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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071558
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】積層バリスタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/102 20060101AFI20230516BHJP
   H01C 17/02 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01C7/102
H01C17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184419
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 優斗
【テーマコード(参考)】
5E032
5E034
【Fターム(参考)】
5E032BA04
5E032BB11
5E032CA02
5E032CC16
5E032DA04
5E034CA06
5E034CB05
5E034CC02
5E034DA07
5E034DB03
5E034DB12
5E034DB17
5E034DC01
5E034DE16
(57)【要約】
【課題】高抵抗層表面におけるマイグレーションの発生を抑制することができる積層バリスタを提供する。
【解決手段】積層バリスタ(1)は、焼結体(11)と、焼結体(11)の内部に設けられた内部電極(12)と、焼結体(11)の少なくとも一部を覆うように設けられた高抵抗層(13)と、高抵抗層(13)の一部を覆うように設けられ、内部電極(12)に電気的に接続された外部電極(14)とを備える。高抵抗層(13)の表面の算術平均粗さが0.06μm以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結体と、
前記焼結体の内部に設けられた内部電極と、
前記焼結体の少なくとも一部を覆うように設けられた高抵抗層と、
前記高抵抗層の一部を覆うように設けられ、前記内部電極に電気的に接続された外部電極とを備え、
前記高抵抗層の表面の算術平均粗さが0.06μm以上である積層バリスタ。
【請求項2】
前記高抵抗層の表面の算術平均粗さが0.9μm以下である請求項1に記載の積層バリスタ。
【請求項3】
前記高抵抗層の平均厚みが、0.01μm以上かつ5μm以下である請求項1又は2に記載の積層バリスタ。
【請求項4】
前記高抵抗層が、厚み1μm超の領域の部分である複数の隆起部を有し、前記隆起部の平均長径が10μm以上かつ50μm以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の積層バリスタ。
【請求項5】
前記複数の隆起部の総面積が、前記高抵抗層の表面の全面積に対して、5%以上かつ30%以下である請求項4に記載の積層バリスタ。
【請求項6】
前記外部電極が、前記高抵抗層の一部を覆うように設けられた一次電極と、前記一次電極の少なくとも一部を覆うように設けられためっき電極とを含み、前記一次電極が銀を主成分とする請求項1から5のいずれか一項に記載の積層バリスタ。
【請求項7】
前記焼結体が、互いに対向する一対の主面、互いに対向する一対の側面、及び互いに対向する一対の端面を有し、
前記内部電極が、前記主面と対向し、
前記外部電極が、前記端面を覆い、
前記側面における前記高抵抗層の表面の算術平均粗さは、前記主面における前記高抵抗層の表面の算術平均粗さよりも大きい請求項1から6のいずれか一項に記載の積層バリスタ。
【請求項8】
前記高抵抗層がSiOを主成分とする請求項1から7のいずれか一項に記載の積層バリスタ。
【請求項9】
互いに対向する一対の主面、互いに対向する一対の側面、及び互いに対向する一対の端面を有する焼結体と、
前記焼結体の内部に設けられ、前記主面と対向する内部電極と、
前記焼結体の少なくとも一部を覆うように設けられた高抵抗層と、
前記端面において、前記高抵抗層の一部を覆うように設けられ、前記内部電極に電気的に接続された外部電極とを備え、
前記側面における前記高抵抗層の表面の算術平均粗さが、前記主面における前記高抵抗層の表面の算術平均粗さよりも大きい積層バリスタ。
【請求項10】
ZnOを主成分として含み、内部に内部電極が設けられた焼結体を準備する第1工程と、
前記焼結体の少なくとも一部を覆うように、高抵抗層を形成する第2工程と、
前記高抵抗層の一部を覆い、前記内部電極の一部と接触するように、一次電極ペーストを塗布する第3工程と、
前記一次電極ペーストから形成された一次電極の少なくとも一部を覆うように、めっき電極を形成する第4工程とを備え、
前記第2工程後の高抵抗層の表面の算術平均粗さが0.06μm以上0.9μm以下である積層バリスタの製造方法。
【請求項11】
前記第1工程後の焼結体の表面の算術平均粗さよりも、前記第2工程後の高抵抗層の表面の算術平均粗さが大きい請求項10に記載の積層バリスタの製造方法。
【請求項12】
前記第2工程が、
複数の前記焼結体を混合攪拌しながら、前記焼結体に対して、前記高抵抗層の前駆体を含む溶液を噴霧する工程と、
前記前駆体が付着した前記焼結体を熱処理することにより、前記高抵抗層を形成する工程とを含む請求項10又は11に記載の積層バリスタの製造方法。
【請求項13】
前記前駆体溶液が、ポリシラザンを含有する請求項12に記載の積層バリスタの製造方法。
【請求項14】
前記第1工程が、
ZnOを主成分として含むセラミックシートを作製する工程と、
前記セラミックシートに内部電極ペーストを塗布する工程と、
前記内部電極ペーストを塗布したセラミックシートと、内部電極ペーストを塗布していない前記セラミックシートとを積層して積層物を得る工程と、
前記積層物を切断し、積層面と切断面とを有する積層体を得る工程と、
前記積層体を焼成し、積層面と切断面とを有する焼結体を得る工程とを含み、
前記焼結体の積層面の算術平均粗さよりも、前記焼結体の切断面の算術平均粗さが大きい請求項10から13のいずれか一項に記載の積層バリスタの製造方法。
【請求項15】
ZnOを主成分として含み、内部に内部電極が設けられた焼結体を準備する第1工程と、
