(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071568
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】補助動力装置および自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 1/10 20100101AFI20230516BHJP
【FI】
B62M1/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021196524
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】517000586
【氏名又は名称】鈴木 一弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一弘
(57)【要約】
【課題】 主として機械的に構成され、人力を駆動源とする車両の運動エネルギーを回収し、当該車両の動力として再利用する補助動力装置および当該補助動力装置を備えた自転車を提供する。
【解決手段】 補助動力装置100は、自転車10の後輪650に連動して回転する連動ホイール5、連動ホイール5の外周面に当接して、摩擦により連動ホイール5の回転力を回収する入力ホイール2、入力ホイール2と互いに当接するように付勢され、反対の回転方向となるように回転力を伝達し合い、連動ホイール5の外周面に当接して、連動ホイール5に回転力を付与する出力ホイール3、入力ホイール2および出力ホイール3の、いずれか一方、あるいは双方に当接して、入力ホイール2および出力ホイール3の回転を制御する役割を担う制御ホイール4より構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転体と、
前記第1回転体と、互いに反対の回転方向となるように、回転力を伝達し合う第2回転体と、
少なくとも、前記第1回転体と前記第2回転体の双方に当接している状態と、前記第1回転体と前記第2回転体の双方に同時には当接していない状態と、の2つの状態をとり得るように構成される第3回転体と、
運動体の運動に連動して回転する第4回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体、に接続されるエネルギー蓄積手段と、を備え、
前記第1回転体を前記第4回転体に当接させて、前記運動体から運動エネルギーを回収し、
前記第3回転体を前記第1回転体と前記第2回転体の双方に当接させて、エネルギー蓄積状態を保持し、
前記第2回転体を前記第4回転体に当接させて、前記運動体に運動エネルギーを付与することを特徴とする、補助動力装置。
【請求項2】
第1回転体と、
前記第1回転体と、互いに反対の回転方向となるように、回転力を伝達し合う第2回転体と、
少なくとも、前記第2回転体に対して、当接している状態と、当接していない状態と、の2つの状態をとり得るように構成され、かつ、回転方向を一方向に規制されている第3回転体と、
運動体の運動に連動して回転する第4回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体、に接続されるエネルギー蓄積手段と、を備え、
前記第1回転体を前記第4回転体に当接させて、前記運動体から運動エネルギーを回収し、
前記第3回転体を前記第2回転体に当接させて、エネルギー蓄積状態を保持し、
前記第2回転体を前記第4回転体に当接させて、前記運動体に運動エネルギーを付与することを特徴とする、補助動力装置。
【請求項3】
前記第1回転体と前記第2回転体は、互いの転動面が当接して、回転力を伝達し合うことを特徴とする、請求項1または2に記載の補助動力装置。
【請求項4】
第1回転体と、
前記第1回転体と、互いに同じ回転方向となるように、回転力を伝達し合う第2回転体と、
運動体の運動に連動して回転する第3回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体、に接続されるエネルギー蓄積手段と、を備え、
前記第1回転体を前記第3回転体に当接させて、前記運動体から運動エネルギーを回収し、
前記第2回転体を前記第3回転体に当接させて、前記運動体に運動エネルギーを付与することを特徴とする、補助動力装置。
【請求項5】
回転方向を一方向に規制されている回転体、をさらに備え、
前記回転体は、少なくとも、前記第1回転体または前記第2回転体のいずれか一方に対して、当接している状態と、当接していない状態と、の2つの状態をとり得るように構成されることを特徴とする、請求項4に記載の補助動力装置。
【請求項6】
第1回転体と、
運動体の運動に連動して回転する第2回転体と、
前記運動体の運動に連動して回転し、前記第2回転体と同じ方向に回転する第3回転体と、
前記第1回転体に接続されるエネルギー蓄積手段と、を備え、
前記第1回転体を前記第2回転体に当接させて、前記運動体から運動エネルギーを回収し、
前記第1回転体を前記第3回転体に当接させて、前記運動体に運動エネルギーを付与することを特徴とする、補助動力装置。
【請求項7】
回転方向を一方向に規制されている回転体、をさらに備え、
前記回転体は、少なくとも、前記第1回転体に対して、当接している状態と、当接していない状態と、の2つの状態をとり得るように構成されることを特徴とする、請求項6に記載の補助動力装置。
