(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071262
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】車両用給電システム
(51)【国際特許分類】
F25B 27/02 20060101AFI20230516BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230516BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20230516BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20230516BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20230516BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20230516BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20230516BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20230516BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20230516BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20230516BHJP
F24F 7/00 20210101ALI20230516BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
F25B27/02 A
H02J7/00 P
H02J7/00 301
H02J7/00 301D
H02J50/10
H02J50/12
H02J50/80
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
B60L53/30
F24F7/007 B
F24F7/00 Z
E04H6/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183918
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】新妻 素直
【テーマコード(参考)】
3L056
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
3L056BA04
3L056BD02
3L056BF06
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503CB13
5G503DA04
5G503EA08
5G503FA06
5G503FA19
5G503GB08
5G503GD03
5G503GD06
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC07
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC25
5H125BE02
5H125CD05
5H125EE26
5H125EE64
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】車両への給電の際に発生する熱を効率よく回収して利用する。
【解決手段】車両Vに給電する車両用給電システム1は、給電ユニット2と、熱を回収し、回収した熱を熱供給対象に供給する熱供給ユニットとを備える。給電ユニット2は、車両Vを格納する格納部10と、格納部10に格納された車両Vに給電する給電部20とを備える。熱供給ユニットは、格納部10内の熱を回収する熱回収部と、回収された熱を熱供給対象に放出する熱放出部とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に給電する車両用給電システムであって、
前記車両に給電する給電ユニットと、
熱を回収し、回収した前記熱を熱供給対象に供給する熱供給ユニットと、
を備え、
前記給電ユニットは、
前記車両を格納する格納部と、
前記格納部に格納された前記車両に給電する給電部と、
を備え、
前記熱供給ユニットは、
前記格納部内に設置され、前記格納部内の熱を回収する熱回収部と、
前記格納部外に設置され、前記熱回収部で回収された前記熱を前記熱供給対象に放出する熱放出部と、
前記熱回収部で回収された前記熱を前記熱放出部に移動させる熱移動機構と、
を備える、車両用給電システム。
【請求項2】
前記熱移動機構は、前記熱回収部と前記熱放出部との間を移動する熱媒体を有し、
前記熱回収部は、前記熱媒体に前記格納部内の前記熱を伝達し、
前記熱放出部は、前記熱媒体の前記熱を前記熱供給対象に放出する、請求項1に記載の車両用給電システム。
【請求項3】
前記熱供給ユニットは、熱媒体の蒸発工程、圧縮工程、及び凝縮工程を含む熱サイクルを実行し、前記熱供給対象に供給する前記熱を移動させるヒートポンプであり、
前記熱回収部は、前記格納部内の前記熱を回収して前記熱媒体を蒸発させる前記蒸発工程を行う蒸発器を含み、
前記熱移動機構は、前記熱媒体を前記熱回収部から前記熱放出部へ移動させる配管、及び、前記蒸発器で蒸発させられた前記熱媒体を圧縮して昇温する前記圧縮工程を行う圧縮機を含み、
前記熱放出部は、前記圧縮機で昇温させられた前記熱媒体から前記熱供給対象に前記熱を放出し、前記熱媒体を凝縮する前記凝縮工程を行う凝縮器を含む、請求項1に記載の車両用給電システム。
【請求項4】
前記熱回収部は、前記格納部の床面よりも前記格納部の天井に近い位置に設置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用給電システム。
【請求項5】
前記給電部は、前記車両に対して非接触で送電するコイル部を含み、
少なくとも前記コイル部が前記格納部内に設置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両用給電システム。
【請求項6】
前記格納部には、前記車両が出入りするための出入口が設けられており、さらに、前記出入口を開閉する扉部が設けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載の車両用給電システム。
【請求項7】
前記格納部内に設けられ、前記車両を誘導する誘導灯と、
前記誘導灯の点灯の制御を行う点灯制御部と、を更に備え、
前記点灯制御部は、前記扉部が開状態であり且つ前記格納部内に前記車両が存在しない場合に前記誘導灯が点灯した状態となるように前記誘導灯を点灯させ、前記扉部が閉状態である場合に前記誘導灯が消灯した状態となるように前記誘導灯を消灯させる、請求項6に記載の車両用給電システム。
【請求項8】
前記格納部内の温度を計測する温度計測部と、
前記扉部の開閉動作を制御する開閉制御部と、を更に備え、
前記開閉制御部は、前記温度計測部によって計測された前記温度が予め定められた温度閾値以上となった場合、前記扉部を開状態に制御する、請求項6又は7に記載の車両用給電システム。
【請求項9】
前記格納部内の前記車両から、車載バッテリの状態を含むバッテリ状態情報を取得するバッテリ情報取得部と、
前記扉部の開閉動作を制御する開閉制御部と、を更に備え、
前記開閉制御部は、前記バッテリ情報取得部で取得された前記バッテリ状態情報が示す前記車載バッテリの状態が、予め定められた異常状態である場合、前記扉部を開状態に制御する、請求項6又は7に記載の車両用給電システム。
【請求項10】
前記格納部内の温度を計測する温度計測部と、
前記格納部内の空気を外部に排出する換気扇と、
前記換気扇の動作を制御する換気制御部と、を更に備え、
前記換気制御部は、前記温度計測部によって計測された前記温度が予め定められた温度閾値以上となった場合、前記換気扇を作動させて前記格納部内の前記空気を外部に排出させる、請求項1~7及び9のいずれか一項に記載の車両用給電システム。
【請求項11】
複数台の前記車両に対して前記給電ユニットが連続して給電する場合における給電待ちの前記車両の待機リストを生成する待機リスト生成部と、
前記熱供給ユニットにおける前記熱供給対象への前記熱の供給動作を制御する熱供給制御部と、を更に備え、
前記熱供給制御部は、前記待機リストに給電待ちの前記車両が存在する場合、前記熱供給ユニットにおける前記熱供給対象への前記熱の供給状態を維持する、請求項1~10のいずれか一項に記載の車両用給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に給電する車両用給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車等の車両のバッテリを充電するシステムがある。このようなバッテリを充電する場合、バッテリ等において熱が発生する。このため、例えば、特許文献1には、バッテリで発生した熱を回収して利用するシステムが記載されている。このシステムでは、車両に対し、バッテリで暖められた空気を引き込むための導管を接続することによって車両から熱の回収が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、車両に給電(電力を供給)するシステムにおいては、発生した熱をより効率よく回収して利用することが求められる。そこで、本発明は、車両への給電の際に発生する熱を効率よく回収して利用可能な車両用給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、車両に給電する車両用給電システムであって、車両に給電する給電ユニットと、熱を回収し、回収した熱を熱供給対象に供給する熱供給ユニットと、を備え、給電ユニットは、車両を格納する格納部と、格納部に格納された車両に給電する給電部と、を備え、熱供給ユニットは、格納部内に設置され、格納部内の熱を回収する熱回収部と、格納部外に設置され、熱回収部で回収された熱を熱供給対象に放出する熱放出部と、熱回収部で回収された熱を熱放出部に移動させる熱移動機構と、を備える。
【0006】
この車両用給電システムでは、車両を格納する格納部を備えることにより、格納部の内側の空間と外側の空間とを仕切ることができる。これにより車両用給電システムは、車両への給電時に発生した熱を格納部内に留めることができ、格納部内の熱を熱回収部によって効率よく回収することができる。そして、車両用給電システムは、回収した熱を熱放出部に移動させ、熱放出部から熱供給対象に熱を供給することができる。このように、車両用給電システムは、車両への給電の際に発生する熱を効率よく回収して利用することができる。
【0007】
車両用給電システムにおいて、熱移動機構は、熱回収部と熱放出部との間を移動する熱媒体を有し、熱回収部は、熱媒体に格納部内の熱を伝達し、熱放出部は、熱媒体の熱を熱供給対象に放出してもよい。この場合、熱供給ユニットは、熱回収部から熱放出部へ熱媒体を移動させることによって、格納部内の熱を熱供給対象に供給することができる。
【0008】
車両用給電システムにおいて、熱供給ユニットは、熱媒体の蒸発工程、圧縮工程、及び凝縮工程を含む熱サイクルを実行し、熱供給対象に供給する熱を移動させるヒートポンプであり、熱回収部は、格納部内の熱を回収して熱媒体を蒸発させる蒸発工程を行う蒸発器を含み、熱移動機構は、熱媒体を熱回収部から熱放出部へ移動させる配管、及び、蒸発器で蒸発させられた熱媒体を圧縮して昇温する圧縮工程を行う圧縮機を含み、熱放出部は、圧縮機で昇温させられた熱媒体から熱供給対象に熱を放出し、熱媒体を凝縮する凝縮工程を行う凝縮器を含んでもよい。この場合、車両用給電システムは、熱供給ユニットとしてのヒートポンプを用いて、熱供給対象の温度が格納部内の温度より高い場合でもより効率よく格納部内の熱を回収して熱供給対象に熱を供給することができる。
