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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071288
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/00 20060101AFI20230516BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
B60C15/00 M
B60C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183955
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 慎吾
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB12
3D131BC03
3D131CB05
3D131GA03
3D131HA01
(57)【要約】
【課題】車両での空気抵抗の低減とタイヤ全幅の増大抑制とを両立できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】実施形態の一例であるタイヤ1は、タイヤ側面40のタイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向の外側の周方向複数位置において、タイヤ径方向の内側から外側に向かってタイヤ周方向の第1側に、タイヤ径方向に対し傾斜した直線方向に延在する複数の外径側突部50と、タイヤ側面40のタイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向の内側の周方向複数位置において、タイヤ径方向の内側から外側に向かってタイヤ周方向の第1側に、タイヤ径方向に対し傾斜した直線方向に延在する内径側突部60と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ側面のタイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向の外側の周方向複数位置において、タイヤ径方向の内側から外側に向かってタイヤ周方向の第1側に、タイヤ径方向に対し傾斜した直線方向に延在する複数の外径側突部と、
前記タイヤ側面の前記タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向の内側の周方向複数位置において、タイヤ径方向の内側から外側に向かってタイヤ周方向の前記第1側に、タイヤ径方向に対し傾斜した直線方向に延在する内径側突部と、を備える、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記複数の外径側突部及び前記複数の内径側突部の延在方向がタイヤ径方向に対し傾斜する角度は同じである、
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記複数の外径側突部と前記複数の内径側突部とは、互いに同数であり、
前記複数の外径側突部と前記複数の内径側突部とは、タイヤ周方向の複数範囲で、互いに同一直線上に配置される、
請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記複数の外径側突部と前記複数の内径側突部とのそれぞれの延在方向が傾斜する角度θは、20度以上、70度以下である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記複数の外径側突部と前記複数の内径側突部とのそれぞれの延在方向は、タイヤ径方向の内側から外側に向かってタイヤ主回転方向後側に、タイヤ径方向に対し傾斜している、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記複数の外径側突部と前記複数の内径側突部とのそれぞれのタイヤ径方向に沿った断面形状は、曲線のみ、または複数の直線、及び前記複数の直線を滑らかに連結する曲線の組み合わせ形状により形成される、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、より詳しくは、タイヤ側面の突部を備える空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの側面にタイヤ周方向及びタイヤ径方向に交差して延在する複数の凸部を備える空気入りタイヤが知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された構成では、凸部の延在方向中間部がタイヤサイド面からの突出高さの最大位置を含み、その最大位置を、タイヤ最大幅位置からタイヤ径方向内外にタイヤ断面高さの20%の範囲に配置している。