(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071495
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】太陽熱温水生成システム
(51)【国際特許分類】
F24S 60/30 20180101AFI20230516BHJP
F24S 10/95 20180101ALI20230516BHJP
F24S 80/60 20180101ALI20230516BHJP
【FI】
F24S60/30 010
F24S10/95
F24S80/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184322
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】594055170
【氏名又は名称】北斗制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 清
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ボイラーや凍結防止ヒーター等を省略して構成を簡略化し、大容量化、通年利用ができ、石油や電力を使わない省エネルギー化を促進し合わせてシステム異常検出やメンテナンスに優れた太陽熱温水生成システムを提供する。
【解決手段】水源8より貯水タンク2内に随時給水されて所定水位となるように貯水される貯水部2の貯水を太陽光にさらされると集熱する集熱部4との熱交換によって加熱して温水を生成する太陽熱温水生成システム1において、貯水タンク2とこれに外部接続する配管及び当該配管を開閉する給水バルブ12及び排水バルブ17の周囲が断熱材5で覆われている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源より貯水タンク内に随時給水されて所定水位となるように貯水される貯水部の貯水を太陽光にさらされると集熱する集熱部との熱交換によって加熱して温水を生成する太陽熱温水生成システムであって、
前記貯水部は、
前記貯水タンクの最底部に接続されタンク内の水を排水する排水管及び前記排水管を開閉する排水バルブと、
前記水源から前記貯水タンクに接続され、当該貯水タンク内の上部空間内に給水口が開口する給水管及び前記給水管を開閉する給水バルブと、
前記給水管の給水口近傍に水面高さに応じて前記給水口を開閉して貯水量を所定水位とする定水位弁と、
前記貯水タンクの上部に接続され、外気を給気する給気管と、
前記貯水タンクの上部に前記給気管と対向位置で接続する開閉可能な排気管と、
前記貯水タンクの最底部に前記排水管と対向位置で接続する開閉可能な給排水管と、を備え、
前記貯水タンクとこれに外部接続する配管及び当該配管を開閉する給水バルブ及び排水バルブの周囲が断熱材で覆われていることを特徴とする太陽熱温水生成システム。
【請求項2】
給水管は貯水タンク底部から貯水内を経由して前記貯水タンク内の上部空間内に給水口が開口する請求項1記載の太陽熱温水生成システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の太陽熱温水生成システムを基本ユニットとして、貯水部の貯水タンクに給気管接続部、排水管接続部を有しこれらと対向位置に排気管接続部及び給排水管接続部を備え前記貯水タンクに集熱部が結合された増設ユニットが、前記基本ユニットと同じ高さ位置かそれより高い位置で直列に設置され、前記基本ユニットの給排水管と増設ユニットの排水管接続部が第一連結管で接続され、前記基本ユニットの排気管と前記増設ユニットの給気管接続部が第二連結管で接続されることで複数ユニットの貯水部が連結され、前記増設ユニットの最終ユニットの給排水管接続部及び排気管接続部が閉鎖栓で閉鎖されてなる太陽熱温水生成システム。
【請求項4】
給水バルブと排水バルブを連動させ、ポジションAでは給水バルブが開状態かつ排水バルブが閉状態となり、ポジションBでは双方が閉状態、ポジションCでは給水バルブが閉状態かつ排水バルブが開状態となる3ポジションバルブを設け、貯水タンクの給排水動作を同一の操作レバーで開閉制御する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の太陽熱温水生成システム。
【請求項5】
給気管は貯水タンクの外方下向きに延設され大気に開口する外部給気管が延設されており、前記外部給気管にエアコンプレッサーのエアホースが接続されて前記貯水タンク内に高圧空気が注入され、排水バルブを開放して貯水タンク内に生成された温水が排水管を通じて排水される請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の太陽熱温水生成システム。
【請求項6】
水源より貯水タンク内に随時給水されて所定水位となるように貯水される貯水部と太陽光にさらされるとヒートパイプで集熱する集熱部を備え、前記貯水タンクに設けられた熱拡散部と前記ヒートパイプとの熱交換によって貯水を加熱して温水を生成する太陽熱温水生成システムであって、
前記熱拡散部は前記ヒートパイプが強固に取り付けられて一体化されており、前記ヒートパイプと一体化された前記熱拡散部が前記貯水タンク内壁に外壁面側から固定手段により固定されることを特徴とする太陽熱温水生成システム。
【請求項7】
水源より貯水タンク内に随時給水されて所定水位となるように貯水される貯水部と太陽光にさらされるとヒートパイプで集熱する集熱部を備え、前記貯水タンクに設けられた熱拡散部と前記ヒートパイプとの熱交換によって貯水を加熱して温水を生成する太陽熱温水生成システムであって、
熱拡散部に近接し貯水に接触しないように貯水タンク内壁面より外側位置に電気式の温度センサが設けられ、前記温度センサにより前記熱拡散部の温度を測定することで、前記貯水タンク内の貯水温度あるいはヒートパイプ上端の温度を推定することを特徴とする太陽熱温水生成システム。
【請求項8】
貯水タンクの貯水を完全に排水し、ヒートパイプの集熱する上方部分を遮光部材で遮光し、下方部分を太陽光に露出させて温度センサで熱拡散部の温度を測定することで、ヒートパイプの異常検出が行われる請求項7記載の太陽熱温水生成システム。
【請求項9】
水源より貯水タンク内に随時給水されて所定水位となるように貯水される貯水部の貯水を太陽光にさらされると集熱する集熱部との熱交換によって加熱して温水を生成する太陽熱温水生成システムであって、
インターネット回線または携帯電話回線の通信機能を持った通信端末と前記通信端末に給電する電源部を備えた通信部と、貯水の温度を測定し前記通信端末に入力する温度センサと、を設け、前記通信端末は、所定の周期あるいは時刻ごとに前記温度センサで測定された温度を記憶し、予め設定された装置番号と測定時刻データと測定温度データが外部サーバへ送信されることを特徴とする太陽熱温水生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集熱部の集熱で貯水タンクの貯水を加熱して温水を生成する太陽熱温水生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温水あるいは熱水(約40℃~100℃)は、農業や工業などで広く使われている。例えば食器の殺菌や調理、水稲種子の洗浄、雑草の発芽抑制、医療用機器や食品製造設備の殺菌、そして住宅の給湯や暖房、等様々な分野で利用されている。冷水を温水に加熱する熱源としては、主に化石燃料を燃焼させるボイラーやジュール熱を利用した電気ヒーターが用いられる。一方、近年は化石燃料によらない再生可能エネルギーが見直されている。
【0003】