【0009】
車両用給電システムにおいて、熱回収部は、格納部の床面よりも格納部の天井に近い位置に設置されてもよい。暖かい空気は、格納部内における上方位置に溜まりやすい。このため、車両用給電システムでは、熱回収部を天井に近い位置に設置することにより、より効率よく格納部内の熱を回収することができる。
【0010】
車両用給電システムにおいて、給電部は、車両に対して非接触で送電するコイル部を含み、少なくともコイル部が格納部内に設置されていてもよい。ここで、車両に対して非接触で給電を行う場合、コイル部が発熱することがある。このため、車両用給電システムは、給電時に発熱するコイル部を格納部内に設置することにより、コイル部で発生した熱を熱回収部によって効率よく回収することができる。
【0011】
車両用給電システムにおいて、格納部には、車両が出入りするための出入口が設けられており、さらに、出入口を開閉する扉部が設けられていてもよい。この場合、車両用給電システムは、扉部を開状態とすることによって出入口を介して格納部への車両の出入りを可能としつつ、扉部を閉状態とすることによって出入口を介して格納部内の熱が外部に放出されることを抑制できる。
【0012】
車両用給電システムは、格納部内に設けられ、車両を誘導する誘導灯と、誘導灯の点灯の制御を行う点灯制御部と、を更に備え、点灯制御部は、扉部が開状態であり且つ格納部内に車両が存在しない場合に誘導灯が点灯した状態となるように誘導灯を点灯させ、扉部が閉状態である場合に誘導灯が消灯した状態となるように誘導灯を消灯させてもよい。この場合、車両用給電システムは、誘導灯を用いた車両の誘導が必要な場合にのみ誘導灯を点灯させ、それ以外の場合には誘導灯を消灯することにより、誘導灯の点灯に要するエネルギーを低減することができる。
【0013】
車両用給電システムは、格納部内の温度を計測する温度計測部と、扉部の開閉動作を制御する開閉制御部と、を更に備え、開閉制御部は、温度計測部によって計測された温度が予め定められた温度閾値以上となった場合、扉部を開状態に制御してもよい。この場合、車両用給電システムは、扉部を開けて出入口を開放することにより格納部内の熱気を外部に排出することができ、格納部内の温度が上昇しすぎることを抑制できる。
【0014】
車両用給電システムは、格納部内の車両から、車載バッテリの状態を含むバッテリ状態情報を取得するバッテリ情報取得部と、扉部の開閉動作を制御する開閉制御部と、を更に備え、開閉制御部は、バッテリ情報取得部で取得されたバッテリ状態情報が示す車載バッテリの状態が、予め定められた異常状態である場合、扉部を開状態に制御してもよい。この場合、車両用給電システムは、扉部を開けて出入口を開放することによって、格納部内の車両の状態を外部から確認しやすくすることができる。
【0015】
車両用給電システムは、格納部内の温度を計測する温度計測部と、格納部内の空気を外部に排出する換気扇と、換気扇の動作を制御する換気制御部と、を更に備え、換気制御部は、温度計測部によって計測された温度が予め定められた温度閾値以上となった場合、換気扇を作動させて格納部内の空気を外部に排出させてもよい。この場合、車両用給電システムは、換気扇を作動させて格納部内の熱気を外部に排出することができ、格納部内の温度が上昇しすぎることを抑制できる。
【0016】
車両用給電システムは、複数台の車両に対して給電ユニットが連続して給電する場合における給電待ちの車両の待機リストを生成する待機リスト生成部と、熱供給ユニットにおける熱供給対象への熱の供給動作を制御する熱供給制御部と、を更に備え、熱供給制御部は、待機リストに給電待ちの車両が存在する場合、熱供給ユニットにおける熱供給対象への熱の供給状態を維持してもよい。この場合、車両用給電システムは、給電待ちの車両が存在する場合には、格納部内への車両の入替時においても熱供給対象への熱の供給を継続することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、車両への給電の際に発生する熱を効率よく回収して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両用給電システムの車両の移動に関する構成の配置を示す平面図である。
【
図2】
図2は、車両用給電システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1の格納部の内部構成を示す上方から見た断面図である。
【
図4】
図4(a)は、格納部を出口扉側から見た図である。
図4(b)は、格納部の内部構成を示す側方から見た断面図である。
図4(c)は、格納部を入口扉側から見た図である。
【
図5】
図5は、格納部内の熱を回収する構成を説明する概略断面図である。
【
図6】
図6は、ヒートポンプを説明する概略図である。
【
図7】
図7は、車両の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、給電制御装置が実行する給電処理のタスク1の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、給電制御装置が実行する給電処理のタスク2の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、車両が実行する充電処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1変形例に係る格納部の構成を説明する概略断面図である。
【
図12】
図12は、第2変形例に係る格納部の構成を説明する概略断面図である。
【
図13】
図13は、第2変形例に係る格納部の構成を説明する概略断面図である。
【
図14】
図14は、第2変形例に係る格納部の配管周りの構成の変形例を説明する概略断面図である。
【
図15】
図15は、第2変形例に係る格納部の配管周りの構成の変形例を説明する概略断面図である。
【
図16】
図16は、第2変形例に係る格納部の配管周りの構成の変形例を説明する概略断面図である。
【
図17】
図17は、第2変形例に係る格納部の配管周りの構成の変形例を説明する概略断面図である。
【
図18】
図18は、格納部を複数備える車両用給電システムの車両の移動に関する構成の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1に示されるように、車両用給電システム1は、車両Vに対して給電するシステムである。本実施形態における車両Vは、自動で走行する自動運転車両である。車両Vは、車両用給電システム1からの指示に基づいて自動で走行することができる。また、車両Vは、車両用給電システム1からの指示に基づいて自動で走行してある位置に到達し給電を受けることができる。つまり、車両Vは、無人の状態で自動で給電を受けることができる。
【0021】
本実施形態において、車両Vは、一例として、搭載されたバッテリ(車載バッテリ)53(
図5参照)の電力によって走行する電気自動車である。なお、ここでの電気自動車には、動力源として電動モータのみを備える自動車、及び、動力源として電動モータ及び内燃機関を備えるプラグインハイブリッド自動車等を含む。車両Vは、車両用給電システム1から給電を受けてバッテリ53を充電する。
【0022】
車両Vは、バッテリ53の充電を行おうとする場合、給電待車エリアA1内で待機する。車両用給電システム1は、給電待車エリアA1内で待機する車両Vを一時停車エリアA2に誘導し、更に格納部10内に誘導する。車両用給電システム1は、格納部10内において車両Vに給電する。給電終了後、車両用給電システム1は、車両Vを給電終了車エリアA3へ誘導する。
【0023】
本実施形態において、給電待車エリアA1及び給電終了車エリアA3には、それぞれ複数台の車両Vが駐車可能となっている。一時停車エリアA2は、格納部10に進入する車両が一時待機するためのエリアであり、1台の車両Vが停車可能となっている。給電待車エリアA1、一時停車エリアA2、及び給電終了車エリアA3は、車両Vが走行する路面上に予め設定されている。この路面とは、車両Vが走行可能な面であればよく、例えば、建物の内部の床面であってもよく、地面に設けられた路面であってもよい。
【0024】
なお、
図1では、給電待車エリアA1、一時停車エリアA2、及び給電終了車エリアA3の範囲が破線で示されているが、これらのエリアの一部もしくは全部について、白線等によってエリアの境界が示されていてもよく、境界が示されていない状態であってもよい。また、給電待車エリアA1、一時停車エリアA2、及び給電終了車エリアA3内が、これらのエリアの一部もしくは全部について、ペンキ等で塗装された状態であってもよい。
【0025】
図1及び
図2に示されるように、車両用給電システム1は、給電ユニット2、ヒートポンプ(熱供給ユニット)3、給電制御装置4、温度計(温度計測部)S1、車両センサS2、格納部誘導灯(誘導灯)L1、一時停車誘導灯L2、及び給電終了誘導灯L3を備えている。
【0026】
給電ユニット2は、車両Vに対して給電する。給電ユニット2は、格納部10、及び給電部20を備えている。格納部10は、車両Vに給電する給電位置に設けられ、車両Vを格納する。格納部10は、路面上に設置された建築物であってもよく、簡易的に車両Vを覆う構造物であってもよい。本実施形態において、格納部10は、車両Vを1台格納可能な大きさとなっている。格納部10の内壁及び天井の下面には、グラスウール等の断熱材が設けられていてもよい。この場合、格納部10は、格納部10の内部と外部との間での断熱性を高めることができる。
【0027】
図3及び
図4に示されるように、格納部10には、車両Vが格納部10内へ進入するための入口(出入口)10a、及び車両Vが格納部10から退出するための出口(出入口)10bが設けられている。本実施形態において、入口10aと出口10bとは、格納部10において互いに対向する位置に設けられている。
【0028】
また、格納部10には、
図2に示されるように、入口扉(扉部)11、入口扉駆動機構12、出口扉(扉部)13、出口扉駆動機構14、及び換気扇15が設けられている。
【0029】
入口扉11は、入口10aを開閉する。入口扉11が開状態である場合、入口10aは開放状態となる。入口扉11が閉状態である場合、入口10aは閉鎖状態となる。入口扉駆動機構12は、入口扉11を開閉動作させる駆動部である。出口扉13は、出口10bを開閉する。出口扉13が開状態である場合、出口10bは開放状態となる。出口扉13が閉状態である場合、出口10bは閉鎖状態となる。出口扉駆動機構14は、出口扉13を開閉動作させる駆動部である。
【0030】
入口扉11及び出口扉13の構成は特に限定されない。入口扉11及び出口扉13は、例えば、板状の扉部材によって構成されていてもよく、シャッターによって構成されていてもよい。入口扉駆動機構12及び出口扉駆動機構14の構成は特に限定されない。例えば、入口扉駆動機構12及び出口扉駆動機構14は、電動モータ又は圧縮空気等の動力によってそれぞれの扉を開閉動作させてもよい。入口扉駆動機構12及び出口扉駆動機構14は、給電制御装置4からの指示に基づいて入口扉11及び出口扉13をそれぞれ独立して開閉動作させることができる。
【0031】
図1に示されるように、格納部10は、一時停車エリアA2と給電終了車エリアA3との間に設けられている。なお、格納部10は、入口10aが一時停車エリアA2側を向き、出口10bが給電終了車エリアA3側を向いている。格納部10の床面Rと格納部10外の路面とは滑らかにつながっている。これにより、車両Vは、一時停車エリアA2から格納部10内へ及び格納部10から給電終了車エリアA3へ容易に移動することができる。
