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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071215
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】復調回路
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/22 20060101AFI20230516BHJP
   H04L 27/38 20060101ALI20230516BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H04L27/22 Z
H04L27/38 100
H04B1/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183825
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 康英
【テーマコード(参考)】
5K061
【Fターム(参考)】
5K061AA11
5K061BB10
5K061CC14
5K061CC25
5K061CC53
5K061CD04
5K061JJ24
(57)【要約】
【課題】シンボルレートに関わらず同じ制御フローで高い検出精度と引き込み時間の短縮との両立を実現する。
【解決手段】受信信号の周波数誤差を補正する自動周波数制御回路2と、自動周波数制御回路2の後段に設けられて前記受信信号に対して帯域制限処理を施して出力するロールオフフィルタ3と、ロールオフフィルタ3の後段に設けられて前記受信信号の位相誤差を補正するキャリア再生回路5と、を有し、自動周波数制御回路2は、周波数をシフトさせながら複数のオフセット周波数を生成する周波数制御部21と、オフセット周波数を複素数に変換するAFC用の数値制御発振器22と、前記複素数を用いて前記受信信号に対して複素乗算処理を施すAFC用の乗算器23と、を備え、ロールオフフィルタ3から出力される前記受信信号の強度が最大になるときのオフセット周波数を用いて前記受信信号の周波数誤差を補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号の周波数誤差を補正する自動周波数制御回路と、
前記自動周波数制御回路の後段に設けられて前記受信信号に対して帯域制限処理を施して出力するロールオフフィルタと、
前記ロールオフフィルタの後段に設けられて前記受信信号の位相誤差を補正するキャリア再生回路と、を有し、
前記自動周波数制御回路は、
周波数をシフトさせながら複数のオフセット周波数を生成する周波数制御部と、
前記オフセット周波数を複素数に変換する数値制御発振器と、
前記複素数を用いて前記受信信号に対して複素乗算処理を施す乗算器と、を備え、
前記ロールオフフィルタから出力される前記受信信号の強度が最大になるときの前記オフセット周波数を用いて前記受信信号の周波数誤差を補正する、
ことを特徴とする復調回路。
【請求項2】
前記ロールオフフィルタと前記キャリア再生回路との間に接続されて前記ロールオフフィルタから出力される前記受信信号の供給を受ける強度検出部によって前記受信信号の前記強度が測定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の復調回路。
【請求項3】
前記ロールオフフィルタと前記キャリア再生回路との間に設けられて前記ロールオフフィルタから出力される前記受信信号の入力を受ける自動利得制御部によって前記受信信号の前記強度が測定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の復調回路。
【請求項4】
通信で使用する周波数帯域よりも周波数帯域が狭い信号について前記強度が測定される、
ことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の復調回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば通信衛星を介して行われる無線通信に適用されて同期検波を実現する復調回路に関する。
【背景技術】
【0002】
