(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071491
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】不燃性ボード並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
B27N 3/00 20060101AFI20230516BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
B27N3/00 B
E04B1/94 Y
E04B1/94 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184316
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】504087732
【氏名又は名称】株式会社きんぱら
(71)【出願人】
【識別番号】521495482
【氏名又は名称】株式会社ザマックス
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】金原 隆之
(72)【発明者】
【氏名】前田 米蔵
(72)【発明者】
【氏名】原田 茂
【テーマコード(参考)】
2B260
2E001
【Fターム(参考)】
2B260AA02
2B260AA20
2B260BA02
2B260BA15
2B260CB01
2B260CB04
2B260CD02
2B260CD06
2B260DA07
2B260EA05
2E001DE01
2E001FA10
2E001GA12
2E001HC12
2E001HC13
2E001HC14
2E001HF12
2E001HF13
2E001JB03
(57)【要約】
【課題】 一定以上の不燃性を確保すると共に、製造コストを抑えることのできる、新規な不燃性ボード並びにその製造方法の開発を技術課題とした。
【解決手段】 ボード基材を接着剤3とともに加熱プレスして板状とした不燃性ボード1であって、前記接着剤3として、アルミニウム化合物(酸化アルミニウム31、液体アルミニウム32)が用いられていることを特徴として成り、不燃性ボード1に、アルミニウム化合物による接着効果に加え、不燃効果、耐熱効果を付与することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボード基材を接着剤とともに加熱プレスして板状とした不燃性ボードであって、
前記接着剤としてアルミニウム化合物が用いられていることを特徴とする不燃性ボード。
【請求項2】
前記アルミニウム化合物は、酸化アルミニウムまたは液体アルミニウムの何れか一方または双方であることを特徴とする請求項1記載の不燃性ボード。
【請求項3】
前記アルミニウム化合物は、アルミニウム含有廃液中に含まれたものであることを特徴とする請求項1または2いずれか記載の不燃性ボード。
【請求項4】
前記ボード基材には、白灰が含まれることを特徴とする請求項1、2または3いずれか記載の不燃性ボード。
【請求項5】
前記ボード基材には木質素材が含まれることを特徴とする請求項1、2、3または4いずれか記載の不燃性ボード。
【請求項6】
前記木質素材には、ホウ酸が含侵されていることを特徴とする請求項5記載の不燃性ボード。
【請求項7】
前記ボード基材に対して、酸化亜鉛が添加されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6いずれか記載の不燃性ボード。
【請求項8】
ボード基材を接着剤とともにプレスして板状とした不燃性ボードの製造方法であって、
前記接着剤としてアルミニウム化合物を添加した後、加熱プレス加工を行うことを特徴とする不燃性ボードの製造方法。
【請求項9】
前記アルミニウム化合物は、酸化アルミニウムまたは液体アルミニウムの何れか一方または双方であることを特徴とする請求項8記載の不燃性ボードの製造方法。
【請求項10】
前記アルミニウム化合物は、アルミニウム含有廃液中に含まれたものであることを特徴とする請求項8または9いずれか記載の不燃性ボードの製造方法。
【請求項11】
前記ボード基材には、白灰が含まれることを特徴とする請求項8、9または10いずれか記載の不燃性ボードの製造方法。
【請求項12】
前記ボード基材には木質素材が含まれることを特徴とする請求項8、9、10または11いずれか記載の不燃性ボードの製造方法。
【請求項13】
前記木質素材には、ホウ酸を含侵させることを特徴とする請求項12記載の不燃性ボードの製造方法。
【請求項14】
