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特開2023-71157液晶配向剤、液晶配向膜、液晶素子及び重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071157
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜、液晶素子及び重合体
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20230515BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140050
(22)【出願日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2021183754
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】石部 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤下 翔平
【テーマコード(参考)】
2H290
4J043
【Fターム(参考)】
2H290AA15
2H290AA18
2H290AA33
2H290AA53
2H290AA73
2H290BA30
2H290BD01
2H290BE03
2H290BE04
2H290BF13
2H290BF24
2H290BF25
2H290BF51
2H290DA01
2H290DA03
4J043PA06
4J043PA08
4J043PC015
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA06
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA43
4J043SA61
4J043SA62
4J043SA63
4J043SA71
4J043SA72
4J043SB01
4J043SB03
4J043SB04
4J043SB05
4J043TA22
4J043TA67
4J043TA70
4J043TB01
4J043TB03
4J043TB04
4J043UA022
4J043UA032
4J043UA052
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA141
4J043UA151
4J043UA231
4J043UA411
4J043UA421
4J043UB011
4J043UB121
4J043UB131
4J043UB211
4J043UB231
4J043UB261
4J043UB402
4J043VA022
4J043VA041
4J043VA062
4J043XA16
4J043YA08
4J043ZA51
4J043ZB21
(57)【要約】
【課題】液晶配向性が良好であり、かつ基板との密着性に優れた液晶配向膜を形成でき、しかも外力を受けたことに起因する品質低下が抑制された液晶素子を得ることができる液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】式(1)で表される部分構造(a)を有する重合体[A]を液晶配向剤に含有させる。式(1)中、A、A及びAは2価の芳香環基である。A~Aで表される2価の芳香環基のうち少なくとも1つは、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有する。B及びBは、-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-等の2価の基である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される部分構造(a)を有する重合体[A]を含有する、液晶配向剤。
【化1】
(式(1)中、A、A及びAは、それぞれ独立して2価の芳香環基である。mは0~2の整数である。ただし、mが0の場合、A及びAで表される2価の芳香環基のうち少なくとも1つは、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有し、mが1又は2の場合、A、A及びAで表される2価の芳香環基のうち少なくとも1つは、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有する。Rは、水素原子又は1価の有機基である。B及びBは、それぞれ独立して、-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-、-NR-CO-NR-若しくは炭素数1~14のアルカンジイル基であるか、又は、炭素数2~14のアルカンジイル基における任意のメチレン基が-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-及び-NR-CO-NR-のうち少なくともいずれかによって置き換えられてなる2価の基である。R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の有機基である。mが2の場合、式中の複数のAは同一又は異なり、複数のBは同一又は異なる。「*」は結合手を表す。)
【請求項2】
上記式(1)中のB及びBのうち、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有する2価の芳香環基に隣接する基は、「-CHOR」で表される基が結合した芳香環に対し、-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-又は-NR-CO-NR-で結合している、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記重合体[A]は、前記部分構造(a)を有するジアミンに由来する構造単位を含む、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記ジアミンは、下記式(2)で表される化合物である、請求項3に記載の液晶配向剤。
【化2】
(式(2)中、D及びDは、それぞれ独立して単結合又は2価の有機基である。A、A、A、B、B及びmは上記式(1)と同義である。)
【請求項5】
前記重合体[A]は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記部分構造(a)を有しない重合体[Q]を更に含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
前記重合体[Q]は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶配向剤により形成された液晶配向膜。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶配向膜を備える液晶素子。
【請求項10】
ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル又はポリイミドであって、下記式(1)で表される部分構造を有する、重合体。
【化3】
(式(1)中、A、A及びAは、それぞれ独立して2価の芳香環基である。mは0~2の整数である。ただし、mが0の場合、A及びAで表される2価の芳香環基のうち少なくとも1つは、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有し、mが1又は2の場合、A、A及びAで表される2価の芳香環基のうち少なくとも1つは、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有する。Rは、水素原子又は1価の有機基である。B及びBは、それぞれ独立して、-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-、-NR-CO-NR-若しくは炭素数1~14のアルカンジイル基であるか、又は、炭素数2~14のアルカンジイル基における任意のメチレン基が-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-及び-NR-CO-NR-のうち少なくともいずれかによって置き換えられてなる2価の基である。R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の有機基である。mが2の場合、式中の複数のAは同一又は異なり、複数のBは同一又は異なる。「*」は結合手を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜、液晶素子及び重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶素子としては、電極構造や使用する液晶分子の物性等が異なる種々の駆動方式が開発されており、例えばTN型やSTN型、VA型、MVA型、面内スイッチング型(IPS型)、FFS型、光学補償ベンド型(OCB型)等の各種液晶素子が知られている。これら液晶素子は、液晶分子を配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜は一般に、重合体成分が有機溶媒に溶解又は分散されてなる液晶配向剤を基板表面に塗布し、好ましくは加熱することによって基板上に形成される。
【0003】
近年、大画面で高精細な液晶テレビが主体となり、またスマートフォンやタブレットPC等といった小型の表示端末の普及が進み、液晶表示装置に対する高品質化の要求は更に高まっている。このような高品質化の要求に応えるべく、種々の液晶配向剤が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1には、ポリイミド又はポリイミド前駆体と共に、液晶配向膜の硬度を向上させる低分子化合物として架橋性添加剤を液晶配向剤に含有させることが開示されている。また、特許文献2には特定構造のジアミンから得られる重合体を液晶配向剤に含有させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/171128号
【特許文献2】国際公開第2020/203110号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶素子の高精細化や多用途化に伴い、品質に対する要求は更に厳しくなっている。例えば、液晶素子には、液晶配向性及び電圧保持率を更に改善するだけではなく、輸送時の振動やタッピング等の物理的圧力に対して品質が損なわれないことが求められる。
【0007】
その一方で、液晶表示装置では薄型化の要求が加速しており、液晶表示装置の基材(主にガラス基板)は薄膜化の一途を辿っている。そのため、液晶素子の内部に加わる応力は、従来にも増して増大しており、近年の応力の増大を加味した出荷前のタッピング試験において起点不良が発生することが問題になっている。しかしながら、従来のように架橋性添加剤を用いるだけでは膜強度が十分でなく、品質を維持することが困難になっている。
【0008】