送信側装置と受信側装置との間で通信衛星を介して無線通信を行う無線通信システムでは、通信衛星の周波数誤差が大きいために送受信間のトータルの周波数誤差が受信復調器のキャリア再生の周波数引き込み範囲外となる場合がある。受信復調器のキャリア再生の周波数引き込み範囲外のローカル周波数誤差があるような無線通信システムに対応するために、受信側装置がキャリア再生の周波数引き込み可能な幅でローカル周波数を変えて周波数誤差をサーチすることによってローカル周波数誤差を粗調整することを目的として自動周波数制御(AFC:Automatic Frequency Controller)回路が用いられる。従来の自動周波数制御装置として、C/N測定部から通知される制御チャネル信号のC/Nと、予め定めたC/Nの値に対応するU/W(ユニークワード)検出部から通知されるU/W検出回数を照合し、必要な回数が満たされるまでキャリヤ周波数と現在のローカル信号との差であるΔfを小さくする発振周波数制御信号をNCOへ出力して周波数補正を行う調整手順を繰り返し、所定のU/W検出回数が得られるとAFCに必要なキャリヤのキャプチャとロック手順を終了したと判定し、トラッキングモードへ移行する装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-87191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような従来の自動周波数制御の処理では、ユニークワード検出の可否で周波数誤差の検出判定を行っているところ、この判定を行うにはクロック同期およびキャリア同期が確立していることが前提となるため、同期に時間のかかる低シンボルレートでは引き込みに時間がかかる、という問題がある。また、衛星通信システムのように様々なシンボルレート(シンボル周波数)の通信に対応する無線通信システムにおいては、シンボルレートによって同期引き込み範囲および引き込み時間が大きく異なる。このため、シンボルレートが低い場合は、キャリア再生の引き込み時間が長いために自動周波数制御の初期引き込みに時間がかかり、受信側装置が周波数誤差をサーチする際にウェイト時間が長くなって初期引き込みに時間がかかる、という問題がある。また、シンボルレートが高い場合は、キャリア同期引き込み範囲が広く引き込み時間が短いために正しい周波数誤差を検出することができないケースがあり、キャリア再生ループの周波数誤差を含めて自動周波数制御の周波数誤差を再入力してキャリア再生の同期を再度待つといった複雑な制御が必要になる、という問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、シンボルレートに関わらず同じ制御フローで高い検出精度と引き込み時間の短縮との両立を実現することが可能な、復調回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る復調回路は、受信信号の周波数誤差を補正する自動周波数制御回路と、前記自動周波数制御回路の後段に設けられて前記受信信号に対して帯域制限処理を施して出力するロールオフフィルタと、前記ロールオフフィルタの後段に設けられて前記受信信号の位相誤差を補正するキャリア再生回路と、を有し、前記自動周波数制御回路は、周波数をシフトさせながら複数のオフセット周波数を生成する周波数制御部と、前記オフセット周波数を複素数に変換する数値制御発振器と、前記複素数を用いて前記受信信号に対して複素乗算処理を施す乗算器と、を備え、前記ロールオフフィルタから出力される前記受信信号の強度が最大になるときの前記オフセット周波数を用いて前記受信信号の周波数誤差を補正する、ことを特徴とする。
【0007】
この発明に係る復調回路は、前記ロールオフフィルタと前記キャリア再生回路との間に接続されて前記ロールオフフィルタから出力される前記受信信号の供給を受ける強度検出部によって前記受信信号の前記強度が測定される、ようにしてもよい。
【0008】
この発明に係る復調回路は、前記ロールオフフィルタと前記キャリア再生回路との間に設けられて前記ロールオフフィルタから出力される前記受信信号の入力を受ける自動利得制御部によって前記受信信号の前記強度が測定される、ようにしてもよい。
【0009】
この発明に係る復調回路は、通信で使用する周波数帯域よりも周波数帯域が狭い信号について前記強度が測定される、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る復調回路によれば、クロック同期に依らずに周波数誤差を検出することができるため、低シンボルレートにおいても高速で周波数誤差を検出することが可能となり、延いては、シンボルレートに関わらず同じ制御フローで高い検出精度と引き込み時間の短縮との両立を実現することが可能となる。この発明に係る復調回路によれば、また、シンボル周波数ごとに異なる周波数誤差を補正する制御は不要となる。