【請求項8】
前記エネルギー蓄積手段は、ぜんまいばねを使用するものであることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の補助動力装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の補助動力装置を備えた自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助動力装置および自転車に関する。詳しくは、主として機械的に構成され、人力を駆動源とする車両の運動エネルギーを回収し、当該車両の動力として再利用する補助動力装置および当該補助動力装置を備えた自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
人力を駆動源とする車両としては、前輪(操舵輪)、後輪(駆動輪)の2輪を備え、踏力によりクランクを回転させて推進力とする自転車が一般的である。2輪の自転車は機動性に富み、軽快な操縦性を有する乗り物ではあるが、その構造上、発進時あるいは低速走行時においては、ふらつきや転倒のおそれが高くなるといった側面を有する。
【0003】
従来、上述の点の解消等を目的として、電機モータの動力を電気的に制御し、踏力を補助する自転車が開発されており、普及も進んでいる。また、下記特許文献1には、主に機械的に構成され、自動的にエネルギーの回収、蓄積および放出を行う動力伝達機構を、自転車に適用する考案についての記載がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電機モータの動力を補助動力とする自転車は、複雑な機構を有するがために部品点数も多く、おしなべて高価である。また、自転車操縦者は、搭載バッテリーの充電を頻繁に行わなければならず、連続走行の限界についても常に念頭に置いておく必要がある。
【0006】
また、上記特許文献1に記載された動力伝達機構を備える自転車においては、エネルギーの回収、蓄積および放出が機械的、かつ、自動的に行われるものであるがゆえに、実走行における様々な走行条件に応じた制御が適切なタイミングで行われうるのか、すなわち自転車操縦者の操作判断に一致する制御となるものなのか、といった点について疑問の余地がある。さらに制御系の消費するエネルギーについても懸念されるところである。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、自転車操縦者自らの手動力で操作することを基本とし、主として機械的に構成され、人力を駆動源とする車両の運動エネルギーを回収し、当該車両の動力として再利用する補助動力装置および当該補助動力装置を備えた自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る補助動力装置は、第1回転体と、前記第1回転体と、互いに反対の回転方向となるように、回転力を伝達し合う第2回転体と、少なくとも、前記第1回転体と前記第2回転体の双方に当接している状態と、前記第1回転体と前記第2回転体の双方に同時には当接していない状態と、の2つの状態をとり得るように構成される第3回転体と、運動体の運動に連動して回転する第4回転体と、前記第1回転体と前記第2回転体、に接続されるエネルギー蓄積手段と、を備え、前記第1回転体を前記第4回転体に当接させて、前記運動体から運動エネルギーを回収し、前記第3回転体を前記第1回転体と前記第2回転体の双方に当接させて、エネルギー蓄積状態を保持し、前記第2回転体を前記第4回転体に当接させて、前記運動体に運動エネルギーを付与することを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の態様に係る補助動力装置は、第1回転体と、前記第1回転体と、互いに反対の回転方向となるように、回転力を伝達し合う第2回転体と、少なくとも、前記第2回転体に対して、当接している状態と、当接していない状態と、の2つの状態をとり得るように構成され、かつ、回転方向を一方向に規制されている第3回転体と、運動体の運動に連動して回転する第4回転体と、前記第1回転体と前記第2回転体、に接続されるエネルギー蓄積手段と、を備え、前記第1回転体を前記第4回転体に当接させて、前記運動体から運動エネルギーを回収し、前記第3回転体を前記第2回転体に当接させて、エネルギー蓄積状態を保持し、前記第2回転体を前記第4回転体に当接させて、前記運動体に運動エネルギーを付与することを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の態様に係る補助動力装置は、第1または第2の態様に係る補助動力装置であって、前記第1回転体と前記第2回転体は、互いの転動面が当接して、回転力を伝達し合うことを特徴とする
【0011】
本発明の第4の態様に係る補助動力装置は、第1回転体と、前記第1回転体と、互いに同じ回転方向となるように、回転力を伝達し合う第2回転体と、運動体の運動に連動して回転する第3回転体と、前記第1回転体と前記第2回転体、に接続されるエネルギー蓄積手段と、を備え、前記第1回転体を前記第3回転体に当接させて、前記運動体から運動エネルギーを回収し、前記第2回転体を前記第3回転体に当接させて、前記運動体に運動エネルギーを付与することを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の態様に係る補助動力装置は、第4の態様に係る補助動力装置であって、回転方向を一方向に規制されている回転体、をさらに備え、前記回転体は、少なくとも、前記第1回転体または前記第2回転体のいずれか一方に対して、当接している状態と、当接していない状態と、の2つの状態をとり得るように構成されることを特徴とする。
