(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071238
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】トランス巻数検査回路
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20230516BHJP
G01R 29/20 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01F30/10 Z
G01R29/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183878
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 弘行
(57)【要約】
【課題】巻数比の高いトランスでも正確にコイル巻数を検査可能な回路を提供する。
【解決手段】トランス巻数検査回路(1)は、基準トランス(CT1)及び被検査トランス(CT2)の一次側コイルどうし(Np1及びNp2)及び二次側コイルどうし(Ns1及びNs2)をそれぞれ同相直列接続可能に構成されており、基準トランスの二次側コイルの両端間に形成される基準側ループ回路(Lp1)に含まれる基準側抵抗素子(R1)と、被検査トランスの二次側コイルの両端間に形成される被検査側ループ回路(Lp2)に含まれる被検査側抵抗素子(R2)と、基準側ループ回路及び被検査側ループ回路の共通ラインであって基準トランス及び被検査トランスの二次側コイル間の中点と基準側抵抗素子及び被検査側抵抗素子の中点とを結ぶ共通ラインに設けられた電圧検出手段(Rd)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準トランスを基準として被検査トランスのコイル巻数を検査可能なトランス巻数検査回路であって、
前記基準トランス及び前記被検査トランスの一次側コイルに交流電力を供給可能に構成されており、
前記基準トランス及び前記被検査トランスの一次側コイルどうし及び二次側コイルどうしをそれぞれ同相直列接続可能に構成されており、
前記基準トランスの二次側コイルの両端間に形成される基準側ループ回路に含まれる基準側抵抗素子と、
前記被検査トランスの二次側コイルの両端間に形成される被検査側ループ回路に含まれる被検査側抵抗素子と、
前記基準側ループ回路及び前記被検査側ループ回路の共通ラインであって前記基準トランス及び前記被検査トランスの二次側コイル間の中点と前記基準側抵抗素子及び前記被検査側抵抗素子の中点とを結ぶ該共通ラインに設けられた電圧検出手段と、
を備えるトランス巻数検査回路。
【請求項2】
前記被検査側抵抗素子は、前記基準側抵抗素子と抵抗値が同じであり、
前記電圧検出手段は、前記基準側抵抗素子及び前記被検査側抵抗素子よりも抵抗値が高い抵抗素子である、
請求項1に記載のトランス巻数検査回路。
【請求項3】
前記電圧検出手段で検出される交流電圧を整流して直流電圧に変換する整流回路と、
前記整流回路で変換された前記直流電圧を基準電圧と比較する比較器と、
前記比較器の出力に基づいて前記被検査トランスのコイル巻数の検査結果を出力する出力手段と、
を更に備える請求項1又は2に記載のトランス巻数検査回路。
【請求項4】
前記基準トランス及び前記被検査トランスは複数の二次側コイルをそれぞれ有しており、
前記基準トランス及び前記被検査トランスそれぞれ一つずつの二次側コイルどうしを同相直列接続可能であって、前記基準トランスの二次側コイルごとに該二次側コイルの両端間に一つの基準側ループ回路がそれぞれ形成可能であって、前記被検査トランスの二次側コイルごとに該二次側コイルの両端間に一つの被検査側ループ回路がそれぞれ形成可能に構成されており、
前記基準側抵抗素子は、各基準側ループ回路にそれぞれ設けられており、
前記被検査側抵抗素子は、各被検査側ループ回路にそれぞれ設けられており、
前記電圧検出手段は、前記基準側ループ回路及び前記被検査側ループ回路の共通ラインであって同相直列接続されている前記基準トランス及び前記被検査トランスの二次側コイル間の中点と該基準側ループ回路に設けられた前記基準側抵抗素子と該被検査側ループ回路に設けられた前記被検査側抵抗素子との中点とを結ぶ共通ラインに設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のトランス巻数検査回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスのコイル巻数を検査する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスは一次側コイルと二次側コイルの巻数比によって変圧比或いは変流比が変化することから、トランスの品質の維持には、トランスの一次側及び二次側コイル(巻線)が仕様通りの適切な巻数となっている必要がある。
