(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071127
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】ボーンチゼル
(51)【国際特許分類】
A61C 3/02 20060101AFI20230515BHJP
A61C 8/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A61C3/02 Z
A61C8/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183766
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】516231095
【氏名又は名称】林 俊輔
(74)【代理人】
【識別番号】100126402
【弁理士】
【氏名又は名称】内島 裕
(72)【発明者】
【氏名】林 俊輔
【テーマコード(参考)】
4C052
4C159
【Fターム(参考)】
4C052BB14
4C052DD02
4C159AA51
(57)【要約】
【課題】刃の厚みが薄くて骨に対してスムーズに垂直にささり、かつ、最初の挿入する時点で加わる力が大きく骨が割れてしまうことがなく、さらに挿入してスリットを広げる際の力も骨が割れるようにかからないボーンチゼルを提供すること。
【解決手段】インプラント用のボーンチゼルであって、先端部がテーパ形状、かつ、刃厚方向または刃幅方向の側面が深さ方向に湾曲している刃を有するボーンチゼル。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラント用のボーンチゼルであって、
先端部がテーパ形状、かつ、刃厚方向または刃幅方向の側面が深さ方向に湾曲している刃を有するボーンチゼル。
【請求項2】
インプラント用のボーンチゼルであって、
刃幅方向の側面が前記刃幅方向に湾曲している刃を有するボーンチゼル。
【請求項3】
インプラント用のボーンチゼルであって、
先端部がテーパ形状、かつ、刃厚方向または刃幅方向の側面が深さ方向に湾曲、および、刃幅方向の側面が前記刃幅方向に湾曲している刃を有するボーンチゼル。
【請求項4】
前記刃幅方向の両側面に湾曲面の前記刃を備えた請求項1から3のいずれか1項に記載のボーンチゼル。
【請求項5】
前記刃を交換可能な請求項1から4のいずれか1項に記載のボーンチゼル。
【請求項6】
前記刃を柄の両側に装着可能な請求項1から5のいずれか1項に記載のボーンチゼル。
【請求項7】
柄が中空構造である請求項1から6のいずれか1項に記載のボーンチゼル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科におけるインプラント用のボーンチゼルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、
図11に示すように、インプラントを埋入するために、超音波カッター(超音波メス)で皮質骨に予め設けた幅0.3mmのスリット(骨の隙間)に、先端がマイナス形状(直線のクサビ形状、刃の板厚が0.5mm、刃の開き角が11度)のボーンチゼルを挿入して、スリットを例えば幅1.0mmまで広げていた。
【0003】
関連技術として、一端側が高速回転器に着脱自在に連結される柄部と、柄部の他端に設けられた切削部とから成り、切削部は回転軸線に沿って先細で正多角形の横断面を有し、高速回転する切削部の角部で、骨の表面を削り取り、切削部の横断面は、3~6角の正多角形とし、切削部の縦断面形状は紡錘形あるいは部分円形とすることで、効率良く骨を削り取ることができ、仕上げ面性状が良好であり、操作が簡便でコントロールしやすい歯科用切削具を提供する技術がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、幅0.3mmのスリットに刃の板厚が0.5mmのボーンチゼルを挿入することは困難である。そこで、刃の厚みが薄くて骨に対してスムーズに垂直にささり、かつ、最初の挿入する時点で加わる力が大きく骨が割れてしまうことがなく、さらに挿入してスリットを広げる際の力も骨が割れるようにかからないボーンチゼルが求められていた。
ここで、斧の刃の形状として、ホロー形状で湾曲面を備えるものが知られているが、斧は軽い力で木材を割ることが目的であり、ボーンチゼルは作業者が強い力で押しても骨が割れないことが求められるため、いわば反対のことを目的としているのであり、斧の刃の形状は組合せの際には阻害要因を有する技術であると言える。