また近年、スマートフォンやタブレットPC等に代表されるモバイル用途の表示装置では、タッチパネルの稼働面積をより広く、かつ表示装置の小型化を両立させるために狭額縁化を図ることが行われている。狭額縁化を図る方法の1つとしては、基板面全体に液晶配向膜を形成した後、シール剤を液晶配向膜上に塗布して基板同士を貼り合わせる方法が知られている。その一方で、液晶配向膜上にシール剤を配置した場合、シール剤を配置した液晶配向膜部分に力がかかりやすく、これに伴い基板同士の剥がれが生じやすい傾向がある。輸送時の振動やタッピング等の物理的圧力に対して品質が損なわれないようにするには、液晶配向膜の基板への密着性が高いことも求められる。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、液晶配向性が良好であり、かつ基板との密着性に優れた液晶配向膜を形成でき、しかも外力を受けたことに起因する品質低下が抑制された液晶素子を得ることができる液晶配向剤を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討し、特定の構造を有する重合体を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により以下の手段が提供される。
【0011】
<1> 下記式(1)で表される部分構造(a)を有する重合体[A]を含有する、液晶配向剤。
【化1】
(式(1)中、A、A及びAは、それぞれ独立して2価の芳香環基である。mは0~2の整数である。ただし、mが0の場合、A及びAで表される2価の芳香環基のうち少なくとも1つは、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有し、mが1又は2の場合、A、A及びAで表される2価の芳香環基のうち少なくとも1つは、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有する。Rは、水素原子又は1価の有機基である。B及びBは、それぞれ独立して、-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-、-NR-CO-NR-若しくは炭素数1~14のアルカンジイル基であるか、又は、炭素数2~14のアルカンジイル基における任意のメチレン基が-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-及び-NR-CO-NR-のうち少なくともいずれかによって置き換えられてなる2価の基である。R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の有機基である。mが2の場合、式中の複数のAは同一又は異なり、複数のBは同一又は異なる。「*」は結合手を表す。)
【0012】
<2> 上記<1>の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
<3> 上記<2>の液晶配向膜を備える液晶素子。
<4> 上記式(1)で表される部分構造を有する、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミド。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶配向剤によれば、液晶配向性が良好であり、かつ基板との密着性に優れた液晶配向膜を形成することができる。また、外力(例えば、振動やタッピング等による外力)を受けた場合にも品質の低下が抑制された液晶素子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《液晶配向剤》
以下に、本開示の液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
【0015】
なお、本明細書において、「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、鎖状炭化水素基は飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素基は、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香族炭化水素基は、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
【0016】
「主鎖」とは、重合体の原子鎖のうち最も長い「幹」の部分をいう。なお、この「幹」の部分が環構造を含むことは許容される。「側鎖」とは、重合体の「幹」から分岐した部分をいう。「芳香環」は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を含む意味である。「有機基」とは、炭素を含む化合物(すなわち有機化合物)から任意の水素原子を取り除いてなる原子団をいう。「テトラカルボン酸誘導体」は、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステル及びテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物を含む意味である。
【0017】
本開示の液晶配向剤は、下記式(1)で表される部分構造(a)を有する重合体[A]を含有する。
【化2】
(式(1)中、A、A及びAは、それぞれ独立して2価の芳香環基である。mは0~2の整数である。ただし、mが0の場合、A及びAで表される2価の芳香環基のうち少なくとも1つは、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有し、mが1又は2の場合、A、A及びAで表される2価の芳香環基のうち少なくとも1つは、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有する。Rは、水素原子又は1価の有機基である。B及びBは、それぞれ独立して、-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-、-NR-CO-NR-若しくは炭素数1~14のアルカンジイル基であるか、又は、炭素数2~14のアルカンジイル基における任意のメチレン基が-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-及び-NR-CO-NR-のうち少なくともいずれかによって置き換えられてなる2価の基である。R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は1価の有機基である。mが2の場合、式中の複数のAは同一又は異なり、複数のBは同一又は異なる。「*」は結合手を表す。)
【0018】
<重合体[A]>
・部分構造(a)について
部分構造(a)は、2個以上の芳香環を有し、2個以上の芳香環のうち少なくとも1個の芳香環に「-CHOR」で表される基が結合した構造(以下、「特定芳香環構造」ともいう)を含む。また、部分構造(a)は、特定芳香環構造とともに、芳香環同士が特定の2価の基により連結されたスペーサー構造を含む。特定芳香環構造及び上記スペーサー構造を含む部分構造(a)を液晶配向膜の重合体成分に導入することにより、高強度でありながら液晶配向性に優れた液晶配向膜を得ることができる。
【0019】
式(1)において、A、A及びAで表される2価の芳香環基は、芳香環の環部分から任意の2個の水素原子を取り除いた基である。2価の芳香環基に含まれる芳香環は、芳香族炭化水素環でもよく芳香族複素環でもよい。芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環等が挙げられる。芳香族複素環としては、窒素含有芳香族複素環、酸素含有芳香族複素環及び硫黄含有芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環の具体例としては、窒素含有芳香族複素環として、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環及びピラジン環等を;酸素含有芳香族複素環として、フラン環等を;硫黄含有芳香族複素環として、チオフェン環等を、それぞれ挙げることができる。
【0020】
液晶配向膜の高密度化を図り、液晶配向膜の強度及び液晶配向性をより優れたものとする観点から、A、A及びAに含まれる芳香環は、中でも、ベンゼン環、ナフタレン環又はピリジン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0021】
部分構造(a)は、特定芳香環構造として、2価の芳香環基(m=0の場合はA及びA、m=1又は2の場合はA、A及びA)に含まれる芳香環の少なくとも1個に対して、「-CHOR」で表される基が結合した構造を有する。すなわち、mが0の場合、部分構造(a)に含まれる合計2個の芳香環基(A及びA)のうち少なくともいずれかは、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有している。mが1の場合、部分構造(a)に含まれる合計3個の芳香環基(A、A及びA)のうち少なくともいずれかは、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有している。mが2の場合、部分構造(a)に含まれる合計4個の芳香環基(1個のA、2個のA及び1個のA)のうち少なくともいずれかは、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有している。合成のしやすさや液晶配向性等の観点から、mは0又は1が好ましい。
【0022】
で表される1価の有機基としては、1価の炭化水素基、熱及び光の少なくともいずれかによって脱離して水素原子に置き換わる1価の基(以下、「脱離性基」ともいう)が挙げられる。1価の炭化水素基の具体例としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基及び炭素数6~10のアラルキル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~3のアルキル基及びフェニル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
【0023】
1価の脱離性基は、熱(好ましくは膜形成時の加熱)により脱離する基(以下、「熱脱離性基」ともいう)であることが好ましい。熱脱離性基の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)、ベンジルオキシカルボニル基、1,1-ジメチル-2-ハロエチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基等のカルバメート系脱離性基;炭素数1~7のアルキル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基等のエーテル系脱離性基;メトキシメチル基、エトキシエチル基、2-テトラヒドロピラニル基等のアセタール系脱離性基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル系脱離性基;アリル基、メタリル基等のアリル系脱離性基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等のシリルエーテル系脱離性基が挙げられる。熱による脱離しやすさと保存安定性との両立を図る観点から、これらのうち、カルバメート系脱離性基、エーテル系保護基、アセタール系保護基又はアセチル基が好ましく、tert-ブトキシカルボニル基、炭素数1~3のアルキル基、2-テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、1-エトキシエチル基又はアセチル基がより好ましい。
