(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071566
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】双方向通話装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20230516BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H04R1/00 318Z
F16C11/04 F
H04R1/00 328B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184430
(22)【出願日】2021-11-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・ウェブサイトへの掲載 掲載日:令和3年11月5日 ウェブサイトのアドレス: http://www.ryoke.co.jp/catchvoice/ ・ウェブサイトへの掲載 掲載日:令和3年11月10日 ウェブサイトのアドレス: https://www.youtube.com/watch?v=v306cigPqYE ・ウェブサイトへの掲載 掲載日:令和3年11月11日 ウェブサイトのアドレス: https://www.atpress.ne.jp/news/284399 ・ウェブサイトへの掲載 掲載日:令和3年11月9日 ウェブサイトのアドレス: http://kawaguchishisanhinfair2021.jp/exhibitor/%e6%a0%aa%e5%bc%8f%e4%bc%9a%e7%a4%be%e3%83%aa%e3%83%a7%e3%82%a6%e3%82%b1/ ・集会において発表 発表日:令和3年10月14日 集会名:川口市市産品フェア2021 出展者説明会(彩の国ビジュアルプラザ,川口市上青木3-12-63) ・刊行物への発表 発行日:令和3年11月11日 刊行物名:「川口市市産品カタログ2021-2022ビジネスユース版」 ・刊行物への発表 発行日:令和3年11月11日 刊行物名:「川口市市産品カタログ2021-2022ホームユース版」
(71)【出願人】
【識別番号】592102412
【氏名又は名称】株式会社リョウケ
(74)【代理人】
【識別番号】100146732
【弁理士】
【氏名又は名称】横島 重信
(72)【発明者】
【氏名】早川 悦生
【テーマコード(参考)】
3J105
5D017
【Fターム(参考)】
3J105AA04
3J105AA05
3J105AA12
3J105AB02
3J105AB22
3J105AC06
3J105AC10
5D017BC00
(57)【要約】
【課題】遮蔽板等を介した会話において、音声の伝達を補助するための双方向通話装置であって、特に、必要に応じて設置可能であり、取り扱い性等に優れた双方向通話装置を提供すること。
【解決手段】第一のマイクロフォンと第一のスピーカーを有する第一のユニット部と、第二のマイクロフォンと第二のスピーカーを有する第二のユニット部と、当該第一のマイクロフォンにより生成した電気信号を第二のスピーカーに伝達し、当該第二のマイクロフォンにより生成した電気信号を第一のスピーカーに伝達する電気回路を有する双方向通話装置であって、上記第一のユニット部と第二のユニット部とが、屈曲部を有するヒンジ部によって連結されていることを特徴とする双方向通話装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集した音声を電気信号に変換するための第一のマイクロフォンと、電気信号を音声に変換するための第一のスピーカーを有する第一のユニット部と、
収集した音声を電気信号に変換するための第二のマイクロフォンと、電気信号を音声に変換するための第二のスピーカーを有する第二のユニット部と、
当該第一のマイクロフォンにより生成した電気信号を第二のスピーカーに伝達すると共に、当該第二のマイクロフォンにより生成した電気信号を第一のスピーカーに伝達する電気回路を有することで第一及び第二のユニット部間で双方向通話が可能な双方向通話装置であって、
上記第一のユニット部と第二のユニット部とが、屈曲部を有するヒンジ部によって連結されていることを特徴とする双方向通話装置。
【請求項2】
前記ヒンジ部が有する屈曲部は、一つの回転軸を含むことにより屈曲を生じるものであることを特徴とする請求項1に記載の双方向通話装置。
【請求項3】
前記ヒンジ部が有する屈曲部は、二つ以上の回転軸を含むことにより屈曲を生じるものであることを特徴とする請求項1に記載の双方向通話装置。
【請求項4】
前記ヒンジ部は、上記第一のユニット部と上記屈曲部を連結する第一のアーム部と、上記第二のユニット部と上記屈曲部を連結する第二のアーム部を有し、