前記焼結体の少なくとも一部を覆うように、高抵抗層を形成する第2工程と、
前記高抵抗層の一部を覆い、前記内部電極の一部と接触するように、一次電極ペーストを塗布する第3工程と、
前記一次電極ペーストから形成された一次電極の少なくとも一部を覆うように、めっき電極を形成する第4工程とを備え、
前記第2工程が、
複数の前記焼結体を混合攪拌しながら、前記焼結体に対して、前記高抵抗層の前駆体を含む溶液を噴霧する工程と、
前記前駆体が付着した前記焼結体を熱処理することにより、前記高抵抗層を形成する工程とを含む積層バリスタの製造方法。
【請求項16】
前記前駆体溶液が、ポリシラザンを含有する請求項15に記載の積層バリスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層バリスタ及び積層バリスタの製造方法に関し、詳しくは、焼結体と内部電極と外部電極とを備える積層バリスタ及びこの積層バリスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器、電子デバイス等を、雷サージ、静電気等による異常電圧から保護し、また、回路に発生するノイズによる電子機器、電子デバイス等の誤作動を防ぐなどの目的で、バリスタが用いられている。
【0003】
特許文献1には、セラミックス素体と、セラミックス素体の少なくとも一部表面に被覆されたガラスコート層と、セラミックス素体の両端部表面上に外部電極とを有するチップ型電子部品が開示されている。特許文献1には、ガラスコート層の厚みを所定値以上とすることで、めっき時において、セラミックス素体表面上へのめっき析出を抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-151805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層バリスタは、前記チップ型電子部品と同様に、通常、ガラスコート層等の高抵抗層と、外部電極としての一次電極、めっき電極等とを有する構造を備えている。
【0006】
従って、積層バリスタは、高抵抗層を設けることにより、めっき析出の抑制は可能である。しかし、特に、Agを主成分とする一次電極を使用していること等に関連して、電圧印可及び湿中下の条件において、高抵抗層表面でマイグレーションが発生する可能性があった。
【0007】
本開示の課題は、高抵抗層表面におけるマイグレーションの発生を抑制することができる積層バリスタ、及び積層バリスタの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る積層バリスタは、焼結体と、前記焼結体の内部に設けられた内部電極と、前記焼結体の少なくとも一部を覆うように設けられた高抵抗層と、前記高抵抗層の一部を覆うように設けられ、前記内部電極に電気的に接続された外部電極とを備える。前記高抵抗層の表面の算術平均粗さが0.06μm以上である。
【0009】
本開示の一態様に係る積層バリスタは、互いに対向する一対の主面、互いに対向する一対の側面、及び互いに対向する一対の端面を有する焼結体と、前記焼結体の内部に設けられ、前記主面と対向する内部電極と、前記焼結体の少なくとも一部を覆うように設けられた高抵抗層と、前記端面において、前記高抵抗層の一部を覆うように設けられ、前記内部電極に電気的に接続された外部電極とを備える。前記側面における前記高抵抗層の表面の算術平均粗さが、前記主面における前記高抵抗層の表面の算術平均粗さよりも大きい。
【0010】
本開示の一態様に係る積層バリスタの製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程とを備える。前記第1工程では、ZnOを主成分として含み、内部に内部電極が設けられた焼結体を準備する。前記第2工程では、前記焼結体の少なくとも一部を覆うように、高抵抗層を形成する。前記第3工程では、前記高抵抗層の一部を覆い、前記内部電極の一部と接触するように、一次電極ペーストを塗布する。前記第4工程では、前記一次電極ペーストから形成された一次電極の少なくとも一部を覆うように、めっき電極を形成する。前記第2工程後の高抵抗層の表面の算術平均粗さが0.06μm以上0.9μm以下である。
【0011】
本開示の一態様に係る積層バリスタの製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程とを備える。前記第1工程では、ZnOを主成分として含み、内部に内部電極が設けられた焼結体を準備する。前記第2工程では、前記焼結体の少なくとも一部を覆うように、高抵抗層を形成する。前記第3工程では、前記高抵抗層の一部を覆い、前記内部電極の一部と接触するように、一次電極ペーストを塗布する。前記第4工程では、前記一次電極ペーストから形成された一次電極の少なくとも一部を覆うように、めっき電極を形成する。前記第2工程が、複数の前記焼結体を混合攪拌しながら、前記焼結体に対して、前記高抵抗層の前駆体を含む溶液を噴霧する工程と、前記前駆体が付着した前記焼結体を熱処理することにより、前記高抵抗層を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、高抵抗層表面におけるマイグレーションの発生を抑制することができる積層バリスタ、及び積層バリスタの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の一実施形態における積層バリスタの概略の断面図である。
図2図2は、同上の積層バリスタの概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.概要
以下、本開示の一実施形態における積層バリスタについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚みそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0015】
本実施形態の積層バリスタ1は、図1に示すように、焼結体11と、内部電極12と、高抵抗層13と、外部電極14とを備える。積層バリスタ1は、高抵抗層13の表面の算術平均粗さ(以下、Raともいう)が0.06μm以上であるという特徴を有している。本明細書において、「表面」とは、他の層等で覆われていない露出している範囲の面をいう。
