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  • 特開-電磁駆動ポンプの異常判定装置 図1
  • 特開-電磁駆動ポンプの異常判定装置 図2
  • 特開-電磁駆動ポンプの異常判定装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071195
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】電磁駆動ポンプの異常判定装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 17/04 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
F04B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183794
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】荒井 一剛
【テーマコード(参考)】
3H069
【Fターム(参考)】
3H069AA01
3H069BB02
3H069CC04
3H069DD22
3H069EE02
3H069EE05
3H069EE45
(57)【要約】
【課題】外乱の影響を受けることなくポンプの異常の有無を正確に判断することが可能な電磁駆動ポンプの異常判定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる電磁駆動ポンプの異常判定装置の構成は、電磁コイル120によってプランジャ140を往復運動させて流体を圧送する電磁駆動ポンプ100の異常判定装置200であって、電磁コイル120に電力を供給する駆動回路202上に配置された電流計210と、電流計210が取得した電流値から異常を判定する判定部220とを備え、判定部220は、駆動電圧の立ち下がりから所定時間T内の電流値の最小値I1を取得し、最小値I1が閾値I0を下回った場合にプランジャ140がロックされていると判定することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁コイルによってプランジャを往復運動させて流体を圧送する電磁駆動ポンプの異常判定装置であって、
前記電磁コイルに電力を供給する駆動回路上に配置された電流計と、
前記電流計が取得した電流値から異常を判定する判定部とを備え、
前記判定部は、駆動電圧の立ち下がりから所定時間内の電流値の最小値を取得し、該最小値が閾値を下回った場合に前記プランジャがロックされていると判定することを特徴とする電磁駆動ポンプの異常判定装置。
【請求項2】
前記駆動回路上に配置されたフライホイールダイオードを備えることを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動ポンプの異常判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁コイルによってプランジャを往復運動させて流体を圧送する電磁駆動ポンプの異常判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体を移送するポンプとして、電磁コイルを動力に用いる電磁駆動ポンプが知られている。電磁駆動ポンプは、電磁コイルに印加する電圧のON/OFFを切り替えることによりハウジングの内部をプランジャが往復運動する。このとき、電磁駆動ポンプは、流体を吸入口から吸入し、吐出口から吐出することで、流体を圧送(移送)する。ポンプの吐出流量の異常を検知する方法としては、流路上に配置されて流体の流量を検出する流量センサや、流路内の圧力を検出する圧力センサが一般的に用いられている。
【0003】
しかしながら、目標流量が微小な場合、流量および圧力の検出精度が低くなってしまう。そこで流量センサや圧力センサに替えて振動検出装置を用いることがある(例えば特許文献1)。特許文献1の燃料電池システムは、「シリンダ内に往復運動可能に収納され、コイルが通電されることにより移動し、かつ、被衝突部に衝突するプランジャを有するとともに、改質水を蒸発部に供給するプランジャ式の改質水ポンプと、プランジャの往復運動の際に生じる改質水ポンプの振動を検出する振動検出装置と、改質水ポンプを少なくとも制御する制御装置」を備えている。
【0004】
