(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071489
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】光拡散性の組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20230516BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20230516BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20230516BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02B5/22
H01L31/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184311
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】521481175
【氏名又は名称】水晶光電ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中山 明仁
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
5F149
5F849
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA15
2H042BA16
2H148CA04
2H148CA05
2H148CA06
2H148CA12
2H148CA17
5F149JA13
5F149LA02
5F149XB05
5F849JA13
5F849LA02
5F849XB05
(57)【要約】
【課題】光拡散と近赤外線吸収という別々の機能を別々の層に担わせる場合、層数の増加に伴う1以上の不利益がある。
【解決手段】可視光線を拡散及び透過させるために適合された光拡散性の組成物は、樹脂基材と、樹脂基材に分散した又は保持された一群のガラス又は樹脂粒子を含む。一群のガラス又は樹脂粒子の50%粒子径が1μm~50μmの範囲内にある。また、ガラス又は樹脂粒子は、近赤外帯域に最大吸収波長を持つ近赤外線吸収材料を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光線を拡散及び透過させるために適合された光拡散性の組成物であって、
樹脂基材と、
前記樹脂基材に分散した又は保持された一群のガラス又は樹脂粒子にして、50%粒子径が1μm~50μmの範囲内にある一群のガラス又は樹脂粒子を含み、
前記ガラス又は樹脂粒子は、近赤外帯域に最大吸収波長を持つ近赤外線吸収材料を含む、組成物。
【請求項2】
前記ガラス又は樹脂粒子は、前記樹脂基材の屈折率とは異なる屈折率を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ガラス又は樹脂粒子の50%粒子径は、1μm~25μmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ガラス又は樹脂粒子は、前記近赤外線吸収材料として二価の銅イオンが含有されたガラス粒子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ガラス粒子は、酸化銅(CuO)が添加されたリン酸系ガラスから成ることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ガラス又は樹脂粒子は、前記近赤外線吸収材料として色素が含有された樹脂粒子を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の組成物から成膜された光拡散板と、
少なくとも前記光拡散板を介して到来する光を受光する半導体受光素子を備える受光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の受光装置を周囲光センシング装置として含む電子機器。
【請求項9】
可視光線を拡散及び透過させるために適合された光拡散性の組成物の製造方法であって、
近赤外帯域に最大吸収波長を持つ近赤外線吸収材料を含有するガラス又は樹脂原料を粉砕して50%粒子径が1μm~50μmの範囲内にあるガラス又は樹脂粒子の粉体を得る工程と、
