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特開2023-71139テラヘルツ電磁波に用いる液晶デバイスおよびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071139
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】テラヘルツ電磁波に用いる液晶デバイスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
G02F1/01 D
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022062220
(22)【出願日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】17/522,911
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501008945
【氏名又は名称】国立清華大学
【氏名又は名称原語表記】National Tsing Hua University
【住所又は居所原語表記】No.101,Section 2,Kuang-Fu Road,Hsinchu,30013,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大江 昌人
(72)【発明者】
【氏名】鄭 登云
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA05
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD00
2K102BD01
2K102BD09
2K102DC09
2K102DD02
2K102EA02
2K102EA12
2K102EA19
2K102EB11
(57)【要約】
【課題】テラヘルツ電磁波に用いる液晶デバイスおよびシステムを提供する。
【解決手段】液晶デバイスは、単一の、または複数の画素素子を含む。各画素素子は、第1基板、第1基板に対して平行な第2基板、第1基板と第2基板の間に配置された液晶層、第1基板と液晶層の間に形成された複数の第1電極、および第2基板と液晶層の間に形成された複数の第2電極を含む。複数の第1電極および複数の第2電極は、3つの直交方向において電場を生成するよう構成され、3つの直交方向のうちの2つにおける電場は、面内電場であるが、3つの直交方向のうちのもう1つの電場は、面外電場である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の、または複数の画素素子を含み、各前記画素素子が、
第1基板と、
前記第1基板に対向し、且つ前記第1基板に対して平行な第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板の間に配置された液晶層と、
前記第1基板と前記液晶層の間に形成され、グレーティング型および/または指型電極である複数の第1電極と、
前記第2基板と前記液晶層の間に形成され、グレーティング型および/または指型電極である複数の第2電極と、
を含み、
前記複数の第1電極および前記複数の第2電極の同じグレーティング型および/または指型電極が、セルギャップを有して形成され、且つ互いに対向しており、
前記複数の第1電極および前記複数の第2電極が、3つの直交方向において電場を生成するよう構成され、前記3つの直交方向のうちの2つにおける前記電場が、面内電場であり、且つ前記第1基板、前記第2基板、および前記液晶層に対して実質的に平行であるが、前記3つの直交方向のうちのもう1つの前記電場が、面外電場であり、且つ前記第1基板および前記第2基板に対して実質的に垂直である液晶デバイス。
【請求項2】
前記液晶層における液晶分子の初期アライメントが、前記複数の第1電極および前記複数の第2電極の前記グレーティング型および/または指型電極のうちの1つの延伸方向からほぼ垂直である請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項3】
前記液晶層における前記液晶分子の前記初期アライメントが、前記複数の第1電極および前記複数の第2電極の前記グレーティング型および/または指型電極のうちの1つの延伸方向から40~50度である請求項2に記載の液晶デバイス。
【請求項4】
前記液晶層における液晶分子の初期アライメントが、前記複数の第1電極および前記複数の第2電極の前記グレーティング型および/または指型電極のうちの1つの延伸方向から85~95度である請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項5】
前記液晶デバイスが、さらに、
前記複数の第1電極と前記液晶層の間に配置された第1アライメント層と、
前記複数の第2電極と前記液晶層の間に配置された第2アライメント層と、
を含み、
前記第1アライメント層および前記第2アライメント層が、前記液晶層における液晶分子を初期アライメントに並べるよう構成された請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項6】
第1面内電場を生成する前記複数の第1電極のうちの1対の第1電極間の距離と第2面内電場を生成する前記複数の第1電極のうちの1対の第2電極間の距離の比率が、実質的に、1に等しい請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項7】
前記第1面内電場を生成する前記複数の第1電極のうちの前記1対の第1電極間の距離と前記第2面内電場を生成する前記複数の第1電極のうちの前記1対の第2電極間の距離の比率が、0.9~1.1の間である請求項6に記載の液晶デバイス。
【請求項8】
前記液晶層の液晶の初期アライメントに対して垂直な方向に沿って第1面内電場を生成する前記複数の第1電極のうちの1対の第1電極間の距離が、前記液晶層の前記液晶の前記初期アライメントに対して平行な方向に沿って第2面内電場を生成する前記複数の第1電極のうちの1対の第2電極間の距離よりも短い請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項9】
第1面内電場を生成する前記複数の第1電極の電極、前記第1面内電場に対して垂直な第2面内電場を生成する前記複数の第1電極の電極、および面外電場を生成する前記複数の第1電極の電極が、前記第1基板に対して同一平面上に形成される請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項10】
