(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071523
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】化合物、組成物、方法、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 405/00 20060101AFI20230516BHJP
C07D 307/935 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C07C405/00 503M
C07C405/00 503T
C07D307/935 CSP
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184365
(22)【出願日】2021-11-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】521496272
【氏名又は名称】エルデシエロ プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ERDECIELO PTE. LTD.
【住所又は居所原語表記】SINGAPORE, #05-07, TELOK AYER STREET, 137
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】ビムチャラン マイティ
【テーマコード(参考)】
4C037
4H006
【Fターム(参考)】
4C037VA02
4C037VA04
4C037VA34
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006UE52
(57)【要約】 (修正有)
【課題】人を含む哺乳動物の毛髪の成長を促進させる新規な化合物を提供する。
【解決手段】化学式(i)で表される化合物。
(式中、平行な破線と実線で示した結合は、単結合、二重結合を表し、R
1及びR
2は、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6~8のアリール基等を表し、R
3は、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、又は炭素数6~8のアリール基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(i):
【化1】
[式中、
平行な破線と実線で示した結合は、単結合、又はシス配置もしくはトランス配置をとることができる二重結合を表し、
R
1及びR
2は、それぞれ、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6~8のアリール基、又はR
4-C(=O)-を表し、R
4は炭素数1~6のアルキル基であり、
R
3は、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、又は炭素数6~8のアリール基を表す。]
で表される化合物。
【請求項2】
化学式(vi):
【化2】
又は化学式(vii):
【化3】
で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
哺乳動物の毛髪の成長を促進する、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の化合物又はその塩を含有する組成物。
【請求項5】
上記化合物又はその塩の含有量が0.0005~5.0質量%である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ビタミン類を含有し、
ビタミン類の含有量が0.01~6.0質量%である、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項4~6のいずれかに記載の組成物を哺乳動物の皮膚に適用する方法。
【請求項8】
化学式(ii):
【化4】
[式中、
R
1及びR
2は、それぞれ、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6~8のアリール基、又はR
4-C(=O)-を表し、R
4は炭素数1~6のアルキル基であり、
R
3は、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、又は炭素数6~8のアリール基を表す。]
で表される化合物を製造する方法であって、
化学式(ix):
【化5】
[式中、
Xはヒドロキシル保護基を表す。]
で表される化合物と、化学式(x):
【化6】
[式中、
Yは脱離基を表す。]
で表される化合物を縮合することで、
化学式(xi):
【化7】
[式中、
Xはヒドロキシル保護基を表す。]
で表される化合物を製造する工程を有する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、組成物、方法、及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の毛髪の成長を促進する効果を有する化合物として、ビマトプロスト(特許文献1参照)、ミノキシジルなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の少なくとも1つの目的は、新規な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記目的は、
[1]化学式(i):
【化1】
[式中、平行な破線と実線で示した結合は、単結合、又はシス配置もしくはトランス配置をとることができる二重結合を表し、R
1及びR
2は、それぞれ、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6~8のアリール基、又はR
4-C(=O)-を表し、R
4は炭素数1~6のアルキル基であり、R
3は、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、又は炭素数6~8のアリール基を表す。]で表される化合物;
[2]化学式(vi):
【化2】
又は化学式(vii):
【化3】
で表される、[1]に記載の化合物;
[3]哺乳動物の毛髪の成長を促進する、[1]又は[2]に記載の化合物;
[4][1]~[3]のいずれかに記載の化合物又はその塩を含有する組成物;
[5]上記化合物又はその塩の含有量が0.0005~5.0質量%である、[4]に記載の組成物;
[6]ビタミン類を含有し、ビタミン類の含有量が0.01~6.0質量%である、[4]又は[5]に記載の組成物;
[7][4]~[6]のいずれかに記載の組成物を哺乳動物の皮膚に適用する方法;
[8]化学式(ii):
【化4】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6~8のアリール基、又はR
4-C(=O)-を表し、R
4は炭素数1~6のアルキル基であり、R
3は、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、又は炭素数6~8のアリール基を表す。]で表される化合物を製造する方法であって、化学式(ix):
【化5】
[式中、Xはヒドロキシル保護基を表す。]で表される化合物と、化学式(x):
【化6】
[式中、Yは脱離基を表す。]で表される化合物を縮合することで、化学式(xi):
【化7】
[式中、Xはヒドロキシル保護基を表す。]で表される化合物を製造する工程を有する製造方法;
により達成することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、新規な化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について説明をするが、本発明の趣旨に反しない限り、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0008】
(化合物)
本発明の化合物は、化学式(i):
【化8】
で表される化合物(i)である。
【0009】
化学式(i)中の、平行な破線と実線で示した結合は、単結合、又はシス配置もしくはトランス配置をとることができる二重結合を表す。
【0010】
また、R1及びR2は、それぞれ、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6~8のアリール基、又はR4-C(=O)-を表し、R4は炭素数1~6のアルキル基である。R1及びR2は、同一のものでも異なったものでもよい。
【0011】
さらに、R3は、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、又は炭素数6~8のアリール基を表す。
【0012】
