(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071325
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】外壁構造および水切り
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20230516BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20230516BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E04B1/64 C
E04B1/64 A
E04B1/70 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184008
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598085180
【氏名又は名称】株式会社日本アルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】宮城 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】小野村 寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中籔 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤史
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001DA03
2E001DB02
2E001FA04
2E001FA21
2E001FA35
2E001NA07
2E001NB01
2E001NC02
2E001ND01
2E139AA07
2E139AC22
2E139AC26
(57)【要約】
【課題】洪水時等における建物内部への水の浸入を効果的に抑制することができる外壁構造および水切りを提供する。
【解決手段】本発明の外壁構造20は、外壁26と基礎22とを有する外壁本体24と、通気口Vを外側から覆うように配置される開口形成部30Hと、開口形成部30Hの開口部を開放および封止可能な封止ユニット31とを備える。封止ユニット31は、上封止部32と、下封止部33と、連結部34と、フロート323とを有する。外壁構造20の周辺の水位が上昇すると、フロート323に浮力が作用し、開口形成部30Hの上開口部301Kおよび下開口部303Kを開放する第1の位置から、上開口部301Kおよび下開口部303Kを封止する第2の位置に封止ユニット31が変位する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁構造であって、
外壁と前記外壁を支持する基礎とを有するとともに建物の床下換気のために外側に開く通気口が形成された外壁本体と、
前記通気口を外側から覆うように前記外壁本体に取り付けられた開口形成部であって、上下方向に沿って開口し前記通気口に連通する上開口部および前記上開口部の下方において上下方向に沿って開口し前記上開口部および建物の外部にそれぞれ連通する下開口部がそれぞれ形成された開口形成部と、
前記上開口部および前記下開口部を開放し前記通気口を通じた気体の流通を許容する第1の位置と、前記第1の位置よりも上方の位置であって前記上開口部および前記下開口部を封止し前記通気口を通じた建物の外側から建物の内部への水の浸入を規制する第2の位置との間で上下に変位することが可能なように前記開口形成部に支持された封止ユニットと、
を備え、
前記封止ユニットは、
前記上開口部を下方から封止可能な上封止部と、
前記下開口部を下方から封止可能な下封止部と、
前記上封止部と前記下封止部とを上下方向に連結する連結部と、
前記外壁本体の外側の水位が所定の水位に到達したときに水に接触し、前記外側の推移の上昇に伴って前記封止ユニットが前記第1の位置から前記第2の位置に向かって移動する浮力を前記水から受けるフロートと、
を有する、外壁構造。
【請求項2】
前記封止ユニットが前記第2の位置に配置された状態において少なくとも前記上開口部を囲むとともに前記上開口部と前記上封止部との間に介在するように配置される第1水密材と、
前記封止ユニットが前記第2の位置に配置された状態において少なくとも前記下開口部を囲むとともに前記下開口部と前記下封止部との間に介在するように配置される第2水密材と、
を更に備え、
前記上封止部は前記封止ユニットの前記第2の位置において前記第1水密材を圧縮変形させて前記上開口部を封止し、前記下封止部は前記封止ユニットの前記第2の位置において前記第2水密材を圧縮変形させて前記下開口部を封止する、請求項1に記載の外壁構造。
【請求項3】
前記浮力を受けて前記第1の位置から所定の高さまで上昇した前記封止ユニットに対して、当該封止ユニットを前記第2の位置まで引き寄せる磁力を発生することが可能な磁力発生部を更に備える、請求項1または2に記載の外壁構造。
【請求項4】
前記磁力発生部は、
前記上開口部の上方において前記開口形成部に支持された第1磁石と、
上下方向において前記第1磁石に対向するとともに、前記封止ユニットが前記第1の位置から前記第2の位置に変位することに伴って前記上開口部に進入するように前記上封止部に支持された第2磁石と、
を含む、請求項3に記載の外壁構造。
【請求項5】
前記フロートは、前記上封止部に取り付けられている、請求項1乃至4の何れか1項に記載の外壁構造。
【請求項6】
前記フロートは、前記連結部に取り付けられている、請求項1乃至4の何れか1項に記載の外壁構造。
【請求項7】
前記フロートに前記浮力が発生した状態で前記下封止部に前記浮力に抗する所定の外力が発生したときに、前記連結部による前記上封止部と前記下封止部との連結を解除することが可能な連結解除部を更に備える、請求項5または6に記載の外壁構造。
【請求項8】
前記下封止部は、前記開口形成部に水平な第1回動中心軸回りに回動可能に支持された下封止基端部と、前記封止ユニットが前記第1の位置に配置された状態で前記下封止基端部よりも下方に配置される下封止先端部とを有し、
前記連結部は、前記下封止部に前記第1回動中心軸と平行な第2回動中心軸回りに回動可能に支持された連結基端部と、前記連結基端部とは反対側に配置され、前記上封止部に前記第1回動中心軸と平行な第3回動中心軸回りに回動可能に支持された連結先端部とを有する、請求項5乃至7の何れか1項に記載の外壁構造。
【請求項9】
前記封止ユニットが前記第1の位置に配置された状態において、前記下封止部が建物の外側から建物の内部に向かって先下がりに傾斜するように、前記下封止基端部が前記下開口部よりも外側において前記開口形成部に回動可能に支持されている、請求項8に記載の外壁構造。