また特許文献1の制御装置は、「コイルへの通電開始時点からプランジャが被衝突部に衝突する衝突時点までのプランジャが移動中である第一時間内において、振動検出装置によって検出された振動の振幅が第一判定値以上である場合、改質水ポンプに改質水が供給されない改質水供給異常が発生したと判定する異常判定部」を備えている。特許文献1によれば、かかる構成により改質水を供給するポンプに改質水が供給されない改質水供給異常の発生を確実に検知できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-147182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように振動検出装置を用いてポンプの異常を判定する場合、例えばポンプの取付環境に外乱振動があると、その外乱振動を振動検出装置が検出し、ポンプの異常(例えば停止となっているはずのポンプが稼動している)が発生していると判断する可能性がある。このため特許文献1のように振動検出装置を用いる方法は、ポンプの異常を判断するための手法の1つとしては有用であるものの、ポンプの異常の有無をより正確に判断するためには更なる改善の余地がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、外乱の影響を受けることなくポンプの異常の有無を正確に判断することが可能な電磁駆動ポンプの異常判定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明にかかる電磁駆動ポンプの異常判定装置の代表的な構成は、電磁コイルによってプランジャを往復運動させて流体を圧送する電磁駆動ポンプの異常判定装置であって、電磁コイルに電力を供給する駆動回路上に配置された電流計と、電流計が取得した電流値から異常を判定する判定部とを備え、判定部は、駆動電圧の立ち下がりから所定時間内の電流値の最小値を取得し、最小値が閾値を下回った場合にプランジャがロックされていると判定することを特徴とする。また電磁駆動ポンプの異常判定装置は、駆動回路上に配置されたフライホイールダイオードを備えるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外乱の影響を受けることなくポンプの異常の有無を正確に判断することが可能な電磁駆動ポンプの異常判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態にかかる電磁駆動ポンプの異常判定装置を説明する図である。
図2】電磁駆動ポンプのプランジャの動作を説明する図である。
図3】正常時および異常時の電磁駆動ポンプの電流値および電圧値の波形を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態にかかる電磁駆動ポンプ100の異常判定装置200を説明する図である。図1に示す電磁駆動ポンプ100は、電磁コイル120によってプランジャ140を往復運動させて流体(不図示)を圧送する装置である。
【0013】
電磁駆動ポンプ100では、ハウジング110の内部に電磁コイル120が配置されている。電磁コイル120の内側には固定鉄心130、シリンダー状のガイド142、およびガイド142に案内されるプランジャ140が配置されている。固定鉄心130はハウジング110と一体に成型されていて、電磁コイル120の内側に配置されている。プランジャ140はガイド142に案内されてハウジング110内を移動可能である。
【0014】
図2は、電磁駆動ポンプ100のプランジャ140の動作を説明する図である。図1および図2に示すように、固定鉄心130の内部には吸込弁150が配置されていて、プランジャ140の内部には吐出弁160が配置されている。吸込弁150はプランジャ140内に流体を吸い込み、吐出弁160はプランジャ140内の流体を吐き出す。
【0015】
電磁コイル120への電流のON/OFFを交互運転することにより、プランジャ140がハウジング110内を往復運動する。これにより、図2(a)に示すようにプランジャ140が駆動したとき(矢印A方向に移動したとき)にはポンプ室112内の流体(例えば水)が吐出弁160から吐き出される。
【0016】
一方、図2(b)に示すようにプランジャ140がスプリング144によって戻るとき(矢印B方向に移動したとき)には吸込弁150からポンプ室112内に流体が吸い込まれる。吐出弁160は、吐出口本体170の吐出口172と連通していて、シリンダー状のガイド142の一端(吐出弁160側の一端)を封止している。これにより、吐出弁160から吐出された流体は、吐出口172を通じて電磁駆動ポンプ100の外部に移送される。
【0017】
本実施形態の特徴として、図1に示すように電磁駆動ポンプ100には異常判定装置200が接続されている。異常判定装置200は、電流計210および判定部220を含んで構成される。電磁駆動ポンプ100の電磁コイル120に電力を供給する駆動回路202上には、電源204、スイッチ206、フライホイールダイオード208(還流ダイオードとも称される)、電流計210が配置されている。
【0018】
駆動回路202上のスイッチ206がONの状態になると電源204からの電力が電磁コイル120に供給される。一方、駆動回路202上のスイッチ206がOFFの状態になると、電源204から電磁コイル120への電力の供給が停止する。このとき駆動回路202上にフライホイールダイオード208が配置されていることにより、フライバック電圧(サージ電圧とも称される)によるスイッチ206の損傷を防ぐことができる。
【0019】
電流計210は駆動回路202における電流を取得する。かかる電流計210には、電流計210が取得した電流値を参照して電磁駆動ポンプ100の異常を判定する判定部220が接続されている。詳細には判定部220は、駆動電圧(パルス波)の立ち下がりから所定時間内の電流値の最小値を取得し、最小値が閾値を下回った場合にプランジャ140がロックされていると判定する。判定部220は、具体的にはコンピュータや組み込みCPUで動作するプログラムによって実装することができる。
