,…のパターニングは、別々のパターニング工程ではなく、1回のパターニング工程で行われる。このため、アライメントずれは当然に生じ得ず、フォトマスク1において、隣り合うホール7A,7Bの距離Dといった各ホール7A,7Bの相対位置関係は、設計に忠実な仕上がりとなる。これにより、各ホール7A,7Bの位置精度を向上することができ、この点においても、設計に忠実な高精度なホールパターン7をパターニングすることができる。
【0084】
また、上記フォトマスクブランクス2の第1の製造方法及び第2の製造方法によれば、半透過膜4及び遮光膜5として、Cr系の材質の膜が用いられる。Cr系は、高圧及び薬品に対する耐性があり、膜強度がある。このため、一般的なフォトマスクと同等の洗浄耐性を得ることができる。
【0085】
<その他の実施形態>
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0086】
上記フォトマスクブランクス2の第1の製造方法及び第2の製造方法においては、第1の機能性膜及び第2の機能性膜として、エッチング特性が同じであるものが選択される(なお、本書全般において、エッチング特性が「同じ」、膜の材質が「同じ」という場合、これは「近似」の概念を含むものである。)。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、i)第1の機能性膜として、第2の機能性膜、中間膜のそれぞれとエッチング特性が異なるものが選択され、第2の機能性膜として、第1の機能性膜、中間膜のそれぞれとエッチング特性が異なるものが選択されるようにしてもよい。あるいは、ii)第1の機能性膜として、第2の機能性膜、中間膜のそれぞれとエッチング特性が異なるものが選択され、第2の機能性膜として、第1の機能性膜とエッチング特性が異なるが、中間膜とエッチング特性が同じであるものが選択されるようにしてもよい。
【0087】
また、上記フォトマスクブランクス2の各製造方法においては、残渣9が除去され、積層部が完全に無くなるようにされる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、フォトマスクにおいてパターンのエッジが掛からない(通らない)箇所であれば、
図19に示すように、積層部10が残存するようにしてもよい。この場合、ラップ量Lは、大きめに設定され、たとえば1μm以上10μm以下の値である。なお、
図19は、上記フォトマスクブランクス2の第1の製造方法に対応した図面である。
【0088】
また、フォトマスクブランクスとしては、上記フォトマスクブランクス2の上に、さらに異なる透過率を有する半透過膜が形成されるものであってもよい。この場合、下層の半透過膜4(第1の半透過膜)は、上層の半透過膜(第2の半透過膜)によって透過率が再調整される。すなわち、第2の半透過膜は、透過率調整膜として機能する。
【0089】
また、フォトマスクブランクスとしては、上記フォトマスクブランクス2の上に位相シフト膜が形成されるものであってもよい。この場合、下層の半透過膜4は、位相シフト効果に影響しない程度、すなわち、位相シフト量が0度以上20度以下に設定するようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態においては、フォトマスク1のパターンは、ホールパターン7である。しかし、ホールパターンは一例に過ぎず、本発明は、これに限定されるものではない。フォトマスクのパターンとしては、パターンのエッジが、第1の機能性膜の領域(第1のパターンの領域)と第2の機能性膜の領域(第2のパターンの領域)の境界を通過せず、第1の機能性膜の領域及び第2の機能性膜の領域の各領域内に設定されるパターン、及び、パターンのエッジが、第1の機能性膜の領域と第2の機能性膜の領域の境界を通過し、第1の機能性膜の領域と第2の機能性膜の領域とに跨って設定されるパターン、の両方を含み、各種のパターンを適宜採用することができる。
【0091】
また、上記実施形態においては、第1の機能性膜又は第2の機能性膜のいずれか一方は、半透過膜4であり、いずれか他方は、遮光膜5である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。第1の機能性膜及び第2の機能性膜として、各種の機能性膜の中から適宜の機能性膜を選択することができる。たとえば、半透過膜としての用途でない位相シフト膜であってもよい。
【0092】
また、物理的に干渉するものでない限り、以上に記載した技術要素を他の実施形態ないし例に適用すること、以上に記載した技術要素を他の実施形態ないし例に係る技術要素と置換すること、以上に記載した技術要素同士を組み合わせること等は、当然に可能であり、これは、本発明が当然に意図するところである。
【符号の説明】
【0093】
1…フォトマスク、2…フォトマスクブランクス、3…透明基板、4…半透過膜、5…遮光膜、6…中間膜(エッチングストッパ膜)、7…ホールパターン、7A…半透過部におけるホール、7B…遮光部におけるホール、8…レジスト膜、8a…部分、9…残渣、10…積層部