(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071183
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ステップ付の車両
(51)【国際特許分類】
B60R 3/00 20060101AFI20230516BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20230516BHJP
B62D 25/22 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
B60R3/00
B60J5/04 Z
B62D25/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020047462
(22)【出願日】2020-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門田 豪郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 佑斗
【テーマコード(参考)】
3D022
3D203
【Fターム(参考)】
3D022AA02
3D022AC01
3D022AD02
3D022AE07
3D022AE11
3D203AA02
3D203DA26
3D203DA32
(57)【要約】
【課題】ドアを全開にできない場合でも、ステップ板を希望する位置まで引き出せるようにして、乗員の乗降性を向上させる。
【解決手段】水平回動させることで車両ボディのドア開口部11を開閉するドア20と、ドア開口部11の下側で水平に出し入れ可能なステップ板43とを備えるステップ付の車両であって、ドア20の回動力をステップ板43の出し入れ力に変換する変換装置400を備えており、変換装置400は、ドア20が全開角度よりも小さい所定角度θまで回動することでステップ板43の突出量を最大にできるように構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平回動させることで車両ボディのドア開口部を開閉するドアと、前記ドア開口部の下側で水平に出し入れ可能なステップ板とを備えるステップ付の車両であって、
前記ドアの回動力を前記ステップ板の出し入れ力に変換する変換装置を備えており、
前記変換装置は、前記ドアが全開角度よりも小さい所定角度まで回動することで前記ステップ板の突出量を最大にできるように構成されているステップ付の車両。
【請求項2】
請求項1に記載のステップ付の車両であって、
前記変換装置は、前記車両ボディに設けられたドア側歯車と、前記ドアの回動力を前記ドア側歯車に伝達するドア側リンクと、前記車両ボディに設けられ、前記ドア側歯車と噛合して、そのドア側歯車の回転力を前記ステップ板に伝えるステップ側歯車とを備えているステップ付の車両。
【請求項3】
請求項2に記載のステップ付の車両であって、
前記変換装置は、前記ステップ側歯車と共に回動するステップ側リンクと、前記ステップ板に設けられており、前記ステップ側リンクの回動自由端側をガイドする直線状のレールとを備えており、
前記ステップ側リンクの回動により、そのステップ側リンクの回動自由端側が円弧運動をしつつ前記レールに沿って移動することで、前記レールと前記ステップ板とが車幅方向に移動可能な構成であるステップ付の車両。
【請求項4】
請求項3に記載のステップ付の車両であって、
前記レールには、直線部と、ステップ側リンクの回動自由端側の移動軌跡に重なる円弧部とが連続して設けられているステップ付の車両。
【請求項5】
請求項3に記載のステップ付の車両であって、
前記ドア側歯車と前記ステップ側歯車とは、前記ドアが所定角度を超えて回動する際は、歯車の噛合が解除されるように構成されているステップ付の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平回動させることで車両ボディのドア開口部を開閉するドアと、前記ドア開口部の下側で水平に出し入れ可能なステップ板とを備えるステップ付の車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のステップ付の車両に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1のステップ付の車両は、