本発明は、歯科分野の実用に耐えられるレベルの研究開発と実証データ分析を実施してなされた、製品レベルのものであり、単なるアイデア段階にとどまるものではない。
【0006】
本発明の目的は、刃の厚みが薄くて骨に対してスムーズに垂直にささり、かつ、最初の挿入する時点で加わる力が大きく骨が割れてしまうことがなく、さらに挿入してスリットを広げる際の力も骨が割れるようにかからないボーンチゼルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一のボーンチゼルは、インプラント用のボーンチゼルであって、
先端部がテーパ形状、かつ、刃厚方向または刃幅方向の側面が深さ方向に湾曲している刃を有する。
【0008】
本発明の第二のボーンチゼルは、インプラント用のボーンチゼルであって、
刃幅方向の側面が前記刃幅方向に湾曲している刃を有する。
【0009】
本発明の第三のボーンチゼルは、インプラント用のボーンチゼルであって、
先端部がテーパ形状、かつ、刃厚方向または刃幅方向の側面が深さ方向に湾曲、および、刃幅方向の側面が前記刃幅方向に湾曲している刃を有する。
【0010】
また、本発明のボーンチゼルは、刃幅方向の両側面に湾曲面の刃を備えていても、また刃を交換可能、また刃を柄の両側に装着可能、また柄が中空構造であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、刃の厚みが薄くて骨に対してスムーズに垂直にささり、かつ、最初の挿入する時点で加わる力が大きく骨が割れてしまうことがなく、さらに挿入してスリットを広げる際の力も骨が割れるようにかからないボーンチゼルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一乃至第三の実施の形態に係るボーンチゼルの刃の外観構成を示す図である。
【
図2】本発明の第一乃至第三の実施の形態に係るボーンチゼルの外観構成を示す図である。
【
図3】本発明の第一の実施の形態に係るボーンチゼルの刃の構成を説明する図である。
【
図4】本発明の第二の実施の形態に係るボーンチゼルの刃の構成を説明する図である。
【
図5】本発明の第三の実施の形態に係るボーンチゼルの刃の構成を説明する図である。
【
図6】本発明の第一乃至第三の実施の形態に係るボーンチゼルの柄の構造を説明する図である。
【
図7】本発明の第一乃至第三の実施の形態に係るボーンチゼルの柄の構造の変形例を示す図である。
【
図8】本発明の第一および第二の実施の形態に係るボーンチゼルの挿入深さ位置と荷重との関係を示すグラフである。
【
図9】本発明の第三の実施の形態に係るボーンチゼルの挿入深さ位置と荷重との関係を示すグラフである。
【
図10】本発明の第四の実施の形態に係るボーンチゼルの刃の外観構成を示す図である。
【
図11】従来のボーンチゼルの使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1に、本発明の第一乃至第三の実施の形態に係るボーンチゼルの刃の外観構成をまとめて示す。
【0014】
本発明の第一の実施の形態に係るボーンチゼルの刃10は、X方向の刃幅方向の側面が刃幅方向に湾曲(凹面)している。また、刃10は、先端部がテーパ形状である。また、刃10は、Y方向の刃厚方向の側面がZ方向の深さ方向に湾曲(凹面)している。また、刃10は、X方向の刃幅方向の側面がZ方向の深さ方向に湾曲(凹面)している。
【0015】
本発明の第二の実施の形態に係るボーンチゼルの刃20は、X方向の刃幅方向の側面が刃幅方向に湾曲(凸面)している。また、刃10は、先端部がテーパ形状である。また、刃10は、Y方向の刃厚方向の側面がZ方向の深さ方向に湾曲(凹面)している。また、刃10は、X方向の刃幅方向の側面がZ方向の深さ方向に湾曲(凸面)している。
【0016】
本発明の第三の実施の形態に係るボーンチゼルの刃30は、第一の実施形態のボーンチゼルの刃10に左右の刃(X方向の刃幅方向に湾曲(凹面)している。)を追加したイメージの構成である。
【0017】
図2は、本発明の第一の実施の形態に係るボーンチゼル1(刃10を装着。)、第二の実施の形態に係るボーンチゼル2(刃20を装着。)、第三の実施の形態に係るボーンチゼル3(刃30を装着。)の外観構成を示す図である。
【0018】
図3を参照して、本発明の第一の実施の形態に係るボーンチゼル1の刃10の構成を詳細に説明する。
刃10は、刃の板厚が0.4mm以下、刃の開き角が6度等であり、骨に形成されたスリットの幅を例えば、0.3mmから1mmに拡張するために用いられる。
刃10は、骨に対して、例えば、深さ約8mmまで挿入される。
図3(c)の各地点における刃10の断面図を