下記特許文献1には、交流電源に一次側を接続した被試験変圧器及び標準変圧器の二次側を誘起電圧が逆方向になるよう接続し、その差電圧を増幅して取り出すようにした電磁コイルの巻数比試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の試験装置では、カレントトランスや高圧トランスのように巻数比の高いトランスにおいて正確に検査ができない可能性がある。例えば、巻数比200対1、400対1のようなトランスにおいて巻数1回の違いを検出することは困難である。
本発明は、巻数比の高いトランスでも正確にコイル巻数を検査可能な回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、基準トランスを基準として被検査トランスのコイル巻数を検査可能なトランス巻数検査回路であって、前記基準トランス及び前記被検査トランスの一次側コイルに交流電力を供給可能に構成されており、前記基準トランス及び前記被検査トランスの一次側コイルどうし及び二次側コイルどうしをそれぞれ同相直列接続可能に構成されており、前記基準トランスの二次側コイルの両端間に形成される基準側ループ回路に含まれる基準側抵抗素子と、前記被検査トランスの二次側コイルの両端間に形成される被検査側ループ回路に含まれる被検査側抵抗素子と、前記基準側ループ回路及び前記被検査側ループ回路の共通ラインであって前記基準トランス及び前記被検査トランスの二次側コイル間の中点と前記基準側抵抗素子及び前記被検査側抵抗素子の中点とを結ぶ該共通ラインに設けられた電圧検出手段とを備えるトランス巻数検査回路が提供される。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、巻数比の高いトランスでも正確にコイル巻数を検査可能な回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第一実施形態におけるトランス巻数検査回路の回路図である。
【
図2】第二実施形態におけるトランス巻数検査回路の回路図である。
【
図3】第三実施形態におけるトランス巻数検査回路の回路図である。
【
図4】第一実施形態のトランス巻数検査回路における二次側の各ポイントでの電圧の測定結果を示す表である。
【
図5】第一実施形態におけるトランス巻数検査回路の応用回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態の例(以降、本実施形態と表記する)について説明する。なお、以下に挙げる各実施形態はそれぞれ例示であり、本発明は以下の実施形態の構成に限定されない。
【0009】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態におけるトランス巻数検査回路1の回路図である。
トランス巻数検査回路1は、基準トランスCT1を基準として被検査トランスCT2のコイル巻数を検査可能な回路であり、以降、検査回路1と略称する場合もある。即ち、検査回路1によれば、被検査トランスCT2のコイル巻数が基準トランスCT1のコイル巻数と一致しているか否かを検査することができる。
本明細書においてトランスのコイル巻数と表記する場合には、トランスの一次側コイルの巻数及び二次側コイルの巻数、或いはトランスの一次側コイル及び二次側コイルの巻数比を意味するものとする。
本実施形態によれば、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2が、カレントトランス、高圧トランス、昇圧トランスのような巻数比が比較的高いトランス、或いは巻数比が低い他のトランスであっても検査が可能である。
本実施形態では、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2がカレントトランスであることを想定し、各トランスの一次側コイルNp1及びNp2のコイル巻数は同じであると仮定する。
【0010】
〔回路構成〕
検査回路1は、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の一次側コイルNp1及びNp2に交流電力を供給可能に構成されている。本実施形態では、検査回路1は、交流電力を供給する電源の出力端子に接続可能な電源端子PT1及びPT2を備えており、
図1の例では、正弦波定電流電源(以降、電源と略称する場合もある)PSの出力端子が電源端子PT1及びPT2にそれぞれ接続されている。
電源PSは、一定の交流電力を供給可能であればよく、その具体的な仕様は限定されない。