第1面内電場を生成する前記複数の第1電極の電極、前記第1面内電場に対して垂直な第2面内電場を生成する前記複数の第1電極の電極、および面外電場を生成する前記複数の第1電極の電極が、前記第1基板に対して平行な異なる平面上に形成される請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項11】
前記液晶層の一側に配置された第1偏光子と、
前記液晶層の他側に配置された第2偏光子と、
をさらに含み、
前記第1偏光子および前記第2偏光子が、前記液晶層に入った光または前記液晶層から出た光を偏光させるよう構成された請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項12】
前記複数の第1電極および前記複数の第2電極に接続され、前記3つの直交方向において前記電場を生成するよう前記複数の第1電極および前記複数の第2電極を制御する複数の駆動モジュールをさらに含む請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項13】
請求項1に記載の液晶デバイスを含むテラヘルツ電磁波に用いるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶デバイスに関するものであり、特に、テラヘルツ(terahertz, THz)(1 THz=1012Hz)電磁波またはサブミリ(sub-mm)電磁波における様々な用途に用いる位相シフトまたは時間遅延を継続的に調整を可能にするデバイス、すなわち、位相シフター(phase shifter)を提供するための液晶装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ波技術は、タイムドメイン分光法(time-domain spectroscopy)、テラヘルツイメージング(THz imaging)、医療応用を含む分野において急速に発展している。さらに、テラヘルツ通信および位相配列レーダー(phased array radar)も実現可能である。上述した応用は、信号処理を行うために、いずれも偏光子、フィルタ、位相シフター、および変調器等のテラヘルツ準光学素子(THz quasi-optical device)を必要とする。
【0003】
液晶(liquid crystal, LC)デバイスは、テラヘルツ周波数において幅広く使用されている。テラヘルツ周波数で操作するために、液晶デバイスは、必要なリタデーション(複屈折位相差)を満たすために厚いセルギャップ使用する。しかしながら、厚いセルギャップでは、液晶の応答速度が極めて遅い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原則として、テラヘルツ周波数において十分な時間遅延および位相変調を得るためには、数百μmの範囲の大きなセルギャップを必要とする。そのため、この光周波数範囲では、薄い液晶デバイスとは対照的に、この種の異常に厚い液晶デバイスにとって、応答速度が極度に遅くなることは避けられないという問題がある。外場下での一種のスイッチングは、数秒または数分の一秒のタイムスケールで比較的速いが、無電場下では、数十秒または数百秒、あるいはそれ以上を必要とするため、液晶を用いたテラヘルツデバイスにとって深刻な欠点である。一方、液晶技術が発展し続けるにつれ、液晶を双方向的にスイッチングさせるための新しい電極設計が提案され、テラヘルツ周波数において、液晶はスイッチングオンとオフ両方向で電場を利用した能動的駆動が可能であるが、制御可能な位相シフトの範囲は狭く制限がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的実施形態に係る液晶デバイスは、単一の、または複数の画素素子を含むことができるが、本発明はこれに限定されない。各画素素子は、第1基板、および第1基板に対向し、且つ第1基板に対して平行な第2基板、第1基板と第2基板の間に配置された液晶層、第1基板と液晶層の間に形成され、グレーティング型(grating-type)および/または指型(finger-type)電極である複数の第1電極、および第2基板と液晶層の間に形成され、グレーティング型および/または指型電極である複数の第2電極を含むことができ、複数の第1電極および複数の第2電極の同じグレーティング型および/または指型電極は、セルギャップを有して形成され、且つ互いに対向しており、複数の第1電極および複数の第2電極は、3つの直交方向において電場を生成するよう構成され、3つの直交方向のうちの2つにおける電場は、面内(in-plane)電場であり、且つ第1基板、第2基板、および液晶層に対して実質的に平行であるが、3つの直交方向のうちのもう1つの電場は、面外(out-of-plane)電場であり、且つ第1基板および第2基板に対して実質的に垂直である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、液晶デバイス、特に、一種の液晶スイッチングを有するテラヘルツ電磁波用液晶位相シフターを提供し、液晶の初期配向状態、横電界による面内再配向状態、および縦電界による面外再配向状態の各状態間でのスイッチング、つまり3状態間の六方向での(hexa-directional)スイッチングを行うことにより、位相シフトの範囲を広げ、同時に、速い応答時間を維持することができる。
【0007】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるために含まれており、本明細書に組み込まれ、且つその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【0009】
図1図1は、液晶画素素子の概略的断面図である。
図2A図2Aは、液晶画素素子の概略的立体図である。
図2B図2Bは、図2Aの液晶画素素子の概略的平面図である。
図2C図2Cは、図2Aの液晶画素素子の概略的平面図である。
図2D図2Dは、図2Aの液晶画素素子の概略的断面図である。
図3A図3Aは、液晶画素素子の概略的立体図である。
図3B図3Bは、図3Aの液晶画素素子の概略的平面図である。
図3C図3Cは、図3Aの液晶画素素子の概略的断面図である。
図4A図4Aは、液晶画素素子の概略的立体図である。
図4B図4Bは、図4Aの液晶画素素子の概略的平面図である。
図4C図4Cは、図4Aの液晶画素素子の概略的断面図である。
図5A図5Aは、液晶画素素子の概略的立体図である。
図5B図5Bは、図5Aの液晶画素素子の概略的平面図である。
図5C図5Cは、図5Aの液晶画素素子の概略的断面図である。
図6図6は、図3A図4A、および図5Aの液晶画素素子の概略的平面図および断面図である。
図7A図7Aは、一部の液晶画素素子の概略的平面図である。
図7B図7Bは、図7Aの一部の液晶画素素子の概略的断面図である。