【0011】
この発明に係る復調回路によれば、キャリア再生回路におけるキャリア同期(位相誤差の補正)および同期検出部における既知パターン同期(位相の同期/非同期の検出・判定)を経ることなく自動周波数制御が完了するので、引き込み時間を短縮することが可能となる。
【0012】
この発明に係る復調回路によれば、自動利得制御部によって受信信号の強度が測定されるようにした場合には、回路構成が複雑になることを抑制しつつ高い検出精度と引き込み時間の短縮との両立を実現することが可能となる。
【0013】
この発明に係る復調回路によれば、通信で使用する周波数帯域よりも周波数帯域が狭い信号について強度が測定されるようにした場合には、検出対象のチャネルについての信号の強度/レベルのピークを確実に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施の形態1に係る復調回路の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2】この発明の実施の形態2に係る復調回路の概略構成を示す機能ブロック図である。
図3】検出対象のチャネルと他のチャネルとの関係の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に係る復調回路1の概略構成を示す機能ブロック図である。復調回路1は、例えば、送信側装置と受信側装置との間で通信衛星を介して(言い換えると、衛星通信回線を使用して)無線通信を行う無線通信システムを構成する受信側装置(或いは、送信側装置と受信側装置との間で双方向通信が行われる場合の各装置の受信信号の処理機構)に組み込まれる。
【0017】
復調回路1は、変調信号の同期検波を行うための機序であり、主として、自動周波数制御回路2と、ロールオフフィルタ3と、強度検出部4と、キャリア再生回路5と、復調部6と、同期検出部7と、を有する。なお、この発明における変調/復調方式は、特定の方式には限定されないものの、例えばQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式が用いられ得る。
【0018】
自動周波数制御(AFC:Automatic Frequency Controller)回路2には、例えば、アンテナを介して受信される高周波(RF:Radio Frequency)の無線信号が中間周波数(IF:Intermediate Frequency)信号へと周波数変換されるとともにアナログ-デジタル変換されたデジタルの受信信号(変調信号)が入力される。
【0019】
自動周波数制御回路2は、当該回路2へと入力される受信信号(変調信号)に含まれる送信側装置の送信ローカル周波数と受信側装置における受信ローカル周波数との間の周波数誤差(別言すると、周波数偏差)を除去/補正するための仕組みであり、主として、周波数制御部21と、AFC用の数値制御発振器22と、AFC用の乗算器23と、を備える。
【0020】
周波数制御部21は、送信側装置の送信ローカル周波数と受信側装置における受信ローカル周波数との間の周波数誤差に相当する周波数情報を出力する。
【0021】
AFC用の数値制御発振器22(NCO:Numerically Controlled Oscillator)は、周波数制御部21から出力される周波数情報の入力を受け、前記周波数情報を複素数に変換して出力する。
【0022】
AFC用の乗算器23は、自動周波数制御回路2へと入力される受信信号(変調信号)の入力を受けるとともにAFC用の数値制御発振器22から出力される複素数の入力を受け、前記受信信号(変調信号)に対して前記複素数を用いて複素乗算処理(即ち、上記周波数情報に応じた複素乗算処理)を施して出力する。
【0023】
なお、この発明では、自動周波数制御回路2に、周波数の同期/非同期を検出・判定するための同期判定回路は備えられない。
【0024】
ロールオフフィルタ3(ROF:Roll-Off Filter)は、有限長インパルス応答として実現されるローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)により構成されて、自動周波数制御回路2(具体的には、AFC用の乗算器23)から出力される信号の入力を受け、前記信号に対して帯域制限処理を施して出力する。
【0025】
強度検出部4は、ロールオフフィルタ3とキャリア再生回路5との間に接続されて、ロールオフフィルタ3から出力される信号の供給を受け、前記信号の強度/レベル(具体的には、電力)を測定する。
【0026】
