(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071318
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け構造,乗り物用シート,及び乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20230516BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C27/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184000
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】521452902
【氏名又は名称】アディエント ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】土屋 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】庄野 元
【テーマコード(参考)】
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B087DE09
3B096AC12
(57)【要約】
【課題】シートバックが厚くならず後方の乗員と干渉しにくい乗り物用シートを提供する。
【解決手段】乗り物用シート(ST)は、後面側から厚さ方向に凹んだ第1凹部(524)及び第2凹部(527)を有するパッド(52)と、一部が第2凹部(527)において係止部(32a)として露出するようパッド(52)に埋め込まれたインサートワイヤ(3)と、第1凹部(524)に収容され、第2凹部(527)において露出した係止部(32a)に係止してパッド(52)に保持される送風ユニット(FA)と、を有するシートバック(ST2)を備えている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッドと、
前記パッドに形成された凹部と、
一部が前記凹部に係止部として露出するよう前記パッドに埋め込み配置されたインサートワイヤと、
前記係止部を係止させて前記凹部に収容された送風ユニットと、
を備えた、乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け構造。
【請求項2】
前記凹部を覆い内側に延びるフック部を有するトリムを備え、
前記フック部は前記送風ユニットに係止されている、
請求項1記載の、乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け構造。
【請求項3】
後面側から厚さ方向に凹んだ第1凹部及び第2凹部を有するパッドと、
一部が前記第2凹部において係止部として露出するよう前記パッドに埋め込まれたインサートワイヤと、
前記第1凹部に収容され、前記第2凹部において露出した前記係止部に係止して前記パッドに保持される送風ユニットと、
を有するシートバックを備えた乗り物用シート。
【請求項4】
前記インサートワイヤは、後面視で枠状を呈し、
前記係止部は、前記インサートワイヤの下部の第1係止部と、上部の第2係止部とを含み、
前記送風ユニットの下部が前記第1係止部と係止し、上部が前記第2係止部と係止している請求項3記載の乗り物用シート。
【請求項5】
前記パッドを覆うトリム及び前記トリムの前記後面側の部位から前方に延びるよう取り付けられたフック部を有し、
前記フック部が前記送風ユニットに係止されている請求項3又は請求項4記載の乗り物用シート。
【請求項6】
乗り物用シートのシートバックのパッドを、後面側から厚さ方向に凹んだ第1凹部及び第2凹部を形成すると共に、インサートワイヤを、後面視で枠状となり、かつ一部が前記第2凹部において係止部として露出するよう埋め込み配置しておき、
送風ユニットを、前記第1凹部に収容すると共に前記第2凹部において露出した前記係止部に係止して前記パッドに保持させる乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け方法。
【請求項7】