検査回路1は、電源PSを回路構成要素として含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0011】
検査回路1は、
図1に示されるように、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2における一次側コイルどうし(Np1及びNp2)、二次側コイルどうし(Ns1及びNs2)をそれぞれ同相直列接続可能に構成されている。
「コイルどうしの同相直列接続」とは、両方のコイルの極性(巻線方向)が同じになるように、一方のコイルの正極側端子と他方のコイルの負極側端子とを直列に接続することを意味する。
このため、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2が検査回路1に接続されている状態において、一次側コイルNp1及びNp2は次のように接続される。電源端子PT1に繋がる導線に基準トランスCT1の一次側コイルNp1の負極側端子が接続され、その一次側コイルNp1の正極側端子と被検査トランスCT2の一次側コイルNp2の負極側端子とが直列に配線されている。そして、電源端子PT2に繋がる導線にその一次側コイルNp2の正極側端子が接続される。
【0012】
検査回路1は、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の二次側には、基準トランスCT1の二次側コイルNs1の両端間に形成される基準側ループ回路Lp1及び被検査トランスCT2の二次側コイルNs2の両端間に形成される被検査側ループ回路Lp2を備えている。基準側ループ回路Lp1及び被検査側ループ回路Lp2は、一部の配線を共有しており、その共有している配線を共有ラインと表記する。
そして、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2が検査回路1に接続されている状態において、基準トランスCT1の二次側コイルNs1の正極側端子と被検査トランスCT2の二次側コイルNs2の負極側端子とが直列に配線されるように、当該二次側コイルNs1の正極側端子及び負極側端子を基準側ループ回路Lp1に接続し、当該二次側コイルNs2の正極側端子及び負極側端子を被検査側ループ回路Lp2に接続する。
【0013】
検査回路1は、基準トランスCT1を固定的に備えており、被検査トランスCT2のみを他の被検査トランスに交換可能に構成されていてもよい。
この場合には、例えば、検査回路1は、基準トランスCT1の一次側コイルNp1の正極側端子に繋がる第一接続端子、電源端子PT2に繋がる第二接続端子、並びに被検査側ループ回路Lp2に被検査トランスCT2の二次側コイルNs2を接続するための第三及び第四接続端子を更に備える(図示せず)。被検査トランスCT2の二次側コイルNs2の負極側端子に接続するための第三接続端子は、基準トランスCT1の二次側コイルNs1の正極側端子に繋がる導線の一端に設けられる。
そして、検査のために準備された被検査トランスCT2の一次側コイルNp2の負極側端子を上記第一接続端子に接続し、その一次側コイルNp2の正極側端子を上記第二接続端子に接続する。更に、その被検査トランスCT2の二次側コイルNs2の負極側端子を上記第三接続端子に接続し、その二次側コイルNs2の正極側端子を上記第四接続端子に接続する。
【0014】
検査回路1は、被検査トランスCT2のみでなく、基準トランスCT1も他の基準トランスに交換可能に構成されていてもよい。この場合、例えば、巻数比200対1の基準トランスから巻数比400対1の基準トランスに交換可能とされる。
この場合には、検査回路1は、上述の第一接続端子から第四接続端子に加えて、電源端子PT1に繋がる第五接続端子、上記第一接続端子に繋がる第六接続端子、並びに基準側ループ回路Lp1に基準トランスCT1の二次側コイルNs1を接続するための第七及び第八接続端子を更に備える(図示せず)。基準トランスCT1の二次側コイルNs1の正極側端子に接続するための第八接続端子は、被検査トランスCT2の二次側コイルNs2の負極側端子に繋がる導線の一端に設けられる。
そして、交換のために準備された基準トランスCT1の一次側コイルNp1の負極側端子を上記第五接続端子に接続し、その一次側コイルNp1の正極側端子を上記第六接続端子に接続する。更に、その基準トランスCT1の二次側コイルNs1の負極側端子を上記第七接続端子に接続し、その二次側コイルNs1の正極側端子を上記第八接続端子に接続する。
【0015】
但し、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2における一次側コイルどうし(Np1及びNp2)、二次側コイルどうし(Ns1及びNs2)がそれぞれ同相直列接続可能とされていればよいため、一次側コイルNp1及びNp2、並びに二次側コイルNs1及びNs2は、