これにより、タイヤサイド部の空気流れの乱流化による車両での空気抵抗の低減と車両側面における空気の通過音の低減とを図ることを狙いとするとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/008726号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気入りタイヤでは、タイヤの側面に、タイヤ径方向に対し傾斜した複数の凸部が設けられるので、車両での空気抵抗の低減を図れる可能性はある。しかしながら、このタイヤでは、凸部の存在によって、タイヤの全幅が増大する可能性がある。このため、車両での空気抵抗の低減とタイヤ全幅の増大抑制とを両立できる空気入りタイヤの実現が望まれる。
【0005】
本発明の目的は、車両での空気抵抗の低減とタイヤ全幅の増大抑制とを両立できる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ側面のタイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向の外側の周方向複数位置において、タイヤ径方向の内側から外側に向かってタイヤ周方向の第1側に、タイヤ径方向に対し傾斜した直線方向に延在する複数の外径側突部と、タイヤ側面のタイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向の内側の周方向複数位置において、タイヤ径方向の内側から外側に向かってタイヤ周方向の第1側に、タイヤ径方向に対し傾斜した直線方向に延在する内径側突部と、を備える、空気入りタイヤである。
【0007】
上記の空気入りタイヤによれば、車両の走行時に、複数の外径側突部及び複数の内径側突部がタイヤの回転に伴って回転することによって、タイヤ周辺の空気を多くの細かい渦で乱流化させることができる。これにより、タイヤの周辺に発生する空気の流れのよどみを改善でき、そのよどみを避けるようにタイヤハウス内から車両の外側に離れるように発生する空気の膨らみを抑制できるので、車両での空気抵抗を低減できる。また、各突部がタイヤ径方向に対し傾斜した直線方向に延在するので、タイヤ側面にタイヤ径方向に延びる複数の突部を形成する場合と異なり、タイヤの上部と下部において、各突部の側面により空気の流れが大きく妨げられることを防止できる。これによっても空気の流れのよどみを改善できるので、車両での空気抵抗の低減を図れる。
【0008】
さらに、タイヤ側面のタイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向外側には外径側突部が設けられ、タイヤ側面のタイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側には内径側突部が設けられる。タイヤ側面は、タイヤ最大幅位置がタイヤ幅方向について最大高さ位置となり、タイヤ幅方向外側に凸となるように湾曲している。これにより、外径側、内径側突部のそれぞれを、タイヤ最大幅位置よりタイヤ幅方向内側に入り込んだ位置から、タイヤ幅方向外側に突出させることができる。このため、各突部において、タイヤ最大幅位置よりタイヤ幅方向外側に突出する長さを抑えることができるので、各突部によってタイヤの全幅が増大することを抑制できる。これにより、車両における空気抵抗の低減とタイヤ全幅の増大抑制とを両立できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤは、車両における空気抵抗の低減とタイヤ全幅の増大抑制とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の一例である空気入りタイヤの車両幅方向外側部分の断面図である。
