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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071192
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ひずみ計測方法及びひずみ計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
G01B11/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183790
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛志
(72)【発明者】
【氏名】澤田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 行平
(72)【発明者】
【氏名】小村 昭義
(72)【発明者】
【氏名】白濱 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】米森 友昭
(72)【発明者】
【氏名】西川 友也
(72)【発明者】
【氏名】大貫 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】大藤 琢矢
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA65
2F065BB05
2F065BB16
2F065DD03
2F065EE11
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065QQ41
2F065UU05
(57)【要約】
【課題】1つの撮影装置を用いて検出したひずみから、撮影装置と測定対象物との距離の変化によるひずみの誤差を補正する。
【解決手段】測定対象物のひずみを計測するひずみ計測方法は、測定対象物のひずみ特徴量を抽出し、測定対象物の第1画像と、測定対象物に力が付与された後の第2画像を取得し、第1、第2画像に対しデジタル画像相関法を適用してひずみを計算し、前記ひずみ特徴量と、計算されたひずみに基づいて、ひずみに含まれる誤差を除去する誤差補正式を取得し、前記第1、第2画像の取得時の撮影装置と測定対象物との相対位置の変化により発生する誤差を、前記誤差補正式を用いて計算されたひずみから除去し、誤差が除去されたひずみを出力する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物のひずみを計測するひずみ計測方法であって、
前記測定対象物に力を付与することで得られる測定対象物のひずみ特徴量を予め抽出するひずみ特徴量抽出ステップと、
前記測定対象物の所定領域を撮影装置で撮影して前記所定領域の画像を取得する第1画像取得ステップと、
前記測定対象物に力が付与された後の前記所定領域を撮影装置で撮影して前記所定領域の画像を取得する第2画像取得ステップと、
前記第1画像取得ステップ及び前記第2画像取得ステップにおいてそれぞれ取得された前記所定領域の複数の画像に対しデジタル画像相関法を適用し、前記所定領域におけるひずみを計算するひずみ計算ステップと、
前記ひずみ特徴量抽出ステップで抽出されたひずみ特徴量と、前記ひずみ計算ステップで計算されたひずみに基づいて、前記ひずみ計算ステップで計算されたひずみに含まれる誤差である誤差ひずみを除去するための誤差補正式を取得する誤差補正式取得ステップと、
前記第1画像取得ステップにおける前記撮影装置と前記所定領域との相対位置と、前記第2画像取得ステップにおける前記撮影装置と前記所定領域との相対位置の変化により発生する誤差ひずみを、前記ひずみ計算ステップで計算されたひずみから、前記誤差補正式を用いて除去する誤差補正ステップと、
前記誤差補正ステップで前記誤差が除去されたひずみを出力するひずみ出力ステップを備えることを特徴とするひずみ計測方法。
【請求項2】
請求項1に記載のひずみ計測方法であって、
前記ひずみ特徴量抽出ステップは、前記測定対象物に付与する力の大きさに拘わらずひずみの大きさが変わらない前記所定領域における特定位置と、その特定位置におけるひずみの値を特徴量として予め抽出することを特徴とするひずみ計測方法。
【請求項3】
請求項2に記載のひずみ計測方法であって、
前記特徴量としての前記所定領域における特定位置は複数であり、
前記誤差補正式取得ステップにおいては、前記ひずみ計算ステップで前記デジタル画像相関法により計算された前記測定対象物のひずみを、前記測定対象物の所定領域の位置に対するひずみの大きさを示すひずみ曲線として取得し、このひずみ曲線上における前記特徴量としての複数の特定位置に対するポイントを特定し、これら複数のポイントを接続する線と、前記特徴量としてのひずみの値からその近似式を導くことで前記誤差補正式を取得し、
前記誤差補正ステップは、前記誤差補正式を用い、前記ひずみ計算ステップで計算されたひずみから誤差ひずみを除去することを特徴とするひずみ計測方法。
【請求項4】
請求項3に記載のひずみ計測方法であって、
前記測定対象物はボルトであることを特徴とするひずみ計測方法。
【請求項5】
実施例2
請求項1に記載のひずみ計測方法において、測定対象物のxy平面における誤差ひずみに対し、x軸方向における誤差ひずみと、y軸方向における誤差ひずみを求めることで、xy平面における誤差ひずみを求め、前記ひずみ計算ステップで計算されたひずみからxy平面における誤差ひずみを除去した二次元平面でのひずみを得ることを特徴とするひずみ計測方法。