【0016】
焼結体11の表面のRaの値は、原料、焼成条件を検討することで制御可能であるものの、Raの値によって、バリスタ電圧等の電気特性が変化する。そのため、電気特性とRaとの両方を所望の値に制御することは難しい。しかし、発明者らは、焼結体11の表面上に形成した高抵抗層13の表面のRaの値を制御することで、電気特性とRaとの両方を所望の値に制御することが可能であることを見出した。すなわち、高抵抗層13の表面のRaは、電気特性を確保しつつ、変化させることができる。そして、高抵抗層13の表面のRaを特定値以上とすることで、積層バリスタ1の表面におけるマイグレーションの発生を抑制することができることを見出した。積層バリスタ1が前記構成を備えることで、前記効果を奏する理由については、必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。積層バリスタ1におけるマイグレーションは、外部電極14からのAgイオン等の金属イオンの溶出、移動及び金属の析出を経て発生すると考えられる。これに対し、積層バリスタ1では、高抵抗層13の表面のRaを特定値以上に制御することで、外部電極14間の沿面距離、すなわち外部電極14間の高抵抗層13の表面に沿った経路の距離を増大させ、マイグレーションの発生までに要するイオン等の移動距離を増大させる。積層バリスタ1は、それにより、移動障壁を高めることができ、その結果、高抵抗層13の表面におけるマイグレーションの発生を抑制することができると考えられる。
【0017】
また、発明者らは、本実施形態の積層バリスタ1の構成についてさらに検討を行った結果、高抵抗層13の各面の算術平均粗さを特定関係に制御することによっても、高抵抗層13の表面におけるマイグレーションの発生を抑制することができることを見出した。
【0018】
本実施形態の積層バリスタ1は、図1に示すように、焼結体11と、内部電極12と、高抵抗層13と、外部電極14とを備える。焼結体11は、互いに対向する一対の主面(図1の上面及び下面)、互いに対向する一対の側面、及び互いに対向する一対の端面(図1の右面及び左面)を有する。外部電極14は、端面において、高抵抗層13の一部を覆うように設けられ、内部電極12に電気的に接続されている。積層バリスタ1は、側面における高抵抗層(以下、側面高抵抗層13bともいう)の表面のRaが、主面における高抵抗層(以下、主面高抵抗層13aともいう)の表面のRaよりも大きいという特徴を有している。
【0019】
発明者らは、切断して得た直方体状の個片を焼成して作製した焼結体11に高抵抗層を形成させた場合、主面高抵抗層13aの表面のRaよりも、焼結体11の切断面側である側面高抵抗層13bの表面のRaを大きくすることができることを見出した。側面高抵抗層13bの表面のRaが大きくなることで、積層バリスタ1は、マイグレーションの発生を抑制することができると考えられる。
【0020】
本実施形態の積層バリスタ1の製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程とを備える。第1工程では、ZnOを主成分として含み、内部に内部電極12が設けられた焼結体11を準備する。第2工程では、焼結体11の少なくとも一部を覆うように、高抵抗層13を形成する。第3工程では、高抵抗層13の一部を覆い、内部電極12の一部と接触するように、一次電極ペーストを塗布する。第4工程では、一次電極ペーストから形成された一次電極15の少なくとも一部を覆うように、めっき電極16を形成する。第2工程後の高抵抗層13の表面の算術平均粗さが0.06μm以上0.9μm以下である。
【0021】
本実施形態の積層バリスタ1の製造方法によれば、高抵抗層13の表面のRaを特定範囲とすることができるので、高抵抗層13の表面におけるマイグレーションの発生を抑制することができる積層バリスタ1を製造することができる。
【0022】
また、本実施形態の積層バリスタ1の製造方法は、上述同様の第1~第4工程を備える。第2工程が、複数の焼結体11を混合攪拌しながら、焼結体11に対して、高抵抗層13の前駆体を含む溶液を噴霧する工程と、前駆体が付着した焼結体11を熱処理することにより、高抵抗層13を形成する工程とを含む。
【0023】
このような製造方法によれば、多数の隆起部を有する高抵抗層13を形成させることができるので、高抵抗層13の表面のRaを大きくすることができ、その結果、高抵抗層13の表面におけるマイグレーションの発生を抑制することができる積層バリスタ1を製造することができる。
【0024】
2.詳細
<積層バリスタ>
図1は、本開示の一実施形態における積層バリスタ1の断面図である。積層バリスタ1は、焼結体11と、内部電極12と、高抵抗層13と、外部電極14とを備える。
【0025】
焼結体11は、非直線性抵抗特性を有する半導体セラミックス成分で構成されている。
【0026】
積層バリスタ1には、外部電極14が少なくとも一対設けられていればよい。ここで、一対の外部電極14は、焼結体11の一方の端面に設けられた第1外部電極14Aと、焼結体11の他方の端面に設けられた第2外部電極14Bとを含む。第1外部電極14A及び第2外部電極14Bの間に電圧が印加された場合、第1外部電極14A及び第2外部電極14Bの一方が高電位側の電極となり、第1外部電極14A及び第2外部電極14Bの他方が低電位側の電極となる。
【0027】
図2の積層バリスタ1は、一対の外部電極14が、対向する一対の端面に設けられている。外部電極14の数及び位置はこれに限定されず、例えば側面に一対設けられていてもよく、端面及び側面にそれぞれ一対ずつ設けられていてもよい。
【0028】
内部電極12は、外部電極14の各々に対し、1つ又は複数が電気的に接続されるように設けられていればよい。図1の積層バリスタ1では、内部電極12の数は2である。つまり、内部電極12は、第1内部電極12Aと、第2内部電極12Bとを含み、第1内部電極12Aは第1外部電極14Aに、第2内部電極12Bは第2外部電極14Bにそれぞれ電気的に接続している。
【0029】