キャリア再生(CR:Carrier Recovery)回路5は、ロールオフフィルタ3から出力される信号に含まれる送信側装置の送信信号/搬送波の位相と受信側装置における受信信号(変調信号)/搬送波の位相との間の位相誤差(別言すると、理想的な位相に対する前記受信信号の位相の誤差/ずれ)を除去/補正するための仕組みであり、主として、位相誤差検出部51と、ローパスフィルタ52と、CR用の数値制御発振器53と、CR用の乗算器54と、を備える。
【0027】
位相誤差検出部51は、CR用の乗算器54から出力される信号の供給を受け、前記信号に含まれる位相誤差(即ち、理想的な位相に対する前記信号の位相の誤差/ずれ)を検出して、前記位相誤差を示す信号を出力する。
【0028】
ローパスフィルタ52(LPF:Low Pass Filter)は、位相誤差検出部51から出力される位相誤差を示す信号の入力を受け、前記位相誤差を示す信号に対して帯域制限処理を施して出力する(具体的には、低周波成分のみを通過させる)。
【0029】
CR用の数値制御発振器53(NCO:Numerically Controlled Oscillator)は、ローパスフィルタ52から出力される位相誤差を示す信号の入力を受け、前記位相誤差を複素数に変換して出力する。
【0030】
CR用の乗算器54は、ロールオフフィルタ3から出力される信号の入力を受けるとともにCR用の数値制御発振器53から出力される複素数の入力を受け、前記信号に対して前記複素数を用いて複素乗算処理(即ち、上記位相誤差に応じた複素乗算処理)を施して出力する。
【0031】
復調部6は、キャリア再生回路5(具体的には、CR用の乗算器54)から出力される信号の入力を受け、前記信号を検波して所定のデータに復調(例えば、QPSK復調)して信号フレーム(ビット列の信号)として出力する。
【0032】
同期検出部7は、復調部6から出力される信号フレームの入力を受け、前記信号フレームに含まれる同期用信号であるユニークワード(UW:Unique Word)などの既知パターンの検出を利用して位相の同期/非同期を検出・判定する処理を行う。
【0033】
そして、実施の形態1に係る復調回路1は、受信信号(変調信号)の周波数誤差を補正する自動周波数制御回路2と、自動周波数制御回路2の後段に設けられて前記受信信号に対して帯域制限処理を施して出力するロールオフフィルタ3と、ロールオフフィルタ3の後段に設けられて前記受信信号の位相誤差を補正するキャリア再生回路5と、を有し、自動周波数制御回路2は、周波数をシフトさせながら複数のオフセット周波数を生成する周波数制御部21と、オフセット周波数を複素数に変換するAFC用の数値制御発振器22と、前記複素数を用いて前記受信信号に対して複素乗算処理を施すAFC用の乗算器23と、を備え、ロールオフフィルタ3から出力される前記受信信号の強度が最大になるときのオフセット周波数を用いて前記受信信号の周波数誤差を補正し、ロールオフフィルタ3とキャリア再生回路5との間に接続されてロールオフフィルタ3から出力される前記受信信号の供給を受ける強度検出部4によって前記受信信号の強度が測定される、ようにしている。
【0034】
周波数制御部21は、自動周波数制御の処理を開始する際に、自動周波数制御の処理の開始を示す信号を強度検出部4へと出力する。
【0035】
周波数制御部21は、自動周波数制御の処理として、想定される周波数誤差の範囲(或いは、復調回路1がキャリア再生の周波数引き込み可能な範囲)をカバーするように、予め定められる所定の単位シフト量(別言すると、刻み量,ピッチ量)で周波数をシフト/変化させながら複数のオフセット周波数(言い換えると、周波数サーチ/周波数スイープを行うための複数の周波数)を順次出力する。
【0036】
想定される周波数誤差の最大値の絶対値がfemaxであり、また、周波数の単位シフト量がΔfであるとする。
【0037】
femaxやΔfは、特定の値に限定されるものではなく、例えば周波数サーチ/周波数スイープする際の周波数の範囲や単位シフト量が適切に設定され周波数サーチ/周波数スイープが良好に行われて周波数を的確に同期させ得ることや処理時間が極端に長くならないようにすることが考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。
【0038】
周波数制御部21は、-femaxから+femaxの範囲で、Δf刻みで段階的にシフト/変化させたオフセット周波数Δf_n(但し、n=1,2,3,・・・)を順次出力する。
【0039】
