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特開2023-71336車載装置、情報処理装置、センサデータ送信方法、および情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071336
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】車載装置、情報処理装置、センサデータ送信方法、および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20230516BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230516BHJP
   H04N 19/115 20140101ALI20230516BHJP
   H04N 19/134 20140101ALI20230516BHJP
   H04N 19/172 20140101ALI20230516BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20230516BHJP
   G16Y 10/75 20200101ALI20230516BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/16 A
H04N19/115
H04N19/134
H04N19/172
G16Y10/40
G16Y10/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184028
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 賢
【テーマコード(参考)】
5C159
5H181
【Fターム(参考)】
5C159PP01
5C159PP04
5C159RC11
5C159SS14
5C159TA60
5C159TB04
5C159TC00
5C159TD12
5C159UA02
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF10
5H181FF32
5H181KK08
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181MC19
5H181MC22
(57)【要約】
【課題】センサデータの圧縮率に応じた処理の実行を可能にする車載装置、情報処理装置、センサデータ送信方法、および情報処理方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る車載装置は、取得部と、圧縮部と、送信部とを備える。取得部は、車両の状態を表す車両状態情報と、車両に備えられたセンサによって計測されたセンサデータとを取得する。圧縮部は、車両状態情報に応じた異なる圧縮率でセンサデータを圧縮する。送信部は、圧縮率を、圧縮されたセンサデータに対応付けて送信する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の状態を表す車両状態情報と、前記車両に備えられたセンサによって計測されたセンサデータとを取得する取得部と、
前記車両状態情報に応じた異なる圧縮率で前記センサデータを圧縮する圧縮部と、
前記圧縮率を、圧縮された前記センサデータに対応付けて送信する送信部と、
を備える車載装置。
【請求項2】
前記車両状態情報に応じて前記センサデータの圧縮率を決定する決定部と、
前記センサデータに前記決定部により決定された前記圧縮率を付加した圧縮率付きセンサデータを生成する生成部と、をさらに備え、
前記圧縮部は、前記圧縮率付きセンサデータを、前記決定部により決定された前記圧縮率で圧縮し、
前記送信部は、圧縮された前記圧縮率付きセンサデータを送信する、
請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記車両状態情報は、少なくとも、前記車両の車速を含み、
前記決定部は、
前記車速が第1の閾値以下の場合は、前記センサデータを第1の圧縮率で圧縮することを決定し、
前記車速が前記第1の閾値より速い場合は、前記センサデータを前記第1の圧縮率より高い第2の圧縮率で圧縮することを決定する、
請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記センサデータは、少なくとも、前記車両の周囲を撮影した画像データを含み、
前記決定部は、
前記車速が前記第1の閾値以下の場合は、前記画像データのフレームレートを第1のフレームレートに決定し、
前記車速が前記第1の閾値より速い場合は、前記画像データのフレームレートを前記第1のフレームレートよりも高い第2のフレームレートに決定し、
前記生成部は、前記決定部により決定されたフレームレートに基づいて前記画像データを編集する、
請求項3に記載の車載装置。
【請求項5】
前記センサデータは、少なくとも、前記車両の周囲を撮影した画像データを含み、
前記決定部は、
前記車速が前記第1の閾値以下の場合は、前記画像データの解像度を第1の解像度に決定し、
前記車速が前記第1の閾値より速い場合は、前記画像データの解像度を前記第1の解像度よりも低い第2の解像度に決定し、
前記生成部は、前記決定部により決定された解像度に基づいて前記画像データを編集する、
請求項3または4に記載の車載装置。
【請求項6】
前記車両状態情報は、前記車両の車速、前記車両の位置、前記車両のギヤの状態、前記車両の操舵角、前記車両の周囲の照度、前記車両の周囲の天候情報、および、前記車両のワイパーの動作状態のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1または2に記載の車載装置。
【請求項7】
車両に搭載された車載装置から、圧縮されたセンサデータおよび当該センサデータの圧縮率を受信する受信部と、
前記センサデータの圧縮率に応じて、異なる処理を実行する制御処理部と、
を備える情報処理装置。
【請求項8】
前記圧縮率が第2の閾値以下の場合、第1の検知閾値を用いて前記センサデータに基づく障害物検知を実行し、前記圧縮率が第2の閾値より高い場合、前記第1の検知閾値より低い第2の検知閾値を用いて前記センサデータに基づく障害物検知を実行する障害物検知部、を備える、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記圧縮率が第2の閾値以下の場合、第1の学習モデルに前記圧縮されたセンサデータを学習させ、前記圧縮率が第2の閾値より高い場合、前記第1の学習モデルとは異なる第2の学習モデルに前記圧縮されたセンサデータを学習させる学習部、を備える、
請求項7または8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記制御処理部は、前記圧縮されたセンサデータの圧縮率に応じて処理のアルゴリズムを変更する、
請求項7から9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記制御処理部による処理の結果を、前記車載装置に送信する送信部、を備える、
請求項7から10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