小規模な家庭用給湯設備などには、発熱体を太陽光で加熱し水と接触させて直接加温し、水に太陽光エネルギーを蓄積する太陽熱温水器が広く用いられてきた。太陽光発電による温水生成効率4%程度に対し最新のヒートパイプ型太陽熱温水器の効率はほぼ50%~60%と言われ太陽光発電の十倍以上にも達する。さらに日照があるときに水に熱エネルギーとして蓄積することから雲による日射量変化や夜間でも影響を受けにくい点が優れている。しかもインバータや発電パネルのような経年劣化もなく長寿命であり生産から廃棄まで含めたエネルギーコストも小さく抑えられる。即ち、太陽熱温水器は、燃料コストゼロ・高効率・ロングライフという特長を備えており、ボイラーや電気ヒーターよりも圧倒的に有利であり普及が期待されている。
【0004】
太陽熱温水器は、太陽光エネルギーを集める集熱部と温水を蓄える貯水タンクとで構成される。従来の太陽熱温水器は、蛇口から温水が排出されると出湯量がフィードバックされ貯水タンクに冷水が補給されるリアルタイム処理システムを構成している。フィードバックループを駆動するために貯水タンクには常時加圧水を供給する必要があり、大気圧より水圧の高い水道水あるいはポンプで加圧した加圧水が用いられる。太陽熱温水器には様々なタイプがあるが、凍結防止方法と集熱部の構造に着目して概要説明する。
【0005】
凍結防止方法について説明する。
図14に凍結防止ヒーターを用いた太陽熱温水器の構成例を示す。水道水は太陽熱温水器51に給水され、加熱された温水はミックスバルブ52に供給され水道水と混合され所定の温度となって給湯用ボイラー53に供給される。給湯用ボイラー53には燃料タンク54が設けられており供給される水温が低い場合は自動的に点火して加熱するようになっている。給湯用ボイラー53から建物55内の浴室や台所の蛇口56に給湯される。蛇口56からの出湯量は太陽熱温水器51にフィードバックされ太陽熱温水器51内は一定水位に制御されるリアルタイム処理が行われており配管には加圧水が常時通水されている。
【0006】
太陽熱温水器51は屋外に配置され、冬季は配管内の水が凍結する可能性がある。そこで配管にはそれぞれ凍結防止ヒーター57が設けられている。凍結防止ヒーター57は気温センサが内蔵されており所定温度以下になると通電され低温発熱する。しかし温水器本体の凍結は防止できないため、凍結する恐れがある厳寒期は運用を停止し、太陽熱温水器51及び配管内の水を抜かなければならない。例えば特許文献1に開示される温水器は、冬季は循環装置内の水を排出する例である。或いは特許文献2に開示されるように、太陽熱温水器51に水道水ではなく不凍液を通水するタイプもある。
【0007】
図15に不凍液を用いる太陽熱温水器の構成例を示す。
図14と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとする。太陽熱温水器51にはポンプ58により加圧された不凍液が供給され、太陽熱温水器51で加熱された不凍液は熱交換器59を通って冷却されたのち再びポンプ58へ戻り循環する。ポンプ58の制御回路は、太陽熱温水器51の不凍液と熱交換器59の温水の二つの水温センサ60を備えており、不凍液のほうが温水より高温のときだけポンプ58が働いて不凍液が循環し、不凍液が温水より低温のときは動作せず熱交換器59内の温水温度が低下しないようになっている。
熱交換器59には水道水が給水され、不凍液により加熱されてミックスバルブ52そして給湯用ボイラー53へと送出され、あとは前述と同様に建物55内の蛇口56に供給される。熱交換器59やミックスバルブ52への給水管は前述同様に凍結防止ヒーター57が必要である。この不凍液を使用するタイプは冬季でも凍結せず一年を通して給湯することができる。
【0008】
次に集熱部の構造について説明する。
一般的に太陽熱温水器は貯水タンクと集熱部で構成される。集熱部の構造は大きく分けると、平面型とヒートパイプ型の二つがある。
図16は、平面型と呼ばれるタイプの構造説明図である。集熱部61は太陽照射面を透明なガラス板62を用いたケース体で構成されており、ケース体内に平面状の発熱体63が敷設されている。また、ケース体内に水道水Wを通水し直接発熱体63と接触させて熱伝導により加熱する。ケース体上方には貯水タンク64が配置され、集熱部61で加熱された水道水Wは対流により上方の貯水タンク64へ移動する。従って、集熱部61の底部に冷たい水道水Wを給水し、貯水タンク64上部から温水HWを排出する形式が多く見られる。
【0009】
一方、
図17は、ヒートパイプ型と呼ばれるタイプの構造説明図である。
図16と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとする。尚、以下の説明では、ボトムヒート方式ヒートパイプを扱い単にヒートパイプという。集熱部61は、内部が真空状態となった二重ガラス管65で覆われており、二重ガラス管65の内壁は熱吸収膜66が塗布されている。二重ガラス管65の中心線と同心状にヒートパイプ67が配置され、ヒートパイプ67は熱吸収膜66とは熱伝導板68にて熱的に結合されて加熱される。
【0010】
ヒートパイプ67の一端(図面上端)は、貯水タンク64内に接続され、熱拡散部69(金属凹部)となっている。熱拡散部69は、ヒートパイプ67がシリコングリスなどを介して熱的に結合されている。熱拡散部69は貯水タンク64の内壁64aに接合され、貯水タンク64内に突設されている。貯水タンク64の底部内には水道水Wが注水されており、熱拡散部69と水道水Wが接触して熱伝導により水道水Wは加熱され貯水タンク64の上部から温水HWが排出される。すなわちヒートパイプ67が集熱部61で太陽光エネルギーを吸収し熱量を移動させ貯水タンク64内の水に放出して加熱する熱サイクルシステムとなっている。ヒートパイプ型は、集熱部61には通水せず貯水タンク64だけに通水する構造であり、給水管と排水管は貯水タンク64に設けられる。通常、貯水タンク64内の水は対流により上方のほうがわずかに高温となるためタンク下方から給水し上方から排水する。集熱部61の外周は真空二重ガラス管で覆われているため断熱性が高く大気への放熱が極めて少ないため平面型と比べて保温性に優れる。従って貯水タンク64内の水温は平面型より高くなり冬季でも80℃以上の熱水の生成が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003-139413号公報
【特許文献2】特開2013-68369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
(1)冬季の凍結防止対策がネックとなり大容量化が困難である
太陽熱温水器は屋外に設置されるため冬期には配管内や温水器内の水が凍結する可能性があり使えないという課題がある。いつ温水器の運用を停止しあるいは運用再開するかの判断は難しく、早春や晩秋においては想定外の気温低下により凍結し漏水する恐れがあり、使用停止期間を長くしたとしても不安感を抱きながら使用することになる。万一凍結して漏水すると発熱体が水冷されなくなり異常加熱して発熱体が破損する二次災害が発生する恐れもある。
【0013】
そこで前述した
図14で示したように凍結防止ヒーター57を設置する凍結防止対策がとられ幾分か不安感は解消されるが、凍結防止ヒーター57では温水器本体の凍結は防止できず寒さの厳しい地域では結局のところ厳冬期を挟んだ半年間程度は使用をあきらめざるを得ず、年間を通しての使用効率が大幅に低下する。また凍結防止ヒーター57を設置する場合、電気工事が追加となり、運用時も電気料金がかかり継続的にランニングコストが発生する。また凍結防止ヒーター57や配線材は直射日光や風雨にさらされるため劣化しやすく漏電や感電の恐れもあり好ましくない。さらに電源がない場所での設置ができなくなり、温水器の設置場所に制約が出る。また、特に大量の温水を必要とする大規模システムの場合は温水器を増設することとなり、その場合は給水及び排水の配管は複雑化し配管長も長くなるため凍結防止ヒーター57の設置は大きな負担となり、大容量システムは実現が困難である。
【0014】
図19に太陽熱温水器70を5台並列接続した例を示す。太陽熱温水器70ごとに給水管71と排水管72が必要であり、それぞれの配管ごとに凍結防止ヒーター57が設置され電源73が必要となる。
図19から明らかなように配管長が長くなり凍結防止ヒーター57も大量に必要になることがわかる。
これとは別に前述した
