(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007130
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】光照射装置の製作方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20230111BHJP
A61B 18/18 20060101ALI20230111BHJP
A61B 18/20 20060101ALI20230111BHJP
A61N 5/067 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61B18/18 200
A61B18/20
A61N5/067
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110180
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】521031567
【氏名又は名称】株式会社ニューロライテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 一夫
【テーマコード(参考)】
4C026
4C082
4C160
【Fターム(参考)】
4C026AA04
4C026FF17
4C026FF22
4C026FF34
4C082PA01
4C082PA06
4C082PC10
4C082PE03
4C082PE10
4C082PG11
4C082PG13
4C082RA05
4C082RE17
4C082RE35
4C160FF60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生体組織の所定範囲を均一に焼灼することが可能な光照射装置の製作方法を提供する。
【解決手段】生体組織の焼灼に用いられる、筐体を有する光照射装置の製作方法であって、平板状に形成された部材の一面に光の反射面を生成する生成工程と、前記一面を内側として前記部材を曲げることにより、中空の筒状に形成された前記筐体を組立てる組立工程と、を備える。また、前記一面に対して溝を形成する工程をさらに含み、前記溝に沿って前記部材が曲げられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の焼灼に用いられる、筐体を有する光照射装置の製作方法であって、
平板状に形成された部材の一面に光の反射面を生成する生成工程と、
前記一面を内側として前記部材を曲げることにより、中空の筒状に形成された前記筐体を組立てる組立工程と、を含む光照射装置の製作方法。
【請求項2】
前記一面に対して溝を形成する工程をさらに含み、
前記組立工程において、前記溝に沿って前記部材を曲げる、請求項1に記載の光照射装置の製作方法。
【請求項3】
前記組立工程において、前記筐体は多角形状の断面を持つように組立てられる、請求項1または2に記載の光照射装置の製作方法。
【請求項4】
前記組立工程において、前記筐体は円形状または長円形状の断面を持つように組立てられる、請求項1または2に記載の光照射装置の製作方法。
【請求項5】
前記組立工程において、前記部材をらせん状に曲げる、請求項4に記載の光照射装置の制作方法。
【請求項6】
前記組立工程の後に、
前記筐体の外周を覆う保持部材を、前記筐体に取り付ける工程をさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の制作方法。
【請求項7】
前記生成工程は、
前記一面を研磨する工程と、
前記一面へ金属を蒸着させて前記反射面を生成する工程と、を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の光照射装置の製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光照射装置の製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光照射により生体組織を焼灼するための装置が知られている。例えば特許文献1に記載された装置は、棒状の導光体の一端に光源からの光を入射し、他端から出射される光によって生体組織を焼灼することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生体組織の所定範囲を均一に焼灼したい場合、特許文献1に記載された装置では困難である。