周波数制御部21は、例えば、下記の数式1に従って、計算結果のオフセット周波数Δf_nの値が+femaxよりも大きくなるまで、Δf刻みで値がシフト/変化するオフセット周波数Δf_n(但し、n=1,2,3,・・・)の計算を繰り返し、計算されるオフセット周波数Δf_nの値を順次出力する。オフセット周波数Δf_nは、送信側装置の送信ローカル周波数と受信側装置における受信ローカル周波数との間の周波数誤差に相当する。
(数1) Δf_n = -femax+Δf×(n-1)
ここに、 Δf_n:オフセット周波数[kHz]
femax:周波数誤差の最大値の絶対値[kHz]
Δf :周波数の単位シフト量[kHz]
n :序数(n=1,2,3,・・・)
【0040】
周波数制御部21は、計算結果のオフセット周波数Δf_nの値が+femaxよりも大きくなるまで下記の数式2Aの計算を繰り返して(但し、n=1,2,3,・・・)オフセット周波数Δf_nの値を順次出力し、続いて、計算結果のオフセット周波数Δf_nの値が-femaxよりも小さくなるまで下記の数式2Bの計算を繰り返して(但し、n=1,2,3,・・・)オフセット周波数Δf_nの値を順次出力するようにしてもよい。
(数2A) Δf_n = Δf×(n-1)
(数2B) Δf_n = Δf×(1-n)
【0041】
AFC用の数値制御発振器22は、周波数制御部21から順次出力されるオフセット周波数Δf_nの値を用いて下記の数式3に従って位相誤差Δθを順次計算する。基準クロックFrefとして、例えば、シンボルクロックを生成するクロックが利用される。
(数3) Δθ = 360/(Fref/Δf_n)
ここに、 Δθ :位相誤差[deg]
Fref :基準クロック[kHz]
Δf_n:オフセット周波数[kHz]
【0042】
そして、AFC用の数値制御発振器22は、上記計算される位相誤差Δθをテーブルなどによって複素数に順次変換して出力する。
【0043】
AFC用の乗算器23は、自動周波数制御回路2へと入力される受信信号(変調信号)に対してAFC用の数値制御発振器22から順次出力される複素数を用いて複素乗算処理を施して順次出力する。
【0044】
上記により、自動周波数制御回路2(具体的には、AFC用の乗算器23)から、Δf刻みで値がシフト/変化するオフセット周波数Δf_n(但し、n=1,2,3,・・・)それぞれに応じた複素乗算処理後の信号が順次出力される。自動周波数制御回路2から順次出力される信号はロールオフフィルタ3へと入力され、ロールオフフィルタ3から出力される信号が強度検出部4へと順次供給される。
【0045】
強度検出部4は、カウンタ機能を備え、カウンタ値C(但し、C=0,1,2,3,・・・)をカウントする機能を備える。強度検出部4は、周波数制御部21から出力される自動周波数制御の処理の開始を示す信号の入力を受けると、カウンタ値Cを初期値0に設定する。
【0046】
強度検出部4は、また、ロールオフフィルタ3から順次出力される信号が供給されるたびに測定した前記信号の強度/レベルの値ともとのカウンタ値Cに1を加えたカウンタ値Cとの組み合わせを時系列に保持する機能を備える。
【0047】
強度検出部4は、ロールオフフィルタ3から順次出力される信号が供給されるたびに、カウンタ値Cに1を加えるとともに前記信号の強度/レベルを測定し、測定結果として得られる前記信号の強度/レベルの値(具体的には、電力値)と前記1を加えたカウンタ値Cとの組み合わせを時系列に保持する。
【0048】
上記1を加えたカウンタ値Cは、上記の数式1を用いる場合、前記ロールオフフィルタ3から順次出力される信号に対応するオフセット周波数Δf_nの序数nの値と等しい。
【0049】
強度検出部4は、上記測定結果として得られる信号の強度/レベルのピークを検出する機能を備え、前記信号の強度/レベルのピークを検出すると、当該ピークに該当する信号の強度/レベルと組み合わせられているカウンタ値C(「ピーク時カウンタ値Cpeak」と呼ぶ)を周波数制御部21へと出力する。
【0050】
強度検出部4は、信号の強度/レベルのピークが検出されたと判断したときにピーク時カウンタ値Cpeakを周波数制御部21へと出力するようにしてもよい。この場合、周波数制御部21は、ピーク時カウンタ値Cpeakの入力を受けた時点でオフセット周波数Δf_nの計算を終了し、-femaxから+femaxの範囲のうちの一部についてオフセット周波数Δf_nの計算を行わないことがある。
【0051】
周波数制御部21は、強度検出部4から出力されるピーク時カウンタ値Cpeakの入力を受け、前記ピーク時カウンタ値Cpeakをnとして用いて上記の数式1に従ってオフセット周波数Δf_nを計算して受信周波数誤差freとして出力する。