図17に示すように、扇形のステップ板102を備えており、そのステップ板102の扇形の半径に相当する一辺がドア100の下端縁に取付けられている。また、車両ボディ103の床下側には、ステップ板102の扇形の円弧に相当する部分をガイドする円弧形のガイドレール(図示省略)が設けられている。これにより、ドア100を開方向に回動させることで、自動的にステップ板102を車両ボディ103の下から引き出す(突出させる)ことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したステップ板102はドア100に取付けられているため、ドア100を全閉位置と全開位置間で回動させるのに必要な平面積と等しい大きさまでステップ板102のサイズを大きくする必要がある。また、ステップ板102のサイズが大きくなることで、ステップ板102の収納スペースも大きくとる必要がある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ドアの回動に必要な平面積とは無関係に、ステップ板のサイズを決定できるようにして、ステップ板のサイズを乗降に必要なサイズにできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、水平回動させることで車両ボディのドア開口部を開閉するドアと、前記ドア開口部の下側で水平に出し入れ可能なステップ板とを備えるステップ付の車両であって、前記ドアの回動力を前記ステップ板の出し入れ力に変換する変換装置を備えており、前記変換装置は、前記ドアが全開角度よりも小さい所定角度まで回動することで前記ステップ板の突出量を最大にできるように構成されている。
【0007】
本発明によると、変換装置は、ドアが全開角度よりも小さい所定角度まで回動することでステップ板の突出量を最大にできるように構成されている。即ち、ドアが所定角度から全開角度まで回動する間は、ステップ板は最大限に突出した状態(展開状態)に保持される。このため、ドアを全閉位置と全開位置間で回動させるのに必要な平面積とは無関係にステップ板のサイズを決定できる。したがって、ステップ板のサイズを乗降に必要なサイズにできる。また、ステップ板の格納スペースもコンパクトにできる。
【0008】
第2の発明によると、変換装置は、車両ボディに設けられたドア側歯車と、ドアの回動力を前記ドア側歯車に伝達するドア側リンクと、前記車両ボディに設けられ、前記ドア側歯車と噛合して、そのドア側歯車の回転力を前記ステップ板に伝えるステップ側歯車とを備えている。
【0009】
第3の発明によると、変換装置は、ステップ側歯車と共に回動するステップ側リンクと、前記ステップ板に設けられており、前記ステップ側リンクの回動自由端側をガイドする直線状のレールとを備えており、前記ステップ側リンクの回動により、そのステップ側リンクの回動自由端側が円弧運動をしつつ前記レールに沿って移動することで、前記レールと前記ステップ板とが車幅方向に移動可能な構成である。即ち、ステップ側リンクとレールの働きにより、ステップ側歯車の回転力をステップ板の出し入れ力に変換できるようになる。
【0010】
第4の発明によると、レールには、直線部と、ステップ側リンクの回動自由端側の移動軌跡に重なる円弧部とが連続して設けられている。これにより、ステップ側リンクの回動自由端側がレールの直線部に沿って移動することで、ステップ板が車幅方向に移動可能になる。また、ステップ側リンクが引き続き回動しても、ステップ側リンクの回動自由端側がレールの円弧部に沿って移動することで、ステップ板の移動が停止してその位置に保持される。
【0011】
第5の発明によると、ドア側歯車とステップ側歯車とは、ドアが所定角度を超えて回動する際は、歯車の噛合が解除されるように構成されている。このため、ドアが所定角度を超えて回動する際は、ドアの回動力がステップ板側に伝達されなくなり、ステップ板の移動が停止する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ドアの回動に必要な平面積に係わらず、ステップ板のサイズを決定でき、ステップ板のサイズを乗降に必要なサイズにできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係るステップ付の車両のドア開口部を室内側から見た模式斜視図である。
【
図2】前記車両の床下部を表す縦断面図(
図5のII-II矢視断面図)である。
【
図3】前記車両の床下部を表す縦断面図(
図5のIII-III矢視断面図)である。
【
図4】前記車両の床下部を表す縦断面図(
図5のIV-IV矢視断面図)である。
【
図5】前記ドア、変換装置、及びステップ板を表す全体平面図(ドア閉、ステップ板格納状態)である。
【
図6】前記ドア、変換装置、及びステップ板を表す全体平面図(ドア開途中、ステップ板展開状態)である。