【0032】
図2および
図5に示されるように、換気扇15は、格納部10内の空気を格納部10の外部に排出することができる。換気扇15は、給電制御装置4からの指示に基づいて作動する。
【0033】
図2に示される給電部20は、格納部10に格納された車両Vに給電する。本実施形態において給電部20は、車両Vに対して非接触で給電する。給電部20の給電方式は、電磁誘導方式であってもよい。これに限定されず、給電部20は、磁気共鳴方式等の他の方式によって非接触で給電を行ってもよい。なお、
図3に示されるように、格納部10の床面Rには予め給電エリアPが設定されている。給電部20は、給電エリアP内で予め定められた向き(車両Vの前側が出口扉13を向き、車両Vの後側が入口扉11を向く向き)に停車する車両Vに対して非接触で給電する。
【0034】
より詳細には、給電部20は、送電回路部21、送電コイル部(コイル部)22、及びケーブル23を備えている。送電回路部21、送電コイル部22、及びケーブル23は、格納部10へ進入及び退出する車両Vの移動を妨げない位置に設けられている。
【0035】
図5に示されるように、一例として、送電回路部21は、格納部10内の低い位置又は床面R上において車両Vの側面に対向する格納部10の内壁に設置されている。これに限定されず、送電回路部21は、床面Rに埋設されていてもよい。一例として、送電コイル部22は、格納部10の床面R上に設置されている。これに限定されず、送電コイル部22は、床面Rに埋設されていてもよい。なお、送電コイル部22は、格納部10内に設定された給電エリアP内に車両Vが停車したときに、車両Vに搭載された受電コイル部51と対向する位置に設けられる。一例として、ケーブル23は、床面Rに埋設されている。これに限定されず、ケーブル23は、車両Vのタイヤが乗り上げ可能な強度を有している場合、床面R上に敷設されていてもよい。このように、給電部20は、少なくとも送電コイル部22が格納部10内に格納されている。
【0036】
送電回路部21は、不図示の外部電源から供給される電力を高周波交流電力に変換し、変換した高周波交流電力をケーブル23を介して送電コイル部22へ供給する。外部電源は、例えば50Hz又は60Hzの商用電源等であってもよい。また、外部電源として、太陽光発電及び風力発電等の電力が用いられてもよく、太陽光発電及び風力発電等の電力に対して安定化のために蓄電池の電力が組み合わせられた電力が用いられてもよい。送電回路部21は、外部電源からの交流又は直流の電力を入力とし、力率改善回路、整流器、及びDC-DCコンバータ等を用いて所定電圧の直流電力に変換し、さらにインバータによって高周波交流電力に変換してもよい。送電回路部21が送電コイル部22へ供給する交流電力の周波数は、例えば、100kHzであってもよい。
【0037】
また、送電回路部21は、給電制御装置4からの指示に基づいて、車両Vへの給電の開始及び給電の停止を行うことができる。なお、送電回路部21は、例えば、送電コイル部22の状態等の所定条件に基づいて車両Vへの給電の停止を決定し、給電を停止してもよい。
【0038】
送電コイル部22は、車両Vに対して非接触で送電する。送電コイル部22は、ケーブル23を介して供給された高周波交流電力を磁場に変換する。送電コイル部22が発生させた磁場が車両Vに搭載された受電コイル部51のコイルに電磁誘導によって起電力を発生させ、非接触での送電が行われる。送電コイル部22は、例えば、サーキュラー型コイルと、非接触での送電効率を高めるためのキャパシタ及びインダクタを組み合わせた構成となっている。但し、送電コイル部22の内部構成は、非接触での送電が可能であれば、他の構成であってもよい。
【0039】
図2に示されるように、ヒートポンプ3は、熱を回収し、回収した熱を熱供給対象に供給する熱供給ユニットである。ヒートポンプ3は、給電ユニット2による車両Vの給電時に発生する熱を回収する。また、ヒートポンプ3は、本実施形態においては、一例として、
図5に示されるように熱供給対象としての建物Tに対して熱を供給する。建物Tは、格納部10の外部に設置されている。これに限定されず、ヒートポンプ3は、建物T以外の熱供給対象に熱を供給してもよい。建物Tに供給された熱は、例えば、建物T内の暖房等に利用される。
【0040】
なお、本実施形態においてヒートポンプ3は、熱を回収する側の格納部10の温度と熱を供給する建物T側の温度との高低については問わない。ヒートポンプ3は、格納部10の熱を回収して建物Tに供給できればよい。たとえば、格納部10内の温度が建物T側の温度より高い場合、後述する凝縮器(熱放出部)33の温度は格納部10内の温度よりさらに高くなりうるが、凝縮器33の温度が建物T側の温度より高いので、凝縮器33から建物T側へ放熱され、格納部10から建物T側への熱の移動が行われる。
【0041】
ヒートポンプ3は、
図6に示されるように、蒸発器(熱回収部)31、圧縮機(熱移動機構)32、凝縮器33、膨張弁(熱移動機構)34、及び配管(熱移動機構)Kを備えている。また、ヒートポンプ3は、配管K内を循環する図示しない冷媒(熱媒体)を備えている。配管Kは、蒸発器31と圧縮機32とをつなぎ、圧縮機32と凝縮器33とをつなぎ、凝縮器33と膨張弁34とをつなぎ、膨張弁34と蒸発器31とをつないでいる。これにより、冷媒は、蒸発器31、圧縮機32、凝縮器33、膨張弁34、及び蒸発器31の順で循環することができる。
【0042】
ヒートポンプ3は、冷媒の蒸発工程、圧縮工程、凝縮工程、及び膨張行程を含む熱サイクルを繰り返し行い、格納部10内から吸熱して建物Tに放熱することにより、格納部10内から建物Tへ熱を移動させる。すなわち、ヒートポンプ3は、格納部10内を冷却し、建物Tを加熱する動作を行う。
図5に示されるように、蒸発器31は、格納部10内に設置されている。本実施形態において、蒸発器31は、格納部10の天井10cに近い位置(格納部10の床面Rよりも格納部10の天井10cに近い位置)に設置される。蒸発器31は、例えば、格納部10の内壁に取り付けられる。蒸発器31は、格納部10内の熱を回収する。ここでは、蒸発器31は、格納部10内の熱によって冷媒を蒸発(気化)させる蒸発工程を行う。
【0043】
圧縮機32は、蒸発器31で蒸発させられた冷媒を圧縮して昇温する圧縮工程を行う。なお、圧縮機32の設置場所は特に限定されない。
図5では、圧縮機32の設置場所が限定されないため、圧縮機32の図示が省略されている。圧縮により昇温させられた冷媒は、配管Kによって凝縮器33へ送られる。
【0044】
凝縮器33は、格納部10の外部の建物T内に設置される。凝縮器33は、蒸発器31で回収された熱を建物Tに放出する。より詳細には、凝縮器33は、圧縮機32で昇温させられた冷媒から建物Tに熱を放出し、冷媒を凝縮する凝縮工程を行う。凝縮工程において冷媒は、気体から液体に戻る。
【0045】
膨張弁34は、凝縮器33で凝縮された冷媒を冷却する膨張行程を行う。なお、膨張弁34の設置場所は特に限定されない。
図5では、膨張弁34の設置場所が限定されないため、膨張弁34の図示が省略されている。膨張行程において冷却された冷媒は、蒸発器31に送られ、蒸発器31において上述した蒸発工程が再び行われる。このように、圧縮機32、膨張弁34、及び配管Kは、蒸発器31で回収された熱を凝縮器33に移動させる熱移動機構として機能する。
【0046】
図2に示されるように、温度計S1は、格納部10内の温度を計測する。温度計S1の種類は特に限定されない。温度計S1の検出結果は、給電制御装置4に送信される。
【0047】
車両センサS2は、格納部10内に車両Vが存在するか否かを検出する。例えば、車両センサS2は、格納部10の床面Rに埋め込まれており、床面R上の予め定められた範囲(例えば、床面Rから数十cm上方までの範囲)内における金属を検出可能なセンサであってもよい。この車両センサS2によって金属が検出された場合、格納部10内に車両Vが存在すると判定することができる。但し、車両センサS2の種類は特に限定されない。車両センサS2の検出結果は、給電制御装置4に送信される。
【0048】
格納部誘導灯L1は、格納部10内に設定された給電エリアPに車両Vを誘導するための目印となる。格納部誘導灯L1は、本実施形態においては、格納部10の床面Rに設けられている。本実施形態において、格納部誘導灯L1は、例えば
図3に示されるように、床面Rに設定された給電エリアPを囲むように床面Rに四角枠状に設置されている。格納部誘導灯L1は、例えば、平面状に発光する白色発光ダイオードであってもよい。この場合、格納部誘導灯L1は、発光により、給電エリアPを囲む白線を形成する。格納部誘導灯L1が発光ダイオードである場合、格納部誘導灯L1は、電源とパワーMOSFET等の電子制御素子とによって駆動される。
【0049】
車両Vは、車両Vの周囲を撮像するカメラ71の撮像画像に基づいて自動で走行することができる。車両Vは、カメラ71の撮像画像から発光する格納部誘導灯L1を認識し、認識した格納部誘導灯L1に基づいて給電エリアPまで自動で走行することができる。なお、車両Vの誘導時には格納部誘導灯L1が発光するため、格納部10内に照明設備を設ける必要が無い。格納部10内に照明設備が設けられていなくても、車両Vは、発光する格納部誘導灯L1をカメラ71の撮像画像から認識することができる。格納部誘導灯L1は、給電制御装置4からの指示に基づいて点灯と消灯とを切り替える。
【0050】
図1に示されるように、一時停車誘導灯L2は、給電待車エリアA1から一時停車エリアA2に車両Vを誘導するための目印となる。一時停車誘導灯L2は、本実施形態おいては一時停車エリアA2の路面上に設けられている。本実施形態において、一時停車誘導灯L2は、一時停車エリアA2を示す四角枠状に設けられている。一時停車誘導灯L2は、格納部誘導灯L1と同様の構成を有している。車両Vは、格納部誘導灯L1と同様に、カメラ71の撮像画像から発光する一時停車誘導灯L2を認識し、給電待車エリアA1から一時停車エリアA2まで自動で走行することができる。一時停車誘導灯L2は、給電制御装置4からの指示に基づいて点灯と消灯とを切り替える。
【0051】
なお、給電待車エリアA1と一時停車エリアA2との位置関係は、給電待車エリアA1に停車する車両Vのカメラ71の撮像視野内に一時停車エリアA2の一時停車誘導灯L2が入る状態となっている。これにより、給電待車エリアA1に停車する車両Vは、一時停車エリアA2の一時停車誘導灯L2の発光を認識して一時停車エリアA2まで走行することができる。
【0052】
また、一時停車エリアA2と格納部10(給電エリアP)との位置関係は、格納部10の入口10aが開放状態となっているときに、一時停車エリアA2に停車する車両Vのカメラ71の撮像視野内に格納部10内の格納部誘導灯L1が入る状態となっている。これにより、一時停車エリアA2に停車する車両Vは、格納部誘導灯L1の発光を認識して給電エリアPまで走行することができる。
【0053】
図1に示されるように、給電終了誘導灯L3は、給電エリアPから給電終了車エリアA3に車両Vを誘導するための目印となる。給電終了誘導灯L3は、本実施形態おいては給電終了車エリアA3の路面上に設けられている。本実施形態において、給電終了誘導灯L3は、給電終了車エリアA3内において車両Vの停車エリアを示す四角枠状に設けられている。本実施形態において、給電終了車エリアA3内における停車エリアは、3台分設けられている。つまり、給電終了車エリアA3内には、給電終了誘導灯L3が3つ設けられている。
【0054】
