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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071313
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】光無線給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/90 20160101AFI20230516BHJP
   H02J 50/30 20160101ALI20230516BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20230516BHJP
   B60L 53/10 20190101ALI20230516BHJP
   B60L 53/35 20190101ALI20230516BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20230516BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/30
H02J50/80
B60L53/10
B60L53/35
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183989
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 旬
【テーマコード(参考)】
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5H105AA01
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC07
5H105DD10
5H105EE13
5H105EE19
5H105GG05
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC25
5H125BE02
5H125DD02
5H125EE51
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】発光器を備える送電装置と、受光して電力を出力する受光器を備える受電装置とで構成される光通信給電装置における給電効率を高める。
【解決手段】光を出射する発光器11を備える送電装置1と、出射された光を受光して電力を出力する受光器21を備える受電装置2とで構成される光通信給電装置であり、受電装置2は、受光器21の受光面の傾きを変化制御する受電制御手段22を備える。受光器21は2軸傾動台3(3R)に固定され、受電制御手段22は受光器21の出力電力を検出し、その偏りに基づいて2軸傾動台3を制御して受光器21を傾動する。受光器21は傾動されたときに最大受光感度のある主受光軸が発光器11の主発光軸の方向に向けて制御される。
【選択図】 図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する発光器を備える送電装置と、出射された光を受光して電力を出力する受光器を備える受電装置とで構成される給電装置であって、前記受電装置は、前記受光器の受光面の傾きを変化制御する受電制御手段を備えることを特徴とする光無線給電装置。
【請求項2】
前記受光器は、受光面の中心から所定方向に伸びる主受光軸の軸方向に最大受光感度がある指向性を有する請求項1に記載の光無線給電装置。
【請求項3】
前記受電装置は前記受光器を支持しかつ当該受光器を二次元方向に傾動させる2軸傾動台を備え、前記受電制御手段は当該2軸傾動台を傾動制御する請求項2に記載の光無線給電装置。
【請求項4】
前記受電制御手段は、前記受光器から出力される電力に基づいて前記受光面での受光の偏りを検出し、この偏りを含む傾動情報を出力する電力検出手段と、この傾動情報に基づいて前記2軸傾動台を制御する傾動制御手段を備える請求項3に記載の光通信給電装置。
【請求項5】
前記電力検出手段は前記受光器の全出力電力を検出する全電力検出部を備え、前記傾動制御手段は検出した全出力電力が最大になるように前記2軸傾動台を制御する請求項4に記載の光無線給電装置。
【請求項6】
前記受光器は互いに交差する方向に枡目状に配列された複数の受光セルを備え、前記電力検出部は、これら複数の受光セルのそれぞれの出力電力を検出する単位電力検出部と、検出した各受光セルの出力電力に基づいて出力電力の分布を検出するとともに、検出した分布から前記傾動情報を出力する分布検出部を備える請求項2ないし5のいずれかに記載の光無線給電装置。
【請求項7】
前記複数の受光セルは受光面のX方向及びY方向に配列され、前記分布検出部は各受光セルのX方向及びY方向の出力電力の分布から前記傾動情報を演算する請求項6に記載の光通信給電装置。