【0024】
は、中でも、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の熱脱離性基が好ましく、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、tert-ブトキシカルボニル基、2-テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、1-エトキシエチル基又はアセチル基がより好ましい。
【0025】
部分構造(a)1個あたりが有する「-CHOR」の数は、膜強度の向上と良好な液晶配向性とをバランス良く発現させる観点から、1~4個が好ましく、1個又は2個がより好ましい。また、特定芳香環構造において、1個の芳香環に結合している「-CHOR」の数は、1個又は2個が好ましい。
【0026】
なお、A、A及びAに含まれる芳香環は、「-CHOR」で表される基以外の置換基(以下、「他の置換基」ともいう)を有していてもよい。他の置換基としては、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子、水素原子、シアノ基等が挙げられる。「-CHOR」で表される基の架橋反応を促進させ、膜強度が十分に高い液晶配向膜を得る観点からすると、A、A及びAに含まれる芳香環が有する他の置換基の数は、1個の芳香環につき、0~2個が好ましく、0個又は1個がより好ましく、0個である(すなわち、他の置換基を有しない)ことが更に好ましい。
【0027】
及びBは、-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-、-NR-CO-NR-若しくは炭素数1~14のアルカンジイル基であるか、又は、炭素数2~14のアルカンジイル基における任意のメチレン基が-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-及び-NR-CO-NR-のうち少なくともいずれかの基(以下、「特定のヘテロ原子含有基」ともいう)によって置き換えられてなる2価の基(以下、「2価の基E」ともいう)である。BとBとは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
及びBで表される炭素数1~14のアルカンジイル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。液晶配向性が良好な液晶配向膜を形成する観点から、B及びBで表されるアルカンジイル基は直鎖状であることが好ましい。液晶配向性の観点から、中でも、炭素数1~10の直鎖状のアルカンジイル基が好ましく、炭素数2~10の直鎖状のアルカンジイル基がより好ましく、炭素数4~10の直鎖状のアルカンジイル基が更に好ましい。
【0029】
及びRで表される1価の有機基としては、1価の炭化水素基及び脱離性基が挙げられる。1価の炭化水素基の具体例としては、Rで表される1価の炭化水素基の例示及び好ましい例の説明を適用することができる。1価の脱離性基は熱脱離性基であることが好ましい。具体的には、tert-ブトキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基が好ましく、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)が特に好ましい。R及びRは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の熱脱離性基が好ましく、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又はtert-ブトキシカルボニル基がより好ましく、水素原子又はtert-ブトキシカルボニル基が更に好ましい。
【0030】
及びBで表される2価の基Eは、液晶配向性を良好にできる点で、直鎖状のアルカンジイル基における任意のメチレン基が、上述した特定のヘテロ原子含有基によって置き換えられてなる基であることが好ましい。この場合、特定のヘテロ原子含有基は、膜強度の改善効果を高くできる点で、電子供与性基(-O-、-S-、-NR-、*-O-CO-、*-O-CS-、*-NR-CO-、-NR-CO-NR-(ただし、「*」は芳香環との結合手を表す))であることが好ましい。
【0031】
2価の基Eは、基Eに隣接する2価の芳香環基(A、A又はA)が、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有する場合、「-CHOR」で表される基が結合した芳香環に対し、-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-又は-NR-CO-NR-で結合していることが好ましい。これらの基が特定芳香環構造に直接結合していることにより、良好な液晶配向性及び基板との密着性が良好な液晶配向膜を得ることができる点、並びに振動やタッピングによる表示品位の低下抑制の効果を高くできる点で好ましい。
【0032】
2価の基Eは、具体的には、下記式(G-1)で表される基であることが好ましい。
【化3】
(式(G-1)中、X及びXは、それぞれ独立して、-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-又は-NR-CO-NR-である。Rは、炭素数1~6のアルカンジイル基である。nは1又は2である。R及びRは、式(1)と同義である。「*」は結合手を表す。)
【0033】
式(G-1)において、X及びXは、液晶配向性を維持しつつ膜強度の改善効果が高い液晶配向膜を得る観点から、-O-、-S-、-NR-、*-O-CO-、*-O-CS-、*-NR-CO-、-NR-CO-NR-(ただし、「*」は芳香環との結合手を表す)が好ましく、-O-、-S-又は-NR-がより好ましい。
【0034】
及びBは、良好な液晶配向性を示す有機膜を形成できる点で、上記のうち、炭素数1~14のアルカンジイル基又は2価の基Eであることが好ましい。また、良好な液晶配向性を保持したまま膜強度の改善効果を高くできる点で、B及びBは2価の基Eであることがより好ましく、式(G-1)で表される基であることが更に好ましい。
【0035】
部分構造(a)の具体例としては、下記式(1-1)~式(1-29)のそれぞれで表される構造が挙げられる。
【化4】
【化5】
【0036】
【化6】
【0037】
【化7】
(式中、「*」は結合手を表す。)
【0038】
重合体[A]は、部分構造(a)を主鎖中に有していてもよいし、側鎖に有していてもよい。部分構造(a)の導入による液晶配向膜の液晶配向性及び膜強度の改善効果を高くする観点から、重合体[A]は、部分構造(a)を主鎖中に有していることが好ましい。なお、重合体[A]が「部分構造(a)を主鎖中に有している」場合には、重合体[A]が部分構造(a)を主鎖中のみに有している場合だけでなく、主鎖中と側鎖に有している場合が含まれる。
【0039】
重合体[A]において、部分構造(a)の含有割合は、良好な液晶配向性を発現し、かつ高密着性を示す液晶素子を得る観点から、重合体[A]が有する単量体単位の全量に対して、2モル%以上であることが好ましい。上記観点から、部分構造(a)の含有割合は、重合体[A]が有する単量体単位の全量に対して、より好ましくは5モル%以上であり、更に好ましくは7モル%以上である。また、部分構造(a)の含有割合は、重合体[A]の主鎖に応じて適宜設定され得るが、重合体[A]が有する単量体単位の全量に対して、例えば60モル%以下であり、好ましくは50モル%以下である。なお、重合体[A]において、部分構造(a)は、1種のみであってもよく2種以上であってもよい。
【0040】
重合体[A]の主骨格は特に限定されない。液晶との親和性及び機械的強度が高く、かつ信頼性の高い液晶配向膜を形成できる点、並びに部分構造(a)を重合体主鎖に導入しやすい点で、重合体[A]は中でも、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0041】
重合体[A]を製造する方法は、部分構造(a)を重合体に導入できればよく、特に限定されない。部分構造(a)を重合体に導入しやすい点で、重合体[A]は、部分構造(a)を有する単量体を用いて重合する方法により製造されることが好ましい。部分構造(a)を有する単量体は、液晶との親和性及び機械的強度が高い液晶配向膜を形成できる点、並びに単量体設計の自由度が高い点で、部分構造(a)を有するジアミン化合物(以下、「特定ジアミン」ともいう)であることが好ましい。
【0042】
(特定ジアミン)
特定ジアミンは、部分構造(a)及び2個の1級アミノ基を有する化合物であればよく、その他の部分の構造については特に限定されない。特定ジアミンは、具体的には下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化8】
(式(2)中、D及びDは、それぞれ独立して単結合又は2価の有機基である。A、A、A、B、B及びmは式(1)と同義である。)
【0043】
式(2)において、D及びDで表される2価の有機基としては、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及び窒素含有複素環基等が挙げられる。これらのうち、D及びDで表される2価の有機基は、芳香族炭化水素基及び窒素含有複素環基であることが好ましく、置換又は無置換のフェニレン基であることがより好ましい。置換されたフェニレン基において、置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。D及びDは、単結合、置換若しくは無置換のフェニレン基、又は置換若しくは無置換のピリジレン基であることが好ましく、置換又は無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
【0044】
なお、A、A、A、B、B及びmの具体例及び好ましい例については、式(1)の説明が適用される。
【0045】
特定芳香環構造に含まれる芳香環に1級アミノ基(より詳細には、重合に関与する1級アミノ基)が結合している場合、「-CHOR」で表される基は、1級アミノ基に対して、オルト位又はメタ位にあることが好ましく、膜強度の改善効果をより高くできる点で、メタ位にあることがより好ましい。
【0046】
特定ジアミンの具体例としては、下記式(3-1)~式(3-29)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化9】
【化10】
【0047】
【化11】
【化12】
【0048】
【化13】
【0049】
<ポリアミック酸>
重合体[A]がポリアミック酸である場合、当該ポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸[A]」ともいう)は、例えば、テトラカルボン酸二無水物と、特定ジアミンを含むジアミン化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0050】