3つの給電終了誘導灯L3は、それぞれ四角枠によって、車両Vの停車エリアを示している。給電終了誘導灯L3は、格納部誘導灯L1と同様の構成を有している。車両Vは、格納部誘導灯L1と同様に、カメラ71の撮像画像から発光する給電終了誘導灯L3を認識し、格納部10(給電エリアP)から給電終了車エリアA3内に設けられた停車エリアまで自動で走行することができる。給電終了誘導灯L3は、給電制御装置4からの指示に基づいて点灯と消灯とを切り替える。また、3つの給電終了誘導灯L3は、給電制御装置4からの指示に基づいていずれか1つが発光する。車両Vは、発光する給電終了誘導灯L3が示す停車エリアへ向かって走行する。
【0055】
また、格納部10(給電エリアP)と給電終了車エリアA3との位置関係は、格納部10の出口10bが開放状態となっているときに、格納部10内に停車する車両Vのカメラ71の撮像視野内に給電終了車エリアA3内の給電終了誘導灯L3が入る状態となっている。これにより、格納部10内に停車する車両Vは、給電終了誘導灯L3の発光を認識し、発光する給電終了誘導灯L3が示す停車エリアまで走行することができる。
【0056】
なお、格納部誘導灯L1、一時停車誘導灯L2、及び給電終了誘導灯L3は、それぞれの所定位置まで車両Vを誘導及び停車させることができれば、四角枠状に設けられていることに限定されない。
【0057】
図2に示されるように、給電制御装置4は、車両用給電システム1における車両Vへの給電等の各種の制御を行う。給電制御装置4は、例えば、格納部10の内部に設けられていてもよく、格納部10の外部に設けられていてもよい。給電制御装置4は、例えば、通信部40、給電制御ECU[Electronic Control Unit]41、図示しない入出力機器等を備えるコンピュータとして構成されている。
【0058】
通信部40は、車両用給電システム1の各部及び車両Vと通信を行う通信機器である。通信部40は、無線通信器を備えており、車両Vと無線通信を行う。なお、通信部40は、車両用給電システム1の各部と有線通信を行ってもよく、無線通信を行ってもよい。
【0059】
ここで、格納部10の壁面が例えば金属を含んでいる等、通信のための電波を通しにくい場合がある。この場合、車両Vが格納部10内と格納部10外のいずれに位置している場合でも通信部40との間での無線通信を可能とするため、格納部10内と格納部10外の双方に通信部40の無線通信用アンテナが設けられていてもよく、格納部10内と格納部10外の双方に無線通信機器が設けられていてもよい。
【0060】
給電制御ECU41は、車両Vへの給電等の各種の制御を実行する処理部である。給電制御ECU41は、例えばマイクロプロセッサ、メモリ、動作を規定するプログラムを記憶する記憶装置等を備える電子制御ユニットによって構成されている。給電制御ECU41では、例えば、記憶装置に記憶されているプログラムをメモリにロードし、メモリにロードされたプログラムをマイクロプロセッサで実行することにより各種の機能が実現される。
【0061】
給電制御ECU41は、通信部40によって車両Vからの給電要求信号が受信されると、車両Vを格納部10内の給電エリアPへ誘導し、車両Vへの給電処理を実行する。給電が終了すると、給電制御ECU41は、車両Vを格納部10内から給電終了車エリアA3へ誘導する。これらの処理を行うため、給電制御ECU41は、機能的には、待機リスト生成部42、誘導制御部(点灯制御部)43、開閉制御部44、給電制御部45、熱供給制御部46、バッテリ情報取得部47、及び換気制御部48を備えている。
【0062】
待機リスト生成部42は、車両Vからの給電要求信号が受信されると、給電待ちの車両Vの待機リストを生成する。この待機リストは、複数台の車両Vに対して給電ユニット2が連続して給電する場合における、給電待ちの車両Vのリストである。なお、車両Vは、給電を受けようとする場合、給電待車エリアA1に移動して待機する。給電待車エリアA1内に入った車両Vは、給電要求信号と共に自車の車両IDを給電制御装置4に送信する。例えば、待機リスト生成部42は、給電要求信号が受信されると、給電要求信号と共に受信された車両IDを待機リストに追加する。給電待車エリアA1に車両Vが複数存在する場合、待機リストには複数の車両IDが記憶された状態となっている。待機リストは、例えば、給電制御ECU41のメモリに記憶されている。
【0063】
待機リスト生成部42は、車両Vに対して給電ユニット2による給電が可能な状態である場合、待機リストに記憶された車両IDを1つ選択し、選択した車両IDを待機リストから削除する。待機リストから車両IDが消された車両Vは、給電対象の車両Vとなる。
【0064】
なお、格納部10内に車両Vが存在しない場合、格納部10内の給電エリアPに車両Vを進入させ、給電を受けさせることができる。このため、待機リスト生成部42は、車両センサS2によって格納部10内に車両Vが存在しないと検出されている状態を、給電ユニット2による給電が可能な状態として用いることができる。
【0065】
一方、車両センサS2によって格納部10内に車両Vが存在すると検出されている場合、格納部10内の給電エリアPが占有されている、すなわち、給電エリアPにおいて車両Vが給電を受けている状態である。このため、待機リスト生成部42は、車両センサS2によって車両Vが検出されている場合、車両センサS2によって車両Vが存在しないと検出されるまで待機する。
【0066】
また、待機リスト生成部42は、待機リストに複数の車両IDが記憶されている場合、これらの中から1つの車両IDを選択して削除する。例えば、待機リスト生成部42は、待機リストに一番早く記憶された車両IDの車両Vを選択し、この車両IDを削除してもよい。また、例えば、待機リスト生成部42は、複数の車両IDの中からランダムに1つの車両IDを選択し、この車両IDを削除してもよい。待機リスト生成部42が行う車両IDの選択方法については限定されない。
【0067】
誘導制御部43は、格納部誘導灯L1、一時停車誘導灯L2、及び給電終了誘導灯L3の点灯の制御、及び車両Vに対して進入の指示を行うことにより、車両Vを一時停車エリアA2、給電エリアP、給電終了車エリアA3の各エリアに誘導する。誘導制御部43は、進入指示信号もしくは退出指示信号を通信部40を介して車両Vに送信することにより、各エリアへの車両Vの進入の指示を行うことができる。
【0068】
まず、給電待車エリアA1から一時停車エリアA2へ車両Vを誘導する場合について説明する。誘導制御部43は、待機リスト生成部42によって給電対象の車両Vが選択された場合(車両IDが消された場合)、一時停車誘導灯L2を点灯させる。これにより、給電待車エリアA1に停車している給電対象の車両Vは、搭載されたカメラ71によって発光する一時停車誘導灯L2を撮像し、一時停車誘導灯L2を認識することができる。一時停車誘導灯L2を点灯させた後、誘導制御部43は、給電対象の車両Vに対して一時停車エリアA2への進入指示信号を送信する。
【0069】
給電待車エリアA1に停車している給電対象の車両Vは、進入指示信号を受信すると、発光する一時停車誘導灯L2が示す一時停車エリアA2まで自動で走行する。一時停車エリアA2に到着した車両Vは、一時停車エリアA2で停車し、一時停車エリアA2に到着したことを示す到着信号を給電制御装置4に送信する。
【0070】
次に、一時停車エリアA2から格納部10内の給電エリアPへ車両Vを誘導する場合について説明する。誘導制御部43は、一時停車エリアA2に到着したことを示す到着信号を通信部40が受信した場合、格納部誘導灯L1を点灯させる。そして、開閉制御部44によって入口扉11が開状態となるように制御される。つまり、誘導制御部43は、入口10aが開放され且つ格納部10内に車両Vが存在しない場合に格納部誘導灯L1が点灯した状態となるように、格納部誘導灯L1の点灯を制御する。
【0071】
これにより、一時停車エリアA2に停車している給電対象の車両Vは、搭載されたカメラ71によって、発光する格納部誘導灯L1を格納部10の入口10aを介して撮像し、格納部誘導灯L1を認識することができる。格納部誘導灯L1を点灯させた後、誘導制御部43は、給電対象の車両Vに対して給電エリアPへの進入指示信号を送信する。給電エリアPへの進入指示信号の送信後、誘導制御部43は、一時停車誘導灯L2を消灯させる。
【0072】
一時停車エリアA2に停車している給電対象の車両Vは、進入指示信号を受信すると、発光する格納部誘導灯L1が示す給電エリアPまで自動で走行する。給電エリアPに到着した車両Vは、給電エリアPで停車し、給電エリアPに到着したことを示す到着信号を給電制御装置4に送信する。給電エリアPへ到着したことを示す到着信号を通信部40が受信した場合、誘導制御部43は、格納部誘導灯L1を消灯させる。そして、給電エリアPにおいて車両Vは、給電を受ける。
【0073】
次に、給電エリアPから給電終了車エリアA3へ車両Vを誘導する場合について説明する。誘導制御部43は、車両Vへの給電が終了した場合、給電終了誘導灯L3を点灯させる。ここでは、誘導制御部43は、給電終了条件が成立した場合、給電が終了したと判定することができる。誘導制御部43は、例えば、車両Vからバッテリ53の充電が完了したことを示す充電完了信号を通信部40が受信した場合、給電が終了したと判定することができる。また、誘導制御部43は、車両Vへの給電を開始してから所定時間が経過した場合に給電終了条件が成立したと判定してもよい。なお、送電回路部21が給電の停止を決定し、車両Vへの給電を停止することがある。この場合、誘導制御部43は、送電回路部21が給電を停止した場合に、給電終了条件が成立したと判定してもよい。
【0074】
また、誘導制御部43は、複数の給電終了誘導灯L3のうち、選択された一つの給電終了誘導灯L3を点灯させる。ここでは、誘導制御部43は、他の車両Vが停車していない給電終了誘導灯L3を選択して点灯させる。そして、開閉制御部44によって出口扉13が開けられる。これにより、給電エリアPに停車している車両Vは、搭載されたカメラ71によって、発光する給電終了誘導灯L3を格納部10の出口10bを介して撮像し、給電終了誘導灯L3を認識することができる。給電終了誘導灯L3を点灯させた後、誘導制御部43は、給電が終了した車両Vに対して、給電エリアPからの退出を指示する退出指示信号を送信する。
【0075】
給電エリアPに停車している給電が終了した車両Vは、退出指示信号を受信すると、給電終了車エリアA3内において発光する給電終了誘導灯L3が示す停車エリアまで自動で走行する。給電終了車エリアA3に到着した車両Vは、その場で停車し、給電終了車エリアA3に到着したことを誘導制御部43に送信する。
【0076】
このように、誘導制御部43は、格納部誘導灯L1、一時停車誘導灯L2、及び給電終了誘導灯L3の点灯、及び車両Vへの指示を行うことによって、各エリアまで車両Vを誘導することができる。
【0077】
開閉制御部44は、入口扉11及び出口扉13の開閉動作を制御する。ここでは、開閉制御部44は、入口扉駆動機構12に対して指示を行うことによって、入口扉11の開閉動作を制御する。また、開閉制御部44は、出口扉駆動機構14に対して指示を行うことによって出口扉13の開閉動作を制御する。
【0078】
開閉制御部44は、格納部10内に車両Vが存在する場合、入口扉11及び出口扉13が閉状態となるように制御する。つまり、車両Vへの給電が行われている間、入口扉11及び出口扉13は閉状態となっている。開閉制御部44は、車両Vが格納部10内に進入する場合、入口扉11を開状態となるように制御する。例えば、開閉制御部44は、車両Vが一時停車エリアA2に到着したことを示す到着信号を通信部40が受信した場合、入口扉11が開状態となるように制御する。また、開閉制御部44は、車両Vへの給電が終了し、格納部10外へ車両Vが退出する場合、出口扉13を開状態となるように制御する。例えば、開閉制御部44は、給電終了条件が成立して給電が終了した場合、出口扉13が開状態となるように制御する。
【0079】