【0013】
本発明の第6の態様に係る補助動力装置は、第1回転体と、運動体の運動に連動して回転する第2回転体と、前記運動体の運動に連動して回転し、前記第2回転体と同じ方向に回転する第3回転体と、前記第1回転体に接続されるエネルギー蓄積手段と、を備え、前記第1回転体を前記第2回転体に当接させて、前記運動体から運動エネルギーを回収し、前記第1回転体を前記第3回転体に当接させて、前記運動体に運動エネルギーを付与することを特徴とする。
【0014】
本発明の第7の態様に係る補助動力装置は、第6の態様に係る補助動力装置であって、回転方向を一方向に規制されている回転体、をさらに備え、前記回転体は、少なくとも、前記第1回転体に対して、当接している状態と、当接していない状態と、の2つの状態をとり得るように構成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の第8の態様に係る補助動力装置は、第1乃至第7のいずれかの態様に係る補助動力装置であって、前記エネルギー蓄積手段は、ぜんまいばねを使用するものであることを特徴とする。
【0016】
本発明の第9の態様に係る自転車は、第1乃至第8のいずれかの態様に係る補助動力装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成によれば、主として機械的に構成され、人力を駆動源とする車両の運動エネルギーを回収し、当該車両の動力として再利用する補助動力装置および当該補助動力装置を備えた自転車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、自転車の後輪に、第1の実施形態の補助動力装置を設置した状態を示す正面図である。
【
図2】
図2は、自転車の後輪に、第1の実施形態の補助動力装置を設置した状態を示す側面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の補助動力装置を備える自転車を示す側面図である。
【
図4】
図4は、連動ホイールおよび当該連動ホイールを自転車の後輪に取り付ける方法を説明する斜視図である。
【
図5】
図5は、支持部材を示すものであり、(A)は、正面図、(B)は、側面図、(C)は、背面図、(D)は、上面図である。
【
図6】
図6は、傾動アーム、入力ホイールおよびぜんまいばねユニットを示すものであり、(A)は、傾動アームに入力ホイールおよびぜんまいばねユニットが設置された状態を示す正面図、(B)は、その側面図、(C)は、その背面図である。(D)は、ぜんまいばねユニットおよび軸の側面図である。
【
図7】
図7は、傾動アーム、出力ホイールおよびぜんまいばねユニットを示すものであり、(A)は、傾動アームに出力ホイールおよびぜんまいばねユニットが設置された状態を示す正面図、(B)は、その側面図、(C)は、その背面図である。(D)は、ぜんまいばねユニットおよび軸の側面図である。
【
図8】
図8は、傾動アームに出力ホイールおよびぜんまいばねユニットを設置する方法を説明する斜視図である。
【
図9】
図9は、制御アームに制御ホイールおよびワンウェイクラッチユニットが設置され、さらに当該制御アームが案内部材および車体側のブラケットに、上下方向移動可能に設置される状態を示すものであり、(A)は、正面図、(B)は、側面図、(C)は、背面図である。(D)は、ワンウェイクラッチユニットおよび軸の側面図である。
【
図10】
図10は、制御アームおよび案内部材を、車体側のブラケットに設置する方法を説明する斜視図である。
【
図11】
図11は、軸受ホルダを示すものであり、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。(C)は、(B)のXI-XI線断面図である。
【
図12】
図12は、補強アームおよび支持部材が、固定部材によって車体のフレームに固定されている状態を示す部分拡大図である。
【
図13】
図13は、補強アームおよび支持部材を、車体のフレームに固定するために用いる固定部材を示すものであり、(A)は、正面図、(B)は、背面図、(C)は、底面図である。(D)は、当該固定部材の使用方法を説明する一部透視図である。
【
図14】
図14は、操作ユニットを示すものであり、(A)は、上面図、(B)は、一部分解図、(C)は、正面図、(D)は、側面図である。
【
図15】
図15は、第1の実施形態の補助動力装置の動作の様相を模式的に示す正面図である。(A)は、エネルギーの回収(入力)の状態を示し、(B)は、無操作状態を示し、(C)は、エネルギーの放出(出力)の状態を示している。
【
図16】
図16は、自転車の後輪に、第2の実施形態の補助動力装置を設置した状態を示す正面図である。
【
図17】
図17は、自転車の後輪に、第2の実施形態の補助動力装置を設置した状態を示す側面図である。
【
図18】