【請求項8】
前記送電装置は、前記発光器の発光面の傾きを変化制御する送電制御手段を備える請求項1ないし7のいずれかに記載の光通信給電装置。
【請求項9】
前記送電装置は前記発光器を支持しかつ当該格好器を二次元方向に傾動させる2軸傾動台を備え、前記送電制御手段は、前記受電装置の傾動情報に基づいて当該2軸傾動台を傾動制御するための傾動制御手段を備える請求項8に記載の光無線給電装置。
【請求項10】
前記受電装置と前記送電装置は、少なくとも前記傾動情報を受電装置から送電装置に送信する通信部を備える請求項8又は9に記載の光通信給電装置。
【請求項11】
前記受電装置は車両に搭載され、前記送電装置は地上に配設される請求項1ないし10のいずれかに記載の光通信給電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送電装置から受電装置に光無線により電力を給電する光無線給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車を含む車両において、地上側に設けられた送電装置から、車両側に設けられた受電装置に対して無線により給電を行う無線給電装置が提案されている。例えば、特許文献1には、磁界共振や磁界誘導を利用した無線給電装置が提案されている。また、特許文献2には、車両に搭載した受電装置を太陽電池で構成し、地上側から照射した光を受光して給電を行う光無線給電装置が提案されている。
【0003】
この種の無線給電装置において、送電装置の電力を高い効率で受電装置に給電するためには、送電装置と受電装置が所定の位置関係にあることが好ましい。特に、特許文献2の光無線給電装置では、太陽電池の複数のセルの全てに対して送電装置からの光が照射されることが好ましく、そのために、受電装置の受電量を検出し、この受電量が所定の値になるように受電装置の位置決め、すなわち車両の位置決めを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-83141号公報
【特許文献2】特開2016-123179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のような光を利用した光無線給電装置では、送電装置に供給した電力と受電装置で受電した電力の比率である「給電効率」を高めるためには、送電装置から光を出射する光出射面と、出射された光を受光する受電装置の受光面を「正対」させることが好ましい。すなわち、送電装置の光出射面から光を出射する発光素子の光強度に指向性があり、また受電装置の受光面で光を受光する受光素子の受光感度に指向性がある場合には、光出射強度が最大になる方向の主発光軸(光出射面の中心から垂直に伸びる軸)と、受光感度が最大になる方向の主受光軸(受光面の中心から垂直に伸びる軸)を一致させるように光出射面と受光面を対向配置することが好ましい。ここでは、このような主発光軸と主受光軸を一致させた対向状態を「正対」と称する。特許文献2の技術は、送電装置と受電装置の相対位置を制御しているが、両者を正対することについては特に考慮されておらず、給電効率を更に改善する上での課題が残されている。
【0006】
本発明の目的は、給電効率の高い光無線給電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光無線給電装置は、光を出射する発光器を備える送電装置と、出射された光を受光して電力を出力する受光器を備える受電装置とで構成される給電装置であって、受電装置は、受光器の受光面の傾きを変化制御する受電制御手段を備える。ここで、受光器は、受光面の中心から所定方向に伸びる主受光軸の軸方向に最大受光感度がある指向性を有する受光器に適用されることが好ましい。また、受電装置は受光器を支持しかつ当該受光器を二次元方向に傾動させる2軸傾動台を備え、受電制御手段は当該2軸傾動台を傾動制御する構成であることが好ましい。
【0008】
本発明において、受電制御手段は、受光器から出力される電力に基づいて前記受光面での受光の偏りを検出し、この偏りを含む傾動情報を出力する電力検出手段と、この傾動情報に基づいて受光面の傾きを変化制御する傾動制御手段を備える。例えば、電力検出手段は受光器の全出力電力を検出する全電力検出部を備え、傾動制御手段は検出した全出力電力が最大になるように2軸傾動台を制御する。
【0009】
また、受光器は互いに交差する方向に枡目状に配列された複数の受光セルを備え、電力検出部は、これら複数の受光セルのそれぞれの出力電力を検出する単位電力検出部と、検出した各受光セルの出力電力に基づいて出力電力の分布を検出するとともに、検出した分布から傾動情報を出力する分布検出部を備える構成とすることが好ましい。例えば、複数の受光セルは受光面のX方向及びY方向に配列され、分布検出部は各受光セルのX方向及びY方向の出力電力の分布から傾動情報を出力する。