なお、開閉制御部44は、格納部10内に車両Vが存在する場合であっても、バッテリ情報取得部47によって取得されたバッテリ状態情報に基づいて、入口扉11及び出口扉13の少なくとも一方を開状態となるように制御することができる。ここでは、開閉制御部44は、バッテリ状態情報が示す車両Vのバッテリ53の状態が、予め定められた異常状態である場合、入口扉11及び出口扉13の少なくとも一方を開状態となるように制御し、入口10a及び出口10bの少なくとも一方を開放状態とする。
【0080】
なお、予め定められた異常状態とは、バッテリ53の温度に基づいて予め定められていてもよく、充電時間に対するバッテリ53の充電量に基づいて予め定められていてもよい。この異常状態としては、種々の状態を予め設定することができる。なお、バッテリ53が異常状態であると判定された場合、給電制御部45は、給電部20による車両Vへの給電を停止させる。
【0081】
また、開閉制御部44は、格納部10内に車両Vが存在する場合であっても、温度計S1によって計測された格納部10内の温度に基づいて、入口扉11及び出口扉13の少なくとも一方を開状態となるように制御することができる。例えば、開閉制御部44は、温度計S1によって計測された温度が予め定められた温度閾値以上となった場合、入口扉11及び出口扉13の少なくとも一方を開状態となるように制御し、入口10a及び出口10bの少なくとも一方を開放状態とする。なお、ここでの予め定められた温度閾値とは、例えば、車両Vに搭載された機器や充電ユニット5等の定格温度の上限値であってもよい。
【0082】
給電制御部45は、給電部20が行う車両Vへの給電を制御する。給電制御部45は、給電部20の送電回路部21に対して給電の開始及び給電の停止を指示することによって、給電を制御する。ここでは、給電エリアPへ到着したことを示す到達信号を通信部40が車両Vから受信した場合、給電制御部45は、給電部20へ給電の開始を指示する。また、給電制御部45は、上述した給電終了条件が成立した場合、給電を終了すべきと判定し、給電部20へ給電の停止を指示する。
【0083】
なお、給電制御部45は、バッテリ情報取得部47によって取得されたバッテリ状態情報に基づいて、給電部20へ給電の停止を指示することができる。ここでは、給電制御部45は、バッテリ状態情報が示す車両Vのバッテリ53の状態が、予め定められた異常状態である場合、給電の停止を指示することができる。
【0084】
また、給電制御部45は、温度計S1によって計測された格納部10内の温度に基づいて、給電部20へ給電の停止を指示することができる。例えば、給電制御部45は、温度計S1によって計測された温度が予め定められた温度閾値以上となった場合、給電の停止を指示することができる。
【0085】
熱供給制御部46は、ヒートポンプ3における建物Tへの熱の供給動作を制御する。熱供給制御部46は、格納部10内において車両Vへの給電が行われる場合に、ヒートポンプ3を作動させて建物Tへ熱の供給を行う。また、給電ユニット2は、複数台の車両Vに対して連続して給電を行う場合がある。つまり、待機リスト生成部42が生成する待機リストに給電待ちの車両Vの車両IDが存在する場合である。この場合、熱供給制御部46は、格納部10内における給電対象の車両Vの入れ替えのために給電が停止される場合であっても、ヒートポンプ3における建物Tへの熱の供給状態を維持(作動状態を継続)する。
【0086】
バッテリ情報取得部47は、格納部10内の車両Vから、バッテリ53の状態を含むバッテリ状態情報を通信部40を介して取得する。取得されたバッテリ状態情報は、上述したように、誘導制御部43における車両Vの誘導、及び開閉制御部44における入口扉11及び出口扉13の開閉に利用される。
【0087】
換気制御部48は、換気扇15の動作を制御する。換気制御部48は、温度計S1によって計測された格納部10内の温度が予め定められた温度閾値以上となった場合、換気扇15を作動させて格納部10内の空気を外部に排出させる。
【0088】
次に、車両Vの構成について説明する。
図7に示されるように車両Vは、充電ユニット5、充電制御装置6、及び自動運転装置7を備えている。充電ユニット5は、車両Vが給電エリアPに停車しているときに、車両用給電システム1の給電部20の送電コイル部22から送電された電力を非接触で受電する。充電ユニット5は、受電コイル部51、受電回路部52、及びバッテリ53を備えている。
【0089】
受電コイル部51は、
図5に示されるように、車両Vの下面に設けられている。より詳細には、受電コイル部51は、車両Vが給電エリアPに停車したときに、送電コイル部22と上下方向において対向する位置に設けられている。受電コイル部51は、給電部20の送電コイル部22から非接触で受電する。受電コイル部51は、例えば、サーキュラー型コイルと、非接触での受電効率を高めるためのキャパシタ及びインダクタを組み合わせた構成となっている。但し、受電コイル部51の内部構成は、非接触での受電が可能であれば、他の構成であってもよい。
【0090】
給電部20の送電コイル部22は、車両Vの受電コイル部51と対向した状態で、磁場を発生させる。送電コイル部22が発生させた磁場が受電コイル部51のコイルに鎖交することにより、受電コイル部51のコイルに起電力が発生する。これにより、受電コイル部51は、送電コイル部22から非接触で受電することができる。受電コイル部51で発生した電力は受電回路部52に入力される。
【0091】
受電回路部52は、受電コイル部51が受電した交流電力を直流に変換する整流回路と、直流の電圧をバッテリ53の充電に適した電圧に変換するDC-DCコンバータ等を含む。受電回路部52からの出力は、バッテリ53に入力され、バッテリ53を充電する。このように、充電ユニット5は、給電部20から非接触で受電し、バッテリ53を充電する。バッテリ53は、例えば、車両Vに搭載された電動モータ等の電力源として利用される。
【0092】
なお、受電回路部52及びバッテリ53の車両V内における搭載位置は、特に限定されない。例えば、受電回路部52及びバッテリ53は、車両Vの重心位置を下げて車両Vの走行を安定させるため、車両Vの床面に近い低い位置に搭載されてもよい。
【0093】
図7に示されるように、充電制御装置6は、車両Vのバッテリ53の充電の制御を行う。充電制御装置6は、例えは、通信部60、及び充電制御ECU61、図示しない入出力機器等を備えるコンピュータとして構成されている。
【0094】
通信部60は、車両Vの各部及び車両用給電システム1の給電制御装置4と通信を行う通信機器である。通信部60は、無線通信器を備えており、給電制御装置4の通信部40と無線通信を行う。なお、通信部60は、車両V内の充電ユニット5及び自動運転装置7と有線通信を行ってもよく、無線通信を行ってもよい。
【0095】
充電制御ECU61は、バッテリ53の充電等の各種の制御を実行する処理部である。充電制御ECU61は、例えばマイクロプロセッサ、メモリ、動作を規定するプログラムを記憶する記憶装置等を備える電子制御ユニットによって構成されている。充電制御ECU61では、例えば、記憶装置に記憶されているプログラムをメモリにロードし、メモリにロードされたプログラムをマイクロプロセッサで実行することにより各種の機能が実現される。
【0096】
充電制御ECU61は、機能的には、充電制御部62、及びバッテリ情報送信部63を備えている。充電制御部62は、バッテリ53の充電を行おうとして車両Vが給電待車エリアA1に到着した場合、通信部60を介して給電要求信号を給電制御装置4に送信する。なお、充電制御部62は、給電要求信号の送信の際に、自身が搭載された車両Vを識別するための車両IDを給電要求信号と共に送信する。なお、充電制御装置6には、他の充電制御装置6(車両V)と識別するための車両IDが予め付与されている。車両IDは、一台の車両Vごとに異なっている。この車両IDとしては、例えば、携帯電話の電話番号、インターネット通信におけるIPアドレス、又はこれらに相当する識別情報を用いることができる。給電制御装置4は、車両IDを用いることにより、複数の車両Vのうち、通信対象の車両Vを特定して無線通信を行うことができる。
【0097】
また、充電制御部62は、給電制御装置4の誘導によって車両Vが一時停車エリアA2に到着した場合、及び給電エリアPに到着した場合、それぞれのエリアに到着したことを示す到着信号を通信部60を介して給電制御装置4に送信する。充電制御部62は、到着信号を送信する際に、車両IDも一緒に送信することができる。これにより、給電制御装置4は、到着信号を送信した車両Vを特定することができる。
【0098】
また、充電制御部62は、バッテリ53が満充電状態となる等、バッテリ53の充電が完了した場合、バッテリ53の充電が完了したことを示す充電完了信号を通信部60を介して給電制御装置4に送信する。なお、充電制御部62は、例えば、バッテリ53の状態を監視することによって、充電が完了したか否かを判定することができる。
【0099】
バッテリ情報送信部63は、バッテリ53の状態を含むバッテリ状態情報を生成し、生成したバッテリ状態情報を通信部60を介して給電制御装置4に送信する。バッテリ状態情報には、例えば、バッテリ53に異常が生じているか否か、すなわちバッテリ53が異常状態であるか否かを判定するための情報が含まれている。バッテリ情報送信部63は、例えば、バッテリ53の状態を監視することによってバッテリ状態情報を生成することができる。
【0100】
自動運転装置7は、車両Vを自動で走行させるための装置である。例えば、自動運転装置7は、車両Vの外部状況を検出する検出センサ(カメラ、LiDAR等)の検出結果に基づいて外部状況を認識し、車両Vの操舵機構及び駆動モータ等を制御することによって車両Vを自動で走行させる。自動運転装置7としては、周知の種々の装置を用いることができる。
【0101】
本実施形態において、自動運転装置7は、車両Vの前方を撮像するカメラ71を備えている。自動運転装置7は、カメラ71の撮像画像に基づいて前方の状況を認識し、認識結果に基づいて車両Vを自動で走行させることができる。カメラ71の視野は左右方向に広がっており、車両Vが操舵して進行方向を変えうる範囲を視野として有していてもよい。上述したように、自動運転装置7は、カメラ71によって撮像された撮像画像に基づいて発光する格納部誘導灯L1等を認識し、認識された格納部誘導灯L1等の位置に基づいて車両Vを自動で走行させる。ここでは、自動運転装置7は、給電制御装置4から送信された進入指示信号もしくは退出指示信号に基づいて、一時停車エリアA2、給電エリアP、及び給電終了車エリアA3まで車両Vを自動で走行させる。
【0102】
なお、車両用給電システム1において給電を受ける車両Vのそれぞれは、
図7を用いて説明した充電ユニット5、充電制御装置6、及び自動運転装置7を有している。
【0103】
次に、格納部10内において車両Vへの給電時に発生する熱について、及びヒートポンプ3における熱の回収について説明する。
図4(b)に示されるように、車両Vへの給電時には、入口扉11及び出口扉13が閉状態となっている。これにより、車両Vへの給電時において、格納部10内の暖められた空気(熱)が外部へ流れ出ることが抑制される。
【0104】
図5に示されるように、給電を行う際に、給電部20の送電回路部21、送電コイル部22、及びケーブル23が発熱する。ここで、送電回路部21は、格納部10内の低い位置又は床面R上に設けられている。送電コイル部22及びケーブル23は、床面R上又は床面Rに埋設されている。このため、格納部10の床面R付近の冷たい空気が、送電回路部21、送電コイル部22、及びケーブル23が発熱することによって暖められ、対流によって上昇する。
【0105】