当該第一のユニット部と第一のアーム部の間、及び又は当該第二のユニット部と第二のアーム部の間は、可動部によって結合されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の双方向通話装置。
【請求項5】
上記当該第一のユニット部と第一のアーム部の間、及び又は当該第二のユニット部と第二のアーム部の間を結合する可動部は、回転軸であることを特徴とする請求項4に記載の双方向通話装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対面等して会話をする際に使用される通話装置であり、相互の音声を聞き取り易くするために使用される通話装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2020年初頭に感染拡大を生じた、いわゆる新型コロナウイルスに起因して、その感染拡大を抑制する目的で、通常の生活の場面においても新しい生活様式を採ることが求められている。そのような新しい生活様式の一部として、対面して会話をする際などに、一方の話者の口から発せられる飛沫が他方の話者に到達することを抑制する目的で、対面者間に透明の部材を設置することが広く行われており、飛沫感染による感染拡大防止のために有効な手段とされている。
【0003】
当該飛沫感染の抑制手段として、例えば、特許文献1には、対面者の飛沫を遮蔽する飛沫遮蔽器具であって、対面者の間に起立して設けられ、複数の対面者間での飛沫の飛散と相対面する対面者への飛沫の付着を阻止する遮蔽板を有する飛沫遮蔽器具が記載されている。
特許文献1に記載されるような飛沫の遮蔽手段は、対面で打ち合わせ等が行われる対話スペースの他にも、一般の飲食店のテーブル上の、対面して座る者の間や、隣り合って座る者の間等にも広く設置され、通常の生活において一般化されている。
【0004】
一方、特許文献1に記載されるような遮蔽板が設けられることによって、対面等して会話をする際に対話の相手の音声が聞き取り難くなることが知られている。これは、音声が主に空気の振動として伝達するのに対して、対話の相手との間に遮蔽板が設置されることで空気層が遮断されるためであると考えられる。そして、一般には遮蔽板を介することによって相手の発する音声の音量が小さくなると共に、特に会話で多用される音域以上の音が強く減衰されるために、いわゆる“くぐもった声”として感じられ、自然な通常の会話が妨げられる問題を生じる。
【0005】
上記のような問題に対して、例えば、特許文献2に記載されるように、従来から主に保安等の必要性に基づいて券売窓口等においては透明の遮蔽板を介した接客等が行われており、遮蔽板を介することにより生じる音声の不明瞭を補うために、遮蔽板の両側にマイクロフォンを設置して話者の音声を集音して、この音声を適宜のスピーカーから相手方に対して発することにより、会話の補助がなされていた。
【0006】
また、例えば、特許文献3に記載されるような、小型のスピーカーとマイクロフォンを話者の頭部に取り付けるヘッドセットを使用することによって、電話回線やインターネットを介して遠方にいる相手との会話を行うことが可能であり、当該手段を使用することによっても遮蔽板を介した会話を円滑に行うことは可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-152317号公報
【特許文献2】特開2001-24803号公報
【特許文献3】特開平11-331970号公報
【特許文献4】特開2017-108331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、飛沫感染を抑制するための遮蔽板等を介した会話においては、相手方の音声が届き難いために自然な会話が阻害される。その際に、音声の伝達の補助のみに着目した際には、例えば、特許文献2,3に記載されるような手段を使用することで遮蔽板等を介した会話を必要十分に行うことが可能である。
【0009】
一方、特許文献2に記載されるような通話装置は、不特定の者との間の会話を成立させることを主目的として設置されるために、一般に会話の内容を拡声してスピーカーから発するように装置の各部が構成されている。このため、例えば、多数のテーブルが設置された飲食店等の店内において各テーブル毎に特許文献2に記載される通話装置が設けられた場合、結果として隣接するテーブルにおける会話がそれぞれ拡声されてスピーカーから発せられ、その音声が相互に混合されることにより、むしろ対話相手の音声が聞き取り難くなるという問題を生じる。また、通常の会話の内容は必ずしも周囲の他人に聞かれたくないものである点からも、特許文献2に記載されるような通話装置によって単に音声を拡声することによっては自然な会話の成立を補助することは困難である。
【0010】