図2】実施形態の一例である空気入りタイヤのタイヤ側面の概略図である。
図3図2のA-A線断面に対応するタイヤ側面の断面図である。
図4】実施形態の1例である空気入りタイヤを装着した車両の前進走行時に、空気入りタイヤに向かって流れる空気流れ(走行風)の方向と、タイヤ回転方向とを示す図である。
図5】空気入りタイヤの周辺部での空気流れを示す、図4の空気入りタイヤのタイヤ側面の概略拡大図である。
図6】比較例の空気入りタイヤを示している図5に対応する図である。
図7】実施形態の別例の空気入りタイヤを示している図3に対応する図である。
図8】実施形態の別例の空気入りタイヤを示している図5に対応する図である。
図9】実施形態の別例の空気入りタイヤを示している図2に対応する図である。
図10】実施形態の別例の空気入りタイヤを示している図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態及び変形例の各構成要素を選択的に組み合わせることは本発明に含まれている。
【0012】
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の車両幅方向外側部分の断面図である。図2は、空気入りタイヤ1のタイヤ側面の概略図である。図1図2に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接地する部分であるトレッド10を備える。以下、「空気入りタイヤ1」は、「タイヤ1」と記載する。トレッド10は、複数のブロックを含むトレッドパターンを有し、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。
【0013】
以下、タイヤ1の構成として、タイヤ幅方向中央CLを中心として車両幅方向外側(OUT側)の部分を中心に説明する。タイヤ1の外形の形状は、後述の外径側、内径側突部50,60以外の形状について、タイヤ1の車両幅方向外側の部分と車両幅方向内側の部分とで対称としている。
【0014】
トレッド10は、例えば3本の周方向溝20,21により区画される陸部を備える。陸部は、トレッド10の基準面からタイヤ径方向外側に向かって突出した突出部である。基準面とは、最も深い周方向溝20,21の底面に沿った仮想面であって、陸部が存在しない場合のトレッド10の外周面を意味する。トレッド10には、3本の周方向溝20,21によって、上記陸部として、タイヤ幅方向中央CL付近に位置し、タイヤ幅方向中央CLの周方向溝20によりタイヤ幅方向両側に分断されたセンター陸部22と、センター陸部22と周方向溝21により分断されたショルダー陸部24とを有する。
【0015】
タイヤ1は、トレッド10よりタイヤ幅方向外側に設けられ、最もタイヤ幅方向外側に膨らんだサイドウォール12と、ホイールのリムに固定されるビード14とを備える。サイドウォール12とビード14は、タイヤ周方向に沿って環状に形成され、タイヤ1の後述のタイヤ側面40を構成している。サイドウォール12は、トレッド10の幅方向両端からタイヤ径方向内側に延びている。
【0016】
タイヤ1は、所定圧の空気が充填される空気入りタイヤである。トレッド10とサイドウォール12は、例えば、異なる種類のゴムで構成されている。
【0017】
タイヤ側面40は、ショルダー陸部24の接地端Tからタイヤ幅方向外側であって、タイヤ径方向内側に連続する領域における外表面のプロファイルである。このため、タイヤ側面40は、図2に示すようにタイヤ1を車両幅方向外側から見た状態で、タイヤ1の接地端Tよりタイヤ径方向内側の領域である。また、図1に示すように、タイヤ側面40は、タイヤ幅方向外側に凸となるように大きく湾曲している。
【0018】
「接地端T」とは、未使用のタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で、正規内圧における正規荷重の70%の負荷を加えたときに平坦な路面に接地する領域のタイヤ幅方向両端を意味する。
【0019】