車両の状態を表す車両状態情報と、前記車両に備えられたセンサによって計測されたセンサデータとを取得する取得ステップと、
前記車両状態情報に応じた異なる圧縮率で前記センサデータを圧縮する圧縮ステップと、
前記圧縮率を、圧縮された前記センサデータに対応付けて送信する送信ステップと、
を含むセンサデータ送信方法。
【請求項13】
車両に搭載された車載装置から、圧縮されたセンサデータおよび当該センサデータの圧縮率を受信する受信ステップと、
前記センサデータの圧縮率に応じて、異なる処理を実行する制御処理ステップと、
を含む情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置、情報処理装置、センサデータ送信方法、および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられた各種センサにより計測されたセンサデータを、車載装置からクラウドサーバまたはエッジサーバに送信する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-107291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、車両の走行状況に応じてセンサデータの圧縮率を変更することが知られていたが、圧縮後のセンサデータから圧縮の際の圧縮率を特定することが困難な場合があった。このため、圧縮後のセンサデータを受信したクラウドサーバまたはエッジサーバが、圧縮率に応じた処理を実行することが困難であった。
【0005】
本開示は、センサデータの圧縮率に応じた処理の実行を可能にする車載装置、情報処理装置、センサデータ送信方法、および情報処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車載装置は、取得部と、圧縮部と、送信部とを備える。取得部は、車両の状態を表す車両状態情報と、車両に備えられたセンサによって計測されたセンサデータとを取得する。圧縮部は、車両状態情報に応じた異なる圧縮率でセンサデータを圧縮する。送信部は、圧縮率を、圧縮されたセンサデータに対応付けて送信する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る車載装置、情報処理装置、センサデータ送信方法、および情報処理方法によれば、センサデータの圧縮率に応じた処理の実行を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る車両とクラウドサーバ間の情報通信の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る車載装置を備える車両の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る車両の運転席近傍の構成の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る車載装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る車載装置の機能の一例を示すブロック図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るヘッダ付きセンサデータの一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係るクラウドサーバの機能の一例を示すブロック図である。
図8図8は、第1の実施形態に係るセンサデータの送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、第1の実施形態に係るクラウドサーバで実行されるADAS処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第2の実施形態に係る車両、エッジサーバ、およびクラウドサーバの間の情報通信の一例を示す図である。
図11図11は、第3の実施形態に係る車両、エッジサーバ、およびクラウドサーバの間の情報通信の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る車載装置、および情報処理装置の実施形態について説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る車両1とクラウドサーバ2間の情報通信の一例を示す図である。車両1とクラウドサーバ2とは、インターネット等のネットワークを介して接続する。図1に示すように、本実施形態の車両1は、センサデータと共に圧縮率、フレームレート、および解像度等のメタデータをクラウドサーバ2に送信する。
【0011】
クラウドサーバ2は、クラウド環境に設けられる。クラウドサーバ2は、本実施形態における情報処理装置の一例である。
【0012】
クラウドサーバ2は、車両1から送信されたセンサデータのメタデータに応じて、当該センサデータに基づくADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)等の処理を実行する。例えば、クラウドサーバ2は、センサデータの圧縮率に応じて、処理に用いる閾値、処理のアルゴリズム、または当該センサデータの学習に用いる学習モデルを変更する。
【0013】
クラウドサーバ2が実行するADAS処理は、例えば、ACC(Adaptive Cruise Control System:アダプティブクルーズコントロール)、FCW(Forward Collision Warning:前方衝突警告)、AEBS(Advanced Emergency Braking System:衝突被害軽減制動制御装置)、PD(Pedestrian Detection:歩行者検知)TSR(Traffic Sign Recognition:交通標識認識)、LDW(Lane Departure Warning:車線逸脱警報)、フリースペース検知、自動駐車、および自動バレー駐車(Automated Valet Parking:AVP)等であるがこれらに限定されるものではない。
【0014】
クラウドサーバ2は、例えば、車両1から受信したセンサデータおよび当該センサデータのメタデータに基づいて、車両1の走行を制御する車両制御データを車両1に送信する。また、クラウドサーバ2は、車両1の走行を制御する車両制御データ以外に、車両1の運転者への情報提供等を行ってもよい。
【0015】
本実施形態におけるセンサデータは、少なくとも、車両1に搭載された車載カメラが車両1の周囲を撮影した画像データを含む。センサデータのメタデータに含まれるフレームレートは当該画像データのフレームレート、および解像度は当該画像データの解像度である。なお、センサデータは、画像データ以外に、各種のセンサによる計測データを含んでもよい。例えば、センサデータは、車両1に搭載されたソナーまたはレーダーによる車両1の周囲の障害物と車両1との間の距離の測距データ等を含んでもよい。
【0016】
なお、本実施形態において「障害物」という場合、物体、建築物、歩行者等の人、自転車、他の車両等を含むものとする。また、図1ではクラウドサーバ2を例示しているが、クラウドサーバ2の代わりに、あるいはクラウドサーバ2に加えて、エッジサーバが用いられてもよい。
【0017】