また、特許文献3に記載されるようなヘッドセット等を使用することにより、周囲の環境によらず会話を行うことが可能であるが、例えば、顧客との面会を目的として対面の会話を行う際に、顧客の側にもヘッドセット等の着用を求めることは必ずしも面会を行う目的や事情に叶うものではない。
【0011】
新型コロナウイルスの感染は早期に収束することが望まれる。一方、新型コロナウイルスの感染拡大の防止のための措置が執られている期間において、例えば、一般的なインフルエンザの感染等が有意に抑制されている。このため、新型コロナウイルスの感染収束の後にも、種々の感染症を抑制するためのマナーの一つとして遮蔽板等を介した会話が社会の各側面において行われることが予想され、将来においても遮蔽板等を介した会話の困難性が存続するものと考えられる。
【0012】
一方、例えば、顧客を訪問等して対話を行う際に、当該対話の場に遮蔽板等が設置されていた場合に、当該遮蔽板等によって対話が思うに任せない状況に至ることは、業務の遂行の上で大きなストレスを生じると考えられる。そして、対話の相手方の意図に反せず、気分を害することのない手段により、遮蔽板等を介した会話のし難さを緩和し、より自然な会話を行い得る環境を形成することが望まれている。
【0013】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、例えば遮蔽板等を介した会話等、会話の音声の伝達に支障を生じる場合において、音声の伝達を補助するための双方向通話装置であって、特に、必要に応じて簡便に設置可能であり、取り扱い性等に優れた双方向通話装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、下記のような双方向通話装置を提供する。
(1)収集した音声を電気信号に変換するための第一のマイクロフォンと、電気信号を音声に変換するための第一のスピーカーを有する第一のユニット部と、収集した音声を電気信号に変換するための第二のマイクロフォンと、電気信号を音声に変換するための第二のスピーカーを有する第二のユニット部と、当該第一のマイクロフォンにより生成した電気信号を第二のスピーカーに伝達すると共に、当該第二のマイクロフォンにより生成した電気信号を第一のスピーカーに伝達する電気回路を有することで第一及び第二のユニット部間で双方向通話が可能な双方向通話装置であって、上記第一のユニット部と第二のユニット部とが、屈曲部を有するヒンジ部によって連結されていることを特徴とする双方向通話装置。
(2)前記ヒンジ部が有する屈曲部は、一つの回転軸を含むことにより屈曲を生じるものである双方向通話装置。
(3)前記ヒンジ部が有する屈曲部は、二つ以上の回転軸を含むことにより屈曲を生じるものである双方向通話装置。
(4)前記ヒンジ部は、上記第一のユニット部と上記屈曲部を連結する第一のアーム部と、上記第二のユニット部と上記屈曲部を連結する第二のアーム部を有し、当該第一のユニット部と第一のアーム部の間、及び又は当該第二のユニット部と第二のアーム部の間は、可動部によって結合されている双方向通話装置。
(5)上記当該第一のユニット部と第一のアーム部の間、及び又は当該第二のユニット部と第二のアーム部の間を結合する可動部は、回転軸である双方向通話装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、様々な場面での会話において手軽に会話の音声の伝達を補助する双方向通話装置が提供され、例えば遮蔽板等を介した会話のように音声の伝達に支障がある場合の会話を補助することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の係る双方向通話装置の一例を示す図である。
【
図2】本発明の係る双方向通話装置の使用形態の一例を示す図である。
【
図3】本発明の係る双方向通話装置を構成するヒンジ部の構成例を示す図である。
【
図4】本発明の係る双方向通話装置の他の一例を示す図である。
【
図5】本発明の係る双方向通話装置の他の一例を示す図である。
【
図6】本発明の係る双方向通話装置の使用形態の例を示す図である。
【
図7】本発明の係る双方向通話装置の使用形態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記で説明したように、遮蔽板等を介して対面する際に、話者の音声が遮蔽板に遮られる等して明瞭さが低下して音声が聞き取り難くなる等、自然な会話が困難となる。そして、これを補う目的で、例えば特許文献2に記載されるように、マイクロフォン(以下、「マイク」と略して記載することがある。)によって話者の音声を電気信号に変換して収集すると共に、スピーカーにより当該電気信号を再び音声に変換して相手方に提供することによって明瞭な会話を成立させることが行われている。
【0018】