化合物(i)のR1~R4に採用される炭素数1~6のアルキル基は、直鎖状でも分岐構造を有していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。また、アルキル基中の水素原子の一部が水素原子以外の他の原子や置換基で置換されていてもよい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。R1~R4に採用される炭素数1~6のアルキル基は、それぞれ同一のものでも異なったものでもよい。
【0013】
R1~R4に採用されるアルキル基の炭素数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。また、R1~R4に採用されるアルキル基の炭素数は、6以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0014】
化合物(i)のR1~R3に採用される炭素数3~8のシクロアルキル基は、非芳香族環状形態であれば、単環でも多環でもよく、不飽和結合を有していてもよい。また、シクロアルキル基中の水素原子の一部が水素原子以外の他の原子や置換基で置換されていてもよい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。R1~R3に採用される炭素数3~8のシクロアルキル基は、それぞれ同一のものでも異なったものでもよい。
【0015】
R1~R3に採用されるシクロアルキル基の炭素数は、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。また、R1~R3に採用されるシクロアルキル基の炭素数は、8以下が好ましく、6以下がより好ましい。
【0016】
化合物(i)のR1~R3に採用される炭素数6~8のアリール基は、芳香族置換基を指す。また、アリール基中の水素原子の一部が水素原子以外の他の原子や置換基で置換されていてもよい。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基などが挙げられる。
【0017】
R1~R3に採用されるアリール基の炭素数は、6以上が好ましい。また、R1~R3に採用されるアリール基の炭素数は、8以下が好ましく、7以下がより好ましい。
【0018】
上記化合物(i)により、新規な化合物を提供することができる。
【0019】
化学式(i)で表される化合物は、化学式(ii):
【化9】
で表される化合物(ii)であってもよい。
【0020】
化学式(ii)中の二重結合は、シス配置又はトランス配置をとることができる。また、R1及びR2は、それぞれ、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6~8のアリール基、又はR4-C(=O)-を表し、R4は炭素数1~6のアルキル基である。R1及びR2は、同一のものでも異なったものでもよい。
【0021】
さらに、R3は、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、又は炭素数6~8のアリール基を表す。
【0022】
化学式(ii)のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基については、上記化合物(i)の記載を必要な範囲で適用できる。
【0023】
また、化学式(ii)で表される化合物は、化学式(iii):
【化10】
で表される化合物(iii)であってもよい。
【0024】
化学式(iii)中の二重結合は、シス配置又はトランス配置をとることができる。また、R3は、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、又は炭素数6~8のアリール基を表す。
【0025】
化学式(iii)のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基については、上記化合物(i)の記載を必要な範囲で適用できる。
【0026】
また、化学式(ii)で表される化合物は、化学式(iv):
【化11】
で表される化合物(iv)であってもよい。
【0027】
化学式(iv)中の二重結合は、シス配置又はトランス配置をとることができる。また、R1及びR2は、それぞれ、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6~8のアリール基、又はR4-C(=O)-を表し、R4は炭素数1~6のアルキル基である。R1及びR2は、同一のものでも異なったものでもよい。
【0028】
化学式(iv)のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基については、上記化合物(i)の記載を必要な範囲で適用できる。
【0029】
また、化学式(ii)で表される化合物は、化学式(v):
【化12】
で表される化合物(v)であってもよい。
【0030】
化学式(v)中の二重結合は、シス配置又はトランス配置をとることができる。また、R1及びR2は、それぞれ、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6~8のアリール基、又はR4-C(=O)-を表し、R4は炭素数1~6のアルキル基である。R1及びR2は、同一のものでも異なったものでもよい。
【0031】
化学式(v)のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基については、上記化合物(i)の記載を必要な範囲で適用できる。
【0032】
さらに、本発明の化合物は、化学式(vi):
【化13】
で表される化合物(vi)であることが好ましい。
【0033】
化学式(vi)中の二重結合は、シス配置又はトランス配置をとることができる。
【0034】
あるいは、本発明の化合物は、化学式(vii):
【化14】
で表される化合物(vii)であることが好ましい。
【0035】
化学式(vii)中の二重結合は、シス配置又はトランス配置をとることができる。
【0036】
また、本発明の化合物は、人を含む哺乳動物の毛髪の成長を促進させることができる。毛髪は、動物の体の表皮に生える毛であれば特に限定されない。毛髪には、例えば、睫毛、頭髪、眉毛、体毛などが含まれる。毛髪の成長とは、例えば、現在生えている毛髪の伸長、現在生えている毛髪の直径の増加、新たな毛髪の発生などを指す。
【0037】
毛髪の成長は、例えば、毛髪に関係する細胞や組織の活性化によって促されてもよい。毛髪に関係する細胞や組織には、例えば、毛母細胞、毛乳頭細胞、毛細血管などが含まれる。また、毛髪に関係する細胞や組織の活性化には、細胞の分化、細胞の増殖、毛細血管における血流量の増加などが含まれる。
【0038】
(組成物)
本発明の組成物は、上記化合物又は薬理学的に許容し得るそれら化合物の塩を含有するものである。
【0039】
上記化合物とは、上記化合物(i)~(vii)のいずれかを指す。本発明の組成物が含有する上記化合物は、化学式(i)で表される化合物であることが好ましい。また、本発明の組成物が含有する上記化合物は、化学式(ii)で表される化合物であることがより好ましい。また、本発明の組成物が含有する上記化合物は、化学式(iii)~(v)のいずれかで表される化合物であることがさらに好ましい。さらに、本発明の組成物が含有する上記化合物は、化学式(vi)又は(vii)で表される化合物であることがとりわけ好ましい。
【0040】
薬理学的に許容し得る塩とは、哺乳動物などへの投与が許容される、塩基又は酸から調製した塩のことを指す。薬理学的に許容し得る塩とは、例えば、本発明の化合物の有するカルボキシル基や水酸基などの酸と、有機塩基や無機塩基等などの塩基から生じる塩があげられる。薬学的に許容し得る塩は、薬学的に許容し得る無機塩基又は有機塩基から、或いは、薬学的に許容し得る無機酸又は有機酸から誘導することができる。
【0041】
薬学的に許容し得る無機塩基から誘導される塩としては、例えば、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などが挙げられる。
【0042】
薬学的に許容される有機塩基から誘導される塩としては、例えば、置換アミン、環式アミン、第一級、第二級及び第三級アミン、具体的には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、メチルグルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、モルホリン、ピペラジン、ピペラジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が挙げられる。
【0043】
薬学的に許容し得る無機酸から誘導される塩としては、例えば、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ化水素酸など)、硝酸、リン酸、スルファミン酸、硫酸などの塩が挙げられる。