樹脂材料の流体と前記ガラス又は樹脂粒子の粉体を混合する工程を含む、光拡散性の組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光拡散性の組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スマートフォンといった電子機器の用途において近赤外線を選択的に吸収可能な光学フィルタが開示されている。具体的には、光学フィルタは、基材、光散乱層、及び光吸収層を含む積層構造を有する。光散乱層としては、「光を散乱する微粒子等の光散乱剤を含有する樹脂層、表面に凹凸形状を有する樹脂層、及び、光拡散剤を含有し、かつ、表面に凹凸形状を有する樹脂層」が例示されている(同文献の段落0076)。光吸収層は、波長750~1150nmの領域に吸収極大波長を有する化合物を含有するものである(同文献の請求項6)。
【0003】
特許文献2には、ガラス繊維が樹脂マトリックスに含められた光拡散板が開示されている。ガラス繊維は、無アルカリガラスから成ることが示されている(同文献の段落0046)。
【0004】
特許文献3には、アクリル樹脂膜内に平均粒子径が1~15μmのアクリル樹脂粒子が含有された光拡散層を含む光拡散板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/040123号
【特許文献2】特開2020-95096号公報
【特許文献3】特開2017-181528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光拡散と近赤外線吸収という別々の機能を別々の層に担わせる場合、層数の増加に伴う1以上の不利益(例えば、製造工程数の増加、又は拡散板の厚みの増加)がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る光拡散性の組成物は、可視光線を拡散及び透過させるために適合された光拡散性の組成物であって、
樹脂基材と、
前記樹脂基材に分散した又は保持された一群のガラス又は樹脂粒子にして、50%粒子径が1μm~50μmの範囲内にある一群のガラス又は樹脂粒子を含み、
前記ガラス又は樹脂粒子は、近赤外帯域に最大吸収波長を持つ近赤外線吸収材料を含む。
【0008】
幾つかの実施形態においては、前記ガラス又は樹脂粒子は、前記樹脂基材の屈折率とは異なる屈折率を有する。
【0009】
幾つかの実施形態においては、前記ガラス又は樹脂粒子の50%粒子径は、1μm~25μmの範囲内又は1μm~20μmの範囲内である。
【0010】
幾つかの実施形態においては、前記ガラス又は樹脂粒子は、前記近赤外線吸収材料として二価の銅イオンが含有されたガラス粒子である。前記ガラス粒子は、酸化銅(CuO)が添加されたリン酸系ガラスから成り得る。
【0011】
幾つかの実施形態においては、前記ガラス又は樹脂粒子は、前記近赤外線吸収材料として色素が含有された樹脂粒子を含む。即ち、ガラス粒子の追加又は代替として樹脂粒子を採用可能である。
【0012】
本開示の別態様に係る受光装置は、上述のいずれかの組成物から成膜された光拡散板と、少なくとも前記光拡散板を介して到来する光を受光する半導体受光素子を含む。受光装置は、周囲光センシング装置として電子機器に含まれ得る。
【0013】
本開示の更なる別態様に係る光拡散性の組成物の製造方法は、可視光線を拡散及び透過させるために適合されたものであって、近赤外帯域に最大吸収波長を持つ近赤外線吸収材料を含有するガラス又は樹脂原料を粉砕して50%粒子径が1μm~50μmの範囲内にあるガラス又は樹脂粒子の粉体を得る工程と、樹脂材料の流体と前記ガラス又は樹脂粒子の粉体を混合する工程を含む。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様によれば、光拡散と近赤外線吸収という異なる機能を単一層に担わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一態様に係る電子機器の概略図である。
【
図2】電子機器に内蔵される周囲光センシング装置の概略図である。
【
図4】近赤外線吸収フィルタの模範的又は大まかな透過スペクトルを示す概略図である。
【
図5】反射型フィルタと光拡散板の両方を含むフィルタユニットの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の非限定の実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本明細書に開示された光拡散性の組成物にのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々な光拡散性の組成物にも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0017】