ここで、「正規リム」とは、タイヤ規格により定められたリムであって、JATMAであれば「標準リム」、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」である。「正規内圧」は、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。「正規荷重」は、JATMAであれば「最大負荷能力」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0020】
タイヤ1は、カーカス15、ベルト16、及びインナーライナー17を備える。カーカス15は、ゴムで被覆されたコード層であり、荷重、衝撃、空気圧等に耐えるタイヤ1の骨格を形成する。ベルト16は、トレッド10を構成するゴムとカーカス15の間に配置される補強帯である。ベルト16は、カーカス15を強く締めつけてタイヤ1の剛性を高める。インナーライナー17は、カーカス15の内周面に設けられたゴム層であって、タイヤ1の空気圧を保持する。また、ビード14は、ビードコア14aとビードフィラー14bを有する。
【0021】
実施形態のタイヤ1は、車両に対するタイヤ1の表裏の装着方向が指定されている。すなわち、タイヤ1は、車両幅方向の外側及び内側となる側がそれぞれ指定されている。図1では、タイヤ1を、右側が車両の幅方向外側(OUT側)で、左側が車両の幅方向内側(IN側)となるように、車両に取り付ける。タイヤ1は、タイヤ主回転方向も指定されている。「タイヤ主回転方向」は、タイヤ1が装着される車両が前進するときのタイヤ1の回転方向である。このため、タイヤ1には、車両に対する装着方向と回転方向を示すための表示が設けられることが好ましい。
【0022】
タイヤ側面には、一般的に、セリアルと呼ばれる記号が設けられている。セリアルには、例えばサイズコード、製造時期(製造年週)、製造場所(製造工場コード)などの情報が含まれる。車両の幅方向外側を向くタイヤ側面(サイドウォール11)のみにセリアルを設ける、または車両の幅方向外側を向く側面と幅方向内側を向く側面とで異なるセリアルを設けることで、車両に対するタイヤ1の装着方向が特定される。具体例としては、タイヤ1の両側面に製造工場コードおよびサイズコードを設け、車両の幅方向外側を向く側面のみに製造年週を設けることが挙げられる。
【0023】
また、車両の幅方向外側を向くタイヤ側面に文字または記号で、車両への装着状態で外側であること示す表示、及び、回転方向を示す表示の一方または両方が設けられてもよい。例えば、回転方向は、回転方向前側に向かう矢印の記号で表示することができる。
【0024】
さらに、上記のタイヤ側面40では、タイヤ最大幅位置WPが規定される。「タイヤ最大幅位置」とは、タイヤ断面幅Wの端であり、タイヤ1の外表面において最もタイヤ幅方向外側の端の位置である。タイヤ断面幅Wは、タイヤ1を正規リムに装着し、正規内圧を充填した無負荷状態のときに、タイヤ1の外表面のプロファイルラインでタイヤ幅方向最大となる位置である。プロファイルラインは、サイドウォール12のうち、リムプロテクターなどの突起を除いた「サイドウォール本体13」の外表面の輪郭であり、通常、複数の円弧を滑らかに接続することで規定されるタイヤ子午線断面形状を有する。
【0025】
そして、実施形態では、タイヤ側面40のタイヤ最大幅位置WPよりタイヤ径方向の外側の周方向複数位置に、複数の外径側突部50が形成される。さらに、タイヤ側面40のタイヤ最大幅位置WPよりタイヤ径方向の内側の周方向複数位置には、複数の内径側突部60が形成される。図1では、外径側突部50及び内径側突部60を斜格子部で示している。
【0026】
図2に示すように、複数の外径側突部50及び複数の内径側突部60のそれぞれは、タイヤ幅方向外側から見た場合に直線状の突部であり、タイヤ径方向の内側から外側に向かってタイヤ周方向の第1側(図2の矢印α方向前側)に、タイヤ径方向に対し傾斜した直線L方向に延在する。各突部50,60は、延在方向に対し直交する幅方向の厚みを有するが、その厚みは直線Lの延在方向長さに対し十分に小さい。
【0027】
図2では、内径側突部60の全長が外径側突部50の全長より短くなっているが、内径側突部60の全長は、外径側突部50の全長と同じとしてもよく、外径側突部50より長くしてもよい。また、図1に示すように、内径側突部60及び外径側突部50のそれぞれは、タイヤ最大幅位置WPには重ならない。
【0028】