少なくとも一対の外部電極14は、電気回路が形成されるプリント配線板に実装される。積層バリスタ1は、例えば電気回路の入力側に接続される。第1外部電極14Aと第2外部電極14Bとの間に所定のしきい値電圧を超える電圧が印加されると、第1外部電極14Aと第2外部電極14Bとの間の電気抵抗が急減し、バリスタ層を介して電流が流れるので、積層バリスタ1の後段の電気回路を保護することができる。
【0030】
[焼結体]
焼結体11を構成する非直線性抵抗特性を有する半導体セラミックス成分は、例えばZnOを主成分とし、副成分としてBi、Co、MnO、Sb、Pr11、Co3、CaCO、Cr等を含む。焼結体11を構成するバリスタ層は、例えばこれらの成分を含むセラミックシートを焼成することにより、ZnO等の主成分が、副成分の一部と固溶焼結し、その粒界に残りの副成分が析出することにより形成される。
【0031】
焼結体11は、より具体的には、前記成分を含むセラミックシートを積層した積層物を、積層面に対し垂直に切断し、その個片を焼成することにより作製される。このようにして作製された焼結体11は、例えば互いに対向する一対の主面、互いに対向する一対の側面、及び互いに対向する一対の端面を有する形状を含む。「主面」とは積層面であり、2種の切断面のうち、面積が大きい方が「側面」であり、面積が小さい方が「端面」である。焼結体11の形状は、例えばこれらの面をそれぞれ2つずつ、合計6つの面を有する直方体である。
【0032】
[内部電極]
内部電極12は、焼結体11の内部に設けられている。内部電極12は、例えばAg、Pd、PdAg、PtAg等を含み、通常、内部電極ペーストを塗布したセラミックシートを積層し、焼成することで形成される。
【0033】
[高抵抗層]
高抵抗層13は、焼結体11の少なくとも一部を覆うように設けられる。高抵抗層13の表面のRa等の表面形状は、後述する高抵抗層13の形成方法、焼結体11の作製方法などを適宜選択することにより、制御可能である。
【0034】
高抵抗層13の表面のRaは、0.06μm以上である。これにより、高抵抗層13の表面におけるマイグレーションの発生を抑制することができる。このRaが前記値より小さいと、外部電極14間の沿面距離が短くなり、マイグレーションが発生しやすくなる。このRaは、0.08μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であることがより好ましく、0.25μm以上であることがさらに好ましい。このRaは、0.9μm以下であることが好ましい。この場合、焼結体11が露出している部分がより減少すると考えられ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる。このRaが前記値を超えると、焼結体11の露出がより増大し、めっき析出が起こりやすくなり、マイグレーションの発生を抑制できない場合がある。また、半田のフラックスが表面に溜まってしまう場合がある。このRaは、0.7μm以下であることがより好ましく、0.4μm以下であることがさらに好ましい。高抵抗層13の表面のRaは、例えばJIS-B0601:(2013)で規定される方法に準拠して測定することができ、具体的には、高精度微細形状測定機サーフコーダ(小坂研究所社製のET4000A)により測定することができる。Raは、他にも、例えば、走査型プローブ顕微鏡や、非接触式のレーバー顕微鏡により測定することもできる。
【0035】
上述のようにして作製された直方体の焼結体11に形成された高抵抗層13の、積層面(主面)のRaは、0.06μm以上0.85μm以下の範囲、切断面(側面及び端面)のRaは、0.11μm以上0.9μm以下の範囲とすることができ、制御可能である。このような積層バリスタ1により、主面高抵抗層13aよりも側面高抵抗層13bの表面のRaを大きくすることができ、その結果、側面におけるイオン等の移動に起因して起こるマイグレーションの発生をより抑制することができる。特に、端面に加えて側面にも外部電極14を有し、端面に設けられた一対の外部電極14の間隔に比べて、端面に設けられた外部電極14と側面に設けられた外部電極との間隔が小さい積層バリスタ1におけるマイグレーションの発生の抑制により効果がある。
【0036】
高抵抗層13は、隆起部を有することが好ましい。「隆起部」とは、高抵抗層13における厚み1μm超の領域の部分である。高抵抗層13が隆起部を有することで、外部電極14間の沿面距離がより長くなり、マイグレーションの発生をより抑制することができる。
【0037】
高抵抗層13が複数の隆起部を有する場合、隆起部の平均長径が10μm以上50μm以下であることが好ましい。隆起部の平均長径を前記範囲とすることで、外部電極14間の沿面距離をより長くすることができ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる。この平均長径は、15μm以上45μm以下であることがより好ましく、20μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。隆起部の「長径」とは、高抵抗層13における厚み1μm超の領域の部分である隆起部の平面視の形状において、最も長い径をいう。「平均長径」とは、複数の隆起部(例えば任意の10点)について測定した長径の算術平均値をいう。隆起部の平均長径は、前記走査型プローブ顕微鏡や、EPMAによる元素マッピング像の観察により測定することができる。
【0038】
また、隆起部が複数の場合、複数の隆起部の総面積が、高抵抗層13の表面の全面積に対して、5%以上30%以下であることが好ましい。隆起部の総面積を前記範囲とすることで、焼結体11の作製によるだけでは制御できない、粗化された表面を形成することが可能となり、その結果、マイグレーションの発生をより抑制させることができる。この総面積は、7%以上27%以下であることがより好ましく、10%以上25%以下であることがさらに好ましい。高抵抗層13の「表面の全面積」とは、高抵抗層13のうち、外部電極14等に覆われていない露出している部分の面積の総和をいう。隆起部の総面積は、前記EPMAの元素マッピングの観察像により測定することができる。
【0039】
より多くの隆起部を形成させるには、高抵抗層13の形成に、後述する高抵抗層13の前駆体を含む溶液を噴霧(スプレー)する方法を用いることが好ましい。
【0040】