前記ボード基材に対して、酸化亜鉛を添加することを特徴とする請求項8、9、10、11、12または13いずれか記載の不燃性ボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築資材や、シンクユニット(キッチンユニット)等の室内調度品等に用いることが適切な、不燃性能を高める改良を施した不燃性ボード並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木質素材の小片を接着剤と混ぜ合わせ熱圧成型して板状に成形されたボード資材が、建材や家具、音響機器の筐体等として広く用いられている。しかしながらこのものは、主原料を木質素材とするものであり、不燃性については充分な性能を発揮できない。
【0003】
そこでこのようなボード資材に不燃性を付与するために、接着剤の中に難燃薬剤を混合する試みがなされているが(例えば特許文献1参照)、薬剤がボードの表面に析出して見た目が悪くなってしまう等の課題があった。
更に接着剤としてフェノール、イソシアネート、レゾシノール等が使用されている場合には、これらの成分が発火してしまうことは避けられなかった。
【0004】
ところで、良好な不燃性を有する建築用ボードの一例として、石膏ボードやプラスターボードと呼ばれる、石膏を板状に形成し、その表面を特殊な紙で仕上げたものが広く流通している。このものは、不燃性が高いだけでなく、断熱性、施工性、遮音性にも優れており、更に各種建築用ボードの中では比較的安価・低コストであるとされてはいるものの、他の業種や一般の感覚では安価とは言い難いものである。
【0005】
このような状況の下、本出願人は、不燃性を高めると共に、耐キズ性能、抗菌性能、耐水性能、耐汚れ性能、防蟻性能等の機能を併せ発揮する不燃性木質ボードを開発し、既に特許出願に及んでいる(特許文献2参照)。
そしてその後も本出願人は、ボード資材の不燃性向上に加え、製造コストを削減についての研究開発に鋭意取り組んできた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3919639号公報
【特許文献2】特願2020-124468
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、一定以上の不燃性を確保すると共に、製造コストを抑えることのできる、新規な不燃性ボード並びにその製造方法の開発を技術課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち請求項1記載の不燃性ボードは、ボード基材を接着剤とともに加熱プレスして板状とした不燃性ボードであって、前記接着剤としてアルミニウム化合物が用いられていることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項2記載の不燃性ボードは、前記要件に加え、前記アルミニウム化合物は、酸化アルミニウムまたは液体アルミニウムの何れか一方または双方であることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項3記載の不燃性ボードは前記要件に加え、前記アルミニウム化合物は、アルミニウム含有廃液中に含まれたものであることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項4記載の不燃性ボードは、前記要件に加え、前記ボード基材には、白灰が含まれることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項5記載の不燃性ボードは、前記要件に加え、前記ボード基材には木質素材が含まれることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項6記載の不燃性ボードは、前記請求項5記載の要件に加え、前記木質素材には、ホウ酸が含侵されていることを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項7記載の不燃性ボードは、前記要件に加え、前記ボード基材に対して、酸化亜鉛が添加されていることを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項8記載の不燃性ボードの製造方法は、ボード基材を接着剤とともにプレスして板状とした不燃性ボードの製造方法であって、前記接着剤としてアルミニウム化合物を添加した後、加熱プレス加工を行うことを特徴として成るものである。
【0016】
また請求項9記載の不燃性ボードの製造方法は、前記請求項8記載の要件に加え、前記アルミニウム化合物は、酸化アルミニウムまたは液体アルミニウムの何れか一方または双方であることを特徴として成るものである。
【0017】
また請求項10記載の不燃性ボードの製造方法は、前記請求項8または9いずれか記載の記載の要件に加え、前記アルミニウム化合物は、アルミニウム含有廃液中に含まれたものであることを特徴として成るものである。
【0018】