各突部50,60は、ゴム材により形成される。各突部50,60を形成するゴム材は、サイドウォール本体13を形成するゴム材であってもよいし、サイドウォール本体13を形成するゴム材と異なるゴム材であってもよい。
【0029】
図3は、図2のA-A線断面に対応するタイヤ側面40の断面図である。図3に示すように、外径側突部50のタイヤ径方向に沿った断面形状は、タイヤ幅方向(図3の右側)に山形に突出したものであり、曲線のみの形状により形成される。具体的には、外径側突部50の断面形状の頂部が半円形の曲線70であり、その曲線70の両端が、サイドウォール本体13の断面形状と断面円弧形の曲線71を介して滑らかに連続している。内径側突部60のタイヤ径方向に沿った断面形状も、外径側突部50のタイヤ径方向に沿った断面形状と同様に、複数の曲線のみによって形成される。また、各突部50,60の延在方向に対し直交する幅方向に沿って切断した断面形状も、曲線のみによって形成された山形である。
【0030】
さらに、図2に示すように、外径側突部50と内径側突部60との数はそれぞれ4つであり、互いに同数である。4つの外径側突部50は、タイヤ側面40において、周方向の等間隔位置に配置される。4つの内径側突部60も、タイヤ側面40において、周方向の等間隔位置に配置される。
【0031】
4つの外径側突部50の延在方向がタイヤ径方向に対し傾斜する角度は同じ角度θであり、4つの内径側突部60の延在方向がタイヤ径方向に対し傾斜する角度も、外径側突部50の傾斜角度と同じ角度θである。
【0032】
4つの外径側突部50と4つの内径側突部60とは、タイヤ周方向の複数範囲のそれぞれにおいて、互いに同一直線上に配置される。より具体的には、図2に示すようにタイヤ側面40を外側から見た場合に、タイヤ側面40を4等分した領域A1、A2、A3、A4のそれぞれにおいて、外径側突部50と内径側突部60とは、互いに同一直線上に配置される。
【0033】
さらに、各突部50,60の延在方向がタイヤ径方向に対し傾斜する角度θは、20度以上、70度以下である。角度θは、30度以上、60以下が好ましく、40度以上、50度以下がより好ましい。角度θは、略45度であることがさらに好ましい。
【0034】
さらに、タイヤ周方向の第1側(図2の矢印α方向前側)は、タイヤ主回転方向(図2の矢印β方向)とは反対側である。このため、各突部50,60の延在方向は、タイヤ径方向の内側から外側に向かってタイヤ主回転方向後側(矢印α方向前側)に、タイヤ径方向に対し傾斜している。
【0035】
また、各突部50,60のタイヤ幅方向の突出高さは、延在方向の全長で略同じとしてもよく、例えば延在方向中央部で最も高くなり、延在方向両端部で最も低くなる形状としてもよい。
【0036】
上記のタイヤ1によれば、車両での空気抵抗の低減とタイヤ全幅の増大抑制とを両立できる。具体的には、タイヤ1が装着された車両の走行時に、複数の外径側突部50及び複数の内径側突部60がタイヤ1の回転に伴って回転することによって、タイヤ周辺の空気を多くの細かい渦で乱流化させることができる。
【0037】
図4は、タイヤ1を装着した車両100の前進走行時に、タイヤ1に向かって流れる空気流れ(走行風)の方向と、タイヤ回転方向とを示している。図5は、タイヤ1の周辺部での空気流れを示す、タイヤ1のタイヤ側面40の概略拡大図である。
【0038】
図4図5に示すように、車両100の前進走行時に、タイヤ1は矢印β方向に回転し、タイヤ1に向かって流れる走行風は、矢印γで示す方向に流れる。図4では、車両100の一部のみを示し、白抜き矢印が車両100の進行方向を示している。このとき、図5に示すように、タイヤ側面40では、各突部50,60が矢印δ方向に回転する。これにより、タイヤ1の回転時に、タイヤ径方向に対し傾斜した突部50,60で空気流れが乱されることにより、タイヤ1の周辺の空気を多くの細かい渦で乱流化させることができる。図5において、黒太線矢印は、タイヤ側面40近傍での空気の流れを示している。これにより、タイヤ1の周辺に発生する空気の流れのよどみを改善でき、そのよどみを避けるようにタイヤハウス101内から車両の外側に離れるように発生する空気の膨らみを抑制できる。このため、車両100での空気抵抗を低減できる。
【0039】
さらに、タイヤ1では、各突部50,60がタイヤ径方向に対し傾斜した直線方向に延在する。これにより、タイヤ1の回転時にタイヤ側面40の上部と下部とに突部50,60が位置する場合でも、車両周辺での空気の流れが大きく妨げられることを防止できる。これについて、まず、図6を用いて比較例のタイヤを説明する。