図8A図8Aは、一部の液晶画素素子の概略的平面図である。
図8B図8Bは、図8Aの一部の液晶画素素子の概略的断面図である。
図9A図9Aは、一部の液晶画素素子の概略的平面図である。
図9B図9Bは、図9Aの一部の液晶画素素子の概略的断面図である。
図10A図10Aは、一部の液晶画素素子の概略的平面図である。
図10B図10Bは、図10Aの一部の液晶画素素子の概略的断面図である。
図11A図11Aは、一部の液晶画素素子の概略的平面図である。
図11B図11Bは、図11Aの一部の液晶画素素子の概略的断面図である。
図12図12は、一部の液晶デバイスの概略的平面図である。
図13図13は、一部の液晶デバイスの概略的平面図である。
図14図14は、一部の液晶デバイスの概略的平面図および断面図である。
図15図15は、一部の液晶デバイスの断面図である。
図16図16は、一部の液晶デバイスの概略的平面図および断面図である。
図17図17は、一部の液晶デバイスの概略的平面図および断面図である。
図18図18は、一部の液晶デバイスの概略的平面図および断面図である。
図19図19は、テラヘルツ電磁波のフォトニックデバイスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明において、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう、多数の具体的詳細を示す。しかしながら、これら具体的詳細がなくとも、1つまたはそれ以上の実施形態が実施され得ることは明らかである。別の場合では、図面を簡潔にするため、周知の構造および装置は、概略的に示される。
【0011】
以下の実施形態において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」等の方向を示すための用語は、単に添付の図面における方向を指す。そのため、方向性の用語は、説明のために用いるものであって、本発明を限定するものではない。添付の図面において、各図は、ある例示的な実施形態において利用される方法、構造、および/または材料の一般的な特徴を示す。これらの図は、例示的な実施形態が包含する範囲および特性を規定または限定していると解釈されるべきでない。例えば、フィルム層、領域、または構造の相対的な厚さおよび位置は、明瞭さのために、縮小または誇張されている場合がある。
【0012】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る液晶画素素子100の概略的断面図である。
【0013】
図1において、液晶画素素子100は、第1基板110aおよび第2基板110bを含む。第2基板110bは、第1基板110aに対向し、且つ第1基板110aに対して平行である。第1基板110aおよび第2基板110bは、類似する構造および特徴を有する。第1基板110aおよび第2基板110bは、いずれもZ方向において均一な厚さを有する基板である。第1基板110aおよび第2基板110bは、テラヘルツ周波数に対して透明な材料で作られる。いくつかの実施形態において、テラヘルツ周波数の範囲は、0.1~10THzであるが、本発明はこれに限定されない。いくつかの実施形態において、第1基板110aおよび第2基板110bの材料は、ガラスまたはプラスチックであるが、本発明はこれに限定されない。
【0014】
液晶画素素子100は、さらに、液晶分子122を有する液晶層120を含む。液晶層120は、垂直なZ方向において第1基板110aと第2基板110bの間に配置される。液晶層120は、Z方向において均一な厚さを有する。いくつかの実施形態において、液晶層120の厚さは、50~150μmの間であり、好ましくは、100μmまたはそれ以下であるが、本発明はこれに限定されない。
【0015】
液晶画素素子100は、さらに、第1基板110aと液晶層120の間に形成された複数の電極130a、および第2基板110bと液晶層120の間に形成された複数の電極130bを含む。電極130aおよび電極130bは、Z方向においてセルギャップにより分離されるため、液晶層120は、セルギャップ内に配置される。絶縁層140aおよび絶縁層140bは、それぞれ電極130aおよび電極130b上に形成され、電極130aおよび電極130bと液晶画素素子100の他の層を絶縁する。いくつかの実施形態において、電極130aおよび電極130bの材料は、金属または他の導電材料、例えば、銅、インジウム・ティン・オキサイド(indium tin oxide)、アルミニウム、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(poly(3,4-ethylenedioxythiophene) polystyrene sulfonate)、およびグラフェン(graphene)であるが、本発明はこれに限定されない。ただし、THz光に対してなるべく透明な材料であることが好ましい。いくつかの実施形態において、電極130aおよび130bの厚さは、100~500nmの間であり、好ましくは、200nmであるが、本発明はこれに限定されない。電極130aおよび130bの幅は、5~15μmの間であり、好ましくは、10μmであるが、本発明はこれに限定されない。いくつかの実施形態において、絶縁層140aおよび140bの厚さは、200~1000nmの間であってもよく、好ましくは、500nmであるが、本発明はこれに限定されない。
【0016】
電極130aおよび電極130bは、グレーティング型および/または指型電極を含む。駆動モジュール(図示せず)によって制御される動力源により電極130aおよび電極130bに電圧差が印加された時、電極130aおよび電極130bは、3つの直交方向において(例えば、X、Y、および/またはZ方向に沿って)一緒に電場を生成する。3つの直交方向のうちの2つにおいて(例えば、X方向とY方向に沿って)電極130aおよび130bにより生成された電場は、面内電場と称され、第1基板、第2基板、および液晶層に対して実質的に平行である。3つの直交方向のうちのもう1つの電場は(例えば、Z方向に沿って)、面外電場と称され、第1基板110aおよび第2基板110bに対して実質的に垂直である。
【0017】
3つの直交方向において電場(互いに垂直な2つの面内電場、および1つの面外電場)を印加することによって、液晶層120における液晶分子122は、面内と面外配向の間で六方向性スイッチングを行うことができる。
【0018】