【0044】
薬学的に許容し得る有機酸から誘導される塩としては、例えば、脂肪族ヒドロキシル酸(クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、酒石酸など)、脂肪族モノカルボン酸(酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸など)、アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸など)、芳香族カルボン酸(安息香酸、p-クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチシン酸、馬尿酸、トリフェニル酢酸など)、芳香族ヒドロキシル酸(o-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、1-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸、3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸など)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸など)、グルクロン酸、マンデル酸、ムチン酸、ニコチン酸、オロト酸、パモン酸、パントテン酸、スルホン酸(ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、エジシル酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、p-トルエンスルホン酸など)、キシナホ酸などの塩が挙げられる。
【0045】
組成物中の、上記化合物又は薬理学的に許容し得るその塩の含有量は、5.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることがとりわけ好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。また、組成物中の、上記化合物又は薬理学的に許容し得るその塩の含有量は、0.0005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.015質量%以上であることがさらに好ましく、0.02質量%以上であることがとりわけ好ましく、0.025質量%以上であることが特に好ましい。
【0046】
組成物中の、上記化合物又は薬理学的に許容し得るその塩の含有量が上記範囲内にあることで、組成物を哺乳動物に適用した場合に、副作用が生じる危険を抑えつつ、毛髪の成長を促進することができる。
【0047】
また、本発明の組成物は、ビタミン類を含有するものであることが好ましい。
【0048】
ビタミン類とは、ビタミンとして働く有機化合物のことを指し、脂溶性でも水溶性でもよい。ビタミン類には、例えば、ビタミンA、ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12)、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどが含まれる。また、ビタミン類は、前記ビタミン類の誘導体であってもよい。
【0049】
組成物を適用した部位のメラニンの排出を促進し、色素沈着を抑制するためには、本発明の組成物は、ビタミン類として、ビタミンC、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、及び/又はそれらの誘導体を含むことが好ましい。
【0050】
組成物中のビタミン類の含有量は、6.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、4.0質量%以下であることがさらに好ましく、3.0質量%以下であることがとりわけ好ましく、2.0質量%以下であることが特に好ましい。また、組成物中のビタミン類の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、0.8質量%以上であることがとりわけ好ましく、1.0質量%以上であることが特に好ましい。
【0051】
組成物中のビタミン類の含有量が上記範囲内にあることで、組成物を哺乳動物に適用した場合に、副作用が生じる危険を抑えつつ、ビタミン類の効果を得ることができる。
【0052】
本発明の組成物は、上記化合物又は薬理学的に許容し得るその塩やビタミン類以外にも、種々の化合物を含有することができる。本発明の組成物は、例えば、美白成分、非イオン性界面活性剤、安定化剤、賦形剤(緩衝剤、溶剤、pH調整剤、等張化剤など)、収れん剤、香料、柔軟剤、着色剤、保湿剤、噴射剤、紫外線防御剤、酸化防止剤、増粘剤、防腐剤、その他の化粧品に一般的に用いられる添加剤などを含有できる。
【0053】
美白成分としては、例えば、L―システイン、ヒトオリゴペプチド(EGF)、アルブチン、カモミラET、ハイドロキノン、トラネキサム酸、プラセンタエキス、コウジ酸、リノール酸S、ニコチン酸アミド、4―メトキシサリチル酸カリウム塩、マグノリグナン、アデノシン―リン酸ナトリウムOTなどが挙げられる。
【0054】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、スクロース脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0055】
安定化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エデト酸二ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硝酸ナトリウム、アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ステアラート、亜硫酸水素ナトリウム、アルファチオグリセリン、エリソルビン酸、システイン塩酸塩、クエン酸、トコフェロールアセタート、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、大豆レシチン、チオグリコール酸ナトリウム、チオリンゴ酸ナトリウム、天然ビタミンE、トコフェロール、パスチミン酸アスコルビル、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、1,3-ブチレングリコール、没食子酸プロピル、2-メルカプトベンズイミダゾール、オキシキノリン硫酸塩などが挙げられる。
【0056】
緩衝剤としては、例えば、リン酸二水素ナトリウム二水和物、ホウ酸、ホウ砂、クエン酸、ε-アミノカプロン酸などが挙げられる。また、等張化剤としては、例えば、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0057】
本発明の組成物に配合される化合物は、皮膚科学的に許容し得る量で含有される。皮膚科学的に許容し得る量とは、組成物を哺乳動物に適用した場合に、望ましくない毒性やアレルギー反応などの、副作用が生じる危険が少ない量のことを指す。
【0058】
本発明の組成物は、溶媒として、水、アルコール、油などを用いることができる。水は、精製水、温泉水、ハーブ水、海洋深層水などであってもよい。アルコールとしては、例えば、エタノールなどを用いることができる。油としては、例えば、ミネラルオイル、ホホバオイル、オリーブオイル、馬油などを用いることができる。また、本発明の組成物は、溶媒として、これらのものを2つ以上混合したものを用いてもよい。溶媒は、組成物の形態に応じて、適宜選択することができる。
【0059】
組成物中の溶媒の含有量は、98.0質量%以下であることが好ましく、93.0質量%以下であることがより好ましく、90.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、組成物中の溶媒の含有量は、70.0質量%以上であることが好ましく、80.0質量%以上であることがより好ましく、85.0質量%以上であることがさらに好ましい。
【0060】
本発明の組成物の形態は、哺乳動物に適用することができる形態であればよく、特に限定されない。本発明の組成物の形態としては、例えば、液体、粉末、ゲル、ゾル、軟膏、クリーム、フォーム、ローション、フィルム、シャンプー、ペースト、スプレーなどが挙げられる。
【0061】
本発明の組成物を哺乳動物に適用する方法は、特に限定されず、適用する箇所や組成物の形態に応じて適宜設計が可能である。例えば、睫毛の成長を促進するために組成物を適用する場合には、組成物を点眼する、睫毛に塗布するなどの方法を採用することができる。組成物を点眼した場合、組成物が眼球表面に広がって、眼球の周辺の皮膚に付着することで、睫毛の成長が促進される。組成物を点眼する場合には、組成物の形態は液体などであることが好ましい。また、組成物を睫毛に塗布する場合には、組成物の形態は液体やクリームなどであることが好ましい。