特許文献2に記載されるように、マイクとスピーカーを使用して会話を行い、又は、会話を補助する際においては、話者やその相手方に対するマイクやスピーカーを設置する位置が重要な要素であり、当該マイクやスピーカーを好ましい位置に設置することにより、より有効に音声の伝達を補助することが可能となる。
【0019】
つまり、話者の音声を収集するマイクを話者の近傍に設置することにより、話者の周囲の環境音(ノイズ;N)に比べて話者の音声(信号;S)の強度が高く、いわゆるS/N比が高い状態で音声が収集可能であって、当該マイクで生成された電気信号をスピーカーによって相手方に提供することによって、話者の音声をより明瞭に伝えることが可能になる点で有利である。
【0020】
また、会話の相手方に音声を提供するスピーカーについても、相手方の近傍に設置することにより、より小音量での音声出力によって話者の音声が伝達可能であり、特に会話の内容が周囲に漏れ出る程度を抑制できる点で好ましい。
【0021】
上記の点からは、小型のスピーカーとマイクを、例えば特許文献3に記載されるようなヘッドセットの形態で話者の頭部に取り付けることが好適である。しかしながら、面談の種類によっては対話の相手方にヘッドセットの着用を求め難い場合が存在し、またヘッドセットのスピーカーによって耳が塞がれるために周囲の音が聞き難くなって自然な会話が困難になる等の課題を生じる。
【0022】
上記のような課題等について本発明者が種々の検討をしたところ、話者の音声を電気信号に換えて収集するマイクと、相手方の発した音声を提供するスピーカー等を有するユニット部について、二つのユニット部を一対とし、これをヒンジ部5を介して接続した形態にした双方向通話装置とすることにより、例えば、打ち合わせ等のために訪れた会場において、机上などに遮蔽板等が設置してあった際などに、当該双方向通話装置を持参等することにより、設置してある遮蔽板等の両側に当該ユニット部1を手軽に設置可能であって、当該遮蔽板等の両側間の会話を補助することが可能となることに思い至り本発明に至ったものである。
【0023】
図1には、本発明の係る双方向通話装置の一例を示す。本発明の係る双方向通話装置は、スピーカー2やマイク3等が取り付けられたユニット部1を二つ一組で使用すると共に、屈曲部6を有することによって開閉動作が可能なヒンジ部5によって当該ユニット部1(1’)の間を連結した構造を有する。当該構造にすることによって、ヒンジ部5の開閉動作によってユニット部1,1’間の距離等が変更可能となり、以下に説明するように、ヒンジ部5によってユニット部1,1’の間を連結した状態で遮蔽板等の両側の面にユニット部1,1’をそれぞれ設置することが可能となり、ユニット部1,1’の間で音声の遣り取りを行うことで遮蔽板等を介した会話を補助することができる。
【0024】
ユニット部1,1’には、それぞれスピーカー2,2’やマイク3,3’等が取り付けられると共に、当該マイク3(3’)に入力された音声を電気信号に変換し、当該電気信号を他方のユニット部に取り付けられるスピーカー2’(2)に伝達して適宜の音量や音質で音声を再生するための電気回路や、当該電気回路の駆動のための電源部等が組み込まれ、ユニット部1,1’の間で双方向の通話が可能となるように構成される。
【0025】
本発明の係る双方向通話装置においては、一対のユニット部1を有し、典型的には、当該一対のユニット部1を背中合わせになるように配置すると共に、屈曲部6とアーム部7等から構成されるヒンジ部5によって、一対のユニット部1間の距離が変更可能な状態で連結されることを特徴とする。
図1に示す双方向通話装置においては、特にユニット部1,1’の間を連結するヒンジ部5が、ユニット部1,1’の筐体にそれぞれ固定されたアーム部7,7’を、一つの回転軸8によって回転自在に連結することによって構成される屈曲部6を有している。
【0026】
なお、本発明の係る双方向通話装置においては、ユニット部1の筐体とアーム部7の境界は必ずしも明確である必要はなく、例えば、ユニット部1の筐体に対して直接的に屈曲部6を設けることも可能であり、又は、アーム部7内に電気回路を含む基板等が設置されてユニット部1の筐体の一部を構成することも可能であり、当該屈曲部6の動作によって一対のユニット部1間の距離が変更可能な構成であれば、ヒンジ部5は適宜の形態を採ることが可能である。本明細書においては、ユニット部1の筐体が屈曲部6によって固定される際に当該屈曲部6とユニット部1の筐体を連結する部分(領域)を、その形態によらずアーム部7と称する場合がある。
【0027】
図2には、
図1に示す双方向通話装置10を使用して遮蔽板20等を介して会話を行う際の使用形態の一例を示す。上記で説明したように、
図1に示す双方向通話装置においては一対のユニット部1を背中合わせにし、その距離が変更可能な状態でヒンジ部5によって連結した構造を有することによって、適宜の厚みを有する遮蔽板20等に対して、これを跨ぐ様な形態で設置することが可能となり、当該遮蔽板20等の両側にそれぞれユニット部1を設置して使用することが可能である。