液晶画素素子100は、さらに、電極130aおよび電極130bの上にそれぞれ配置され、且つ液晶層120の対向する2つの側面に接触するアライメント層150aおよび150bを含む。アライメント層150aおよび150bは、液晶分子122のプレチルト角(pretilt angle)および極角(polar angle)を制御することによって、液晶層120に電場がない時に、液晶分子122を初期アライメントに並べるよう構成される。プレチルト角は、液晶分子122の長軸とアライメント層の表面(XY平面)の間の角度であり、方位角は、XY平面に投影された液晶分子122の長軸とZ方向に対して垂直なXY平面における固定軸(例えば、X方向に沿った)の間の角度である。いくつかの実施形態において、アライメント層150aおよび150bの材料は、ポリイミド等のポリマーであるが、本発明はこれに限定されない。
【0019】
液晶画素素子100は、さらに、第1基板110aおよび第2基板110bの上にそれぞれ配置された偏光子160aおよび160bを含む。偏光子160aおよび160bは、液晶層120に入った光または液晶層120から出た光を偏光させるよう構成される。いくつかの実施形態において、偏光子160aは、第1基板110aと絶縁層140aの間に形成されてもよく、偏光子160bは、第2基板110bと絶縁層140bの間に形成されてもよい。いくつかの実施形態において、グレーティング型および/または指型電極130aおよび130bは、ワイヤーグリッド(wire-grid)偏光子として一緒に使用される。
【0020】
いくつかの実施形態において、偏光子160aおよび160bの偏光方向は、互いに垂直または平行である。液晶層120の間に電圧が印加された時、液晶分子122がねじれるため、今度は、液晶層120を通過している光の偏光が回転する。あるひとつの方向に振動しているテラヘルツ光は、別の方向に振動しているテラヘルツ光よりも液晶層120を通過しやすい。屈折率(材料内の光の伝播がどの程度遅くなったかの値)は、光振動面が液晶分子に対して平行か垂直かで異なる。これは、「光学異方性(optical anisotropy)」とも称し、異常屈折率neと正常屈折率noの間の差として定義され(Δn=ne-no)、「複屈折(birefringence)」と呼ばれる。
【0021】
図2Aは、液晶画素素子の概略的立体図である。図2Bは、図2Aの液晶画素素子の概略的平面図である。図2Cは、図2Aの液晶画素素子の概略的平面図である。図2Dは、図2Aの液晶画素素子の概略的断面図である。
【0022】
図2A図2Dを参照されたい。明瞭さの目的で、液晶画素素子100のいくつかの素子を省略している。
【0023】
図2Aに示すように、複数の第1電極130aおよび複数の第2電極130bを示す。複数の第1電極130aは、1対の電極132a、1対の電極134a、および電極136aを含み、いずれも第1基板110aと同一平面上に形成される。複数の第2電極130bは、1対の電極132b、1対の電極134b、および電極136bを含み、いずれも第2基板110bと同一平面上に形成される。複数の第1電極130aおよび複数の第2電極130bは、同じ配列で形成され、且つ互いに対向している。電極132a、132b、134a、および134bは、指型電極である。電極136aおよび136bは、グレーティング型電極である。
【0024】
図2Aおよび図2Bを参照すると、1対の電極132aは、第1基板110a上に形成される。電極132aは、指型電極であり、互いに平行である。各電極132aは、ストリップ形状を有し、各電極132aの長軸がX方向に対して垂直になっている。いくつかの実施形態において、電極132aは、別の形状を有してもよく、本発明はこれに限定されない。電極132aの間に電圧差を印加した時、1対の電極132aは、第1基板110aおよび液晶層120に対して実質的に平行な面内電場を生成する。電極132aによって生成された面内電場の方向は、電極132aに印加された電圧の方向に応じて、正または負のX方向に沿ってもよい。X方向に沿って生成された電場は、X方向に沿って液晶層120内の液晶分子122を再配向させる。第2基板110b上に形成される1対の電極132bは、1対の電極132aと類似する特性を有するため、ここでは説明を省略する。
【0025】
図2Aおよび図2Bを参照すると、1対の電極134aは、第1基板110a上に形成される。電極134aは、指型電極であり、互いに平行である。各電極134aは、ストリップ形状を有し、各電極134aの長軸がY方向に対して垂直になっている。いくつかの実施形態において、電極134aは、別の形状を有してもよく、本発明はこれに限定されない。電極134aの間に電圧差を印加した時、1対の電極134aは、第1基板110aおよび液晶層120に実質的に対して平行な面内電場を生成する。電極134aによって生成された面内電場の方向は、電極134aに印加された電圧の方向に応じて、正または負のY方向に沿ってもよい。Y方向に沿って生成された電場は、Y方向に沿って液晶層120内の液晶分子122を再配向させる。第2基板110b上に形成される1対の電極134bは、1対の電極134aと類似する特性を有するため、ここでは説明を省略する。
【0026】
図2Aおよび図2Bを参照すると、電極136aは、第1基板110a上に形成され、電極136bは、第2基板110b上に形成される。図2Aおよび図2Bに示すように、電極136aおよび136bは、グレーティング型電極である。いくつかの実施形態において、電極136aおよび136bは、別の形状を有してもよく、本発明はこれに限定されない。グレーティング型電極136aおよび136bの方向は、いずれもY方向に沿って延伸している。電極136aと136bの間に電圧差を印加した時、電極136aおよび136bは、第1基板110a、第2基板110b、および液晶層120に対して実質的に垂直な面外電場を一緒に生成する。面外電場の方向は、電極136aおよび136bに印加された電圧の方向に応じて、正または負のZ方向に沿ってもよい。いくつかの実施形態において、Z方向に沿って生成された電場は、Z方向に沿って液晶層120内の液晶分子122を再配向させる。
【0027】
図2Bおよび図2Dを参照すると、電極132a、132b、134a、134b、136a、および/または136bに電圧が印加されていない時、液晶層120に電場が生成されない。そのため、液晶分子122は、初期アライメントにある。いくつかの実施形態において、液晶分子122の初期アライメントは、面内であるため、液晶分子122の長軸は、第1基板110aおよび第2基板110bに対して平行である。いくつかの実施形態において、液晶分子122の初期アライメントは、グレーティング型電極136aの延伸方向に対してほぼ垂直である。つまり、液晶分子122の長軸と電極136aの延伸方向の間の角度は、ほぼ垂直である。図2Bを参照すると、電極136aの延伸方向は、Y方向に沿っている。いくつかの実施形態において、液晶分子122の長軸と電極136aの延伸方向の間の角度は、85~95度の間であり、図2Dに示すように、ほぼX方向の方向であるが、初期配向角は、これに限定されない。