【請求項10】
前記封止ユニットが前記第1の位置に配置された状態において、前記下封止先端部と前記外壁本体との水平方向における距離が、前記下封止先端部と前記下開口部との上下方向における距離よりも小さくなるように、前記上開口部と前記下開口部との上下方向における距離および前記下封止先端部と前記外壁本体との水平方向における距離がそれぞれ設定されている、請求項9に記載の外壁構造。
【請求項11】
前記上封止部は、
前記封止ユニットが前記第2の位置に配置された状態において前記上開口部を下方から封止可能な開口封止部と、
前記開口封止部とは異なる位置に配置され、前記封止ユニットが前記第1の位置に配置された状態において気体が通過することを許容する通気開口部と、
を有する、請求項1乃至10の何れか1項に記載の外壁構造。
【請求項12】
外壁と前記外壁を支持する基礎とを有するとともに建物の床下換気のために外側に開く通気口が形成された外壁本体に装着される水切りであって、
前記通気口を外側から覆うように前記外壁本体に取り付けられた開口形成部であって、上下方向に沿って開口し前記通気口に連通する上開口部および前記上開口部の下方において上下方向に沿って開口し前記上開口部および建物の外部にそれぞれ連通する下開口部がそれぞれ形成された開口形成部と、
前記上開口部および前記下開口部を開放し前記通気口を通じた気体の流通を許容する第1の位置と、前記第1の位置よりも上方の位置であって前記上開口部および前記下開口部を封止し前記通気口を通じた建物の外側から建物の内部への水の浸入を規制する第2の位置との間で上下に変位することが可能なように前記開口形成部に支持された封止ユニットと、
を備え、
前記封止ユニットは、
前記上開口部を下方から封止可能な上封止部と、
前記下開口部を下方から封止可能な下封止部と、
前記上封止部と前記下封止部とを上下方向に連結する連結部と、
前記外壁本体の外側の水位が所定の水位に到達したときに水に接触し、前記外側の推移の上昇に伴って前記封止ユニットが前記第1の位置から前記第2の位置に向かって移動する浮力を前記水から受けるフロートと、
を有する、水切り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁本体に形成された通気口を通じた水の浸入を抑制する外壁構造および水切りに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水害時に構造物内の浸水を抑制するために特許文献1に記載のような土台水切りが知られている。この土台水切りは、外壁換気口及び床下換気口による外壁及び床下の換気を許容しながら、洪水等により建物外側の水位が上昇した場合には水が外壁換気口及び床下換気口を通じて建物の内部に浸入するのを規制するように外壁換気口及び床下換気口を屋外側から覆うものである。
【0003】
具体的に、土台水切りは、外壁換気口及び床下換気口の双方よりも木造住宅の屋外側に配置される水切り部本体と外壁換気口及び床下換気口を外側から覆うとともに下向きに開口する下向き開口を有する受け部材とを含む水切り部材と、下向き開口を開く位置と塞ぐ位置との間で外壁の幅方向と平行な軸を中心として回転可能に設けられている止水弁と、を有する。
【0004】
開く位置においては、止水弁の先端(屋外側の端部)が基端(屋内側の端部)よりも下に位置している。止水弁は、屋外側から受ける水圧により押し上げられ、下向き開口を塞ぐ。これにより、洪水時等においても水が外壁換気口及び床下換気口を通じて内部に浸入することを規制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1に記載の土台水切りでは、止水弁が水圧によって押し上げられると、当該止水弁の先端(屋外側の端部)が下向き開口の周囲を覆うことで下向き開口を封止するが、当該構成では下向き開口を塞ぐ力が弱いため、水が外壁換気口及び床下換気口を通じて内部に浸入することを充分規制することができない。特に、止水弁の周囲における水流の向きが変化すると、止水弁が下向き開口を下方から封止する力が弱まるため、止水弁と下向き開口との間の隙間から水が浸入しやすいという問題がある。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、洪水時等における建物内部への水の浸入を効果的に抑制することができる外壁構造および水切りを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の外壁構造は、外壁と前記外壁を支持する基礎とを有するとともに建物の床下換気のために外側に開く通気口が形成された外壁本体と、前記通気口を外側から覆うように前記外壁本体に取り付けられた開口形成部であって、上下方向に沿って開口し前記通気口に連通する上開口部および前記上開口部の下方において上下方向に沿って開口し前記上開口部および建物の外部にそれぞれ連通する下開口部がそれぞれ形成された開口形成部と、前記上開口部および前記下開口部を開放し前記通気口を通じた気体の流通を許容する第1の位置と、前記第1の位置よりも上方の位置であって前記上開口部および前記下開口部を封止し前記通気口を通じた建物の外側から建物の内部への水の浸入を規制する第2の位置との間で上下に変位することが可能なように前記開口形成部に支持された封止ユニットと、を備え、前記封止ユニットは、前記上開口部を下方から封止可能な上封止部と、前記下開口部を下方から封止可能な下封止部と、前記上封止部と前記下封止部とを上下方向に連結する連結部と、前記外壁本体の外側の水位が所定の水位に到達したときに水に接触し、前記外側の推移の上昇に伴って前記封止ユニットが前記第1の位置から前記第2の位置に向かって移動する浮力を前記水から受けるフロートと、を有する。
【0009】
この外壁構造によれば、封止ユニットが第1の位置に配置された状態では、開口形成部に形成された上開口部および下開口部ならびに外壁本体の通気口を通じて、建物の床下換気のための通気経路を形成することができる。一方、洪水等により建物の外側の水位が上昇すると、フロートが水から浮力を受けることにより、封止ユニットが第1の姿勢から第2の姿勢に向かって変位して開口形成部の開口部を封止することで、水が建物の内部に浸入するのを抑制することができる。したがって、人による作業を必要とすることなく、床下浸水を防ぐことができる。
【0010】