図2等に示す形態で本発明に係る双方向通話装置を設置し、一方のユニット部1に取り付けられたマイクロフォンにより生成した電気信号を他方のユニット部1’のスピーカーに伝達すると共に、当該他方のユニット部1’に取り付けられたマイクロフォンにより生成した電気信号をユニット部1のスピーカーに伝達する電気回路を駆動することにより、遮蔽板20等を介して会話を行う際に、遮蔽板20等によって遮られる音声を適宜補うことが可能となり、より自然な会話を行うことが可能となる。
【0028】
特許文献2に記載されるような、主に保安等の必要性に基づいて設置される遮蔽板においては、その設置の目的に照らして、必ずしも当該遮蔽板の「縁(フチ)」が対話者の近傍に設けられていない。このため、当該保安用の遮蔽板を介する会話を補助するためのマイクやスピーカーを有する通話装置を設けるためには、予め壁面に配線用の孔を設けて置く必要がある等、その場の必要に応じて通話装置を設置することが困難であった。
【0029】
一方、特許文献1に記載されるような、対話者の間の飛沫の直接の交換を抑制するための遮蔽板は、必ずしも対話者間の空間を完全に離隔するものでなく、その上辺である「縁(フチ)」は、例えば、着席したヒトの目線を基準にして20~30cm程度の高さに設けられることが多い。このため、対話をしようとする際に当該形態の遮蔽板が設けられていた場合には、本発明に係る双方向通話装置10を持参して
図2に示すような形態で設置することが可能であり、その場面での必要性に応じて通話装置の設置が可能になる。
【0030】
図2に示すような形態で第一のユニット部と、上記第二のユニットが相互に背中合わせになる姿勢で双方向通話装置10を設置することにより、対話者間の距離の1/2程度の位置に通話装置を構成するマイク/スピーカーを設置することが可能になり、十分にS/N比が高い状態でマイク3による音声の集音が可能になると共に、通常にヒトが発する音量以下の強度でスピーカー2から音声を提供することによっても、相手方には、通常の会話における程度の音量で音声を伝えることが可能となる。
【0031】
また、
図2に示すような形態で双方向通話装置10を設置することにより、マイク/スピーカー等を含む各ユニット部1を対話者間の視線の近傍に配置可能であるために、相手方の居る方向からスピーカー2を介して音声が提供され、より自然な会話が可能となる。
【0032】
図1に示す双方向通話装置10においては、一対の当該ユニット部1,1’がヒンジ部5によって機械的に連結されているため、ユニット部1,1’間で音声信号を伝達する配線等を接続した状態で携帯可能であり、必要に応じて遮蔽板20等に設置して使用することができる。これによって、ユニット部1,1’間の通信が成立しない等の煩わしさを防止することができ、打ち合わせの開始時などに迅速な使用が可能であって、特に接客等に使用する際の利便性を高めることができる。
【0033】
図1に示す双方向通話装置10において、ユニット部1,1’間で音声信号を伝達する手段は特に限定されず、適宜の手段によって音声信号を伝達することができる。例えば、ヒンジ部5の内部を経由して配線を行うことで、ユニット部1,1’間で音声信号を伝達することができる。配線によって音声信号を伝達することにより、外部の電波による交信等との混線が防止され、また会話内容の漏洩を防止することができる。一方、ユニット部1,1’間の音声信号の伝達を、ブルートゥース(登録商標)等の電波を使用した接続や、遮蔽板20を介した光通信により行うことで、ヒンジ部5の設計度の自由度を向上することができる。
【0034】
本発明の係る双方向通話装置では、一対のユニット部の間で、マイク3で電気信号に変換された相手方の音声がスピーカー2’から発せられると共に、マイク3’で電気信号に変換された自分の音声がスピーカー2から発せられることで双方向の通話を行うために、例えば、スピーカー2から発せられた音声がマイク3に入力することで、いわゆるハウリングと呼ばれる共鳴現象が生じやすい。このため、例えば、マイク3とスピーカー2間の音声信号の伝達に所定の時差を設ける等、マイク/スピーカーを繋ぐ電気回路にハウリング防止のための構成を含めることが好ましい。
【0035】
また、マイク3からスピーカー2’、マイク3’からスピーカー2に伝達される音声は、図示しない調整装置によって音声の大きさや音質等を変化可能とされてもよく、例えば、当該マイク/スピーカーを繋ぐ電気回路により適宜の処理を行うことにより、周辺のノイズに対して明瞭に聞き取り易い音質にする等、所望の音質に改変した音声をスピーカー2,2’から発するようにすることができる。遮蔽板を介して会話を行う際には、主に1kHz以上の周波数の音声において遮蔽板によって遮られる程度が高いため、特に当該遮られる程度の高い音域を強化した音声をスピーカー2,2’から発することが望ましい。