【0028】
図2Bを参照すると、電極132aおよび電極134aは、面内電場を生成するよう構成される。図2Bに示すように、2つの電極132a間の距離は、d1として定義され、2つの電極134a間の距離は、d2として定義される。いくつかの実施形態において、電極132a間の距離d1と電極134a間の距離d2の比率d1/d2は、実質的に、1に等しい。いくつかの実施形態において、比率d1/d2は、0.9~1.1の間である。電極132a間の距離d1と電極134a間の距離d2は、実質的に同じであるため、電極132aおよび134aに類似する電圧差を印加した時、電極132aによって生成される電場と電極134aによって生成される電場の大きさは、実質的に同じであってもよい。そのため、液晶層120内の2つの面内電場は、より類似する電場強度を有することができる。
【0029】
図2Bを参照すると、液晶分子122の初期アライメントは、X方向に沿っている。いくつかの実施形態において、液晶分子122の初期アライメントに対して垂直な面内電場を生成する電極134a間の距離d2は、液晶分子122の初期アライメントに対して垂直な面内電場を生成する電極132a間の距離d1よりも短く、d2/d1<1、またはd1/d2>1である。電極132aは、液晶分子122の初期アライメントに対して平行なX方向に沿って、面内電場を生成する。電極134aは、液晶分子122の初期アライメントに対して垂直なY方向に沿って、面内電場を生成する。電極134a間の距離d2が電極132a間の距離d1よりも短い時、電極132a間と電極134a間に同じ電圧を印加したとしても、電極134aによって生成される電場の強度は、電極132aによって生成される電場の強度よりも強くなるため、電極134aによって生成された電場の方向、つまり、液晶分子122の初期アライメントに対して垂直な方向に沿って液晶分子122を配向する方が容易である。
【0030】
図2Cを参照すると、いくつかの実施形態において、電極136aの延伸方向は、Y方向に沿っている。液晶分子122の初期アライメントは、面内であるため、液晶分子122の長軸は、第1基板110aおよび第2基板110bに対して平行である。いくつかの実施形態において、液晶分子122の初期アライメントは、電極136aの延伸方向からほぼ45度である。つまり、液晶分子122の長軸と電極136aの延伸方向の間の角度は、ほぼ45度である。いくつかの実施形態において、液晶分子122の長軸と電極136aの延伸方向の間の角度は、40~50度の間であるが、本発明はこれに限定されない。
【0031】
図3Aは、液晶画素素子の概略的立体図である。図3Bは、図3Aの液晶画素素子の概略的平面図である。図3Cは、図3Aの液晶画素素子の概略的断面図である。
【0032】
図3A図3B、および図3Cを参照すると、本実施形態において、電源138は、第1基板110a上の1対の電極132a、および第2基板110b上の1対の電極132bに接続される。電極132aの間に電圧差を印加した時、1対の電極132aは、第1基板110aおよび液晶層120に対して実質的に平行な面内電場を生成する。電極132aによって生成された電場は、正または負のX方向に沿ってもよく、同じ方向に沿って液晶層120内の液晶分子122を再配向させる。同様に、電極132aと同電位である電極132bの間に電圧差を印加した時、1対の電極132bは、第2基板110bおよび液晶層120に対して実質的に平行な面内電場を生成する。電極132bによって生成された電場は、正または負のX方向に沿っており、これも同じ方向に沿って液晶層120内の液晶分子122を並べる。
【0033】
その結果、1対の電極132aおよび132bに電圧差を印加することによって、液晶層120内の液晶分子122は、生成された電場に沿って、つまり、正または負のX方向に沿って、再配向される。一般的に、液晶分子122の平均的な配向方向は、X方向に沿った方向である。
【0034】
図4Aは、液晶画素素子の概略的立体図である。図4Bは、図4Aの液晶画素素子の概略的平面図である。図4Cは、図4Aの液晶画素素子の概略的断面図である。
【0035】
図4A図4B、および図4Cを参照すると、本実施形態において、電源138は、第1基板110a上の1対の電極134a、および第2基板110b上の1対の電極134bに接続される。電極134aの間に電圧差を印加した時、1対の電極134aは、第1基板110aおよび液晶層120に対して実質的に平行な面内電場を生成する。電極134aによって生成された電場は、電極132aによって生成された電場に対して垂直である。電極134aによって生成された電場は、正または負のY方向に沿ってもよく、同じ方向に沿って液晶層120内の液晶分子122を再配向させる。同様に、電極134aと同電位である電極134bの間に電圧差を印加した時、1対の電極134bは、第2基板110bおよび液晶層120に対して実質的に平行な面内電場を生成する。電極134bによって生成された電場は、正または負のY方向に沿っており、これも同じ方向に沿って液晶層120内の液晶分子122を並べる。
【0036】
その結果、1対の電極134bおよび134bに電圧差を印加することによって、液晶層120内の液晶分子122は、生成された電場に沿って、つまり、正または負のY方向に沿って、再配向される。一般的に、液晶分子122の平均的な配向方向は、正または負のY方向に沿った方向である。
【0037】
図5Aは、液晶画素素子の概略的立体図である。図5Bは、図5Aの液晶画素素子の概略的平面図である。図5Cは、図5Aの液晶画素素子の概略的断面図である。
【0038】
図5A図5B、および図5Cを参照すると、本実施形態において、電源138は、第1基板110a上の電極136a、および第2基板110b上の電極136bに接続される。電極136aと電極136bの間に電圧差を印加した時、電極136aおよび電極136bは、第1基板110a、第2基板110b、および液晶層120に対して実質的に垂直な面外電場を生成する。電極136aおよび電極136bによって生成された電場は、1対の電極132aによって生成された電場に対して垂直であり、且つ1対の電極134aによって生成された電場に対して垂直である。電極136aおよび電極136bによって生成された電場は、正または負のZ方向に沿ってもよく、同じ方向に沿って液晶層120内の液晶分子122を再配向させる。
【0039】
その結果、電極136aおよび電極136bに電圧差を印加することによって、液晶層120内の液晶分子122は、正または負のZ方向に沿って、つまり、生成された電場に沿って、再配向される。一般的に、液晶分子122の平均配向方向は、正または負のZ方向に沿った方向である。
【0040】