【請求項6】
測定対象物のひずみを計測するひずみ計測方法であって、
前記測定対象物に力を付与することで得られる構造物のひずみ特徴量を予め抽出するひずみ特徴量抽出ステップと、
前記測定対象物の所定領域を撮影装置で撮影して前記所定領域の画像を取得する第1画像取得ステップと、
前記測定対象物に力が付与された後の前記所定領域を撮影装置で撮影して前記所定領域の画像を取得する第2画像取得ステップと、
前記第1画像取得ステップ及び前記第2画像取得ステップにおいてそれぞれ取得された前記所定領域の複数の画像に対しデジタル画像相関法を適用し、前記所定領域におけるひずみを計算するひずみ計算ステップと、を備え、
前記ひずみ特徴量抽出ステップでは、前記測定対象物に単位軸力を付与した際の前記測定対象物における前記所定領域の径方向ひずみと軸方向変位量をひずみ特徴量として少なくとも求めておき、
前記径方向ひずみと、前記撮影装置と前記測定対象物の所定領域との距離と前記軸方向変位量により求められる見かけひずみに基づいて、前記ひずみ計算ステップで計算されるひずみに含まれる誤差ひずみを除去するための誤差補正式を取得する誤差補正式取得ステップと、
前記誤差補正式を用いて、計算されたひずみに含まれる誤差ひずみを除去する誤差補正ステップと、
前記誤差補正ステップで誤差が除去されたひずみを出力するひずみ出力ステップを更に備えることを特徴とするひずみ計測方法。
【請求項7】
請求項6に記載のひずみ計測方法であって、
前記ひずみ特徴量抽出ステップは、前記撮影装置と測定対象物の前記所定領域との距離をLとし、前記測定対象物の前記所定領域の単位軸力あたりの軸方向変形量ΔLとしたとき、軸方向変形量ΔLにより発生する前記所定領域の見かけひずみεezを、
εez=L/(L+ΔL)
として求め、単位軸力あたりのひずみとしての径方向ひずみεrと、前記径方向ひずみεrと単位軸力あたりの軸方向変形量により発生する前記見かけひずみεezを足し合わせたひずみをひずみ特徴量として予め抽出し、
前記誤差補正式取得ステップは、単位軸力あたりの径方向ひずみεr(x)と、前記径方向ひずみεr(x)と単位軸力あたりの軸方向変形量ΔLにより発生する見かけひずみεez(x)を足し合わせたひずみ(εr(x)+εez(x))との比率Re(x)を、
Re(x)=εr(x)/(εr(x)+εez(x))
とし、この式を誤差補正式として取得することを特徴とするひずみ計測方法。
【請求項8】
請求項1に記載のひずみ計測方法と、請求項6に記載のひずみ計測方法の両方を用いて、ひずみ計算部で計算されたひずみに含まれる誤差を除去することを特徴とするひずみ計測方法。
【請求項9】
測定対象物のひずみを計測するひずみ計測装置であって、
前記測定対象物の所定領域を撮影装置で撮影して前記所定領域の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得された第1画像と、前記測定対象物に力が付与された後の前記所定領域の第2画像の複数の画像に対しデジタル画像相関法を適用し、前記所定領域におけるひずみを計算するひずみ計算部と、
前記測定対象物に力を付与することで得られる測定対象物のひずみの特徴量を抽出するひずみ特徴量抽出部と、
前記第1画像の取得時における前記撮影装置と前記所定領域との相対位置と、前記第2画像の取得時における前記撮影装置と前記所定領域との相対位置の変化により発生するひずみの誤差である誤差ひずみを、前記ひずみ計算部で計算されたひずみから除去するための誤差補正式を取得する誤差補正式取得部と、
前記誤差補正式を用いて、前記ひずみ計算部で計算されたひずみから誤差ひずみを除去する誤差補正部と、
前記誤差補正部で誤差が除去されたひずみを出力するひずみ出力部を備えることを特徴とするひずみ計測装置。
【請求項10】
請求項9に記載のひずみ計測装置であって、
前記ひずみ特徴量抽出部は、前記測定対象物に付与する力を変えてもひずみの大きさが変わらない前記所定領域における特定位置と、その特定位置におけるひずみの値を特徴量として抽出するものであり、
前記誤差補正式取得部は、前記ひずみ特徴量抽出部で抽出された特徴量と、前記ひずみ計算部で計算されたひずみに基づいて、前記誤差ひずみを算出するための前記誤差補正式を取得することを特徴とするひずみ計測装置。
【請求項11】
請求項10に記載のひずみ計測装置であって、
前記ひずみ特徴量抽出部は、前記特徴量としての前記所定領域における特定位置を複数抽出し、
前記誤差補正式取得部は、デジタル画像相関法により計算された測定対象物のひずみを、測定対象物の所定領域の位置に対するひずみの大きさを示すひずみ曲線として取得し、このひずみ曲線上における前記特徴量としての複数の特定位置に対するポイントを特定し、これら複数のポイントを接続する線と、前記特徴量としてのひずみの値からその近似式を導くことで前記誤差補正式を取得するものであり、
前記誤差補正部は、前記誤差補正式を用いて、前記ひずみ計算部で計算されたひずみを補正することを特徴とするひずみ計測装置。
【請求項12】
測定対象物のひずみを計測するひずみ計測装置であって、
前記測定対象物の所定領域を撮影装置で撮影して前記所定領域の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得された第1画像と、前記測定対象物に力が付与された後の前記所定領域の第2画像の複数の画像に対しデジタル画像相関法を適用し、前記所定領域におけるひずみを計算するひずみ計算部と、
