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特開2023-71376導電性ペースト及びその硬化物からなる電極を備えた太陽電池セル
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  • 特開-導電性ペースト及びその硬化物からなる電極を備えた太陽電池セル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071376
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】導電性ペースト及びその硬化物からなる電極を備えた太陽電池セル
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20230516BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01L31/04 264
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184114
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 紹太
(72)【発明者】
【氏名】南山 偉明
(72)【発明者】
【氏名】辻 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】黒木 崇志
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
5G301
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA05
5F151AA08
5F151FA02
5F151FA04
5F151FA10
5F251AA02
5F251AA05
5F251AA08
5F251FA02
5F251FA04
5F251FA10
5G301DA03
5G301DA23
5G301DA57
5G301DD01
5G301DD02
5G301DD03
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】従来の導電性ペーストよりも更に電極と透明導電膜との接触抵抗を低減することができる導電性ペーストを提供する。
【解決手段】銀コート酸化物粒子を含む導電性粒子と、エポキシ系硬化性樹脂と、硬化剤と、を含有することを特徴とする導電性ペースト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀コート酸化物粒子を含む導電性粒子と、エポキシ系硬化性樹脂と、硬化剤と、を含有することを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
前記銀コート酸化物粒子は、酸化物粒子の表面に銀コート層を備えており、前記酸化物粒子がシリカ粒子及び/又はアルミナ粒子である、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記導電性粒子は、更に銀粒子、銅粒子及び銀コート金属粒子からなる群から選択される一種以上を含む、請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記銀コート酸化物粒子は、体積平均粒子径D50が0.1μm以上10μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項5】
固形分として、前記銀コート酸化物粒子を0.5~90質量%、銀粒子、銅粒子及び銀コート金属粒子からなる群から選択される一種以上を0~95質量%、残部が前記エポキシ系硬化性樹脂及び前記硬化剤である、請求項1~4のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項6】
太陽電池セルの透明導電膜の表面の一部に請求項1~5のいずれかに記載の導電性ペーストの硬化物からなる電極を備えた太陽電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト及びその硬化物からなる電極を備えた太陽電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池の電極及び配線を形成するために導電性ペーストを用いる方法が広く知られている。上記導電性ペーストは、一般に銀粒子、銀コート金属粒子等の導電性粒子に熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等からなるバインダー、硬化剤、有機溶剤、触媒等の添加剤を添加し、混合することにより調製されている。
【0003】