【0052】
なお、オフセット周波数Δf_nの計算において上記の数式2A,2Bを用いる場合は、周波数制御部21は、計算結果のオフセット周波数Δf_nの値が+femaxよりも大きくなる直前の序数nの値を保持し、強度検出部4から出力されるピーク時カウンタ値Cpeakが前記保持している序数nの値よりも大きい場合には、前記ピーク時カウンタ値Cpeakから前記保持している序数nの値を引いた値をnとして用いて上記の数式2Bに従ってオフセット周波数Δf_n(即ち、受信周波数誤差fre)を計算する。
【0053】
以上により、送信側装置の送信ローカル周波数と受信側装置における受信ローカル周波数との間の周波数誤差に相当する受信周波数誤差freの値がAFC用の数値制御発振器22へと出力される。
【0054】
続いて、AFC用の数値制御発振器22が、受信周波数誤差freを用いて下記の数式4に従って位相誤差Δθを計算する。
(数4) Δθ = 360/(Fref/fre)
ここに、 Δθ :位相誤差[deg]
Fref:基準クロック[kHz]
fre :受信周波数誤差(オフセット周波数)[kHz]
【0055】
そして、AFC用の数値制御発振器22は、上記計算される位相誤差Δθをテーブルなどによって複素数に変換して出力する。
【0056】
続いて、AFC用の乗算器23が、自動周波数制御回路2へと入力される受信信号(変調信号)に対してAFC用の数値制御発振器22から出力される複素数を用いて複素乗算処理(即ち、受信周波数誤差freに対応する位相誤差Δθに応じた複素乗算処理)を施して出力する。これにより、自動周波数制御の処理が完了する。
【0057】
自動周波数制御回路2(具体的には、AFC用の乗算器23)から出力される信号はロールオフフィルタ3を介してキャリア再生回路5へと入力され、キャリア再生回路5,復調部6,および同期検出部7による処理が行われる。
【0058】
(実施の形態2)
図2は、この発明の実施の形態2に係る復調回路1の概略構成を示す機能ブロック図である。実施の形態2に係る復調回路1は、強度検出部4を有しない点、自動利得制御部8を有する点、周波数制御部21が強度検出部4ではなくて自動利得制御部8から出力されるピーク時カウンタ値Cpeakの入力を受ける点、およびキャリア再生回路5(具体的には、CR用の乗算器54)がロールオフフィルタ3ではなくて自動利得制御部8から出力される信号の入力を受ける点で上記の実施の形態1と構成が異なるものの、その他の構成は上記の実施の形態1と同様であるので、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付することでその説明を省略する。
【0059】
実施の形態2に係る復調回路1は、受信信号(変調信号)の周波数誤差を補正する自動周波数制御回路2と、自動周波数制御回路2の後段に設けられて前記受信信号に対して帯域制限処理を施して出力するロールオフフィルタ3と、ロールオフフィルタ3の後段に設けられて前記受信信号の位相誤差を補正するキャリア再生回路5と、を有し、自動周波数制御回路2は、周波数をシフトさせながら複数のオフセット周波数を生成する周波数制御部21と、オフセット周波数を複素数に変換するAFC用の数値制御発振器22と、前記複素数を用いて前記受信信号に対して複素乗算処理を施すAFC用の乗算器23と、を備え、ロールオフフィルタ3から出力される前記受信信号の強度が最大になるときのオフセット周波数を用いて前記受信信号の周波数誤差を補正し、ロールオフフィルタ3とキャリア再生回路5との間に設けられてロールオフフィルタ3から出力される前記受信信号の入力を受ける自動利得制御部8によって前記受信信号の強度が測定される、ようにしている。
【0060】
自動利得制御(AGC:Automatic Gain Control)部8は、ロールオフフィルタ3とキャリア再生回路5との間に設けられて、ロールオフフィルタ3から出力される信号の入力を受け、前記信号の強度/レベル(具体的には、電力)を調整する。
【0061】
自動利得制御部8は、具体的には、ロールオフフィルタ3から出力される信号の強度/レベルを測定するとともに、測定結果として得られる前記信号の強度/レベルと所定の目標信号レベル(例えば、自動利得制御部8よりも後段の処理・回路にとって適当なレベルとして予め定められる信号レベル)とのレベル差を検出する。
【0062】