この際、封止ユニットの上封止部および下封止部が上開口部および下開口部をそれぞれ封止することができるため、開口形成部の開口部を2段階で封止し、水の浸入を安定して抑止することができる。また、開口部の面積を拡げるために、1つの開口部を水平方向に拡張する場合と比較して、開口形成部のサイズが大きくなることを抑止することができる。特に、フロートが水から受ける浮力は、フロートの周囲の水流の向きに関わらず上方向に作用するため、封止ユニットを第1の姿勢から第2の姿勢に向かって確実に変位させ、上開口部および下開口部を下方から封止する機能を安定して維持することができる。
【0011】
上記の構成において、前記封止ユニットが前記第2の位置に配置された状態において少なくとも前記上開口部を囲むとともに前記上開口部と前記上封止部との間に介在するように配置される第1水密材と、前記封止ユニットが前記第2の位置に配置された状態において少なくとも前記下開口部を囲むとともに前記下開口部と前記下封止部との間に介在するように配置される第2水密材と、を更に備え、前記上封止部は前記封止ユニットの前記第2の位置において前記第1水密材を圧縮変形させて前記上開口部を封止し、前記下封止部は前記封止ユニットの前記第2の位置において前記第2水密材を圧縮変形させて前記下開口部を封止するものでもよい。
【0012】
本構成によれば、封止ユニットが第2の位置に配置されると、上封止部および下封止部が、第1水密材および第2水密材をそれぞれ圧縮変形させることで、上開口部および下開口部を安定して封止することができる。また、上下2層の水密材を圧縮することができるため、1つの封止部材によって1つの開口を塞ぐ場合と比較して、水の浸入を防止するための水密する領域の面積を増大させることができる。
【0013】
上記の構成において、前記浮力を受けて前記第1の位置から所定の高さまで上昇した前記封止ユニットに対して、当該封止ユニットを前記第2の位置まで引き寄せる磁力を発生することが可能な磁力発生部を更に備えるものでもよい。
【0014】
本構成によれば、水位の上昇に伴って封止ユニットが所定の高さまで上昇すると、磁力発生部が発生する磁力によって封止ユニットを第2の位置まで引き寄せることができるため、開口形成部の開口部を確実に封止することができる。
【0015】
上記の構成において、前記磁力発生部は、前記上開口部の上方において前記開口形成部に支持された第1磁石と、上下方向において前記第1磁石に対向するとともに、前記封止ユニットが前記第1の位置から前記第2の位置に変位することに伴って前記上開口部に進入するように前記上封止部に支持された第2磁石と、を含むものでもよい。
【0016】
本構成によれば、上開口部を利用して第1磁石および第2磁石を互いに吸引させることができるため、上封止部が上開口部を封止することがこれらの磁石によって妨げられることを防ぐことができる。
【0017】
上記の構成において、前記フロートは、前記上封止部に取り付けられているものでもよい。また、前記フロートは、前記連結部に取り付けられているものでもよい。
【0018】
本構成によれば、フロートが上封止部または連結部に取り付けられているため、水位の上昇に伴ってフロートが水から浮力を受ける際には、下封止部が既に水中に浸かっている。このため、フロートが下封止部に取り付けられている場合と比較して、相対的に小さな浮力によって封止ユニットを第1の位置から第2の位置に向かって変位させることができる。
【0019】
上記の構成において、前記フロートに前記浮力が発生した状態で前記下封止部に前記浮力に抗する所定の外力が発生したときに、前記連結部による前記上封止部と前記下封止部との連結を解除することが可能な連結解除部を更に備えるものでもよい。
【0020】
本構成によれば、フロートに浮力が作用し封止ユニットが上昇する過程において、水中で下封止部に異物が干渉し封止ユニットの変位が阻害されることがあっても、連結解除部が上封止部と下封止部との連結を解除することで、下封止部を残して、上封止部が上開口部を封止することが可能となる。
【0021】
上記の構成において、前記下封止部は、前記開口形成部に水平な第1回動中心軸回りに回動可能に支持された下封止基端部と、前記封止ユニットが前記第1の位置に配置された状態で前記下封止基端部よりも下方に配置される下封止先端部とを有し、前記連結部は、前記下封止部に前記第1回動中心軸と平行な第2回動中心軸回りに回動可能に支持された連結基端部と、前記連結基端部とは反対側に配置され、前記上封止部に前記第1回動中心軸と平行な第3回動中心軸回りに回動可能に支持された連結先端部とを有するものでもよい。
【0022】
本構成によれば、上封止部に取り付けられたフロートが水から浮力を受けると、連結部の連結先端部および連結基端部が回動しながら連結部が下封止部を引き上げ、上封止部および下封止部を一体で上昇させることができる。また、封止ユニットが第1の位置に配置された状態で下封止先端部が下封止基端部よりも下方に配置されるため、気体および水の進入経路を限定し、開口形成部への異物の侵入を抑制することができる。
【0023】
上記の構成において、前記封止ユニットが前記第1の位置に配置された状態において、前記下封止部が建物の外側から建物の内部に向かって先下がりに傾斜するように、前記下封止基端部が前記下開口部よりも外側において前記開口形成部に回動可能に支持されているものでもよい。
【0024】
本構成によれば、前記封止ユニットが前記第1の位置に配置された状態において、前記下封止部が建物の外側から建物の内部に向かって先下がりに傾斜しているため、気体および水の進入経路が下封止部の建物内側に限定され、水位の上昇に伴う異物の侵入を更に抑制することができる。
【0025】
上記の構成において、前記封止ユニットが前記第1の位置に配置された状態において、前記下封止先端部と前記外壁本体との水平方向における距離が、前記下封止先端部と前記下開口部との上下方向における距離よりも小さくなるように、前記上開口部と前記下開口部との上下方向における距離および前記下封止先端部と前記外壁本体との水平方向における距離がそれぞれ設定されているものでもよい。
【0026】
本構成によれば、洪水等により建物の外側の水位が上昇した際には、下封止先端部と外壁本体との間の隙間を通じて大きな異物が侵入することを抑止するとともに、通常使用時には、下開口部と下封止部との間の部分を通じて気流が開口形成部に流入することを促進することができる。
【0027】
上記の構成において、前記上封止部は、前記封止ユニットが前記第2の位置に配置された状態において前記上開口部を下方から封止可能な開口封止部と、前記開口封止部とは異なる位置に配置され、前記封止ユニットが前記第1の位置に配置された状態において気体が通過することを許容する通気開口部と、を有するものでもよい。
【0028】
本構成によれば、上封止部が開口封止部と通気開口部とを有しているため、通常時は当該上封止部を通じての気流の流れを許容するとともに、洪水時などには開口封止部が上開口部を確実に封止することができる。