図1に示される極性とは逆の極性となるようにそれぞれ接続されていてもよい。
【0016】
検査回路1は、基準側抵抗素子R1、被検査側抵抗素子R2及び電圧検出抵抗素子Rdを更に備えている。
基準側抵抗素子R1は、基準側ループ回路Lp1(共通ライン以外)に設けられており、被検査側抵抗素子R2は、被検査側ループ回路Lp2(共通ライン以外)に設けられている。
電圧検出抵抗素子Rdは、基準側ループ回路Lp1及び被検査側ループ回路Lp2の共通ラインであって基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の二次側コイルNs1及びNs2間の中点(接続点)と基準側抵抗素子R1及び被検査側抵抗素子R2の中点とを結ぶ共通ラインに設けられている。
【0017】
基準側抵抗素子R1及び被検査側抵抗素子R2は同じ抵抗値の抵抗素子であり、電圧検出抵抗素子Rdは、基準側抵抗素子R1及び被検査側抵抗素子R2よりも抵抗値が高い抵抗素子である。
【0018】
〔動作〕
以下、上述のような構成を有する第一実施形態における検査回路1の動作を説明する。
【0019】
まず、検査回路1に基準トランスCT1及び被検査トランスCT2が
図1に示すように接続されている状態で、電源PSから一定の交流電力が基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の一次側コイルNp1及びNp2に供給される。これにより、一次側コイルNp1及びNp2にはそれぞれ同レベルの電流が流れる。
【0020】
一次側コイルNp1及びNp2に電流が流れることで基準トランスCT1及び被検査トランスCT2にはそれぞれ磁界が生じ、二次側コイルNs1及びNs2に誘導起電力が生じる。このとき、二次側コイルNs1及びNs2に誘起される電力は、基準トランスCT1の巻線比及び被検査トランスCT2の巻線比に応じて増幅される。
【0021】
ここで、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2のコイル巻数が同じ場合には、各トランスの巻数比に応じた同じレベルの電流が基準トランスCT1の二次側コイルNs1及び被検査トランスCT2の二次側コイルNs2にそれぞれ流れることになる。
これにより、二次側コイルNs1及びNs2、並びに基準側抵抗素子R1及び被検査側抵抗素子R2で形成されるループ回路に電流が流れ、基準側ループ回路Lp1及び被検査側ループ回路Lp2の共通ラインには電流が流れない。但し、ここでの「電流が流れない」との表記は、理想的な回路では電流が完全に流れないことを意味するが、実回路では微小電流が流れることを許容するものである。この微小電流については実施例の項で詳述する。
結果、当該共通ラインに設けられた電圧検出抵抗素子Rdには電圧が生じないこととなる。
【0022】
一方で、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2のコイル巻数が異なる場合には、二次側コイルNs1及びNs2に誘起される電力に差異が生じるため、基準側抵抗素子R1及び被検査側抵抗素子R2にかかる電圧にも差異が生じ、基準側ループ回路Lp1及び被検査側ループ回路Lp2にはそれぞれ異なるレベルの電流が流れることになる。
結果、当該共通ラインにも電流が流れ、電圧検出抵抗素子Rdに電圧が生じることになる。
【0023】
このように本実施形態では、電圧検出抵抗素子Rdは、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の二次側コイルNs1及びNs2間の中点(接続点)と基準側抵抗素子R1及び被検査側抵抗素子R2の中点との電位差を検出する。また、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2のコイル巻数が異なる場合には、二次側コイルNs1に生じる電圧と二次側コイルNs2との中点(接続点)に生じる電圧に位相差が生じるため、電圧検出抵抗素子Rdはその位相差も検出することができる。
また、基準側抵抗素子R1及び被検査側抵抗素子R2の抵抗値が同じとされ、かつ電圧検出抵抗素子Rdの抵抗値がそれらよりも高く設定されることにより、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2のコイル巻数に関係しない誤差レベルの電位差が電圧検出抵抗素子Rdで検出されることを抑制することができる。
【0024】