高抵抗層13の平均厚みは、0.01μm以上であることが好ましい。この場合、焼結体11が露出している部分がより減少すると考えられ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる。この平均厚みは、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。高抵抗層13の平均厚みは、5μm以下であることが好ましい。この場合、高抵抗層13によるイオン等の移動がより抑制されると考えられ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる。この平均厚みは、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。「平均厚み」とは、高抵抗層13の複数点(例えば任意の10点)について測定した高抵抗層13の厚みの算術平均値をいう。
【0041】
[外部電極]
外部電極14は、高抵抗層13の一部を覆うように設けられる。また、外部電極14は、内部電極12に電気的に接続されている。
【0042】
外部電極14は、例えば一次電極15と、めっき電極16とを含む。また、一次電極15上に、二次電極を設けてもよい。二次電極は、一次電極15を覆うように形成することが好ましい。このように、外部電極14(第1外部電極14A及び第2外部電極14Bの各々)は、多層構造であってもよい。
【0043】
(一次電極)
一次電極15は、高抵抗層13の一部を覆うように、また内部電極12と電気的に接続するように設けられている。一次電極15は、例えばAg、AgPd、AgPt等の金属成分と、Bi、SiO、B等のガラス成分とを含む。一次電極15は、金属を主成分とすることが好ましく、銀を主成分とすることがより好ましい。一次電極15が銀を主成分とするものである場合、積層バリスタはマイグレーションが起こりやすいものであるが、本開示によりマイグレーションの発生を抑制することができるので、本開示による利益が大きい。一次電極15は、通常、高抵抗層13の一部に、一次電極ペーストを塗布することにより形成される。
【0044】
(めっき電極)
めっき電極16は、一次電極15の少なくとも一部を覆うように設けられている。めっき電極16は、例えば一次電極又は二次電極の少なくとも一部を覆うように設けられているNi電極と、Ni電極の少なくとも一部を覆うように設けられているSn電極とを含む。
【0045】
<積層バリスタの製造方法>
本実施に係る積層バリスタの製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程とを備える。以下、各工程について、説明する。
【0046】
[第1工程]
第1工程では、ZnOを主成分として含み、内部に内部電極12が配置された焼結体11を準備する。
【0047】
焼結体11は、ZnOを含むスラリーを用いて作製したセラミックシートに、内部電極ペーストを塗布し、前記セラミックシートを積層、プレス、切断した後、脱バインダー及び焼成を行い、作製することができる。スラリーは、例えば主原料であるZnOと、副原料としてBi、Co、MnO、Sb、Pr11、Co3、CaCO、Cr等と、バインダーとを混合して調製することができる。
【0048】
内部電極ペーストとしては、例えばAgペースト、Pdペースト、Ptペースト、PdAgペースト、PtAgペースト等を用いることができる。
【0049】
脱バインダーを行う温度は、例えば300℃以上500℃以下である。焼成を行う温度は、得られる焼結体11の構成、組成等により適宜調整することができ、例えば800℃以上1300℃以下である。
【0050】
第1工程は、例えば塗工工程と、内電塗布工程と、積層工程と、切断工程と、焼成工程とを含む。塗工工程では、ZnOを主成分として含むセラミックシートを作製する。内電塗布工程では、セラミックシートの表面に内部電極ペーストを塗布する。内電塗布工程における塗布方法としては、例えば印刷する方法等が挙げられる。積層工程では、内部電極ペーストを塗布したセラミックシートと、内部電極ペーストを塗布していないセラミックシートとを積層して積層物を得る。切断工程では、前記積層物を切断し、積層面と切断面とを有する積層体を得る。焼成工程では、前記積層体を焼成し、積層面と切断面とを有する焼結体を得る。
【0051】
このような方法により、互いに対向する一対の主面、互いに対向する一対の側面、及び互いに対向する一対の端面を有する焼結体11を作製することができる。このようにして作製された焼結体11は、積層面のRaよりも切断面のRaを大きくすることができる。
【0052】
[第2工程]
第2工程では、第1工程後の焼結体11の少なくとも一部を覆うように、高抵抗層13を形成する。
【0053】
高抵抗層13の形成方法としては、例えば(i)焼結体11に高抵抗層13の前駆体を含む溶液を塗布する方法、(ii)ZnOを主成分とする焼結体11にSiOを反応させる方法、(iii)焼結体11にアルカリ金属を熱拡散させる方法などが挙げられる。
【0054】
(i)の方法では、例えば焼結体11に、高抵抗層13の前駆体を含む溶液を塗布した後、脱水、硬化を行うことで、焼結体11の表面上に、高抵抗層13を形成することができる。高抵抗層13の前駆体としては、例えばポリシラザン等の主鎖にSiを有するガラス成分などが挙げられる。高抵抗層13の前駆体として、ポリシラザン等の主鎖にSiを有するガラス成分を用いることにより、SiOを主成分とする連続的な高抵抗層13を形成することができる。このような高抵抗層13により、焼結体11が露出する部分をより減少させることができると考えられ、その結果、高抵抗層13の表面におけるマイグレーションの発生をより抑制することができる積層バリスタ1を製造することができる。
【0055】
塗布方法としては、例えば噴霧(スプレー)、浸漬、印刷等が挙げられる。これらの中で、噴霧による方法は、厚みが1μmを超える隆起部をより多く有する高抵抗層13を形成させることができるため、高抵抗層13の表面のRaをより大きくすることができるので、望ましい方法である。また、この噴霧は、攪拌混合した複数の焼結体11に対して行うことが好ましい。
【0056】