【0029】
また、本発明の水切りは、外壁と前記外壁を支持する基礎とを有するとともに建物の床下換気のために外側に開く通気口が形成された外壁本体に装着される水切りであって、前記通気口を外側から覆うように前記外壁本体に取り付けられた開口形成部であって、上下方向に沿って開口し前記通気口に連通する上開口部および前記上開口部の下方において上下方向に沿って開口し前記上開口部および建物の外部にそれぞれ連通する下開口部がそれぞれ形成された開口形成部と、前記上開口部および前記下開口部を開放し前記通気口を通じた気体の流通を許容する第1の位置と、前記第1の位置よりも上方の位置であって前記上開口部および前記下開口部を封止し前記通気口を通じた建物の外側から建物の内部への水の浸入を規制する第2の位置との間で上下に変位することが可能なように前記開口形成部に支持された封止ユニットと、を備える。前記封止ユニットは、前記上開口部を下方から封止可能な上封止部と、前記下開口部を下方から封止可能な下封止部と、前記上封止部と前記下封止部とを上下方向に連結する連結部と、前記外壁本体の外側の水位が所定の水位に到達したときに水に接触し、前記外側の推移の上昇に伴って前記封止ユニットが前記第1の位置から前記第2の位置に向かって移動する浮力を前記水から受けるフロートと、を有する。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明の外壁構造および水切りによれば洪水時等における建物内部への水の浸入を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る建物を表す側断面図である。
【
図2】
図1の建物の外壁構造を拡大して示す側断面図である。
【
図3】
図2の外壁構造において封止ユニットが上方に移動した様子を示す側断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る封止ユニットの上封止部の平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る封止ユニットの各開口部を気流が通過する様子を示す正断面図である。
【
図6】
図2の外壁構造において封止ユニットの上封止部のみが上方に移動した様子を示す側断面図である。
【
図7】本発明の第1変形実施形態に係る建物の外壁構造の一部を拡大した様子を示す側断面図である。
【
図8】
図7の外壁構造において封止ユニットが上方に移動した様子を示す側断面図である。
【
図9】本発明の第2変形実施形態に係る建物の外壁構造の一部を拡大した様子を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照しながら、本発明が適用される建物1について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、本実施形態では、建物1として木造建築のものが用いられるが、本発明が適用される建物は木造建築の建物1に限られず、鉄筋コンクリート造の建物や軽量鉄骨造の建物などその他の建物であっても良い。
【0033】
図1は、本発明の第1実施形態に係る建物1を表す側断面図である。
図2は、
図1の建物1の外壁構造を拡大して示す側断面図である。本実施形態の建物1は、
図1に示すように、外壁構造20と、外壁構造20の内側に設けられた床構造10と、を有する。
図1および以後の各図では、建物の外側に立つ作業者の視点を基準として、前後方向、左右方向および上下方向を図示している。前方向は内向き(建物1の内側に向かう向き)に相当し、後方向は外向き(建物1の外側に向かう向き)に相当する。また、紙面と直交する左右方向を幅方向とも称する。以後の各図でも同様である。なお、これらの方向は、本実施形態の建物1を説明するために特定したものであり、本発明に係る建物、建物の外壁構造を限定するものではない。
【0034】
床構造10は、
図1に示すように、床12と、床12の周縁から立ち上がる内壁16と、床12を地盤上に支持する図外の束と、を有する。
【0035】
床12の下には、床12の下を換気するための床下空間が形成されている。この床下空間内に建物外側から空気が流入することにより床12の下が換気される。
【0036】
外壁構造20は、
図1に示すように、床下換気のために外側に開く通気口Vが形成された外壁本体24と、外壁本体24に取り付けられた水切り30とを備える。
【0037】
外壁本体24は、
図1に示すように、地盤から立ち上がる基礎22と、基礎22に支持される外壁26と、外壁26と基礎22との間に空間(通気口V)が形成されるように外壁26と基礎22の上面との間に介在するとともに幅方向に沿って並ぶ複数のスペーサー25と、を有する。外壁26は、基礎22の上面から立ち上がってこの基礎22に支持される取付部材264と、取付部材264の外面に取り付けられる外壁パネル262と、を有する。
【0038】
取付部材264は、外壁パネル262を取り付けるための部材であり、複数のスペーサー25を介して基礎22の上面に支持されている。取付部材264として、本実施形態では、
図1に示すように、C型鋼を枠状に形成したものが用いられる。外壁パネル262は、取付部材264を外側から覆うとともに取付部材264との間に壁内換気通路Aが形成された状態で、取付部材264に取り付けられている。
【0039】
通気口Vは、
図1に示すように、床下空間と建物1の外側とを連通して床下を換気するために、取付部材264の下端部と、基礎22の上面との間に形成されている。なお、通気口Vは、幅方向に沿って複数設けられており、これら複数の通気口Vは、取付部材264の下端部と基礎22の上面との間において、隣接するスペーサー25,25の間にそれぞれ形成されている。
【0040】
水切り30は、雨水が基礎22に浸入することを抑止する。水切り30は、通気口Vを外側から覆うように外壁本体24に取り付けられ通気口Vに連通する開口部が形成された開口形成部30Hと、開口形成部30Hの開口部を封止することが可能な封止ユニット31とを有する。
【0041】
なお、本実施形態では、通気口Vは幅方向に沿って複数設けられており、これら複数の通気口Vに対応して、開口形成部30Hおよび封止ユニット31がそれぞれ設けられている。
【0042】
開口形成部30Hは、
図2に示すように、通気口Vに連通する開口を形成するための部材であり、複数の通気口Vごとにそれぞれ設けられている。開口形成部30Hは、各通気口Vを外側から覆うとともに、開口形成部30Hの開口が通気口Vに連通する(本実施形態では不図示の連通路を介して壁内換気通路Aにも連通する)ように外壁本体24に取り付けられている。
【0043】
開口形成部30Hの下端部は、