近年開発されているヘテロジャンクションシリコン太陽電池、ペロブスカイト太陽電池等では、太陽電池セルの表面(片面又は両面)に透明導電膜が形成されており、この透明導電膜の表面の一部に導電性ペーストの硬化物からなる電極(集電電極)が形成されている。ここで、太陽電池の高効率化のためには、電極自体の体積抵抗率を低減するとともに電極と透明導電膜との接触抵抗を低減する必要がある。
【0004】
上記に関連し、例えば特許文献1には、特定の有機化合物を配合することで、透明導電膜との接触抵抗が低い電極を形成することができる導電性ペーストが開示されている。具体的には、特許文献1には、「導電性粒子(A)と、フェニル基および/またはビニル基を有するオルガノポリシロキサン(B)とを含有する導電性組成物。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-088466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の導電性ペーストは、電極の体積抵抗率は低くなるが電極と透明導電膜(例えばインジウムスズ酸化膜)との接触抵抗の低減には限界があり、更なる技術開発が望まれている。
【0007】
よって、本発明は、従来の導電性ペーストよりも更に電極と透明導電膜との接触抵抗を低減することができる導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の導電性粒子を含有する導電性ペーストを用いる場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の導電性ペースト及びそれを用いた太陽電池セルに関する。
1.銀コート酸化物粒子を含む導電性粒子と、エポキシ系硬化性樹脂と、硬化剤と、を含有することを特徴とする導電性ペースト。
2.前記銀コート酸化物粒子は、酸化物粒子の表面に銀コート層を備えており、前記酸化物粒子がシリカ粒子及び/又はアルミナ粒子である、上記項1に記載の導電性ペースト。
3.前記導電性粒子は、更に銀粒子、銅粒子及び銀コート金属粒子からなる群から選択される一種以上を含む、上記項1又は2に記載の導電性ペースト。
4.前記銀コート酸化物粒子は、体積平均粒子径D50が0.1μm以上10μm以下である、上記項1~3のいずれかに記載の導電性ペースト。
5.固形分として、前記銀コート酸化物粒子を0.5~90質量%、銀粒子、銅粒子及び銀コート金属粒子からなる群から選択される一種以上を0~95質量%、残部が前記エポキシ系硬化性樹脂及び前記硬化剤である、上記項1~4のいずれかに記載の導電性ペースト。
6.太陽電池セルの透明導電膜の表面の一部に上記項1~5のいずれかに記載の導電性ペーストの硬化物からなる電極を備えた太陽電池セル。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性ペーストによれば、太陽電池セルの透明導電膜の表面の一部に導電性ペーストの硬化物からなる電極を形成した場合に、銀粒子、銀コート金属粒子等を含有する従来の導電性ペースト(銀コート酸化物粒子は含有しない)を用いて電極を形成した場合に比して電極と透明導電膜との接触抵抗を更に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】太陽電池セルの一例であるヘテロジャンクションシリコン太陽電池セルの層構成を示す断面模式図である。図1では、n型単結晶シリコン基板1のおもて面(受光面)にi型アモルファスシリコン層2、n型アモルファスシリコン層3-1、及び透明導電膜(ITO)4が順に積層されており、透明導電膜4の表面に銀電極5が形成されている。また、n型単結晶シリコン基板1の裏面にi型アモルファスシリコン層2、p型アモルファスシリコン層3-2、及び透明導電膜(ITO)4が順に積層されており、透明導電膜4の表面に銀電極(裏面電極)5が形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の導電性ペースト及び太陽電池セルについて詳細に説明する。
【0013】
1.導電性ペースト
本発明の導電性ペーストは、(A)銀コート酸化物粒子を含む導電性粒子と、(B)エポキシ系硬化性樹脂と、(C)硬化剤と、を含有する。
【0014】
本発明の導電性ペーストによれば、太陽電池セルの透明導電膜の表面の一部に導電性ペーストの硬化物からなる電極を形成した場合に、銀粒子、銀コート金属粒子等を含有する従来の導電性ペースト(銀コート酸化物粒子は含有しない)を用いて電極を形成した場合に比して電極と透明導電膜との接触抵抗を更に低減することができる。具体的には、透明導電膜の表面の一部に導電性ペーストを電極形状となるように塗布又は印刷した後、硬化させることにより電極を形成することができる。
【0015】
(A)銀コート酸化物粒子を含む導電性粒子