(ii)の方法では、ZnOを主成分とする焼結体11と、SiOとを反応させることにより、焼結体11の表層領域を、ZnSiOを主成分とする高抵抗層13に変換することによって、高抵抗層13を形成することができる。この方法は、具体的には、例えばSiOを含む粉末や液体を、ZnOを主成分とする焼結体11に付着させた後、熱処理を行う等により実施することができる。
【0057】
(iii)の方法では、焼結体11にアルカリ金属を熱拡散させることにより、焼結体11の表層領域を、高抵抗層13に変換することによって、高抵抗層13を形成することができる。この方法は、具体的には、例えば焼結体11と、アルカリ金属粉又はアルカリ金属塩を主成分とする液とを混合し、次いで熱焼成を行うことにより実施することができる。
【0058】
第2工程は、(i)の方法のように、噴霧工程と、熱処理工程とを含むことが好ましい。噴霧工程では、複数の焼結体11を混合攪拌しながら、焼結体11に対して、高抵抗層13の前駆体を含む溶液を噴霧する。熱処理工程では、前駆体が付着した焼結体11を熱処理することにより、高抵抗層13を形成する。この方法によれば、多くの隆起部を有する高抵抗層13を形成させることができ、その結果、マイグレーションの発生を抑制することができる積層バリスタ1を製造することができる。
【0059】
第2工程後の高抵抗層13の表面のRaは、第1工程後の焼結体11の表面のRaよりも大きいことが好ましい。高抵抗層13の形成方法を適切に選択することにより、高抵抗層13の表面のRaを大きくすることができ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる積層バリスタ1を製造することができる。
【0060】
第2工程後の高抵抗層13の平均厚みは、第1工程後の焼結体11の表面のRaよりも大きいことが好ましい。この場合、焼結体11が露出している部分がより減少すると考えられ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる。高抵抗層13の平均厚みが、焼結体11のRaよりも小さい場合、積層バリスタ1において、焼結体11の一部が露出して、めっき析出やマイグレーションが発生しやすくなる。また、第2工程後の高抵抗層13の表面のRaは、0.06μm以上0.9μm以下であることが好ましい。
【0061】
また、第2工程後の高抵抗層13の表面のRaは、例えば研磨粉を入れた回転ポットにより表面研磨を行う方法、ブラスト等を用いる方法などにより制御することができる。第1工程後の焼結体11の表面のRaは、焼結体11に対し、酸処理による表面の溶解処理を行う方法などにより制御することができる。この溶解処理により、焼結体11の一部の粒子が溶出し、粒界が形成されるので、焼結体11の表面のRaを増大させることができ、この焼結体11を用いることにより、第2工程後の高抵抗層13の表面のRaを増大させることができる。
【0062】
[第3工程]
第3工程では、高抵抗層13の一部を覆い、内部電極12の一部と接触するように、一次電極ペーストを塗布する。
【0063】
一次電極ペーストは、例えばAg粉、AgPd粉、AgPt粉等を含む金属成分と、Bi、SiO、B等を含むガラス成分と、溶剤とを混合して調製することができる。また、一次電極ペーストとして、Agを主成分とし、樹脂成分を含むもの等も用いることができる。一次電極ペーストの塗布後、700℃以上800℃以下で焼付を行うことにより、内部電極12との合金化を促進させることができ、密着性が向上した一次電極15を形成させることができる。
【0064】
[第4工程]
第4工程では、一次電極ペーストから形成された一次電極15の少なくとも一部を覆うように、めっき電極を形成する。めっき電極の形成方法としては、例えば電解めっき法により、Niめっき、Snめっきを順に行うことなどが挙げられる。
【実施例0065】
以下、本開示を実施例によってより具体的に説明するが、本開示は実施例のみに限定されるものではない。
【0066】
<積層バリスタの製造>
以下の手順により、実施例1及び2並びに比較例1の積層バリスタを製造した。
【0067】
(スラリーの調製)
主成分であるZnOと、副成分であるPr11、Co3、CaCO、Cr等と、バインダーとを混合して、スラリーを調製した。
【0068】
(セラミックシートの作製)
前記調製したスラリーを用い、20μm以上50μm以下の所定の厚みに成形し、セラミックシートを作製した。
【0069】
(積層体の作製)
内部電極ペーストとして、Pdペーストを用い、前記作製したセラミックシートに、所定の形状に内部電極ペーストを印刷し、内部電極ペーストを印刷したセラミックシートと、内部電極ペーストを印刷していないセラミックシートとを用いて、所定の電極構造になるように積層した。得られた積層物を所定の厚みになるようにプレスした後、長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmになるように切断し、積層体を作製した。
【0070】
(焼結体の作製)
前記作製した積層体を、300℃以上500℃以下の温度で脱バインダーを行い、次いで、800℃以上1300℃以下の温度で焼成を行い、焼結体を作製した。
【0071】
(高抵抗層の形成)
前記作製した焼結体に、ポリシラザンを含有するコーティング液を、スプレーを用いて噴霧し、次いで、400℃以上600℃以下の温度で、焼結体に付着した前駆体を硬化することで、高抵抗層を形成した。
【0072】
(一次電極の形成)
一次電極ペーストをAg粉と、ガラスフリットと、溶剤とを混合して調製した。この一次電極ペーストを、前記高抵抗層を形成した焼結体の端面に塗布した後、800℃で焼付を行い、一次電極を形成した。
【0073】
(めっき電極の形成)
前記形成した一次電極上に、電解めっき法により、所定の厚さのNiめっき電極を形成し、その上に、Snめっき電極を形成した。
【0074】
高抵抗層の形成の際におけるコーティング液の濃度、噴霧速度等の条件を選択することにより、高抵抗層の表面の算術平均粗さRaが0.3μmの実施例1の積層バリスタ、及びRaが0.09μmの実施例2の積層バリスタを作製した。また、焼結体をコーティング液に浸漬し、次いで硬化することにより、Raが0.03μmの比較例1の積層バリスタを作製した。
【0075】
<評価>
前記作製した積層バリスタについて、以下に示す条件での湿中負荷試験により、マイグレーションの発生について評価した。