すなわち、第1基板110aおよび第2基板110b上の電極132a、132b、134a、134b、136a、および/または136bに電圧差を印加することによって、3つの直交方向(正または負のX方向、正または負のY方向、および正または負のZ方向)に沿って電場が生成され、所望の方向に沿って液晶層120内の液晶分子122を再配向することができる。図6に示すように、X、Y、およびZ方向間の液晶分子122の配向は、対応する電極に適切な電圧差を印加することによって切り換えることもできる。液晶分子の異なる配向により、液晶画素素子に入射するテラヘルツ波の位相を所望の位相に遅延(シフト)させることができる。
【0041】
上記の議論では、正の誘電異方性(Δε>0)を有する液晶分子122を使用したが、負の誘電異方性(Δε<0)を有する液晶分子122を使用した時、液晶層に電場を印加すると、液晶分子の配向は、正の誘電異方性(Δε>0)を有する液晶分子と90度異なる。
【0042】
図2A図5Cに示すように、液晶層120の厚さは、50~150μmであり、好ましくは、100μmまたはそれ以下であるが、本発明はこれに限定されない。いくつかの実施形態において、液晶画素素子100は、液晶層120の厚さが100μmよりも小さい時に、より効力を持つ。低損失位相シフターに関しては、さらに薄い液晶層120が好ましい。また、低損失位相シフターの目的で、液晶画素素子100の基板110aおよび110bの材料は、溶融水晶(fused quartz)、シリカ、ニオブ酸リチウム、その他等の低損失材料であってもよいが、本発明はこれに限定されない。液晶画素素子に低損失材料を使用することによって、液晶画素素子100の全体の厚さをさらに減らすことができる。いくつかの実施形態において、開示される液晶デバイスは、水晶、シリカ、ニオブ酸リチウム等の方位角的に回転可能な複屈折基板と組み合わせることができるが、本発明はこれに限定されない。複屈折基板は、位相シフトを補償するため、開示される液晶デバイスにおいて、液晶層の厚さを減らすと同時に、位相シフターとして最大位相シフトを維持することができる。
【0043】
別の発明において、液晶分子の配向方向における変化は、約90度またはそれ以下の値に制限され、通常、面内、または面内方向と面外方向の間で達成される。しかしながら、本発明の液晶画素素子100は、図3A図5Cに示すように、空間で液晶分子122の配向方向に90度の変化を3つ生成することができるため、液晶層に印加される電場に応じて、XY、XZ、およびXZ平面において達成される。その結果、3対の双方向性の90度スイッチングが実現する。そのため、1対の偏光子160aおよび160bを組み合わせることにより、液晶分子122の配向に伴う位相変化の範囲は、従来の技術と比較して、非線形に大きくなる。さらに、各90度の配向方向における各スイッチングは、電場によって双方向的に管理されるため、配向性変化の全ての動的応答は、従来の技術よりもチューナビリティに優れ、且つ速い。
【0044】
基板上の電極は、様々な要件に適合させるために、様々な配列を有することができる。図7A図11Bにおいて、電極の様々な配列を示す。これらの図面において、第1基板110aおよび第2基板110b上の電極132a、134a、および136aの配列は、同じであるため、第1基板110a上の電極132a、134a、および136aの配列のみを示し、以下に説明する。
【0045】
図7Aは、一部の液晶画素素子の概略的平面図である。図7Bは、図7Aの一部の液晶画素素子の概略的断面図である。明瞭さの目的で、第1基板110a上に形成される素子のみを示す。第2基板110b上に形成される電極は、同様に配列される。図7Aを参照すると、この平面図からわかるように、電極132a、134a、および136aの配列は、図2Bに示した配列と同じである。しかしながら、図7Bに示すように、第1基板110a上には、電極132aのみが形成される。電極132aは、絶縁層140aで覆われる。電極134aおよび136aは、絶縁層140a上に形成される。電極134aおよび136aは、絶縁層142aで覆われる。つまり、電極134aおよび136aは、同一平面上に形成されるが、電極132aが形成された平面とは異なる平面上に形成される。異なる平面に電極を配列することによって、電極の配線が容易になるとともに、1つの平面においてより多くの空間が利用可能になるため、電極の形状がよりフレキシブルになる。いくつかの実施形態において、絶縁層140aおよび142aの厚さは、200~1000nmであり、好ましくは、500nmであるが、本発明はこれに限定されない。いくつかの実施形態において、電極132a、電極134a、および136aの厚さは、100~500nmであり、好ましくは、200nmであるが、本発明はこれに限定されない。電極130aおよび130bの幅は、5~15μmの間であり、好ましくは、10μmであるが、本発明はこれに限定されない。
【0046】
図8Aは、一部の液晶画素素子の概略的平面図である。図8Bは、図8Aの一部の液晶画素素子の概略的断面図である。図8Aを参照すると、この平面図からわかるように、電極132a、134a、および136aの配列は、図7Aに示した配列と同じである。しかしながら、図8Bに示すように、第1基板110a上には電極136aのみが形成される。電極136aは、絶縁層140aで覆われる。電極132aは、絶縁層140a上に形成される。電極132aは、絶縁層142aで覆われる。電極134aは、絶縁層142a上に形成される。電極136aは、さらに、絶縁層144aで覆われる。つまり、電極132a、134a、および136aは、それぞれ異なる平面上に形成される。いくつかの実施形態において、電極132a、134a、および136aは、図8bに示した層とは異なる層に形成されてもよく、本発明はこれに限定されない。異なる平面に電極を配列することによって、電極の配線が容易になるとともに、1つの平面においてより多くの空間が利用可能になるため、電極の形状がよりフレキシブルになる。いくつかの実施形態において、絶縁層140aおよび142aの厚さは、200~1000nmであり、好ましくは、500nmであるが、本発明はこれに限定されない。いくつかの実施形態において、電極132a、134a、および136aの厚さは、100~500nmであり、好ましくは、200nmであるが、本発明はこれに限定されない。電極130aおよび130bの幅は、5~15μmの間であり、好ましくは、10μmであるが、本発明はこれに限定されない。
【0047】
図9Aは、一部の液晶画素素子の概略的平面図である。図9Bは、図9Aの一部の液晶画素素子の概略的断面図である。図9Aおよび図9Bにおける電極132aおよび134aの配列は、図8Aにおける電極132aおよび134aの配列に類似している。図9Aおよび図9Bにおける相違点は、電極136aが、電極132aおよび134aの下の第1基板110aの上面全体に延伸していることである。第2基板110b(図示せず)上に形成される電極136bが類似する配置を有することにより、電極136aおよび136bは、Z方向に沿ってより均一な電場を形成することができるため、液晶層120に生成される面外電場をより均一にすることができる。