また請求項11記載の不燃性ボードの製造方法は、前記請求項8、9または10いずれか記載の記載の要件に加え、前記ボード基材には、白灰が含まれることを特徴として成るものである。
【0019】
また請求項12記載の不燃性ボードの製造方法は、前記請求項8、9、10または11いずれか記載の記載の要件に加え、前記ボード基材には木質素材が含まれることを特徴として成るものである。
【0020】
また請求項13記載の不燃性ボードの製造方法は、前記請求項12記載の記載の要件に加え、前記木質素材には、ホウ酸を含侵させることを特として成るものである。
【0021】
また請求項14記載の不燃性ボードの製造方法は、前記請求項8、9、10、11、12または13いずれか記載の記載の要件に加え、前記ボード基材に対して、酸化亜鉛を添加することを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0022】
まず請求項1及び8記載の発明によれば、不燃性ボードに、アルミニウム化合物による接着効果に加え、不燃効果、耐熱効果を付与することができる。
【0023】
また請求項2及び9記載の発明によれば、アルミニウム化合物による接着効果、不燃効果、耐熱効果を、不燃性ボードに満遍なく付与することができる。
【0024】
また請求項3及び10の発明によれば、不燃性ボードのコストダウンを図ることができる。
【0025】
また請求項4及び11記載の発明によれば、不燃性ボードに、白灰による、耐熱性能、不燃性能を付与することができる。また不燃性ボードのコストダウンを図ることができる。
【0026】
また請求項5及び12の発明によれば、不燃性ボードを、木質素材を含みながらも、不燃性能が高く、且つ低コストのものとすることができる。
【0027】
また請求項6及び13記載の発明によれば、木質素材に対して直接、ホウ酸による不燃性能を付与することができるとともに、不燃性ボードの不燃性能を高めることができる。
【0028】
また請求項7及び14記載の発明によれば、不燃性ボードに、酸化亜鉛による、耐熱性能、不燃性能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の不燃性ボードの一例である不燃性灰ボードの製造方法を示す工程図である。
【
図2】不燃性灰ボードの製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の不燃性ボードの一例である不燃性木質ボードの製造方法を示す工程図である。
【
図4】不燃性木質ボードの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】不燃性灰ボードをコーンカロリメータによる燃焼試験にかけた結果を示すグラフである。
【
図6】不燃性木質ボードをコーンカロリメータによる燃焼試験にかけた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を実施するための形態は、以下に述べる実施の形態をその一つとするものであり、更にこの技術思想の中で改変される種々の形態を含むものである。
【0031】
以下、本発明の「不燃性ボード並びにその製造方法」について、図示の実施の形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の不燃性ボード1は、ボード基材を接着剤3とともに加熱プレスして板状としたボードであって、前記接着剤3としてアルミニウム化合物が用いられていることを特徴として成るものである。
なお前記「ボード基材」とは、ボード原料10の成分の内、不燃性ボード1の強度を担う主要成分を意味するものであり、この実施の形態では白灰5、木質素材2を例示しているが、黒灰、鉱物由来繊維等他の素材を採用することも可能である。
【0032】
以下、不燃性ボード1として、白灰5を接着剤3とともに加熱プレスして得られる不燃性灰ボード1Aと、木質素材2を接着剤3とともに加熱プレスして得られる不燃性木質ボード1Wとを例に挙げて説明する。
【0033】
〔不燃性灰ボード〕
まず、前記不燃性灰ボード1Aについて説明すると、このものは、ボード基材としての白灰5を、接着剤3とともに加熱プレスして板状としたボード資材であって、接着剤3としてアルミニウム化合物が用いられて成るものである。
【0034】
まず、前記接着剤3としてのアルミニウム化合物は、一例として酸化アルミニウム(通称アルミナ)31が採用されるものであり、このものは粒径0.1~200μm程度の粉末として流通しているものを安価で入手することができる。
この酸化アルミニウム31は高融点(2000°C 以上)であるため、各種耐火材として供されており、優れた耐熱衝撃性を有するものである。
【0035】