本開示に係る光拡散性の組成物から成る光拡散板は、様々な電子機器に実装可能であり、例えば、
図1に示す電子機器1(詳細には、電子機器1に内蔵された周囲光センシング装置4)に内蔵される。電子機器1は、所謂、スマートフォンであって、ディスプレイ2の外周の所定位置にカメラ3と周囲光センシング装置4が設けられている。周囲光センシング装置4において、単位時間当たりに受光面に入射する光量が検出され、これに基づいて(例えば、スマートフォン又はカメラのCPU(Central Processing Unit)により)照度が算出される。算出された照度は、カメラ3の動作条件、又はカメラ3の取得画像に対する画像処理、又は(例えば、照度計の実装のためにインストールされたアプリケーションによる)単なる照度の提示、又は他の目的のために用いられる。なお、電子機器1における周囲光センシング装置4の位置及び個数は任意に設定可能である。
【0018】
周囲光センシング装置4は、
図2に示すように、実装基板41、半導体受光素子42、光拡散板51、窓材52、及びホルダー61,62を有する。実装基板41は、ガラスエポキシ樹脂又は他の材料から成る絶縁性基板であり、配線パターンが形成されている。半導体受光素子42は、例えば、所定面積の受光面を有するフォトダイオード又は他の種類の光電変換装置であり、実装基板41の配線パターンに対して電気的に接続される。
【0019】
半導体受光素子42の受光面上には、光拡散板51及び窓材52がこの順で配置される。周囲光は、窓材52と光拡散板51を透過して半導体受光素子42の受光面に入射し、半導体受光素子42において光電変換される。半導体受光素子42で生成された光電流が不図示の受光回路により電圧に変換され、必要に応じてデジタル値に変換され、外部(例えば、スマートフォン又はカメラのCPU)に出力される。
【0020】
窓材52は、可視光帯(300~700nmの波長帯)に対して高い透過率(80%以上)を有する材料(例えば、ガラス、石英)から成る。光拡散板51は、光を拡散させる光学素子であり、窓材52と同様、光拡散板51は、可視光帯(300~700nmの波長帯)に対して高い透過率(80%以上)を有する。光拡散板51は、後述のように近赤外線吸収板としても機能する。従って、周囲光センシング装置4に光拡散板51とは別に近赤外線吸収板又は近赤外線反射板を設ける必要性が解消され得る。実施形態によっては、光拡散板51の近赤外線吸収特性の補完のために追加の近赤外線吸収(又は反射)板を用いることもできる。
【0021】
光拡散板51は、
図3に示すように、樹脂基材6と一群のガラス又は樹脂粒子7を含む複合光学素子である。一群のガラス又は樹脂粒子7は、樹脂基材6に分散し又は保持されている。なお、
図3では、ガラス又は樹脂粒子7が円形で模式的に示されている。ガラス又は樹脂粒子7は、球形に限定されず、不定の3次元形状を持ち得る。樹脂基材6は、可視光帯(300~700nmの波長帯)に対して高い透過率(例えば、70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上)を有し、例えば、シリコーン系樹脂、ポリイミド、又はポリオレフィン樹脂から成る。ガラス又は樹脂粒子7は、近赤外帯域(例えば、700nm~1200の波長帯)に最大吸収波長を持ち、かつ50%粒子径(D
50)が1μm~50μmの範囲内にある。幾つかの場合、ガラス又は樹脂粒子7の50%粒子径(D
50)は、1μm~25μmの範囲内にある。なお、樹脂基材6と同様、ガラス又は樹脂粒子7は、可視光帯(300~700nmの波長帯)に対して高い透過率(例えば、70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上)を有する。
【0022】