自動利得制御部8は、さらに、上記検出されるレベル差に基づいて前記ロールオフフィルタ3から出力される信号の強度/レベルが前記目標信号レベルに収束するようにゲイン(利得)を決定し、前記決定されたゲイン(利得)を用いて前記ロールオフフィルタ3から出力される信号の強度/レベルを増幅して出力する。
【0063】
周波数制御部21は、実施の形態2では、自動周波数制御の処理を開始する際に、自動周波数制御の処理の開始を示す信号を自動利得制御部8へと出力する。
【0064】
実施の形態2でも、上記の実施の形態1と同様に、自動周波数制御回路2(具体的には、AFC用の乗算器23)から、Δf刻みで値がシフト/変化するオフセット周波数Δf_n(但し、n=1,2,3,・・・)それぞれに応じた複素乗算処理後の信号が順次出力される。自動周波数制御回路2から順次出力される信号はロールオフフィルタ3へと入力され、ロールオフフィルタ3から出力される信号が自動利得制御部8へと順次入力される。
【0065】
自動利得制御部8は、カウンタ機能を備え、カウンタ値C(但し、C=0,1,2,3,・・・)をカウントする機能を備える。自動利得制御部8は、周波数制御部21から出力される自動周波数制御の処理の開始を示す信号の入力を受けると、カウンタ値Cを初期値0に設定する。
【0066】
自動利得制御部8は、また、ロールオフフィルタ3から順次出力される信号が供給されるたびに測定した前記信号の強度/レベルの値ともとのカウンタ値Cに1を加えたカウンタ値Cとの組み合わせを時系列に保持する機能を備える。
【0067】
自動利得制御部8は、ロールオフフィルタ3から順次出力される信号が入力されるたびに、カウンタ値Cに1を加えるとともに前記信号の強度/レベルを測定し、測定結果として得られる前記信号の強度/レベルの値(具体的には、電力値)と前記1を加えたカウンタ値Cとの組み合わせを時系列に保持する。
【0068】
上記1を加えたカウンタ値Cは、上記の数式1を用いる場合、前記ロールオフフィルタ3から順次出力される信号に対応するオフセット周波数Δf_nの序数nの値と等しい。
【0069】
自動利得制御部8は、上記測定結果として得られる信号の強度/レベルのピークを検出する機能を備え、前記信号の強度/レベルのピークを検出すると、当該ピークに該当する信号の強度/レベルと組み合わせられているカウンタ値C(「ピーク時カウンタ値Cpeak」と呼ぶ)を周波数制御部21へと出力する。
【0070】
自動利得制御部8は、信号の強度/レベルのピークが検出されたと判断したときにピーク時カウンタ値Cpeakを周波数制御部21へと出力するようにしてもよい。この場合、自動利得制御部8は、ピーク時カウンタ値Cpeakの入力を受けた時点でオフセット周波数Δf_nの計算を終了し、-femaxから+femaxの範囲のうちの一部についてオフセット周波数Δf_nの計算を行わないことがある。
【0071】
自動利得制御部8は、あるいは、自動利得制御を行う際に計算されるゲイン(利得)の値と上記1を加えたカウンタ値Cとの組み合わせを時系列に保持する機能を備えるとともに前記ゲインの極小値を検出する機能を備え、前記ゲインの極小値を検出すると、当該極小値に該当するゲインと組み合わせられているカウンタ値C(「極小時カウンタ値Cmin」と呼ぶ)を周波数制御部21へと出力するようにしてもよい。
【0072】
周波数制御部21は、自動利得制御部8から出力されるピーク時カウンタ値Cpeak(または、極小時カウンタ値Cmin)の入力を受け、前記ピーク時カウンタ値Cpeak(または、前記極小時カウンタ値Cmin)をnとして用いて上記の数式1に従ってオフセット周波数Δf_nを計算して受信周波数誤差freとして出力する。
【0073】
なお、オフセット周波数Δf_nの計算において上記の数式2A,2Bを用いる場合は、周波数制御部21は、計算結果のオフセット周波数Δf_nの値が+femaxよりも大きくなる直前の序数nの値を保持し、自動利得制御部8から出力されるピーク時カウンタ値Cpeak(または、極小時カウンタ値Cmin)が前記保持している序数nの値よりも大きい場合には、前記ピーク時カウンタ値Cpeak(または、前記極小時カウンタ値Cmin)から前記保持している序数nの値を引いた値をnとして用いて上記の数式2Bに従ってオフセット周波数Δf_n(即ち、受信周波数誤差fre)を計算する。
【0074】
以上により、送信側装置の送信ローカル周波数と受信側装置における受信ローカル周波数との間の周波数誤差に相当する受信周波数誤差freの値がAFC用の数値制御発振器22へと出力される。
【0075】
続いて、AFC用の数値制御発振器22が、受信周波数誤差freの値を用いて上記の数式4に従って位相誤差Δθを計算するとともに、計算される位相誤差Δθをテーブルなどによって複素数に変換して出力する。