前記測定対象物に力を付与することで得られる前記測定対象物のひずみの特徴量を抽出するひずみ特徴量抽出部と、を備え、
前記ひずみ特徴量抽出部は、前記測定対象物に単位軸力を付与した際の前記測定対象物における前記所定領域の径方向ひずみと軸方向変位量をひずみ特徴量として少なくとも求めておくものであり、
前記径方向ひずみと、前記撮影装置と前記測定対象物の所定領域との距離と前記軸方向変位量により求められた見かけひずみに基づいて、前記ひずみ計算部で計算されたひずみに含まれる誤差を除去するための誤差補正式を取得する誤差補正式取得部と、
前記誤差補正式を用いて、前記ひずみ計算部で計算されたひずみに含まれる誤差を除去する誤差補正部と、
前記誤差補正部で誤差が除去されたひずみを出力するひずみ出力部を更に備えることを特徴とするひずみ計測装置。
【請求項13】
請求項12に記載のひずみ計測装置であって、
前記誤差補正式取得部は、前記撮影装置と前記測定対象物の所定領域との距離をLとしたとき、前記軸方向変位量ΔLにより発生する前記所定領域の見かけひずみεezを、
εez=L/(L+ΔL)
として求め、前記測定対象物の所定位置からの距離をxとしてとき、前記測定対象物に力を付与した際のひずみεr(x)と、前記ひずみεr(x)と前記測定対象物に力を付与した際の見かけひずみεez(x)とを足し合わせたひずみとの比率Re(x)を、
Re(x)=εr(x)/(εr(x)+εez(x))
とし、この比率Re(x)を誤差補正式として取得することを特徴とするひずみ計測装置。
【請求項14】
請求項13に記載のひずみ計測装置であって、
前記測定対象物はボルトであり、前記距離xはボルトの中心位置からの径方向への距離、前記ひずみεr(x)は径方向ひずみであることを特徴とするひずみ計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の表面のひずみを計測するひずみ計測方法及びひずみ計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラやビデオカメラ等の撮影装置やひずみゲージを用いて、測定対象物の表面に発生するひずみを計測する方法が知られている。
【0003】
撮影装置を用いたひずみ計測方法として、例えば、測定対象物の変形前の画像と変形後の画像の輝度値分布から変形量、即ち、ひずみを算出可能なデジタル画像相関法による計測が知られている。
【0004】
しかし、デジタル画像相関法を用いてひずみを計測する場合、少なくとも2枚の撮影画像、即ち、測定対象物の変形前と変形後の撮影画像が必要である。しかし、測定対象物の変形前の撮影時と、変形後の撮影時では、撮影装置や測定対象物の位置が正確に一致せず、撮影装置や測定対象物が動いてしまうことがあり、計測されたひずみに誤差を含んでしまう課題がある。
【0005】
このような誤差を考慮してひずみ計測を行うために、従来、特開2012-132786号公報(特許文献1)や特開2013-170829号公報(特許文献2)に記載のものが提案されている。
【0006】
上記特許文献1のものでは、第1撮影装置で測定対象物の表面を撮影し、第2撮影装置で第1撮影装置と測定対象物の距離を測ることで、測定対象物の変形前後における第1撮影装置と測定対象物との相対距離の変化による誤差を補正することが提案されている。
【0007】
また、上記特許文献2のものでは、2つの撮影装置を用い、三角測量法により撮影装置と測定対象物との距離を測ることで、測定対象物の変形前後での撮影装置と測定対象物との距離の変化による誤差を補正することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-132786号公報
【特許文献2】特開2013-170829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1及び特許文献2のものでは、測定対象物の変形前後における撮影装置と測定対象物との距離の変化による誤差を補正する必要がある。このため、2台の撮影装置を用いる必要があった。
【0010】
撮影装置を用いたひずみ計測としては、例えば、デジタルカメラや、撮影機能を有するスマートデバイスのような汎用的な1つの撮影装置を用いてひずみ計測ができれば、利便性の観点で望ましい。
【0011】
本発明の目的は、1つの撮影装置を用いて検出したひずみに対し、撮影装置と測定対象物との距離の変化によるひずみの誤差を補正できるひずみ検出方法及びひずみ検出装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、測定対象物のひずみを計測するひずみ計測方法であって、前記測定対象物に力を付与することで得られる測定対象物のひずみ特徴量を予め抽出するひずみ特徴量抽出ステップと、前記測定対象物の所定領域を撮影装置で撮影して前記所定領域の画像を取得する第1画像取得ステップと、前記測定対象物に力が付与された後の前記所定領域を撮影装置で撮影して前記所定領域の画像を取得する第2画像取得ステップと、前記第1画像取得ステップ及び前記第2画像取得ステップにおいてそれぞれ取得された前記所定領域の複数の画像に対しデジタル画像相関法を適用し、前記所定領域におけるひずみを計算するひずみ計算ステップと、前記ひずみ特徴量抽出ステップで抽出されたひずみ特徴量と、前記ひずみ計算ステップで計算されたひずみに基づいて、前記ひずみ計算ステップで計算されたひずみに含まれる誤差である誤差ひずみを除去するための誤差補正式を取得する誤差補正式取得ステップと、前記第1画像取得ステップにおける前記