図15で示した例のように、不凍液を用いる凍結防止方法もある。不凍液を用いる方法は、凍結防止ヒーター57の他に不凍液を加圧するポンプ58と熱交換器59が必要となり大幅なコスト上昇が避けられない。またポンプ58は機械的寿命が比較的短い機器であり、その他にも水温センサや制御回路などの寿命も考慮しなければならず故障の要因が増え寿命の短いシステムになりやすい。さらに熱交換器59内で不凍液が流出した場合は上水道に不凍液が混入し水道全体が汚染されるクロスコネクションが発生する恐れがある。また増設時には、凍結防止ヒーター57だけを用いる方法よりさらにシステムが複雑化しコストは大幅に増加し信頼性は低下し、大容量システムをコンパクトに実現することは困難である。
【0015】
(2)システム複雑化により短寿命化
従来の太陽熱温水器はボイラー等のバックアップ加熱システムとして組み合わされ、さらに出湯量フィードバックループ・リアルタイム処理システムのため構成が複雑化し、大容量化が困難、通年利用困難、水源の他に熱源や電源が必要になる等の課題がある。
【0016】
上述したように従来の温水器は、蛇口からの出湯量フィードバックループを形成しリアルタイム処理するために温水器への給水及び排水は常時加圧水となっている。そのため漏水しやすく配管やタンク等の耐圧性への要求が厳しくなる。またボイラーなどのバックアップ加熱システムが必要で、燃焼装置をはじめ凍結防止ヒーターや加圧ポンプや各種センサや制御回路などが必要とされ、水源の他に電源と熱源が無ければ動作せず、システムは複雑化しコスト高となり故障しやすく、システムとしての堅牢性と寿命は低下する。
太陽陽熱温水器自体は劣化要因がほぼ無く寿命は20年~30年ともいわれており、そのような長期的時間単位で見た場合にボイラーやポンプなどによるシステムの複雑化は寿命を短くする決定的な要因となる。
また、ヒートパイプ式の太陽熱温水器においては、貯水タンクと熱拡散部の接 合が難しく漏水の要因となっており、接合カ所を減らすことが望まれる。
【0017】
(3)空焚き検出困難
従来の太陽光温水器は連続運用しており貯水タンクが空になることはない。そこで集熱部の冷却は貯水による水冷方式を前提としている。そのため万一漏水事故が発生すると空冷となり集熱部が異常高温となる恐れがある。従って貯水がない状態での採光、即ち空焚きは避けなければならない。
空焚きの検出は発熱体の温度を測定することで可能である。しかし発熱体あるいは熱拡散部は貯水中にあるため温度センサに耐水性・耐熱性のある特殊なものを用いなければならず警報装置も必要となるため高価格となり採用しにくかった。また空焚きは集熱器の破損等で発生し上述の連続運用システムでは発生頻度が小さいことからも空焚き検出機能はほとんど省略されている。
しかしながら、一括給水・一括排水するバッジ処理システムでは貯水タンクが空になる状態は頻繁に発生し不注意から空焚きが発生する確率は高く、空焚き検出は必須であり防水性能が要求されない安価な温度検出方法も望まれる。あるいはヒートパイプ式においては空焚き耐量の増加が望まれる。
【0018】
(4)ヒートパイプ方式集熱器の故障検出が困難
ヒートパイプは低圧状態で密閉されており、万一ヒートパイプ内へ空気が侵入すると熱搬送性能がほとんど失われ効率が低下する。また二重ガラス管の内部は真空となっており断熱性を備えているが、空気が侵入すると内管の熱が外管に伝導して放熱し効率が低下する。
これらヒートパイプ及び二重ガラス管の密閉破れの検出は困難であり、これらの不良を検出する製品はほとんど見受けられず、現状では目視でガラス管が大幅に破損したか確認する程度の対策にとどまっている。ヒートパイプはシステム当たり20~30本使用されるため不良品1本あたりの効率低下は3~5%程度であり大きな問題とはならないが長期間使用を前提とした場合、放置することは好ましくなく少なくとも一年に一度は点検することが望ましい。特に大容量化した場合は検査と保守はますます重要となる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、ボイラーや凍結防止ヒーター等を省略して構成を簡略化し、大容量化、通年利用ができ、化石燃料や電力を使わない再生可能エネルギー化を促進し合わせてシステム異常検出やメンテナンスに優れた太陽熱温水生成システムを提供することを目的とする。
また、大容量化して温水を蓄積し、天候に応じて一括して後利用するオープンループ・バッジ処理システムに応用可能な太陽熱温水生成システムを提供することを目的とする。
【0020】
水源より貯水タンク内に随時給水されて所定水位となるように貯水される貯水部の貯水を太陽光にさらされると集熱する集熱部との熱交換によって加熱して温水を生成する太陽熱温水生成システムであって、前記貯水部は、前記貯水タンクの最底部に接続されタンク内の水を排水する排水管及び前記排水管を開閉する排水バルブと、水源から前記貯水タンクに接続され、当該貯水タンク内の上部空間内に給水口が開口する給水管及び前記給水管を開閉する給水バルブと、前記給水管の給水口近傍に水面高さに応じて前記給水口を開閉して貯水量を所定水位とする定水位弁と、前記貯水タンクの上部に接続され、外気を給気する給気管と、前記貯水タンクの上部に前記給気管と対向位置で接続する開閉可能な排気管と、前記貯水タンクの最底部に前記排水管と対向位置で接続する開閉可能な給排水管と、を備え、前記貯水タンクとこれに外部接続する配管及び当該配管を開閉する給水バルブ及び排水バルブの周囲が断熱材で覆われていることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、集熱部による集熱で貯水タンクの水を加熱して温水を生成する簡易な構成であり、凍結防止ヒーターや不凍液を使わず貯水タンク及びこれに接続する配管及び配管を開閉するバルブの周囲を断熱材で覆うだけで凍結防止でき、通年使用が可能となる。また、電気を使わないので感電・漏電の恐れがなく故障もしないうえに、配線工事がなく、凍結防止ヒーターや熱交換器などの部品代もかからない。
また、貯水タンクに設けられた排気管と増設側の貯水タンクの給気管、排水管と増設側の貯水タンクの給水管を直列に配管接続するだけで、貯水タンク容量(例えば200リットル)毎に増減するシステムを構築できるため、大容量化を容易に実現することができる。また、貯水タンクの円滑な給排水が可能となり、省スペース化でき配管の漏水故障なども解消される。
これにより、水源に接続された貯水タンクに貯留する貯水量を常時一定の容量に確保することができ、貯水タンク内に生成した温水の利用が効率良く促進される。
【0022】
給水管は貯水タンク底部から貯水内を経由して前記貯水タンク内の上部空間内に給水口が開口するようになっていてもよい。
これにより、水源に接続する給水管が貯水タンクの貯水内を経由することで温水の加熱により凍結防止でき、止水栓を閉めることで給水管内部は排水され厳冬期においても凍結防止することができる。
【0023】
上述した太陽熱温水生成システムを基本ユニットとして、貯水部の貯水タンクに給気管接続部、排水管接続部を有しこれらと対向位置に排気管接続部及び給排水管接続部を備え前記貯水タンクに集熱部が結合された増設ユニットが、前記基本ユニットと同じ高さ位置かそれより高い位置で直列に設置され、前記基本ユニットの給排水管と増設ユニットの排水管接続部が第一連結管で接続され、前記基本ユニットの排気管と前記増設ユニットの給気管接続部が第二連結管で接続されることで複数ユニットの貯水部が連結され、前記増設ユニットの最終ユニットの給排水管接続部及び排気管接続部が閉鎖栓で閉鎖されていてもよい。
これにより、基本ユニットの給排水管と増設ユニットの排水管接続部を第一連結管で接続し、基本ユニットの排気管と増設ユニットの給気管接続部を第二連結管で接続するだけで、貯水タンクどうしが直列接続され大容量化を実現することができる。
【0024】