また前記アルミニウム化合物としては、液体アルミニウム32を採用することもできる。なお本明細書中において、液体アルミニウム32とは、融点に達して液相となったアルミニウムのことではなく、アルミニウム化合物が含有された液状物(アルミニウム含有液)を意味するものである。
そして前記液体アルミニウム32としては、一例としてリン酸アルミニウムを44.6~47.8%の含有率で含んだアルミニウム含有液が採用される。
【0036】
また前記アルミニウム化合物としては、アルミニウム含有廃液中に含まれたものを採用することもできる。
ここでアルミニウム含有廃液とは、例えばアルミニウムのインゴットを精製した際に生じるペースト状の廃液等が該当するものであり、このアルミニウム含有廃液に含まれるアルミニウム化合物としては、リン酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、液体アルミン酸ソーダ、液体アルミン酸カリ、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
そしてこのようなアルミニウム含有廃液を用いることにより、不燃性ボード1のコストダウンを図ることができる。
【0037】
なお不燃性灰ボード1Aにおいては、接着剤3として、尿素(ユリア)とホルマリンを主原料とするユリア系接着剤(熱硬化性樹脂系)、メラミンとホルマリンを主原料とするメラミン樹脂系接着剤(熱硬化性樹脂系)、フェノールとホルマリンを主原料とするフェノール樹脂系接着剤(熱硬化性樹脂系)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、レゾシノール、イソシアネート等を使用しないため、これらの成分による発火を回避することができる。
【0038】
また前記白灰5は、一般廃棄物の焼却灰のうち、集塵装置等で集められた煤塵である焼却飛灰が適用される。なお一般的に焼却飛灰には二酸化ケイ素(シリカ)が含まれるものであり、その含有率は高いほど、白灰5として適用されるのに好ましい。
また前記焼却飛灰は無機物であり、低酸素状態で300~400℃に加熱する等して、ダイオキシン類が脱塩素化されたものが白灰5として採用される。
〔不燃性灰ボードの製造方法〕
【0039】
次いで本発明の不燃性ボード1の一例である不燃性灰ボード1Aの製造方法について、
図1に示す工程図及び
図2に示すにフローチャートに沿って説明する。
(1)原料調製工程S3
まず、水7が入れられた適宜の容器に酸化アルミニウム31または液体アルミニウム32の何れか一方または双方、白灰5を投入し、適宜のミキサを用いてこれらを満遍なく混合してボード原料10を調製する。
【0040】
(2)プレス工程S4
次いでボード原料10を型11に流し混むとともに、一例として20tf/m2 の圧力をかけてプレスすることにより成型する。
【0041】
(3)加熱工程S5、整形工程S6
次いでプレスされたボード原料10を型11ごと加熱(一例として250℃、40分間)した後、離型し、適宜表裏面を研磨し、所望の寸法に裁断することにより、本発明の不燃性ボード1の一例である不燃性灰ボード1Aが得られる。
【0042】
このようにして得られた不燃性灰ボード1Aは、アルミニウム化合物が接着剤3として機能して、白灰5同士が強固に接合されたものとなる。
【0043】
〔不燃性木質ボード〕
続いて前記不燃性木質ボード1Wについて説明すると、このものは、ボード基材としての木質素材2を、接着剤3とともに加熱プレスして板状としたボード資材であって、接着剤3としてアルミニウム化合物が用いられて成るものである。
なお不燃性木質ボード1Wの形態としては、JIS5908で規定される「パーティクルボード」及び「OSB」並びにJIS5905で規定される「MDF((Medium Density Fiberboard)」、「インシュレーションボード」及び「ハードボード」等の形態が採られる。
【0044】
ここで前記木質素材2は、木質材であれば何でも適用することが可能であるが、間伐材、林地残材、工場残廃材、解体廃材等の廃材を適用することが好ましい。また木質素材2は、木質材の木部のみならず樹皮を含むようにしてもよい。
なお木質素材2の樹種としては、国産ではスギ、ヒノキ、マツ(カラマツ、エゾマツ、トドマツ)、シナ、ヒバ、モミ、ケヤキ、ナラ、カバ、ニレ、セン、タモ、クルミ、トチ、ナナカマド、モミジ、センダン、イヌエンジュ、キリ、ハンノキ、シラカバ等が挙げられる。
一方、外国産では、シダー、ヨーロッパモミ、ヨーロッパカラマツ、トウヒ、スプルース、ベイマツ、ツガ、スプルース、モミ、バーズアイ・メープル、カーリー・メープル、ウォールナット、ホワイト・オーク、レッド・オーク、ホワイト・アッシュ、ササフラス、チューリップ・ポプラ、ウォールナット・バール、マドローネ・バール、メープル・バール、ローズ(インド)、コクタン、チーク、ブビンガ、サペリ、ビーチ(ぶな)、シカモア、マッパ・バール、アッシュ・バール、モスルビヨルク、エルム・バール、ラジェーター・パイン、ラワン、ユーカリ、ゴム、アカシア、アユース、ファルカタ、ラミン、ジェルトン、アサメラ、マホガニー、ジャカランダ等が挙げられる。