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸[A]の合成に際し、テトラカルボン酸二無水物としては、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上組み合わせて使用してもよい。ポリアミック酸[A]の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、鎖状テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物を含む。
【0051】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、鎖状テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物等が挙げられる。脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等、3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルナン-2:3,5:6-二無水物が挙げられる。
【0052】
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメート、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-カルボニルジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等を;それぞれ挙げることができる。また、ポリアミック酸[A]の合成に際し、テトラカルボン酸二無水物としては、特開2010-97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることもできる。
【0053】
ポリアミック酸[A]の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物は、溶解性が高く、かつ良好な液晶配向性及び電気特性を示す液晶配向膜を得ることができる点で、脂肪族テトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましく、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むことがより好ましい。脂環式テトラカルボン酸二無水物の使用量は、ポリアミック酸[A]の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して、20モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることが更に好ましい。
【0054】
(ジアミン化合物)
ポリアミック酸[A]の合成に際し、ジアミン化合物としては、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上組み合わせて使用してもよい。ポリアミック酸[A]の合成に使用するジアミン化合物は、特定ジアミンのみであってもよいが、部分構造(a)を有しないジアミン化合物(以下、「その他のジアミン」ともいう)を含んでいてもよい。その他のジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及びジアミノオルガノシロキサン等を挙げることができる。脂肪族ジアミンは、鎖状ジアミン及び脂環式ジアミンを含む。
【0055】
その他のジアミンの具体例としては、鎖状ジアミンとして、メタキシリレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。脂環式ジアミンとしては、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等が挙げられる。ジアミノオルガノシロキサンとしては、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0056】
芳香族ジアミンとしては、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサン、6,6’-(ペンタメチレンジオキシ)ビス(3-アミノピリジン)、N,N’-ジ(5-アミノ-2-ピリジル)-N,N’-ジ(tert-ブトキシカルボニル)エチレンジアミン、ビス[2-(4-アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェネチルウレア、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-(フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、2,6-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、3,6-ジアミノアクリジン、ジフェニルアミン構造含有モノマー、下記式(F-1)
【化14】
(式(F-1)中、R21及びR22は、それぞれ独立して、アルカンジイル基である。R23は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は脱離性基である。r1は1~3の整数である。r1が2又は3の場合、複数のR22は互いに同一又は異なり、複数のR23は互いに同一又は異なる。)
で表される化合物等の主鎖型ジアミン;
ヘキサデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレステリルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、コレステリルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5-ジアミノ安息香酸コレステリル、3,5-ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6-ビス(4-アミノフェノキシ)コレスタン、4-(4’-トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル-3,5-ジアミノベンゾエート、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ブチルシクロヘキサン、3,5-ジアミノ安息香酸=5ξ-コレスタン-3-イル、下記式(E-1)
【化15】
(式(E-1)中、XI及びXIIは、それぞれ独立して、単結合、-O-、*-COO-又は*-OCO-(ただし、「*」はXとの結合手を示す。)である。Rは、炭素数1~3のアルカンジイル基である。RIIは、単結合又は炭素数1~3のアルカンジイル基である。RIIIは、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、又はフルオロアルコキシ基である。aは0又は1である。bは0~3の整数である。cは0~2の整数である。dは0又は1である。ただし、1≦a+b+c≦3である。)
で表される化合物等の側鎖型ジアミン等が挙げられる。
【0057】
式(F-1)で表される化合物としては、例えば下記式(F-1-1)~式(F-1-3)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。式(E-1)で表される化合物としては、例えば下記式(E-1-1)~式(E-1-4)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。その他のジアミンとしては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化16】
【0058】
ポリアミック酸[A]の製造に際し、特定ジアミンの使用量は、ポリアミック酸[A]の合成に使用するジアミン化合物の全量に対して、5モル%以上とすることが好ましく、10モル%以上とすることがより好ましく、20モル%以上とすることが更に好ましい。
【0059】
(ポリアミック酸の合成)
ポリアミック酸[A]は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることにより得ることができる。
【0060】
ポリアミック酸[A]の合成反応において、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との使用割合は、ジアミン化合物のアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2~2当量となる割合が好ましい。分子量調整剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸等の酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミン等のモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましい。
【0061】
ポリアミック酸[A]の合成反応は、好ましくは有機溶媒中で行われる。このときの反応温度は-20℃~150℃が好ましく、反応時間は0.1~24時間が好ましい。反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素、炭化水素等を挙げることができる。これらのうち、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m-クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を反応溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と、他の有機溶媒(例えば、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテル等)との混合物を使用することが好ましい。有機溶媒の使用量は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との合計量が、反応溶液の全量に対して0.1~50質量%になる量とすることが好ましい。
【0062】
以上のようにして、ポリアミック酸[A]を溶解してなる重合体溶液が得られる。この重合体溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、重合体溶液中に含まれるポリアミック酸[A]を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0063】
<ポリアミック酸エステル>