【0010】
本発明において、さらに送電装置は発光器の発光面の傾きを変化制御する送電制御手段を備えることが好ましい。例えば、送電装置は発光器を支持しかつ当該発光器を二次元方向に傾動させる2軸傾動台を備え、送電制御手段は受電装置の傾動情報に基づいて当該2軸傾動台を傾動制御するための傾動制御手段を備える。この場合において、受電装置と送電装置は、傾動情報を受電装置から送電装置に送信する通信部を備える構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、受電装置において受電制御手段により受光器の受光面の傾きを変化制御することにより、受光器の受光面を送電装置の発光器の発光面に対して正対する方向に向けて制御することが可能になり、送電装置と受電装置による光通信給電装置給電効率を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】光無線給電装置を電気自動車に適用した実施形態の概念図。
図2】発光器の光強度特性と受光器の受光感度特性の概念図。
図3】光無線給電装置のブロック構成図。
図4】電力検出回路部の概念構成図。
図5】2軸傾動台の概略構成図。
図6】給電作用のフロー図。
図7】受光器における電力分布の偏りを説明する模式図。
図8】受光器及び発光器の傾動作用を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1には本発明の光無線給電装置を電気自動車に適用した実施形態が示されており、給電ステーションSTに設けられた送電装置1により、電気自動車EVに設けられた受電装置2に対して給電を行う形態が示されている。受電装置2を備えた電気自動車EVが給電ステーションSTの略所定位置に停車すると、送電装置1から所要の光が出射され、電気自動車EVの受電装置2はこの光を受光して光電変換することにより受電が行われる。
【0014】
前記給電ステーションSTに配設された送電装置1は、発光面111が下方に向けて配設された発光器11を備えている。この発光器11は、紫外線ランプ、白熱ランプ、蛍光灯、LED(発光ダイオード)等の高輝度の光を出射する光源112を備えており、発光されたときに所要の光度の光を発光面111から出射するように構成されている。ここでは、発光器11には複数の光源112が平面配置された構成とされている。
【0015】
この発光器11から出射される光は、図2に概念図を示すように、発光面111に対して光出射光軸Asに沿った方向の光強度が高く、この光出射光軸Asからの光出射角度が大きくなると光強度が弱くなる指向性を有している。ここでは、発光面111に対して垂直な方向の光強度が最も大きくされており、この発光面111の中心から垂直方向に伸びる軸が主発光軸Asとなる。
【0016】
一方、電気自動車EVのルーフ上に搭載されている受電装置2は、受光面211が上方に向けられた受光器21を備えている。この受光器21は複数の受光セル212を備えており、各受光セル212は、受光した光を光電変換して電力を出力する。受光器21は受光面211に対して所定の光入射光軸方向から入射される光について受光感度が最大となる指向性を有しており、ここでは受光面211に垂直な軸方向の受光感度が最も大きくなるので、受光面の中心から垂直方向に伸びる軸が主受光軸Arとなる。
【0017】
図3は光無線給電装置のブロック構成図である。送電装置1では、前記発光器11はその発光面111の角度を変化させることが可能な2軸傾動台3Sに支持されている。また、送電装置1は、これら発光器11及び2軸傾動台3Sを制御する送電制御部12と、受電装置2との間でビーコン等の近距離無線通信により情報を送受する通信部13を備えている。その上で、送電制御部12は、発光器11の発光を制御する発光回路部14と、2軸傾動台3Sを制御する傾動台制御回路部15を備えている。
【0018】
発光回路部14は、例えば、商用電源を利用して発光器11の光源112を発光させる機能を有しており、電気自動車EVが給電ステーションSTに停車したときに光源112に電力を供給して発光させる構成とされている。また傾動台制御回路部15は、後述するように通信部13で受信した受電装置2からの傾動情報に基づいて2軸傾動台3Sを制御するための制御情報を演算する傾動制御部151と、この傾動制御部151で演算された制御情報に基づいて2軸傾動台3Sを制御し、発光器11の発光面111を傾動させる傾動駆動部152を備えている。
【0019】
一方、図3において、電気自動車EVに搭載された受電装置2は、前記したように受光器21を構成している複数の受光セル212は発光器11から出射された光を受光し、受光した光を光電変換して電力を出力する光電素子(太陽電池)で構成されている。複数の受光セル212は、受光器21の受光面211に沿って枡目状に平面配列された構成とされている。各受光セル212は、それぞれ1つの独立したセルとして構成されており、受光セル212毎に受光した光を光電変換してそれぞれ電力を出力することが可能とされている。