【
図7】前記ドア、変換装置、及びステップ板を表す全体平面図(ドア全開、ステップ板展開状態)である。
【
図8】本発明の実施形態2に係るステップ付の車両のドア、変換装置、及びステップ板を表す全体平面図(ドア閉、ステップ板格納状態)である。
【
図9】前記ドア、変換装置、及びステップ板を表す全体平面図(ドア開途中、ステップ板展開状態)である。
【
図10】ドア閉、ステップ板格納状態のときの変換装置のドア側歯車とステップ側歯車との噛合状態を表す平面図(
図8のX矢視図)である。
【
図12】ドア開途中(半開以下)、ステップ板展開状態のときの変換装置のドア側歯車とステップ側歯車との噛合状態を表す平面図(
図9のXII矢視図)である。
【
図14】ドア側歯車がさらに回転したときの拡大図である。
【
図15】ドア全開、ステップ板展開状態のときの変換装置のドア側歯車とステップ側歯車との関係を表す平面図である。
【
図17】従来のステップ付の車両を表す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
以下、
図1~
図7に基づいて本発明の実施形態1に係るステップ付の車両について説明する。本実施形態に係るステップ付の車両は、例えば、車両ボディのフロントドア開口部の位置に可動ステップを備える車両である。ここで、図中に示す前後左右、及び上下は、本実施形態に係るステップ付の車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0015】
<車両ボディ10の概要について>
車両ボディ10の側面には、
図1に示すように、前部座席に対応するフロントドア開口部11と、中央部、及び後部座席に対応するリヤドア開口部(図示省略)とが形成されている。そして、フロントドア開口部11と前記リヤドア開口部の下縁部には、車両前後方向に延びる筒状のフレームであるロッカー30が設けられている。フロントドア開口部11の前側には車室の前側支柱であるフロントピラー12が立設されている。そして、フロントピラー12の側面に上下のドアヒンジ21を介してフロントドア20が水平回動可能な状態で連結されている。即ち、フロントドア20がドアヒンジ21を中心に水平回動することで、車両ボディ10のフロントドア開口部11が開閉される。
【0016】
フロントドア開口部11の下縁部にあるロッカー30は、
図2、
図3等の縦断面図に示すように、車両前後方向に延びる断面略U字形のロッカーインナー31とロッカーアウター32とが車幅方向(左右方向)から合わせられることで筒状に形成されている。また、ロッカー30内には、内部空間を車幅方向に仕切ることでそのロッカー30を補強するリインフォース35が設けられている。また、ロッカーインナー31の上面には、車両ボディ10のフロアパネル14の端縁14fが固定されている。さらに、ロッカーアウター32の下部側面には、
図1、
図3等に示すように、フロントドア開口部11の位置に固定ステップ37が水平に取付けられている。固定ステップ37は、
図3等に示すように、フロントドア20が閉じられた状態で、そのフロントドア20の下端部に設けられたガーニッシュ23に覆われる。なお、ガーニッシュ23は省略可能である。また、固定ステップ37の下側には、可動ステップ装置40(後記する)のステップ板43が格納されている。
【0017】
<可動ステップ装置40の概要について>
可動ステップ装置40は、
図2~
図4に示すように、車両ボディ10の床下部に設けられている。可動ステップ装置40は、フロントドア20を開く際にステップ板43を固定ステップ37の下側から車幅方向外側に突出させ、フロントドア20を閉じる際にステップ板43を固定ステップ37の下側に格納する装置である。可動ステップ装置40は、
図5等に示すように、前記ステップ板43と、ステップ板43を水平に出し入れ可能に支持する四節リンク機構45と、フロントドア20の回動力をステップ板43の出し入れ力に変換する変換装置400とを備えている。ステップ板43は、前後に長い帯板状に形成されており、水平な状態で平面視においてロッカー30と平行に保持されている。
【0018】
<四節リンク機構45について>
四節リンク機構45は、
図4、
図5に示すように、ロッカー30の下面に固定されたリンクブラケット450と、リンクブラケット450に水平回動可能な状態で連結された前支持リンク451と後支持リンク455とから構成されている。前支持リンク451は、