重合体[A]がポリアミック酸エステルである場合、当該ポリアミック酸エステル(以下、「ポリアミック酸エステル[A]」ともいう)は、例えば、[I]ポリアミック酸[A]とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルと、特定ジアミンを含むジアミン化合物とを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物と、特定ジアミンを含むジアミン化合物とを反応させる方法、等によって得ることができる。ポリアミック酸エステル[A]は、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。ポリアミック酸エステル[A]を溶解してなる反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸エステル[A]を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0064】
<ポリイミド>
重合体[A]がポリイミドである場合、当該ポリイミド(以下、「ポリイミド[A]」ともいう)は、例えば上記の如くして合成されたポリアミック酸[A]を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ポリイミド[A]は、その前駆体であるポリアミック酸[A]が有していたアミック酸構造の全てを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。ポリイミド[A]は、イミド化率が20~99%であることが好ましく、30~90%であることがより好ましい。なお、イミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0065】
ポリアミック酸[A]の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸[A]を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し、必要に応じて加熱する方法により行われる。この方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸[A]のアミック酸構造の1モルに対して0.01~20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01~10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸[A]の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0~180℃である。反応時間は、好ましくは1.0~120時間である。なお、ポリイミド[A]を含有する反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミド[A]を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0066】
重合体[A]がポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である場合、重合体[A]の溶液粘度は、濃度10質量%の溶液としたときに10~800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15~500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、溶液粘度(mPa・s)は、重合体[A]の良溶媒(例えばγ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン等)を用いて調製した濃度10質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0067】
重合体[A]のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは7以下であり、より好ましくは5以下である。なお、液晶配向剤の調製に際し、重合体[A]としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
液晶配向剤中における重合体[A]の含有量は、液晶配向剤に含まれる固形分(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計)100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましい。重合体[A]の含有量が上記範囲であると、膜強度、基板との密着性及び液晶配向性の改善効果を十分に得ることができる点で好適である。
【0069】
<その他の成分>
液晶配向剤は、重合体[A]のほか、必要に応じて、重合体[A]とは異なる成分(以下、「その他の成分」ともいう)を含有していてもよい。
【0070】
(重合体[Q])
本開示の液晶配向剤は、重合体成分として、部分構造(a)を有しない重合体(以下、「重合体[Q]」ともいう)を更に含有してもよい。
【0071】
重合体[Q]の主骨格は特に限定されない。重合体[Q]としては、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリエナミン、ポリウレア、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾオキサゾール、セルロース誘導体、ポリアセタール、付加重合体等が挙げられる。信頼性の高い液晶素子を得る観点から、重合体[Q]は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。付加重合体としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、マレイミド系重合体及びスチレン-マレイミド系共重合体等が挙げられる。
【0072】
本開示の液晶配向剤に、重合体[A]と共に重合体[Q]を含有させる場合、重合体[Q]の含有量は、重合体[A]と重合体[Q]との合計量に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。また、重合体[Q]の含有量は、重合体[A]と重合体[Q]との合計量に対して、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。重合体[Q]としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0073】
(溶剤)
本開示の液晶配向剤は、重合体成分及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解されてなる液状の組成物として調製される。
【0074】
溶剤としては有機溶媒が好ましく使用される。その具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1,2-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、フェノール、γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクタム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジアセトンアルコール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、プロパン-1,2-ジオール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸エチル、メチルメトキシプロピオネ-ト、エチルエトキシプロピオネ-ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-i-プロピルエーテル、エチレングリコール-n-ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチレングリコールジエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールジアセテート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。溶剤としては、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0075】
液晶配向剤に含有されるその他の成分としては、上記のほか、例えば、架橋剤、酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤等が挙げられる。その他の成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で各化合物に応じて適宜選択することができる。
【0076】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性等を考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1~10質量%の範囲である。固形分濃度が1質量%以上であると、塗膜の膜厚を十分に確保でき、より良好な液晶配向性を示す液晶配向膜を得ることができる点で好適である。一方、固形分濃度が10質量%以下であると、塗膜を適度な厚みとすることができ、良好な液晶配向性を示す液晶配向膜が得られやすく、また、液晶配向剤の粘性が適度となり塗布性を良好にできる傾向がある。
【0077】
ここで、重合体[A]を含む液晶配向剤によれば、液晶配向性及び基板との密着性が改善されるとともに、膜強度が高く、外力を受けたことに起因する品質低下が抑制された液晶素子を得ることができた理由は定かではないが、一つの理由として、重合体[A]は特定芳香環構造を有するため、例えば膜形成時の加熱により、「-CHOR」によって重合体同士が高密度に架橋しやすく、これにより膜破断の発生が抑制された液晶配向膜を得ることができたことが考えられる。なお、重合体[A]においては、部分構造(a)が有する電子豊富な芳香環との縮合反応やカルボン酸との付加反応、エステルとの交換反応等によって架橋が進行していると想定される。また更には、重合体[A]は芳香環同士がスペーサー構造によって連結されているため、高い膜強度を有しながら、良好な液晶配向性を示したことが考えられる。ただし、これらの推察は本開示を限定するものではない。
【0078】
≪液晶配向膜及び液晶素子≫
本開示の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により製造される。また、本開示の液晶素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶素子における液晶の駆動方式は特に限定されず、例えばTN型、STN型、VA型(VA-MVA型、VA-PVA型等を含む)、IPS(In Plane Switching)型、FFS(Fringe Field Switching)型、OCB(Optically Compensated Bend)型、PSA型(Polymer Sustained Alignment)等の種々のモードに適用することができる。液晶素子は、例えば以下の工程1~工程3を含む方法により製造することができる。工程1は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程2及び工程3は、各動作モード共通である。
【0079】
<工程1:塗膜の形成>