【0076】
続いて、AFC用の乗算器23が、自動周波数制御回路2へと入力される受信信号(変調信号)に対してAFC用の数値制御発振器22から出力される複素数を用いて複素乗算処理(即ち、受信周波数誤差freに対応する位相誤差Δθに応じた複素乗算処理)を施して出力する。これにより、自動周波数制御の処理が完了する。
【0077】
自動周波数制御回路2(具体的には、AFC用の乗算器23)から出力される信号はロールオフフィルタ3を介してキャリア再生回路5へと入力され、キャリア再生回路5,復調部6,および同期検出部7による処理が行われる。
【0078】
(周波数帯域の狭い信号の利用)
例えば図3(A)に示すように、検出対象(言い換えると、同期検波の対象,周波数誤差の検出用)のチャネルの中心周波数(例えば、送信側装置の送信ローカル周波数に従うAFC用の数値制御発振器22の発振周波数(ローカル周波数))に加えて他の(例えば、隣接する)チャネルの中心周波数が-femaxから+femaxまでの間に含まれることがあり得る。
【0079】
この場合、信号の強度/レベルのピークが複数存在することになり、強度検出部4や自動利得制御部8において、検出対象のチャネルの信号ではなくて他のチャネルの信号の強度/レベルのピークが検出される(別言すると、選択される)ことがあり得る。
【0080】
そこで、図3(B)に示すように、検出対象のチャネルについては通信で使用する周波数帯域よりも周波数帯域が狭い信号が送信側装置から送信され、受信側装置において前記周波数帯域が狭い信号が利用されるようにしてもよい。
【0081】
受信側装置(具体的には、強度検出部4,自動利得制御部8)は、すなわち、信号の強度/レベルの複数のピークのうち、他の信号の強度/レベルのピークの幅(別言すると、すその広がり)と比べてピークの幅が狭い信号を検出対象のチャネルの信号として特定したうえで、前記特定された検出対象のチャネルの信号の強度/レベルのピークに基づいてピーク時カウンタ値Cpeak(または、極小時カウンタ値Cmin)を特定する。
【0082】
この場合、周波数帯域が狭い信号が、送信側装置から、予め定められる所定の時間だけ送信されたり、検出対象のチャネルについての信号の強度/レベルのピークを検出する処理が終了したことを通知する信号が受信側装置から送信側装置へと送信されるまで送信されたりする。
【0083】
実施の形態1,2に係る復調回路1によれば、クロック同期に依らずに周波数誤差を検出することができるため、低シンボルレートにおいても高速で周波数誤差を検出することが可能となり、延いては、シンボルレートに関わらず同じ制御フローで高い検出精度と引き込み時間の短縮との両立を実現することが可能となる。実施の形態1,2に係る復調回路1によれば、また、シンボル周波数ごとに異なる周波数誤差を補正する制御は不要となる。
【0084】
実施の形態1,2に係る復調回路1によれば、キャリア再生回路5におけるキャリア同期(位相誤差の補正)および同期検出部7における既知パターン同期(位相の同期/非同期の検出・判定)を経ることなく自動周波数制御が完了するので、引き込み時間を短縮することが可能となる。
【0085】
実施の形態2に係る復調回路1によれば、復調回路としてレベル調整がもとより必要とされる場合に設けられることが考えられる自動利得制御部8を活用するようにしているので、回路構成が複雑になることを抑制しつつ高い検出精度と引き込み時間の短縮との両立を実現することが可能となる。
【0086】
実施の形態1,2に係る復調回路1によれば、通信で使用する周波数帯域よりも周波数帯域が狭い信号について強度が測定されるようにした場合には、検出対象のチャネルについての信号の強度/レベルのピークを確実に検出することが可能となる。
【0087】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0088】
例えば、キャリア再生回路5,復調部6,および同期検出部7は、この発明では特定の構成に限定されるものではなく、上記の実施の形態における構成には限定されない。
【符号の説明】
【0089】
1 復調回路
2 自動周波数制御回路(AFC)
21 周波数制御部
22 AFC用の数値制御発振器(NCO)
23 AFC用の乗算器
3 ロールオフフィルタ(ROF)
4 強度検出部
5 キャリア再生回路(CR)
51 位相誤差検出部
52 ローパスフィルタ
53 CR用の数値制御発振器(NCO)
54 CR用の乗算器
6 復調部
7 同期検出部
8 自動利得制御部
図1
図2
図3