次に、本実施形態における車両1の構成について説明する。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係る車載装置100を備える車両1の一例を示す図である。図2に示すように、車両1は、車体12と、車体12に所定方向に沿って配置された2対の車輪13とを備える。2対の車輪13は、1対のフロントタイヤ13f及び1対のリアタイヤ13rを備える。
【0019】
なお、図2に示す車両1は4つの車輪13を備えるが、車輪13の数はこれに限定されるものではない。例えば、車両1は2輪車であっても良い。
【0020】
車体12は、車輪13に結合され、車輪13によって移動可能である。この場合、2対の車輪13が配置される所定方向が車両1の走行方向となる。車両1は、不図示のギヤの切り替え等により前進または後退することができる。また、車両1は、操舵により右左折することもできる。
【0021】
また、車体12は、フロントタイヤ13f側の端部である前端部Fと、リアタイヤ13r側の端部である後端部Rを有する。車体12は上面視で略矩形をしており、略矩形状の4つの角部を端部と呼ぶ場合もある。また、図2では図示を省略するが、車両1は、表示装置、スピーカ、および操作部を備える。
【0022】
車体12の前後端部F,Rであって、車体12の下端付近には1対のバンパー14が設けられている。1対のバンパー14のうち、フロントバンパー14fは車体12の下端部付近の前面全体と側面の一部を覆う。1対のバンパー14のうち、リアバンパー14rは車体12の下端部付近の後面全体と側面の一部を覆う。
【0023】
車体12の所定の端部には、超音波等の音波の送受波を行う送受波部15f,15rが配置される。例えば、フロントバンパー14fには1つ以上の送受波部15fが配置され、リアバンパー14rには1つ以上の送受波部15rが配置される。以下、送受波部15f,15rを特に限定しない場合には、単に送受波部15という。また、送受波部15の数および位置は、図2に示す例に限定されるものではない。例えば、車両1は、左右の側方に送受波部15を備えても良い。
【0024】
本実施形態においては、超音波を使用したソナーを送受波部15の一例とするが、送受波部15は、電磁波を送受波するレーダーであっても良い。あるいは、車両1は、ソナーとレーダーの両方を備えても良い。また、送受波部15を単にセンサと称しても良い。
【0025】
送受波部15は、音波または電磁波の送受結果に基づいて、車両1の周囲の障害物を検出する。また、送受波部15は、音波または電磁波の送受結果に基づいて、車両1の周囲の障害物と車両1との距離を計測する。
【0026】
また、車両1は、車両1の前方を撮影する第1の車載カメラ16a、車両1の後方を撮影する第2の車載カメラ16b、車両1の左側方を撮影する第3の車載カメラ16c、および車両1の右側方を撮影する第4の車載カメラを備える。第4の車載カメラは図示を省略する。
【0027】
以下、第1の車載カメラ16a、第2の車載カメラ16b、第3の車載カメラ16c、および第4の車載カメラを特に区別しない場合には単に車載カメラ16という。車載カメラの位置及び数は図2に示す例に限定されるものではない。例えば、車両1は、また、第1の車載カメラ16aおよび第2の車載カメラ16bの2台のみを備えても良い。あるいは、車両1は、上述の例の他に、さらに他の車載カメラを有しても良い。
【0028】
車載カメラ16は、車両1の周囲の映像を撮影可能であり、例えば、カラー画像を撮影するカメラである。なお、車載カメラ16が撮影する画像データは、動画でも良いし、静止画でも良い。また、車載カメラ16は、車両1に内蔵されたカメラであっても良いし、車両1に後付けされたドライブレコーダーのカメラ等であっても良い。
【0029】
また、車両1には、車載装置100が搭載される。車載装置100は、車両1に搭載可能な情報処理装置であり、例えば、車両1の内部に設けられたECU(Electronic Control Unit)、もしくはOBU(On Board Unit)である。あるいは、車載装置100は、車両1のダッシュボード付近に設置された外付けの装置であっても良い。なお、車載装置100はカーナビゲーション装置等を兼ねても良い。
【0030】
次に、本実施形態の車両1の運転席近傍の構成について説明する。図3は、第1の実施形態に係る車両1の運転席130a近傍の構成の一例を示す図である。
【0031】
図3に示すように、車両1は運転席130a、および助手席130bを備える。また、運転席130aの前方にはフロントガラス180、ダッシュボード190、ステアリングホイール140、表示装置120、および操作ボタン141が設けられる。
【0032】
表示装置120は、車両1のダッシュボード190に設けられたディスプレイである。表示装置120は、一例として、図3に示すようにダッシュボード190の中央に位置する。表示装置120は例えば液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。また、表示装置120は、タッチパネルを兼ねても良い。表示装置120は、本実施形態における表示部の一例である。
【0033】
また、ステアリングホイール140は、運転席130aの正面に設けられ、ドライバ(運転者)によって操作可能である。ステアリングホイール140の回転角度、つまり操舵角は、操舵輪であるフロントタイヤ13fの向きの変化と電気的または機械的に連動する。なお、操舵輪はリアタイヤ13rでも良いし、フロントタイヤ13fとリアタイヤ13rの両方が操舵輪であっても良い。
【0034】
操作ボタン141は、ユーザによる操作を受け付け可能なボタンである。なお、本実施形態においてユーザは、例えば車両1の運転者である。なお、操作ボタン141の位置は図3に示す例に限定されるものでなく、例えばステアリングホイール140に設けられても良い。操作ボタン141は、本実施形態における操作部の一例である。また、表示装置120がタッチパネルを兼ねる場合は、表示装置120が操作部の一例であっても良い。また、不図示のタブレット端末、スマートフォン、リモートコントローラ、または電子キー等の、車両1の外部から車両1に対して信号を送信可能な操作端末を、操作部の一例としても良い。
【0035】
次に、本実施形態の車載装置100のハードウェア構成について説明する。
【0036】
図4は、第1の実施形態に係る車載装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。図4に示すように、車載装置100は、CPU(Central Processing Unit)11A、ROM11B、RAM11C、デバイスI/F(インタフェース)11D、CAN(Controller Area Network)I/F11E、NW(NetWork) I/F11F、HDD11G等がバス11Hにより相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0037】
CPU11Aは、車載装置100全体を制御する演算装置である。なお、CPU11Aは、本実施形態の車載装置100におけるプロセッサの一例であり、他のプロセッサまたは処理回路がCPU11Aの代わりに設けられても良い。
【0038】
ROM11B、RAM11C、およびHDD11Gは、記憶部として機能する。例えば、ROM11Bは、CPU11Aによる各種処理を実現するプログラム等を記憶する。RAM11Cは、例えば車載装置100の主記憶装置であり、CPU11Aによる各種処理に必要なデータを記憶する。