従って、本実施形態によれば、電圧検出抵抗素子Rdに生じる電圧を検出することで、被検査トランスCT2のコイル巻数が基準トランスCT1のコイル巻数と一致しているか否かを検査することができる。更に言えば、電圧検出抵抗素子Rdを基準側ループ回路Lp1及び被検査側ループ回路Lp2の共通ラインに設けることで、電圧の位相差及び電流レベルの差を検出することができるため、巻数比の高いトランスでも正確にコイル巻数が検査可能となる。
【0025】
[第二実施形態]
図2は、第二実施形態における検査回路1の回路図である。
第二実施形態は、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2が複数の二次側コイルを有する点において第一実施形態と異なる。
以下、第二実施形態における検査回路1について第一実施形態と異なる内容を中心に説明し、第一実施形態と同一内容については適宜省略する。
【0026】
図2の例では、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2は、二つの二次側コイル(Ns11及びNs12)及び(Ns21及びNs22)をそれぞれ有している。
第二実施形態における検査回路1は、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の全ての二次側コイルNs11、Ns12、Ns21及びNs22を同相直列接続可能に構成されている。具体的には、基準トランスCT1において二次側コイルNs11の正極側端子と二次側コイルNs12の負極側端子とが直列に配線され、その二次側コイルNs12の正極側端子と被検査トランスCT2の二次側コイルNs22の負極側端子とが直列に配線され、その二次側コイルNs22の正極側端子と二次側コイルNs21の負極側端子とが直列に配線される。その上で、基準トランスCT1の二次側コイルNs11の負極側端子と基準トランスCT1の二次側コイルNs12の正極側端子とが基準側ループ回路Lp1に接続され、被検査トランスCT2の二次側コイルNs22の負極側端子と被検査トランスCT2の二次側コイルNs21の正極側端子とが被検査側ループ回路Lp2に接続される。
【0027】
このような回路構成によれば、一次側コイルの巻数に対する二次側コイルの合計巻数の比が基準トランスCT1及び被検査トランスCT2で一致しない場合には、基準側ループ回路Lp1及び被検査側ループ回路Lp2の共通ラインに電流が流れ、電圧検出抵抗素子Rdに電圧が生じる。
結果、複数の二次側コイルで構成されているトランスを検査対象とする場合でも、電圧検出抵抗素子Rdの電圧を検出することにより、被検査トランスCT2のコイル巻数が基準トランスCT1のコイル巻数と一致しているか否かを検査することができる。
【0028】
図2の例では、2つの二次側コイルを有するトランスが対象とされているが、3つ以上の二次側コイルを有するトランスでも、3つ以上の二次側コイルを同相直列接続することで、同様の効果を得ることができる。
【0029】
[第三実施形態]
図3は、第三実施形態における検査回路1の回路図である。
第三実施形態は、第二実施形態と同様に、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2が複数の二次側コイルを有する場合の形態であるが、第二実施形態とは異なる回路構成となっている。
以下、第三実施形態における検査回路1について第一実施形態及び第二実施形態と異なる内容を中心に説明し、第一実施形態又は第二実施形態と同一内容については適宜省略する。
【0030】
図3の例では、
図2と同様に、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2は二つの二次側コイル(Ns11及びNs12)及び(Ns21及びNs22)をそれぞれ有している。
第三実施形態における検査回路1は、基準トランスCT1の一つの二次側コイルNs11と被検査トランスCT2の一つの二次側コイルNs21とを同相直列接続可能に構成されており、基準トランスCT1の他の一つの二次側コイルNs12と被検査トランスCT2の他の一つの二次側コイルNs22とを同相直列接続可能に構成されている。
その上で、検査回路1は、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の一つの二次側コイルにつき一つのループ回路がそれぞれ形成されるように構成されている。具体的には、基準トランスCT1の二次側コイルNs11の両端間に基準側ループ回路Lp11が形成され、基準トランスCT1の二次側コイルNs12の両端間に基準側ループ回路Lp12が形成され、被検査トランスCT2の二次側コイルNs21の両端間に被検査側ループ回路Lp21が形成され、被検査トランスCT2の二次側コイルNs22の両端間に被検査側ループ回路Lp22が形成される。