【0036】
また、ユニット部1,1’内に遣り取りされる音声を記録する録音部を設けることで本発明の係る双方向通話装置に録音機能を付加したり、ユニット部1,1’の前面にウェブカメラを取り付けることにより音声と併せて対話者の様子を取得して記録したり、対話の様子を音声と共に第三者に無線/有線の各種手段により提供する等の機能を付加することも可能である。
【0037】
本発明の係る双方向通話装置では、上記マイクとスピーカーの間の音声信号の処理等を行うための電気回路を駆動するための電源装置が使用される。当該電源装置は、当該電気回路を駆動可能であれば特に制限無く使用可能であるが、本発明の係る双方向通話装置の携帯性や簡便な使用の点からは、使い捨ての乾電池(一次電池)の他、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池をユニット部1,1’内部等に内蔵させて電源装置とすることが好ましい。一方、長時間の使用が想定される場合には、外部のACアダプターからの給電により電気回路を駆動し、及び、内蔵する二次電池の充電を可能とすることが望ましい。
【0038】
本発明の係る双方向通話装置を構成するユニット部、ヒンジ部等は、適宜の材質を適宜の手段により成形することで構成することができる。特に、適宜の形状の双方向通話装置を軽量であり安価に提供する観点からは、ユニット部、ヒンジ部等をABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂等を使用した樹脂製として、射出成型によって成形することが好ましい。
【0039】
ヒンジ部5を構成する屈曲部6に含まれる回転軸8は、棒状の軸を複数の部材間に貫通させることによって構成する他、複数の部材を組み合わせることによって仮想的な回転軸の周囲に部材が回転可能となるように形成されても良い。例えば、ヒンジ部等を射出成型によって成形する場合には、適切な箇所に当該回転軸が挿入可能な穴部を有するように射出成型によって成形された部材に対して、ステンレス等の金属からなる棒状の部材を回転軸8として挿入することによって屈曲部6を形成することができる。
【0040】
また、特に一対のユニット部の間の電気信号の伝達を有線で行おうとする際には、例えば、上記回転軸8を中空のパイプ状として、当該回転軸8の内部に配線を通過させることで、配線が露出しない形態で広範な角度に動作可能な屈曲部6を形成することができる。
【0041】
本発明の係る双方向通話装置においては、
図1に示すように、ユニット部の一方の面にスピーカー2とマイク3を設けることにより、単純な構成で使い勝手のよい双方向通話装置を構成することができる。一方、例えば、外部入力用の端子をユニット部に設ける等の手段により、フレキシブルアームによってユニット部の外部に設けたマイクや、机上に設置されたマイクを接続することによって、話者の音声をより明瞭に入力することが可能となる。
【0042】
本発明の係る双方向通話装置で使用するマイク3は、対話者の一方の側の音声が選択的に入力されると共に、周囲の騒音の入力を抑制するために、単一の指向性を有するマイクロフォンが好ましく使用される。また、本発明の係る双方向通話装置で使用するスピーカー2についても、指向性の高いスピーカーを使用することで周囲に漏れ出る音声が抑制できる点で好ましい。
【0043】
図3には、本発明の係る双方向通話装置のヒンジ部5の各種の構成例を示す。本発明の係る双方向通話装置のヒンジ部5は、
図1に示す形態の他、ユニット部1,1’間の距離を変更可能な状態でユニット部を連結する構造であれば特に制限無く使用することができる。
【0044】
図3(a)には、ユニット部1,1’と屈曲部6をそれぞれ連結するアーム部7,7’が非対称に構成された例を示す。
図3(a)においては、アーム部7,7’を一つの回転軸8で相互に固定することで屈曲部6が構成される。
図3(a)に示す構造にすることにより、
図1に示す構造と比較して、アーム部7、7’の長さを短くした際にもユニット部1,1’間の距離を大きくすることが可能になり、双方向通話装置の全体の大きさを小さくすることができる。
【0045】
また、
図3(b)には、ユニット部1,1’とそれぞれ結合されたアーム部7、7’に対して、その間にアーム部7Aを設けることにより、二つの回転軸8を有する屈曲部6を有する例を示す。
図3(b)に示す構造にすることにより、回転軸8の回転によりユニット部1,1’間の距離を大きくできると共に、アーム部7、7’を長さ方向にずらす(b-3)ことによって、ユニット部1,1’間の平行を維持した状態でその距離を小さくすることができる。
【0046】
図2に示すような形態で本発明に係る双方向通話装置を使用する際には、遮蔽板20の厚みに応じてユニット部1,1’間の平行を維持した状態で、実質的にユニット部1,1’間に遮蔽板20を挟んで設置することにより、振動に伴うノイズ等を生じることなく安定して使用することが可能となる。特に、上記