図5に示すように、略L字形に形成されたリンクであり、ステップ板43の前部を下方から支えた状態で、その前支持リンク451の一端がステップ板43の前部中央に第1連結縦ピン451aにより水平回動可能な状態で連結されている。また、前支持リンク451の他端がリンクブラケット450の前部右側に第2連結縦ピン451bにより水平回動可能な状態で連結されている。
【0019】
後支持リンク455は、
図5に示すように、帯板状のリンクであり、ステップ板43の後部を下方から支えた状態で、その後支持リンク455の一端がステップ板43の後部中央に第3連結縦ピン455aにより水平回動可能な状態で連結されている。また、後支持リンク455の他端がリンクブラケット450の後部右側に第4連結縦ピン455bにより水平回動可能な状態で連結されている。そして、前支持リンク451と後支持リンク455とがリンクブラケット450側の第2連結縦ピン451b、第4連結縦ピン455bを中心に回動することで、
図5、
図6に示すように、ステップ板43はロッカー30と平行な状態で水平に円弧運動する。これにより、前記ステップ板43は、固定ステップ37の下側から車幅方向外側に突出し、あるいは固定ステップ37の下側に格納されるようになる。
【0020】
<変換装置400について>
変換装置400は、上記したように、フロントドア20の回動力をステップ板43の出し入れ力に変換する装置である。変換装置400は、
図3、及び
図5に示すように、ロッカーインナー31の下面に固定された装置ブラケット401と、装置ブラケット401に水平回転可能な状態で支持されたドア側歯車403、及びステップ側歯車405とを備えている。ドア側歯車403、及びステップ側歯車405は、共に平歯車であり、互いに噛合している。また、変換装置400は、フロントドア20とドア側歯車403とを連結するドア側リンク410と、ステップ側歯車405と一体で回動するステップ側リンク412と、ステップ側リンク412のローラ412rが係合するステップ板43側のレール415とを備えている。
【0021】
ドア側リンク410は、
図5、
図6に示すように、フロントドア20が開方向に回動する際にドア側歯車403が右回転し、フロントドア20が閉方向に回動する際にドア側歯車403が左回転するように、フロントドア20とドア側歯車403とを連結している。ドア側リンク410は、帯板状のリンクであり、一端側がフロントドア20の回動中心の近傍位置にドア側連結縦ピン410aにより水平回動可能な状態で連結されている。また、ドア側リンク410の他端側がドア側歯車403の回転中心C1から偏心した位置に歯車側連結縦ピン410bにより水平回動可能な状態で連結されている。
【0022】
ドア側リンク410は、
図2に示すように、ドア側歯車403に対して下側から歯車側連結縦ピン410bによって連結されている。そして、ドア側リンク410は、ロッカー30の下方で水平に保持された状態で、ドア側連結縦ピン410aによりフロントドア20の下端に設けられたピン支持部24に連結されている。ここで、ドア側リンク410とフロントドア20、及びドア側歯車403との連結位置は、例えば、フロントドア20のの回動角度が増加する際、ドア側歯車403の回転角度が増加するような位置に設定されている。
【0023】
ドア側歯車403と噛合するステップ側歯車405は、
図5等に示すように、ドア側歯車403と所定のギア比で製作されており、ドア側歯車403が回転することでドア側歯車403と反対方向に所定の角度だけ回転する。ステップ側歯車405の回転中心C2には、ステップ側リンク412の基端部が相対回転不能な状態で連結されている。ステップ側リンク412の基端部は、
図3に示すように、ロッカー30の下方で水平に保持された状態でステップ側歯車405の下面に固定されている。ステップ側リンク412の先端部には、ローラ支持ピン412pが縦向きに連結されており、そのローラ支持ピン412pの上端部にローラ412rが同軸に設けられている。そして、前記ローラ412rがステップ板43側のレール415に沿って転動可能な状態で、そのレール415と嵌合している。
【0024】
ステップ板43のレール415は、
図3に示すように、ステップ板43の下面に固定されたブラケット43pに支持されている。レール415は、断面略逆U字形に形成されて、ステップ側リンク412のローラ412rが下方から嵌合可能に構成されている。レール415は、
図5等に示すように、ステップ板43と平行に前後方向に延びる直線部415sと、直線部415sの前側に連続して設けられた円弧部415eとを備えている。レール415の円弧部415eは、
図6、
図7に示すように、ステップ側歯車405の回転中心C2を中心に回動するステップ側リンク412のローラ412rの移動軌跡と重なるように構成されている。そして、フロントドア20が閉じている状態では、