【0062】
組成物の1日の適用回数は1回以上が好ましく、2回以上がより好ましい。また、組成物の1日の適用回数は5回以下が好ましく、4回以下がより好ましい。
【0063】
睫毛の成長を促進するために組成物を適用する場合には、組成物の1回の適用量は30μl以上が好ましく、40μl以上がより好ましい。また、睫毛の成長を促進するために組成物を適用する場合には、1日の適用回数は100μl以下が好ましく、150μl以下がより好ましい。
【0064】
本発明の組成物は、組成物の形態や適用する箇所に応じて、適当な容器に封入されることが好ましい。組成物の容器の形態としては、例えば、ボトル、チューブ、アンプル、ピペット、流体ディスペンサーなどが挙げられる。
【0065】
容器の材料は特に限定されず、適宜設計が可能である。容器の材料としては、例えば、樹脂、ガラスなどが挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリビニルクロリド、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリラート、ナイロンなどが利用され得る。
【0066】
(製造方法)
本発明の化合物(ii)は、例えば、以下の反応工程式1:
【化15】
により製造される。
【0067】
反応工程式1中、Xはヒドロキシル保護基を表す。ヒドロキシル保護基は、ヒドロキシル基を保護することができればよく、特に限定されない。例えば、ヒドロキシル保護基には、メチル基、トリチル基、メトキシメチル基、1-エトキシエチル基、メトキシエトキシメチル基、2-テトラヒドロピラニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、アリルオキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基などを採用することができる。安定性の高さの観点から、ヒドロキシル保護基には、tert-ブチルジメチルシリル基を採用することが好ましい。
【0068】
また、反応工程式1中、Y及びZは脱離基を表す。脱離基は、求核剤により置換可能な基のことを指し、縮合反応により脱離するものであればよく、特に限定されない。脱離基は、NaHのような強塩基の存在下、求核剤を反応させることにより脱離してもよい。脱離基には、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホン酸ジメチル、ハロゲン化物(I、Br、F、Clなど)、スルホネート(メシラート、トシラートなど)、硫化物(SCH3など)、エステル、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシベンゾトリアゾールなどを採用することができる。また、求核剤も特に限定されず、例えば、アミン、チオール、アルコール、アニオン種(アルコキシド、アミド、カルボアニオンなど)、グリニヤール試薬などを採用することができる。アルコキシドとしては、例えば、カリウムtert-ブトキシドなどを採用することができる。Y及びZは、同一のものでも異なったものでもよい。
【0069】
また、反応工程式1中、R3は、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、又は炭素数6~8のアリール基を表す。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基については、前記化合物(i)の説明の記載を必要な範囲で適用できる。
【0070】
反応工程式1においては、まず、化学式(viii)で表される化合物(viii)のヒドロキシル基を酸化してアルデヒド基とすることで、化学式(ix)で表される化合物(ix)を得ることができる。酸化反応は、ヒドロキシル基を酸化してアルデヒド基とすることができ、他の官能基に影響を与えない反応であれば特に限定されない。例えば、デスマーチン酸化、二酸化マンガン酸化、レイ・グリフィス酸化、TEMPO酸化、パリック・デーリング酸化などを採用することができる。操作の容易性の観点からは、デスマーチン酸化を採用することが好ましい。
【0071】
次に、化合物(ix)のアルデヒド基と化学式(x)で表される化合物(x)の脱離基Yが反応し、水素と脱離基Yが脱離して、化合物(ix)と化合物(x)が縮合することで、化学式(xi)で表される化合物(xi)を得ることができる。縮合反応は、アルデヒド基と脱離基Yが反応するものであり、他の官能基に影響を与えない反応であれば特に限定されない。例えば、水素化ナトリウム、カリウムtert-ブトキシドなどを用いて縮合させることができる。
【0072】
そして、化合物(xi)のケトン基を還元してヒドロキシル基とすることで、化学式(xii)で表される化合物(xii)を得ることができる。還元反応は、ケトン基を還元してヒドロキシル基とすることができ、他の官能基に影響を与えない反応であれば特に限定されない。例えば、ヒドリド還元、金属還元、接触還元、シラン還元、トリブチルスズ還元、メールワイン・ポンドルフ・バーレー還元、コーリー・バクシ・柴田還元などを採用することができる。操作の容易性の観点からは、コーリー・バクシ・柴田還元を採用することが好ましい。
【0073】
次に、化合物(xii)のエステルを還元してヒドロキシル基とすることで、化学式(xiii)で表される化合物(xiii)を得ることができる。還元反応は、エステルを還元してヒドロキシル基とすることができ、他の官能基に影響を与えない反応であれば特に限定されない。例えば、ヒドリド還元、金属還元、接触還元、シラン還元、トリブチルスズ還元、メールワイン・ポンドルフ・バーレー還元、コーリー・バクシ・柴田還元などを採用することができる。ヒドリド還元には、例えば、水素化ジイソブチルアルミニウムなどを用いることができる。
【0074】
化合物(xiii)のエーテル結合部分を開環して生じた末端のヒドロキシル基と化学式(xiv)で表される化合物(xiv)の脱離基Zを反応させ、化合物(xiii)と化合物(xiv)を縮合することで、化学式(xv)で表される化合物(xv)を得ることができる。開環反応、及び縮合反応は、エーテル結合部分が開環し、ヒドロキシル基と脱離基Zが反応するものであり、他の官能基に影響を与えない反応であれば特に限定されない。例えば、水素化ナトリウム、カリウムtert-ブトキシドなどを用いることができる。
【0075】
そして、化合物(xv)のヒドロキシル保護基を脱離することで、化学式(iii)で表される化合物(iii)を得ることができる。脱保護反応は、ヒドロキシル保護基を脱離することができ、他の官能基に影響を与えない反応であれば特に限定されない。例えば、酸性条件、塩基性条件、酸化条件、還元条件、フッ化物イオン、水素添加などを採用することができる。ヒドロキシル保護基がtert-ブチルジメチルシリル基である場合には、脱保護反応にはフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムを用いることができる。
【0076】
化合物(iii)の五員環に結合したヒドロキシル基の水素をR1及びR2に置換することで、化合物(ii)を得ることができる。置換反応は、五員環に結合したヒドロキシル基の水素をR1及びR2と置換することができ、他の官能基に影響を与えない反応であれば特に限定されない。
【0077】
R1及びR2は、それぞれ、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6~8のアリール基、又はR4-C(=O)-を表し、R4は炭素数1~6のアルキル基である。R1及びR2は、同一のものでも異なったものでもよい。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基については、前記化合物(i)の説明の記載を必要な範囲で適用できる。
【0078】
なお、反応工程式1の出発物質である化合物(viii)は、例えば、以下のような反応工程式2:
【化16】
により製造することができる。
【0079】
まず、化学式(xvi)で表される化合物(xvi)の2つのヒドロキシル基を、ヒドロキシル保護基Xで保護することにより、化学式(xvii)で表される化合物(xvii)を得ることができる。例えば、化合物(xvi)にtert-ブチルジメチルクロロシランを作用させ、ヒドロキシル保護基Xとしてtert-ブチルジメチルシリル基を導入してもよい。
【0080】
そして、化合物(xvii)において、ヒドロキシメチル基の水酸基に導入されたヒドロキシル保護基Xを脱離することで、化合物(viii)を得ることができる。例えば、酢酸により酸性条件下とすることでヒドロキシル保護基Xを脱離してもよい。
【0081】
本発明の化合物(ii)は、以下のような反応工程式3:
【化17】
を含む製造方法によっても製造することができる。
【0082】
反応工程式3を含む製造方法では、化合物(ix)のアルデヒド基を還元してアルケンとすることで、化学式(xviii)で表される化合物(xviii)を得ることができる。アルデヒド基をアルケンとするためには、ウィッティヒ反応、ホーナー・ワズワース・エモンズ反応、ピーターソン・オレフィン化反応、テッベ試薬、ペタシス試薬、ジュリア・リスゴー・オレフィン合成反応などを用いることができる。
【0083】
そして、化合物(xviii)の炭素間二重結合と、化学式(xix)で表される化合物(xix)の炭素間二重結合との間において、メタセシス反応による結合の組み換えが行われ、化学式(xx)で表される化合物(xx)を得ることができる。メタセシス反応には、グラブズ触媒、シュロック触媒などを用いることができる。
【0084】
化合物(xx)と化合物(xiv)を縮合し、ヒドロキシル保護基を脱離することで、化合物(iii)を得ることができる。そして、化合物(iii)の五員環に結合したヒドロキシル基の水素をR1及びR2に置換することで、化合物(ii)を得ることができる。脱保護反応、及び置換反応については、上述の記載を必要な範囲で適用できる。
【0085】
反応工程式1による化合物(ii)の製造方法は、反応工程式3を含む化合物(ii)の製造方法と比べ、製造時間を短縮することができ、かつ、高い収量を得ることができるため、好ましい。
【0086】
また、反応工程式1又は3において、化合物(xiv)の代わりに、脱離基Zと、脱離基Zと結合した炭素を1以上含む他の化合物を用いることで、例えば、以下の化学式(xxi):
【化18】
で表される化合物(xxi)を製造することができる。
【0087】
上記化学式(xxi)中、R5は特に限定されず、任意の構造を採用することができる。例えば、R5は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、又はR4-C(=O)-を表し、R4はアルキル基であることとしてもよい。また、例えば、R5は、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6~8のアリール基、炭素数1~6のカルボキシル基、又はR4-C(=O)-を表し、R4は炭素数1~6のアルキル基であることとしてもよい。
【0088】
化学式(xxi)中の二重結合は、シス配置又はトランス配置をとることができる。また、R1及びR2は、それぞれ、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6~8のアリール基、又はR4-C(=O)-を表し、R4は炭素数1~6のアルキル基である。R1及びR2は、同一のものでも異なったものでもよい。
【0089】
化学式(xxi)のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基については、化合物(i)の記載を必要な範囲で適用できる。
【0090】
なお、反応工程式1~3において出発原料として用いた化合物や、添加される化合物又は試薬は、公知のものを用いるか、公知の方法又は実施例に記載の方法に準じて製造することができる。
【実施例0091】
以下に、実施例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
【0092】
[化合物の製造]
以下、特に断りのない限り、試薬や溶媒は、それ以上精製や乾燥を行わずに使用した。さらに、特に断りのない限り、反応は不活性雰囲気下、室温で行われた。
【0093】
以下の実施例において、NMRによる分析は、400MHzのBRUKER社製の機器により行った。ソフトウェアはTOPSPIN 4.0.7(BRUKER社製)を用いた。スキャン数は32、リラクゼーションディレイは1秒であった。また、溶媒には、CDCl3又はDMSO-d6を用いた。
【0094】
また、以下の実施例において、LCMS法による分析は、ACQUITY UPLC(SQD-2、ESI付き、Waters社製)により行った。カラムはAcquity UPLC BEH C18(2.1mm×50mm、1.7μm)、移動相Aは0.05%ギ酸水溶液、移動相Bは0.05%ギ酸アセトニトリル溶液を用いた。グラジエント(%B)は0/10、0.5/10、1/35、1.5/45、2.3/90、3.2/90、3.6/10、3.8/10であり、流速は0.4ml/分、カラム温度は35℃、希釈剤はアセトニトリルと水であった。また、検出器としてELSDを用いた。
【0095】
以下の実施例において、UPLC法による分析は、ACQUITY UPLC(Waters社製)により行った。カラムはAcquity UPLC BEH C18(2.1mm×100mm、1.7μm)、移動相Aは0.05%トリフルオロ酢酸水溶液、移動相Bは0.05%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液を用いた。グラジエント(%B)は0/10、4/90、6/90、6.1/10であり、流速は0.3ml/分、カラム温度は40℃以下、希釈剤はアセトニトリルと水であった。また、検出器としてELSDを用いた。
【0096】
また、以下の実施例において、分取HPLC法による精製には、カラムとしてX-select phenyl hexyl(250mm×19mm、5μm)を用いた。また、移動相Aは0.1%ギ酸水溶液、移動相Bはアセトニトリル溶液を用いた。グラジエント(T/B%)は0/40、1/40、11/45、11.1/100、13/100、13.1/40、15/40であり、流速は19ml/分、溶媒はアセトニトリル、水、及びテトラヒドロフランであった。
【0097】
さらに、以下の実施例において、シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、combi flash-NEXTGEN 300(Teledyne ISCO社製)を用いた。
【0098】
(実施例1)
以下の反応工程式4:
【化19】
により、化合物(vi)((Z)-7-((1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-((S,E)-3-ヒドロキシ-8-メチルノン-1-エン-1-イル)シクロペンチル)ヘプト-5-エン酸)を製造した。反応工程式4には、以下のステップ1~7の工程が含まれていた。
【0099】
(ステップ1:(3aR,4R,5R,6aS)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-オキソヘキサヒドロ-2H-シクロペンタ[b]フラン-4-カルバルデヒドの製造)
ステップ1:
【化20】
において、化学式(xxii)で表される化合物(xxii)((3aR,4S,5R,6aS)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-4-(ヒドロキシメチル)ヘキサヒドロ-2H-シクロペンタ[b]フラン-2-オン)から、化学式(xxiii)で表される化合物(xxiii)((3aR,4R,5R,6aS)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-オキソヘキサヒドロ-2H-シクロペンタ[b]フラン-4-カルバルデヒド)が製造された。
【0100】
まず、化合物(xxii)5.00g(17.45mmol)をジクロロメタン45mlに溶解し、これにデスマーチンペルヨージナン(DMP)9.50g(34.0mmol)と炭酸水素ナトリウム7.32g(87.25mmol)を加えた。
【0101】
この混合物を0℃から室温で3時間撹拌した。反応の進行はTLC(Rf値は0.6、40%酢酸エチル/ヘキサン)で確認した。反応終了後、混合物をチオ硫酸ナトリウムの飽和水溶液100mlで冷却した。さらに混合物を10分間撹拌した後、混合物をジクロロメタン200mlと塩化アンモニウムの飽和水溶液100mlで希釈した。層を分離し、水層をジクロロメタン100mlで2回抽出した。合わせた有機層を、水100ml、ブライン(塩水)100mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し、減圧下で濃縮して粗反応混合物を得た。
【0102】
得られた粗反応混合物を、10~30体積%の酢酸エチル/ヘキサンを溶離液として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで1回精製し、白色固体の生成物4.50g(15.8mmol)を得た。
【0103】
1H NMRスペクトルから、得られた白色固体は化合物(xxiii)であると推定された。
【0104】
(ステップ7:ジメチル(7-メチル-2-オキソオクチル)ホスホネートの製造)
ステップ7:
【化21】