なお木質素材2を単独で用いる他、他の一または複数の樹種の木質素材2と混合して用いることもできる。
【0045】
そして木質素材2の形態は、不燃性木質ボード1Wの態様に応じて、木質細片または木質繊維とされる。
まず前記木質細片は、木質素材2を切削・破砕することにより得られるものであり、JIS5908で規定される「パーティクルボード」に準じた不燃性木質ボード1Wに適用される場合、2~9mm、好ましくは2~7mm、更に好ましくは4~5mmとされる。
また同じくJIS5908で規定される「OSB」に準じた不燃性木質ボード1Wに適用される木質細片は、ストランドと呼ばれる厚さ0.5~1.0mmの短冊状の削片とされる。
更に木質細片の乾燥度(含水率)は、8~30%、好ましくは8~20%、更に好ましくは8~13%とされる。
【0046】
一方、前記木質繊維は、前記木質素材2を蒸煮・解繊することにより得られるものであり、JIS5905で規定される「MDF((Medium Density Fiberboard)」、「インシュレーションボード」、「ハードボード」に準じた不燃性木質ボード1Wに適用されるものである。
【0047】
また前記接着剤3としてのアルミニウム化合物は、一例として酸化アルミニウム(通称アルミナ)31及び液体アルミニウム32が採用されるものであり、これらは前出の不燃性灰ボード1Aの説明に記載されたとおりのものである。
【0048】
なお本発明の不燃性木質ボード1Wにおいては、接着剤3として、尿素(ユリア)とホルマリンを主原料とするユリア系接着剤(熱硬化性樹脂系)、メラミンとホルマリンを主原料とするメラミン樹脂系接着剤(熱硬化性樹脂系)、フェノールとホルマリンを主原料とするフェノール樹脂系接着剤(熱硬化性樹脂系)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、レゾシノール、イソシアネート等を使用しないため、これらの成分による発火を回避することができる。
【0049】
またこの実施の形態では、前記木質素材2にホウ酸4が含浸されるものであり、このホウ酸4は、前記アルミニウム化合物、後述する白灰5等、他の原材料の不燃性・難燃性との相乗効果により、不燃性・難燃性を高めるものである。
そして不燃化・難燃化のメカニズムとしては、ホウ酸水溶液が木質素材2等の内部に浸透してセルロースに定着し、高温となったときに発泡し熱を遮断する事により、燃焼を防ぐことが知られている。
【0050】
またこの実施の形態では、前記ボード原料10に対して、白灰5が添加されるものであり、この白灰5は前出の不燃性灰ボード1Aの説明に記載されたとおりのものである。
【0051】
更にまたこの実施の形態では、前記ボード原料10に対して、酸化亜鉛6が添加されるものであり、このものは粒径0.2~数μm程度の粉末として流通しているものを安価で入手することができる。
この酸化亜鉛6は高融点(約2000°C )であり、白色顔料としてペンキ、絵の具などとして用いられる他、粒子の細かい上質のものは医薬品、化粧品、歯科充填剤として用いられる。
〔不燃性木質ボードの製造方法〕
【0052】
次いで本発明の不燃性木質ボード1Wの製造方法について、
図3に示す工程図及び
図4に示すにフローチャートに沿って説明する。
(1)蒸煮工程S1
まず前記木質素材2にホウ酸4を含浸させるものであり、この実施の形態では、一例として水7が入れられた圧力釜100に、木質素材2、ホウ酸4を投入した後、120℃で18分加熱を行うようにした。
【0053】
(2)静置工程S2
次いで、加熱を停止した圧力釜100を静置して冷却し、ホウ酸4が木質素材2内に浸透してセルロースに定着するのを促すものであり、一例として15時間(好ましくは24時間以上、更に好ましくは2週間以上)、静置することにより、ホウ酸4が含侵された処理済木質素材20が得られる。
【0054】
(3)原料調製工程S3
次いで、処理済木質素材20を圧力釜100から取り出し、水7が入れられた適宜の容器に投入するとともに、更に酸化アルミニウム31または液体アルミニウム32の何れか一方または双方、白灰5、酸化亜鉛6を投入し、適宜のミキサを用いてこれらを満遍なく混合してボード原料10を調製する。
【0055】
(4)プレス工程S4
次いでボード原料10を型11に流し混むとともに、一例として40tf/m2 の圧力をかけてプレスすることにより成型する。
【0056】
(5)加熱工程S5、整形工程S6
次いでプレスされたボード原料10を型11ごと加熱(一例として250℃、40分間)した後、離型し、適宜表裏面を研磨し、所望の寸法に裁断することにより、本発明の不燃性ボード1の一例である不燃性木質ボード1Wが得られる。
【0057】