【0040】
図6は、比較例のタイヤ1aを示している図5に対応する図である。図6のタイヤ1aでは、タイヤ側面40のタイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向の外側と内側とにそれぞれ4つずつの外径側突部50及び内径側突部60がそれぞれタイヤ周方向の等間隔に離れて形成される。タイヤ側面40の周方向4つの位置で、外径側突部50及び内径側突部60は、タイヤ径方向に沿った直線上に配置されている。この比較例では、タイヤ1aの回転時にタイヤ側面40の上部と下部とに突部50,60が位置する場合に、上部と下部とでそれぞれ2つずつの突部50,60が鉛直方向に沿って直立するように配置される。このため、各突部50,60に対し車両の進行方向前側から突部に向かった空気の流れが突部50,60で大きく妨げられる。これにより、タイヤ周辺での空気のよどみを改善する効果が低くなる。
【0041】
例えば、図6のB部の位置で、外径側突部50の回転方向後側面(図6の左側面)で空気流れが大きく遮られ、タイヤ周辺の空気を乱流化させる効果が低くなるので、タイヤ周辺での空気のよどみを改善する効果が低くなる。
【0042】
一方、実施形態のタイヤ1では、図5に示したように、タイヤ1の上部と下部に突部50,60が位置する場合でも、突部50,60の車両進行方向前側面(図5の左側面)がタイヤ径方向に対し大きく傾斜しやすいので、空気を案内して後側に流しやすくなる。これにより、各突部50,60の側面により空気の流れが大きく妨げられることを防止できる。このため、タイヤ周辺の空気の乱流化が促進され、空気の流れのよどみを改善できるので、車両での空気抵抗の低減を図れる。
【0043】
さらに、タイヤ側面40は、タイヤ幅方向外側に凸となるように湾曲している。これにより、タイヤ側面40のタイヤ径方向の外側と内側とに設けた外径側突部50及び内径側突部60を、タイヤ側面40のタイヤ径方向中央付近のタイヤ最大幅位置WPよりタイヤ幅方向内側に入り込んだ位置から、タイヤ幅方向外側に突出させることができる。このため、各突部50,60がタイヤ最大幅位置WPよりタイヤ幅方向外側に突出する長さを抑えることができるので、各突部50,60によってタイヤ1の全幅が増大することを抑制できる。すなわち、各突部50,60が、タイヤ最大幅位置WPよりタイヤ幅方向外側に突出する場合でも、その突出長さを抑えることができる。したがって、タイヤ1により、車両での空気抵抗の低減とタイヤ全幅の増大抑制とを両立できる。
【0044】
さらに、実施形態のタイヤ1では、複数の外径側突部50及び複数の内径側突部60の延在方向がタイヤ径方向に対し傾斜する角度θは、同じである。これにより、タイヤ側面40の外側で外径側突部50によってタイヤ径方向内側に空気が案内された場合に、その空気が、タイヤ径方向内側付近を通じてタイヤ後方に流れることが、内径側突部60の傾斜角度によって大きく妨げられることを防止しやすい。例えば、内径側突部のタイヤ径方向に対して傾斜する角度が、外径側突部のタイヤ径方向に対して傾斜する角度より大きくなる場合には、外径側突部でタイヤ径方向内側に案内された空気が内径側突部で大きく妨げられやすいが、実施形態ではこのような不都合を防止できる。このため、タイヤ周辺での空気の流れのよどみを、さらに改善しやすい。
【0045】
さらに、実施形態のタイヤ1では、複数の外径側突部50と複数の内径側突部60とは同数であり、複数の外径側突部50と複数の内径側突部60とは、タイヤ周方向の複数範囲で、互いに同一直線上に配置される。このため、タイヤ側面40の外側での空気流れを計算モデルによって効果を確認しやすくなる等により、空気流れをより制御しやすくなる。
【0046】
さらに、実施形態のタイヤ1では、複数の外径側突部50と複数の内径側突部60とのそれぞれの延在方向が傾斜する角度θが、20度以上、70度以下である。これにより、タイヤ周辺での空気のよどみを改善する効果が高くなる。実施形態と異なり、角度θが20度より小さい場合は、図6に示した比較例のようにタイヤ側面の上部と下部とに突部が位置する場合に、それらの突部が鉛直方向に直立する状態に近づく。このため、車両の進行方向前側から突部に向かった空気の流れが突部で大きく妨げられるので、タイヤ周辺での空気のよどみを改善する効果が低くなる。