図1に示すように、側面視で基礎22の上端部よりも下に位置している。開口形成部30Hの下端部の内側面と基礎22の上端部の外側面との間には、シーリング材300(
図2)が設けられており、このシーリング材300により開口形成部30Hと基礎22との隙間を通じた水の通過が規制される。
【0044】
図1、
図2を参照して、開口形成部30Hは、外壁本体24の外側と通気口Vとの間での通気を可能とする。開口形成部30Hは、
図2の紙面と直交する左右方向に沿って長く延びる箱型形状を有している。開口形成部30Hの上面部は、雨水を下方に誘導するために、建物の外側に向かって先下がりに傾斜している。開口形成部30Hは、支持部264Hを介して取付部材264(
図1)に支持されている。開口形成部30Hは、ボルトBによって支持部264Hに固定されている。開口形成部30Hの下端部には、気流の入口として機能する気流流入部30Jが形成されており、開口形成部30Hの上端部の内側の面には、気流の出口として機能する気流流出部30Kが形成されている。開口形成部30Hは、金属や樹脂材料から構成されている。
【0045】
また、開口形成部30Hは、上から上仕切301、中仕切302、下仕切303の3つの仕切り部を有している。これらの仕切は水平に延びている。この結果、開口形成部30Hの内部には、上空間30H1、中空間30H2、下空間30H3の3つの空間が形成されている。前述の気流流出部30Kは、上空間30H1の内側の側面に開口されている。
【0046】
上仕切301の前後方向の中央部には、上開口部301Kが形成されている。上開口部301Kは、上仕切301に上下方向に沿って開口しており、前述の気流流出部30Kを介して通気口Vに連通している。なお、開口形成部30Hの取付状態において、上開口部301Kは通気口Vよりも上に形成されている(
図1)。
【0047】
中仕切302は、上仕切301の下方において、開口形成部30Hの前後の内壁部から内部方向に僅かに突出するように配置されている。換言すれば、中仕切302によって、開口形成部30Hの前後端部を残して広い範囲に中央開口部302Kが開口されている。
図2では、当該中央開口部302Kを上から覆うように、後記の封止ユニット31の上封止部32が配置されている。
【0048】
また、開口形成部30Hは、上側水密材301S(第1水密材)を更に備える。上側水密材301Sは、中仕切302の上方であって、上仕切301の下面部に固定されている。上側水密材301Sは、上仕切301を下から覆うように配置された弾性部材であり、一例としてスポンジ材である。上側水密材301Sは、封止ユニット31が
図3の第2の位置に配置された状態において、上開口部301Kの四辺を囲むとともに上開口部301Kと上封止部32との間に介在するように配置される。なお、上側水密材301Sは、上開口部301Kを下から覆うように配置されてもよい。
【0049】
下仕切303は、開口形成部30Hの底部に相当する。下仕切303の外側部分には、下開口部303Kが開口されており、当該下開口部303Kの内側には、連結部挿通部303Jが開口されている。下開口部303Kは、上開口部301Kおよび中央開口部302Kの下方において、上下方向に沿って開口している。連結部挿通部303Jには、後記の封止ユニット31の連結部34が挿通される。
【0050】
更に、開口形成部30Hの外側の壁部の下端部には、延出部304が配置されている。延出部304は、下仕切303よりも下方に突出するように延びている。延出部304の下端部は、
図1に示すように、基礎22の外側において基礎22の上端部よりも下方に位置している。このため、雨水が外側から基礎22側に浸入することを抑制することができる。また、開口形成部30Hは、前述の気流流出部30Kを塞ぐように配置されたメッシュ部材305を有する。メッシュ部材305には、複数のメッシュ(開口)が形成されている。本実施形態では、メッシュ部材305はステンレスメッシュから構成される。
【0051】
このような開口形成部30Hの内部に、封止ユニット31が配置されている。封止ユニット31は、上開口部301Kおよび下開口部303Kを開放し通気口Vを通じた気体の流通を許容する第1の位置と、前記第1の位置よりも上方の位置であって上開口部301Kおよび下開口部303Kを封止し(塞ぎ)、通気口Vを通じた建物の外側から建物の内部への水の浸入を規制する第2の位置との間で上下に変位することが可能なように開口形成部30Hに支持されている。なお、
図2に示す封止ユニット31の位置が、上記の第1の位置に相当する。
図3は、本実施形態に係る外壁構造20(
図2)において封止ユニット31が上方に移動した様子を示す側断面図である。
図3に示す封止ユニット31の位置が、上記の第2の位置に相当する。
【0052】
封止ユニット31は、上封止部32と、下封止部33と、連結部34とを有する。
図4は、本実施形態に係る封止ユニット31の上封止部32の平面図である。
図5は、本実施形態に係る封止ユニット31の各開口部を気流が通過する様子を示す正断面図である。
【0053】
上封止部32は、封止ユニット31の移動に伴って、上開口部301Kを下方から封止することができる。
図2に示すように、封止ユニット31が第1の位置に配置された状態では、上封止部32は、開口形成部30Hの中仕切302に支持されている。上封止部32は、上プレート321と、フロート支持部322と、フロート323と、係合部324と、下マグネット325と、軸支部326と、一対の突出部32Sとを有する。
【0054】
上プレート321は、
図4に示すように、平面視で矩形形状を有する板材である。フロート支持部322は、上プレート321の下面(
図4の上プレート321の裏面)に配置されており、前後一対の板状部が上プレート321から突設されることで構成されている。上プレート321およびフロート支持部322は、一体構造とされており、たとえば樹脂部材によって構成されている。
【0055】
フロート323は、フロート支持部322の内部、すなわち上記の一対の板状部の間に固定されている。本実施形態では、フロート323は発泡スチロールから構成される。フロート323は、外壁本体24の外側の水位が所定の水位に到達したときに水に接触し、前記外側の推移の上昇に伴って封止ユニット31が前記第1の位置から前記第2の位置に向かって移動する浮力を水から受ける。
【0056】
係合部324は、フロート支持部322の一対の板状部のうち内側に位置する板状部に配置されており、上方に向かって開口したコの字形状(U字形状)からなる。係合部324には、後記のフックFが係合可能とされる(
図6参照)。下マグネット325は、上プレート321の上面部において、前後方向の中央部に固定された磁石である。