本実施形態においては、ガラス又は樹脂粒子7が、近赤外帯域に最大吸収波長を持つ近赤外線吸収材料(例えば、二価の銅イオン又は色素)を含む。オプションであるが、好適には、近赤外帯域に最大吸収波長を持つ近赤外線吸収材料がガラス又は樹脂粒子7に対して選択的に含有される。即ち、近赤外帯域に最大吸収波長を持つ近赤外線吸収材料は、樹脂基材6に含有されることなくガラス又は樹脂粒子7に含有される。上述のいずれかの態様によると、ガラス又は樹脂粒子7は、樹脂基材6との協調及び/又はそれ自体の形状に基づいて可視光線(例えば、300~700nmの波長帯に属する光線)に対する光拡散性を有するばかりではなく、近赤外線(例えば、700nm~1200の波長帯に属する光線)に対する光吸収特性を有することができ、即ち、光拡散と近赤外線吸収という異なる機能を単一層に担わせることができる。これにより近赤外線フィルタと光拡散板の併用を回避し、或いは、併用するとしても近赤外線吸収特性の合算の効果を得ることができる。光拡散と近赤外線吸収が単一層で生じるため、拡散した近赤外線が近赤外線吸収材料に入射する確率も自ずと高められ得、従って、少量の近赤外線吸収材料にも関わらず近赤外線の吸収効率を高めることが促進され得る。追加又は代替として、製造工程及び装置構成の簡素化や低コスト化が促進され得る。なお、近赤外線吸収材料としては様々な材料を採用可能であることに留意されたい。
【0023】
ガラス又は樹脂粒子7は、ガラス又は樹脂原料(例えば、板状ガラス又は樹脂、又は、任意形状のガラス塊又は樹脂塊)の粉砕により得られたものであり得る。粉砕方法にも依存するが、ガラス又は樹脂粒子7が粉砕の程度に応じた粒度分布を持つ。これに関して、ガラス又は樹脂粒子7の粒子径(端的には、最大粒子径)が小さすぎ、例えば、その50%粒子径D50が1μm未満であると、粒子径が可視光線の波長に近くなるために可視光線に対する光拡散板51の光拡散性が低下してしまう。他方、その50%粒子径D50が50μm超である場合も、光拡散板51におけるガラス又は樹脂粒子7の密度が低下して光拡散板51における拡散性能が低下してしまうおそれがある。従って、光拡散板51が適切な光拡散性を持つようにガラス又は樹脂原料の粉砕を行うことが望ましい。なお、粒度分布は、体積基準であり、横軸が粒子径を示し、縦軸が累積頻度を示す。レーザー回折散乱粒度分布装置を使用して50%粒子径を測定可能である。
【0024】
上述の点に関して公知の乾式粉砕法又は湿式粉砕法を用いて得ることができる。乾式粉砕法としては、ボールミル、ジェットミル、ミル型粉砕機、ミキサー型粉砕機等を用いる方法等が挙げられる。湿式粉砕法としては、湿式ミル(ボールミル、遊星ミル等)、クラッシャー、乳鉢、衝撃粉砕装置(ナノマイザー等)、湿式微粒子化装置等を用いる方法等が挙げられる。例えば、青ガラスを乾式粉砕法で粉砕することにより上述のガラス粒子が得られる。同様、青ガラスと同様に近赤外線吸収特性を有する機能性樹脂を乾式粉砕法で粉砕することにより、上述の樹脂粒子が得られる。なお、「粒子」は、粉砕法に依存して、又は、実際に用いる粉砕機に応じて、様々な形状をとり得る。
【0025】
青ガラスの粉砕によりガラス粒子が得られる場合、ガラス粒子は、二価の銅イオン(例えば、酸化銅(CuO))が添加されたリン酸系ガラスを含み得る。機能性樹脂の粉砕により樹脂粒子が得られる場合、樹脂粒子は、近赤外線吸収色素が添加された樹脂から成り得る。近赤外線吸収色素としては、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体、ナフトキノン化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物等が知られているが、長期に亘る耐光性を持つものが好ましい。
【0026】
ガラス又は樹脂粒子7は、樹脂基材6の屈折率とは異なる屈折率を有し得る。樹脂基材6とガラス又は樹脂粒子7の界面で光線が屈折して光拡散板51において十分な光拡散の効果が得られる。例えば、ガラス又は樹脂粒子7の屈折率と樹脂基材6の屈折率の差は、0.01~0.05であり得る。なお、屈折率は、真空中の光速度を媒質中の光速度(より正確には位相速度)で割って得られる(実際には、材料メーカーのカタログ値から得られる)。
【0027】
光拡散板51におけるガラス又は樹脂粒子7の質量%は、10~90質量%であり得る。十分な光拡散性及び近赤外線吸収特性を確保する観点から、ガラス又は樹脂粒子7の質量%は、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上であり得る。光拡散板51の機械的強度を確保する観点から、ガラス又は樹脂粒子7の質量%は、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下であり得る。両者のバランスの確保の観点から、ガラス又は樹脂粒子7の質量%は、40~80質量%の範囲内であり得る。即ち、ガラス又は樹脂粒子7の質量%は、光拡散板51の機械的強度、光拡散性、及び近赤外線吸収特性のバランスの観点(又は別の観点)から適切に決定される。光拡散板51におけるガラス又は樹脂粒子7の分散を確保又は促進するために分散剤を添加することもできる。なお、ガラス又は樹脂粒子7の質量%が多い場合、樹脂基材は、バインダーとしての役割を担うことになる。