【0076】
(条件)
・温度:85℃、相対湿度:85%RH、負荷電圧:18V、試験時間1000h
(マイグレーション評価)
・湿中負荷試験後、外観観察及び元素分析により、高抵抗層表面上へのAgの析出、すなわちマイグレーションが発生しているかについて観察した。
【0077】
【表1】
【0078】
表1の結果から、実施例1及び実施例2の積層バリスタは、高抵抗層の表面の算術平均粗さRaは、それぞれ0.3μm、0.09μmで、本開示の範囲内であり、マイグレーションの発生を抑制できていることが示された。また、比較例1の積層バリスタは、高抵抗層の表面のRaは0.03μmで、本開示の範囲外であり、マイグレーションが発生した。
【0079】
(まとめ)
上述の実施形態及び実施例から明らかなように、第1の態様の積層バリスタ(1)は、焼結体(11)と、焼結体(11)の内部に設けられた内部電極(12)と、焼結体(11)の少なくとも一部を覆うように設けられた高抵抗層(13)と、高抵抗層(13)の一部を覆うように設けられ、内部電極(12)に電気的に接続された外部電極(14)とを備える。高抵抗層(13)の表面の算術平均粗さが0.06μm以上である。
【0080】
第1の態様によれば、外部電極(14)間の沿面距離を増大させ、マイグレーションの発生までに要するイオン等の移動距離を増大させることによって、移動障壁を高めることができ、その結果、高抵抗層(13)の表面におけるマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0081】
第2の態様の積層バリスタ(1)では、第1の態様において、高抵抗層(13)の表面の算術平均粗さが0.9μm以下である。
【0082】
第2の態様によれば、焼結体(11)が露出している部分がより減少すると考えられ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる。
【0083】
第3の態様の積層バリスタ(1)では、第1又は第2の態様において、高抵抗層(13)の平均厚みが、0.01μm以上かつ5μm以下である。
【0084】
第3の態様によれば、焼結体(11)が露出している部分がより減少すると共に、高抵抗層(13)によるイオン等の移動がより抑制されると考えられ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる。
【0085】
第4の態様の積層バリスタ(1)では、第1から第3のいずれか一の態様において、高抵抗層(13)が、厚み1μm超の領域の部分である複数の隆起部を有し、隆起部の平均長径が10μm以上かつ50μm以下である。
【0086】
第4の態様によれば、隆起部の平均長径を特定範囲とすることで、外部電極(14)間の沿面距離をより長くすることができ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる。
【0087】
第5の態様の積層バリスタ(1)では、第4の態様において、複数の隆起部の総面積が、高抵抗層(13)の表面の全面積に対して、5%以上かつ30%以下である。
【0088】
第5の態様によれば、隆起部の総面積を特定範囲とすることで、焼結体(11)の作製によるだけでは制御できない、粗化された表面を形成することが可能となり、その結果、マイグレーションの発生をより抑制させることができる。
【0089】
第6の態様の積層バリスタ(1)では、第1から第5のいずれか一の態様において、外部電極(14)が、高抵抗層(13)の一部を覆うように設けられた一次電極(15)と、一次電極(15)の少なくとも一部を覆うように設けられためっき電極(16)とを含む。一次電極(15)が銀を主成分とする。
【0090】
第6の態様によれば、一次電極(15)が銀を主成分とするものである場合、積層バリスタはマイグレーションが起こりやすいものであるが、本開示によりマイグレーションの発生を抑制することができるので、本開示による利益が大きい。
【0091】
第7の態様の積層バリスタ(1)では、第1から第6のいずれか一の態様において、焼結体(11)が、互いに対向する一対の主面、互いに対向する一対の側面、及び互いに対向する一対の端面を有する。内部電極(12)が、主面と対向する。外部電極(14)が、端面を覆う。側面における高抵抗層(13)の表面の算術平均粗さは、主面における高抵抗層(13)の表面の算術平均粗さよりも大きい。
【0092】
第7の態様によれば、側面におけるイオン等の移動に起因して起こるマイグレーションの発生をより抑制することができ、特に、外部電極(14)の間隔がより小さい、端面及び側面に外部電極(14)を有する積層バリスタ(1)におけるマイグレーションの発生の抑制により効果がある。
【0093】
第8の態様の積層バリスタ(1)では、第1から第7のいずれか一の態様において、高抵抗層(13)がSiOを主成分とする。
【0094】
第8の態様によれば、高抵抗層(13)がSiOを主成分とすることで、連続的な高抵抗層(13)とすることができ、このような高抵抗層(13)により、焼結体(11)が露出する部分をより減少させることができると考えられ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる。
【0095】
第9の態様の積層バリスタ(1)は、互いに対向する一対の主面、互いに対向する一対の側面、及び互いに対向する一対の端面を有する焼結体(11)と、焼結体(11)の内部に設けられ、主面と対向する内部電極と、焼結体(11)の少なくとも一部を覆うように設けられた高抵抗層(13)と、端面において、高抵抗層(13)の一部を覆うように設けられ、内部電極(12)に電気的に接続された外部電極(14)とを備える。側面における高抵抗層(13)の表面の算術平均粗さが、主面における高抵抗層(13)の表面の算術平均粗さよりも大きい。
【0096】
第9の態様によれば、主面高抵抗層(13a)よりも側面高抵抗層(13b)の表面のRaを大きくでき、側面高抵抗層(13b)の表面のRaが大きくなることで、積層バリスタ(1)は、マイグレーションの発生を抑制することができると考えられる。
【0097】