【0020】
図3において、受電装置2は、受光器211の受光面の角度を変化させることが可能な2軸傾動台3Rと、これら受光器21と2軸傾動台3Rを制御する受電制御部22と、送電装置1の前記通信部13との間で情報を送受する通信部23を備えている。受電制御部22は、受光器21が受光したときに出力される電力を検出する電力検出回路部24と、検出された電力に基づいて2軸傾動台3(3R)を制御する傾動台制御回路部25と、受光器21から出力される電力を電気自動車EVの電源として処理するための電源回路部26を備えている。特に、電源回路部26は電気自動車EVの走行駆動部4に所要の電力を供給することが可能とされており、電気自動車EVの走行用モータを駆動し、あるいは電気自動車EVに搭載されているバッテリーを充電する機能を備えている。
【0021】
図3において、受電装置2の受光器21及び2軸傾動台3Rに接続されている受電制御部22の電力検出回路部24は、受光器21を構成している複数の受光セル212のそれぞれの出力電力(電流・電圧)を検出する単位電力検出部241と、これら複数の受光セル212の出力電力の合計である全出力電力を検出する全電力検出部242を備えている。また、単位電力検出部241で検出した各受光セル212の出力電力を受光面211のX方向及びこれに垂直なY方向を基準とするXY座標上に展開して受光面211における出力電力の分布や偏りを検出する分布検出部243を備えている。
【0022】
図4は、電力検出回路部24の概念構成図であり、ここでは図示と説明を簡略化するために、受光器21は9個(3×3個)の受光セル212で構成されているものとしている。単位電力検出部241は9個の各受光セル212のそれぞれの出力電力を個別に検出する。全電力検出部242は、これら9個の受光セル212の出力電力の合計を検出する。分布検出部242は、詳細については後述するが、これら9個の受光セル212の各出力電力がX方向とY方向について分布している状態を検出する。
【0023】
また、図3において、傾動台制御回路部25は、電力検出回路部24から出力される傾動情報に基づいて2軸傾動台3Rを制御するための制御情報を演算する傾動制御部251と、この傾動制御部251で演算された制御情報に基づいて2軸傾動台3Rを制御し、受光器21の受光面211を傾動させる傾動駆動部252を備えている。
【0024】
図5は、送電装置1と受電装置2にそれぞれ設けられている2軸傾動台3S,3Rの一部を分解した概略構成図である。各2軸傾動台3S,3Rは同じ構成であるので、以降は2軸傾動台3として説明する。2軸傾動台3は、固定基板31の上にX傾動板32とY傾動板33が支持されており、X傾動板32とY傾動板33はそれぞれ固定基板31のX方向軸とY方向軸を軸として傾動可能に構成されている。すなわち、X傾動板32は四角枠状に形成されており、そのX方向の両側部から突出されたX軸321が固定基板31の上面のX方向の両側に配設されたX軸受322に軸支され、X軸321の周りに傾動可能とされている。
【0025】
図5に、その一部の拡大図を示すように、対をなすX軸321の一方にはX従動ギア323が固定されており、このX従動ギア323は固定基板31に搭載されたXモータ324の回転軸に固定されたX駆動ギア325に歯合されている。したがって、Xモータ324が回転駆動されると、回転力はX駆動ギア325からX従動ギア323、更にX軸321に伝達され、X傾動板32は固定基板31に対してX軸321の周りに傾動される。
【0026】
また、Y駆動板33は四角板状に形成されており、そのY方向の両側部から突出されたY軸331がX傾動板32の上面のY方向の両側に配設されたら軸受332に軸支され、Y軸331の周りに傾動可能とされている。対をなすY軸331の一方には、詳細は省略するがX駆動板32を傾動する構成と同様に、Y従動ギア333、Yモータ334、Y駆動ギア335が設けられている。これにより、Y傾動板33はX傾動板32に対してY軸周りに傾動され、さらに言えばY傾動板33は固定基板31に対して、X軸周り及びY軸周りに傾動されることになる。
【0027】
そして、受電装置2においては、2軸傾動台3の固定基板31は電気自動車EVのルーフに固定されており、Y傾動板33には受光器21が一体的に取り付けられている。これにより、受光器21は、固定基板31に対してX軸周りとY軸周りに傾動され、結果として電気自動車EVのルーフ面に対して二次元方向に傾動可能とされている。また、送電装置1においては、2軸傾動台3の固定基板31は受電装置2とは上下を逆向きにした状態で給電ステーションSTの固定構造物の一部に固定されており、Y傾動板33には発光器11が発光面111を下方に向けられた状態に搭載され、発光面11は路面に対して二次元方向に傾動可能とされている。