図4に示すように、左右方向に沿って複数の下マグネット325が間隔をおいて上プレート321に固定されている。
【0057】
軸支部326は、係合部324の下方に配置された軸受け部である。本実施形態では、軸支部326は、樹脂部材からなるフロート支持部322の先端部が下方に向かってC字状に成形されることで構成されている。軸支部326は、連結部34の後記の連結先端部342を回動可能に支持する。
【0058】
一対の突出部32S(開口封止部)は、下マグネット325の前後両側において上プレート321から突設されたリブからなる。突出部32Sは、封止ユニット31が前記第2の位置に配置された際に、上側水密材301S(
図2)を押圧する(潰す)機能を有している。この結果、一対の突出部32Sは、封止ユニット31が前記第2の位置に配置された状態において上開口部を下方から封止可能とされている。なお、一対の突出部32Sの幅方向の両端部同士は前後方向に沿って互いに接続されており、上開口部301Kを囲むような矩形形状をなしている。
【0059】
なお、
図2、
図4に示すように、上プレート321のうち一対の突出部32Sの前後両側には、複数の上プレート開口部321K(通気開口部)が開口されている。各上プレート開口部321Kは、封止ユニット31が
図2の第1の位置に配置された状態で、気流が通過することを許容する。
【0060】
下封止部33は、封止ユニット31の移動に伴って、下開口部303Kを下方から封止することができる。下封止部33は、下プレート331と、回動軸部332(下封止基端部)と、把持部333と、先端部334(下封止先端部)と、軸支部333Sとを有する。
【0061】
下プレート331は、上プレート321と同様に、左右方向に長く延びる板材からなる。回動軸部332は、下プレート331の基端部に相当し、開口形成部30Hのうち下仕切303の直下に配置された軸支部30Pに、水平な回動中心軸(第1回動中心軸)回りに回動可能に支持されている。
【0062】
把持部333は、下プレート331の下面から突設された突起部であり、延出部304の下方の空間を通じて作業者によって把持されることが可能とされている。先端部334は、回動軸部332とは反対側の下プレート331の先端部である。
図2に示すように、封止ユニット31が第1の位置に配置されると、先端部334は回動軸部332よりも下方に配置される。換言すれば、封止ユニット31が前記第1の位置に配置された状態において、下封止部33が建物の外側から建物の内部に向かって先下がりに傾斜するように、回動軸部332が下開口部303K(
図2)よりも外側において開口形成部30Hに回動可能に支持されている。なお、前記第1の位置において、上下方向において先端部334が延出部304と略同等の位置、又はこれよりも上方に位置することにより、建物の外観の意匠性を向上させることができる。
【0063】
軸支部333Sは、把持部333の基端部に形成されている。軸支部333Sは、連結部34の連結基端部341を回動可能に支持する。
【0064】
封止ユニット31は、下側水密材331S(第2水密材)を更に備える。下側水密材331Sは、下プレート331の上面部に固定されている。下側水密材331Sは、下開口部303Kおよび連結部挿通部303Jを下から覆うように配置された弾性部材であり、一例としてスポンジ材である。下側水密材331Sは、封止ユニット31が
図3の第2の位置に配置された状態において、下開口部303Kおよび連結部挿通部303Jを囲むとともに、下開口部303Kおよび連結部挿通部303Jと下封止部33の下プレート331との間に介在するように配置される。換言すれば、下側水密材331Sは、下開口部303Kおよび連結部挿通部303Jを下から覆うように配置されている。
【0065】
連結部34は、上封止部32と下封止部33とを上下方向に連結する。連結部34は、上下方向に延びるように配置されており、連結基端部341と、連結先端部342とを有す。連結基端部341は、水平な回動中心軸(第2回動中心軸)回りに回動可能なように軸支部333Sに支持されている。一方、連結先端部342は、上封止部32の軸支部326に、水平な回動中心軸(第3回動中心軸)回りに回動可能に支持されている。なお、前記第1、第2および第3回動中心軸は互いに平行に設定されている。
【0066】
更に、開口形成部30Hは、マグネット支持部35を備える。マグネット支持部35は、開口形成部30Hの上面部の裏面に固定された支持部材である。
図2に示すように、マグネット支持部35は側面視でコの形状を有している。また、開口形成部30Hは、上マグネット351(第1磁石)を有する。上マグネット351は、上開口部301Kの上方においてマグネット支持部35に支持されている。一方、前述の下マグネット325は、上下方向において上マグネット351に対向するとともに、封止ユニット31が前記第2の配置されることで上開口部301Kに進入するように上封止部32に支持されている。
【0067】
上記の上マグネット351および下マグネット325は、本発明の磁力発生部を構成する。当該磁力発生部は、フロート323が自ら浮力を受けて前記第1の位置から所定の高さまで上昇した封止ユニット31に対して、当該封止ユニット31を前記第2の位置まで引き寄せる磁力を発生することが可能である。
【0068】
以下、封止ユニット31の動作について説明する。封止ユニット31が第1の位置に配置された状態では、
図2に示すように、上封止部32が中仕切302によって支持されるとともに、軸支部326に回動可能に支持された連結部34が、上封止部32から下方に垂下した姿勢をとっている。また、連結基端部341を介して連結部34に接続された下封止部33は、下開口部303Kを開放して、軸支部30Pから先下がりに傾斜している。
【0069】
この結果、開口形成部30Hの内部には、下から順に、気流流入部30J、下開口部303K、上プレート開口部321K、上開口部301K、気流流出部30K(メッシュ部材305)が開口されており、
図2の矢印、
図5の矢印DRで示すように気流が形成可能とされている。この結果、通気口Vを通じた建物の換気が可能となるとともに、水切り30の機能によって基礎22に雨水が浸入することが抑止される。
【0070】
一方、洪水などによって外壁本体24の外側の水位が上昇すると、
図2の気流流入部30Jおよび下開口部303Kを通じて水が下空間30H3に浸入する。やがて、水位が中仕切302を超えると、フロート323が水から浮力を受けることによって、封止ユニット31が上昇する。この際、下封止部33は連結部34を介して上封止部32に連結されているため、軸支部30Pを中心に上方に回動し始める。また、上封止部32の上プレート321は開口形成部30Hの内壁に沿ってガイドされながら上方に移動する。この結果、上プレート321が水平方向に沿った姿勢を維持しながら上昇することができる。