まず、基板上に液晶配向剤を塗布し、好ましくは塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)等のプラスチック;からなる透明基板を用いることができる。TN型、STN型又はVA型の液晶素子を製造する場合には、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を用いる。一方、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム-酸化スズ(In-SnO)からなるITO膜等を用いることができる。
【0080】
基板への液晶配向剤の塗布方法は特に限定されない。基板への液晶配向剤の塗布は、例えば、スピンコート方式、印刷方式(例えば、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式等)、インクジェット方式、スリットコート方式、バーコーター方式、エクストリューションダイ方式、ダイレクトグラビアコーター方式、チャンバードクターコーター方式、オフセットグラビアコーター方式、含浸コーター方式、MBコーター方式法等により行うことができる。
【0081】
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30~200℃であり、プレベーク時間は、好ましくは0.25~10分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて、重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80~280℃であり、より好ましくは80~250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5~200分である。形成される膜の厚み(膜厚)は、好ましくは0.001~1μmである。
【0082】
<工程2:配向処理>
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合、上記工程1で形成した塗膜に対し、液晶配向能を付与する処理(配向処理)が施される。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、基板上に形成した塗膜の表面をコットンやナイロン等で擦るラビング処理、又は塗膜に光照射を行って液晶配向能を付与する光配向処理を用いることが好ましい。垂直配向型の液晶素子を製造する場合には、上記工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用してもよく、液晶配向能を更に高めるために塗膜に対し配向処理を施してもよい。
【0083】
光配向のための光照射は、ポストベーク工程後の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程後であってポストベーク工程前の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程及びポストベーク工程の少なくともいずれかにおいて塗膜の加熱中に塗膜に対して照射する方法、等により行うことができる。塗膜に照射する放射線としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。好ましくは、200~400nmの波長の光を含む紫外線である。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線の場合の照射方向は斜め方向とする。
【0084】
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等が挙げられる。放射線の照射量は、好ましくは200~30,000J/mであり、より好ましくは500~10,000J/mである。配向能付与のための光照射後において、基板表面を、例えば水、有機溶媒(例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル等)又はこれらの混合物を用いて洗浄する処理や、基板を加熱する処理を行ってもよい。
【0085】
<工程3:液晶セルの構築>
本工程では、液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば、液晶配向膜が対向するように間隙を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤により貼り合わせ、基板表面とシール剤で囲まれたセルギャップ内に液晶を注入充填し注入孔を封止する方法、ODF方式による方法等が挙げられる。シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。液晶としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶を挙げることができ、中でもネマチック液晶が好ましい。
【0086】
PSAモードでは、液晶とともに重合性化合物(例えば、多官能(メタ)アクリレート化合物等)をセルギャップ内に充填するとともに、液晶セルの構築後、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する処理を行う。PSAモードの液晶素子の製造に際し、重合性化合物の使用割合は、液晶の合計100質量部に対して、0.01~3質量部、好ましくは0.1~1質量部である。
【0087】
液晶表示装置を製造する場合、続いて、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせる。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板が挙げられる。
【0088】
本開示の液晶素子は、種々の用途に有効に適用することができる。具体的には、例えば、時計、携帯型ゲーム機、ワープロ、パソコン(ノート型、デスクトップ型)、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイ等の各種表示装置や、調光装置、位相差フィルム等として用いることができる。
【0089】
以上詳述した本開示によれば、以下の手段が提供される。
〔手段1〕 上記式(1)で表される部分構造(a)を有する重合体[A]を含有する、液晶配向剤。
〔手段2〕 上記式(1)中のB及びBのうち、「-CHOR」で表される基が芳香環に結合した構造を有する2価の芳香環基に隣接する基は、「-CHOR」で表される基が結合した芳香環に対し、-O-、-S-、-NR-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-NR-CO-、-CO-NR-又は-NR-CO-NR-で結合している、手段1の液晶配向剤。
〔手段3〕 前記重合体[A]は、前記部分構造(a)を有するジアミンに由来する構造単位を含む、手段1又は手段2の液晶配向剤。
〔手段4〕 前記ジアミンは、上記式(2)で表される化合物である、手段3の液晶配向剤。
〔手段5〕 前記重合体[A]は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、手段1~手段4のいずれかの液晶配向剤。
〔手段6〕 前記部分構造(a)を有しない重合体[Q]を更に含有する、手段1~手段5のいずれかの液晶配向剤。
〔手段7〕 前記重合体[Q]は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種である、手段6の液晶配向剤。
〔手段8〕 手段1~手段7のいずれかの液晶配向剤により形成された液晶配向膜。
〔手段9〕 手段8の液晶配向膜を備える液晶素子。
〔手段10〕 ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル又はポリイミドであって、上記式(1)で表される部分構造を有する、重合体。
【実施例0090】
以下、実施例に基づき実施形態をより詳しく説明するが、以下の実施例によって本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0091】
以下の例において、重合体溶液中のポリイミドのイミド化率は以下の方法により測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH-NMR測定を行った。得られたH-NMRスペクトルから、下記数式(1)によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1-(A/(A×α)))×100 …(1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
【0092】
以下の実施例で用いた原料化合物及び重合体の必要量は、下記の合成例に示す合成スケールでの合成を必要に応じて繰り返すことにより確保した。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0093】
化合物の略号は以下の通りである。なお、以下では、式(X)で表される化合物を単に「化合物(X)」と示すことがある。
【0094】
(テトラカルボン酸二無水物)
【化17】
【0095】
(ジアミン化合物)
【化18】
【化19】
【0096】
【化20】
【化21】
【化22】
【0097】
(その他の化合物)
【化23】
【0098】
<重合体の合成>
1.ポリアミック酸の合成
[合成例1]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(化合物(b-1))100モル部、ジアミン化合物として化合物(DA-1)100モル部をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解し、室温で6時間反応を行い、ポリアミック酸(これを重合体(PAA-1)とする)を15質量%含有する溶液を得た。
【0099】
[合成例2~27]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の種類及び量を表1に記載のとおり変更した以外は合成例1と同様の操作を行い、ポリアミック酸(重合体(PAA-2)~(PAA-19)及び重合体(paa-1)~(paa-8))を得た。なお、表1中、テトラカルボン酸二無水物(酸二無水物1~3)の数値は、ポリアミック酸の合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の全量100モル部に対する各化合物の割合(モル比)を表す。ジアミン化合物(ジアミン1~4)の数値は、ポリアミック酸の合成に使用したジアミン化合物の全量100モル部に対する各化合物の割合(モル比)を表す。
【0100】
【表1】
【0101】
2.ポリイミドの合成
[合成例28]
テトラカルボン酸二無水物として化合物(b-2)100モル部、ジアミン化合物として化合物(DA-2)20モル部、化合物(a-11)50モル部及び化合物(a-4)30モル部をNMPに溶解し、室温で6時間反応を行い、ポリアミック酸を15質量%含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMPを追加してポリアミック酸濃度10質量%の溶液とし、ピリジン及び無水酢酸を添加して60℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約80%のポリイミド(これを重合体(PI-1)とする)を15質量%含有する溶液を得た。