【0028】
以上説明した送電装置1と受電装置2により構成される光無線給電装置は、図1に示したように、電気自動車EVが給電ステーションSTの所定位置に停車したときに、送電装置1は発光回路部14により発光器11を制御して光を出射させる。また、受電装置2は受光器21が受光したときに出力される電力に基づいて電源回路部26で走行駆動部4のモータ駆動やバッテリー充電を行う。
【0029】
この給電に際し、送電装置1の発光器11と、受電装置2の受光器21が正対していれば、すなわち図2に示したように、発光器11の主発光軸Asと受光器21の主受光軸Arが一致されていれば、給電効率の高い給電が可能になる。しかし、例えば、図8(a)に示すように、給電ステーションSTに対して電気自動車EVの停車位置にずれが生じていると、発光器11の発光面111と受光器21の受光面211は平行であるが、主発光軸Asと主受光軸Arとにずれが生じており、正対されていないため、発光器11から出射された最大光強度の光を受光器21において最大受光感度で受光することができなくなり、高い給電効率が得られないことがある。
【0030】
また、電気自動車EVに搭乗している乗員の員数や体重の違いや、搭載している荷物の個数や重量の違いにより、電気自動車EVの車体が路面に対して傾斜すると、受光器21の受光面211が路面に対して傾斜され、この場合でも発光器11の主発光軸Asと受光器21の主受光軸Arが一致しなくなり給電効率が低下することがある。
【0031】
この光無線給電装置においては、図6のフロー図に示すように、給電時には受電装置2の電力検出回路部24では、全電力検出部242において受光器21から出力される全電力を検出するS11(ステップ11:以下同様)。この検出した電力を、「現電力」とする。また、単位電力検出部241において、9個の受光セル212のそれぞれの出力電力を検出する(S12)。分布検出部243は単位電力検出部241で検出した9個の受光セル212の各出力電力について、図7に示すように、各受光セル212の出力電力をXY座標上に展開し、各受光セルに対応した電力分布を検出する。図7では、前記したように、受光セル212が3×3の配列例を示しており、各受光セル212の出力電力を3×3のXY座標上に配置した棒グラフで示している。
【0032】
そして、分布検出部243では、受光面におけるX方向とY方向のそれぞれについて出力電力の偏りを検出する(S13)。この偏りとして、例えば、X方向とY方向に沿った出力電力の値を包絡した近似勾配線の勾配角θx,θyを演算する。このような偏りが生じる理由は、受光器21の主受光軸Arが発光器11の主発光軸Asに対して位置ずれを起こしており、出力電力が大きな受光セルは出力電力の小さい受光セルよりも発光器11の主発光軸Asに近く位置されているためである。したがって、この偏り(勾配角)は、主発光軸Asからの各受光セル212までの距離の偏りを表していることになる。
【0033】
そして、これらの電力分布、全出力電力、偏り(傾き)の各情報が傾動情報とされ、この傾動情報は分布検出部243から傾動台制御回路部25に入力される。傾動台制御回路部25では、傾動台駆動部251は入力された傾動情報に基づいてX方向とY方向の偏りがそれぞれ小さくなるように2軸傾動台3Rを制御するための制御情報を演算し、傾動駆動部252は演算された制御情報に基づいて2軸傾動台3Rを制御して受光器21を傾動制御する(S14)。この傾動制御により、受光器21の主受光軸Arは発光器11の主発光軸Asに向けられた方向に制御される。すなわち、受光面211は発光面111に正対される方向に向けて傾動される。
【0034】
これと同時に、全電力検出部242は、傾動情報に含まれる全出力電力の変化を監視する。受光面211が発光面111に正対される方向に制御されて行くのに従って、各受光セル212の出力電力が均等になる方向に変化され、全出力電力が増加する方向に変化される。この変化された電力を「修正電力」とする(S15)。そして、傾動制御部251は、先の「現電力」と「修正電力」の電力値を比較する(S16)。
【0035】
このステップS16における比較で、「修正電力」が「現電力」よりも増加した場合には、ステップS11に戻り、以上のフローを繰り返す。一方、「修正電力」が「現電力」以下になった場合には、受光器から出力される全出力電力が最大になったものと推定されるので、2軸傾動台3Rの制御を停止する。なお、「修正電力」が「現電力」よりも低下されたときには、受光器21の傾動が反対方向に向けられたと考えられるので、この場合には2軸傾動台3Rを直前の状態に戻すようにしてもよい。
【0036】