【0028】
光拡散板51は、各種薄膜形成技術(スピンコーティング等)により成膜可能であり、また任意の形状に切断可能である。押出成形、射出成形といった方法で光拡散板51を製造することも考えられる。
【0029】
光拡散板51の模範的な透過スペクトルを
図4に示す。ガラス又は樹脂粒子7は、可視光線を殆ど吸収せず、近赤外線を多く吸収する。即ち、光拡散板51は、可視光帯(300~700nmの波長帯)の全波長に対して高い透過率(例えば、70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上)を有し、近赤外帯(例えば、700~1200nmの波長帯)の全波長に対して低い透過率(例えば、20%以下、又は15%以下、又は10%以下、又は5%以下)を持つ。
【0030】
光拡散板51の製造方法は、次の二つの工程を少なくとも含む。第1工程において、近赤外帯域に最大吸収波長を持つ近赤外線吸収材料を含有するガラス又は樹脂原料を粉砕して50%粒子径が1μm~50μmの範囲内にあるガラス又は樹脂粒子の粉体を得る。第2工程において、樹脂材料の流体とガラス又は樹脂粒子の粉体を混合する。
【0031】
粉砕されるべきガラス又は樹脂原料は、近赤外帯域に最大吸収波長を持つ近赤外線吸収材料(例えば、二価の銅イオン又は色素)を含むものである。上述のように公知の乾式粉砕法又は湿式粉砕法を採用可能である。ガラス又は樹脂粒子の粉体が混合されるべき樹脂材料の流体は、軟化又は溶融状態の樹脂、又は固形樹脂の粉体であり得る。流体の樹脂材料が熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の場合、加熱又は冷却により硬化させることができる。流体の樹脂材料がエネルギー線硬化樹脂の場合、エネルギー線の照射により硬化させることができる(なお、エネルギー線は、例えば、紫外線である)。流体が粉体である時、例えば、加熱により軟化又は溶融させ、続いて冷却により硬化させることができる。このようにして光拡散板51が製造される。なお、ガラス又は樹脂粒子の粉体が樹脂粒子の粉体である時、樹脂基材は、その樹脂粒子の樹脂と同一又は異なる樹脂から成り得る。
【0032】
混合工程後に薄膜形成工程を行うことができる。例えば、スピンコーティング等によって組成物から所定厚の薄膜(即ち、光拡散板)を支持基板上に形成することができる。混合工程後にスタンプ工程を行うことができる。これによりスタンプ・ダイに応じた光学的構造(例えば、マイクロレンズ、又はマイクロレンズアレイ、又は回折格子)を光拡散板に持たせることができる。なお、本開示の光拡散板に関して様々な製法が考えられ、その全てについて説明することは省略する。
【0033】
図5は、近赤外線を反射するように構成された反射型フィルタ90と上述の光拡散板51の両方を含むフィルタユニットの例を示す模式図である。
図5においては、光入射側から順に、反射型フィルタ90と光拡散板51が配置される。反射型フィルタ90は、支持基板91と、異なる屈折率の誘電体層(例えば、SiO
2とTiO
2)が交互に積層された積層体92を含む。光拡散板51は上述した通りのものである。光束は、まず反射型フィルタ90を透過し、次に、光拡散板51を透過する。この過程で、近赤外線が反射型フィルタ90により反射され、また光拡散板51(特には、そこに含有されたガラス又は樹脂粒子に含まれる近赤外線吸収材料(例えば、二価の銅イオン又は色素))により吸収される。かかる実施形態においては、反射型フィルタ90を透過した近赤外線は、光拡散板51により吸収される。従って、反射型フィルタ90の誘電体層の積層数を減少させてコストダウンを図ることができる。
【0034】
実施形態によっては、反射型フィルタ90の支持基板91の第1面上に積層体92が積層され、反射型フィルタ90の支持基板91の第2面上に光拡散板51が積層され得る。反射型フィルタ90の支持基板91の第2面に光拡散板51が接着剤を介して又は介することなく固着し得る。反射型フィルタ90の支持基板91の第2面上で光拡散板51を成膜することもできる。
【0035】
上述の教示を踏まえ、当業者は、各実施形態及び各特徴に対して様々な変更を加えることができる。光拡散板51は、周囲光センシング装置に限らず、カメラにも用いることができる。例えば、光拡散板51は、CCD撮像素子の受光面上に配置され得る。
【符号の説明】
【0036】
6 :樹脂基材
7 :樹脂粒子
51 :光拡散板