撮影装置と前記所定領域との相対位置と、前記第2画像取得ステップにおける前記撮影装置と前記所定領域との相対位置の変化により発生する誤差ひずみを、前記ひずみ計算ステップで計算されたひずみから、前記誤差補正式を用いて除去する誤差補正ステップと、前記誤差補正ステップで前記誤差が除去されたひずみを出力するひずみ出力ステップを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の特徴は、測定対象物のひずみを計測するひずみ計測方法であって、前記測定対象物に力を付与することで得られる構造物のひずみ特徴量を予め抽出するひずみ特徴量抽出ステップと、前記測定対象物の所定領域を撮影装置で撮影して前記所定領域の画像を取得する第1画像取得ステップと、前記測定対象物に力が付与された後の前記所定領域を撮影装置で撮影して前記所定領域の画像を取得する第2画像取得ステップと、前記第1画像取得ステップ及び前記第2画像取得ステップにおいてそれぞれ取得された前記所定領域の複数の画像に対しデジタル画像相関法を適用し、前記所定領域におけるひずみを計算するひずみ計算ステップと、を備え、前記ひずみ特徴量抽出ステップでは、前記測定対象物に単位軸力を付与した際の前記測定対象物における前記所定領域の径方向ひずみと軸方向変位量をひずみ特徴量として少なくとも求めておき、前記径方向ひずみと、前記撮影装置と前記測定対象物の所定領域との距離と前記軸方向変位量により求められる見かけひずみに基づいて、前記ひずみ計算ステップで計算されるひずみに含まれる誤差ひずみを除去するための誤差補正式を取得する誤差補正式取得ステップと、前記誤差補正式を用いて、計算されたひずみに含まれる誤差ひずみを除去する誤差補正ステップと、前記誤差補正ステップで誤差が除去されたひずみを出力するひずみ出力ステップを更に備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の更に他の特徴は、測定対象物のひずみを計測するひずみ計測装置であって、前記測定対象物の所定領域を撮影装置で撮影して前記所定領域の画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部で取得された第1画像と、前記測定対象物に力が付与された後の前記所定領域の第2画像の複数の画像に対しデジタル画像相関法を適用し、前記所定領域におけるひずみを計算するひずみ計算部と、前記測定対象物に力を付与することで得られる測定対象物のひずみの特徴量を抽出するひずみ特徴量抽出部と、前記第1画像の取得時における前記撮影装置と前記所定領域との相対位置と、前記第2画像の取得時における前記撮影装置と前記所定領域との相対位置の変化により発生するひずみの誤差である誤差ひずみを、前記ひずみ計算部で計算されたひずみから除去するための誤差補正式を取得する誤差補正式取得部と、前記誤差補正式を用いて、前記ひずみ計算部で計算されたひずみから誤差ひずみを除去する誤差補正部と、前記誤差補正部で誤差が除去されたひずみを出力するひずみ出力部を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の更に他の特徴は、測定対象物のひずみを計測するひずみ計測装置であって、前記測定対象物の所定領域を撮影装置で撮影して前記所定領域の画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部で取得された第1画像と、前記測定対象物に力が付与された後の前記所定領域の第2画像の複数の画像に対しデジタル画像相関法を適用し、前記所定領域におけるひずみを計算するひずみ計算部と、前記測定対象物に力を付与することで得られる前記測定対象物のひずみの特徴量を抽出するひずみ特徴量抽出部と、を備え、前記ひずみ特徴量抽出部は、前記測定対象物に単位軸力を付与した際の前記測定対象物における前記所定領域の径方向ひずみと軸方向変位量をひずみ特徴量として少なくとも求めておくものであり、前記径方向ひずみと、前記撮影装置と前記測定対象物の所定領域との距離と前記軸方向変位量により求められた見かけひずみに基づいて、前記ひずみ計算部で計算されたひずみに含まれる誤差を除去するための誤差補正式を取得する誤差補正式取得部と、前記誤差補正式を用いて、前記ひずみ計算部で計算されたひずみに含まれる誤差を除去する誤差補正部と、前記誤差補正部で誤差が除去されたひずみを出力するひずみ出力部を更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1つの撮影装置を用いて検出したひずみに対し、撮影装置と測定対象物との距離の変化によるひずみの誤差を補正できるひずみ検出方法及びひずみ検出装置を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1を説明する図で、ひずみ計測装置の例を説明するブロック図。
図2A図1におけるひずみ特徴量抽出部の具体例を説明するボルトの断面図。
図2B図2Aに示すボルトの頂面を示す図。
図2C図2Bに示すボルトの1つの断面における径方向ひずみを示す線図。
図3A図1における誤差補正式取得部の具体例を説明する図で矩形板を撮影した画像を示す図。
図3B図3Aに示す矩形板を水平移動させた後に撮影した画像を示す図。
図3C】矩形板を水平移動することによる矩形板の1つの断面における誤差ひずみの変化を説明する線図。
図3D図3Cに示す誤差ひずみを示す各曲線を正規化した誤差ひずみの曲線を示す線図。
図4図1に示す誤差補正式取得部と誤差補正部での具体例を説明する線図。