本発明における導電性粒子は、銀コート酸化物粒子を必須成分として含む。銀コート酸化物粒子は、酸化物粒子の表面に銀コート層を備えた粒子であり、コアとなる酸化物粒子は酸化物材料で形成された粒子であれば特に限定されないが、具体的にはシリカ粒子及び/又はアルミナ粒子が挙げられる。このような銀コート酸化物粒子の製造方法は限定的ではなく公知の方法により製造でき、例えば、特開2015-230847号公報、国際公開第2015/107996号等に開示された製法を用いることができる。
【0016】
例えば、特開2015-230847号公報には、「粒子前駆体を準備する工程と、
酸性溶媒またはアルカリ性溶媒を用いて、前記粒子前駆体の表面を活性化処理することにより、活性化粒子を調製する工程と、
前記活性化粒子の表面に触媒を担持させて、触媒担持粒子を調製する工程と、
前記触媒担持粒子を無電解めっき処理することにより、前記触媒担持粒子の表面に金属層が設けられた金属被覆粒子を作製する工程と、を備える、金属被覆粒子の製造方法。」が開示されており、前駆体粒子としてシリカ粒子及び/又はアルミナ粒子を使用し、無電解メッキにより銀コートをはじめとする金属層を設ける方法が記載されている。
【0017】
銀コート酸化物粒子の形状は特に限定されず、球状であってもフレーク状であってもブロック状であってもよい。
【0018】
銀コート酸化物粒子の平均粒子径は特に限定されないが、球状粒子の場合には体積平均粒子径D50は0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。D50がかかる範囲内であれば細線を印刷するスクリーン印刷用のペーストとして適している。なお、本願明細書における平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された50%体積累積径(D50)である。
【0019】
導電性粒子は、上記銀コート酸化物粒子のみであってもよく、他の導電性粒子を含んでいてもよい。他の導電性粒子としては、上記銀コート酸化物粒子とは異なる、金属粒子、銀コート金属粒子等が挙げられる。具体的には、金属粒子としては銀粒子、銅粒子等が挙げられ、銀コート金属粒子としては銀コート銅粒子が挙げられる。これらの他の導電性粒子は1種又は2種以上を混合して使用でき、公知のもの又は市販品を使用することができる。また、これらの他の導電性粒子の形状、及び平均粒子径はいずれも上記銀コート酸化物粒子と同様とすることができる。
【0020】
導電性粒子が銀コート酸化物粒子と他の導電性粒子とを含む場合には、導電性粒子100質量%中、銀コート酸化物粒子の含有量が5~80質量%であり他の導電性粒子の含有量が20~95質量%であることが好ましく、銀コート酸化物粒子の含有量が15~50質量%であり他の導電性粒子の含有量が50~85質量%であることがより好ましい。本発明の効果は、導電性粒子100質量%中、銀コート酸化物粒子の含有量を20質量%以上に設定することにより得られ易い。
【0021】
(B)エポキシ系硬化性樹脂
本発明におけるエポキシ系硬化性樹脂は、後述する(C)硬化剤と反応して本発明の導電性ペーストの硬化物を形成する。エポキシ系硬化性樹脂は、硬化性、硬化物の強度、接着性(硬化物である電極と透明導電膜との接着性)、太陽電池用途での信頼性の点で優れている。特に、ヘテロジャンクションシリコン太陽電池、ペロブスカイト太陽電池等は、太陽電池セルの厚さが極薄であるため、電極形成時に300℃以上の熱を加えると太陽電池構造が変化又は破壊されるおそれがある。他方、導電性ペーストが室温で硬化すると電極形成時に細線の印刷及びディスペンシングが困難となるとともに、熱収縮に基づく導電粒子間の接触改善効果が得られない。よって、導電性ペースト中の硬化性樹脂としては、室温で硬化せず、200℃以下の温度で硬化する樹脂を選定することが望ましい。この観点から、本発明では、硬化剤との組み合わせで硬化温度を200℃以下に制御することができるエポキシ系硬化性樹脂を用いることにより、太陽電池構造を変化又は破壊することなく太陽電池セルの電極を形成することができる。
【0022】
エポキシ系硬化性樹脂としては、硬化剤との組み合わせで硬化温度を200℃以下(詳細には室温を超える加熱条件下且つ200℃以下)に制御できるものとして、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0023】
具体的には、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、ビスフェノールE型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型等のビスフェニル基を有するエポキシ化合物や、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物や、ナフタレン環を有するエポキシ化合物や、フルオレン基を有するエポキシ化合物等の二官能型のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;
フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の多官能型のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;
ダイマー酸などの合成脂肪酸のグリシジルエステル系エポキシ樹脂;
N,N,N’,N’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン(TGDDS)、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン(TGMXDA)、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノール、N,N-ジグリシジルアニリン、テトラグリシジル1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(TG1,3-BAC)、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂;
トリシクロ〔5,2,1,02,6〕デカン環を有するエポキシ化合物、具体的には、例えば、ジシクロペンタジエンとメタクレゾール等のクレゾール類またはフェノール類を重合させた後、エピクロルヒドリンを反応させる公知の製造方法によって得ることができるエポキシ化合物;
ポリ(オキシアルキレン)ポリオールのグリシジルエーテル、及び、アルキレンポリオールのグリシジルエーテルのような多価アルコールグリシジル型エポキシ樹脂;
キレート変性エポキシ樹脂;
ベンゼンジオール(ジヒドロキシベンゼン)骨格を有するエポキシ樹脂及びその水素添加物;
フタル酸骨格を有するエポキシ樹脂及びその水素添加物;
ベンゼンジメタノール骨格を有するエポキシ樹脂;
シクロヘキサンジメタノール骨格を有するエポキシ樹脂;
ジシクロペンタジエンジメタノール骨格を有するエポキシ樹脂;
脂環型エポキシ樹脂;
東レチオコール社製のフレップ10に代表されるエポキシ樹脂主鎖に硫黄原子を有するエポキシ樹脂;
ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂;
ポリブタジエン、液状ポリアクリロニトリル-ブタジエンゴムまたはアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を含有するゴム変性エポキシ樹脂;
等が挙げられる。エポキシ系硬化性樹脂は1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0024】
(C)硬化剤
本発明における硬化剤は、前記エポキシ系硬化性樹脂を望ましくは200℃以下で硬化させる硬化剤であれば特に制限されない。硬化剤としては、フッ化ホウ素類、イミダゾール類、アミン類、又は、アンモニウム、スルホニウム、若しくは、ホスホニウムを含むオニウム塩であることが好ましく、この中でもフッ化ホウ素類、イミダゾール類、又は、オニウム塩であることがより好ましい。
【0025】
具体的な硬化剤としては、例えば、三フッ化ホウ素モノエチルアミン(硬化剤1)、下記硬化剤2~4、及び2-エチル4-メチルイミダゾールが挙げられる。
【0026】
【化1】
【0027】
上記の中でも、本発明の効果がより優れる理由から、上記硬化剤2~4の一種以上を用いることが好ましい。
【0028】
本発明の導電性ペーストにおける、(A)銀コート酸化物粒子を含む導電性粒子、(B)エポキシ系硬化性樹脂、(C)硬化剤の各成分の含有量は限定的ではないが、導電性、塗工性等の観点から導電性粒子を30質量%以上95質量以下含有し、残部がエポキシ系硬化性樹脂及び硬化剤であることが好ましい。また、銀コート酸化物粒子を0.5質量%以上90質量%以下、他の導電性粒子を0質量%以上95質量%以下含有し、残部がエポキシ系硬化性樹脂及び硬化剤であることが好ましい。
【0029】
(D)溶媒
本発明の導電性ペーストは、上記(A)銀コート酸化物粒子を含む導電性粒子、(B)エポキシ系硬化性樹脂、(C)硬化剤に加えて、導電性ペーストの塗工性を勘案して更に(D)溶剤を含有していてもよい。
【0030】
溶媒の種類は限定的されず、公知のもの又は市販品が使用できる。例えばブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、メチルエチルケトン、イソホロン、α-テルピネオール等が挙げられる。これらの溶剤は、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0031】
溶剤を使用する場合には、導電性ペースト中の溶剤の含有量は、例えば0.5~5質量%に設定することができ、好ましくは1~3質量%である。
【0032】
導電性ペーストの調製方法