給水バルブと排水バルブを連動させ、ポジションAでは給水バルブが開状態かつ排水バルブが閉状態となり、ポジションBでは双方が閉状態、ポジションCでは給水バルブが閉状態かつ排水バルブが開状態となる3ポジションバルブを設け、貯水タンクの給排水動作を同一の操作レバーで開閉制御するようにしてもよい。これにより、給排水を制御する2個のバルブを1個の3ポジションバルブとして操作を一元化したことで誤操作を防止できる。また、操作軸を自在継ぎ手で延長すれば温水器を高所に設置した時も地表面で操作でき危険な高所作業を解消できる。
【0025】
給気管は貯水タンクの外方下向きに延設され大気に開口する外部給気管が延設されており、前記外部給気管にエアコンプレッサーのエアホースが接続されて前記貯水タンク内に高圧空気が注入され、排水バルブを開放して貯水タンク内に生成された温水が排水管を通じて排水されるようにしてもよい。
これにより、貯水タンクで生成された温水を重力落下時より短時間で排水することができ、また貯水タンクの底面より高所に向けて排水することもできる。
【0026】
水源より貯水タンク内に随時給水されて所定水位となるように貯水される貯水部と太陽光にさらされるとヒートパイプで集熱する集熱部を備え、前記貯水タンクに設けられた熱拡散部と前記ヒートパイプとの熱交換によって貯水を加熱して温水を生成する太陽熱温水生成システムであって、熱拡散部はヒートパイプが強固に取り付けられて一体化されており、前記ヒートパイプと一体化された前記熱拡散部が貯水タンク内壁に外壁面側から固定手段により固定されるようにしてもよい。
これにより、熱拡散部とヒートパイプを一体化し貯水タンク外壁面側から取り付けることから、貯水タンクの壁面への熱拡散部接合が不要となり、接合工程が省略でき漏水も発生せず、熱拡散部の脱着も容易で確実に行える。また、貯水タンク内に熱拡散部が突出しないことからタンク内の清掃も容易に行える。
【0027】
水源より貯水タンク内に随時給水されて所定水位となるように貯水される貯水部と太陽光にさらされるとヒートパイプで集熱する集熱部を備え、前記貯水タンクに設けられた熱拡散部と前記ヒートパイプとの熱交換によって貯水を加熱して温水を生成する太陽熱温水生成システムであって、熱拡散部に近接し貯水に接触しないように貯水タンク内壁面より外側位置に電気式の温度センサが設けられ、前記温度センサにより前記熱拡散部の温度を測定することで、貯水タンク内の貯水温度あるいはヒートパイプ上端の温度を推定するようにしてもよい。
これにより、温度センサが貯水に接触することなく貯水温・空焚きを貯水タンク外から検出可能で、貯水による温度センサの故障がなく、また貯水タンク内へ温度センサを取り付ける必要がないことから貯水タンクの漏水を防止できる。
【0028】
また、貯水タンクの貯水を完全に排水し、ヒートパイプの集熱する上方部分を遮光部材で遮光し、下方部分を太陽光に露出させて温度センサで熱拡散部の温度を測定することで、ヒートパイプの異常検出が行われるようにしてもよい。
これにより、貯水タンクの貯水を排水して空焚き状態にして熱拡散部の温度を温度センサにより測定することでヒートパイプの破損を発見でき、システムの信頼性を維持することができる。
【0029】
水源より貯水タンク内に随時給水されて所定水位となるように貯水される貯水部の貯水を太陽光にさらされると集熱する集熱部との熱交換によって加熱して温水を生成する太陽熱温水生成システムであって、インターネット回線または携帯電話回線の通信機能を持った通信端末と前記通信端末に給電する電源部を備えた通信部と、貯水の温度を測定し前記通信端末に入力する温度センサと、を設け、前記通信端末は、所定の周期あるいは時刻ごとに前記温度センサで測定された温度を記憶し、予め設定された装置番号と測定時刻データと測定温度データが外部サーバへ送信されるようにしてもよい。
これにより、貯水温・空焚き情報を無線通信で通信部から外部サーバに送信することができる。さらに外部サーバから携帯端末にメール送信でき、作業者はリアルタイムで貯水温や空焚き警報を知ることができ、温水利用やメンテナンス作業を効率よく行うことができる。また、パーソナルコンピュータで作業管理や蓄積したデータ解析を行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
上述した太陽熱温水生成システムによれば、凍結防止ヒーターや不凍液を使わず断熱材だけで凍結防止でき、通年使用が可能である。電気を使わないので感電・漏電の恐れがなく故障もしない。配線工事がなく、ヒーターや熱交換器などの部品代もかからない。また、電源の無い場所、例えば倉庫屋上や駐車場でも設置できる。また冬季は融雪にも利用でき、さらに災害時の非常水源としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は太陽熱温水生成システムの基本ユニットの構成例である。
【
図2】
図2は基本ユニットに増設ユニットを増設した構成例である。
【
図3】
図3は給気管から高圧空気を注入する説明図である。
【
図4】
図4は搬送タンクに高圧空気を注入する説明図である。
【
図5】
図5は3ポジションバルブの操作説明図である。
【
図9】
図9は熱拡散部をタンク外部へ設ける説明図である。
【
図14】
図14は従来の凍結防止ヒーターシステム構成例である。
【
図19】
図19は従来の5台併置・凍結防止ヒーターシステム構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本実施形態では貯水タンクに上水あるいは中水を一括給水し、太陽熱により一括加熱し、生成された温水を貯水タンクから一括して搬送タンクに注水し、車両にて利用場所へ搬送する用途を想定している。
このような使われ方から、従来の温水器に用いられている「加圧水を駆動源とした出湯量フィードバックによるリアルタイム処理システム」から、「非加圧水によるオープンループ・バッジ処理システム」に置き換えることが可能であり、これにより太陽熱温水生成システムを大幅にシンプル化し高い信頼性を得ることができる。
【0033】
先ず
図1を参照して太陽熱温水生成システムの基本ユニットの構成について説明する。太陽熱温水生成システム1は、貯水タンク2内が所定水位となるように随時給水される貯水部3と、太陽光にさらされる集熱部4が貯水タンク2と結合され、集熱部4による集熱で貯水タンク2内の水を加熱して温水を生成するようになっている。
【0034】
[凍結防止構造]
従来の温水器は冬季の凍結が問題であったから、凍結しない温水器とすれば凍結対策を講じる必要がなくなり通年使用でき稼働率を向上できる。
図1には水平円筒状の貯水タンク2を備えた貯水部3と太陽光に直交する集熱部4から構成される太陽熱温水生成システム1の基本ユニットUの構成を示す。集熱部4の構造には制約はないがここではヒートパイプ方式を想定している。貯水タンク2及びこれに接続する配管及び配管を開閉するバルブの周囲が断熱材5で覆われている。貯水タンク2には水道水が注水され、集熱部4により加熱され温水となる。集熱部4は架台6によって設置面7に所定の傾斜角で固定され、その上方に貯水部3が配置される。
【0035】
まず給水系から説明する。水道水は、地中に埋設され凍結しない水源8から水抜きできる止水栓9を通り流量計10を経由して外部給水管11に給水される。内部給水管13の貯水タンク2近傍に給水バルブ12が設けられ、水道水は内部給水管13にて貯水タンク2内に導かれ、さらに貯水Wの中を上方に延長し先端にフロート14を設けた定水位弁15をへて貯水タンク2内に給水される。定水位弁15はフロート14により開閉され、貯水Wの水位を一定に保つ働きをする。なお流量計10は流量を計測する装置で、流量体積を知ることができあるいは漏水検出も可能である。電磁式であれば給水バルブ12付近の外部給水管11部分に設置することも可能である。
【0036】
次に排水系について説明する。貯水タンク2の底部に排水管16が接続されており、排水管16には貯水タンク2近傍に排水バルブ17が設けられている。排水バルブ17から先には大気に開口する外部排水管18が接続される。