前記パッドを覆うトリムの前記後面側の部位から前方に延びるフック部を取り付けておき、前記フック部を前記送風ユニットに係止させる請求項6記載の乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け構造,乗り物用シート,及び乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、送風ユニットを備えた乗り物用シートが記載されている。特許文献1に記載された乗り物用シートは、シートバックにおいて、クッション材としてのシートパッドとシートパッドの後面の上部に貼り付けられた硬質のシートパッド裏蓋とを有する。送風ユニットは、シートパッド裏蓋の後面に対し外側からシール部材を介して取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された乗り物用シートは、送風ユニットがシートパッド裏蓋に対し後方に突出して取り付けられている。そのため、シートバックが厚くなって後方の乗員と干渉しやすくなる虞があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、シートバックが厚くならず後方の乗員と干渉しにくい、乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け構造,乗り物用シート,及び乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成、手順を有する。
1) パッドと、
前記パッドに形成された凹部と、
一部が前記凹部に係止部として露出するよう前記パッドに埋め込み配置されたインサートワイヤと、
前記係止部を係止させて前記凹部に収容された送風ユニットと、
を備えた、乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け構造である。
2) 前記凹部を覆い内側に延びるフック部を有するトリムを備え、
前記フック部は前記送風ユニットに係止されている、
1)に記載の、乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け構造である。
3) 後面側から厚さ方向に凹んだ第1凹部及び第2凹部を有するパッドと、
一部が前記第2凹部において係止部として露出するよう前記パッドに埋め込まれたインサートワイヤと、
前記第1凹部に収容され、前記第2凹部において露出した前記係止部に係止して前記パッドに保持される送風ユニットと、
を有するシートバックを備えた乗り物用シートである。
4) 前記インサートワイヤは、後面視で枠状を呈し、
前記係止部は、前記インサートワイヤの下部の第1係止部と、上部の第2係止部とを含み、
前記送風ユニットの下部が前記第1係止部と係止し、上部が前記第2係止部と係止している3)に記載の乗り物用シートである。
5) 前記パッドを覆うトリム及び前記トリムの前記後面側の部位から前方に延びるよう取り付けられたフック部を有し、
前記フック部が前記送風ユニットに係止されている3)又は4)に記載の乗り物用シートである。
6) 乗り物用シートのシートバックのパッドを、後面側から厚さ方向に凹んだ第1凹部及び第2凹部を形成すると共に、インサートワイヤを、後面視で枠状となり、かつ一部が前記第2凹部において係止部として露出するよう埋め込み配置しておき、
送風ユニットを、前記第1凹部に収容すると共に前記第2凹部において露出した前記係止部に係止して前記パッドに保持させる乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け方法である。
7) 前記パッドを覆うトリムの前記後面側の部位から前方に延びるフック部を取り付けておき、前記フック部を前記送風ユニットに係止させる4)に記載の乗り物用シートにおける送風ユニット取り付け方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シートバックが厚くならず後方の乗員と干渉しにくい、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る乗り物用シートの実施例であるシートSTを左前斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、シートSTを左後斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、シートSTが備える送風ユニットFAを左前斜め上方から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3におけるS5-S5位置での部分断面図である。
【
図6】
図6は、シートバックST2におけるパッド52の上部の後面図である。
【
図7】
図7は、
図6におけるS7-S7位置での断面図である。
【
図8】
図8は、パッド52に一部が埋没するように備えられたインサートワイヤ3を示す図であり、
図8(a)は前面図、
図8(b)は左側面図である。
【
図9】
図9は、パッド52に送風ユニットFAを取り付けた状態を示す
図3におけるS5-S5位置での断面図である。
【
図10】
図10は、シートバックST2におけるトリム8に設けられたフック部84を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、送風ユニットFAにフック部84を引っ掛けた状態を示す
図3におけるS5-S5位置での断面図である。
【
図12】