【0039】
デバイスI/F11Dは、各種のデバイスと接続可能なインタフェースである。例えば、デバイスI/F11Dは、GPS装置11lと接続し、GPS装置11lから、車両1の現在位置を示す位置情報を取得する。当該位置情報は、例えば、車両1の絶対位置を示す緯度と経度の値である。
【0040】
GPS装置11lは、GPSアンテナ11Jが受信したGPS信号に基づいて車両1の位置を表すGPS座標を特定する装置である。GPSアンテナ11Jは、GPS信号を受信可能なアンテナである。
【0041】
また、デバイスI/F11Dは、車載カメラ16および送受波部15から画像および検知結果等を取得する。
【0042】
CAN I/F11Eは、車両1内のCANを介して車両1に搭載された他のECUとの間で情報の送受信をするためのインタフェースである。なお、CAN以外の通信規格を採用しても良い。
【0043】
NW I/F11Fは、インターネット等のネットワークを介してクラウドサーバ2等の外部の情報処理装置と通信可能な通信装置である。NW I/F11Fは、例えば、LTE(Long Term Evolution)(登録商標)等の公衆回線、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の近距離通信等による通信が可能である。また、車載装置100のNW I/F11Fは、インターネットを介してクラウドサーバ2と直接的に通信してもよいし、他の情報処理装置等の機器を介して、間接的に通信してもよい。
【0044】
次に、本実施形態の車載装置100が備える機能について説明する。
【0045】
図5は、第1の実施形態に係る車載装置100の機能の一例を示すブロック図である。図5に示すように、車載装置100は、取得部101、決定部102、生成部103、圧縮部104、送信部105、受信部106、車両制御部107、表示制御部108、受付部109、および記憶部110を備える。
【0046】
記憶部110は、例えばROM11B、RAM11C、またはHDD11Gによって構成される。なお、図5では1つの記憶部110が車載装置100に含まれるように記載したが、複数の記憶媒体が記憶部110として機能しても良い。
【0047】
取得部101、決定部102、生成部103、圧縮部104、送信部105、受信部106、車両制御部107、表示制御部108、および受付部109は、例えば、ROM11BまたはHDD11Gに記憶されたプログラムをCPU11Aが読み出すことにより、実行される機能である。あるいは、これらの機能を備えるハードウェア回路が車載装置100に設けられても良い。
【0048】
取得部101は、車両1の状態を表す車両状態情報と、車両1に備えられたセンサによって計測されたセンサデータとを取得する。
【0049】
本実施形態において、車両1に備えられたセンサは、例えば、車載カメラ16または送受波部15とする。さらに具体的には、本実施形態では、車載カメラ16をセンサとした場合の例について説明する。また、本実施形態では、車載カメラ16によって撮影された画像データをセンサデータの一例として説明する。
【0050】
取得部101は、デバイスI/F11Dを介して、車載カメラ16から車両1の周囲を撮影した画像データを取得する。また、取得部101は、デバイスI/F11Dを介して、送受波部15から車両1の周囲の障害物と車両1との間の距離の測距データ、および障害物の検出結果を取得する。
【0051】
なお、センサは、車載カメラ16および送受波部15の両方、あるいは、送受波部15のみでもよい。また、車両1はその他のセンサをさらに備えてもよい。センサが送受波部15である場合は、センサデータは、送受波部15による車両1の周囲の障害物と車両1との間の距離の測距データ、または障害物の検出結果であってもよい。
【0052】
本実施形態の車両状態情報は、少なくとも、車両1の車速を含む。取得部101は、CAN I/F11Eを介して他のECUから車両1の車速を取得する。また、取得部101は、車両1に備えられた車輪速センサ等から車両1の車輪速を取得し、当該車輪速から車両1の車速を得てもよい。
【0053】
また、車両状態情報は、車速以外の情報を含んでもよい。例えば、車速、GPS装置11lによって計測された車両1のGPS位置情報、車両1のギヤの状態、操舵角、車両1の周囲の照度等の周辺情報、車両1の周囲の天候情報、および車両1のワイパーの動作状態のうちの少なくとも1つが車両状態情報に含まれるものとしてもよい。これらの情報は、取得部101によって車両1の各装置から取得される。GPS位置情報は、車両1の現在位置の特性を特定するために用いられる。例えば、取得部101は、地図データと車両1のGPS位置情報とから、車両1の現在位置の特性を得てもよい。地図データは、例えば、インターネット等を介して車載装置100と接続する外部装置に記憶されていてもよいし、車載装置100の記憶部110が記憶していてもよい。車両1の現在位置の特性は、例えば、駐車場、一般道路、および高速道路等の分類である。
【0054】
決定部102は、車両状態情報に応じてセンサデータの圧縮率を決定する。例えば、決定部102は、車両状態情報に含まれる車速が第1の閾値以下の場合は、センサデータを低圧縮率で圧縮することを決定する。また、決定部102は、車両状態情報に含まれる車速が第1の閾値より速い場合は、センサデータを高圧縮率で圧縮することを決定する。低圧縮率は、本願出願における第1の圧縮率の一例である。また、高圧縮率は、本願出願における第2の圧縮率の一例である。低圧縮率および高圧縮率の具体的な数値は特に限定されるものではなく、高圧縮率が低圧縮率より高ければよい。第1の閾値の値は特に限定されるものではない。
【0055】
また、本実施形態において、圧縮率は低圧縮率と高圧縮率の2段階とするが、圧縮率は3段階以上に分かれてもよい。例えば、決定部102は、車速が速いほど圧縮率が高くなるように、段階的に圧縮率を決定してもよい。
【0056】
車速が速い場合、車載装置100は、車両1の走行制御のため、クラウドサーバ2からのADAS処理の結果を迅速に得た方がよい。センサデータの圧縮率が高いほど、圧縮されたセンサデータの車両1とクラウドサーバ2間の送信時間が短くなる。このため、決定部102は、車速が速い場合に車速が遅い場合よりもセンサデータの圧縮率を高くし、圧縮後のセンサデータをクラウドサーバ2に迅速に送信する。
【0057】
なお、本実施形態における圧縮の方式は特に限定されないが、基本的に、不可逆圧縮とする。このため、車両1からクラウドサーバ2に送信された圧縮済みのセンサデータは、クラウドサーバ2によって展開された後も、圧縮前の状態よりもデータサイズが小さくなる。クラウドサーバ2が車両1から送信された画像データに基づいて歩行者検知処理を実行する場合、画像データのサイズが大きいほど、高精度の歩行者検知が可能となる。例えば、車両1が低速で走行している場合、車両1が駐車直前の状態か、道幅の狭い道路を走行している場合が想定される。このような場合、歩行者の飛び出し等の可能性が高いため、クラウドサーバ2は、高解像度の画像データによって高精度の歩行者検知を実行する。
【0058】