第10の態様の積層バリスタ(1)の製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程とを備える。第1工程では、ZnOを主成分として含み、内部に内部電極(12)が設けられた焼結体(11)を準備する。第2工程では、焼結体(11)の少なくとも一部を覆うように、高抵抗層(13)を形成する。第3工程では、高抵抗層(13)の一部を覆い、内部電極(12)の一部と接触するように、一次電極ペーストを塗布する。第4工程では、一次電極ペーストから形成された一次電極(15)の少なくとも一部を覆うように、めっき電極(16)を形成する。第2工程後の高抵抗層(13)の表面の算術平均粗さが0.06μm以上0.9μm以下である。
【0098】
第10の態様によれば、高抵抗層(13)の表面の算術平均粗さを所定範囲にすることができ、その結果、マイグレーションの発生を抑制することができる積層バリスタ(1)を製造することができる。
【0099】
第11の態様の積層バリスタ(1)の製造方法では、第10の態様において、第1工程後の焼結体(11)の表面の算術平均粗さよりも、第2工程後の高抵抗層(13)の表面の算術平均粗さが大きい。
【0100】
第11の態様によれば、高抵抗層(13)の形成方法を適切に選択することにより、高抵抗層(13)の表面のRaを大きくすることができ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる積層バリスタ(1)を製造することができる。
【0101】
第12の態様の積層バリスタ(1)の製造方法では、第10又は第11の態様において、第2工程が、複数の焼結体(11)を混合攪拌しながら、焼結体(11)に対して、高抵抗層(13)の前駆体を含む溶液を噴霧する工程と、前駆体が付着した焼結体(11)を熱処理することにより、高抵抗層(13)を形成する工程とを含む。
【0102】
第12の態様によれば、このような方法により形成される高抵抗層(13)は、隆起部をより多く有することができるため、高抵抗層(13)の表面の算術平均粗さをより大きくすることができ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる積層バリスタ(1)を製造することができる。
【0103】
第13の態様の積層バリスタ(1)の製造方法では、第12の態様において、前駆体溶液は、ポリシラザンを含有する。
【0104】
第13の態様によれば、高抵抗層(13)の前躯体として、主鎖にSiを有するガラス成分であるポリシラザンを用いることにより、SiOを主成分とする連続的な高抵抗層(13)を形成することができ、このような高抵抗層(13)により、焼結体(11)が露出する部分をより減少させることができると考えられ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる積層バリスタ(1)を製造することができる。
【0105】
第14の態様の積層バリスタ(1)の製造方法では、第10から第13のいずれか一の態様において、第1工程が、塗工工程と、内電塗布工程と、積層工程と、切断工程と、焼成工程とを含む。塗工工程では、ZnOを主成分として含むセラミックシートを作製する。内電塗布工程では、セラミックシートに内部電極ペーストを塗布する。積層工程では、内部電極ペーストを塗布したセラミックシートと、内部電極ペーストを塗布していないセラミックシートとを積層して積層物を得る。切断工程では、積層物を切断し、積層面と切断面とを有する積層体を得る。焼成工程では、積層体を焼成し、積層面と切断面とを有する焼結体(11)を得る。焼結体(11)の積層面の算術平均粗さよりも、焼結体(11)の切断面の算術平均粗さが大きい。
【0106】
第14の態様によれば、互いに対向する一対の主面、互いに対向する一対の側面、及び互いに対向する一対の端面を有する焼結体(11)を作製することができ、この焼結体(11)は、積層面のRaよりも切断面のRaを大きくすることができるので、焼結体(11)に高抵抗層(13)を形成して、積層バリスタ(1)を作製することにより、主面高抵抗層(13a)よりも側面高抵抗層(13b)の表面のRaを大きくすることができ、その結果、側面におけるイオン等の移動に起因して起こるマイグレーションの発生をより抑制することができる。
【0107】
第15の態様の積層バリスタ(1)の製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程とを備える。第1工程では、ZnOを主成分として含み、内部に内部電極(12)が設けられた焼結体(11)を準備する。第2工程では、焼結体(11)の少なくとも一部を覆うように、高抵抗層(13)を形成する。第3工程では、高抵抗層(13)の一部を覆い、内部電極(12)の一部と接触するように、一次電極ペーストを塗布する。第4工程では、一次電極ペーストから形成された一次電極(15)の少なくとも一部を覆うように、めっき電極(16)を形成する。第2工程が、複数の焼結体(11)を混合攪拌しながら、焼結体(11)に対して、高抵抗層(13)の前駆体を含む溶液を噴霧する工程と、前駆体が付着した焼結体(11)を熱処理することにより、高抵抗層(13)を形成する工程とを含む。
【0108】
第15の態様によれば、多数の隆起部を有する高抵抗層(13)を形成させることができるので、高抵抗層(13)の表面のRaを大きくすることができ、その結果、マイグレーションの発生を抑制することができる積層バリスタ(1)を製造することができる。
【0109】
第16の態様の積層バリスタ(1)の製造方法では、第15の態様において、前駆体溶液は、ポリシラザンを含有する。
【0110】
第16の態様によれば、高抵抗層(13)の前躯体として、主鎖にSiを有するガラス成分であるポリシラザンを用いることにより、SiOを主成分とする連続的な高抵抗層(13)を形成することができ、このような高抵抗層(13)により、焼結体(11)が露出する部分をより減少させることができると考えられ、その結果、マイグレーションの発生をより抑制することができる積層バリスタ(1)を製造することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 積層バリスタ
11 焼結体
12 内部電極
13 高抵抗層
13a 主面高抵抗層
13b 側面高抵抗層
14 外部電極
15 一次電極
16 めっき電極
図1
図2