において、化学式(xxiv)で表される化合物(xxiv)(1-ブロモ-4-メチルペンタン)と、化学式(xxv)で表される化合物(xxv)(ジメチル(2-オキソプロピル)ホスホネート)から、化学式(xxvi)で表される化合物(xxvi)(ジメチル(7-メチル-2-オキソオクチル)ホスホネート)が製造された。
【0105】
まず、化合物(xxv)20.0g(120mmol)をテトラヒドロフラン240mlに溶解し、そこに0℃で水素化ナトリウム6.50g(181mmol、鉱油で60%に希釈)を加えた。この混合物を0℃で30分間撹拌し、これにn-ブチルリチウム73ml(テトラヒドロフランで2.5Mに希釈、181mmol)を加えた。
【0106】
この混合物を0℃で30分撹拌し、そこに化合物(xxiv)19.8g(120mmol)をテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液を加え、室温で2時間撹拌した。反応の進行はTLC(Rf値は0.3、60%酢酸エチル/ヘキサン)で確認した。反応終了後、混合物を塩化アンモニウムの飽和水溶液50mlで冷却した。層を分離し、水層を酢酸エチル200mlで3回抽出した。合わせた有機層を水300ml、ブライン(塩水)200mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で溶媒を除去して粗反応混合物を得た。
【0107】
得られた粗化合物を、40~60体積%の酢酸エチル/ヘキサンを溶離液として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで1回精製し、淡黄色の液体の生成物15.2g(60.8mmol)を得た。
【0108】
1H NMRスペクトルから、得られた淡黄色液体は、化合物(xxvi)と推定された。
【0109】
(ステップ2:(3aR,4R,5R,6aS)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-4-((E)-8-メチル-3-オキソノン-1-エン-1-イル)ヘキサヒドロ-2H-シクロペンタ[b]フラン-2-オンの製造)
ステップ2:
【化22】
において、化合物(xxiii)と、化合物(xxvi)から、化学式(xxvii)で表される化合物(xxvii)((3aR,4R,5R,6aS)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-4-((E)-8-メチル-3-オキソノン-1-エン-1-イル)ヘキサヒドロ-2H-シクロペンタ[b]フラン-2-オン)が製造された。
【0110】
まず、水素化ナトリウム1.90g(47.5mmol、鉱物油で60%に希釈)をテトラヒドロフラン100mlに懸濁し、そこに、0℃で、化合物(xxvi)11.80g(47.2mmol)をテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液を加えた。混合物を0℃で30分間撹拌し、化合物(xxiii)9.00g(31.6mmol)をテトラヒドロフラン50mlに溶解した溶液を加え、0℃で30分間撹拌した。反応の進行はTLC(Rf値は0.6、30%酢酸エチル/ヘキサン)で確認した。反応終了後、混合物を塩化アンモニウムの飽和水溶液100mlで冷却した。
【0111】
層を分離し、水層を酢酸エチル200mlで3回抽出した。合わせた有機層を、水200ml、ブライン(塩水)200mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で溶媒を除去して粗反応混合物を得た。
【0112】
得られた粗化合物を、10~30体積%の酢酸エチル/ヘキサンを溶離液として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで1回精製し、淡黄色の液体の生成物9.00g(22.05mmol)を得た。
【0113】
1H NMRスペクトルから、得られた淡黄色の液体は、化合物(xxvii)と推定された。
【0114】
(ステップ3:(3aR,4R,5R,6aS)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-4-((S,E)-3-ヒドロキシ-8-メチルノン-1-エン-1-イル)ヘキサヒドロ-2H-シクロペンタ[b]フラン-2-オンの製造)
ステップ3:
【化23】
において、化合物(xxvii)から、化学式(xxviii)で表される化合物(xxviii)((3aR,4R,5R,6aS)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-4-((S,E)-3-ヒドロキシ-8-メチルノン-1-エン-1-イル)ヘキサヒドロ-2H-シクロペンタ[b]フラン-2-オン)が製造された。
【0115】
まず、(R)-(-)-2-メチルCBS-オキサザボリジン8.00g(29.4mmol)をテトラヒドロフラン70mlに溶解し、そこに-78℃でジメチルスルフィドボラン57ml(88.2mmol)を加えた。この混合物を-78℃で1時間撹拌し、そこに化合物(xxvii)6.00g(14.7mmol)をテトラヒドロフラン80mlに溶解した溶液を加え、-78℃で2時間撹拌した。反応の進行はTLC(Rf値は0.5、40%酢酸エチル/ヘキサン)で確認した。
【0116】
反応終了後、混合物をメタノール100mlで冷却し、減圧下で濃縮した。粗残渣を水で希釈し、酢酸エチル150mlで3回抽出した。合わせた有機層を水100ml、ブライン(塩水)100mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮し、粗反応混合物を得た。
【0117】
得られた粗化合物を、10~40体積%の酢酸エチル/ヘキサンを溶離液として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで1回精製し、淡黄色の液体の生成物4.30g(10.4mmol)を得た。
【0118】
1H NMRスペクトルから、得られた淡黄色の液体は化合物(xxviii)と推定された。
【0119】
(ステップ4:(3aR,4R,5R,6aS)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-4-((S,E)-3-ヒドロキシ-8-メチルノン-1-エン-1-イル)ヘキサヒドロ-2H-シクロペンタ[b]フラン-2-オールの製造)
ステップ4:
【化24】
において、化合物(xxviii)から、化学式(xxix)で表される化合物(xxix)((3aR,4R,5R,6aS)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-4-((S,E)-3-ヒドロキシ-8-メチルノン-1-エン-1-イル)ヘキサヒドロ-2H-シクロペンタ[b]フラン-2-オール)が製造された。
【0120】
まず、化合物(xxviii)4.30g(10.4mmol)をジクロロメタン25mlに溶解し、これに水素化ジイソブチルアルミニウム33.2ml(33.2mmol、トルエンで1Mに希釈)を-78℃で加えた。この混合物を-78℃で1時間撹拌した。反応の進行はTLC(Rf値は0.4、40%酢酸エチル/ヘキサン)で確認した。
【0121】
反応終了後、混合物を酒石酸カリウムナトリウムの飽和水溶液40mlで冷却した。層を分離し、水層をジクロロメタン100mlで3回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮したところ、黄色の液体の生成物約4.50gが得られ、これをさらに精製することなく次の反応に使用した。
【0122】
LCMS分析の結果、得られた黄色の液体は、化合物(xxix)と推定された。
【0123】
(ステップ5:(Z)-7-((1R,2R,3R,5S)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-ヒドロキシ-2-((S,E)-3-ヒドロキシ-8-メチルノン-1-エン-1-イル)シクロペンチル)ヘプト-5-エン酸の製造)
ステップ5:
【化25】
において、化合物(xxix)と、化学式(xxx)で表される化合物(xxx)((4-カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロマイド)から、化学式(xxxi)で表される化合物(xxxi)((Z)-7-((1R,2R,3R,5S)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-ヒドロキシ-2-((S,E)-3-ヒドロキシ-8-メチルノン-1-エン-1-イル)シクロペンチル)ヘプト-5-エン酸)が製造された。
【0124】