本発明の導電性ペーストの調製方法は限定されないが、上記(A)銀コート酸化物粒子を含む導電性粒子、(B)エポキシ系硬化性樹脂、(C)硬化剤、更には必要に応じて(D)溶剤その他導電性ペーストの分野で公知の添加剤を、ディスパー、万能撹拌機、自転公転ミキサー、3本ロール等により混合することにより調製することができる。
【0033】
2.太陽電池セル
本発明の太陽電池セルは、太陽電池セルの透明導電膜の表面の一部に本発明の導電性ペーストの硬化物からなる電極を備えることを特徴とする。具体的には、1つ又は2つ以上の光発電層を有し、片面又は両面に透明導電膜を有し、透明導電膜の表面の一部に本発明の導電性ペーストの硬化物からなる電極を備えた太陽電池セルが挙げられる。
【0034】
ヘテロジャンクションシリコン太陽電池の場合には、上記光発電層は単結晶シリコンとアモルファスシリコンとからなる。ペロブスカイト太陽電池の場合には、上記光発電層はペロブスカイト結晶からなる。III-V族太陽電池の場合には、上記光発電層はIII族元素及びV族元素の化合物からなる。その他、2つ以上の光発電層を積層した多接合型太陽電池もあり、これらは本発明の導電性ペーストの適用対象とすることができる。
【0035】
図1はヘテロジャンクションシリコン太陽電池セルの層構成を示す断面模式図であり、n型単結晶シリコン基板1のおもて面(受光面)にi型アモルファスシリコン層2、n型アモルファスシリコン層3-1、及び透明導電膜(ITO)4が順に積層され、透明導電膜4の表面に銀電極5が形成されている。また、n型単結晶シリコン基板1の裏面にi型アモルファスシリコン層2、p型アモルファスシリコン層3-2、及び透明導電膜(ITO)4が順に積層され、透明導電膜4の表面に銀電極(裏面電極)5が形成されている。図1では受光面と裏面の両方に透明導電膜を有しており、本発明の導電性ペーストは受光面の銀電極5及び裏面の銀電極5の両方の形成に用いることができる。
【0036】
透明導電膜
透明導電膜の材料は限定的ではなく、例えば酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン等の単一金属酸化物;酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛、酸化インジウムチタン、酸化スズカドミウム等の多種金属酸化物;ガリウム添加酸化亜鉛、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)、硼素添加酸化亜鉛、チタン添加酸化亜鉛、チタン添加酸化インジウム、ジルコニウム添加酸化インジウム、フッ素添加酸化スズ等のドーピング型金属酸化物などが挙げられる。このような透明導電膜は、公知の方法により光発電層の表面に形成することができる。
【0037】
導電性ペーストを用いた電極形成方法
本発明の太陽電池セルにおいて、導電性ペーストを用いて電極を形成する方法は限定的ではない。例えばスクリーン印刷、ディスペンシング等の公知の方法により透明導電膜の表面の一部に導電性ペーストを電極形状となるように線状に塗工した後、200℃以下の加熱により導電性ペーストの塗膜を硬化させることにより形成することができる。なお、前記塗工には塗布、印刷等の各種の方法が包含される。導電性ペーストに溶剤を含有する場合には、加熱処理に先立って溶剤を揮発させるために100℃程度で10分間程度乾燥処理することが好ましい。
【0038】
必要に応じて乾燥処理した後、塗膜は室温を超える温度以上200℃以下の加熱により加熱処理することにより硬化させる。加熱処理の温度は100℃以上200℃以下であることが好ましく、特に100℃以上の加熱により硬化を促進できるとともに、エポキシ系硬化性樹脂の熱収縮により導電性粒子どうし、更には電極と透明導電膜との接触性を向上させることができる。なお、加熱処理の温度は、エポキシ系硬化性樹脂及び硬化剤の種類に応じて変更することができる。
【0039】
本発明の導電性ペーストは導電性粒子として銀コート酸化物粒子を含有する。銀コート酸化物粒子のコアである酸化物粒子は、銀粒子、銅粒子等の金属粒子と比較して硬度が大きいために導電性ペーストを塗工する際の低い圧力でも透明導電膜の表面に接触し易く、加熱処理により得られる電極と透明導電膜との接触抵抗が低下するものと考えられる。
【実施例0040】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0041】
実施例及び比較例で使用した各成分の詳細は下記の通りである。
・銀粒子:平均粒子径(D50)2μm
・銀コート銅粒子(TFM-C05P):平均粒子径(D50)6μm
・銀コートシリカ粒子(TFM-S02P):平均粒子径(D50)3μm
・銀コートシリカ粒子(TFM-S05P):平均粒子径(D50)6μm
・銀コートアルミナ粒子(TFM-L05B):平均粒子径(D50)7μm