図3(d)に示す。刃10の断面形状から、刃10の角部の4点(3点以上)で骨に接して押すこととなり、応力を分散して、骨が割れにくくすることができる。ゆるい曲率であるが、平板と比較して、挿入してスリットを広げる際の力が骨が割れてしまうようにはかからないという効果は相当に大きい。
【0019】
図4を参照して、本発明の第二の実施の形態に係るボーンチゼル2の刃20の構成を詳細に説明する。
刃20は、刃の板厚が0.4mm以下、刃の開き角が6度等であり、骨に形成されたスリットの幅を例えば、0.3mmから1mmに拡張するために用いられる。
刃20は、骨に対して、例えば、深さ約8mmまで挿入される。
図4(c)の各地点における刃20の断面図を
図4(d)に示す。刃20の断面形状から、刃20の上下の2点で骨に接して押すこととなる。
【0020】
図5を参照して、本発明の第三の実施の形態に係るボーンチゼル3の刃30の構成を詳細に説明する。
刃30は、刃の板厚が0.4mm以下、刃の開き角が6度等であり、骨に形成されたスリットの幅を例えば、1mmから2mmに拡張するために用いられる。
刃30は、骨に対して、例えば、深さ約8mmまで挿入され、さらに最大角度30度まで角度をつけて左右にふって骨を切ることができる。
図5(c)の各地点における刃30の断面図を
図5(d)に示す。刃30の断面形状から、刃30の角部の4点(3点以上)で骨に接して押すこととなり、応力を分散して、骨が割れにくくすることができる。ゆるい曲率であるが、平板と比較して、挿入してスリットを広げる際の力で骨が割れてしまうようには力がかからないという効果は相当に大きい。
【0021】
図6は、本発明の第一乃至第三の実施の形態に係るボーンチゼルの柄の構造を説明する図である。
ステンレス等の金属で一体型とすると約70gの重量があり、軽量化のために、中空構造とすることであってよい。
刃は、柄に対して、抜けたり、回転しないように、止めねじで固定されることであってよい。
柄の開口部には、めねじが加工され、おねじが加工されたエンドキャップで蓋がされることであってよい。
【0022】
図7は、本発明の第一乃至第三の実施の形態に係るボーンチゼルの柄の構造の変形例を示す図である。
柄は共通とし、刃先の種類(刃10、刃20、刃30、刃40など)のみ変更できるように刃を取り外して交換可能な構造とし、柄の両端に刃(異なる種類の刃であってもよい)を装着可能な構造とすることであってもよい。
【0023】
図8は、本発明の第一の実施の形態に係るボーンチゼル1、本発明の第二の実施の形態に係るボーンチゼル2の挿入深さ位置と荷重との関係を示すグラフである。
横軸は深さ位置、縦軸は荷重を示す。
従来のボーンチゼルでは、最初の挿入する時点で加わる力が大きく、骨が割れてしまうリスクが高かった。本発明の第一の実施の形態に係るボーンチゼル1、本発明の第二の実施の形態に係るボーンチゼル2によれば、刃10、刃20の厚みが薄くて骨に対してスムーズに垂直にささり、かつ、最初の挿入する時点で加わる力が大きく骨が割れてしまうことがなく、さらに挿入してスリットを広げる際の力も骨が割れるようにかからないことがわかる。
【0024】
図9は、本発明の第三の実施の形態に係るボーンチゼル3の挿入深さ位置と荷重との関係を示すグラフである。
横軸は時間(秒)、縦軸は荷重を示す。約70秒で8mmの深さ位置となり、その後、左右に14度回転させた場合を一例として示す。
従来のボーンチゼルでは、最初の挿入する時点で加わる力が大きく、骨が割れてしまうリスクが高かった。本発明の第三の実施の形態に係るボーンチゼル3によれば、刃30の厚みが薄くて骨に対してスムーズに垂直にささり、かつ、最初の挿入する時点で加わる力が大きく骨が割れてしまうことがなく、さらに挿入してスリットを広げる際の力も骨が割れるようにかからなく、また左右に骨を切る際の力も骨が割れるようにかからないことがわかる。
【0025】
図10に、本発明の第四の実施の形態としてのボーンチゼルの刃40の外観構成を示す。
刃40は、上記の刃10の上半分と刃20の下半分を組み合わせた形状である。
【0026】
上記の各実施の形態によれば、刃の厚みが薄くて骨に対してスムーズに垂直にささり、かつ、最初の挿入する時点で加わる力が大きく骨が割れてしまうことがなく、さらに挿入してスリットを広げる際の力も骨が割れるようにかからないボーンチゼルが実現されることとなる。
【0027】
なお、上述する各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において形状・大きさ・比率等の種々の変更実施が可能である。例えば、異なる種類の刃の形状の一部を組み合わせた形状である。
【符号の説明】
【0028】
1、2、3 ボーンチゼル
10、20、30、40 刃