貯水タンク2の排水管16の接続位置と対向する反対側底部位置には、温水器増設時に使用する給排水管19が設けられている。給排水管19は非増設時に閉鎖栓20(キャップ)で閉鎖されている。なお、排水管16を最底部に設けることで自然対流により比較的温度の低い貯水が先に排出されるが、貯水タンク2内の貯水Wの上下温度差は2~4℃との実測データもあり問題にならない温度差である。また排水バルブ17を開放として貯水タンク2内を空にしたうえで、給排水管19の閉鎖栓20を外して高圧洗浄機ノズルを挿入すれば貯水タンク2内の清掃も可能である。
【0037】
次に給気系について説明する。貯水タンク2の上方に給気管21が接続されている。給気管21には外部給気管22が接続されている。外部給気管22は、排水時に外部から高圧空気を注入する。排水時以外は大気開放した状態にあり貯水タンク2から過給水や水蒸気を大気中に放出する。貯水タンク2の給気管21の接続位置と対向する反対側位置には、温水器増設時に使用する排気管23が設けられている。排気管23は、非増設時に閉鎖栓(キャップ)20で閉鎖されている。以上説明したように、貯水タンク2には給水系で1本、排水系で2本、給気系で2本、の合計5本の配管が接続されている。給水バルブ12と排水バルブ17には開閉レバーがあり、手動で操作することでオープンループ制御としている。
【0038】
本発明は、これらの配管・バルブ及び貯水タンク2を断熱材5で覆うことで凍結を防止している。即ち、内部給水管13と排水管16及び給水バルブ12,排水バルブ17は貯水タンク2に近いため温水により加熱され、また外部排水管18と給気管21と外部給気管22には通水せず、さらに止水栓9を閉じれば内部給水管13及び外部給水管11の水は地中に排出され、集熱部4もヒートパイプ方式として通水しない、等の構成により断熱材5だけで凍結を阻止する。
このように、太陽熱温水生成システム1は、凍結防止ヒーターも不凍液も使用しないで凍結防止でき、凍結を気にせず通年使用が可能となり、ヒーター電源や不凍液加圧ポンプ電源等は不要で感電の恐れもなく安全である。また不凍液を通水する熱交換器も使用しないため水道水に不凍液が混入するクロスコネクションのおそれもなく安心して運用できる。
なお通年使用できることから冬季の融雪にも利用可能である。また災害時に断水や停電となってもまとまった量の貯水が確保されており、排水バルブ17を開くだけで利用できることから生存性の高い非常水源となりうる。
【0039】
[大容量化構造]
図2に基本ユニットUに増設ユニットU1を接続した構成例を示す。増設ユニットU1は
図1に示す基本ユニットUと同一部材には同一の符号を付して説明を援用する。増設ユニットU1は、基本ユニットUの構成から内部給水管13及びフロート14を有する定水位弁15、給水バルブ12と排水バルブ17及び外部配管等を省略したものである。増設ユニットU1は、給排水系で2本、吸排気系で2本、の合計4本の配管が接続されている。
【0040】
ユニットの増設は、基本ユニットUの給排水管19と増設ユニットU1の排水管16-1を第一連結管24で接続し、基本ユニットUの排気管23と増設ユニットU1の給気管21-1を第二連結管25で接続することで行われる。増設ユニットU1の給排水管19-1は閉鎖栓20-1で閉鎖され、排気管23-1は閉鎖栓20-1で閉鎖されている。
このように、増設ユニットU1の他に新たに増える部材は両ユニットを連結する第一連結管24及び第二連結管25のみである。第一,第二連結管24,25は、耐熱性があり伸縮性に富んだ材料のパイプとし、例えばポリエチレン管などが好ましい。これにより配管工事を簡素化でき、電蝕や腐食が発生せず、地震や強風などによる変形を吸収して漏水を防止できる。
【0041】
図2から明らかなように増設に際しては短い連結管の追加だけですみ設置スペースを小さくでき、増設ユニットU1のための給排水操作も不要である。また増設ユニットU1は部材が大幅に低減されており凍結防止対策も不要であることから増設コストを抑えられる。尚、増設ユニットU1は、基本ユニットUと同じ高さ位置かそれより高い位置で直列に設置されていることが好ましい。
増設ユニットU1にさらに増設する場合も同様に第一,第二連結管24,25の追加のみで増設でき、貯水タンク容量(例えば200リットル)毎に増減するシステムを構築できるため、大容量化を容易に実現することができる。このように増設性に優れることから、使用条件や設置条件に応じて最適な容量の太陽熱温水生成システム1を構築することが可能である。
【0042】
[高速排水方法]
太陽熱温水生成システム1では貯水タンク2からの排水量フィードバックループは設けないため、作業者が排水量を監視し排水動作を手動で停止しなければならない。そこで排水作業をアクティブに高速化するために高圧空気を用いる。仮に温水をウォーターポンプで加圧排水するとなるとポンプを耐熱構造としなければならず信頼性及びコストに難がある。一方、高圧空気で加圧すればエアコンプレッサーは高温にさらされることがなく信頼性は低下しない。
【0043】
図3にて高速排水システムの構成例を示す。太陽熱温水生成システム1の構成は
図1の基本ユニットUと同様である。外部にエアコンプレッサー26の吐出ホース26a(
図4参照)を外部給気管22とジョイント部26bを介して接続して高圧空気を貯水タンク2内に注入する。高圧空気が貯水タンク2内へ注入されると貯水Wを加圧する。排水バルブ17を開くと排水管16、外部排水管18を通じて重力落下時より短時間で排水され、あるいは貯水タンク最低面より高所へ排水できる。
高圧空気の注入は排水動作時に行う。給水バルブ12は閉状態となっているため外部給水管11を通って水源8へ高圧空気が逆流するクロスコネクションは防止される。エアコンプレッサードレーンやオイルミストが混入しないように高圧空気はエアフィルターを通し清浄空気として注入する。すでに述べたように本システムでは上水あるいは中水の使用を前提としており、貯水Wを飲用せず生活水の水質基準を適用することとすれば上記の高圧空気を問題なく使用できる。
【0044】
また例えば雨水などの中水を使用する場合、砂埃などが混入してもウォーターポンプのような摩耗部分がないことから耐久性を確保できる。なお、エアコンプレッサー26は排気ガスを出さない電動式が好ましく、電源は温水搬送用の車両41のバッテリー41aからとることができる。また常温の大気を扱うことで、温水を加圧するウォーターポンプの使用を避けて信頼性を確保する。またエアコンプレッサー26と外部給気管22の中間に図示しないエアリークテスタを挿入し、給水して所定水位としてから高圧空気を注入し、所定時間エアリーク測定を行えば、配管及び貯水タンク2の空気漏れを検出することができる。
【0045】
[温水の再利用]
太陽熱温水生成システム1で生成された温水は、例えば温水散布が主な用途であり、生成された温水をいったん断熱材で覆われた搬送タンクに移し車両で運搬し、現場で散布するという作業形態となる。
図4に貯水タンク2から搬送タンク27へ温水を移送する構成例を示す。搬送タンク27は、断熱材5で覆われタンク本体27aと、タンク本体27aの最上部に開閉可能に設けられた蓋27bと、タンク本体27aの最下部に排水口27cが設けられている。排水口27cには耐熱性を有する散布ホース28が接続されている。散布ホース28の中間部には排水を開閉する散布バルブ29が設けられている。
【0046】
搬送タンク27の蓋27bにはエアコンプレッサー26の吐出ホース26aがジョイント部26bを介して接続され高圧空気が吐出される。蓋27bには貯水タンク2の外部給気管22の末端と同一形状のジョイント部を設けておく。これにより一台のエアコンプレッサー26により貯水タンク2と搬送タンク27の双方に高圧空気を注入することが可能となる。
これにより貯水タンク2から温水を搬送タンク27へ移すときは、貯水タンク2の外部給気管22に吐出ホース26aのジョイント部26bを介して接続して高圧空気を注入して貯留する温水を加圧して搬送タンク27へ高速排水する。また、搬送タンク27を散布場所に移動して散布するときは搬送タンク27の蓋27bに吐出ホース26aのジョイント部26bを接続して高圧空気を注入して搬送タンク27内の温水を加圧して高速散布することができる。