図12は、送風ユニットFAの取り付け構造TKを説明するための左前斜め上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る乗り物用シートを、実施例であるシートSTにより説明する。説明の便宜上、上下左右前後の各方向を
図1に矢印で示された方向に規定する。
【0010】
まず、シートSTの構成の概要を斜視図である
図1及び
図2を参照して説明する。
図1はシートSTを左前斜め上方から見た斜視図である。
図2はシートSTを左後斜め上方から見た斜視図である。
【0011】
図1に示されるように、シートSTは、自動車などの乗り物に搭載される乗り物用シートであって、シートクッションST1,シートバックST2,及びヘッドレストST3を有する。
シートクッションST1は、乗り物の床92に前後に延び左右に平行に離隔して敷設された一対のレール91,91によって前後方向にスライド可能に支持されている。
【0012】
シートバックST2は、シートクッションST1の後端部においてリクライニング可能に連結されている。シートバックST2の内部には、骨格となる枠状のフレームST2aと、フレームST2aを覆うスポンジ状のパッド52と、送風ユニットFAとが配置されている。
パッド52及び送風ユニットFAは、合成樹脂のシートなどから形成された表皮となるトリム8によって覆われている。トリム8は、シートバックST2の前側の部分における少なくとも送風ユニットFAに対応した部分は、通気可能となっている。
【0013】
送風ユニットFAは、枠状のフレームST2aに囲まれた内側において、パッド52に埋め込まれるように取り付けられている。送風ユニットFAの取り付け構造の詳細は後述する。
【0014】
図2に示されるように、トリム8は、シートバックST2の後面における上方に少し寄った位置に、上部トリム81と下部トリム82とを縫合により接続した縫合部83を有する。
上部トリム81は、シートバックST2の上部から後面にかけて覆うように配置されている。下部トリム82は、後面下部を覆うように配置されている。縫合部83において、上部トリム81の下端部と下部トリム82の上端部とが縫合により連結されている。縫合部83は、外部から、左右方向に概ね直状に延びる縫合線として視認される。
【0015】
次に、送風ユニットFAについて
図3~
図5を参照して説明する。
図3は、送風ユニットFAを左前斜め上方から見た斜視図であり、
図4は、送風ユニットFAの後面図であり、
図5は、
図3におけるS5-S5位置での断面図である。
【0016】
送風ユニットFAは、ベース1及びファンFを有する。ファンFの種類は、例えばシロッコファンである。
図3及び
図5に示されるように、ファンFは軸線CLFまわりの周方向に配置された複数のブレードF2を有する。
図3におけるブレードF2は模式的に示されている。
【0017】
ベース1は、前後に薄く後方が開放された後面視で四角箱状の基部1aと、基部1aの前面から左方に延出した鍔部1b及び右方に延出した鍔部1cとを有する。
基部1aは、前面において円形で前方に突出した吸引突出部11を有する。吸引突出部11は、ファンFの軸線CLFを中心として放射状に扇形で形成された複数の吸引開口部11aを有する。
【0018】
基部1aは、第1ワイヤ係止部21,第2ワイヤ係止部22,及び第3ワイヤ係止部を含むワイヤ係止部2Wを有する。
第1ワイヤ係止部21は、基部1aの下面から下方に突出し、先端部に後方に突出した第1係止爪21aを有する。
第2ワイヤ係止部22及び第3ワイヤ係止部23は、基部1aの前面の上端部において左右に離隔して上方に突出するよう形成されている。第2ワイヤ係止部22及び第3ワイヤ係止部23は、それぞれ先端部において後方に突出した第2係止爪22a及び第3係止爪23aを有して鉤状に形成されている。
第2ワイヤ係止部22及び第3ワイヤ係止部23は、左右方向において、ファンFの軸線CLFを挟んでそれぞれ左側及び右側に設置されている。
【0019】
基部1aは、上面に、ハーネス係止部41,42及びトリム係止部2Tを有する。
ハーネス係止部41,42は、基部1aの上前方にL字状に突出して形成されている。
【0020】
トリム係止部2Tは、基部1aの上面の後縁部における、左右方向中央位置に上方に突出して形成されている。トリム係止部2Tは、先端から前方に延出する係止鍔2Taを有して鉤状に形成されている。
【0021】
図3に示されるように、ファンFは、前後方向に薄い直方体状のハウジングF1を有する(破線参照)。ハウジングF1の後縁の4辺からは、
図5に示されるように、それぞれ外方に鍔部F1aが張り出している。
図4に示されるように、鍔部F1aと基部1aとがタッピングねじなどの固定具N1で固定されて、ファンFはベース1に取り付けられている。
【0022】
図4に示されるように、ファンFの後面からワイヤハーネスF3が延出している。ワイヤハーネスF3の先端には、コネクタF4が取り付けられている。