・エポキシ系硬化性樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂+ジエチレングリコールジグリシジルエーテル
・硬化剤:サンエードSI60L(三新化学工業社製)
・溶剤:ブチルカルビトールアセテート。
【0042】
実施例1
銀粒子75質量部に対して、銀コートシリカ粒子TFM-S02P(東洋アルミニウム社製)6.9質量部、エポキシ系硬化性樹脂4質量部、有機溶媒4質量部、硬化剤0.3質量部を含有する導電性ペーストを調製した。
【0043】
次いで、透明導電膜(インジウムスズ酸化物)を有するヘテロジャンクションシリコン太陽電池セルの透明導電膜の表面上に、導電性ペーストをスクリーン印刷により1.77mmピッチの線形状に塗布した。オーブンにて100℃×10分で乾燥させ、200℃×45分の加熱により導電ペーストを硬化させて線状の電極を形成した。
【0044】
線形状の電極と垂直に10mm幅に太陽電池セルを切断し、各電極間の抵抗値を抵抗測定器(BrightSpot社製:ContactSpot)を用いて測定し、電極と透明導電膜との接触抵抗を、Transfer Length Method(TLM法)により算出した。
【0045】
実施例2
銀粒子50質量部に対して、銀コートシリカ粒子TFM-S02P(東洋アルミニウム社製)13.8質量部、エポキシ系硬化性樹脂4質量部と、有機溶媒4質量部、硬化剤0.3質量部を含有する導電性ペーストを調製した。実施例1と同様に電極を形成し接触抵抗を測定した。
【0046】
実施例3
銀粒子50質量部に対して、実施例2で使用した銀コートシリカ粒子TFM-S02Pと平均粒子径D50の異なる銀コートシリカ粒子TFM-S05P(東洋アルミニウム社製)13.8質量部、エポキシ系硬化性樹脂4質量部と、有機溶媒4質量部、硬化剤0.3質量部を含有する導電性ペーストを調製した。実施例1と同様に電極を形成し接触抵抗を測定した。
【0047】
実施例4
銀粒子25質量部に対して、銀コートシリカ粒子TFM-S02P(東洋アルミニウム社製)20.7質量部、エポキシ系硬化性樹脂4質量部、有機溶媒4質量部、硬化剤0.3質量部を含有する導電性ペーストを調製した。実施例1と同様に電極を形成し接触抵抗を測定した。
【0048】
実施例5
銀コートシリカ粒子TFM-S02P(東洋アルミニウム社製)27.6質量部に対して、エポキシ系硬化性樹脂4質量部、有機溶媒4質量部、硬化剤0.3質量部を含有する導電性ペーストを調製した。実施例1と同様に電極を形成し接触抵抗を測定した。
【0049】
実施例6
銀粒子50質量部に対して、銀コートアルミナ粒子TFM-L05B(東洋アルミニウム社製)22.9質量部、エポキシ系硬化性樹脂4質量部、有機溶媒4質量部、硬化剤0.3質量部を含有する導電性ペーストを調製した。実施例1と同様に電極を形成し接触抵抗を測定した。
【0050】
実施例7
銀粒子50質量部に対して、銀コート銅粒子TFM-C05P(東洋アルミニウム社製)9.9質量部、銀コートシリカ粒子TFM-S02P(東洋アルミニウム社製)11.2質量部、エポキシ系硬化性樹脂4質量部、有機溶媒4質量部、硬化剤0.3質量部を含有する導電性ペーストを調製した。実施例1と同様に電極を形成し接触抵抗を測定した。
【0051】
比較例1
銀粒子100質量部に対して、エポキシ系硬化性樹脂4質量部、有機溶媒4質量部、硬化剤0.3質量部を含有する導電性ペーストを調製した。実施例1と同様に電極を形成し接触抵抗を測定した。
【0052】
比較例2
銀粒子75質量部に対して、銀コート銅粒子TFM-C05P(東洋アルミニウム社製)43.3質量部、エポキシ系硬化性樹脂4質量部、有機溶媒4質量部、硬化剤0.3質量部を含有する導電性ペーストを作製した。実施例1と同様に電極を形成し接触抵抗を測定した。
【0053】
各実施例及び比較例の結果を表1にまとめて示す。なお、導電性ペースト中の固形分量に対する割合をかっこ書きで示している。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示す通り、銀粒子と銀コート銅粒子を使用した導電性ペーストは2.0mOhm*cm以上の接触抵抗値であるのに対し、銀コートシリカ粒子又は銀コートアルミナ粒子を含む導電性ペーストはいずれも透明導電膜との接触抵抗が2.0mOhm*cm未満の値となり、銀コート酸化物粒子を含む導電性ペーストを用いることにより接触抵抗が低くなることが分かった。
【0056】
上記本発明の優れた効果は、酸化物粒子に特有の硬さ(他の導電性粒子よりも高硬度)により、導電性ペースト印刷時の低い圧力でも透明導電膜の表面に接触しやすくなり、結果として硬化物である電極と透明導電膜との接触抵抗が低下したと考えられる。
【符号の説明】
【0057】
1.n型単結晶シリコン基板
2.i型アモルファスシリコン層
3-1.n型アモルファスシリコン層
3-2.p型アモルファスシリコン層
4.透明導電膜(ITO)
5.銀電極
図1