【0102】
[合成例29~39]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の種類及び量を表2に記載のとおり変更した以外は合成例28と同様の操作を行い、ポリイミド(重合体(PI-2)~(PI-9)及び(pi-1)~(pi-3))を得た。なお、表2中、ジアミン化合物(ジアミン1~4)の数値は、ポリイミドの合成に使用したジアミン化合物の全量100モル部に対する各化合物の割合(モル比)を表す。
【0103】
【表2】
【0104】
3.ポリオルガノシロキサンの合成
[合成例40]
1000ml三口フラスコに、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(化合物(s-1))100.0g、メチルイソブチルケトン500g、及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗から30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、これを0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び水を留去した。メチルイソブチルケトンを適量添加し、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンである重合体(ESSQ-1)の50質量%溶液を得た。
500ml三口フラスコに、化合物(c-1)3.10g(重合体(ESSQ-1)が有するエポキシ基量に対して20モル%)、化合物(c-2)3.24g(重合体(ESSQ-1)が有するエポキシ基量に対して10モル%)、テトラブチルアンモニウムブロミド1.00g、重合体(ESSQ-1)含有溶液20.0g、及びメチルイソブチルケトン290.0gを加え、90℃で18時間撹拌した。室温まで冷却した後、蒸留水で分液洗浄操作を10回繰り返した。その後、有機層を回収し、ロータリーエバポレータにより濃縮とNMP希釈を2回繰り返した後、NMPを用いて固形分濃度が10質量%になるように調整し、ポリオルガノシロキサン(これを重合体(PSQ-1)とする)のNMP溶液を得た。
【0105】
4.スチレン-マレイミド系共重合体の合成
[合成例41]
窒素下、100mL二口フラスコに、重合モノマーとして、化合物(M-1)5.00g、化合物(M-2)1.05g、化合物(M-3)4.80g、及び化合物(M-4)2.26g、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.39g、連鎖移動剤として2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン0.39g、並びに溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)52.5mlを加え、70℃で6時間重合した。メタノールに再沈殿した後、沈殿物を濾過し、室温で8時間真空乾燥することで目的の重合体(これを重合体(MI-1)とする)を得た。
【0106】
<液晶配向剤の調製及び評価>
[実施例1:光FFS型液晶表示素子]
1.液晶配向剤の調製
合成例1で得た重合体(PAA-1)90質量部を含む溶液、及び合成例35で得た重合体(pi-1)10質量部を含む溶液を混合し、NMP及びBCにより希釈して、溶剤組成がNMP/BC=80/20(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-1)を調製した。
【0107】
2.光配向法を用いたFFS型液晶表示素子の製造
平板電極(ボトム電極)、絶縁層及び櫛歯状電極(トップ電極)がこの順で片面に積層されたガラス基板(第1基板とする)、並びに電極が設けられていないガラス基板(第2基板とする)を準備した。次いで、第1基板の電極形成面及び第2基板の一方の基板面のそれぞれに、液晶配向剤(AL-1)をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレートで1分間加熱(プレベーク)した。その後、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで30分間乾燥(ポストベーク)を行い、平均膜厚0.1μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に対し、Hg-Xeランプを用いて、直線偏光された254nmの輝線を含む紫外線1,000J/mを基板法線方向から照射して光配向処理を施した。なお、この照射量は、波長254nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。次いで、光配向処理が施された塗膜を、230℃のクリーンオーブンで30分加熱して熱処理を行い、液晶配向膜を形成した。
次に、液晶配向膜を形成した一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した。その後、光照射時の偏光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように基板を重ね合わせて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネガ型液晶(メルク社製、MLC-6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、液晶セルを得た。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを120℃で加熱してから室温まで徐冷した。また、上記の一連の操作を、ポストベーク後の紫外線照射量を100~10,000J/mの範囲でそれぞれ変更して実施することにより、紫外線照射量が異なる3個以上の液晶セルを製造し、最も良好な配向特性を示した露光量(最適露光量)の液晶セルを、以下の液晶配向性、初期VHR、VHR信頼性及び膜強度の評価に用いた。
【0108】
3.液晶配向性の評価
上記2.で製造した液晶セルを、27,000cd/mの高輝度バックライト上で500時間静置し、バックライトの照射前後におけるリタデーション変化率により液晶配向性を評価した。まず、上記2.で製造した液晶セルにつき、オプトサイエンス社製Axoscanによりリタデーションを測定し、下記数式(z-1)によりバックライト照射前後のリタデーションの変化率αを算出した。変化率αが小さいほど、液晶配向性が良好であるといえる。変化率αが1%以下であった場合を「良好(○)」、1%よりも大きく2%以下であった場合を「可(△)」、2%よりも大きかった場合を「不良(×)」とした。
α=Δθ/θ1 …(z-1)
(式(z-1)中、Δθは照射前後のリタデーション差を表し、θ1は照射前のリタデーション値を表す。)
その結果、この実施例の液晶配向性の評価は「可(△)」の評価であった。
【0109】
4.基板への密着性評価
液晶配向剤(AL-1)を、ガラス基板上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで2分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで30分加熱(ポストベーク)することにより、平均膜厚0.10μmの塗膜を形成した。これと同様の操作を繰り返すことにより、塗膜が形成されたガラス基板を2枚作製した。塗膜を形成した1枚のガラス基板の塗膜上に、ODFシール剤(積水化学社製、S-WB42)を幅が1mmになるように塗布し、もう1枚のガラス基板の塗膜とODFシール剤とが接触するように貼り合わせた。その後、メタルハライドランプを用いて30,000J/m(365nm換算)の光を照射した後、120℃のオーブンで1時間加熱した。加熱後、今田製作所の引張圧縮試験機(型番:SDWS-0201-100SL)を用いて密着力を測定することにより、基板に対する膜の密着性を評価した。評価は、密着力が200N/cm以上であった場合を「良好(○)」、100N/cm以上200N/cm未満であった場合を「可(△)」、100N/cm未満であった場合を「不良(×)」とした。その結果、この実施例では密着力204N/cmであり、密着性「良好(○)」の評価であった。
【0110】
5.膜強度(ラビング耐性)の評価
上記1.で調製した液晶配向剤(AL-1)をガラス基板上にスピンナーを用いて塗布し、110℃のホットプレートで3分間加熱(プレベーク)した。その後、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで30分間乾燥(ポストベーク)を行い、平均膜厚0.08μmの塗膜を形成した。この塗膜につき、ヘイズメーター(hazemeter)を用いて塗膜のヘイズ値を測定した。次いで、塗膜に対し、コットン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数1000rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.3mmでラビング処理を5回実施した。その後、ヘイズメーターを用いて液晶配向膜のヘイズ値を測定し、ラビング処理前のヘイズ値との差(ヘイズ変化値)を計算した。ラビング処理前の膜のヘイズ値をHz1(%)、ラビング処理後の膜のヘイズ値をHz2(%)とした場合、ヘイズ変化値は下記数式(z-2)で表される。
ヘイズ変化値(%)=Hz2-Hz1 …(z-2)
液晶配向膜におけるヘイズ変化値が1.0未満であった場合を「良好(○)」、ヘイズ変化値が1.0以上1.5以下であった場合を「可(△)」、1.5よりも大きかった場合を「不良(×)」と評価した。ヘイズ変化値が1.5以下(より好ましくは1.0未満)であれば膜強度が十分に高くラビング耐性が高い、すなわち膜の力学特性が良好であるといえる。その結果、この実施例では膜強度「良好(○)」の評価であった。
【0111】
6.膜強度(打鍵試験耐性)の評価
上記2.で製造した液晶セルにつき、打鍵試験耐性を評価した。評価は以下のようにして行った。まず、液晶セルを偏光顕微鏡クロスニコル下で観察し、輝点の個数をカウントした。次に、固定盤上に液晶セルを固定し、打鍵棒を上下させることで液晶セルに繰り返し荷重を与えた。このときの荷重は250gf、繰り返し回数10万回、速度10Hz/secとした。打鍵後、再度液晶セルを観察し、輝点の個数をカウントした。打鍵前後における輝点の個数の差が10個未満の場合「良好(○)」、10個以上50個未満の場合「可(△)」50個以上の場合「不可(×)」と評価した。輝点の個数の差が50個未満(より好ましくは10個未満)であれば、打鍵に対する膜の力学的強度が良好であるといえる。その結果、この実施例では膜強度「良好(○)」の評価であった。
【0112】
[実施例2~28及び比較例1~6]
液晶配向剤の組成を表3のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして液晶配向剤を調製した。また、得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様にして光配向法によりFFS型液晶セルを製造し、各種評価を行った。それらの結果を表3に示す。なお、実施例26、比較例5及び比較例6では、重合体成分とともに、添加剤成分としてN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(これを化合物(N-1)とする)を配合した。表3中、質量比欄の数値は、液晶配向剤の調製に使用した重合体成分の全量100質量部に対する、各化合物(重合体、添加剤)の固形分での配合割合(質量部)を表す。