【0048】
図10Aは、一部の液晶画素素子の概略的平面図である。図10Bは、図10Aの一部の液晶画素素子の概略的断面図である。図10Aおよび図10Bにおける電極132aおよび134aの配列は、図9Aおよび図9Bにおける電極132aおよび134aの配列に類似している。図10Aおよび図10Bにおける相違点は、グレーティング型電極の代わりに、電極136aが、ここでは、Y方向に沿って延伸する複数の指型電極であることである。いくつかの実施形態において、各指型電極は、X方向において同じ幅を有する。いくつかの実施形態において、指型電極間の空隙は、同じである。第2基板110b(図示せず)上に形成される電極136bが類似する配置を有することにより、電極136aおよび136bは、Z方向に沿って周期的に変化する電場を形成することができる。
【0049】
図11Aは、一部の液晶画素素子の概略的平面図である。図11Bは、図11Aの一部の液晶画素素子の概略的断面図である。図11Aおよび図11Bにおける電極132aおよび134aの配列は、図10Aおよび図10Bにおける電極132aおよび134aの配列に類似している。図11Aおよび図11Bにおける相違点は、指型電極136aが、ここでは、X方向に沿ってシフトされることであるため、この平面図からわかるように、電極132aと電極136aは、図10Aおよび図10Bに示したように互いに重なり合わないのではなく、ここでは、重なり合っている。
【0050】
電極の様々な配列により、所望の目的に応じて、液晶層120に様々な電場を生成することができる。
【0051】
図12は、一部の液晶デバイス200aの概略的平面図である。明瞭さの目的で、第1基板110a上の電極のみを示す。第2基板110b上に形成される電極は、同様に配列される。液晶デバイス200aは、液晶画素素子100のアレイ(array)によって形成される。液晶デバイス200aにおいて、電極132aは、X方向において隣接する液晶画素素子と共有され、電極134aは、Y方向において隣接する液晶画素素子と共有される。液晶画素素子100の電極136aは、隣接する液晶画素素子により共有されない。
【0052】
図12に示すように、液晶デバイス200aにおける液晶画素素子100のアレイは、位相シフトを用いてビーム成形を行う領域を拡大することができる。単一の液晶画素素子がテラヘルツビームにとって小さすぎても、本発明の液晶画素素子のアレイを使用して液晶デバイスを形成することにより、テラヘルツビームが照射される領域を拡大することができる。
【0053】
図13は、一部の液晶デバイス200bの概略的平面図である。明瞭さの目的で、第1基板110a上の電極のみを示す。第2基板110b上に形成される電極は、同様に配列される。電極132aおよび134aの配列は、図12に示した配列に類似している。相違点は、図12における電極136aが、ここでは、Y方向に沿って隣接する液晶画素素子の電極136aと融合し、新しい電極137aを形成したことである。図13に示すように、電極137aは、ここでは、Y方向に沿っていくつかの液晶画素素子により共有される。電極137aを共有する液晶画素素子の数は、所望の目的に応じて決定されるため、本発明では限定しない。いくつかの実施形態において、電極137aは、X方向に沿って延伸してもよい。
【0054】
図14は、一部の液晶デバイス200cの概略的平面図および断面図である。明瞭さの目的で、第1基板110a上の電極のみを示す。第2基板110b上に形成される電極は、同様に配列される。図14に示した液晶デバイス200cは、図12に示した液晶デバイス200aに類似している。相違点は、図14において、液晶デバイス200cが、さらに、電極132a、134a、および136aにそれぞれ接続された駆動モジュール162a、164a、および166aを含むことである。駆動モジュール162a、164a、および166aは、3つの直交方向に電極を生成するよう電極132a、134a、および136aを制御する。線AA’に沿った断面図において、電極136aは、基板110a上に形成され、且つ絶縁層140aで覆われる。電極132aは、絶縁層140a上に形成され、且つ絶縁層142aで覆われる。駆動モジュール164aは、絶縁層142a上に形成される。線BB’に沿った断面図において、駆動モジュール166aは、基板110a上に形成され、且つ電極136aと接続する。駆動モジュール162aは、絶縁層140a上に形成される。電極134aは、絶縁層142a上に形成される。いくつかの実施形態において、絶縁層140aおよび142aの厚さは、200~1000nmであり、好ましくは、500nmであるが、本発明はこれに限定されない。いくつかの実施形態において、電極132a、134a、および136aの厚さは、100~500nmであり、好ましくは、200nmであるが、本発明はこれに限定されない。電極130aおよび130bの幅は、5~15μmの間であり、好ましくは、10μmであるが、本発明はこれに限定されない。
【0055】
図14に示した配列により、駆動モジュール162a、164a、および166aは、電極132a、134a、および136aにそれぞれ電圧差を供給することができるため、所望の方向に沿った電場を液晶層に生成することができる。
【0056】
液晶デバイス200cにおいて液晶画素素子のアレイを操作するために、電極132a、134a、および136a等の電極を介して、各液晶素子に同じ電位を提供することによって、画素のアレイ全体を通して均一な液晶配向が達成される。このような均一な電気信号を提供する駆動モジュール162a、164a、および166aは、液晶ディスプレイの駆動モジュールよりもはるかに簡易化される。絶縁層を介して電極と他の電極を重ね合わせることによってコンデンサとして機能するため、このコンデンサ(絶縁層)は、液晶画素素子の液晶層によって形成されたコンデンサに追加することができる。各素子が薄膜トランジスタ(図示せず)を介して操作された時、層状の電極から追加されたコンデンサは、液晶画素素子において電圧特性を保持する利点を有する。保持電圧特性が優れている時、例えば、大きな誘電異方性、低比抵抗、低い吸収損失等の異なる特性を有する様々な種類の液晶を液晶層に使用することができる。
【0057】