【0047】
一方、角度θが70度より大きい場合には、例えばタイヤ側面の進行方向最前端付近、例えば、図5に点Eで示す位置の外径側突部50に対応する突部が鉛直方向に直立した状態に近づくように配置される。この場合には、車両の進行方向前側から突部に向かった空気の流れがその突部で大きく妨げられるので、タイヤ周辺での空気のよどみを改善する効果が低くなる。角度θを20度以上、70度以下とした場合には、このような不都合を防止できるので、タイヤ周辺での空気のよどみを改善する効果が高くなる。角度θは、径方向に対し傾斜する角度が45度に近づくほど、タイヤの上部及び下部と、進行方向最前端付近とのそれぞれで空気の流れが大きく妨げられることを防止できる。このため、角度θは、30度以上、60以下が好ましく、40度以上、50度以下がより好ましく、略45度であることがさらに好ましい。
【0048】
さらに、実施形態のタイヤ1では、各突部50,60の延在方向は、タイヤ径方向の内側から外側に向かってタイヤ主回転方向後側(図2の矢印α方向前側)に、タイヤ径方向に対し傾斜している。これにより、タイヤの下部と上部で空気をタイヤ後方に、よりスムーズに流しやすい。例えば、図5のタイヤ1の下部では、矢印P1~P4で示すように空気を突部50,60で案内してタイヤ径方向の外側から内側部分を通ってタイヤ後方にスムーズに流しやすい。
【0049】
一方、タイヤ1の上部では、矢印P5で示すように、空気を外径側突部50で案内してタイヤ径方向の外側からタイヤ後方にスムーズに流しやすい。この場合には、空気流れと上部の突部50,60の進行方向とは互いにほぼ向き合うが、突部50の傾斜方向により、突部50,60からタイヤ径方向の外側に離れる方向に空気を流すことができる。
【0050】
さらに、実施形態では、各突部50,60のタイヤ径方向に沿った断面形状は、曲線のみにより形成される。これにより、各突部50,60のゴムの加硫による成形時に、金型内でのゴム流れをより良好にできるので、各突部50,60の成形不良を防止しやすくなる。
【0051】
なお、図1図5の実施形態では、タイヤ側面40に外径側突部50及び内径側突部60のそれぞれで4つずつが形成される場合を説明したが、外径側突部50及び内径側突部60のそれぞれの数は、4つに限定するものではなく任意の数とすることができる。一方、外径側突部50及び内径側突部60のそれぞれの数は、3つ~6つが好ましい。外径側突部50及び内径側突部60のそれぞれの数が2つ以下では、タイヤ周辺の空気の乱流化を生じさせる効果が小さくなる。外径側突部50及び内径側突部60のそれぞれの数が7つ以上では、外径側、内径側のそれぞれの突部50,60同士の間隔が小さくなるので、突部間に空気が入りにくくなる。このため、タイヤ周辺の空気の乱流化の効果が低くなる。
【0052】
図7は、別例のタイヤ1bを示している図3に対応する図である。本例のタイヤ1bでは、外径側突部50のタイヤ径方向に沿った断面形状は、頂部の直線72と幅方向両側の側面を形成する2つの直線73とがそれぞれ断面円弧形の曲線74で連結された略台形状である。さらに、その台形の幅方向両側の直線73は、サイドウォール本体13の断面形状と断面円弧形の曲線71を介して滑らかに連続している。
【0053】
内径側突部のタイヤ径方向に沿った断面形状も、外径側突部50aのタイヤ径方向に沿った断面形状と同様に、断面略台形状である。このため、各突部50aのタイヤ径方向に沿った断面形状は、複数の直線、及び複数の直線を滑らかに連結する曲線の組み合わせ形状により形成される。また、各突部50aの延在方向に対し直交する幅方向に沿って切断した断面形状も、複数の直線、及び複数の直線を滑らかに連結する曲線の組み合わせ形状により形成される。これにより、図1図5の構成と同様に、各突部50aのゴムの加硫による成形時に、金型内でのゴム流れをより良好にできるので、各突部50aの成形不良を防止しやすくなる。本例において、その他の構成及び作用は、図1図5の構成と同様である。
【0054】
なお、外径側突部及び内径側突部のタイヤ径方向に沿った断面形状は、三角形の両側の2つの直線が断面円弧形の曲線で連結された形状としてもよい。また、各突部のタイヤ径方向に沿った断面形状は、複数の直線のみの連結形状により形成してもよい。例えば、この断面形状は、矩形、三角形、台形等することができる。