これらの全工程においてエアコンプレッサー26及び吐出ホース26aは高温水に接触しないので高度な耐熱性は要求されない。またエアコンプレッサー26を共用することでコストを抑え作業性も向上させることができる。また中水使用時もそのまま使用できウォーターポンプを使わないため耐久性も低下しない。
【0047】
[3ポジションバルブ]
太陽熱温水生成システム1の給排水制御は
図1に示すように給水バルブ12と排水バルブ17によって行われる。給水動作は、給水バルブ12を開き、排水バルブ17を閉じることで行われる。所定の水位に達すればフロート14の浮上により定水位弁15が閉じて給水は自動停止する。貯水Wが蒸発して水位が低下すれば、定水位弁15が開放されて自動的に元の水位まで給水される。排水動作は、給水バルブ12を閉じ排水バルブ17を開けることで行われる。貯水Wは排水管16から外部排水管18を通じて外部に排水される。貯水タンク2内が空になれば排水は終了する。
【0048】
給水及び排水の同時停止動作は、給水バルブ12と排水バルブ17を共に閉じることで行われる。これにより給水あるいは排水を任意の水量で停止させることができ、貯水タンク2内の貯水の水温調整あるいは排水の一時停止ができる。また少量を給水した時点で給水バルブ12を停止位置とすれば、少量の貯水を加熱することになり短時間で温水を生成できる。
なお、給水バルブ12と排水バルブ17を同時に開く給排水動作は行わないこととする。これにより水道水を給水しながら排水し続ける水資源の浪費を防止できる。ここで給水バルブ12と排水バルブ17を連動させれば操作レバー一つで制御可能となる。バルブ構造は例えばピストンバルブを用いて二つのバルブを同軸上に配置すれば実現することができる。
【0049】
図5に3ポジションバルブの操作説明図を示す。手動操作レバー30は動作軸30aを中心に180°回転し90°ごとに動作が切り替わる。POSITIONAは給水バルブ12のみが開き給水動作となる。POSITIONBは給水バルブ12と排水バルブ17の双方が閉じ停止動作となる。POSITIONCは排水バルブ17のみが開き排水動作となる。動作切り替えは以上の3通りで双方のバルブが開く給排水動作はできないようになっている。これによりバルブ操作を簡略化し、かつ水道水を給水しながら排水し続ける誤操作を予防できる。
厳冬期の凍結防止対策として、手動操作レバー30をPOSITIONAとして給水バルブ12を開いておき、水源8側に設置された止水栓9を閉じれば水抜きが行われ外部給水管11及び内部給水管13内は止水栓9から定水位弁15まですべて空となる。水抜き作業は貯水タンク2内の貯水Wの有無に関係なく行える。また水抜き時は貯水タンク2内で発生した水蒸気が定水位弁15から逆流するが止水栓9が閉じているため水源8とのクロスコネクションは発生しない。
【0050】
なお、手動操作レバー30の動作軸30aを自在継ぎ手等で延長すれば、高所に貯水タンク2を設置した際も地表面にてバルブ操作を行うことが可能である。合わせて外部排水管18や外部給気管22も延長しておけばすべての作業を地表面で行うことができる。これにより危険な高所作業を解消でき、作業者が温水を頭上から被る火傷事故も予防できる。またバルブの手動操作レバー30あるいは自在継ぎ手等を脱着式として、作業時以外は管理者が取り外し保管すれば、第三者の火傷事故を予防できる。
【0051】
[貯水温度検出及び空焚き検出]
貯水温度の測定は、温度センサを貯水タンク2内に設置すれば可能であるが、電気式センサを用いる場合は貯水タンク2に配線用の貫通穴をあける必要があり、またセンサは温水中に常時投入されることからセンサ部が劣化し漏水・漏電する恐れがある。
一方、ヒートパイプ方式の集熱部4を使用する場合、貯水Wとヒートパイプ上端に設けられる熱拡散部32(
図6参照)の温度はほぼ等しい。そこでヒートパイプ方式の集熱部4に温度センサを取り付ける場合は、熱拡散部32の貯水タンク2の内壁2aから外方に突出する部位(測定点33)に温度センサを取り付けることにする。通常ヒートパイプを数十本使用したユニットがさらに複数連結されるが、本システムでは貯水Wは非加圧の静止状態であることからどのユニットでも水位は等しくまたヒートパイプ31の配置位置による水温も大差ない。従ってすべての熱拡散部32を測定しなくともいずれか1本を測定するだけで本システムの目的には充分な精度で貯水Wの温度を推定できるものとして差し支えない。測定位置に制約はないが太陽熱温水生成システム1(基本ユニットU)左端のヒートパイプ31が排水管16に最も近くここを測定すれば好適である(
図7参照)。
【0052】
ここで
図18を参照してボトムヒート方式のヒートパイプ31の構造を説明しておく。外筒31aは例えば無酸素銅など熱伝導率の高い材質で作られた密閉パイプ形状をしており、低圧状態の内部に作動液31bが封入されている。作動液31bには熱移動効率を高めるため微小球体が混入されていてもよい。太陽熱温水生成システム1で使われるヒートパイプ31は一般的に直線形状をしており、傾斜配置され、傾斜下端の吸熱部31cが加熱されると作動液31b(例えば純水)が外部の熱を吸収し蒸発して気体となり自然対流によりヒートパイプ31の傾斜上端へ移動する。ヒートパイプ31の傾斜上端は、後述するように貯水タンク2の内壁に接合された熱拡散部32(
図6参照)に嵌合され放熱部31dとして動作し、貯水Wにより熱拡散部32が冷却されると作動液31bは凝縮熱を放出して液体となってヒートパイプ31の傾斜下端へ自然落下あるいは毛細管現象により戻る。つまりボトムヒート方式ヒートパイプ31とは傾斜下方の吸熱部31cから傾斜上方の放熱部31dへ熱を伝達する仕組みであり、熱の伝達効率は極めて高く熱伝導率の高い銅の金属棒よりもさらに高効率で熱を伝達できる特徴を備えている。
【0053】
集熱部4の一例として、
図6にボトムヒート型のヒートパイプ31の熱拡散部32の構造を示す。密閉された真空状態の二重ガラス管31eの内管内壁に熱吸収膜31fが塗布され、内ガラス管内に熱伝導板31g(例えばアルミ伝熱フィン)を介してヒートパイプ31が同心配置されている。太陽光にさらされた熱吸収膜31fによる吸熱が熱伝導板31gを介してヒートパイプ31に熱伝導される。複数のヒートパイプ31の一端がそれぞれ熱拡散部32に挿入され、熱拡散部32は貯水タンク2内の貯水Wと接触して加熱する。
【0054】
熱拡散部32は断熱材5で覆われた貯水タンク2の内壁2aに漏水しないように接合されており、ヒートパイプ31の先端が挿入されシリコングリスなど(図示せず)で熱的に結合している。貯水タンク2の熱拡散部32の近傍の断熱材5は、一部を取り外して熱拡散部32が視認可能となる点検口5aが設けられている。点検口5aを開口することで、測定点33が外部から視認できるようになっている。この測定点33の温度を外部から温度センサ34にて検出することで熱拡散部32の温度を知ることができ、この温度測定部位が温度センサ34の好適な取り付け位置である。この位置であれば温度センサ34は貯水Wに触れることなく温度測定でき、温度センサ34は防水をする必要がなくまた給排水時の水による物理的衝撃も受けないため、低価格な簡易型のサーミスタなどを使用でき、また外部から取り付けできるため取り付け作業は容易で、運用中でも高温に注意しながら脱着すれば保守も可能である。
熱拡散部32は、貯水Wと接触しており、熱拡散部32を熱伝導性の優れた銅などで製作すればセンサで測定した温度はほぼ貯水Wと等しくなり貯水温度として扱って差し支えない。また貯水Wが無い場合はヒートパイプ31先端とほぼ同じ温度となり、例えば120℃を超える異常な高温となることから空焚き状態を検出できる。
【0055】
[通信機能]
太陽熱温水生成システム1がバッジシステムとして効率よく稼働するためには貯水温をリアルタイムで知る必要がある。そこで太陽熱温水生成システム1に通信部35を設け、温度センサ34で熱拡散部32の温度を測定し、あるいは貯水タンク2内に温度センサを配置し貯水温を測定し、外部サーバ36に無線通信で、太陽熱温水生成システム1を特定する装置番号と、送信時刻と、測定温度データを送信することとする。さらに外部サーバ36からスマートフォンなどの外部端末37にメールなどで通知することが望ましい。