ワイヤハーネスF3はファンFの後面から延出してハーネス係止部41,42に係止され、先端のコネクタF4は不図示の係止部によって鍔部1cに保持される。コネクタF4には、乗り物側の電源部に電気接続されたプラグ93が挿着されて(矢印DR1参照)、ファンFに電源が供給される。
【0023】
図5において、ファンFのハウジングF1における側面には、矩形の排出開口部(不図示)が形成されている。ファンFが動作すると、空気が前面の吸引開口部11aから取り入れられ、側面の排出開口部から排出される。
【0024】
次に、
図6~
図8を参照して、パッド52の、送風ユニットFAが取り付けられる部位である上部の形状について説明する。
図6は、シートバックST2におけるパッド52の上部の後面図であり、
図7は、
図6におけるS7-S7位置での断面図である。
図8は、パッド52にインサートされたインサートワイヤ3を示す図であり、
図8(a)は前面図、
図8(b)は左側面図である。
【0025】
パッド52は、弾力性を有するスポンジ状の素材によって形成され圧縮に対し弾性変形する。
パッド52は、シートバックST2の上部を構成する上部パッド521と、シートバックST2の左側部及び右側部それぞれを構成し上部パッド521からほぼ同じ厚みで滑らかに接続する左側部パッド522及び右側部パッド523とを有する。
上部パッド521と、左側部パッド522及び右側部パッド523とに囲まれた中央部位は、後面が前方に抉られるように凹んだ第1凹部であるセンタパッド部524と、その下側のセンタ下パッド部525とされている。センタパッド部524よりもセンタ下パッド部525の方が凹部としての凹み深さは少し浅くなっている。
【0026】
センタパッド部524には、前後方向に貫通する孔である通気孔526が形成されている。通気孔526の形成位置は、パッド52全体としては、例えば上下方向における中央より少し上方位置である。通気孔526の形状は例えば円形であるが、円形に限定されない。通気孔526は、送風ユニットFAの複数の吸引開口部11aの範囲をできるだけ広く臨むことができる大きさ及び形状で形成される。
【0027】
センタパッド部524は、通気孔526に隣接する第2凹部として、通気孔526の上側に上凹部527を有し下側に下凹部528を有する。
上凹部527は、後面視で左右に長い長方形を呈するように形成されている。下凹部528は上凹部527よりも左右方向が短く、下側がセンタ下パッド部525に掛かるように形成されている。
【0028】
パッド52は、センタパッド部524及びセンタ下パッド部525に跨り、通気孔526を囲むようにインサート成形されたインサートワイヤ3を有する。
図8(a),
図8(b)に示されるように、インサートワイヤ3は、ステンレスなどの金属ばね線材により不連続な枠状に形成されている。
詳しくは、インサートワイヤ3は、左上ワイヤ部311,上ワイヤ部32,右ワイヤ部33,下ワイヤ部34,及び左下ワイヤ部312を有する。
【0029】
上ワイヤ部32は、左右に直状に延びる部位であり、右ワイヤ部33は、上ワイヤ部32の右端から90°折れ曲がって下方に直状に延びる部位である。
下ワイヤ部34は、右下傾斜部343,下中央ワイヤ部341,及び左下傾斜部342を有する。
右下傾斜部343は、右ワイヤ部33の下端から左下斜め後方に傾斜して延びる部位である。
下中央ワイヤ部341は、右下傾斜部343の左端から、左方に上ワイヤ部32と平行で直状に延びる部位である。
左下傾斜部342は、下中央ワイヤ部341の左端から、左上斜め前方に傾斜して延びる部位であり、左端は上ワイヤ部32の左端の真下に位置する。
左下ワイヤ部312は、左下傾斜部342の左端から上方に延びる部位であり、左上ワイヤ部311は、上ワイヤ部32の左端から左下ワイヤ部312と同じ直線上で下方に延びる部位である。
左上ワイヤ部311と左下ワイヤ部312との間は不連続部31aとされている。
【0030】
インサートワイヤ3の自然状態において、上ワイヤ部32の外周面の上端位置と下ワイヤ部34における下中央ワイヤ部341の外周面の下端位置との間の上下方向の距離を距離L3とする。距離L3は、送風ユニットFAにおける第2ワイヤ係止部22及び第3ワイヤ係止部23それぞれの第2係止爪22a及び第3係止爪23aの内法の距離L2W(
図4及び
図5参照)よりもわずかに大きくなっている。
【0031】
図6及び
図7に示されるように、インサートワイヤ3は、上ワイヤ部32が上凹部527において露出し、下中央ワイヤ部341が下凹部528において露出するようにインサート成形されている。すなわち、インサートワイヤ3は、パッド52に、少なくとも一部が露出し他の部位が埋没するように一体的に備えられている。インサートワイヤ3において、上凹部527において露出した部分を第2係止部32aとし、下凹部528において露出した部分を第1係止部341aとする。