これにより、受光器21の受光面211は、図8(b)に示すように、主受光軸Arが発光器11の発光面111の中心に向けられることになる。この状態は、主発光軸Asから各受光セル212までの距離が均一に近い状態になったと推定され、各受光セル212のそれぞれにおいて、これまでよりも高い受光感度で受光が行われる状態になる。したがって、受電装置2における給電効率が増加されることになる。
【0037】
ここで、図8(a),(b)に示した例では、電気自動車EVが所定位置から外れた位置に停車されており、受光器21の受光面211の中心が発光器11の発光面111の中心の直下に位置されていない。この場合には、主受光軸Arと主発光軸Asを正確に一致させることは難しく、光通信給電装置に潜在されている最大給電効率になるように制御することは難しい。
【0038】
そこで、以上の受電装置2における受光器21の傾動制御に加えて、受電装置2で得られた傾動情報を、通信部23から送電装置1の通信部13に送信する。なお、この傾動情報に加えて、受電装置2で演算された制御情報を送信するようにしてもよい。送電装置1では、通信部13で受信した傾動情報や制御情報に基づいて、送電制御部12の傾動台制御回路部15が2軸傾動台3Sを傾動制御する。この傾動制御は、図6に示した受電装置2での傾動制御のフローと基本的には同じであり、受光器21において生じているX方向とY方向の出力電力の偏りに基づき、これらの偏りを低減する方向に発光器11を傾動させる。
【0039】
この傾動制御は、受電装置2から送信されてくる傾動情報に含まれる全出力電力が増加している方向に変化されている間は継続される。すなわち、ステップS16において、「修正電力」が「現電力」よりも大きい間は継続される。これにより、図8(c)に示すように、発光器11の主発光軸Asを鉛直方向に対して傾斜させ、主発光軸Asを受光器21の受光面211の中心に向けることが可能になり、主発光軸Asを主受光軸Arに正確に一致させて正対させることができ、給電効率を更に高めることができる。すなわち、光通信給電装置に潜在されている最大給電効率に制御することが可能になる。
【0040】
ここで、前記した実施形態では、受電装置2における受光器21の傾動制御を行った後に、送電装置1における発光器11の傾動制御を行う例を説明したが、受電装置2における傾動制御と送電装置における傾動制御を同時に行うようにしてもよい。あるいは、受電装置2における傾動制御のみを行い、送電装置1における傾動制御は行わないようにしてもよく、この場合には送電装置1には発光器11を傾動制御するための構成を備えていなくてもよい。
【0041】
すなわち、図4に示したように、発光器11の光強度特性は受光器21の受光感度特性よりも広い指向性を有しているので、発光器11の傾動制御を行わなくてもある程度の高い給電効率を得られることがあるからである。受電装置2と送電装置1とで傾動制御を同時に行う場合には、制御プログラムが複雑になるが、受電装置2と送電装置1を独立して傾動制御するようにすれば制御プログラムを簡易化することができる。また、受電装置2での傾動制御のみを行う場合には、制御プログラムをさらに簡易化することができるとともに傾動制御するための構成が不要になって光通信給電装置の低コスト化が可能になる。
【0042】
また、実施形態では、給電ステーションに停車した電気自動車の車体が水平状態である場合について説明したが、電気自動車に搭乗している乗員の違いや搭載している荷物の違いにより車体が傾斜している場合には、受光器の受光面が水平方向に向けられておらず、発光器の発光面に対して平行でないこともある。本発明はこのような場合においても、受光器の受光面を傾動制御するとともに、発光器の発光面を傾動制御することにより、より給電効率を高めることが可能となる。
【0043】
本発明において、受光器や発光器を傾動させる2軸傾動台は、受光面や発光面を二次元方向に傾動させることが可能であれば実施形態に記載の構成に限られるものではない。例えば、受光器を車両の前後面や両側面に配設し、水平方向からの光を受光して給電を行うように構成されてもよい。また、受光器を構成する受光素子は光電変換素子であれば任意の素子が適用できる。さらに、給電効率を高めるために受光器の受光面を傾動制御する構成であれば、2軸傾動台を傾動制御する際のフローは実施形態に記載のものに限られるものではない。
【符号の説明】
【0044】
1 受電装置
2 送電装置
3(3S,3R) 2軸傾動台
4 走行駆動部
11 発光器
12 送電制御部
13 通信部
14 発光回路部
15 傾動台制御回路部
21 受光器
22 受電制御部(受電制御手段)
23 通信部
24 電力検出回路部(電力検出手段)
25 傾動台制御回路部(傾動制御手段)
26 電源回路部
211 受光面
212 受光セル
241 単位電力検出部
242 全電力検出部
243 分布検出部
EV 電気自動車
ST 給電ステーション

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8