【0071】
封止ユニット31の上昇に伴って、下マグネット325が中空間30H2内で所定の高さまで浮き上がると、上マグネット351と下マグネット325との間に作用する磁力(吸引力)によって、封止ユニット31が更に上方に引き上げられる。この結果、
図3に示すように、封止ユニット31が第2の位置に配置され、上開口部301Kおよび下開口部303Kが上封止部32および下封止部33によってそれぞれ封止される。この際も、上封止部32の上プレート321が開口形成部30Hの内壁に沿ってガイドされながら上方に移動するため、上プレート321の姿勢が維持され、上封止部32が上開口部301Kを安定して封止することができる。
【0072】
このように、本実施形態に係る外壁構造20によれば、封止ユニット31が第1の位置に配置された状態では、開口形成部30Hに形成された上開口部301Kおよび下開口部303Kならびに外壁本体24の通気口Vを通じて、建物の床下換気のための通気経路を形成することができる。なお、外壁構造20の定期チェック時には、作業者は、延出部304の下方の空間を通じて下封止部33の先端部334を確認することで、下封止部33が傾斜して配置されていること、すなわち、封止ユニット31が正常に第1の位置に配置され床下換気機能が維持されていることをチェックすることもできる。
【0073】
一方、洪水等により建物の外側の水位が上昇すると、フロート323が水から浮力を受けることにより、封止ユニット31が第1の姿勢から第2の姿勢に変位して開口形成部30Hの各開口部を封止することで、水が建物の内部に浸入するのを抑止することができる。この際、上封止部32に取り付けられたフロート323が水から浮力を受けると、連結部34の連結先端部342および連結基端部341が回動しながら連結部34が下封止部33を引き上げることができる。
【0074】
この結果、封止ユニット31の上封止部32および下封止部33が上開口部301Kおよび下開口部303Kをそれぞれ封止することができるため、開口形成部30Hの開口部を2段階で封止し、水の浸入を安定して抑止することができる。また、開口部の面積を拡げるために、1つの開口部を水平方向に拡張する場合と比較して、開口形成部30Hのサイズが大きくなることを抑止することができる。特に、フロート323が水から受ける浮力は、フロート323の周囲における水流の向きに関わらず上方向に作用するため、封止ユニット31を第1の姿勢から第2の姿勢に向かって確実に変位させ、上開口部301Kおよび下開口部303Kを下方から封止する機能を安定して維持することができる。
【0075】
この際、上封止部32は上側水密材301Sを圧縮変形させて上開口部301Kを封止し、下封止部33は下側水密材331Sを圧縮変形させて下開口部303Kおよび連結部挿通部303Jを封止する。したがって、上開口部301Kおよび下開口部303Kをそれぞれ安定して封止することができる。また、本実施形態では、上下2層の水密材を圧縮することができるため、1つの封止部材によって1つの開口を塞ぐ場合と比較して、水の浸入を防止するための水密する領域の面積を増大させることができる。
【0076】
また、本実施形態では、上封止部32が一対の突出部32S(開口封止部)と上プレート開口部321K(通気開口部)とを有しているため、通常時には当該上封止部32を通じての気流の流れを許容するとともに、洪水時などには上封止部32が上開口部301Kを確実に封止することができる。
【0077】
また、本実施形態では、水位の上昇に伴って封止ユニット31が所定の高さまで上昇すると、磁力発生部(上マグネット351、下マグネット325)が発生する磁力によって封止ユニット31を第2の位置まで引き寄せることができるため、開口形成部30Hの開口部を確実に封止することができる。
【0078】
特に、本実施形態では、上マグネット351が上開口部301Kの上方に配置され、下マグネット325は、封止ユニット31が第1の位置から第2の位置に変位することに伴って、上開口部301Kに進入するように上封止部32に支持されている。したがって、上開口部301Kを含む空間を利用して上マグネット351および下マグネット325を互いに吸引させることができるため、上封止部32が上開口部301Kを封止することがこれらの磁石によって妨げられることを防ぐことができる。
【0079】
また、本実施形態では、フロート323が上封止部32に取り付けられているため、水位の上昇に伴ってフロート323が水から浮力を受ける際には、下封止部33が既に水中に浸かっている。このため、フロート323が下封止部33に取り付けられている場合と比較して、相対的に小さな浮力によって封止ユニット31を第1の位置から第2の位置に向かって変位させることができる。なお、他の実施形態において、フロート323に代わるフロートが連結部34に取り付けられても良い。また、後記の変形実施形態のように、フロート323は下封止部33に取り付けられてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、床下換気のための各開口部およびこれを封止する封止ユニット31が、水切り30の内部に配置されている。このため、日光や雨風によるこれらの構造の劣化が少なく、水害が繰り返された場合でも、床下換気機能および水の浸入防止機能を維持することができる。
【0081】
なお、前述のように、本実施形態では、フロート323が上封止部32に取り付けられているため、フロート323に浮力が生じる際に、下封止部33は既に水中に浸かっている。このため、封止ユニット31が第1の位置(
図2)から第2の位置(
図3)に変位する途中で、下封止部33と下開口部303Kとの間に異物が挟まると、下封止部33の回動が阻害される恐れがある。この場合、連結部34を介して下封止部33に連結されている上封止部32の上昇も阻害され、下開口部303Kのみならず上開口部301Kを封止することができないことが懸念される。
【0082】
しかしながら、本実施形態では、下封止部33が回動軸部332を支点として回動可能なように開口形成部30Hに支持されている。このため、封止ユニット31が第1の位置に配置された状態で先端部334が回動軸部332よりも下方に配置されるため、
図2の矢印で示すように気体および水の進入経路を限定し、開口形成部30Hへの異物の侵入を抑制することができる。
【0083】
特に、本実施形態では、封止ユニット31が前記第1の位置に配置された状態において、下封止部33が建物の外側から建物の内部に向かって先下がりに傾斜している。このため、気体や水の流入経路が、