【0113】
【表3】
【0114】
表3に示すように、部分構造(a)を有する重合体[A]を含む液晶配向剤を用いた実施例1~28は、重合体[A]を含まない液晶配向剤を用いた比較例1~5に比べて、膜強度(特に打鍵試験耐性)において良好な結果であり、膜強度、液晶配向性及び基板への密着性のバランスが取れていた。また、比較例5の配向剤組成において架橋性基を有する低分子化合物である化合物(N-1)を増量した比較例6は、膜強度及び密着性は良好であったものの、液晶配向性が不良の評価であった。
【0115】
中でも、実施例1~28のうち、部分構造(a)中に炭素数2以上のアルキレン鎖を含む重合体を用いた例(実施例2~11、13~25、27、28)は、液晶配向性が「良好(○)」の評価であり、液晶配向性を維持しながら膜の密着性及び膜硬度(ラビング耐性)を改善できることが示された。また、部分構造(a)中のB、Bが-O-又は-NR-である重合体を用いた例(実施例1、2、4、5、8~28)は、膜強度(打鍵試験耐性)が「良好(○)」の評価であり、より優れていた。
【0116】
[実施例29:ラビングFFS型液晶表示素子]
1.液晶配向剤の調製
合成例4で得た重合体(PAA-4)の溶液をNMP及びブチルセロソルブ(BC)により希釈して、溶剤組成がNMP/BC=80/20(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-35)を調製した。
【0117】
2.ラビング法を用いたFFS型液晶表示素子の製造
平板電極(ボトム電極)、絶縁層及び櫛歯状電極(トップ電極)がこの順で片面に積層されたガラス基板(第1基板とする)、並びに電極が設けられていないガラス基板(第2基板とする)を準備した。次いで、第1基板の電極形成面及び第2基板の片面のそれぞれに液晶配向剤(AL-35)をスピンナーにより塗布し、110℃のホットプレートで3分間加熱(プレベーク)した。その後、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで30分間乾燥(ポストベーク)を行い、平均膜厚0.08μmの塗膜を形成した。次いで、塗膜表面に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数1000rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.3mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する一対の基板を得た。
次いで、液晶配向膜を有する一対の基板につき、液晶配向膜を形成した面の縁に液晶注入口を残して、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷塗布した。その後、基板を重ね合わせて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より、一対の基板間の間隙にネガ型液晶(メルク社製、MLC-6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを120℃で加熱してから室温まで徐冷し、液晶セルを製造した。なお、一対の基板を重ね合わせる際には、それぞれの基板のラビング方法が反平行となるようにした。
【0118】
3.評価
上記2.で製造した液晶セルにつき、実施例1と同様の方法により液晶配向性を評価した。また、液晶配向剤(AL-35)を用いて、実施例1と同様にして密着性及び膜強度を評価した。評価結果を表4に示す。
【0119】
[実施例30~39及び比較例7~11]
液晶配向剤の組成を表4のとおりに変更した以外は実施例29と同様にして液晶配向剤を調製した。また、得られた液晶配向剤を用いて、実施例29と同様にしてラビング法によりFFS型液晶セルを製造し、各種評価を行った。それらの結果を表4に示した。なお、実施例31~37、実施例39、及び比較例10,11では、重合体成分として2種類の重合体を使用した。表4中、質量比欄の数値は、液晶配向剤の調製に使用した重合体成分の全量100質量部に対する、各化合物(重合体、添加剤)の固形分での配合割合(質量部)を表す。
【0120】
【表4】
【0121】
表4に示すように、部分構造(a)を有する重合体[A]を含む液晶配向剤を用いた実施例29~39は、重合体[A]を含まない液晶配向剤を用いた比較例7~11に比べて、膜強度(特に打鍵試験耐性)において良好な結果であった。また、実施例29~39は液晶配向性及び基板との密着性も良好であった。
【0122】
[実施例40:PSA型液晶表示素子]
1.液晶配向剤の調製
合成例40で得た重合体(PSQ-1)5質量部を含む溶液、及び合成例34で得た重合体(PI-7)95質量部を含む溶液を混合し、NMP及びBCにより希釈して、溶剤組成がNMP/BC=50/50(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-51)を調製した。
【0123】
2.液晶組成物の調製
ネマチック液晶(メルク社製、MLC-6608)10gに対し、下記式(L1-1) で表される液晶性化合物を5質量%、及び下記式(L2-1)で表される光重合性化合物 を0.3質量%添加して混合し、液晶組成物LC1を得た。
【化24】
【0124】
3.PSA型液晶表示素子の製造
上記で調製した液晶配向剤(AL-51)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素に置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.1mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで、100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。なお、このラビング処理は、液晶の倒れ込みを制御し、配向分割を簡易な方法で行う目的で行った弱いラビング処理である。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板の間隙に液晶組成物LC1を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、さらに液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分間加熱した後に室温まで徐冷した。
次いで、得られた液晶セルに対し、電極間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外線照射装置を用いて、紫外線を50,000J/mの照射量にて照射した。なお、この照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。これにより、PSA型液晶セルを製造した。
【0125】
4.評価
上記3.で製造した液晶セルにつき、実施例1と同様の方法により液晶配向性、密着性及び膜強度を評価した。評価結果を表5に示す。
【0126】
[比較例12]
液晶配向剤の組成を表5のとおりに変更した以外は実施例40と同様にして液晶配向剤を調製した。また、得られた液晶配向剤を用いて、実施例40と同様にしてPSA型液晶セルを製造し、各種評価を行った。評価結果を表5に示す。表5中、質量比欄の数値は、液晶配向剤の調製に使用した重合体成分の全量100質量部に対する、各化合物(重合体、添加剤)の固形分での配合割合(質量部)を表す。
【0127】
【表5】
【0128】
表5に示すように、重合体[A]を含む液晶配向剤を用いた実施例40は、液晶配向性、密着性及び膜強度がいずれも良好の評価であった。これに対し、重合体[A]を含まない液晶配向剤を用いた比較例12は、密着性及び膜強度(ラビング耐性)は「可」、膜強度(打鍵試験耐性)は「不良」の評価であった。
【0129】
[実施例41:光VA型液晶表示素子]
1.液晶配向剤の調製
合成例41で得た重合体(MI-1)30質量部と、合成例2で得た重合体(PAA-2)70質量部を含む溶液とを混合し、NMP及びBCにより希釈して、溶剤組成がNMP/BC=80/20(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-53)を調製した。
【0130】
2.光VA型液晶表示素子の製造
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、上記で調製した液晶配向剤(AL-53)をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った。その後、庫内を窒素置換したオーブン中、230℃で1時間加熱して膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いで、この塗膜表面に、Hg-Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線1,000J/mを、基板法線から40°傾いた方向から照射して液晶配向能を付与した。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作成した。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板の紫外線の光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙にネガ型液晶(メルク社製、MLC-6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを130℃で加熱してから室温まで徐冷した。
【0131】
3.評価
上記2.で製造した液晶セルにつき、実施例1と同様の方法により液晶配向性、密着性及び膜強度を評価した。評価結果を表6に示す。
【0132】
[比較例13]
液晶配向剤の組成を表6のとおりに変更した以外は実施例と同様にして液晶配向剤を調製した。また、得られた液晶配向剤を用いて、実施例41と同様にして光VA型液晶セルを製造し、各種評価を行った。それらの結果を表6に示した。表6中、質量比欄の数値は、液晶配向剤の調製に使用した重合体成分の全量100質量部に対する、各化合物(重合体、添加剤)の固形分での配合割合(質量部)を表す。
【0133】
【表6】
【0134】
表6に示すように、重合体[A]を含む液晶配向剤を用いた実施例41は、液晶配向性、密着性及び膜強度がいずれも良好の評価であった。これに対し、重合体[A]を含まない液晶配向剤を用いた比較例13は、膜強度(ラビング耐性)は「可」、膜強度(打鍵試験耐性)は「不良」の評価であった。
【0135】
以上の結果から、部分構造(a)を有する重合体[A]を含む液晶配向剤によれば、液晶配向性に優れた液晶素子を得ることができるとともに、高い密着性と膜強度とを有する液晶配向膜を形成できることが明らかになった。