これにより、同相直列接続される二次側コイルNs11及び二次側コイルNs21の各両端間に形成される基準側ループ回路Lp11及び被検査側ループ回路Lp21は一部に共通ラインを含んでいる。同様に、同相直列接続される二次側コイルNs12及び二次側コイルNs22の各両端間に形成される基準側ループ回路Lp12及び被検査側ループ回路Lp22は一部に共通ラインを含んでいる。
【0031】
更に、第三実施形態における検査回路1は、基準側抵抗素子、被検査側抵抗素子及び電圧検出抵抗素子を各トランスの二次側コイルの数と同数ずつ備えている。具体的には、検査回路1は、二つの基準側抵抗素子R11及びR12、二つの被検査側抵抗素子R21及びR22、二つの電圧検出抵抗素子Rd1及びRd2を有している。
基準側抵抗素子R11は基準側ループ回路Lp11に設けられており、基準側抵抗素子R12は基準側ループ回路Lp12に設けられており、被検査側抵抗素子R21は被検査側ループ回路Lp21に設けられており、被検査側抵抗素子R22は被検査側ループ回路Lp22に設けられている。
そして、電圧検出抵抗素子Rd1は、基準側ループ回路Lp11及び被検査側ループ回路Lp21の共通ラインであって同相直列接続される基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の二次側コイルNs11及びNs21間の中点と基準側抵抗素子R11と被検査側抵抗素子R21との中点とを結ぶ共通ラインに設けられている。電圧検出抵抗素子Rd2は、基準側ループ回路Lp12及び被検査側ループ回路Lp22の共通ラインであって同相直列接続される基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の二次側コイルNs12及びNs22間の中点と基準側抵抗素子R12と被検査側抵抗素子R22との中点とを結ぶ共通ラインに設けられている。
【0032】
第三実施形態では、上述したように、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の一つの二次側コイルにつき一つのループ回路がそれぞれ形成され、同相直列接続されている基準トランスCT1及び被検査トランスCT2それぞれ一つの二次側コイルの中点と、各ループ回路の基準側抵抗素子及び被検査側抵抗素子の中点との電位差がそれらループ回路の共通ラインに設けられた電圧検出抵抗素子により検出される。
従って、第三実施形態によれば、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の複数の二次側コイルをトランスごとに一つずつの二次側コイルのペア間でコイル巻数の検査を行うことができる。例えば、基準トランスCT1の複数の二次側コイルの合計巻数と被検査トランスCT2の複数の二次側コイルの合計巻数とが同じであるが、個々の二次側コイルの巻数が基準トランスCT1と被検査トランスCT2との間で異なる場合であっても、第三実施形態によれば、その巻数の相違を正確に検出することができる。
【0033】
図3の例では、2つの二次側コイルを有するトランスが対象とされているが、3つ以上の二次側コイルを有するトランスでも、上述のような回路構成とすることで、同様の効果を得ることができる。即ち、検査回路1が、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2それぞれ一つずつの二次側コイルどうしを同相直列接続可能であって、基準トランスCT1の二次側コイルごとにそれの両端間に一つの基準側ループ回路がそれぞれ形成可能であって、被検査トランスCT2の二次側コイルごとにそれの両端間に一つの被検査側ループ回路がそれぞれ形成可能に構成されており、基準側抵抗素子は、各基準側ループ回路にそれぞれ設けられており、被検査側抵抗素子は、各被検査側ループ回路にそれぞれ設けられており、電圧検出抵抗素子は、基準側ループ回路及び被検査側ループ回路の共通ラインであって同相直列接続されている基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の二次側コイル間の中点とその基準側ループ回路に設けられた基準側抵抗素子とその被検査側ループ回路に設けられた被検査側抵抗素子との中点とを結ぶ共通ラインに設けられているようにすればよい。
【0034】
[変形例]
上述の各実施形態における検査回路1はそれぞれ一例である。上述の各実施形態における検査回路1は、上述の構成のみに限定されるわけではなく、部分的に適宜変形されてもよい。
例えば、上述の各実施形態において、電圧検出抵抗素子を電圧検出のためのトランスに置き換えることができる。例えば、上述の各実施形態の電圧検出抵抗素子に代えて電圧検出トランスの一次側コイルを配置し、その電圧検出トランスの二次側の回路で検出された電圧を用いて、被検査トランスCT2のコイル巻数が基準トランスCT1のコイル巻数と一致しているか否かを判定するようにすればよい。