【0056】
図7は太陽熱温水生成システム1に通信部35を接続したシステム構成例である。貯水タンク2に接合されたヒートパイプ31の熱拡散部32の近傍には、温度センサ34が設けられている。通信部35は、通信端末35aと電源部35bと温度センサ34で構成される。通信端末35aには温度センサ34が接続され、
図6で示した測定点33の温度を測定する。なお、通信端末35aは温度センサ34以外の複数の任意のセンサ出力を入力することもできる。
【0057】
また、通信端末35aはインターネット回線または携帯電話回線を介して外部サーバ36と双方向通信可能に接続されていて、装置番号と測定周期と時刻は後述する外部端末37から予め設定される。また、通信端末35aは電源部35bからの給電にて動作する。電源部35bは通信部35を駆動するDC電源であり、バッテリーあるいは二次電池あるいは小型太陽光発電装置にて充電可能な二次電池などが好適であるが、AC電源からDC電源を作り出してもよい。
外部端末37は外部サーバ36と双方向通信可能に接続されており、専用アプリケーションソフトウェアがインストールされている。専用アプリケーションソフトウェアを起動して太陽熱温水生成システム1から送信されたデータを閲覧できる。また外部サーバ36を介して通信端末35aへ装置番号や測定周期などの設定も行う。外部端末37は、例えば持ち運び可能なスマートフォンなどである。
【0058】
まず通信端末35aは、所定の周期あるいは時刻ごとに温度センサ34で熱拡散部32の温度を測定する。測定後、装置番号と測定時刻データと測定温度データを外部サーバ36へ送信する。外部サーバ36は通信端末35aからのデータを受信したら受信データを記憶し、外部端末37へメールなどの手段により通知する。通知受信者は外部端末37の画面でデータを確認する。これにより作業者が通知受信した場合、貯水Wが所定の温度に到達した太陽熱温水生成システム1の場所をリアルタイムで特定でき、搬送タンク27(
図4参照)を車両に積んでタイムラグなしで受け取りに行くことができる。
【0059】
また通信部35は、通信周期よりも短い周期で温度測定を行い、所定の温度以上を検出した場合は直ちに空焚き警報を外部サーバ36に送信してもよい。外部サーバ36は空焚き警報を受信したら外部端末37へ装置番号と空焚き警報を送信する。これにより受信者が直ちに該当する太陽熱温水生成システム1に出向き対処することができる。
なお、バルブポジションセンサあるいは流量センサなどを追加し、それらのセンサ出力を通信部35に入力し、通信部35は上述の通信時に追加したセンサ等の測定データを追加して送信してもよい。
さらに管理者は外部サーバ36に蓄積されたデータを解析することにより、回収エネルギー量の季節変化や月間作業量などの基礎データを入手できる。
【0060】
[ヒートパイプ検査]
ヒートパイプ方式の集熱部4を用いた太陽熱温水生成システム1において、ヒートパイプ31の密閉が破れヒートパイプ31内に空気が侵入すると、ヒートパイプ31内の気圧が上昇するため作動液31bの沸点が上昇して沸騰しなくなり熱伝達性能が低下し、ヒートパイプ外筒31a自体の熱伝導のみになる。ここでヒートパイプ31の熱伝達率>熱伝導率であるから、複数のヒートパイプ31の先端の熱拡散部32の温度を測定し、大気温度に近い異常低温のものを検出すれば不良と判定することができる。
そこでヒートパイプ31の下端側のみ(概ね20~50%)を日光に晒して加熱し上端の温度を測定すれば、気密が保たれていた場合はヒートパイプ31の熱伝達性により下方とほぼ同じ温度になり、気密が破れていた場合はヒートパイプ外筒31aの熱伝導性だけとなり放熱により上端は下端より低い温度となる。
【0061】
一方、ヒートパイプ31の下端側の温度は二重ガラス管で覆われているため測定できないが、上端の温度は熱拡散部32で測定可能である。但し空焚き状態でないと、熱拡散部32の温度は貯水温度となりすべての熱拡散部32の温度は等しくなるため不良品を検出できないので空焚き状態とすることが必要である。このようにヒートパイプ31の上端のみの温度を測定した場合、ヒートパイプ31は数十本が同一条件で動作していることから、それぞれの上端の温度は概ね等しく、気密が破れたヒートパイプ31だけは大きく温度が低下することになる。従って複数のヒートパイプ31の上端温度を比較すれば不良品を検出できることになる。
【0062】
そこで貯水タンク2の貯水Wを完全に排水して、ヒートパイプ31の集熱する上方部分約50~80%を遮光部材38(
図8参照)で遮光し、下方部分約20~50%を太陽光に露出させ、空焚きする。すると気密の破れたヒートパイプ31だけは外筒31aの熱伝導のみとなるため、隣接するヒートパイプ31より低温となる。従って一個一個ヒートパイプ31上端の温度を測定し、異常に低温のものを検出すれば気密の破れたヒートパイプ31を発見できる。日射が強ければ空焚き時間10~20分程度で数十℃以上の温度差が現れるので容易に検出できる。
【0063】
図8はヒートパイプ31の下方に日光を当てる説明図である。貯水タンク2とヒートパイプ31は熱拡散部32により熱的に結合されている。なお断熱材5で覆われた貯水タンク2の点検口5aは測定時開放しておく。ヒートパイプ31の下方のみが加熱され、正常品はヒートパイプ31の上端まで熱伝達されて高温となり、密閉が破れたヒートパイプ31はヒートパイプ外筒31aの熱伝導だけで熱が伝わりガラス管等に放熱するためヒートパイプ31の上端は下端より低温となる。従来、ヒートパイプ31の不良は検出しにくく放置されていたが、本案によれば容易に不良品を検出できヒートパイプ31の信頼性を担保できる。以上、本案によれば従来見つけにくかった集熱部4の不良を検出可能となり、安全性と長期信頼性の高いシステムを構築可能となる。
【0064】
[熱拡散部の取付構造]
図17に示すヒートパイプ方式の集熱部61を用いた太陽熱温水生成システムにおいては、熱拡散部69を貯水タンク64の内壁64aに垂直に穴をあけ円筒状の熱拡散部69の先端を貯水タンク64内に突出させ貯水に熱を伝導させる構造となっている。熱拡散部69と貯水タンク64の内壁64aは溶接やろう付けなどにより漏水を防ぐ工法が使われるが、異種金属の接合、あるいは円筒状薄板と肉厚部材、といった特有の条件から、熟練を要する難しい作業で効率と信頼性が低下しがちである。また集熱部61は破損時に交換する必要があるため、熱拡散部69とヒートパイプ67は緩く嵌合しなければならず隙間があり導熱性シリコングリスなどを充填している。そのため熱伝導率が低下するという課題もある。
【0065】
そこで、
図9に示すように、予めヒートパイプ31には熱拡散部32を強固に取り付け一体化しておく。貯水タンク2の内壁2aに穴をあけず、金属筐体状に形成された熱拡散部32を貯水タンク2の内壁2aに沿って設けられた装着部2bにおいて接触させることとする。つまり熱拡散部32を貯水Wに接触させて加熱するのではなく、熱拡散部32により貯水タンク2の内壁2aを加熱し、内壁2aにより貯水Wを加熱する。貯水タンク2の壁面に直交する穴をあけないことから漏水不良は発生しない。
この構造では、貯水タンク2の内壁2aを介して熱伝達が行われることから、貯水タンク2の内壁2aの熱伝導率が高いことが求められる。一般的に貯水タンク2の内壁2aはステンレスなどが使われることが多く熱伝導率は劣ることから、貯水タンク2の内壁2aの底面の形状を平面形状としまた熱拡散部32を直方体状として、熱拡散部32との接触面積を拡大すること及び機械的に強固に接触させることで熱伝達率を改善する。
【0066】
熱拡散部32の材質は従来と同じく熱伝導率の高い銅などが望ましい。ステンレスと銅とで線膨張係数はステンレス17.3ppm/℃、銅17.7ppm/℃とほぼ等しく熱サイクルの機械的歪は問題にならない。ヒートパイプ31と熱拡散部32の結合は、焼き嵌めなどによる締結などにより強固に行い一体化させて熱伝導性を上げる。熱拡散部32を貯水タンク2に固定すれば集熱部4も固定される。熱拡散部32の固定は、熱拡散部32を貯水タンク2の内壁底面(装着部2b)に沿わせて位置決めし、貯水タンク2の外壁側からボルト39(固定手段)などを締結することで行われる。熱拡散部32の脱着は容易でしかもボルト39にて強固に固定するので確実に取り付けができ熱伝達率も高くなる。