また、車両V側においても、給電部20から給電を受ける際に、受電コイル部51、受電回路部52、及びバッテリ53が発熱する。受電コイル部51は車両Vの下面に設けられている。また、受電回路部52及びバッテリ53も車両Vの低い位置に設けられていることが多い。このため、格納部10の床面R付近の冷たい空気が、受電コイル部51、受電回路部52、バッテリ53によって暖められ、対流によって上昇する。
【0106】
なお、車両Vによっては、受電コイル部51、受電回路部52、及びバッテリ53で暖められた空気をファンによって強制的に車外に排出する場合がある。この場合であっても、車外に排出された暖められた空気は、格納部10内において対流によって上昇する。さらに、車両Vによっては、受電コイル部51、受電回路部52、及びバッテリ53の発熱を水等の冷媒によって吸収させ、冷媒で吸収した熱を車外に面したラジエーターで放熱させる場合がある。この場合であっても、ラジエーターの放熱により格納部10内の空気が暖められ、暖められた空気が格納部10内において対流によって上昇する。
【0107】
このように、車両Vへの給電時に発生する熱(送電回路部21、送電コイル部22、ケーブル23、受電コイル部51、受電回路部52、及びバッテリ53で発生する熱)は、全て格納部10内の空気を暖めることに用いられる。そして、暖められた空気は、格納部10内において対流によって上昇する。
【0108】
ヒートポンプ3の蒸発器31は、格納部10内の天井10cに近い位置に設置されている。このため、蒸発器31は、対流によって上昇してきた暖められた空気に接し、暖められた空気から熱を回収することができる。回収された熱はヒートポンプ3の凝縮器33から放熱され、建物Tを暖めることができる。
【0109】
蒸発器31によって熱が回収されると空気が冷却され、冷却された空気が対流によって格納部10の床面R付近へ下降する。このように、空気の温度が変化することによって、格納部10内で空気が対流し循環する。このため、車両Vへの給電時に給電部20(送電回路部21、送電コイル部22、及びケーブル23)で発生する熱、及び車両Vの充電ユニット5(受電コイル部51、受電回路部52、及びバッテリ53)で発生する熱の両方を蒸発器31によって効率よく回収することができる。
【0110】
なお、給電待ちの車両Vが複数存在する場合、車両用給電システム1は、格納部10内において複数の車両Vに対して連続して給電を行う。このため、格納部10内の空気は常に加熱された状態となり、これらの熱をヒートポンプ3の蒸発器31によって効率よく回収することができる。
【0111】
次に、車両用給電システム1の給電制御装置4が実行する車両Vへの給電処理の流れについて説明する。なお、以下では、給電制御装置4が行う処理をタスク1とタスク2の2つのタスクに分けて説明する。タスク1は、給電待ちの車両Vを管理し、給電エリアPへ誘導する処理である。タスク2は、給電エリアPに到着した車両Vへの給電を行い、給電終了車エリアA3へ退出させる処理である。給電処理をタスク1とタスク2とに分けることにより、車両Vへの給電を行いつつ、給電中に給電待車エリアA1に到着した給電待ちの車両Vの管理(給電待ちの車両Vが増える場合の管理)を適切に行うことができる。タスク1とタスク2とは、並行して実行可能である。タスク2は、タスク1においてタスク2の起動条件が成立した場合に実行される。
【0112】
まず、タスク1について
図8のフローチャートを用いて説明する。なお、
図8に示される処理は、処理がエンドに至った場合、所定時間後に再びスタートから処理が開始される。なお、所定時間がゼロであり、処理がエンドに至ったらすぐに再びスタートから処理が開始されてもよい。
図8に示されるように、待機リスト生成部42は、車両Vから送信された給電要求信号を通信部40が受信したか否かを判定する(S101)。給電要求信号を受信した場合(S101:YES)、待機リスト生成部42は、給電要求信号と共に受信した車両IDを待機リストに追加する(S102)。
【0113】
一方、給電要求信号が受信されていない場合(S101:NO)、待機リスト生成部42は、待機リストが空であるか否かを判定する(S103)。待機リストが空である場合(S103:YES)、給電制御装置4は、今回の処理を終了し、所定時間後に再びスタートから処理を開始する。
【0114】
S102において車両IDを待機リストに追加した後、又は待機リストが空でない場合(S103:NO)、待機リスト生成部42は、車両センサS2によって格納部10(給電エリアP)内に車両Vが存在しないと検出されているか否かを判定する(S104)。車両Vが存在すると検出されている場合(S104:NO)、給電制御装置4は、今回の処理を終了し、所定時間後に再びスタートから処理を開始する。
【0115】
一方、車両Vが存在しないと検出されている場合(S104:YES)、待機リスト生成部42は、待機リストに記録されている車両IDのうち、給電対象の車両IDを1つ選択する(S105)。車両IDの選択後、待機リスト生成部42は、選択した車両IDを待機リストから削除する(S106)。
【0116】
次に、誘導制御部43は、一時停車エリアA2を示す一時停車誘導灯L2を点灯させる(S107)。また、誘導制御部43は、待機リスト生成部42で選択された車両IDの車両Vに対し、一時停車エリアA2への進入指示信号を送信する(S108)。これにより、給電対象の車両Vは、発光する一時停車誘導灯L2を目印として給電待車エリアA1から一時停車エリアA2まで自動で走行することができる。
【0117】
誘導制御部43は、給電対象の車両Vが一時停車エリアA2に到着したか否かを判定する(S109)。誘導制御部43は、車両Vが送信する到着信号に基づいて、一時停車エリアA2への到着の有無を判定することができる。車両Vが一時停車エリアA2に到着していない場合(S109:NO)、誘導制御部43は、車両Vが到着するまでS109の処理を繰り返し実行する。
【0118】
給電対象の車両Vが一時停車エリアA2に到着した場合(S109:YES)、誘導制御部43は、格納部誘導灯L1を点灯させる(S110)。そして、開閉制御部44は、入口扉11を開状態となるように制御する(S111)。これにより、入口扉11が開かれ、一時停車エリアA2に停車する給電対象の車両Vから格納部誘導灯L1を確認することができる。誘導制御部43は、一時停車エリアA2に停車する給電対象の車両Vに対して、給電エリアPへの進入指示信号を送信する(S112)。そして、誘導制御部43は、一時停車誘導灯L2を消灯させる(S113)。
【0119】
次に、誘導制御部43は、給電対象の車両Vが給電エリアPに到着したか否かを判定する(S114)。誘導制御部43は、車両Vが送信する到着信号に基づいて、給電エリアPへの到着の有無を判定することができる。車両Vが給電エリアPに到着していない場合(S114:NO)、誘導制御部43は、車両Vが到着するまでS114の処理を繰り返し実行する。
【0120】
給電対象の車両Vが給電エリアPに到着した場合(S114:YES)、開閉制御部44は、入口扉11を閉状態となるように制御する(S115)。そして、誘導制御部43は、格納部誘導灯L1を消灯させる(S116)。つまり、誘導制御部43は、入口扉11及び出口扉13が閉状態である場合に格納部誘導灯L1が消灯した状態となるように格納部誘導灯L1を消灯させる。これにより、車両Vへの給電の準備が完了する。次に給電制御装置4は、タスク2を起動させる(S117)。そして、給電制御装置4は、タスク1の処理と並行してタスク2の処理を開始する。S117の処理の終了後、給電制御装置4は、所定時間後に再びスタートからタスク1の処理を開始する。
【0121】
次に、タスク2について
図9のフローチャートを用いて説明する。なお、タスク2は、タスク1のS117において起動されると、
図9に示される処理を実行し、処理がエンドに至った場合、処理を終了する。タスク1は繰り返し実行されるので、タスク1のS117が実行されるたびに、タスク2が起動されて一回実行される。
図9に示されるように、タスク2が起動されると、給電制御部45は、給電部20に対して車両Vへの給電の開始を指示し、車両Vへの給電を開始する(S201)。給電制御部45は、給電終了条件の成立の有無に基づいて、給電が終了したか否かを判定する(S202)。給電が終了していない場合(S202:NO)、給電制御部45は、給電が終了したと判定されるまで、S202の処理を繰り返し実行する。
【0122】
給電が終了した場合(S202:YES)、給電制御部45は、給電部20に対して給電の停止を指示する(S203)。そして、誘導制御部43は、給電終了車エリアA3内の給電終了誘導灯L3を点灯させる(S204)。開閉制御部44は、出口扉13を開状態となるように制御する(S205)。これにより、出口扉13が開かれ、給電エリアPに停車する給電終了後の車両Vから給電終了誘導灯L3を確認することができる。
【0123】
誘導制御部43は、給電が終了した車両Vに対して退出指示信号を送信する(S206)。これにより、給電が終了した車両Vは、発光する給電終了誘導灯L3を目印として給電終了車エリアA3まで自動で走行することができる。
【0124】
開閉制御部44は、車両センサS2によって格納部10(給電エリアP)内に車両Vが存在しないと検出されているか否かを判定する(S207)。車両Vが存在すると検出されている場合(S207:NO)、開閉制御部44は、車両Vが存在しないと検出されるまでS207の処理を繰り返し実行する。車両Vが存在しないと検出された場合(S207:YES)、開閉制御部44は、出口扉13を閉状態となるように制御する(S208)。
【0125】
誘導制御部43は、給電が終了した車両Vが給電終了車エリアA3に到着したか否かを判定する(S209)。誘導制御部43は、車両Vが送信する到着信号に基づいて、給電終了車エリアA3への到着の有無を判定することができる。車両Vが給電終了車エリアA3に到着していない場合(S209:NO)、誘導制御部43は、車両Vが到着するまでS209の処理を繰り返し実行する。車両Vが給電終了車エリアA3に到着した場合(S209:YES)、誘導制御部43は、給電終了誘導灯L3を消灯させる(S210)。そして、給電制御装置4は、タスク2の処理を終了する。
【0126】
次に、車両Vが実行する充電処理の流れについて説明する。なお、
図10に示される充電処理は、バッテリ53の充電を行おうとする車両Vが給電待車エリアA1に到着した場合に開始される。なお、
図10に示される処理は、処理がエンドに至った場合、一回の処理を終了する。
【0127】
車両Vが給電待車エリアA1に到着すると、
図10に示されるように、充電制御装置6の充電制御部62は、給電要求信号を給電制御装置4に送信する(S301)。その際、充電制御部62は、給電要求信号と共に車両IDも送信する。自動運転装置7は、給電制御装置4から一時停車エリアA2への進入指示信号を通信部60が受信したか否かを判定する(S302)。進入指示信号が受信されない場合(S302:NO)、自動運転装置7は、進入指示信号が受信されるまで、S302の処理を繰り返し実行する。
【0128】
進入指示信号が受信された場合(S302:YES)、自動運転装置7は、カメラ71で撮像した一時停車誘導灯L2の撮像画像に基づいて、一時停車エリアA2まで車両Vを自動で走行させる(S303)。車両Vが一時停車エリアA2に到着すると、充電制御部62は、一時停車エリアA2に到着したことを示す到着信号を給電制御装置4に送信する(S304)。次に、自動運転装置7は、給電エリアPへの進入指示信号を受信したか否かを判定する(S305)。進入指示信号が受信されない場合(S305:NO)、自動運転装置7は、進入指示信号が受信されるまで、S305の処理を繰り返し実行する。
【0129】