より詳しくは、インサートワイヤ3は、上ワイヤ部32の左右両端部を除く部位が上凹部527において露出し、下ワイヤ部34の下中央ワイヤ部341と左下傾斜部342の右端部及び右下傾斜部343の左端部とが下凹部528において露出している。インサートワイヤ3は、これら露出した部位以外がパッド52のセンタパッド部524及びセンタ下パッド部525に埋没するように一体的に設置されている。
【0032】
図9に示されるように、送風ユニットFAは、パッド52に対し、作業者がワイヤ係止部2Wをインサートワイヤ3の外部に露出した部分に引っ掛けることで取り付けることができる。
具体的には、作業者は、ワイヤ係止部2Wにおける、第2ワイヤ係止部22及び第3ワイヤ係止部23それぞれの第2係止爪22a及び第3係止爪23aに、上凹部527において露出したインサートワイヤ3の上ワイヤ部32を引っ掛ける。
次いで、作業者は、第1ワイヤ係止部21の第1係止爪21aを、下凹部528において露出したインサートワイヤ3の下中央ワイヤ部341に押しながら、下中央ワイヤ部341を下方に弾性変形させて第1ワイヤ係止部21を乗り越えさせることで第1係止爪21aに引っ掛ける。
【0033】
このように、第1ワイヤ係止部21は、送風ユニットFAをインサートワイヤ3によって支持されるワイヤ支持部のうちの、下ワイヤ支持部P1として機能し、第2ワイヤ係止部22及び第3ワイヤ係止部はそれぞれ上第1ワイヤ支持部P2及び上第2ワイヤ支持部P3として機能する。
【0034】
送風ユニットFAがインサートワイヤ3により、下ワイヤ支持部P1と上第1ワイヤ支持部P2及び上第2ワイヤ支持部P3とで支持された状態で、送風ユニットFAの基部1aは、パッド52のセンタパッド部524を前方に押して圧縮するようになっている。
【0035】
インサートワイヤ3は、それ自体がばね性を有してある程度弾性変形可能であると共に、圧縮弾性を有するパッド52に埋没して配置されている。そのため、作業者がインサートワイヤ3を、枠状を拡張させるように弾性変形させてワイヤ係止部2Wに係止させることは容易である。
また、インサートワイヤ3は、不連続部31aを有して一部が欠落した不連続な枠状に形成されており、連続して閉じた枠状に形成された場合よりもねじり変形させることが容易である。
これにより、インサートワイヤ3は、ワイヤ係止部2Wへの係止がより容易になっている。
【0036】
このように、インサートワイヤ3をワイヤ係止部2Wに係止させた状態で、送風ユニットFAの基部1aは、センタパッド部524からの圧縮に対する弾性反発力を受けて後方に押される。また、既述のように、インサートワイヤ3は、距離L3(
図8参照)がワイヤ係止部2Wの距離L2W(
図5及び
図6参照)よりもわずかに大きくなるよう形成されている。そのため、インサートワイヤ3は、第1係止爪21aに対し前方及び下方にくい込むように係止され、第2係止爪22a及び第3係止爪23aに対し前方及び上方にくい込むように係止される。
これにより、送風ユニットFAは、パッド52に安定的に保持される。
【0037】
また、送風ユニットFAは、トリム8とフック部84によって連結されるようにしてもよい。
図10は、トリム8の縫合部83に取り付けられたフック部84を示す斜視図である。
詳しくは、フック部84は、シートバックST2の後面側の縫合部83において、シートバックST2の内側に延びる向きで縫合糸83aにより重ね縫いされている。
フック部84は、布状などのシート部材を、金属線材であるピン85を挟むように半折りしたものであり、折り部の中央に切り込み部84aを有する。
半折りして合わせられた先端部が、縫合部83に重ね縫いで固定される。
切り込み部84aにはピン85の中央部が係止部85bとして露出しており、ピン85の両方の端部85aは、フック部84から抜けないように形状処理されている。
【0038】
図11に示されるように、縫合部83は、上下方向において、パッド52に取り付けられた送風ユニットFAの基部1aの上部とほぼ同じ高さ位置にある。
トリム8を送風ユニットFAに連結する際に、作業者は、パッド52に取り付けられた送風ユニットFAのトリム係止部2Tに、フック部84の切り込み部84aにおいて露出したピン85の係止部85bを、係止させる。詳しくは、作業者は、係止部85bを、トリム係止部2Tに対し、矢印DR2のように係止鍔2Taを乗り越えさせて係止させる。
このようにトリム係止部2Tは、送風ユニットFAがトリム8によって支持させるトリム支持部PTとして機能する。
【0039】
上部トリム81及び下部トリム82は、自然状態でほぼ弛みなく張られた状態で縫合部83において接続されている。そのため、フック部84のトリム係止部2Tへの係止作業は、縫合部83を、ある程度の力をかけて前方へ移動させて行う。すなわち、フック部84が引っ掛けられた送風ユニットFAは、常に後方へ引っ張られる力が付与された状態となる。