【0005】
具体的には、中空に形成された内面に反射面を製作するには、内面をスパッタリング、蒸着、塗布等の様々な手法が用いられるが、いずれも、前記内面を露出させて、行う必要がある。この際、内面を構成する形状やその角度により、前記手法による反射面生成後の反射率にムラが生じ、均一な光量を得られなくなる。
【0006】
本発明の目的は、生体組織の所定範囲を均一に焼灼することが可能な光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、一態様として、生体組織の焼灼に用いられる、筐体を有する光照射装置の製作方法であって、平板状に形成された部材の一面に光の反射面を生成する生成工程と、前記一面を内側として前記部材を曲げることにより、中空の筒状に形成された前記筐体を組立てる組立工程と、を備える光照射装置の製作方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生体組織の所定範囲を均一に焼灼することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の照射システムの全体構成を説明する図である。
【
図2】第1実施形態の照射システムの導光体及び光照射装置の断面図である。
【
図3】第1実施形態における筒状部の(a)組立前と(b)組立後の斜視図である。
【
図4】第1実施形態における光照射装置の側面図を制作工程順に並べた図であり、(a)組立後の筒状部、(b)後端部材を取付けた状態、及び(c)パイプ取付け後の状態を示す。
【
図5】第1実施形態における光照射装置の側面図を制作工程順に並べた図であり、(a)後端部材を取付けた状態、及び(b)ネジ及びキャップを取り付けた状態を示す。
【
図6】(a)
図5のVIa線による光照射装置の断面図、及び(b)
図5のVIb線による光照射装置の断面図である。
【
図7】第1実施形態における光照射装置の製作工程のフローである。
【
図9】第2実施形態の制作方法1による光照射装置の斜視図を制作工程順に並べた図であり、(a)組立前の筒状部、(b)組立時の筒状部、及び(c)制作後の光照射装置を示す。
【
図10】第2実施形態における光照射装置の製作工程のフローである。
【
図11】第2実施形態の制作方法2による光照射装置の斜視図を制作工程順に並べた図であり、(a)組立前の筒状部、(b)組立時の筒状部、及び(c)制作後の光照射装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
==照射システム==
図1は、本実施形態の照射システム1の構成を説明する図である。照射システム1は、光源装置2と、導光体3と、光照射装置4とを備える。
【0011】
[光源装置]
光源装置2は、生体組織を焼灼するための光を生成する装置である。光源装置2は、焼灼する組織の光吸収/散乱特性に合わせた波長領域の光を生成する光源を有する。具体的に光源は、レーザ光源、LED光源、ハロゲンランプ、キセノンランプ等若しくは前記光源を光ファイバーなどの伝送手段により、導光した光である。
【0012】
[導光体]
図2~6は、本実施形態の導光体3及び光照射装置4の構成を説明するための断面図である。以下においては、
図2などに示すように、互いに直交するx軸、y軸及びz軸からなる直交座標系を用いて説明する。
図2は、導光体3及び光照射装置4を、後述する本体部40の中心Оを通るxy平面で切断したときの断面図である。
【0013】
導光体3は、例えば光ファイバーのような、光源装置2からの光を光照射装置4まで伝搬させる部材である。導光体3の一端は、光源装置2に接続される(
図1)。導光体3の他端は、光照射装置4の端部に接続される(
図1、2)。光源装置2から導光体3の一端に入射した光は、導光体3を伝搬し、光照射装置4の内部に入射する。
【0014】
以下の説明では、特に断らない限り、導光体3の端部のうち、光照射装置4側の端部を単に「端部」と呼ぶ。また、特に断らない限り、導光体3の端部において光源装置2からの光が出射する面を「端面3a」と呼ぶ。導光体3の端面3aは、平坦な形状である。また、光照射装置4において、導光体3と接続する端部を後端部、その反対を前端部と称する場合がある。
【0015】
[光照射装置]
光照射装置4は、導光体3からの光を集光し、焼灼する生体組織に対して光を出射する装置である。光照射装置4は、本体部40と、本体部40に固定されるキャップ41と、後端部材42と、本体部40の外周を覆うパイプ43とを有している。