給電エリアPへの進入指示信号が受信された場合(S305:YES)、自動運転装置7は、カメラ71で撮像した格納部誘導灯L1の撮像画像に基づいて、給電エリアPまで車両Vを自動で走行させる(S306)。車両Vが給電エリアPに到着すると、充電制御部62は、給電エリアPに到着したことを示す到着信号を給電制御装置4に送信する(S307)。
【0130】
充電制御部62は、充電ユニット5を制御し、受電コイル部51によって給電部20から受電し、受電回路部52によって適切な電圧に変換された電力がバッテリ53に供給され、バッテリ53が充電されるようにする(S308)。そして、充電制御部62は、給電制御装置4から退出指示信号を受信したか否かを判定する(S309)。退出指示信号を受信していない場合(S309:NO)、充電制御部62は、退出指示信号を受信するまでS309の処理を繰り返し実行する。
【0131】
退出指示信号を受信した場合(S309:YES)、自動運転装置7は、カメラ71で撮像した給電終了誘導灯L3の撮像画像に基づいて、給電終了車エリアA3まで車両Vを自動で走行させる(S310)。車両Vが給電終了車エリアA3に到着すると、充電制御部62は、給電終了車エリアA3に到着したことを示す到着信号を給電制御装置4に送信する(S311)。到着信号の送信後、車両Vは、充電処理を終了する。
【0132】
以上のように、車両用給電システム1では、車両Vを格納する格納部10を備えることにより、格納部10の内側の空間と外側の空間とを仕切ることができる。これにより車両用給電システム1は、車両Vへの給電時に発生した熱を格納部10内に留めることができ、格納部10内の熱をヒートポンプ3の蒸発器31によって効率よく回収することができる。そして、車両用給電システム1は、回収した熱をヒートポンプ3の凝縮器33に移動させ、凝縮器33から建物Tに熱を供給することができる。このように、車両用給電システム1は、車両Vへの給電の際に発生する熱を効率よく回収して利用することができる。
【0133】
また、車両Vは自動で走行して格納部10内において受電することができる。このため、車両用給電システム1では、人手を介さずに、給電の際に発生する熱を回収して建物Tに供給することができる。また、格納部10内に人が入って車両Vを運転する作業が不要となる。このため、給電時において格納部10内の温度が人が暑いと感じる温度まで上昇してもよい。これにより、蒸発器31周りの温度を高くすることができるので、ヒートポンプ3の効率を向上させ、建物Tに効率よく熱を供給することができる。
【0134】
車両用給電システム1は、格納部10内の熱を回収して建物Tに供給する装置として、ヒートポンプ3を用いる。この場合、車両用給電システム1は、ヒートポンプ3を用いて、建物Tの温度が格納部10内の温度より高い場合でもより効率よく格納部10内の熱を回収して建物Tに熱を供給することができる。
【0135】
ヒートポンプ3の蒸発器31は、格納部10の床面Rよりも格納部10の天井10cに近い位置に設置される。ここで、暖かい空気は、格納部10内の上方位置に溜まりやすい。このため、車両用給電システム1では、蒸発器31を天井10cに近い位置に設置することにより、より効率よく格納部10内の熱を回収することができる。
【0136】
給電部20の送電コイル部22が、格納部10内に設置されている。ここで、車両Vに対して非接触で給電を行う場合、送電コイル部22が発熱することがある。このため、車両用給電システム1は、給電時に発熱する送電コイル部22を格納部10内に設置することにより、送電コイル部22で発生した熱を蒸発器31によって効率よく回収することができる。本実施形態では、送電回路部21及び送電コイル部22も格納部10内に設置されている。このため、車両用給電システム1は、送電回路部21及び送電コイル部22で発生した熱も、蒸発器31によって効率よく回収することができる。
【0137】
格納部10の入口10a及び出口10bには、入口扉11及び出口扉13がそれぞれ設けられている。この場合、車両用給電システム1は、入口扉11及び出口扉13を開状態とすることによって入口10a及び出口10bを介して格納部10への車両Vの出入りを可能としつつ、入口扉11及び出口扉13を閉状態とすることによって入口10a及び出口10bを介して格納部10内の熱が外部に放出されることを抑制できる。
【0138】
誘導制御部43は、入口扉11が開状態であり且つ格納部10内に車両Vが存在しない場合に格納部誘導灯L1が点灯した状態となるように格納部誘導灯L1を点灯させる。また、誘導制御部43は、入口扉11及び出口扉13が閉状態である場合に格納部誘導灯L1が消灯した状態となるように格納部誘導灯L1を消灯させる。この場合、車両用給電システム1は、格納部誘導灯L1を用いた車両Vの誘導が必要な場合にのみ格納部誘導灯L1を点灯させ、それ以外の場合には誘導灯を消灯することにより、誘導灯の点灯に要するエネルギーを低減することができる。
【0139】
開閉制御部44は、温度計S1によって計測された温度が予め定められた温度閾値以上となった場合、入口扉11及び出口扉13の少なくともいずれかを開状態に制御する。この場合、車両用給電システム1は、入口10a及び出口10bの少なくともいずれかを開放し、格納部10内の熱気を外部に排出すること(格納部10内を換気すること)ができる。これにより、車両用給電システム1は、格納部10内の温度が上昇しすぎることを抑制できる。
【0140】
なお、本実施形態において、入口10a及び出口10bは、互いに対向している。このため、開閉制御部44は、入口扉11及び出口扉13を同時に開状態とすることにより、格納部10内の熱気を効率よく排出することができる。
【0141】
換気制御部48は、温度計S1によって計測された温度が予め定められた温度閾値以上となった場合、換気扇15を作動させて格納部10内の空気を外部に排出させる。この場合、車両用給電システム1は、換気扇15を作動させることによって、格納部10内の温度が上昇しすぎることを抑制できる。
【0142】
なお、給電制御部45は、温度計S1によって計測された温度が予め定められた温度閾値以上となった場合、給電部20から車両Vへの給電能力を低下させてもよい。この場合、車両用給電システム1は、給電部20及び充電ユニット5における熱の発生を抑制できる。
【0143】
また、温度計S1によって計測された温度が予め定められた温度閾値以上となった場合、車両用給電システム1は、上述した、入口扉11及び出口扉13を開状態とする制御、換気扇15を作動させる制御、給電能力を低下させる制御のいずれか一つ以上を組み合わせて実施してもよい。
【0144】
開閉制御部44は、バッテリ情報取得部47で取得されたバッテリ状態情報に基づいて車両Vに搭載されたバッテリ53が異常状態であるか否かを判定する。バッテリ53が異常状態である場合、開閉制御部44は、入口扉11及び出口扉13の少なくともいずれかを開状態となるように制御する。この場合、車両用給電システム1は、入口10a及び出口10bの少なくともいずれかを開放することができ、格納部10内の車両Vの状態を外部から確認しやすくすることができる。また、車両用給電システム1は、入口扉11及び出口扉13の少なくともいずれかを開状態にすることにより、格納部10内の換気を行うことができる。
【0145】
なお、バッテリ53が異常状態であると判定された場合、換気制御部48は、換気扇15を作動させて格納部10内の換気を行ってもよい。
【0146】
車両用給電システム1は、複数台の車両Vに対して連続して給電することができる。待機リスト生成部42は、給電待ちの車両Vの待機リストを生成する。熱供給制御部46は、待機リストに給電待ちの車両Vが存在する場合、ヒートポンプ3における建物Tへの熱の供給状態を維持する。つまり、熱供給制御部46は、格納部10内における給電対象の車両Vの入れ替えのために給電が停止される場合であっても、ヒートポンプ3における建物Tへの熱の供給状態を維持(作動状態を継続)する。この場合、車両用給電システム1は、給電待ちの車両Vが存在する場合には、格納部10内への車両の入替時においても建物Tへの熱の供給を継続することができる。
【0147】
給電待ちの車両Vが存在する場合、給電が停止している時間(格納部10内の空気が加熱されない時間)は、給電を終了した車両Vが給電エリアPから給電終了車エリアA3へ移動を開始し格納部10から退出する(車両センサS2が車両Vを検知しなくなる)まで(
図9における、S203からS208までの処理ステップに対応)の時間(T1と呼ぶ)と、給電待ちの車両Vが給電待車エリアA1を出発して給電エリアPに到着し給電を受け始めるまで(
図8におけるS105からS117までの処理ステップ、及び、
図9におけるS201の処理ステップに対応)の時間(T2と呼ぶ)との和、すなわちT1+T2、である。給電待車エリアA1、一時停車エリアA2、格納部10が100mの範囲内に設けられており、車両Vが毎秒3mの速度で走行するとすれば、この時間(T1+T2)は1分以下と短い。また、格納部10内の暖められた空気が入口10aもしくは出口10bを通して格納部10外に流出する時間は、出口扉13が開いている(
図9における、S205からS208までの処理ステップに対応)時間(T3と呼ぶ)と、入口扉11が開いている(
図8におけるS111からS115までの処理ステップに対応)時間(T4と呼ぶ)との和、すなわちT3+T4である。処理ステップがより少ないので、T3はT1より短く、T4はT2より短いから、T3+T4はT1+T2よりさらに短い。よって、格納部10内への車両の入替時においても格納部10内の温度の低下は小さく、建物Tへの熱の供給を効率よく継続することができる。
【0148】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、格納部10内の天井10cに近い位置にファンを設け、ファンを作動させることによって、格納部10内の上部の暖かい空気を蒸発器31に当ててもよい。この場合、車両用給電システム1は、蒸発器31による熱の回収を促進させることができる。
【0149】
また、例えば、入口扉11が開状態となっている間に格納部10内の暖かい空気が入口10aから流れ出ることがある。このため、車両用給電システム1は、入口10aの近傍にエアーカーテンを設け、入口扉11が開状態となっている間に暖かい空気が入口10aから流出することを抑制してもよい。同様に、車両用給電システム1は、出口10bの近傍にエアーカーテンを設けて暖かい空気の流出を抑制してもよい。または、車両用給電システム1は、入口扉11及び出口扉13をそれぞれ2重扉としてもよい。この場合にも、暖かい空気の流出が抑制される。
【0150】
給電が終了し、格納部10から退出した直後の車両Vの車内は、人間が快適に感じる温度よりも高くなっている可能性が考えられる。この場合、車両Vは、格納部10から退出した後に窓を自動で開けて換気を行い、車内の温度を低下させてもよい。
【0151】
次に、格納部10の種々の変形例について説明する。
図11に示されるように、第1変形例に係る格納部10Aは、屋外駐車上等の大きな建物Xの内部の一部分を簡易構造物によって囲うことによって実現されていてもよい。格納部10Aは、例えば、断熱性の高いシートによって、天井10c及び壁が構成されている。格納部10Aにも、実施形態における格納部10と同様に入口10a及び出口10bが設けられ、さらに、入口10aを開閉する入口扉11、及び出口10bを開閉する出口扉13が設けられている。入口扉11及び出口扉13は、例えば、シートを上方から巻き取ることによって入口10a及び出口10bをそれぞれ開状態とする形式の扉であってもよい。格納部10Aを構成するシートの材料としては、例えば、アルミ蒸着耐熱発泡シート等が用いられてもよい。
【0152】
また、格納部10Aの天井10cは、例えば、蒸発器31が設けられた側が高くなるように傾斜していてもよい。この場合、格納部10Aは、傾斜する天井10cを備えることにより、暖められて上昇した空気をファン等を用いずに効率よく蒸発器31に導くことができる。