【0020】
ここで従来のように振動検出装置を用いて電磁駆動ポンプの異常を判定する場合、例えば電磁駆動ポンプの取付環境に外乱振動があると、その外乱振動を振動検出装置が検出し、異常を誤検出することがあった。このため発明者は振動以外の要素によって電磁駆動ポンプの異常を正確に検出することができないかを検討し、電磁駆動ポンプ100の停止時から所定時間Tにおける電流値に着目した。
【0021】
図3は、正常時および異常時の電磁駆動ポンプ100の電流値および電圧値の波形を例示する図である。図3(a)は、正常時の電磁駆動ポンプ100の電流値および電圧値の波形を例示する図である。図3(b)および(c)は、異常時の電磁駆動ポンプ100の電流値および電圧値の波形を例示する図である。
【0022】
電磁駆動ポンプ100の電圧値(駆動電圧)の波形は矩形波であり、図3(a)-(c)に例示するように、電磁駆動ポンプ100を駆動する(駆動時t1)と電圧値は0Vから24Vまで立ち上がり(上昇する)、電磁駆動ポンプ100を停止する(停止時t2)と電圧値は24Vから0Vまで立ち下がる(降下する)。これに対し電磁駆動ポンプ100の電流値は、図3(a)-(c)に例示するように、電磁駆動ポンプ100を駆動する(駆動時t1)とカーブを描きながら上昇した後にほぼ一定の値となり、電磁駆動ポンプ100を停止する(停止時t2)と急激に低下した後に緩やかに低下する。
【0023】
異常が発生していない電磁駆動ポンプ100では、図3(a)に例示するように所定時間Tにおける電流値の最小値I1が閾値I0以上となっている。これに対し電磁駆動ポンプ100に異常が発生した例としては、プランジャ140が図2(b)に示すように上端でロックされた状態が挙げられる。このような場合、図3(b)に例示するように所定時間Tにおける電流値の最小値I1が閾値I0未満となっている。また電磁駆動ポンプ100に異常が発生した他の例としては、プランジャ140が図2(a)に示すように下端でロックされた状態が挙げられる。このような場合においても、図3(c)に例示するように所定時間Tにおける電流値の最小値I1が閾値I0未満となっている。
【0024】
上記説明したように本実施形態の異常判定装置200によれば、停止時t2から所定時間Tにおける電流値の最小値I1を参照して電磁駆動ポンプ100の異常を判断する。具体的には異常判定装置200は、所定時間Tにおける電流値の最小値I1が、予め設定された電流値の閾値I0を下回っているか否かを判断する。そして異常判定装置200は、所定時間Tにおける電流値の最小値I1が閾値I0以上であった場合には、プランジャ140がロックされていない、すなわち電磁駆動ポンプ100が正常であると判断する。一方、異常判定装置200は、所定時間Tにおける電流値の最小値I1が閾値I0未満であった場合には、プランジャ140がロックされている、すなわち電磁駆動ポンプ100に異常が発生していると判断する。
【0025】
上記構成のように電磁駆動ポンプ100の異常判断に電流値を用いることにより、振動を参照して異常判断を判定する場合の外乱の影響を除外し、電磁駆動ポンプ100の異常の有無をより正確に判断することができる。また従来用いられていた振動検出装置はポンプ本体に取り付けられる構成が一般的であるが、本実施形態の異常判定装置200は電磁駆動ポンプ100ではなく駆動回路202上に配置される。したがって、取付箇所の制約を受けることがなく、且つポンプ本体の仕様にかかわらず適用することでき高い汎用性を得ることが可能である。
【0026】
なお図3(a)に例示するように、異常が発生していない電磁ポンプ100の電流値は、電磁駆動ポンプ100を停止すると急激な低下の後、一旦上昇に転じ(一時的な上昇)、その後に再び緩やかに低下する。この電流値が低下する過程でみられる一時的な電流値の上昇はフライホイールダイオード208が設けられた駆動回路202において、電磁駆動ポンプ100に異常が発生していない場合(正常な場合)のみに現れる特徴であり、電磁駆動ポンプ100に異常が発生してプランジャ140がロックされた状態では現れない。したがって、本実施形態のように駆動回路202にフライホイールダイオード208を設ければ、電磁駆動ポンプ100の異常の有無をより正確且つ確実に判断することができる。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、電磁コイルによってプランジャを往復運動させて流体を圧送する電磁駆動ポンプの異常判定装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100…電磁駆動ポンプ、110…ハウジング、112…ポンプ室、120…電磁コイル、130…固定鉄心、140…プランジャ、142…ガイド、144…スプリング、150…吸込弁、160…吐出弁、170…吐出口本体、172…吐出口、200…異常判定装置、202…駆動回路、204…電源、206…スイッチ、208…フライホイールダイオード、210…電流計、220…判定部
図1
図2
図3