上述の各実施形態における電圧検出抵抗素子及び本変形例における電圧検出トランスは、電圧検出手段と表記することができる。
【0035】
以下に実施例を挙げ、上述の内容を更に詳細に説明する。但し、以下の実施例の記載は、上述の内容に何ら限定を加えるものではない。
【実施例0036】
実施例1では、上述の第一実施形態の効果を実証した結果を示す。
実施例1では、
図1に示される第一実施形態の検査回路1が用いられ、正弦波定電流電源PSから定格電流(周波数100kHz、10Arms)を基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の一次側コイルNp1及びNp2に入力して、二次側コイルNs1及びNs2、基準側抵抗素子R1、被検査側抵抗素子R2、電圧検出抵抗素子Rdにかかる電圧を測定した。
【0037】
また、実施例1では、基準トランスCT1を巻数比200対1のトランスとし、抵抗値80Ωの基準側抵抗素子R1及び被検査側抵抗素子R2、並びに抵抗値10kΩの電圧検出抵抗素子Rdを採用した。
また、被検査トランスCT2として14種類のサンプルトランスが準備され、その準備された検査対象用の14種類のサンプルトランスが順次交換されて、各ポイントでの電圧を測定した。
14種類のサンプルトランスは次のとおりである。
・サンプル198T-01=巻数比198対1のサンプルトランス
・サンプル198T-02=巻数比198対1のサンプルトランス
・サンプル198T-03=巻数比198対1のサンプルトランス
・サンプル199T-01=巻数比199対1のサンプルトランス
・サンプル199T-02=巻数比199対1のサンプルトランス
・サンプル199T-03=巻数比199対1のサンプルトランス
・サンプル200T-02=巻数比200対1のサンプルトランス
・サンプル200T-03=巻数比200対1のサンプルトランス
・サンプル201T-01=巻数比201対1のサンプルトランス
・サンプル201T-02=巻数比201対1のサンプルトランス
・サンプル201T-03=巻数比201対1のサンプルトランス
・サンプル202T-01=巻数比202対1のサンプルトランス
・サンプル202T-02=巻数比202対1のサンプルトランス
・サンプル202T-03=巻数比202対1のサンプルトランス
このように実施例1では、基準トランスCT1とはコイル巻数が1巻きから2巻き異なるサンプルトランスをそれぞれ複数個準備して巻数の差異が検出できることを実測により確認した。
【0038】
図4は、第一実施形態のトランス巻数検査回路1における二次側の各ポイントでの電圧の測定結果を示す表である。
図4には、基準側抵抗素子R1で実測された電圧(Vr1)、被検査側抵抗素子R2で実測された電圧(Vr2)、基準トランスCT1の二次側コイルNs1で実測された電圧(Vns1)、被検査トランスCT2の二次側コイルNs2で実測された電圧(Vns2)、及び電圧検出抵抗素子Rdで実測された電圧(Vrd)がそれぞれ実効値(Vrms)で示されている。
【0039】
図4によれば、基準トランスCT1とコイル巻数が同じサンプルトランス(200T-02及び200T-03)が被検査トランスCT2とされた場合には、電圧検出抵抗素子Rdで生じる電圧が0.125Vrms及び0.261Vrmsであるのに対して、基準トランスCT1とコイル巻数が1回以上多い又は少ないサンプルトランスが被検査トランスCT2とされた場合には、電圧検出抵抗素子Rdで生じる電圧が2.013Vrms以上となっていることが分かる。即ち、被検査トランスCT2のコイル巻数が基準トランスCT1と同じ場合と1巻きでも異なる場合とで、電圧検出抵抗素子Rdで計測される電圧に大きな差(約10倍)が現れている。
従って、実施例1によれば、電圧検出抵抗素子Rdに生じる電圧により、被検査トランスCT2のコイル巻数が基準トランスCT1のコイル巻数と一致しているか否かを検査することができること、更に言えば、巻数比が比較的高いトランスにおいてコイル巻数1巻きの違いでも正確に検出できることが実証された。
本応用回路は、電源回路、発振回路、定電流電源回路DS及び直列共振型ハーフブリッジインバーター回路(以降、インバーター回路と略称する場合もある)10を更に含んでおり、これらにより正弦波定電流を検査回路1における基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の一次側コイルNp1及びNp2に供給する。