まず、化合物(xxx)24.2g(54.6mmol)をテトラヒドロフラン70mlに溶解し、そこに0℃でカリウムtert-ブトキシド12.14g(109mmol)を加えた。混合物を0℃で1時間撹拌し、これに、化合物(xxix)4.5g(10.9mmol)を無水テトラヒドロフラン40mlに溶解した溶液を、-78℃で加えた。
【0125】
混合物を-78℃で1時間撹拌した。反応の進行はTLC(Rf値は0.5、100%酢酸エチル)で確認した。反応終了後、混合物を塩化アンモニウムの飽和水溶液100mlで冷却し、1N塩酸2mlでpH4に酸性化し、酢酸エチル250mlで2回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮し、粗反応混合物を得た。
【0126】
得られた粗反応混合物を、20~90体積%の酢酸エチル/ヘキサンを溶離液として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで1回精製し、白色固体の生成物3.50g(7.05mmol)を得た。
【0127】
1H NMR及びLCMS分析の結果、得られた白色固体は化合物(xxxi)であると推定された。
【0128】
(ステップ6:(Z)-7-((1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-((S,E)-3-ヒドロキシ-8-メチルノン-1-エン-1-イル)シクロペンチル)ヘプト-5-エン酸の製造)
ステップ6:
【化26】
において、化合物(xxxi)から、化合物(vi)((Z)-7-((1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-((S,E)-3-ヒドロキシ-8-メチルノン-1-エン-1-イル)シクロペンチル)ヘプト-5-エン酸)が製造された。
【0129】
まず、化合物(xxxi)3.50g(7.05mmol)をテトラヒドロフラン20mlに溶解させ、そこにフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム8.0ml(8mmol、テトラヒドロフランで1Mに希釈)を0℃で加えた。この混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行はTLC(Rf値は0.2、100%酢酸エチル)で確認した。反応終了後、混合物を減圧下で濃縮して粗反応混合物を得た。
【0130】
得られた粗反応混合物2.00gを分取HPLCで精製し、黄色の固体の生成物560mg(1.46mmol)を得た。
【0131】
1H NMRおよびLCMS分析の結果、得られた黄色の固体は化合物(vi)であると推定された。
【0132】
(実施例2)
以下の反応工程式5:
【化27】
により、化合物(vii)(イソプロピル(Z)-7-((1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-((S,E)-3-ヒドロキシ-8-メチルノン-1-エン-1-イル)シクロペンチル)ヘプト-5-エノエート)を製造した。反応工程式5にはステップ1~7の工程が含まれていたが、ステップ1~5、及び7は、実施例1のステップ1~5、及び7と同様の工程であった。
【0133】
実施例2においても、実施例1のステップ1~5、及び7と同様の工程を経て、化合物(xxxi)を製造した。
【0134】
(ステップ6:(イソプロピル(Z)-7-((1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-((S,E)-3-ヒドロキシ-8-メチルノン-1-エン-1-イル)シクロペンチル)ヘプト-5-エノエートの製造)
ステップ6:
【化28】
において、化合物(xxxi)から、化合物(vii)(イソプロピル(Z)-7-((1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-((S,E)-3-ヒドロキシ-8-メチルノン-1-エン-1-イル)シクロペンチル)ヘプト-5-エノエート)が製造された。
【0135】
まず、化合物(xxxi)2.00g(4.02mmol)をアセトニトリル10mlに溶解し、これに、1,8-ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)9.0ml(20mmol)をアセトニトリル10mlに溶解した溶液を加えた。
【0136】
この混合物を室温で10分間撹拌し、2-ヨードプロパン5.0ml(12mmol)をアセトニトリル10mlに溶解した溶液を加えた。混合物を室温で3時間撹拌した。反応終了後、混合物を減圧下で濃縮し、酢酸エチル200mlで希釈した。有機層を3%クエン酸水溶液20mlで2回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液20mlで2回、ブライン(塩水)50mlで一回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮して粗反応混合物を得た。
【0137】
得られた粗反応混合物を、20~40体積%の酢酸エチル/ヘキサンを溶離液として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで1回精製し、淡黄色の液体2.00gを得た。
【0138】
得られた淡黄色の液体2.00gをテトラヒドロフラン20mlに溶解し、そこに0℃でフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム8.0ml(8mmol、テトラヒドロフランで1Mに希釈)を加えた。混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行はTLC(Rf値は0.6、50%酢酸エチル/ヘキサン)で確認した。反応終了後、反応混合物を減圧下で濃縮し、粗反応混合物を得た。
【0139】
得られた粗反応混合物1.85gを分取HPLCで精製し、淡黄色の液体400mg(0.94mmol)を得た。
【0140】
1H NMRおよびLCMS分析の結果、得られた淡黄色の液体は、化合物(vii)と推定された。
【0141】
[組成物の調整と評価]
(溶液Aの調整)
水87.736889990質量部、ブチレングリコール5.0030質量部、グリセリン2.0質量部、ピロリジニルジアミノピリミジンオキシド(化粧品ミノキシジル様成分)1.0質量部、3-O-エチルアスコルビン酸1.0質量部、ヒト幹細胞順化培養液0.970質量部、1,2-ヘキサンジオール0.930質量部、アセチルシステイン0.50質量部、フェノキシエタノール0.20質量部、メチルパラベン0.150質量部、リボフラビン0.10質量部、ピリドキシン塩酸塩0.10質量部、ヒドロキシエチルセルロース0.10質量部、ヒアルロン酸ナトリウム0.10質量部、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド0.10質量部、トコフェリルリン酸ナトリウム0.010質量部、ヒト遺伝子組換オリゴペプチド-1(EGF)0.00010質量部、ヒト遺伝子組換ポリペプチド-7(FGF)0.000010質量部、合成ヒト遺伝子組換ポリペプチド-31(KGF) 0.000000010質量部を混合し、溶液Aとした。溶液Aの成分と含有量を表1に示す。
【0142】
(溶液Bの調整)
水89.73990質量部、ブチレングリコール5.0質量部、グリセリン2.0質量部、3-O-エチルアスコルビン酸1.0質量部、1,2-ヘキサンジオール0.90質量部、アセチルシステイン0.50質量部、フェノキシエタノール0.20質量部、メチルパラベン0.150質量部、リボフラビン0.10質量部、ピリドキシン塩酸塩0.10質量部、ヒドロキシエチルセルロース0.10質量部、ヒアルロン酸ナトリウム0.10質量部、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド0.10質量部、トコフェリルリン酸ナトリウム0.010質量部、ヒト遺伝子組換オリゴペプチド-1(EGF)0.00010質量部を混合し、溶液Bとした。溶液Bの成分と含有量を表1に示す。
【0143】
【0144】
(組成物の睫毛の成長効果の評価)
睫毛の成長効果の評価は、組成物をウサギの眼球に点眼し、21日間の睫毛の長さの伸長を評価することで行った。点眼試験を行った時期は、実施例3~8、及び比較例1~2が2021年5月20日~2021年6月10日であり、参考例1~3が2021年9月2日~2021年9月22日であった。
【0145】
それぞれの組成物につき、5体のウサギに対して点眼試験を行った。つまり、点眼試験に供したウサギは、各5体で11グループ、合計55体であった。グループ間でウサギの体重に偏りが生じないよう、ランダムにグループ分けを行った。
【0146】