【0016】
(本体部)
本体部40は、中空の筒状部材であり、筒状部401と、前壁部402とを有している。筒状部401及び前壁部402は、本体部40の筐体を形成する。本体部40は多角形状の中空断面を持つ(
図6)。以下では一例として、本体部40が略正六角形の中空断面を有する場合について説明する。
【0017】
筒状部401は、軸X1を軸心とし、正六角形の断面を持つ筒状に形成される。筒状部401の内側には、光を反射する材料が成膜された、光を反射可能である反射面401aが形成される。反射面401a形成のために成膜される材料としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)等の金属材料が用いられる。光源装置2で生成される光が赤外光の波長域である場合、光を反射する材料としては、金(Au)等の金属材料が用いられる。成膜方法には、スパッタリング、蒸着、塗布など種々の方法が採用され得る。
【0018】
軸X1はX軸に対して平行である。なお、以下の説明では、本体部40及び筒状部401の軸X1に沿った長さを、それぞれ「本体部40の長さ」及び「筒状部401の長さ」と称する。また、軸X1上における、筒状部401の長さ方向における中点を、「筒状部401の中心O」、又は「本体部40の中心O」と呼ぶ。また、筒状部401の長さをL1とする。
【0019】
筒状部401とパイプ43には、軸X1と平行に延びる細長い開口である、出射口4bが形成されている。出射口4bは、光反射装置4の径方向に延びる孔であり、筒状部401とパイプ43の双方を貫通し、光反射装置4の内部空間と外部空間とを繋げている。出射口4bの形状は、軸X1に平行な長辺を有する長方形である(
図2、
図3)。出射口4bは、導光体3の端面3aから出射した光を、外部に出射させる機能を有する。出射口4bを生体組織の焼灼対象部位に位置させて、出射口4bから光を出射させることにより、生体組織を焼灼することができる。
【0020】
なお、出射口4bの形状は、楕円形、角丸四角形等であってもよい。また、出射口4bの数は複数であってもよい。また、出射口4bに透明部材を充填することによって、本体部40の内部を密閉してもよい。または、本体部40の外周面側から、又は内周面側から出射口4bを透明部材で覆うことによって、本体部40の内部を密閉してもよい。
【0021】
前壁部402は、前壁部402は略六角形の平板部材である。前壁部402は、軸X1に対して直交するように筒状部401の前端部に固定されている。前壁部402は、筒状部401の内側を向き、軸X1に垂直な反射面402aを有している。反射面402aは、光を反射する材料が成膜され、光を反射する機能を有する。成膜に用いられる材料及び成膜方法は、反射面401aと同様である。
【0022】
キャップ41は、本体部40の前端部において、前壁部402を覆うように取り付けられる部材であり、略半球状に形成される(
図5(b)、
図6(a))。
【0023】
後端部材42は、筒状部401の後端部に固定された部材である。後端部材42は、X1軸方向視において略円形に形成された部材であり、X1軸方向に延びる孔部42aを有する。後端部材42は、筒状部401に対し、ネジ42Bによって固定されている。詳細には、ネジ42Bは後端部材42とネジ作用により接続し、また、その端部は筒状部401の外周面と接触する。
【0024】
孔部42aは、X1軸方向視において略六角形状に形成される。孔部42aには筒状部401が挿入される。さらに孔部42aには、端面3aが筒状部401の内部を向くように、導光体3の端部が挿入され、固定されている。これによって、光源装置2からの光を、導光体3の端面3aから出射させ、本体部40の内部に入射させることができる。
【0025】
パイプ43は、X1軸方向に延びる筒状の部材である。パイプ43には、X1軸方向に延びるとともにX1軸方向視で略正六角形状の孔部43aが形成され、筒状部401が挿入される(
図2、
図6(b))。孔部43aの径は、筒状部401の外径よりもわずかに小さい。そのためパイプ43は、挿入された筒状部401を径方向内方へ押圧し、筒状部401の形状を保持することができる。パイプ43には、上述の通り、出射口4bが形成される。
【0026】