図15は、一部の液晶デバイス200dの断面図である。液晶デバイス200dは、図14の線AA’に沿った液晶デバイス200cの断面に示した構造を有する第1基板110aを有する。液晶デバイス200dは、第1基板110aに対向し、第1基板110aと同じ構造を有する第2基板110bを有する。第1基板110aおよび第2基板110bは、セルギャップにより分離される。セルギャップは、絶縁層144aの上面と絶縁層144bの上面の間の距離である。いくつかの実施形態において、セルギャップの厚さtは、50~150μmであり、好ましくは、100μmまたはそれ以下であるが、本発明はこれに限定されない。
【0058】
図16は、一部の液晶デバイス200eの概略的平面図および断面図である。図16に示した液晶デバイス200eは、図14に示した液晶デバイス200cに類似している。相違点は、図16において、水平な指型電極132aおよび垂直な指型電極134aが、図16に示すように、電極132a’として接続されていることである。電極132a’は、駆動モジュール164aと接続される。線AA’およびBB’に沿った断面図に示すように、電極132a’および駆動モジュール164aは、絶縁層140a上に形成され、且つ絶縁層142aで覆われる。図14に示した液晶デバイス200cと比較して、絶縁層の数は、3から2に減少し、液晶デバイス200eの全体的構造を簡易化している。この実施形態は、電場がX方向またはY方向に完全に平行になっていないため、正確な六方向スイッチングではない。しかしながら、水平な指型電極132aと垂直な指型電極134aとを接続することにより、LC配向の変化範囲が狭くなったとしても、駆動モジュール164a(すなわち、駆動回路)の数を減らすことができる。この実施形態では、各画素素子のほぼ同じxおよびy寸法が好ましい。
【0059】
図17は、一部の液晶デバイス200fの概略的平面図および断面図である。明瞭さの目的で、第1基板110a上の電極のみを示す。第2基板110b上に形成される電極は、同様に配列される。図17に示した液晶デバイス200fは、図14に示した液晶デバイス200cに類似している。相違点は、図17において、電極136aが、図13に示した電極137aに置き換えられたことである。駆動モジュール166aは、ここでは、電極137aと接続されるため、Y方向に沿っていくつかの液晶画素素子を通って延伸する。この配列により、駆動モジュール166aは、いくつかの液晶画素素子に対して同時にZ方向において電場を制御することができる。
【0060】
図18は、一部の液晶デバイス200gの概略的平面図および断面図である。図18に示した液晶デバイス200gは、図17に示した液晶デバイス200fに類似している。相違点は、図18において、水平な指型電極132aおよび垂直な指型電極134aが、図18に示すように、電極134a’として接続されていることである。電極134a’は、駆動モジュール162aと接続される。線AA’およびBB’に沿った断面図に示すように、電極134a’および駆動モジュール162aは、絶縁層140a上に形成され、且つ絶縁層142aで覆われる。図17に示した液晶デバイス200fと比較して、絶縁層の数は、3から2に減少し、液晶デバイス200fの全体的構造を簡易化している。この実施形態は、電場がX方向またはY方向に完全に平行になっていないため、正確な六方向スイッチングではない。しかしながら、水平な指型電極132aと垂直な指型電極134aとを接続することにより、LC配向の変化範囲が狭くなったとしても、駆動モジュール162a(すなわち、駆動回路)の数を減らすことができる。この実施形態では、各画素素子のほぼ同じxおよびy寸法が好ましい。
【0061】
図19は、テラヘルツ電磁波のフォトニックデバイスのブロック図である。図19に示すように、テラヘルツ電磁波に使用されるフォトニックデバイス10を示す。いくつかの実施形態において、フォトニックデバイス10は、偏光子、フィルタ、位相シフター、変調器であり、または広帯域無線通信システム、警備監視システム、医療撮像システム、または物質特性解析システムであるが、本発明はこれに限定されない。フォトニックデバイス10は、複数の液晶画素素子100を含む液晶デバイス200を含む。いくつかの実施形態において、液晶デバイス200は、本願で説明した液晶デバイス200a、200b、200c、200d、および/または200eを含むが、本発明はこれに限定されない。液晶画素素子100において3つの直交方向の電場を有することにより、液晶画素素子100内の液晶モジュールは、印加された電場によって任意の方向に回転することができるため、テラヘルツ電磁波用途に応用するのに適している。
【0062】
上記で開示した構造は、初期、固有の面内および面外状態の間で液晶モジュールの配向を継続的にスイッチングすることができ、それにより、位相シフトの範囲を広げると同時に、速い応答を維持することができる。さらに、液晶モジュールの3つの配向状態の間で相互にスイッチングを行うことにより、3対の電極によって生成された3つの直交する電場を使用することが可能になる。つまり、開示した構造は、初期、固有の面内および面外状態の間で六方向性スイッチングを効果的に行うことができる。原則として、3つの液晶配向状態を利用することにより、位相シフトの変化を広げることができる。さらに、電場を印加して3つの液晶配向方向の間でスイッチングを行うことにより、より速い応答時間を維持することができる。位相シフター等のテラヘルツデバイスに対する新規の液晶スイッチングモードによって生じる位相シフトの範囲は、いくつかのデバイスおよび材料パラメータを最適化することによって、複屈折の大きな液晶を使用して遅延をさらに大きくすることも含み、さらに改善できる可能性がある。
【0063】
ここで開示した液晶デバイスは、広く応用することができ、例えば、テラヘルツアンテナアレイに統合する、あるいはテラヘルツフォトニック結晶(photonic crystal)に統合することができる。
【0064】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の液晶デバイスは、液晶デバイスに応用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 フォトニックデバイス
100 液晶画素素子
100a 第1基板
100b 第2基板
120 液晶層
122 液晶分子
130a、130b、132a、132a’ 、132b、134a、134a’ 、134b、136a、136b、137a 電極
138 電源
140a、140b、142a、142b、144a、144b 絶縁層
150a、150b アライメント層
160a 第1偏光子
160b 第2偏光子
200a、200b、200c、200d、200e 液晶デバイス
AA’、BB’ 線
d1、d2 距離
E 電場
t 厚さ
X、Y、Z 方向
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【外国語明細書】