点眼試験に供したウサギの性別は全てオスであった。点眼試験の期間中、ウサギはステンレス製のケージで個別に飼育された。飼育部屋の換気は1時間に10~15回行われ、飼育中の温度は19.5~22.6℃、湿度は48~65%であった。また、一日のうち、照明の点灯時間は12時間であり、12時間は消灯された。ウサギには、市販の飼料とRO水が与えられた。
【0147】
ウサギには、1日2回、朝と夕方に組成物の点眼が行われた。点眼はウサギの左目に行われ、点眼量は、各回50μlであった。
【0148】
点眼は、ウサギの下まぶたを眼球から静かに引き離した後、左目の結膜嚢内に組成物が入るように行った。その後、組成物が失われるのを防ぐために、約30秒間、まぶたを軽く押さえた。点眼後には、ウサギをそれぞれのケージに戻した。
【0149】
睫毛の長さの測定は、点眼試験の開始前(0日目)、点眼試験の開始後2日目、7日目、14日目、及び21日目に行った。睫毛を測定する際には、ウサギの下まぶたの睫毛のうち、最も大きな中央の睫毛を、目盛り付きのメジャーで測定した。各測定日における睫毛の長さと、点眼試験の開始前(0日目)の睫毛の長さの差分を、睫毛の長さの伸長とした。
【0150】
(実施例3)
生理食塩水に、化合物(vi)を0.03質量部加え、撹拌することで溶解させ、組成物1を得た。
【0151】
組成物1を点眼したグループ(以下、グループ1という)のウサギの睫毛の長さの平均は、0日目が1.08cm、2日目が1.10cm、7日目が1.18cm、14日目が1.22cm、21日目が1.26cmであった。つまり、グループ1のウサギの睫毛は、平均して、2日間で0.02cm、7日間で0.10cm、14日間で0.14cm、21日間で0.18cm伸長した。睫毛の成長効果の評価の結果を、表2に示す。
【0152】
(実施例4)
生理食塩水に、化合物(vii)を0.03質量部加え、撹拌することで溶解させ、組成物2を得た。
【0153】
組成物2を点眼したグループ(以下、グループ2という)のウサギの睫毛の長さの平均は、0日目が1.02cm、2日目が1.06cm、7日目が1.14cm、14日目が1.18cm、21日目が1.24cmであった。つまり、グループ2のウサギの睫毛は、平均して、2日間で0.04cm、7日間で0.12cm、14日間で0.16cm、21日間で0.22cm伸長した。睫毛の成長効果の評価の結果を、表2に示す。
【0154】
(比較例1)
生理食塩水(以下、組成物3という)を点眼したグループ(以下、グループ3という)のウサギの睫毛の長さの平均は、0日目が1.00cm、2日目が1.04cm、7日目が1.06cm、14日目が1.14cm、21日目が1.16cmであった。つまり、グループ3のウサギの睫毛は、平均して、2日間で0.04cm、7日間で0.06cm、14日間で0.14cm、21日間で0.16cm伸長した。睫毛の成長効果の評価の結果を、表2に示す。
【0155】
(実施例5)
溶液Bに、化合物(vi)を0.03質量部加え、撹拌することで溶解させ、組成物4を得た。
【0156】
組成物4を点眼したグループ(以下、グループ4という)のウサギの睫毛の長さの平均は、0日目が1.04cm、2日目が1.08cm、7日目が1.14cm、14日目が1.20cm、21日目が1.26cmであった。つまり、グループ4のウサギの睫毛は、平均して、2日間で0.04cm、7日間で0.10cm、14日間で0.16cm、21日間で0.22cm伸長した。睫毛の成長効果の評価の結果を、表2に示す。
【0157】
(実施例6)
溶液Bに、化合物(vii)を0.03質量部加え、撹拌することで溶解させ、組成物5を得た。
【0158】
組成物5を点眼したグループ(以下、グループ5という)のウサギの睫毛の長さの平均は、0日目が0.96cm、2日目が0.98cm、7日目が1.06cm、14日目が1.12cm、21日目が1.16cmであった。つまり、グループ5のウサギの睫毛は、平均して、2日間で0.02cm、7日間で0.10cm、14日間で0.16cm、21日間で0.20cm伸長した。睫毛の成長効果の評価の結果を、表2に示す。
【0159】
(比較例2)
溶液A(以下、組成物6という)を点眼したグループ(以下、グループ6という)のウサギの睫毛の長さの平均は、0日目が0.98cm、2日目が1.00cm、7日目が1.02cm、14日目が1.10cm、21日目が1.12cmであった。つまり、グループ6のウサギの睫毛は、平均して、2日間で0.02cm、7日間で0.04cm、14日間で0.12cm、21日間で0.14cm伸長した。睫毛の成長効果の評価の結果を、表2に示す。
【0160】
(実施例7)
溶液Aに、化合物(vi)を0.03質量部加え、撹拌することで溶解させ、組成物7を得た。
【0161】
組成物7を点眼したグループ(以下、グループ7という)のウサギの睫毛の長さの平均は、0日目が1.04cm、2日目が1.08cm、7日目が1.12cm、14日目が1.18cm、21日目が1.26cmであった。つまり、グループ7のウサギの睫毛は、平均して、2日間で0.04cm、7日間で0.08cm、14日間で0.14cm、21日間で0.22cm伸長した。睫毛の成長効果の評価の結果を、表2に示す。
【0162】
(実施例8)
溶液Aに、化合物(vii)を0.03質量部加え、撹拌することで溶解させ、組成物8を得た。
【0163】
組成物8を点眼したグループ(以下、グループ8という)のウサギの睫毛の長さの平均は、0日目が1.00cm、2日目が1.00cm、7日目が1.04cm、14日目が1.12cm、21日目が1.16cmであった。つまり、グループ8のウサギの睫毛は、平均して、2日間で0cm、7日間で0.04cm、14日間で0.12cm、21日間で0.16cm伸長した。睫毛の成長効果の評価の結果を、表2に示す。
【0164】
(参考例1)
溶液B(以下、組成物9という)を点眼したグループ(以下、グループ9という)のウサギの睫毛の長さの平均は、0日目が0.892cm、2日目が0.910cm、7日目が0.916cm、14日目が0.924cm、21日目が0.928cmであった。つまり、グループ9のウサギの睫毛は、平均して、2日間で0.018cm、7日間で0.024cm、14日間で0.032cm、21日間で0.036cm伸長した。睫毛の成長効果の評価の結果を、表2に示す。
【0165】
(参考例2)
ルミガン(アラガン社製、0.03%ビマトプロスト、以下、組成物10という)を点眼したグループ(以下、グループ10という)のウサギの睫毛の長さの平均は、0日目が0.826cm、2日目が0.834cm、7日目が0.854cm、14日目が0.862cm、21日目が0.872cmであった。つまり、グループ10のウサギの睫毛は、平均して、2日間で0.008cm、7日間で0.028cm、14日間で0.036cm、21日間で0.046cm伸長した。睫毛の成長効果の評価の結果を、表2に示す。
【0166】
(参考例3)
生理食塩水(以下、組成物11という)を点眼したグループ(以下、グループ11という)のウサギの睫毛の長さの平均は、0日目が0.810cm、2日目が0.818cm、7日目が0.824cm、14日目が0.818cm、21日目が0.846cmであった。つまり、グループ11のウサギの睫毛は、平均して、2日間で0.008cm、7日間で0.014cm、14日間で0.008cm、21日間で0.036cm伸長した。睫毛の成長効果の評価の結果を、表2に示す。
【0167】
【0168】
実施例3及び4と比較例1の睫毛の成長効果の評価の結果から、本発明の化合物(vi)又は(vii)を含む組成物を点眼したウサギの21日間の睫毛の伸長の平均の値は、生理食塩水を点眼したウサギの21日間の睫毛の伸長の平均の値よりも大きいことが確認された。つまり、本発明の化合物(vi)又は(vii)は、ウサギの睫毛の伸長を促進すると考えられた。
【0169】
また、実施例4と比較例1における、各5体のウサギの21日間の睫毛の伸長の値についてt検定を行ったところ、片側p値は0.047であった。つまり、生理食塩水と比較して、本発明の化合物(vii)を含む組成物は、有意にウサギの睫毛の伸長を促進することが確認された。
【0170】
比較例2の組成物に含まれるピロリジニルジアミノピリミジンオキシド(化粧品ミノキシジル様成分)は、毛髪の成長を促進する効果を有することが知られている。実施例5及び6と比較例2の睫毛の成長効果の評価の結果から、本発明の化合物(vi)又は(vii)を含む組成物は、ピロリジニルジアミノピリミジンオキシド(化粧品ミノキシジル様成分)を含む組成物よりもウサギの睫毛の伸長を促進する効果が高いことが確認された。
【0171】
なお、実施例3~8、比較例1~2、並びに参考例1及び3においては、ウサギの眼球に炎症や色素沈着は確認されなかった。
【0172】
参考例2においては、組成物10の点眼後、ウサギの眼球に軽い炎症が生じることが確認された。炎症は、組成物10の点眼後、5~10分程度で治まった。組成物10に含まれるビマトプロストは、毛髪の成長を促進する効果を有するが、炎症を起こす副反応があることが知られている。