これにより、送風ユニットFAのワイヤ係止部2Wには、インサートワイヤ3が、よりくい込むように力が付与されるので、パッド52における送風ユニットFAの保持力がより強くなる。
【0040】
図12は、
図11などに示される、シートSTのシートバックST2における送風ユニットFAの取り付け構造TKを説明するための模式図である。
図12に示されるように、送風ユニットFAは、パッド52に対し、前方側からはパッド52に備えられたインサートワイヤ3に支持され、後方側からはトリム8に備えられたフック部84によって支持され、前後方向に引っ張られるように取り付けられている。
これにより、乗り物用シートであるシートSTは、送風ユニットFAがシートバックST2において安定して保持される。また、シートSTは、送風ユニットFAに予期せぬ前後方向の外力が付与された際の、送風ユニットFAの移動が抑制される。
【0041】
送風ユニットFAは、パッド52の後面側に形成された第1凹部であるセンタパッド部524に全体が収容されるように取り付けられている。そのため、送風ユニットFAは、パッド52から後方に突出していない。
これにより、シートSTは、シートバックST2の厚さが厚くならず、かつ後方の乗員と干渉しにくくなっている。また、シートSTは、送風ユニットFAに対し、後部に積み込む荷物などが衝突して送風ユニットFAが損傷する或いは故障するという不具合が生じにくい。
【0042】
送風ユニットFAにおけるワイヤ係止部2Wのうちの、第2ワイヤ係止部22及び第3ワイヤ係止部23の外法である距離D2(
図4参照)は、パッド52の上凹部527の左右方向の幅である幅D527(
図6参照)とほぼ同じかわずかに大きく設定されているとよい。
これにより、シートSTは、パッド52に取り付けられた送風ユニットFAの左右方向の位置が上凹部527の左右の壁によって規制されるので、送風ユニットFAの位置が精度よく決められる。また、シートSTは、送風ユニットFAに予期せぬ外力が付与された際の送風ユニットFAの移動が良好に規制される。
【0043】
送風ユニットFAは、インサートワイヤ3と係止してパッド52に保持され、さらにトリム8とフック部84を介して連結させるとよい。これにより、シートSTは、シートバックST2の厚さを厚くすることなく、保持姿勢及び保持位置がより安定し、送風ユニットFAに対して付与される外力に対して位置ずれなどが生じにくい。
【0044】
本発明は、以上説明した実施形態及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
【0045】
送風ユニットFAのファンFの形式は、シロッコファンに限定されない。
シートバックST2における送風ユニットFAの上下方向の取り付け位置は、上述の上部に限定されず、下部であってもよい。また、左右方向の取り付け位置も、中央に限定されず左右いずれかに寄った位置であってもよい。
送風ユニットFAは、トリム8を先に連結してからインサートワイヤ3に係止させる手順でシートバックST2に取り付けてもよい。
シートSTは、シートバックST2が、取り付け構造TKによって取り付けられた複数の送風ユニットFAを有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 ベース
1a 基部
1b,1c 鍔部
11 吸引突出部
11a 吸引開口部
2T トリム係止部
2Ta 係止鍔
2W ワイヤ係止部
21 第1ワイヤ係止部
21a 第1係止爪
22 第2ワイヤ係止部
22a 第2係止爪
23 第3ワイヤ係止部
23a 第3係止爪
3 インサートワイヤ
311 左上ワイヤ部
312 左下ワイヤ部
31a 不連続部
32 上ワイヤ部
32a 係止部
33 右ワイヤ部
34 下ワイヤ部
341 下中央ワイヤ部
341a 係止部
342 左下傾斜部
343 右下傾斜部
41,42 ハーネス係止部
52 パッド
521 上部パッド
522 左側部パッド
523 右側部パッド
524 センタパッド部
525 センタ下パッド部
526 通気孔
527 上凹部
528 下凹部
8 トリム
81 上部トリム
82 下部トリム
83 縫合部
83a 縫合糸
84 フック部84a
84a切り込み部
85 ピン
85a 端部
85b 係止部
91 レール
92 床
93 プラグ
CLF 軸線
D2 距離
D527 幅
FA 送風ユニット
F ファン
F1 ハウジング
F1a 鍔部
F2 ブレード
F3 ワイヤハーネス
F4 コネクタ
L3,L2W 距離
N1 固定具
P1 下ワイヤ支持部
P2 上第1ワイヤ支持部
P3 上第2ワイヤ支持部
PT トリム支持部
ST シート(乗り物用シート)
ST1 シートクッション
ST2 シートバック
ST2a フレーム
ST3 ヘッドレスト
TK 取り付け構造