インバーター回路10は、FET(Field Effect Transistor)駆動回路FM、抵抗素子R101及びR102、トランジスタQ101及びQ102、コンデンサC101、コイルL101等を有している。
コンデンサC101及びコイルL101は、基準トランスCT1及び被検査トランスCT2の一次側コイルNp1及びNp2を介して直列に接続されており、直列共振回路を構成する。この直列共振回路は、トランジスタQ101のソースに接続されると共に、トランジスタQ102のドレイン・ソース間に設けられている。これにより、トランジスタQ101がオン状態でかつトランジスタQ102がオフ状態である場合には、コイルL101からコンデンサC101に向けて電流が流れるのに対して、トランジスタQ101がオフ状態でトランジスタQ102がオン状態である場合には、コンデンサC101に蓄電された電力によりコンデンサC101からコイルL101に向けて電流が流れる。
このようにFET駆動回路FMがトランジスタQ101及びQ102のON状態及びOFF状態を交互に切り替えることで、コンデンサC101及びコイルL101を共振させて正弦波電流を一次側コイルNp1及びNp2に供給している。
また、本応用回路は、インバーター回路10から一次側コイルNp1及びNp2に流れる電流を検出して、定電流電源回路DSへフィードバック信号を送る回路構成要素を更に含んでいる。このような回路構成要素としては、カレントトランスCT100、抵抗素子R201、R202及びR203、ダイオードD201、D202、D203及びD204、コンデンサC201が設けられている。
インバーター回路10から一次側コイルNp1及びNp2に流れる電流がカレントトランスCT100の一次側コイルにも流れ、これによりカレントトランスCT100の二次側コイルNcにもコイル巻数比に応じた電流が誘起される。当該二次側コイルNcで誘起された交流電力は、抵抗素子R201、R202及びR203、ダイオードD201、D202、D203及びD204、並びにコンデンサC201により整流及び平滑化されて直流電圧に変換され、定電流電源回路DSに直流電圧信号としてフィードバックされる。
定電流電源回路DSは、この直流電圧信号のフィードバックを受けて、インバーター回路10に一定の電力を提供できるように制御する。
更に、本応用回路は、検査回路1の電圧検出抵抗素子Rdに生じる電圧に応じて、被検査トランスCT2のコイル巻数が基準トランスCT1のコイル巻数と一致しているか否かを判定し、その判定結果を提示するための回路構成要素を含んでいる。このような回路構成要素としては、ダイオードD301、コイルC301、抵抗素子R301、及び判定提示回路30が設けられている。
電圧検出抵抗素子Rdにかかる交流電圧は、ダイオードD301、コイルC301及び抵抗素子R301で整流及び平滑化されることで直流電圧(以降、検出電圧と表記される場合もある)に変換され、判定提示回路30に入力される。このため、少なくともダイオードD301は、電圧検出抵抗素子Rdで検出される交流電圧を整流して直流電圧に変換する整流回路と表記できる。
判定提示回路30では、当該検出電圧が比較器CM1の反転端子に入力され、一方で電源回路から供給される直流電力が抵抗素子R302及びR303で分圧されて基準電圧として比較器CM1の非反転端子及び比較器CM2の反転端子に入力される。
比較器CM1は、検出電圧のレベルが基準電圧のレベルに対して高い(HI)か低い(LOW)かを判定し、HI/LOWを比較器CM2の非反転端子に入力する。比較器CM2は、比較器CM1のHI/LOW出力と基準電圧とを比較して結果を出力し、比較器CM2の出力によりLED素子のON/OFFが切り替えられる。
このため、比較器CM1及びCM2は、整流回路で変換された直流電圧を基準電圧と比較する比較器と表記することができ、LED素子は、比較器の出力に基づいて被検査トランスのコイル巻数の検査結果を出力する出力手段と表記することができる。
これにより、本応用回路では、電圧検出抵抗素子Rdで検出された電圧が所定閾値よりも高い場合には、被検査トランスCT2のコイル巻数が基準トランスCT1のコイル巻数と一致していないと判定して、LED素子がON状態とされ(点灯し)、電圧検出抵抗素子Rdで検出された電圧が所定閾値よりも低い場合には、被検査トランスCT2のコイル巻数が基準トランスCT1のコイル巻数と一致していると判定して、LED素子がOFF状態とされる(消灯する)。
従って、本応用回路によれば、LED素子の点灯状態を見ることで、被検査トランスCT2のコイル巻数が基準トランスCT1のコイル巻数と一致しているか否かを直ちに判定することができる。
実施例2の応用回路では、被検査トランスのコイル巻数の検査結果を出力する出力手段としてLED素子が用いられたが、検査結果を音で出力する発音素子等のような他の出力手段が用いられてもよい。