このようにして得られた不燃性木質ボード1Wは、アルミニウム化合物が接着剤3として機能して、木質素材2の間に白灰5、酸化亜鉛6が分散した状態で木質素材2同士が強固に接合されたものとなる。
以下、本発明の不燃性ボード1たる不燃性灰ボード1A及び不燃性木質ボード1Wの実施例を記載する。
【実施例0058】
〔実施例1〕サンプルA(不燃性灰ボード1A)
・原料調製工程S3
白灰5: 75g
酸化アルミニウム31: 10g
液体アルミニウム32: 10g
水7: 55g
ボード原料10: 150g
・プレス工程S4・加熱工程S5
加圧力:20tf/m2 =19620kN/m2 )
加熱温度:250℃
加熱時間:40分
ボード原料10 プレス・加熱前 150.0g
不燃性灰ボード1A プレス・加熱後 140.0g
上記不燃性灰ボード1Aの両面(表裏)に、酢酸ビニル系接着剤を用いてクラフト紙を貼付し、これをサンプルAとした。
【0059】
〔耐火試験結果〕
上記不燃性灰ボード1AのサンプルAについて耐火試験を行った。結果を以下に示す。
試験対象:サンプルA
試験方法:コーンカロリーメータIIIを用いた 認定試験(建築基準法)(グレード :不燃)
輻射量:50.0kW/m
2 (ヒータ温度742.0℃)
排気流量:0.024m
3 /sec(排気温度4.7℃、排気圧力147. 45Pa)
試験結果:
図5に1.発熱速度―時間曲線、2.総発熱量―時間曲線を示す。なお3で 示す直線は酸素ベースラインである。
開始16秒で表裏面に貼られたクラフト紙に着火し、24秒で消火した。
20分経過後も総発熱量は8MJを超えることはなかった。
試験験後のサンプルAの重量は126.78gであった。
また、外形の変化も無く、割れ、ひび、反り等も確認されなかった。
このようにサンプルAの試験結果から、表裏面にクラフト紙が貼られていなければ、本発明の不燃性ボード1の一例である不燃性灰ボード1Aは、不燃性能が20分間継続するものであり、建設省告示第1400号( 平成12年5月30日) によって定められた不燃材料に相当する不燃性を有するものであることが予想される。
【0060】
〔実施例2〕サンプルB、C(不燃性木質ボード1W)
・蒸煮工程S1(120℃ 18分加熱)
木質素材2:100g
材質:建築廃材ミックス
粒径:2~20mm
含水率:3%w.b.
ホウ酸4:28.8g
水:500g
・静置工程S2(15時間)
・原料調製工程S3
処理済木質素材20: 263g
白灰5: 50g
酸化亜鉛6: 7.5g
酸化アルミニウム31: 40g
液体アルミニウム32: 30g
水7: 50g
ボード原料10: 440.5g
このボード原料10から下記サンプルB及びサンプルCを作成した。
・プレス工程S4・加熱工程S5
加圧力:40tf/m2 =39240kN/m2 )
加熱温度:250℃
加熱時間:40分
ボード原料10(サンプルB) プレス・加熱前 220.25g
不燃性木質ボード1W(サンプルB) プレス・加熱後 178.8g
ボード原料10(サンプルC) プレス・加熱前 220.25g
不燃性木質ボード1W(サンプルC) プレス・加熱後 172.5g
【0061】
〔耐火試験結果〕
上記不燃性木質ボード1Wの二つのサンプルB、サンプルCについて、それぞれ耐火試験を行った。結果を以下に示す。
試験対象:サンプルB
試験方法:簡易燃焼試験(認定試験を行う前に社内で行った)
6mm厚の鉄板を、プロパンガスを燃焼させて700℃に熱し、この鉄板の 15mm下方にサンプルBを設置し、約20分加熱した。
試験結果:試験後のサンプルBの重量は137.8gであった。
外観の目視検査では、表面の変色が確認されたものの、形状は維持されてお り、外形の変化も無く、割れ、ひび、反り等も確認されなかった。
【0062】
試験対象:サンプルC
試験方法:コーンカロリーメータIIIを用いた 認定試験(建築基準法)(グレード :不燃)
輻射量:50.0kW/m
2 (ヒータ温度763.3℃)
排気流量:0.024m
3 /sec(排気温度28.2℃、排気圧力93. 954Pa)
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試験結果:
図6に1.発熱速度―時間曲線、2.総発熱量―時間曲線を示す。なお3で 示す直線は酸素ベースラインである。
開始630秒で着火し、750秒で消火した。
14.9分で総発熱量が8MJを超えた。
試験験後のサンプルCの重量は137.0gであった。
また、外形の変化も無く、割れ、ひび、反り等も確認されなかった。
このようにサンプルCの試験結果から、本発明の不燃性ボード1の一例である不燃性木質ボード1Wは不燃性能が10分間継続するものであり、建設省告示第1401号( 平成12年5月30日) によって定められた準不燃材料に相当する不燃性を有するものであることが確認された。