図5】本発明のひずみ計測方法の一例を説明するフローチャート。
図6】本発明の実施例2を説明する図で、図2Bに相当する図。
図7】本発明の実施例3を説明する図で、ボルトに軸力が負荷された時のボルト頂面における軸方向変位を説明する図。
図8図7に示すボルトに発生するひずみと誤差の関係を説明する線図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のひずみ計測方法及びひずみ計測装置の具体的実施例を、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一符号を付した部分は同一部分或いは相当する部分を示している。
【実施例0019】
本発明の実施例1を図1図5を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例1におけるひずみ計測装置を示すブロック図である。この図1において、1は測定対象物(構造物)、2はひずみ計測装置(ひずみ計測部)で、測定対象物1のひずみを計測するものである。前記ひずみ計測装置2は、測定対象物1におけるひずみを計測すべき所定領域の画像を撮影装置で撮影する画像取得部3、この画像取得部3で取得した画像に基づいて前記測定対象物のひずみを検出するひずみ計算部4、ひずみ計算部4で検出されたひずみに含まれる誤差を補正する誤差補正部5、この誤差補正部5で誤差が除去された測定対象物のひずみを出力するひずみ出力部6を備えている。
【0020】
前記画像取得部3では、測定対象物1の変形前後での画像を取得する。即ち、測定対象物1が変形する前の所定領域の第1画像と、前記測定対象物1に力が付与されて変形した後の前記所定領域の第2画像を取得する。この画像を取得するための撮影装置として本実施例では、デジタルカメラや撮影機能を有するスマートデバイスなども使用可能である。
【0021】
前記画像取得部3において取得した変形前後の画像、即ち、変形前の第1画像と変形後の第2画像を用いて、ひずみ計算部4においてひずみを計算する。即ち、ひずみ計算部4では、画像取得部3で取得された第1画像と第2画像の複数の画像に対し、デジタル画像相関法を適用し、前記所定領域におけるひずみを計算する。
【0022】
また、前記ひずみ計測装置2は、測定対象物1に力を付与することにより発生するひずみの特徴量を抽出するひずみ特徴量抽出部7と、前記ひずみ計算部で計算されたひずみに対し、前記第1画像と前記第2画像の取得時における前記撮影装置と前記所定領域との相対位置の変化により発生するひずみの誤差(誤差ひずみ)を補正する誤差補正式を取得する誤差補正式取得部8を備えている。
【0023】
前記誤差補正式取得部8では、前記ひずみ特徴量抽出部7で予め抽出されたひずみ特徴量と、前記ひずみ計算部4で計算されたひずみに基づいて、前記計算されたひずみに含まれる誤差ひずみを除去するための前記誤差補正式が取得される。
【0024】
前記ひずみ計算部4において計算されたひずみには、測定対象物1の変形前後の撮影時に、撮影装置と測定対象物1との相対位置の変化による誤差が含まれる。そこで、ひずみ計算部4において計算されたひずみに対し、誤差補正部5において、前記誤差補正式を用いて計算されたひずみの誤差ひずみが減算される。
誤差補正部5において誤差ひずみが除去されたひずみが、ひずみ出力部6から出力される。
【0025】
図2A図2Cを用いて、図1におけるひずみ特徴量抽出部7の具体例を説明する。図2A図1におけるひずみ特徴量抽出部の具体例を説明するボルトの断面図、図2B図2Aに示すボルトの頂面を示す図、図2C図2Bに示すボルトの1つの断面における径方向ひずみを示す線図である。ここでは具体例として、測定対象物1をボルト10とした時のひずみ特徴量を説明する。
【0026】
図2Aのように、被締結体12に対して、ボルト10とナット11により締め付けボルト10に軸力Fを負荷すると、図2Bのボルト10の頂面の一つの断面10aにおける径方向ひずみとしては、図2Cに示すような傾向が得られる。図2Aにおいて、横軸はボルト頂面の前記断面10aにおけるボルト頂面の中心位置0からの距離、即ち+x方向と-x方向の距離を示している。縦軸はボルト中心位置からの距離に対する径方向ひずみの大きさを示している。
【0027】
また、図2Cに示す3本の曲線は、図2Aに示す軸力Fがボルト10に負荷された場合の前記断面10aのボルト中心位置0からの距離に対する径方向ひずみの変化を示している。即ち、軸力Fとしてf1、f2、f3の異なる力(f1<f2<f3)が負荷された場合の径方向ひずみの変化を示している。
【0028】
図2Cに示すように、負荷される軸力Fが大きいほど径方向ひずみは大きくなるが、ボルト中心位置0からの距離x1及び-x1における径方向ひずみは、軸力Fの大きさに拘わらず径方向ひずみが一定値ε0となることが知られている。
【0029】
本実施例では、図1に示すひずみ特徴量抽出部7において、径方向ひずみが一定値ε0となるボルト中心位置からの距離x1及び-x1と、前記一定値ε0を、ひずみ特徴量として抽出する。
【0030】
なお、図2A図2Cでは、測定対象物1をボルト10とした例で説明しているが、測定対象物1の特定位置でのひずみが負荷に拘わらず一定値となる構造物であれば本発明を同様に適用可能である。例えば、風車ブレードのように、一端を固定された状態で曲げ負荷が付与される構造物や、橋梁のように、吊下げられた状態で曲げ負荷が付与される構造物にも本発明は同様に適用可能である。
また、測定対象物(構造物)1のひずみ特徴量の抽出については、材料力学の公式に基づく計算や数値計算等の手段を用いることにより可能である。