以上、本実施形態の照射システム1の構成について説明した。本実施形態では、本体部40の外部に光源装置2が設けられ、導光体3を介して光源装置2からの光を本体部40の内部に導くこととしたが、これに限られるものではない。例えば、本体部40の内部に、LED素子等の光源素子を配置してもよい。また、導光体3の、光照射装置4から所定距離の箇所に、術者が照射システム1を操作する際に手で把持するための把持部を更に備えてもよい。
【0027】
==組立==
光照射装置4の制作方法について、以下に説明する。
図7に示すように、光照射装置4の制作には、S1からS6までの工程が含まれる。
【0028】
まず工程S1において、平板PL1、及び、前壁部402が用意される(
図3)。平板PL1は、筒状部401の元になる部材であり、短辺と長さL1の長辺とを持つ略長方形の平板である。なお平板PL1には、
図3(a)に示すように予め出射口4bに相当する開口が形成されてもよいし、後述する工程S2において形成されてもよい。
【0029】
工程S2において、平板PL1に対して、長辺と平行な5つの溝Gが形成される。また、溝Gは等間隔に形成される。
図3(a)などに示すように、溝Gの断面は楔形に形成されるが、その他の形状に形成されてもよい。
【0030】
なお、溝Gの数は本体部40の断面形状に基づく。例えば、本体部40が8角形状の断面を有する場合であれば、溝Gは7つ形成される。
【0031】
次の工程S3において、平板PL1及び前壁部402の表面に対して、光を反射する材料の成膜が行われる。詳細に述べると、まず平板PL1の表面を研磨し、次いで、金属材料などの反射材が平板PL1及び前壁部402の表面に成膜される。前述の通り、成膜の方法にはスパッタリング、蒸着、塗布などが挙げられる。この工程により、反射面401a及び反射面402aが形成される。
【0032】
次に、本体部40の組立が行われる(S4)。まず、平板PL1が溝Gに沿って折り曲げられ、2つの長辺同士を隙間なく合わせる(
図3(b))。これにより略正六角形の断面を持つ筒状の筒状部401が組立てられる。筒状部401の前端部には、反射面402aが筒状部401と対向するように、前壁部402が取り付けられる(
図3(b)、
図4(a))。
【0033】
工程S5において、本体部401の後端部は後端部材42に挿入される。また、筒状部401に対してパイプ43が取り付けられる。具体的には、パイプ43の内部に筒状部401が挿入される。ここで、パイプ43の孔部43aの径は、筒状部401の外径よりも小さい。そのため、パイプ43は筒状部401に対し、外方から押圧するように力を加える。筒状部401がパイプ43から押圧されるため、継ぎ目(平板PL1の長辺の合わせ目)が離れたり、断面が変形したりすることが防止される。
【0034】
工程S6において、本体部40の前端部において、前壁部402を覆うようにキャップ41が固定される(
図5)。後端部材42はネジ42Bによって固定される。
【0035】
上記の手順により、光照射装置4の制作が完了する。制作完了後、後端部材42に導光体3が挿入され、光照射装置4と導光体3とが接続される。
【0036】
上記の制作方法では、筒状部401の組立前に反射面401a及び反射面402aが形成される。光の反射材料が均一に成膜された、すなわち光の反射性能が均一な、反射面401a及び反射面402aを得ることができる。
【0037】
==光の伝搬について==
光源装置2で生成された光は、導光体3を伝搬し、導光体3の端面3aから出射する(つまり、光照射装置4の本体部40の内部に入射する)。このとき、導光体3の端面3aに対して多様な角度を持って進行する光が、本体部40の内部に入射する。
【0038】
導光体3の端面3aから出射した光の一部は、反射面401aでの反射を繰り返しながら、反射面402aの方向へ伝搬する。先端側の反射面402aに到達した光は、反射面402aで反射される。
【0039】
つまり、本体部40の内部の光は、本体部40の外部に出射しない限り、反射面401a及び反射面402aにおいて反射を繰り返しながら伝搬する。
【0040】
本体部40の内部を進行する光の一部は、出射口4bに到達し、出射口4bから本体部40の外部に出射する。出射口4bから出射した光によって、生体組織を焼灼することができる。
【0041】
上述のように、反射面401a及び反射面402aでは、光の反射材料が均一に成膜されている。そのため、本体部40の内部において、光の照度分布が均一となる。
【0042】
また、筒状部401は、軸X1について対称な多角形状を有する。そのため、本体部40の内部の光の照度分布において、本体部40の長さ方向についての均一性は、他の方向についての均一性に比べて高い。