また、決定部102は、車速以外の車両状態情報に応じてセンサデータの圧縮率を決定してもよい。例えば、決定部102は、車両1のワイパーが連続して動作している場合、雨が降っている可能性が高い。天候が雨の場合には、運転者による車両1の周囲の視認性が低下する。このような場合、クラウドサーバ2による歩行者検知の精度を向上させるため、決定部102は、画像データの圧縮率を低圧縮率に決定する。また、決定部102は、車両1の現在位置が駐車場である場合、クラウドサーバ2による歩行者や周囲の他の車両の検知の精度を向上させるため、画像データの圧縮率を低圧縮率に決定してもよい。
【0059】
また、決定部102は、複数の情報の組み合わせ、例えば車速と車両1の現在位置の特性との組み合わせに応じて、センサデータの圧縮率を決定してもよい。
【0060】
また、決定部102は、圧縮率の他に、センサデータの種々の特性を車両状態情報に応じて決定してもよい。例えば、決定部102は、画像データが動画である場合であって、車速が第1の閾値以下の場合は、画像データのフレームレートを低フレームレート、画像データの解像度を高解像度に決定に決定する。また、決定部102は、車速が第1の閾値より速い場合は、画像データのフレームレートを高フレームレート、画像データの解像度を低解像度に決定する。
【0061】
低フレームレートは本実施形態における第1のフレームレートの一例である。また、高フレームレートは本実施形態における第1のフレームレートの一例である。低フレームレートおよび高フレームレートの具体的な値は特に限定されず、高フレームレートの方が低フレームレートよりも高ければよい。高解像度は本実施形態における第1の解像度の一例である。低解像度は本実施形態における第2の解像度の一例である。高解像度および低解像度の具体的な値は特に限定されず、高解像度の方が低解像度よりも高ければよい。なお、決定部102が決定する解像度は、画像データが圧縮された後に、クラウドサーバ2において展開された状態における解像度である。なお、画像データが静止画である場合は、決定部102は、フレームレートについては決定せず、解像度について決定する。
【0062】
また、本実施形態においてはフレームレートおよび解像度は2段階とするが、フレームレートおよび解像度は3段階以上に分かれてもよい。例えば、決定部102は、車速が速いほどフレームレートが高くなるように、段階的にフレームレートを決定してもよい。また、決定部102は、車速が遅いほど解像度が高くなるように、段階的に解像度を決定してもよい。一般に、車両1の車速が速いほど、画像データの動きが多くなる。決定部102がフレームレートを高く設定することにより、クラウドサーバ2における当該画像データ内の動きの検知漏れを低減させることができる。
【0063】
生成部103は、センサデータに決定部102により決定された圧縮率を付加したヘッダ付きセンサデータを生成する。ヘッダ付きセンサデータは、本実施形態における圧縮率付きセンサデータの一例である。
【0064】
また、決定部102が車両状態情報に応じて画像データのフレームレートおよび解像度を決定する場合、生成部103は、画像データを決定部102により決定されたフレームレートに編集する。また、生成部103は、画像データの圧縮および展開後に、画像データが決定部102により決定された解像度になるように画像データの解像度を調整してもよい。
【0065】
図6は、第1の実施形態に係るヘッダ付きセンサデータ400の一例を示す図である。図6に示すように、ヘッダ付きセンサデータ400は、本体部であるセンサデータ420に付帯するヘッダデータ410として圧縮率が付与されたデータである。
【0066】
なお、ヘッダ付きセンサデータ400は、圧縮率以外のデータをヘッダデータ410に含んでもよい。図6に示す例では、ヘッダデータ410は、画像データの圧縮率、画像データのフレームレート、および画像データの解像度を含む。画像データの圧縮率、画像データのフレームレート、および画像データの解像度は、画像データのメタデータの一例である。センサデータが画像データではない場合は、メタデータの内容は図6に示す例とは異なる場合がある。
【0067】
なお、図6に示すヘッダ付きセンサデータ400では、画像データであるセンサデータ420のヘッダデータ410に圧縮率等のメタデータが含まれるが、圧縮率等のメタデータはセンサデータ420に対応付けられていればよく、必ずしもヘッダデータ410としてセンサデータ420に付加されなくともよい。
【0068】
図5に戻り、圧縮部104は、車両状態情報に応じた異なる圧縮率でセンサデータを圧縮する。より詳細には、圧縮部104は、生成部103によって生成されたヘッダ付きセンサデータ400を、決定部102により決定された圧縮率で圧縮する。
【0069】
送信部105は、NW I/F11Fを介して、圧縮率を、圧縮されたセンサデータ420に対応付けてクラウドサーバ2に送信する。より詳細には、送信部105は、圧縮部104により圧縮されたヘッダ付きセンサデータ400をクラウドサーバ2に送信する。
【0070】
受信部106は、NW I/F11Fを介して、クラウドサーバ2から、車両1の走行を制御する車両制御データを受信する。車両制御データは、例えば、ADASによる処理結果である。具体的には、車両制御データは、車両1の周囲の障害物の検知結果、車両1の制動操作を指示する信号、車両1の操舵を指示する信号、または車両1の車速を指示する信号等である。
【0071】
車両制御部107は、受信部106が受信した車両制御データに基づいて、車両1の走行を制御する。例えば、車両制御部107は、車両制御データに基づいて、車両1の操舵、制動、および加減速を制御する。また、車両制御部107は、車両制御データに基づく制御の他に、車載カメラ16が車両1の周囲を撮影した画像、および送受波部15が検知した車両1の周囲の障害物との距離に基づいて、車両1の走行を制御してもよい。
【0072】
表示制御部108は、表示装置120に各種の画像およびGUI(Graphical User Interface)を表示させる。また、表示制御部108は、受信部106が受信した車両制御データに基づいて、障害物検知の警告を表示装置120に表示させてもよい。
【0073】
受付部109は、操作ボタン141を介して車両1の運転者からの各種の操作を受け付ける。また、表示装置120がタッチパネルを備える場合、受付部109は、当該タッチパネルに入力された車両1の運転者からの各種の操作を受け付ける。
【0074】
次に、クラウドサーバ2の機能について説明する。
【0075】
図7は、第1の実施形態に係るクラウドサーバ2の機能の一例を示すブロック図である。
【0076】
図7に示すように、クラウドサーバ2は、受信部201、ADAS処理部200、送信部205、および記憶部210を備える。ADAS処理部200は、本実施形態における制御処理部の一例である。
【0077】
記憶部210は、例えばクラウド環境のROM、RAM、またはHDDによって構成される。
【0078】
受信部201、ADAS処理部200、および送信部205は、例えば、記憶部210に記憶されたプログラムをクラウド環境のCPUが読み出すことにより、実行される機能である。
【0079】
受信部201は、車両1に搭載された車載装置100から、圧縮されたセンサデータ420および当該センサデータ420の圧縮率を受信する。より詳細には、受信部201は、車両1に搭載された車載装置100から、圧縮されたヘッダ付きセンサデータ400を受信する。