【0055】
図8は、実施形態の別例のタイヤ1cを示している図5に対応する図である。本例の場合には、各突部50,60の延在方向は、タイヤ径方向の内側から外側に向かってタイヤ主回転方向前側(矢印β方向前側)に、タイヤ径方向に対し傾斜している。すなわち、本例では、各突部50,60がタイヤ径方向に対し傾斜する方向は、タイヤ主回転方向について、図5の実施形態の場合と逆である。本例の構成の場合には、図5の場合と異なり、図7の下部では、矢印P6、P7で示すように空気を突部50,60で案内して、タイヤ径方向内側部分を介さずに、タイヤ径方向の外側に流しやすい。
【0056】
一方、タイヤ1cの上部では、矢印P8で示すように、空気を突部50,60で案内してタイヤ径方向の外側から内側に案内する傾向となるが、空気流れと上部の突部50,60の進行方向とは互いに向き合って衝突する状態となる。これにより、上部の突部50,60では、図1図5の構成の場合よりも空気を後側に流しにくくなる。一方、本例の構成でも、図6に示した、各突部50,60がタイヤ径方向に沿った直線上に配置される比較例とは異なり、タイヤ1cの上部と下部に突部50,60が位置する場合に、突部50,60の車両進行方向前側面で空気を案内して後側に流しやすい。これにより、突部50,60の側面により空気の流れが大きく妨げられることを防止できる。このため、空気の流れのよどみを改善できるので、車両での空気抵抗の低減を図れる。本例において、その他の構成及び作用は、図1図5の構成と同様である。
【0057】
図9は、実施形態の別例のタイヤ1dを示している図2に対応する図である。本例の構成では、図2に示した構成において、内径側突部60の位相を外径側突部50の位相に対し45度異ならせている。これにより、外径側突部50と内径側突部60とは、周方向複数範囲で互いに直線上には配置されない。この構成では、図1図5に示した構成に比べて、空気流れの制御性が低下する可能性はあるが、図1図5に示した構成と同様、各突部50,60によってタイヤの周辺の空気を乱流化させることができる。本例において、その他の構成及び作用は、図1図5の構成と同様である。
【0058】
図10は、実施形態の別例のタイヤ1eを示している図2に対応する図である。本例の構成では、図2に示した構成と異なり、タイヤ周方向に1つおきの2つの内径側突部60を省略している。これにより、外径側突部50と内径側突部60との数は異なっている。この構成では、図1図5に示した構成に比べて、空気流れの制御性が低下する可能性はあるが、図1図5に示した構成と同様、各突部50,60によってタイヤの周辺の空気を乱流化させることができる。本例において、その他の構成及び作用は、図1図5の構成と同様である。なお、図10の場合とは逆に、図1図5の構成で、タイヤ周方向に1つおきの2つの外径側突部50を省略してもよい。
【0059】
上記の図1図5の実施形態では、タイヤの装着方向及びタイヤの回転方向を指定する場合を説明したが、図8の構成で説明したように、図1図5の構成とは突部50,60のタイヤ主回転方向についての傾斜の向きが逆になる場合でもある程度の効果を期待できる。このため、図1図5のタイヤを、回転方向を指定しない構成としてもよい。
【0060】
また、上記の各実施形態では、車両の幅方向外側に向くタイヤ側面のみに突部50,60を形成しているが、タイヤ幅方向の両側のタイヤ側面に突部50,60を形成することにより、タイヤの装着方向を指定しない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,1a,1b,1c,1d,1e 空気入りタイヤ(タイヤ)、10 トレッド、12 サイドウォール、13 サイドウォール本体、14 ビード、14a ビードコア、14b ビードフィラー、15 カーカス、16 ベルト、17 インナーライナー、20,21 周方向溝、22 センター陸部、24 ショルダー陸部、40 タイヤ側面、50,50a 外径側突部、60 内径側突部、70,71 曲線、72,73 直線、74 曲線、T 接地端。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10