【0031】
次に、測定対象物1のひずみを検出するために、1つの撮影装置を用いて、測定対象物1の変形前後における複数の画像を取得する際、撮影装置と測定対象物との距離の変化によるひずみの誤差、即ち誤差ひずみを算出するための誤差補正式の取得について、図3A図3Dを用いて説明する。図3A図1における誤差補正式取得部8の具体例を説明する図で矩形板を撮影した画像を示す図、図3B図3Aに示す矩形板を水平移動させた後に撮影した画像を示す図、図3Cは矩形板を水平移動することによる矩形板の1つの断面における誤差ひずみの変化を説明する線図、図3D図3Cに示す誤差ひずみを示す各曲線を正規化した誤差ひずみの曲線を示す線図である。
【0032】
図3Aのように、測定対象物1を矩形板14として撮影した画像13aと、図3Bのように、矩形板14を図3Aの状態から距離Dだけ水平移動した後に撮影した画像13bとを用い、デジタル画像相関法により、矩形板14の一つの断面14aにおけるひずみを計算すると、図3Cに示すようなひずみ曲線が得られる。
【0033】
図3Cにおいて、横軸は前記断面14aにおける一端側から他端側までの距離、即ち前記断面14aにおける位置を示している。また、縦軸はひずみの大きさを示している。また、図3Cに示す3本の曲線は、図3Bに示すように、矩形板14が距離Dだけ移動することによる前記断面14aの各位置におけるひずみの変化を示している。即ち、距離Dとしてd1、d2、d3の異なる距離(d1<d2<d3)だけ前記矩形板14を移動させた場合のひずみの変化を示している。
【0034】
このひずみは、矩形板14の水平移動(移動距離D)と撮影装置のレンズの歪曲収差に伴う誤差ひずみであり、移動距離Dにより誤差ひずみの大きさは変化し、移動距離Dが大きくなるほど誤差ひずみも大きくなっている。
【0035】
図3Cに示す3本の曲線を正規化すると図3Dに示すようにほぼ同じ傾きの正規化した誤差ひずみの曲線が得られる。
【0036】
このように正規化した誤差ひずみの曲線に近似する直線または曲線の近似線15を当てはめる。図3Dに示す例では近似線15として近似直線を当てはめているが、近似曲線を当てはめた方が好ましい場合もある。当てはめた近似線15に基づいて誤差補正式を取得する。
【0037】
本実施例では、近似線15として近似直線を当てはめているので、誤差補正式は、例えば、次の(数1)が考えられる。この(数1)は一例であり、これには限定されず、例えば、近似線15が近似曲線である場合には二次方程式等を当てはめても良い。
【0038】
εe=Ax+B …(数1)
ここで、εeは誤差ひずみ、xは特定位置(この例ではボルトの中心)からの距離、A,Bは係数である。
【0039】
なお、図3A図3Dに示す例では、測定対象物を水平移動させた場合を対象として説明したが、測定対象物を回転移動させたり、水平移動と回転移動の両方を含む動作をさせたりした場合にも同様に適用できる。
【0040】
図4は、図1に示す誤差補正式取得部8での誤差補正式の係数の求め方と、誤差補正部5において、係数の求められた誤差補正式(数1)を用い、ひずみ計算部4で計算された誤差を含むひずみ曲線16から、誤差を除去したひずみ曲線17を得るための具体例を説明する線図である。
【0041】
図1のひずみ計算部4では、測定対象物の変形前後の複数の画像から、デジタル画像相関法を用いてひずみ曲線16が計算されて求められる。しかし、この計算されたひずみ曲線には誤差ひずみが含まれている。そこで、ひずみ特徴量抽出部7で取得された特徴量、即ち、ボルト中心位置からの距離x1及び-x1と、その位置における径方向ひずみε0を、図4に示すように、誤差を含むひずみ曲線16の線図に当てはめる。
【0042】
次に、誤差を含むひずみ曲線16における距離x1におけるひずみε1のポイントと、距離-x1におけるひずみε2のポイントを直線15aで接続する。この直線15aは(数1)に対応するもので、この直線15aの傾きが(数1)の係数Aとなる。また、この直線15a上におけるボルト中心位置での値(径方向ひずみに対応する値)と特徴量としての前記径方向ひずみε0との差分Bが(数1)の係数Bとなる。
【0043】
誤差補正部5では、前記係数A,Bの値を与えた誤差補正式(数1)を用いて、ボルト中心位置0からの各位置での誤差ひずみεeの値を求めて、前記誤差を含むひずみ曲線16から誤差分を減算したひずみ曲線17を得る。この誤差分を減算したひずみ曲線17が図1に示すひずみ出力部6から出力される。
【0044】
本実施例によれば、測定対象物の変形前後における撮影装置と測定対象物との水平方向における位置関係の変化と、レンズの歪曲収差に伴う誤差ひずみを除去した高い精度のひずみ計測が可能となる。
【0045】
次に、上述したひずみ計測装置を用いて測定対象物のひずみを計測するひずみ計測方法について、図5により説明する。図5は本発明のひずみ計測方法の一例を説明するフローチャートである。
【0046】
まず、ステップS1では、前記測定対象物1に力を付与することで得られる測定対象物1のひずみ特徴量を予め抽出する(ひずみ特徴量抽出ステップ)。即ち、図2Cで説明したように、測定対象物に付与する力の大きさに拘わらずひずみの大きさが変わらない、ひずみが一定値ε0となるところのε0の値と、ひずみが一定値ε0となる前記所定領域における位置(所定領域における特定位置、例えばボルトの中心からの距離)x1及び-x1を抽出する。
【0047】
ステップS2では、測定対象物1の所定領域を、デジタルカメラ等の撮影装置で撮影し、所定領域の第1画像を取得する(第1画像取得ステップ)。