図2に示すように、下封止部33の内側を回り込むように形成されている。この結果、洪水時などにおける水位の上昇に伴う異物の侵入を更に抑制することができる。
【0084】
また、
図1を参照して、本実施形態では、封止ユニット31が第1の位置に配置された状態において、下封止部33の先端部334と外壁本体24(基礎22)との水平方向における距離L1が、先端部334と下開口部303Kとの上下方向における距離L2よりも小さくなるように、上開口部301Kと下開口部303Kとの上下方向における距離および先端部334と外壁本体24(基礎22)との水平方向における距離がそれぞれ設定されている。このため、距離L2よりも大きな寸法を有する異物が下開口部303Kの周辺に流入することが抑止される。この結果、先端部334と基礎22との間の隙間を通じて異物が侵入した場合であっても、当該異物が下開口部303Kと下封止部33との間の隙間を塞ぐことを抑止することができる。また、下封止部33の先端部334と外壁本体24との間の隙間を通じて大きな異物が侵入することを抑止するとともに、下開口部303Kと下封止部33との間の部分を通じて気流が開口形成部30Hに流入することを促進することができる。
【0085】
図6は、
図2の外壁構造20において封止ユニット31の上封止部32のみが上方に移動した様子を示す側断面図である。本実施形態では、フロート323に浮力が発生した状態で、下開口部303Kと下封止部33との間に仮に異物が挟み込まれ、下封止部33に前記浮力に抗する所定の外力が発生した場合には、連結先端部342が軸支部326から脱離することで、連結部34による上封止部32と下封止部33との連結を解除することができる。この結果、上記のように異物が挟み込まれた場合であっても、
図6に示すように、下封止部33を残して、上封止部32が上昇し上開口部301Kを封止することが可能となる。したがって、このような場合であっても水が建物の内部に浸入するのを確実に防止することができる。上記のような連結先端部342の脱離を可能とするために、軸支部326はC字形状を有するとともに弾性変形可能とされている。
【0086】
なお、
図6に示すように、封止ユニット31の上封止部32のみが第2の位置に配置された状態で周囲の水位が下がった場合、作業者は下開口部303Kまたは連結部挿通部303Jを通じてフックFを係合部324に引っ掛けて、上封止部32を引き下げることで、当該上封止部32を第1の位置に復帰させることができる。そして、連結部34の連結先端部342を再び上封止部32の軸支部326に装着することで、封止ユニット31を再び使用することができる。
【0087】
また、
図3に示すように、封止ユニット31全体が第2の位置に配置されている状態では、作業者は下封止部33の把持部333を把持して、当該下封止部33を下方に回動させることで、封止ユニット31を第2の位置から第1の位置に移動させることができる。この際、仮に、上マグネット351と下マグネット325との間の磁力に負けて連結先端部342が軸支部326から脱離した場合には、上記と同様に、フックFを用いて上封止部32を第1の位置に引き下げればよい。
【0088】
なお、上記の実施形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、一例として、以下のような変形実施形態を採用することができる。
【0089】
(1)上記の実施形態では、通気口Vは外壁26と基礎22との間に形成されていたが、通気口Vが形成される位置は外壁26と基礎22との間に限られない。例えば、基礎22を貫通して建物内外を連通するように、基礎22に通気口Vが形成されていても良い。
【0090】
(2)
図7は、本発明の第1変形実施形態に係る建物の外壁構造を表す側断面図である。
図8は、
図7の外壁構造において封止ユニット31が上方に移動した様子を示す側断面図である。先の実施形態では、下封止部33が回動軸部332回りに回動可能なように開口形成部30Hに支持される態様にて説明したが、下封止部33は、
図7に示すように、水平な姿勢で連結部34を介して上封止部32に接続されるものでもよい。この場合、封止ユニット31が第1の位置に配置されると、下封止部33は、開口形成部30Hの前後の支持突起306に支持される。開口形成部30Hは、延出部304の内側に間隔をおいて配置される内側延出部30HJを有し、当該内側延出部30HJには、内側開口部30HKが開口されている。したがって、本変形実施形態では、当該内側開口部30HKを通じて、開口形成部30Hの内部に通気経路が形成される。
【0091】
一方、外壁構造20の周辺の水位が上昇し、内側開口部30HKを通じて水が開口形成部30H内に浸入すると、先の実施形態と同様に、フロート323が受ける浮力によって封止ユニット31が
図8に示すように第2の位置に変位する。この結果、下封止部33が下開口部303Kを下方から封止することができる。なお、内側開口部30HKには、異物の侵入を防止するために、メッシュ部材305と同様の部材が装着されてもよい。
【0092】
(3)
図9は、本発明の第2変形実施形態に係る建物の外壁構造を表す側断面図である。上記の第1変形実施形態では、先の実施形態と同様に、上封止部32にフロート323が取り付けられる態様にて説明したが、フロート323と同様の下側フロート335が下封止部33に取り付けられてもよい。この場合も、下側フロート335が水から受ける浮力によって、封止ユニット31を第1の位置から第2の位置に変位させることができる。また、上マグネット351および下マグネット325の作用によって、封止ユニット31の第2の位置への移動を補助することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 建物
20 外壁構造
22 基礎
24 外壁本体
26 外壁
30 水切り
301 上仕切
301K 上開口部
301S 上側水密材(第1水密材)
302 中仕切
303 下仕切
303K 下開口部
30H 開口形成部
30H1 上空間
30H2 中空間
30H3 下空間
30HK 内側開口部
30J 気流流入部
30K 気流流出部
31 封止ユニット
32 上封止部
321 上プレート
321K 上プレート開口部
322 フロート支持部
323 フロート
324 係合部
325 下マグネット(磁力発生部、第2磁石)
326 軸支部(連結解除部)
32S 突出部(開口封止部)
33 下封止部
331 下プレート
331S 下側水密材(第2水密材)
332 回動軸部(下封止基端部)
333 把持部
334 先端部(下封止先端部)
335 下側フロート
34 連結部
341 連結基端部
342 連結先端部
35 マグネット支持部
351 上マグネット(磁力発生部、第1磁石)
B ボルト
F フック
V 通気口