【0043】
本実施形態において、出射口4bは、本体部40の長さ方向に長さ方向を有する長尺の形状である。本体部40の内部の光の照度は、高い均一性を持つ。これに伴い、出射口4bから出射する光の照度も高い均一性を持つ。このことから、本実施形態の光照射装置4によれば、均一性の高い光で生体組織を焼灼することができる。
【0044】
なお、筒状部401の長さL1が大きいほど、本体部40の内部において、筒状部401の内周面に設けられた反射面401aの部分での反射の頻度が高くなる。従って、筒状部401の長さL1が大きいほど、本体部40の内部での光の損失を抑えるためには、少なくとも筒状部401の内周面に設けられた反射面401aの部分の反射率を高くすることが必要である。なお、Ag(銀)を蒸着することにより反射面401aを形成すれば、96~98%程度の反射率が得られる。
【0045】
なお前壁部402は、筒状部401と一体に成型されていてもよい。この場合、
図8に示すような前壁部402が接合した状態での平板PL1を用意し、溝Gに沿って折り曲げることによって本体部40を組み立てることができる。この場合、工程S2において、溝Gを筒状部401(平板PL1)と前壁部402との間にも形成することが望ましい。
【0046】
なお、筒状部401の前端側だけでなく、後端部にも軸■1に垂直な反射面が設けられ
、光が反射されてもよい。また、前壁部402を備えず、本体部40の前端から光が照射される構成としてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、本体部40において、軸X1に直交する平面(yz平面)で切断したときの断面形状(以下、単に「本体部40の断面形状」と呼ぶ)は略正六角形であるが、これに限られるものではない。本体部40の断面形状は、多角形としてもよい。例えば、断面形状が四角形の場合、筒状部401は、四角形の断面を持つ筒状となる。
【0048】
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態による光照射装置5の構成を説明する図である。光照射装置5は第1実施形態と同様に、導光体3に接続される部材である。
【0049】
光照射装置5の本体部50は、軸X1を軸心とし、略正円形状の断面を持つ筒状部501を備える。また本体部50は、筒状部501の前端部に固定された、■1軸方向視で略
円形の前壁部502を備える。第1実施形態と同様、本体部50の前部にはキャップ51が、後部には後端部材52が取り付けられる。本体部50には、本体部50の外周を覆うように、略円筒形状のパイプ53が装着される。
【0050】
(制作方法1)
光照射装置5の制作は、
図10に示す工程により実行される。
図10の工程は、第1実施形態(
図7)と異なり、溝Gを形成する工程S2が省略されている。これ以外の工程は、第1実施形態と同様である。
【0051】
制作工程では、平板PL2を準備し(S11)、平板PL2の表面の研磨後、平板PL2の表面に、光を反射する材料で反射面501a、502aを形成する(S13、
図9(a))。研磨方法及び内面の形成方法、使用材料は、第1実施形態の工程S3と同様である。
図9(a)では平板PL2に出射口5bが形成されているが、出射口5bは後の工程で形成されてもよい。
【0052】
さらに工程S14において、平板PL2を短辺方向に曲げ、長辺同士を隙間なく合わせて接触させることによって筒状部501が組立てられる(
図9(b))。筒状部501の前端部には前壁部502が取り付けられる。
【0053】
次に筒状部501の外周を覆うように、略円筒形状のパイプ53が取り付けられる(S15、
図9(c))。第1実施形態と同様に、パイプ53の内径は筒状部501の外径よりも小さい。パイプ53の取付けによって、筒状部501は外方から押圧され、その形状が維持される。また、後端部材52が本体部50の後端部に取り付けられる。
【0054】
さらに、キャップ51が本体部50の前端部に取り付けられることによって、光照射装置5が完成する(S16)。
【0055】
(制作方法2)
なお、以下のような方法及び材料を用いて、本体部50を組み立てることも可能である。
【0056】
まず、
図11(a)に示すように、平板PL2よりも細長い形状を持つ平板PL3を用意し、その表面を研磨し、さらに反射面501aを形成する(工程S11、S13)。
【0057】