図3(b)に示す構造のヒンジ部を有することにより、(b-3)に示す形態で各種の厚みを有する遮蔽板20をユニット部1,1’間に挟んで設置することが容易になる。
【0047】
また、
図2に示すような形態で本発明に係る双方向通話装置を遮蔽板20に取り付けて使用する際には、ユニット部1,1’の背面に摩擦係数の高い弾性体9を設けることにより、遮蔽板20に安定して固定することができる。また、
図2に示すような形態で遮蔽板20に取り付けた際に、ユニット部1,1’が相互に近接する方向の力を生じるように、屈曲部6にバネ等を使用して付勢することも望ましい。また、回転軸8,8’の回転の際に所定の抵抗を示す構造とすることで、双方向通話装置を遮蔽板20に取り付けた際に、その姿勢が保たれるようにすることができる。
【0048】
回転軸8,8’の回転の際に所定の抵抗を生じるための機構として、回転軸8,8’が挿入される部材の材質や、当該部材に設けられて回転軸8,8’が貫入される穴部のサイズ等を適宜設定することで、その回転の際に生じる摩擦力を調整することができる。また、回転軸8,8’として、回転体に対して所定の制動トルクを付与するための構造を有する、いわゆるトルクヒンジとすることによって、双方向通話装置を遮蔽板20に取り付けた際の姿勢が保たれるようにすることが可能である。
【0049】
上記のように、ユニット部1,1’間の距離が縮小するように屈曲部6を付勢したり、回転軸8,8’の回転の際に所定の抵抗を示す構造とすると共に、ユニット部1,1’の背面と遮蔽板20の間に弾性体9を介在させることによって、本発明に係る双方向通話装置を遮蔽板20により安定して固定することができる。
【0050】
本発明に係る双方向通話装置において、ユニット部1,1’間を連結するヒンジ部5の構造は上記説明した構造に限定されず、例えば、屈曲部6の構造として、例えば、特許文献4に記載されるような可撓性を有すると共に、所定の姿勢で固定可能な、いわゆるフレキシブルアームと称される構造とすることで、本発明に係る双方向通話装置を固定して使用する遮蔽板20等の厚みに対する自由度を向上することができる。
【0051】
図4には、本発明の係る双方向通話装置のヒンジ部5の他の構成例と、その動作を示す。
図4(b)は、
図4(a)における「A」の方向から観察した状態を示す。
図4に示す形態では、ユニット部1,1’の筐体をアーム部として使用し、ユニット部1,1’の筐体に対してそれぞれ回転軸8を介してアーム部7Aを結合することでヒンジ部5が構成される。
図4に示す形態とすることで、ヒンジ部5がユニット部1,1’の筐体から突出せず、
図1,3等と比較して双方向通話装置を小型に形成することができる。
【0052】
図4に示す形態の双方向通話装置は、ユニット部1,1’間に遮蔽板20を挟む状態で設置される他、回転軸8をそれぞれ90度程度回転させることによりユニット部1,1’を同一の方向に向けることが可能であり、遮蔽板20の下部の空間を利用して、遮蔽板20の両側にそれぞれユニット部1,1’を設置することが可能である。
【0053】
図5には、本発明の係る双方向通話装置のヒンジ部5の他の構成例と、その動作を示す。
図5(b)は、
図5(a)における「A」の方向から観察した状態を示す。
図5に示すヒンジ部5は、アーム部7、7’に対して、その間に回転軸8を介してアーム部7Aを設けることにより、二つの回転軸8を有する屈曲部6を有すると共に、当該アーム部7、7’がそれぞれユニット部1,1’に対して回転軸8’を介して結合された構造を有する。
図3(b)や
図4に示すヒンジ部5と比較して、
図5に示す構造を有することにより、アーム部7、7’の姿勢とは独立にユニット部1,1’の方向を決定することが可能になる。また、特に通話装置として使用しない際に、アーム部7、7’を折り畳むことが可能になり、ユニット部1,1’の背面に凹部を設けること等により、コンパクトに収納することができる。
【0054】
なお、
図5においては二つの回転軸8を有する屈曲部6を使用する例について記載しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、
図1に示すように一つの回転軸8を有する屈曲部6を使用することも可能である。一方、屈曲部6に二つの回転軸8を有し、それぞれの回転軸8の可動範囲を180度以上にすることによって、ユニット部1,1’とアーム部7、7’とが採ることのできる姿勢のバリエーションを広げることができる。
【0055】
図6には、
図5に示す双方向通話装置を、遮蔽板20に取り付けて使用する際の各種形態の例を示す。