また、
図17に示すように従来は熱拡散部69と貯水タンク64の内壁64aとの接合に溶接やろう付けなどの工法が使われ、異種金属の接合あるいは円筒状薄板と肉厚部材の接合といった熟練を要する難しい作業が必要であったがこれらの作業が解消され効率と信頼性が向上する。
【0067】
断熱材5にはボルト締結作業用に開閉可能な点検口5bを適宜設けることが好ましい。なお貯水タンク2は架台6に固定されており、集熱部4のガラス管部分は上記ボルト39で熱拡散部32を固定した後、架台6にシリコンラバーなどを介して固定し、ヒートパイプ31にはストレスがかからないようにすることが望ましい。
熱拡散部32は貯水タンク2の内壁2aと熱的に結合しているため熱容量が大きく、加熱時間は遅れがやや大きくなるが実用上問題となるほどではなく、一方空焚きに対する耐量は増大するためヒートパイプ31が過熱あるいは破損しにくくなる。
また熱拡散部32は、従来は貯水タンク2のほぼ中央部に位置していたが本案によれば最底部に配置できるため貯水Wが少量となっても効率よく加熱される。さらに貯水タンク2の内部には熱拡散部32の突出がなくなり平坦となることから貯水タンク2内の清掃が容易となり、汚れがたまりやすい雨水など中水利用への可能性も開けてくる。
【実施例0068】
以下に太陽熱温水生成システム1を用いて生成した温水を蓄積し、天候に応じて一括して後利用するオープンループ・バッジ処理システムの具体的な実施例について説明する。
【0069】
[温水散布システム例]
図10A,Bは温水を道路等に散布するシステムの構成例である。
図10Aは温水生成場所の実施例である。太陽熱温水生成システム1は倉庫40の屋上に設置されている。水源8から外部給水管11を経由して水道水が給水され太陽熱温水生成システム1で数時間加熱後、断熱された搬送タンク27の蓋27bを開放して外部排水管18を搬送タンク27内に挿入し、太陽熱温水生成システム1で生成された温水を搬送タンク27に注水する。なお散布ホース28の散布バルブ29は閉じておく。
【0070】
このとき、車両41のバッテリー41aで駆動されるエアコンプレッサー26により高圧空気が吐出ホース26aを介して外部給気管22に供給するのが好ましい。高圧空気により貯水タンク2内の貯水Wは加圧され高速で外部排水管18を介して搬送タンク27内へ排水されて作業時間が短縮するからである。温水を搬送タンク27に移し終わったら太陽熱温水生成システム1へ給水を開始する。貯水タンク2への給水は水源8より外部給水管11を通じて行われ、フロート14の浮上により定水位弁15が自動的に閉じるまで行われる。よって、搬送タンク27を搭載した車両41は、給水終了を待つことなく直ちにその場を離れて散布場所へ移動することができる。
【0071】
図10Bは温水散布場所の実施例である。散布場所まで、車両41を移動させた後、停車あるいは徐行させ、散布ホース28で温水を適宜道路へ散布する。その際、エアコンプレッサー26を動作させ高圧空気を吐出ホース26aを介して搬送タンク27内に注入してもよい。高圧空気により温水が加圧され散布ホース28の噴射圧力が増加し作業時間を短縮できる。
【0072】
[倉庫屋上設置例]
図11は、複数併設された倉庫40の屋上に太陽熱温水生成システム1を設置した例である。太陽熱温水生成システム1は、基本ユニットUに対して増設ユニットU1を4台直列に連ねて合計5台設けられている。基本ユニットUに対する増設ユニットU1の増設構造は、
図2と同様である。水源8から外部給水管11を経由して水道水が給水され、太陽熱温水生成システム1で加熱されると通信部35から装置番号と水温データが外部サーバ36に送信され、外部サーバ36から外部端末37にメールが送信される。作業者はメールを受信すると車両41で太陽熱温水生成システム1の設置場所へ行き、温水を車両41の搬送タンク27(図示せず)に移す。排水操作は手動操作レバー30(
図5参照)により行い、車両に搭載したエアコンプレッサー26(図示せず)の高圧空気を外部給気管22に注入し、外部排水管18から温水を排水し車両に搭載した搬送タンク27(図示せず)に注水する。貯水タンク2は1台で例えば200リットルの容量を持ち、5台で1000リットルの温水を生成することができる。
【0073】
搬送タンク27へ注水が完了したら手動操作レバー30を切り替え、太陽熱温水生成システム1へ給水を開始する。貯水タンク2への給水は水源8より外部給水管11を通じて行われ、フロート14の浮上により定水位弁15が自動的に閉じるまで行われる。よって、搬送タンク27を搭載した車両41は、給水終了まで待つことなく直ちにその場を離れて散布場所へ移動することができる。なお水道蛇口42は、外部給水管11に接続され太陽熱温水生成システム1のヒートパイプ31を清掃あるいは融雪するためのもので必要に応じて使用する。
【0074】
[カーポート屋上設置例]
図12はカーポート43の屋上に太陽熱温水生成システム1を設置した例である。太陽熱温水生成システム1は、基本ユニットUに対して増設ユニットU1を4台直列に連ねて合計5台設けられている。基本ユニットUに対する増設ユニットU1の増設構造は、
図2と同様である。
図11と同一部材には同一の符号を付して説明を援用するものとする。
【0075】
[花壇設置例]
図13は花壇44の上方に支持台45を設けて太陽熱温水生成システム1を設置した例である。太陽熱温水生成システム1は、基本ユニットUに対して増設ユニットU1を2台直列に連ねて合計3台設けられている。基本ユニットUに対する増設ユニットU1の増設構造は、
図2と同様である。
図11と同一部材には同一の符号を付して説明を援用するものとする。
地面に柱を立てて支持板を支持した上に太陽熱温水生成システム1を設置した例で、条件によっては防護フェンスが必要となる可能性がある。駐車場や空き地に設置する場合も水源と日射さえあれば本例と同様に設置することができる。
【0076】
尚、上述した太陽熱温水生成システム1では、集熱部4の構成としてヒートパイプ方式を採用したが、これに限定されるものではなく、例えば
図16に示す平面型と呼ばれるタイプの構造であってもよい。集熱部の上部に貯水部が接続され、貯水部に給水された水が集熱部に流れ込み、太陽熱で温められて貯水部に戻る自然循環式や集熱部で加熱されたお湯が貯水タンクの水の温度を間接的に上昇させる間接加熱形式などにも適用することができる。
また、上述した太陽熱温水生成システム1で生成された温水は、搬送タンク27に移し替えて散布する場合について説明したが、住宅等に配管接続して給湯用あるいは暖房用の温水を供給するようにしてもよい。
1 太陽熱温水生成システム U 基本ユニット U1 増設ユニット 2 貯水タンク 2a 内壁 2b 装着部 3 貯水部 4 集熱部 5 断熱材 5a,5b 点検口 6 架台 7 設置面 8 水源 9 止水栓 10 流量計 11 外部給水管 12 給水バルブ 13 内部給水管 14 フロート 15 定水位弁 W 貯水 16,16-1 排水管 17 排水バルブ 18 外部排水管 19,19-1 給排水管 20,20-1 閉鎖栓 21,21-1 給気管 22 外部給気管 23,23-1 排気管 24 第一連結管 25 第二連結管 26 エアコンプレッサー 26a 吐出ホース 26b ジョイント部 27 搬送タンク 27a タンク本体 27b 蓋 27c 排水口 28 散布ホース 29 散布バルブ 30 手動操作レバー 30a 動作軸 31 ヒートパイプ 31a 外筒 31b 作動液 31c 吸熱部 31d 放熱部 31e 二重ガラス管 31f 熱吸収膜 31g 熱伝導板 32 熱拡散部 32a 凹部 33 測定点 34 温度センサ 35 通信部 36 外部サーバ 37 外部端末 38 遮光部材 39 ボルト 40 倉庫 41 車両 41a バッテリー 42 水道蛇口 43 カーポート 44 花壇 45 支持台