次に平板PL2を、X1軸を中心としてらせん状に曲げていき、筒状部501を組み立てる(工程S14、
図11(b))。筒状部501には、キャップ51に加えて後端部材52及びパイプ53が取り付けられ、これにより本体部50の形状が維持される(工程S15、
図11(c))。
【0058】
なお、筒状部501の断面形状、前壁部502、及びパイプ53の断面形状は正円に限定されない。これらの形状はオーバル状に形成することが可能である。ここで、オーバル状とは、正円、楕円、長円、たまご型を包含する概念であり、外方へ凸となる滑らかな連続曲線で形成される図形で、少なくとも1つの軸に対して線対称であるという特徴を持つ。
【0059】
なお、先端側の前壁部502の形状は、この例に限られるものではない。例えば半球面、円錐の側面等の形状であってもよい。
【0060】
<効果>
上記の実施形態による光照射装置4、5の制作方法は、平板状に形成された平板PL1、PL2、PL3の一面に光を反射する反射面401a、501aを生成する工程S3、S13と、反射面401a、501aを内側として部材を曲げることにより、中空の筒状に形成された筒状部401、501を組立てる工程S4、S14と、を備える。
【0061】
このような構成によれば、平板PL1、PL2、PL3に対して反射面401a、501aを生成するため、均一な光の反射面を生成することが可能となる。そのため、筒状部401内部における光の照度の均一性が向上する。生体組織の拡がりを有する領域に、均一な光を照射することが可能になる。
【0062】
詳細に述べると、従来の技術によって本体部40の内部に光の反射面を形成する場合、円柱や多角柱状の中空内に金属を蒸着しようとしても、中空内部に金属蒸着ガスを均一に入れることができない。このため、円柱や多角形状を長手方向に切断して2以上の部分に分割し、内面を露出させ、反射膜を塗布する必要があった。しかし円柱であれば半円形状の、多角柱であれば多角形状の、立体の断面と内面が形成される。このような立体構造に研磨や蒸着を行うと、研磨ムラもしくは蒸着ムラなどが生じやすく、均一な蒸着面を作ることが難しい。
【0063】
一方、上記各実施形態ではこのような従来技術での課題は解決される。各実施形態では平面に対して研磨や成膜を実施できるため、均一な光の反射面の生成が可能である。
【0064】
上記実施形態による制作方法は、平板PL1の表面に対して溝Gを形成する工程S2が含まれ、工程S4、S14において、溝Gに沿って平板PL1が曲げられる。
【0065】
このように溝Gを生成し、溝Gに沿って平板PL1を曲げて筒状部401を組み立てるため、筒状部401の組立は正確に実行される。また、精度の高い筒状部401を組み立てることが可能となる。
【0066】
上記実施形態の工程S4、S14において、筒状部401は多角形状の断面を、また、筒状部501は円形状または長円状の断面を持つように組み立てられる。特に、筒状部501は、平板PL3をらせん状に曲げることによって組み立てることが可能である。
【0067】
上記構成では、このように用途に応じた様々な断面形状を持つ筒状体を形成することが可能となる。また、平板PL1、PL2、PL3の材質に応じて、曲げ方を選択することもできる。筒状部401、501がどのような断面形状を持っていても均一な反射性能を持った内面が得られるため、光照射装置4、5の性能を高いものとできる。
【0068】
上記実施形態では、筒状部401、501の外周を覆うようにパイプ43、53、または後端部材42(いずれも保持部材に相当)が取り付けられる(S5、S15)。
【0069】
パイプ43、53、または後端部材42を用いて筒状部401、501の形状を保持するため、組立時(S4、S14)において、筒状部401、501の継ぎ目を接着する必要が無い。パイプ43、53を使った容易な方法により筒状部401、501の形状を正確に維持し、性能の高い光照射装置4、5とすることができる。
【0070】
上記実施形態において、内面を生成する工程S3、S13は、平板PL1、PL2、PL3の一面を研磨する工程と、この面へ金属を蒸着させて反射面を生成する工程と、を有する。
【0071】
平板の状態で研磨と金属の蒸着を実施するため、均一な反射性能を持った反射面401a、501aを得ることが可能となる。性能の高い光照射装置4、5とすることができる。
【符号の説明】
【0072】
1:照射システム
2:光源装置
3:導光体
4:光照射装置
40:本体部
401:筒状部
402:前壁部
4b:出射口
5:光照射装置
50:本体部