図6(a)に示すように、アーム部7、7’の間に遮蔽板20を挟み込むように配置することにより、当該配置された状態で回転軸8’の動作によりユニット部1,1’の方向をアーム部7、7’の姿勢とは独立して適宜調整可能である。本発明の係る双方向通話装置を用いて、より明瞭な会話を行おうとする際には、指向性の高いスピーカー2やマイク3を使用すると共に、ユニット部1,1’が対話者に対して正対して設置されることが望ましい。
図6(a)に示す形態で双方向通話装置を遮蔽板20に取り付けることにより、対話者がユニット部1,1’の方向を適宜設定することが可能であり、ユニット部1,1’を対話者に対して正対等して設置することが容易となり、特に指向性の高いスピーカー2やマイク3の特徴を活かすことが可能となる。
【0056】
また、
図6(b)に示すように、
図6(a)の状態に対して回転軸8を180度回転させることにより、
図3(b)と同様な態様で双方向通話装置を使用することができる。
図6(b)に示す態様で使用することにより、遮蔽板20の「縁(ヘリ)」よりも内側であり、より対話者の目線に近い位置にユニット部1,1’を設置することが可能であり、特に指向性の高いスピーカー2やマイク3を有するユニット部を使用した際に会話の明瞭さを高めることができる。
更に、遮蔽板20の下部の空間を利用して、
図6(c)に示す態様で本発明の係る双方向通話装置を机等21の上に設置して、ユニット部1,1’の向きを適宜調整して使用することができる。
【0057】
図5,6では、ユニット部1,1’に対してアーム部7、7’をそれぞれ結合させる際の構造として、一つの軸の周囲に動作が可能な回転軸8’を介して結合する構造を示すが、当該結合部分の構造はこれに限定されず、いわゆるボールジョイントと呼ばれるような可動の自由度の高い構造によってユニット部1,1’に対してアーム部7、7’を結合させることにより、双方向通話装置が遮蔽板20等に取り付けられた状態で、ユニット部1,1’の向きをより自由に調整することが可能となる。
【0058】
図7には、机等21の上に設置された遮蔽板20に対して、本発明に係る双方向通話装置を取り付けて使用する際の形態の例について示す。上記で説明したように、本発明に係る双方向通話装置は、そのヒンジ部5によって遮蔽板20の上部を跨ぐ様な形態(
図7(a))で設置して当該遮蔽板20等の両側にそれぞれユニット部1,1’を設置して使用することが可能である。また、遮蔽板20と机等21の間の空間を利用して、当該空間にヒンジ部5を通す(
図7(d),(e))ことにより、遮蔽板20等の両側にそれぞれユニット部1,1’を設置して使用することが可能である。
【0059】
また、ユニット部1,1’を机等21の上に設置した状態で、ヒンジ部5によって遮蔽板20の側方の端部を挟むような形態(
図7(c))で設置可能である他、ヒンジ部5の開閉動作をバネ等により付勢することにより、対話者の目線の高さ付近の遮蔽板20の側方の端部に取り付けて設置可能である(
図7(b))である。
【0060】
上記説明したように、本発明に係る双方向通話装置は、スピーカー2やマイク3等の取り付けられた1対のユニット部1,1’を、屈曲部6を有することで開閉動作が可能なヒンジ部5により連結した構造を有することにより、遮蔽板20等を介して会話をする際に、各種の形態で当該ユニット部1,1’をそれぞれ遮蔽板20等の反対側に手軽に配置することが可能となり、遮蔽板20等を介した会話の困難性を緩和することが可能となる。
【0061】
また、ユニット部1,1’に取り付けられたスピーカー2やマイク3等の間で音声を媒介する電気回路の配線を、例えば、ヒンジ部5の内部を介した有線の配線とすることにより、周囲の電波の状態等に起因して会話が阻害される等の問題を生じ難く、本発明に係る双方向通話装置を携帯し、必要に応じて既設の遮蔽板20等に設置することにより安定して使用することができる。
【0062】
更に、本発明に係る双方向通話装置は、対面して会話等する際以外にも、複数の人物が同じ方向を向いて隣接して着席等して作業や食事等をする際に、各人物の間を隔てて設けられた遮蔽板20にそれぞれ設けられることで、隣接する人物間の会話を補助することができる。
【0063】
また、本発明に係る双方向通話装置の使用は、遮蔽板20等を介した会話に限定されず、周囲の騒音により良好な会話が困難な状況等において、本発明に係る双方向通話装置を適宜の姿勢で机上等に設置して使用することにより、会話の困難性を緩和することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る双方向通話装置は、特に遮蔽板20等を介した会話の困難性を緩和する等の目的に使用されるものであって、各種の産業活動等において利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1,1’ ユニット部
2,2’ スピーカー
3,3’ マイク
5 ヒンジ部
6 屈曲部
7,7’,7A アーム部
8,8’ 回転軸
9 弾性体
10 双方向通話装置
20 遮蔽板
21 机等