図5に示すように、ステップ側リンク412は斜め後方に延びた位置にあり、ローラ412rはレール415の直線部415sの後端位置に保持されている。
【0025】
<可動ステップ装置40の動作について>
フロントドア20が閉じている状態では、
図3、
図5に示すように、ステップ板43は、固定ステップ37の下側に格納されている。また、ステップ板43にブラケット43pを介して取付けられたレール415は、
図3に示すように、ロッカー30の下側に格納されている。そして、上記したように、ステップ側リンク412は斜め後方に延びた位置にあり(
図5参照)、ステップ側リンク412の先端のローラ412rはレール415の直線部415sの後端位置に保持されている。
【0026】
この状態で、フロントドア20が開方向に回動(
図5において左回動)すると、ドア側リンク410がフロントドア20に引っ張られることで、ドア側歯車403が、
図5において右回転する。これにより、ドア側歯車403と噛合しているステップ側歯車405が所定角度だけ左回転する。これにより、ステップ側リンク412がステップ側歯車405と共に回転中心C2を中心に左回動する。これにより、ステップ側リンク412の先端のローラ412rは、円弧運動しつつステップ板43に設けられたレール415の直線部415sの後端位置からそのレール415の直線部415sに沿って前方に転動する。
【0027】
即ち、ステップ側リンク412の回動自由端側で回転中心C2を中心に円弧運動をするローラ412rがレール415の直線部415sに沿って前方に転動するため、レール415の直線部415sはローラ412rから直角方向(右方向)の押圧力を受ける。この結果、レール415を介してステップ板43が右方向(車幅方向外側)に押され、レール415、及びステップ板43は、
図6に示すように、四節リンク機構45の働きでロッカー30と平行な状態で水平に円弧運動し、固定ステップ37の下側から突出する。そして、
図6に示すように、ステップ側リンク412の左回動により、そのステップ側リンク412の先端のローラ412rがレール415の直線部415sの前端位置まで到達した段階で、ステップ板43の突出量が最大になる。ここで、ステップ板43の突出量が最大になるときのフロントドア20の回動角度は、
図6に示すように、θであり、フロントドア20の半開角度よりも小さな値に設定されている。
【0028】
そして、フロントドア20が回動角度θを超えてさらに開方向に回動すると、ドア側リンク410、ドア側歯車403、及びステップ側歯車405の働きでステップ側リンク412がさらに左回動する。これにより、ステップ側リンク412の先端(回動自由端)のローラ412rがレール415の円弧部415eに沿って前方に転動する。ここで、レール415の円弧部415eは、ステップ側リンク412のローラ412rの移動軌跡と重なるように構成されている。このため、ステップ側リンク412のローラ412rがレール415の円弧部415eに沿って前方に転動することで、ステップ板43の突出量は最大の状態に保持される。
【0029】
そして、フロントドア20が全開位置まで回動することで、
図7に示すように、ステップ側リンク412が左回動限位置まで回動し、ステップ側リンク412のローラ412rがレール415の円弧部415eの前端位置に到達する。また、フロントドア20を全開位置から閉方向に回動(右回動)させると、ドア側リンク410がフロントドア20に押されてドア側歯車403を左回転させる。これにより、ステップ側歯車405が右回転してステップ側リンク412が右回動する。この結果、ステップ側リンク412のローラ412rがレール415の円弧部415e、及び直線部415sに沿って後方に転動する。そして、ステップ側リンク412のローラ412rがレール415の直線部415sに沿って後方に転動することで、レール415の直線部415sは左方向(車幅方向内側)に引っ張り力を受ける。これにより、ステップ板43が固定ステップ37の下側に格納される。
【0030】
<本実施形態で使用した用語と本発明に係る用語との対応について>
前記フロントドア20が本発明のドアに相当し、フロントドア開口部11が本発明のドア開口部に相当する。また、フロントドア20の回動角度θが本発明のドアにおける全開角度よりも小さな所定角度に相当する。さらに、ステップ側リンク412のローラ412rが本発明のステップ側リンクの回動自由端側に相当する。
【0031】
<本実施形態に係る可動ステップ装置40の長所について>