【0080】
ADAS処理部200は、センサデータ420の圧縮率に応じて、異なる処理を実行する。より詳細には、ADAS処理部200は、圧縮されたヘッダ付きセンサデータ400に含まれる圧縮率に応じて、異なる処理を実行する。
【0081】
図7に示す例では、ADAS処理部200は、障害物検知部202、学習部203、および推定部204を含む。これらの機能部は、ADAS処理部200が実行するADAS機能の一例である。なお、ADAS処理部200に含まれる機能部はこれらに限定されない。
【0082】
障害物検知部202は、センサデータ420の圧縮率に応じて、センサデータ420から障害物を検知する処理における障害物検知用の閾値を変更する。以下、障害物検知用の閾値を検知閾値という。なお、障害物検知部202は、圧縮されたセンサデータ420を展開した上で、障害物検知に用いる。
【0083】
例えば、障害物検知部202は、センサデータ420の圧縮率が第2の閾値以下の場合、低圧縮率用検知閾値を用いてセンサデータ420に基づく障害物検知を実行する。また、障害物検知部202は、センサデータ420の圧縮率が第2の閾値より高い場合、高圧縮率用検知閾値を用いてセンサデータ420に基づく障害物検知を実行する。
【0084】
低圧縮率用検知閾値は、本実施形態における第1の検知閾値の一例である。高圧縮率用検知閾値は、本実施形態における第2の検知閾値の一例である。高圧縮率用検知閾値は、第低圧縮率用検知閾値より低い値とする。つまり、障害物検知部202は、センサデータ420の圧縮率が高い場合に、センサデータ420の圧縮率が低い場合よりも、「車両1の周囲に障害物が存在する」と判定しやすい。センサデータ420が画像データである場合、圧縮率が高い画像データの方が、圧縮率が低い画像データよりも、解像度が低くなる。このため、障害物検知部202は、圧縮率が高い画像データを用いる場合は障害物検知のための検知閾値を低く、障害物の検知漏れを低減する。なお、検知閾値の高さは2段階以上に分かれていてもよい。
【0085】
また、障害物検知部202は、検知した障害物を回避するための車両1の制動操作を指示する信号、車両1の操舵を指示する信号、または車両1の車速を指示する信号等を生成してもよい。
【0086】
学習部203は、車載装置100から送信されたセンサデータを学習する。学習の手法は、例えば、学習モデルを用いた深層学習等であるが、これに限定されるものではない。なお、学習部203は、圧縮されたセンサデータ420を展開した上で、学習に用いる。
【0087】
学習部203は、センサデータ420の圧縮率に応じて、異なる学習モデルを用いる。例えば、学習部203は、センサデータ420の圧縮率が第2の閾値以下の場合、低圧縮率用学習モデルに、センサデータ420を学習させる。また、学習部203は、センサデータ420の圧縮率が第2の閾値より高い場合、高圧縮率用学習モデルにセンサデータ420を学習させる。低圧縮率用学習モデルは、本実施形態における第1の学習モデルの一例である。高圧縮率用学習モデルは、本実施形態における第2の学習モデルの一例である。学習部203は、低圧縮率用学習モデルおよび高圧縮率用学習モデルを、例えば記憶部210に保存する。
【0088】
学習モデルに入力される学習データの条件が統一されていることで、学習モデルの学習精度が向上する。上述のように、センサデータ420が画像データである場合、圧縮率が高い画像データの方が、圧縮率が低い画像データよりも、解像度が低くなる。このため、学習部203が、センサデータ420の圧縮率に応じて、異なる学習モデルを用いることにより、圧縮率が異なる複数のセンサデータ420を1つの学習モデルに入力するよりも、学習モデルの学習精度が向上する。なお、学習モデルの数は2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0089】
推定部204は、学習部203によって学習された低圧縮率用学習モデルおよび高圧縮率用学習モデルを用いて、推定処理を実行する。推定処理の内容は、例えば、障害物検知でもよいし、前方衝突警告でもよい。
【0090】
例えば、推定部204は、センサデータ420の圧縮率が第2の閾値以下の場合、学習済みの低圧縮率用学習モデルにセンサデータ420を入力し、学習済みの低圧縮率用学習モデルからの出力を推定結果として得る。また、推定部204は、センサデータ420の圧縮率が第2の閾値より高い場合、学習済みの高圧縮率用学習モデルにセンサデータ420を入力し、学習済みの高圧縮率用学習モデルからの出力を推定結果として得る。
【0091】
なお、学習部203と推定部204とが同時に機能しなくともよい。例えば、低圧縮率用学習モデルおよび高圧縮率用学習モデルに規定の閾値以上のセンサデータ420が学習されるまでが、推定部204は機能しなくともよい。また、図7では障害物検知部202と推定部204を別個の機能部として図示したが、障害物検知部202が学習部203によって学習された低圧縮率用学習モデルおよび高圧縮率用学習モデルを用いて、障害物検知を実行してもよい。
【0092】
なお、センサデータ420の圧縮率に応じた処理の変化は、上述の例に限定されない。ADAS処理部200は、センサデータ420の圧縮率に応じて処理のアルゴリズムを変更してもよい。また、ADAS処理部200は、圧縮率以外のメタデータに応じて、異なる処理を実行してもよい。例えば、ADAS処理部200は、ヘッダ付きセンサデータ400のヘッダデータ410に含まれるフレームレートまたは解像度に応じて、処理に用いる検知閾値、学習モデル、またはアルゴリズムを変更してもよい。
【0093】
送信部205は、ADAS処理部200による処理の結果である車両制御データを、車載装置100に送信する。例えば、送信部205は、障害物検知部202による障害物の検知結果を車載装置100に送信する。また、送信部205は、障害物検知部202によって生成された車両1の制動操作を指示する信号、車両1の操舵を指示する信号、または車両1の車速を指示する信号を車載装置100に送信してもよい。
【0094】
次に、以上のように構成された車載装置100で実行されるセンサデータ420の送信処理の流れについて説明する。
【0095】
図8は、第1の実施形態に係るセンサデータ420の送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、車載装置100が車両1のイグニッション電源から電力供給を受けている場合、イグニッション電源がオン状態の場合に開始する。また、車載装置100が車両1のアクセサリー電源から電力供給を受けている場合、このフローチャートの処理は、アクセサリー電源がオン状態の場合に開始する。
【0096】
まず、取得部101は、車両1の車速等の車両状態情報を取得する(S101)。また、取得部101は、センサデータ420を取得する(S102)。
【0097】
次に、決定部102は、車両1が走行中であるか否かを判定する(S103)。例えば、決定部102は、取得部101によって取得された車両1の車速が閾値以上の場合に、車両1が走行中であると判定する。なお、決定部102は、アクセルペダルの動作状態等に基づいて車両1の走行の有無を判定してもよい。
【0098】