【0048】
ステップS3では、前記測定対象物1に力が付与された後の前記所定領域を撮影装置で撮影して所定領域の第2画像を取得する(第2画像取得ステップ)。
【0049】
ステップS4では、前記第1画像取得ステップS2及び前記第2画像取得ステップS3でそれぞれ取得された前記所定領域の複数の画像に対しデジタル画像相関法を適用し、前記所定領域におけるひずみを計算する(ひずみ計算ステップ)。
【0050】
ステップS5では、前記ひずみ特徴量抽出ステップS1で抽出されたひずみ特徴量と、前記ひずみ計算ステップS4で計算されたひずみに基づいて、前記ひずみの誤差を算出するための誤差補正式を取得する(誤差補正式取得ステップ)。即ち、図3A図3C及び図4で説明したものと同様の手法を用いて、例えば(数1)に示すような誤差補正式と誤差補正式の係数を取得する。
【0051】
ステップS6では、ひずみ計算ステップS4で計算して算出されたひずみに対して、前記第1画像取得ステップS2における撮影装置と所定領域との相対位置と、前記第2画像取得ステップS3における撮影装置と所定領域との相対位置の変化により発生するひずみの誤差を、前記誤差補正式取得ステップS5で取得された誤差補正式により補正する(誤差補正ステップ)。
【0052】
ステップS7では、前記誤差補正ステップS6において、ひずみ計算ステップS4で計算されたひずみから誤差が除去されたひずみを出力する(ひずみ出力ステップ)。
【0053】
なお、本実施例では、前記ひずみ特徴量抽出ステップS1における前記特徴量としての前記所定領域における特定位置は複数(この例ではx1と-x1)であり、前記誤差補正式取得ステップS5においては、前記ひずみ計算ステップS4で前記デジタル画像相関法を用いて計算された測定対象物1のひずみを、測定対象物1の所定領域の各位置に対するひずみの大きさを示すひずみ曲線として取得し、このひずみ曲線上における前記特徴量としての複数の前記所定領域における特定位置に対するポイントを特定する。次に、これら複数のポイントを接続する線からその近似式を導くことで、前記誤差補正式を取得する。前記誤差補正ステップS6では、この誤差補正式を用い、計算されたひずみの誤差を補正するようにしている。
【0054】
以上説明したように、本発明の実施例1によれば、撮影装置を用いたひずみ計測として、測定対象物の変形前後での撮影装置と測定対象物との距離の変化による誤差を考慮した高い精度でのひずみを1つの撮影装置を用いて簡便に測定することができるという効果が得られる。
【実施例0055】
本発明の実施例2を、図1を参照しつつ図6を用いて説明する。図6図2Bに相当する図であり、図1における特徴量抽出部7の実施例1とは異なる例を説明する図である。本実施例2におけるひずみ計測装置としての全体構成は図1と同様であり、またひずみ計測方法としての流れも図5で説明したものと同様である。したがって、実施例1と同様の部分についての説明は省略し、実施例1と異なる点を中心に説明する。
【0056】
測定対象物1をボルト10とした時、実施例1と同様に、軸力Fに依らず径方向ひずみが一定値ε0となるボルト10の中心位置からの距離x1を予め求め、本実施例2においても、図1のひずみ特徴量抽出部7において、ボルト10の中心位置から径方向への距離x1における径方向ひずみε0を特徴量として抽出しておく。
【0057】
本実施例2において実施例1と異なるところは、図1の誤差補正式取得部8において、測定対象物1のxy平面(平面座標)における水平移動や回転移動、及びレンズの歪曲収差に伴う誤差ひずみに対して、例えば、次の(数2)のように、平面座標に対する誤差補正式として取得する。
【0058】
εe=Gx+Hy+I …(数2)
ここで、εeは誤差ひずみ、x,yは特定位置(この例ではボルトの中心)からのx方向とy方向の距離、G,H,Iは係数である。
【0059】
本実施例2では、実施例1で説明したものと同様の手法を用いて、x平面における上記(数2)の係数Gと、y平面における(数2)の係数Hを求める。また、x、y平面での係数Iを求める。
【0060】
図1の誤差補正部5では、前記係数G,H,Iの値を与えた誤差補正式(数2)を用いて、ボルト中心位置0からの各位置での誤差ひずみεeの値を求め、図1のひずみ計算部4で計算された誤差を含むひずみ曲線から、誤差分を減算したひずみ曲線を得る。この誤差分を除去したひずみ曲線が図1に示すひずみ出力部6から出力される。
【0061】
このように、本実施例2では、測定対象物のxy平面における誤差ひずみに対し、x軸方向における誤差ひずみと、y軸方向における誤差ひずみを求めることで、xy平面における誤差ひずみを求め、図1のひずみ計算部4や図5のひずみ計算ステップS4で計算されたひずみからxy平面における誤差ひずみを除去した二次元平面でのひずみを得ることができる。したがって、本実施例2によれば、実施例1と同様の効果が得られると共に、測定対象物1における二次元平面でのひずみを高い精度で計測可能になる効果が得られる。
【実施例0062】
本発明の実施例3を、図7及び図8を用いて説明する。図7はボルトに軸力が負荷された時のボルト頂面における軸方向変位を説明する図、図8図7に示すボルトに発生するひずみと誤差の関係を説明する線図である。本実施例3におけるひずみ計測装置としての全体構成は図1と同様であり、またひずみ計測方法としての流れも図5で説明したものと同様である。したがって、実施例1と同様の部分についての説明は省略し、実施例1と異なる点を中心に説明する。