【0153】
また、
図12及び
図13に示されるように、第2変形例に係る格納部10Bは、車両Vを上方から覆う形状を呈しており昇降可能であってもよい。なお、
図12は格納部10Bが降ろされた状態、
図13は格納部10Bが吊り上げられた状態を示す。
図13に示されるように、格納部10Bの下方が開口している。つまり、格納部10Bの下方の開口部が、車両Vの出入口10dとなる。格納部10Bの上部には、ワイヤ81が接続されている。格納部10Bの上方の位置で巻上機80がワイヤ81を巻き取ることにより、格納部10Bが吊り上げられる。
【0154】
このように、巻上機80は、格納部10Bを昇降させることができる。
図13に示されるように、巻上機80が格納部10Bを吊り上げて格納部10Bの下方の開口部が車両Vの屋根よりも高くなることにより、格納部10Bの出入口10dが開いた状態となる。これにより、車両Vは、給電エリアPへ進入及び給電エリアPから退出することができる。
【0155】
例えば、格納部10Bを吊り上げる巻上機80は、建物Tに設置された支持部材82によって、格納部10Bの上方の位置に設置される。但し、巻上機80は、建物Tとは異なる独立した支柱等によって支持されてもよい。
【0156】
また、格納部10Bの天井は、格納する車両Vの車幅方向の中央部分の高さが高くなっている。蒸発器31は、格納部10Bの天井の下面において、天井の高さが高い部分に設置されている。つまり、蒸発器31は、格納部10Bと共に昇降する。ヒートポンプ3に設けられる配管K(蒸発器31と凝縮器33とをつなぐ配管)は、可撓性を有するフレキシブル配管とする。格納部10Bを構成するカバーの材料としては、例えば、アルミ蒸着耐熱発泡シート等が用いられてもよい。
【0157】
第2変形例に係る格納部10Bを用いる場合、
図12に示されるように、車両Vが格納部10Bによって上方から覆われた状態で、車両Vへの給電が行われる。これにより、給電時に発生する熱によって温められた空気が格納部10Bの外部に流出することを抑制できる。従って、第2変形例に係る格納部10Bでは、熱の回収をより一層効率よく行うことができる。
【0158】
ここで、送電回路部21と送電コイル部22とを接続するケーブル23は、
図12等では床面Rに埋設された状態が示されているが、ケーブル23の設置を容易にするために床面R上に敷設されていてもよい。この場合、ケーブル23は、車両Vが乗り上げ可能な強度を有していればよい。
【0159】
なお、
図14及び
図15に示されるように、蒸発器31と凝縮器33とをつなぐ配管Kは、巻上機80から凝縮器33までの部分が支持部材82及び建物Tに固定された固定配管によって構成されていてもよい。この場合、配管Kは、巻上機80から蒸発器31までの部分が可撓性を有するフレキシブル配管によって構成されている。
図14は格納部10Bが降ろされた状態、
図15は格納部10Bが吊り上げられた状態(格納部10Bの出入口10dが開いた状態)を示す。
【0160】
また、
図16及び
図17に示されるように、蒸発器31は、格納部10B内において、天井の高い部分に位置するように支柱35によって支持されていてもよい。この場合、蒸発器31と凝縮器33とをつなぐ配管Kは、支柱35に固定された固定配管とすることができる。つまり、蒸発器31は、
図17に示されるように、格納部10Bが吊り上げられても格納部10Bと共に移動しない。この場合であっても、蒸発器31は、格納部10B内において熱を効率よく回収することができる。
図16は格納部10Bが降ろされた状態、
図17は格納部10Bが吊り上げられた状態(格納部10Bの出入口10dが開いた状態)を示す。
【0161】
また、上記実施形態に係る車両用給電システム1では、
図1に示されるように、格納部10が1つ設けられた場合を例に説明したが、格納部10の数は1つに限定されない。例えば、
図18に示される車両用給電システム1Aのように、給電を行う格納部10が複数設けられていてもよい。この場合、複数の格納部10の手前の位置に、一時停車エリアA2及び一時停車誘導灯L2がそれぞれ複数設けられている。
【0162】
例えば、
図18に示される例では、格納部10が3つ設けられ、格納部10の数に対応するように一時停車エリアA2及び一時停車誘導灯L2がそれぞれ3つずつ設けられている。この場合、3つの一時停車誘導灯L2は、給電待車エリアA1に停車する車両Vからそれぞれを区別可能なように、互いに異なる色(例えば、白色、赤色、緑色)で発光してもよい。これにより、車両用給電システム1Aでは、複数の車両Vに対して複数の格納部10において同時に給電することが可能となる。
【0163】
また、上述した実施形態に係る格納部10は、入口10aと出口10bとを備える構成でなくてもよい。例えば、格納部10は、出入口を1つ備える構成であってもよい。この場合、格納部10は、出入口を開閉する扉を1つ備える構成であってもよい。変形例に係る格納部10Aも同様に、出入口及び扉をそれぞれ1つずつ備える構成であってもよい。
【0164】
格納部10は、独立した建築物であってもよく、複数の部屋を有する建物内の一室によって構成されていてもよい。
【0165】
図1を用いて説明したように、車両用給電システム1には一時停車エリアA2が設けられていたが、一時停車エリアA2が設けられていなくてもよい。また、車両用給電システム1には給電待車エリアA1及び給電終了車エリアA3が設けられていたが、給電待車エリアA1と給電終了車エリアA3とは同じエリアを共用していていもよい。変形例として説明した車両用給電システム1Aについても同様の構成とすることができる。
【0166】
例えば、格納部10もしくは10Aもしくは10Bおよび入口扉11の一部もしくは全部が、カメラ71が検出可能な波長帯の光(たとえば、可視光もしくは近赤外光)を透過可能かつ断熱性の高い材料(たとえば、複層ガラスや透明な遮熱シート)で構成され、入口扉11が閉状態であっても、格納部外に位置する車両Vから格納部誘導灯L1を認識できるように構成されていてもよい。
【0167】
例えば、車両用給電システム1及び1Aは、ショッピングモール又は大規模集合住宅に付設された複数の駐車場を用いて実現されていてもよい。この場合、複数の駐車場の一部に給電を行うための給電ユニット2(格納部10、給電部20)等を設け、他の駐車場を給電待車エリアA1及び給電終了車エリアA3としてもよい。そして、回収された熱は、ショッピングモール又は大規模集合住宅に供給されてもよい。
【0168】
ヒートポンプ3によって回収した熱を建物Tの暖房に利用する場合を例に説明したが、熱の利用方法については特に限定されない。例えば、回収された熱は、水の加熱、融雪、又は乾燥等に利用されてもよい。
【0169】
上記において、車両Vは、発光する格納部誘導灯L1等によって囲まれたエリアを停車すべきエリアとして認識して自動で走行する場合を例に説明した。これに限定されず、非接触給電を行うための位置等、予め定められた位置まで自動で走行して停車可能であれば、車両Vの自動運転の方法及び停車すべきエリアを指定する方法は特に限定されない。
【0170】
また、給電部20は、車両Vに非接触給電を行う場合を例に説明したが、ケーブルを自動接続することによって車両Vに給電してもよい。この場合、例えば、受電コイル部51の代わりに、車両Vの底面にソケットが設けられている。給電部20は、送電コイル部22の代わりにプラグを備えている。このプラグは、上下方向に昇降式となっている。これにより、車両Vが給電エリアPに到着して停車した状態で、給電部20のプラグを上昇させることにより、車両Vのソケットに給電部20のプラグを差し込むことができる。この結果、給電部20から車両Vの充電ユニット5へ有線で給電される。
【0171】
また、格納部10内の熱を回収して建物Tに供給する熱供給ユニットとしてヒートポンプ3を用いる場合を例に説明したが、熱を供給できれば熱供給ユニットはヒートポンプ3以外の構成であってもよい。例えば、熱供給ユニットは、ダクトによって格納部10内から建物Tへ暖められた空気(熱)を送る構成であってもよい。この場合、格納部10内に設置されるダクトの入口が、格納部10内の熱を回収する熱回収部となる。建物Tに設置されたダクトの出口が、熱回収部で回収された熱を建物Tに放出する熱放出部となる。ダクトは、熱回収部で回収された熱を熱放出部に移動させる熱移動機構となる。なお、車両Vが電気自動車である場合、排気ガスが発生しない。このため、格納部10内で加熱された空気は外部の空気を同じ成分である。したがって、格納部10内の暖められた空気を、人が居住する環境(建物T等)に導入することができる。また、熱供給ユニットは、加熱された空気を建物Tに供給することに代えて、水等の熱媒体を加熱して建物Tに供給してもよい。
【0172】
また、熱供給ユニットは、例えば、熱媒体を循環させて格納部10内から建物Tへ熱を供給するヒートパイプであってもよい。この場合、ヒートパイプのうち格納部10内に設置された部分が、オイル等の熱媒体に格納部10内の熱を伝達する熱回収部となる。ヒートパイプのうち建物T内に設置された部分が、熱媒体の熱を建物Tに放出する熱放出部となる。また、ヒートパイプ内において熱回収部と熱放出部との間を移動する熱媒体が熱移動機構となる。この場合、熱供給ユニットは、熱回収部から熱放出部へ熱媒体を移動させることによって、格納部内の熱を建物Tに供給することができる。
【0173】
このように、熱供給ユニットとして、ダクト又はヒートパイプを用いた場合であっても、格納部10内の熱を効率よく回収して建物Tに供給することができる。
【0174】
格納部10もしくは10Aもしくは10Bにおいて、車両Vの底面と床面Rの間の、送電コイル部22と受電コイル部51で加熱された空気を車両Vの左右方向に移動させて車両Vの側面に抜けるような空気の流れを生じさせるようにファンが設けられてもよい。
【0175】
非接触給電及び有線給電のいずれにおいても、車両Vのバッテリ53から給電することができる、双方向給電可能な構成であってもよい。
【0176】
格納部10もしくは10Aもしくは10Bの天井および壁面がたとえばフェライトを含んでいて電磁シールドの機能を有しており、給電中に発生する電磁波が、格納部10もしくは10Aもしくは10Bの外部に伝搬することを低減してもよい。
【0177】
給電エリアPにおいて送電コイル部22から受電コイル部51への非接触給電が可能であれば、受電コイル部51が車両Vの下面に設けられていなくてもよい。たとえば、送電コイル部22が床面Rから持ち上げられて設けられており、受電コイル部51が車両Vの側面に設けられており、車両Vが給電エリアPに停車したときに、送電コイル部22と受電コイル部51が水平方向において対向するようになっていてもよい。
【0178】
[付記]
本開示の車両用給電システムは、電気自動車の普及に貢献できるため、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標13「気候変動に具体的な対策を」に貢献するものである。
【符号の説明】
【0179】
1、1A 車両用給電システム
2 給電ユニット
3 ヒートポンプ(熱供給ユニット)
10、10A、10B 格納部
10a 入口(出入口)
10b 出口(出入口)
10c 天井
11 入口扉(扉部)
13 出口扉(扉部)
15 換気扇
20 給電部
22 送電コイル部(コイル部)
31 蒸発器(熱回収部)
32 圧縮機(熱移動機構)
33 凝縮器(熱放出部)
34 膨張弁(熱移動機構)
42 待機リスト生成部
43 誘導制御部(点灯制御部)
44 開閉制御部
46 熱供給制御部
47 バッテリ情報取得部
48 換気制御部
K 配管(熱移動機構)
L1 格納部誘導灯(誘導灯)
R 床面
S1 温度計(温度計測部)
V 車両