車両1が走行中ではないと決定部102が判定した場合(S103“No”)、S101の処理に戻る。車両1が走行を開始しない場合は、S101~S103の処理が繰り返し実行される。なお、車両1が走行中ではない場合、取得部101は、センサデータ420を取得しなくともよい。
【0099】
また、車両1が走行中であると判定した場合(S103“Yes”)、決定部102は、車両状態情報に応じて、センサデータ420の圧縮率、フレームレート、および解像度を決定する(S104)。
【0100】
次に、生成部103は、決定部102によって決定されたフレームレート、および解像度に応じて、センサデータ420を編集する(S105)。
【0101】
次に、生成部103は、センサデータ420のヘッダに、決定部102によって決定された圧縮率、フレームレート、および解像度を記述する(S106)。
【0102】
次に、圧縮部104は、ヘッダ付きセンサデータ400を、決定部102によって決定された圧縮率で圧縮する(S107)。
【0103】
次に、送信部105は、圧縮されたヘッダ付きセンサデータ400を、クラウドサーバ2に送信する(S108)。
【0104】
そして、車両1のイグニッション電源またはアクセサリー電源がオン状態の場合は(S109“No”)、S101の処理に戻り、このフローチャートの処理が繰り返される。また、車両1のイグニッション電源またはアクセサリー電源がオフ状態となった場合は(S109“Yes”)、このフローチャートの処理は終了する。
【0105】
次に、クラウドサーバ2で実行されるADAS処理の流れについて説明する。
【0106】
図9は、第1の実施形態に係るクラウドサーバ2で実行されるADAS処理の流れの一例を示すフローチャートである。クラウドサーバ2によるADAS処理は、基本的に、常時開始可能な状態であり、車載装置100からのヘッダ付きセンサデータ400の受信を待機している。
【0107】
クラウドサーバ2の受信部201が車両1に搭載された車載装置100からヘッダ付きセンサデータ400を受信した場合であって(S201“Yes”)、かつ、圧縮率が第2の閾値以下の場合(S202“Yes”)、クラウドサーバ2のADAS処理部200に含まれる障害物検知部202、学習部203、および推定部204は、低圧縮率用検知閾値、低圧縮率用学習モデル、および低圧縮率用アルゴリズムを適用して各種のADAS処理を実行する(S203)。
【0108】
また、受信部201が車両1に搭載された車載装置100からヘッダ付きセンサデータ400を受信した場合であって(S201“Yes”)、かつ、圧縮率が第2の閾値より高い場合(S202“No”)、クラウドサーバ2のADAS処理部200に含まれる障害物検知部202、学習部203、および推定部204は、高圧縮率用検知閾値、高圧縮率用学習モデル、および高圧縮率用アルゴリズムを適用してADAS処理を実行する(S204)。
【0109】
S203およびS204の処理の後、クラウドサーバ2の送信部205は、ADAS処理部200による処理の結果である車両制御データを、車載装置100に送信する(S205)。
【0110】
そして、ADAS処理が終了せずに継続する場合(S206“No”)、S201の処理に戻り、このフローチャートの処理が繰り返される。また、ADAS処理が終了する場合(S206“Yes”)、このフローチャートの処理は終了する。クラウドサーバ2によるADAS処理が終了する場合とは、例えば、管理者によりクラウドサーバ2が停止させられた場合等である。
【0111】
このように、本実施形態の車載装置100は、車両1の車両状態情報に応じた異なる圧縮率でセンサデータ420を圧縮し、当該圧縮率を、圧縮されたセンサデータ420に対応付けて送信する。このため、本実施形態の車載装置100から圧縮後のセンサデータを受信したクラウドサーバ2またはエッジサーバは、センサデータの圧縮率に応じた処理を実行可能である。
【0112】
比較例として、車両状態情報に応じた異なる圧縮率でセンサデータを圧縮し、圧縮したセンサデータのみをクラウドサーバまたはエッジサーバに送信した場合、当該圧縮されたセンサデータを受信したクラウドサーバまたはエッジサーバ等の側では、受信した圧縮されたセンサデータの圧縮率を特定できないため、圧縮率に応じて処理を変更することは困難であった。このため、比較例では、圧縮率が異なるためにデータサイズ等がバラバラなセンサデータに対して同一の処理を施すことになる。これに対して、本実施形態の車載装置100は、圧縮率を、圧縮されたセンサデータ420に対応付けて送信するため、当該圧縮されたセンサデータ420を受信したクラウドサーバ2またはエッジサーバの方で、圧縮率に応じて処理を分けることが可能となり、処理結果の精度を向上させることができる。
【0113】
また、本実施形態の車載装置100は、取得したセンサデータに車両状態情報に応じて決定した圧縮率をヘッダデータとして付加したヘッダ付きセンサデータ400を生成し、当該ヘッダ付きセンサデータ400を、決定した圧縮率で圧縮し、圧縮されたヘッダ付きセンサデータ400を送信する。このため、本実施形態の車載装置100によれば、圧縮率とセンサデータ420とを一体としてクラウドサーバ2等に送信できるため、受信側での圧縮率とセンサデータ420との対応関係の把握が容易となる。
【0114】
また、本実施形態において、車両状態情報は、少なくとも、車両1の車速を含む。本実施形態の車載装置100は、車速が第1の閾値以下の場合は、センサデータ420を低圧縮率で圧縮することを決定し、車速が第1の閾値より速い場合は、センサデータ420を高圧縮率で圧縮することを決定する。このため、本実施形態の車載装置100によれば、車両1の車速が早い場合にはセンサデータ420の圧縮率を高めてクラウドサーバ2等へのデータ送信時間を短縮することにより、クラウドサーバ2等からの処理結果を迅速に得ることができる。また、本実施形態の車載装置100によれば、車両1の車速が遅い場合には、センサデータ420の圧縮率を低く抑えてセンサデータ420の劣化を低減し、クラウドサーバ2等におけるADAS処理の精度向上させることができる。つまり、本実施形態の車載装置100は、車両1の車速に応じて、データ送信速度と、ADAS処理の精度とのバランスを適切に調整することができる。
【0115】
また、本実施形態において、センサデータ420は、少なくとも、車両1の周囲を撮影した画像データを含む。本実施形態の車載装置100は、車両1の車速が第1の閾値以下の場合は、画像データのフレームレートを低フレームレート、画像データの解像度を高解像度に決定する。また、本実施形態の車載装置100は、車両1の車速が第1の閾値より速い場合は、画像データのフレームレートを高フレームレート、画像データの解像度を低解像度に決定する。このため、本実施形態の車載装置100によれば、圧縮率によるデータ送信速度とADAS処理の精度とのバランスの調整に加えて、さらに、フレームレートと解像度によって、車両1の車速に応じたデータ送信速度とADAS処理の精度とのバランスの調整をすることができる。
【0116】
また、本実施形態の車両状態情報は、車両1の車速、車両1の位置、車両1のギヤの状態、車両1の操舵角、車両1の周囲の照度、車両1の周囲の天候情報、および、車両1のワイパーの動作状態のうちの少なくとも1つを含む。このため、本実施形態の車載装置100によれば、車速だけではなく、車両1の様々な状態に応じて、データ送信速度と、ADAS処理の精度とのバランスを適切に調整することができる。