【0063】
図7は測定対象物をボルト10としており、このボルト10に軸力Fが負荷されると、ボルト頂面10bには軸方向の変位が発生する。この変位によっても誤差が発生する。本実施例3は、ボルト10に軸力Fが負荷された時のボルト頂面10bにおける軸方向変形量ΔLにより発生する誤差を、図1のひずみ計算部4で計算されたひずみから除去するものである。
【0064】
図7において、軸力Fを負荷する前のボルト10の頂面10bと撮影装置20との距離をL、ボルト10に軸力Fが負荷された時のボルト頂面10bにおける軸方向変形量ΔLとすると、距離Lに対して、軸方向変形量ΔLにより発生する見かけひずみεezは、次の(数3)となる。
【0065】
εez=L/(L+ΔL) …(数3)
図8において、18は単位軸力あたりの径方向ひずみεrの曲線(ひずみ曲線)、19は、前記径方向ひずみεrと軸方向変形量により発生する上記(数3)で示す見かけひずみεezを足しあわせたひずみ(εr+εez)の曲線(ひずみ曲線)である。また、図7における軸力Fに対するボルト頭部の径方向ひずみεr及び軸方向変形量ΔLは概ね線形関係になることがわかっており、図8の単位軸力あたりの径方向ひずみεrと、この径方向ひずみεrと軸方向変形量ΔLにより発生する見かけひずみεezを足しあわせたひずみ(εr+εez)との比は、軸力Fの大きさに拘わらず概ね同値となる。
【0066】
そこで、図1に示すひずみ特徴量抽出部7では、単位軸力あたりの径方向ひずみεrと、この径方向ひずみεrと単位軸力あたりの軸方向変形量ΔLにより発生する見かけひずみεezを足し合わせたひずみ(εr+εez)をひずみ特徴量として抽出する。
なお、前記ひずみ特徴量抽出部7では、少なくとも前記径方向ひずみεrと、前記軸方向変位量ΔL或いは前記見かけひずみεezをひずみ特徴量として抽出しておき、必要に応じて前記径方向ひずみεrと前記軸方向変形量ΔLにより発生する見かけひずみεezを足し合わせた前記ひずみ(εr+εez)を、前記ひずみ特徴量抽出部7や次に説明する誤差補正式取得部8等において取得するようにしても良い。
【0067】
図1に示す誤差補正式取得部8では、単位軸力あたりの径方向ひずみεr(x)と、この径方向ひずみεr(x)と単位軸力あたりの軸方向変形量ΔLにより発生する見かけひずみεez(x)を足し合わせたひずみ(εr(x)+εez(x))との比率Re(x)を、次の(数4)に示す誤差補正式として取得する。
【0068】
Re(x)=εr(x)/(εr(x)+εez(x)) …(数4)
ここで、εr(x)はボルト中心位置から径方向への距離xにおける単位軸力あたりの径方向ひずみ、εez(x)はボルト中心位置からの距離xにおける単位軸力あたりのボルト頂面の軸方向変形量ΔLに伴う見かけひずみである。
【0069】
誤差補正部5では、ひずみ計算部4で計算された軸方向変形量ΔLに伴う見かけひずみεezによる誤差を含むひずみに対して、前記比率Reを積算(乗算)することで、誤差が除去されたひずみやひずみ曲線を取得することができる。この誤差分が除去したひずみやひずみ曲線が、図1に示すひずみ出力部6から出力される。
【0070】
本実施例2によれば、実施例1と同様の効果が得られると共に、測定対象物に軸力Fが負荷された際の軸方向変形量ΔLにより発生する見かけひずみも除去されたひずみやひずみ曲線を得ることができる。
【0071】
なお、本実施例3の説明においても、測定対象物1がボルトである場合について説明したが、ボルトには限られず、測定対象物に付与される負荷の大きさに対して、測定対象物に発生するひずみ及び測定対象物の撮影方向への変形量が概ね線形関係となる構造物、或いは負荷の大きさに拘わらず、測定対象物に発生するひずみと測定対象物の撮影方向への変形に伴う見かけひずみとの比率が概ね一定となる構造物であれば適用可能である。
【0072】
以上、本発明の実施例1~3について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記実施例では測定対象物をボルトとした例について説明したが、ボルトには限られず、前述したように、一端を固定された状態で曲げ負荷が付与される構造物や、吊下げられた状態で曲げ負荷が付与される構造物等にも同様に適用可能である。また、実施例1に記載のひずみ計測方法と、実施例3に記載のひずみ計測方法の両方を用いて、ひずみ計算部で計算されたひずみに含まれる誤差を除去するようにすることもできる。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。更に、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成やステップを備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0073】
1:測定対象物(構造物)、2:ひずみ計測部、
3:画像取得部、4:ひずみ計算部、5:誤差補正部、6:ひずみ出力部、
7:ひずみ特徴量抽出部
8:誤差補正式取得部
10:ボルト、10a:断面、10b:ボルト頂面、
11:ナット、12:被締結体、
13a,13b:画像、14:矩形板、14a:断面、15:近似線、
16:誤差を含むひずみの曲線、17:誤差を除去したひずみの曲線、
18:単位軸力あたりの径方向ひずみの曲線、
19:単位軸力あたりの径方向ひずみと見かけひずみを足し合わせたひずみの曲線、
20:撮影装置。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8