本実施形態に係る可動ステップ装置40によると、変換装置400は、フロントドア20(ドア)が回動角度θ(全開角度よりも小さい所定角度)まで回動することでステップ板43の突出量を最大にできる。即ち、フロントドア20が全開になる前に、ステップ板43を最大限に突出させることができる。このため、フロントドア20の回動角度に係わらず、乗降性に基づいてステップ板43のサイズを決定できる。したがって、ステップ板43のサイズを必要なサイズにできる。また、ステップ板43の格納スペースもコンパクトにできる。
【0032】
[実施形態2]
次に、
図8~
図16に基づいて本発明の実施形態2に係るステップ付の車両について説明する。本実施形態に係るステップ付の車両は、実施形態1に係るステップ付の車両における変換装置400の構成を一部変更したものである。即ち、実施形態1に係る変換装置400では、
図6に示すように、ステップ板43の突出量が最大になった後、フロントドア20がさらに開方向に回動(左回動)すると、ステップ側リンク412のローラ412rがレール415の円弧部415eに沿って前方に転動する例を示した。これに対し、実施形態2に係る変換装置400xでは、
図10等に示すように、欠歯歯車を使用し、ステップ板43の突出量が最大になった後、フロントドア20が開方向に回動しても、ドア側歯車403とステップ側歯車405間で力の伝達が行われないようにしている。これにより、ステップ板43の突出量が最大になった後は、ステップ側リンク412の左回動は禁止される。なお、本実施形態に係る変換装置400xの部材であって、実施形態1に係る変換装置400の部材と同じ部材については同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
本実施形態の変換装置400xにおけるドア側歯車403とステップ側歯車405とには、
図10、
図11等に示すように、欠歯歯車が使用されている。即ち、ドア側歯車403とステップ側歯車405とには、歯が形成されている歯車部403w,405wと歯が切り欠かれている切欠部403f,405fとが設けられている。そして、フロントドア20が全閉状態(
図8参照)から回動角度θまで回動(
図9参照)するまで間は、
図10から
図13に示すように、ドア側歯車403の歯車部403wとステップ側歯車405の歯車部405wとが噛合している。しかし、フロントドア20が回動角度θを超えて開方向に回動すると、
図14~
図16に示すように、ドア側歯車403の切欠部403fがステップ側歯車405の歯車部405wの位置に到達し、ドア側歯車403とステップ側歯車405との噛合が解除される。
【0034】
このため、ステップ側歯車405のステップ側リンク412は、ローラ412rがレール415(直線部415s)の後端位置にある右回動限位置(
図8参照)と、ローラ412rが直線部415sの前端位置にある左回動限位置(
図9参照)との間で回動可能となる。即ち、ステップ側リンク412は、
図9に示すように、先端のローラ412rがレール415の直線部415sの前端位置まで到達した後、フロントドア20がさらに開方向に回動しても、左回動限位置に保持される。したがって、実施形態1に係る変換装置400では必要であったレール415の円弧部415eが本実施形態に係る変換装置400xでは不要になる。このため、ステップ板43側のレール415を小型化できる。
【0035】
[変更例]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、実施形態1,2に係る可動ステップ装置40では、ステップ板43を四節リンク機構45により水平に出し入れ可能に支持する例を示した。しかし、四節リンク機構45の代わりに、例えば、一対の平行レールと摺動子等を使用して、ステップ板43を水平に出し入れ可能に支持する構成でも良い。また、実施形態1,2では、車両ボディ10のフロントドア開口部11に可動ステップ装置40を設け、フロントドア20を開閉する力でステップ板43を出し入れする例を示した。しかし、車両ボディ10のリヤドア開口部に可動ステップ装置40を設け、リヤドアを開閉する力でステップ板43を出し入れする構成でも可能である。
【符号の説明】
【0036】
10・・・・車両ボディ
11・・・・フロントドア開口部(ドア開口部)
20・・・・フロントドア(ドア)
43・・・・ステップ板
400・・・変換装置
400x・・変換装置
403・・・ドア側歯車
405・・・ステップ側歯車
410・・・ドア側リンク
412・・・ステップ側リンク
412r・・ローラ(ステップ側リンクの回動自由端側)
415・・・レール
415e・・円弧部
415s・・直線部
θ・・・・・回動角度(所定角度)