【0117】
また、本実施形態のクラウドサーバ2は、車載装置100から、圧縮されたセンサデータ420および当該センサデータ420の圧縮率を受信し、センサデータ420の圧縮率に応じて、異なる処理を実行する。このため、本実施形態のクラウドサーバ2によれば、圧縮率に応じて処理を分けることができ、処理結果の精度を向上させることができる。
【0118】
また、本実施形態のクラウドサーバ2は、センサデータ420の圧縮率が第2の閾値以下の場合、低圧縮率用検知閾値を用いてセンサデータ420に基づく障害物検知を実行し、センサデータ420の圧縮率が第2の閾値より高い場合、高圧縮率用検知閾値を用いてセンサデータ420に基づく障害物検知を実行する。このため、本実施形態のクラウドサーバ2によれば、圧縮率が高い画像データを用いる場合は障害物検知のための検知閾値を低くすることにより、障害物の検知漏れを低減することができる。
【0119】
また、本実施形態のクラウドサーバ2は、圧縮率が第2の閾値以下の場合、低圧縮率用学習モデルにセンサデータ420を学習させ、圧縮率が第2の閾値より高い場合、高圧縮率用学習モデルにセンサデータ420を学習させる。このため、本実施形態のクラウドサーバ2によれば、圧縮率に応じて異なる学習モデルを用いることにより、圧縮率が異なる複数のセンサデータ420を1つの学習モデルに入力するよりも、学習モデルの学習精度を向上させることができる。
【0120】
(第2の実施形態)
上述の第1の実施形態では、クラウドサーバ2が、車載装置100から送信されたセンサデータ420に基づいてADAS処理を実行していたが、ADAS処理の実行主体はクラウドサーバ2に限定されるものではない。例えば、エッジサーバがADAS処理の実行主体であってもよい。
【0121】
図10は、第2の実施形態に係る車両1、エッジサーバ3、およびクラウドサーバ2の間の情報通信の一例を示す図である。本実施形態においては、エッジサーバ3およびクラウドサーバ2が、情報処理装置の一例となる。
【0122】
エッジサーバ3は、エッジコンピューティング技術により、車載装置100の処理を保管可能なコンピュータである。エッジサーバ3は、例えば、CPU等のプロセッサおよびRAM、ROM、HDD等の記憶装置を備える。エッジサーバ3は、例えば、通信基地局や交通インフラ設備内等に設けられ、車両1に搭載された車載装置100およびクラウドサーバ2と相互に情報通信する。
【0123】
例えば、本実施形態においては、図7に図示した第1の実施形態におけるクラウドサーバ2のADAS処理部200のうち、障害物検知部202および推定部204がエッジサーバ3に備えられる。また、図7に図示した第1の実施形態におけるクラウドサーバ2のADAS処理部200のうち、学習部203がクラウドサーバ2に備えられる。また、図7に図示した第1の実施形態におけるクラウドサーバ2の受信部201、送信部205、および記憶部210に相当する機能部は、エッジサーバ3およびクラウドサーバ2の両方が備えるものとする。
【0124】
エッジサーバ3の受信部は、車載装置100から圧縮されたヘッダ付きセンサデータ400を受信する。エッジサーバ3の障害物検知部202および推定部204は、第1の実施形態におけるクラウドサーバ2の障害物検知部202および推定部204と同様に、圧縮率に応じた処理を実行する。また、エッジサーバ3の送信部は、障害物検知部202または推定部204による処理結果に基づく車両制御データを車両1に送信する。また、エッジサーバ3の送信部は、車載装置100から受信した圧縮されたヘッダ付きセンサデータ400をクラウドサーバ2に送信する。
【0125】
クラウドサーバ2の受信部は、エッジサーバ3から圧縮されたヘッダ付きセンサデータ400を受信する。クラウドサーバ2の学習部203は、第1の実施形態と同様に、ヘッダ付きセンサデータ400の圧縮率に応じた学習モデルで学習を実行する。また、クラウドサーバ2の送信部は、学習部203によって学習された学習済みモデルを、エッジサーバ3に送信する。当該学習済みモデルは、例えば、エッジサーバ3の推定部204または障害物検知部202で使用される。
【0126】
このように障害物検知部202および学習部203をエッジサーバ3が備えることにより、クラウドサーバ2で処理をするよりも迅速に、ヘッダ付きセンサデータ400に基づく処理結果である車両制御データを車載装置100に送信することができる。
【0127】
また、一般に、エッジサーバ3よりもクラウドサーバ2の方が記憶容量の制限が少ないため、処理に時間を要しても車両1の走行制御に影響のない学習処理については、クラウドサーバ2が実行することにより、大量のセンサデータ420の学習が可能となる。
【0128】
なお、図10では、エッジサーバ3およびクラウドサーバ2の両方が用いられる場合について図示したが、あるいは、クラウドサーバ2がなく、エッジサーバ3と車載装置100のみで処理が行われる構成が採用されてもよい。この場合、エッジサーバ3が情報処理装置の一例となる。
【0129】
(第3の実施形態)
上述の第2の実施形態では、エッジサーバ3は車両1の外部に設けられるものとしたが、エッジサーバ3は車両1内に設けてもよい。図11は、第3の実施形態に係る車両1、エッジサーバ3、およびクラウドサーバ2の間の情報通信の一例を示す図である。
【0130】
図11に示すように、本実施形態のエッジサーバ3は、車載装置100と同様に、車両1に搭載される。このようにエッジサーバ3が車両1に搭載されることにより、車載装置100とエッジサーバ3とが車両1内で有線接続することが可能となり、通信速度の向上が見込まれる。
【0131】
上述の各実施形態の車載装置100、クラウドサーバ2、およびエッジサーバ3の各機能は、例えば、CPUがプログラムを実行することにより実現される。上述の各実施形態の車載装置100、クラウドサーバ2、およびエッジサーバ3で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0132】
また、上述の各実施形態の車載装置100、クラウドサーバ2、およびエッジサーバ3で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上述の各実施形態の車載装置100、クラウドサーバ2、およびエッジサーバ3で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0133】
また、上述の各実施形態の車載装置100、クラウドサーバ2、およびエッジサーバ3で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0135】
1 車両
2 クラウドサーバ
3 エッジサーバ
15,15f,15r 送受波部
16,16a~16c 車載カメラ
100 車載装置
101 取得部
102 決定部
103 生成部
104 圧縮部
105 送信部
106 受信部
107 車両制御部
108 表示制御部
109 受付部
110 記憶部
120 表示装置
200 ADAS処理部
201 受信部
202 障害物検知部
203 学習部
204 推定部
205 送信部
210 記憶部
400 ヘッダ付きセンサデータ
410 ヘッダデータ
420 センサデータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11