図18は、第2の実施形態の補助動力装置に用いる連動リングおよび当該連動リングを設置するための加工が施された自転車の後輪を示すものであり、(A)は、連動リングの正面図、(B)は、その側面図、(C)は、自転車の後輪の正面図、(D)は、自転車の後輪に連動リングを設置した状態を示す正面図である。
【
図19】
図19は、第2の実施形態の補助動力装置の制御ホイール、ワンウェイクラッチユニット、制御アームおよび案内部材を示すものであり、(A)は、正面図、(B)は、側面図である。
【
図20】
図20は、第2の実施形態の補助動力装置の動作の様相を模式的に示す正面図である。(A)は、エネルギーの回収(入力)の状態を示し、(B)は、無操作状態を示し、(C)は、エネルギーの放出(出力)の状態を示している。
【
図21】
図21は、自転車の後輪に、第3の実施形態の補助動力装置を設置した状態を示す正面図である。
【
図22】
図22は、自転車の後輪に、第3の実施形態の補助動力装置を設置した状態を示す側面図である。
【
図23】
図23は、第3の実施形態の補助動力装置の動作の様相を模式的に示す正面図である。(A)は、エネルギーの回収(入力)の状態を示し、(B)は、無操作状態を示し、(C)は、エネルギーの放出(出力)の状態を示している。
【
図24】
図24は、自転車の後輪に、第4の実施形態の補助動力装置を設置した状態を示す正面図である。
【
図25】
図25は、自転車の後輪に、第4の実施形態の補助動力装置を設置した状態を示す側面図である。
【
図26】
図26は、第4の実施形態の補助動力装置の動作の様相を模式的に示す正面図である。(A)は、エネルギーの回収(入力)の状態を示し、(B)は、無操作状態を示し、(C)は、エネルギーの放出(出力)の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の補助動力装置の複数の実施形態を、添付の図面に基づいて説明する。なお、各図において、同一もしくは相当する箇所には同じ符号を付し、重複する説明を避けるものとする。また、説明中、方向を表す用語である前、後、左、右、上、下は、特に記載の無い場合には、本発明の補助動力装置を備える自転車に乗車する、自転車操縦者の乗車姿勢を基準として定められている。
【0020】
[第1の実施形態]
<全体の構成>
図1および
図2は、第1の実施形態の補助動力装置100を示すものであり、
図1は正面図、
図2は側面図である。第1の実施形態の補助動力装置100は、自転車10の後輪650に連動して回転する連動ホイール5、連動ホイール5の外周面に当接して、摩擦により連動ホイール5の回転力を回収する入力ホイール2、入力ホイール2と互いに当接するように付勢され、反対の回転方向となるように回転力を伝達し合い、連動ホイール5の外周面に当接して、連動ホイール5に回転力を付与する出力ホイール3、入力ホイール2および出力ホイール3の、いずれか一方、あるいは双方に当接して、入力ホイール2および出力ホイール3の回転を制御する役割を担う制御ホイール4より構成される。
【0021】
図3に示すように、第1の実施形態の補助動力装置100は、自転車10の後輪650の左側部に設置される。自転車10は、前輪640、後輪650を有する一般的な二輪の自転車であり、クランクペダル630、ハンドル690、前輪ブレーキ660、後輪ブレーキ670(ステー675)をさらに備える。クランクペダル630を自転車操縦者(図示せず)が踏み込むことで生じる回転力は、チェーン610、リアスプロケット611を経て、後輪650に伝達される。
【0022】
自転車10の後輪軸615は、2つのナット800によって自転車10のフレームであるチェーンステー600(左側)およびチェーンステー601(右側)に支持される。チェーンステー600およびシートステー602は、左側の後輪軸615付近で、それぞれの端部が溶接接合されており、チェーンステー601およびシートステー603は、右側の後輪軸615付近で、それぞれの端部が溶接接合されている。なお、
図2において示される左側のスペーサ616および右側のスペーサ617は、第1の実施形態の補助動力装置100を自転車10に備え付ける際に、幅方向(左右方向)のスペースを確保し、位置を決定するために必要となるものである。
【0023】
補助動力装置100は、各々のホイールが当接あるいは離間することで、回転力の伝達の断接を行う。具体的には、入力ホイール2が連動ホイール5に当接して、連動ホイール5の回転エネルギーを回収、蓄積し、出力ホイール3が連動ホイール5に当接して、連動ホイール5に回転エネルギーを付与する。
図6および
図7に示すように、入力ホイール2は、ぜんまいばねユニット12に接続する軸7上に設置され、出力ホイール3は、ぜんまいばねユニット13に接続する軸8上に設置される。すなわち、エネルギー蓄積手段としてのぜんまいばねユニットが各々のホイールに1個、計2個(巻き上げ方向は互いに反対となっている)使用される構成となっている。なお、入力ホイール2の径と出力ホイール3の径は同じである。
【0024】
図1、
図5乃至
図8に示すように、入力ホイール2は回動アーム22の上部に、出力ホイール3は回動アーム23の上部にそれぞれ設置される。回動アーム22および回動アーム23は、回動アーム22を左側(
図1における紙面手前側)、回動アーム23を右側(
図1における紙面奥側)に重ね、それぞれのアームが正面視で略X字形状となるように配される。回動アーム22および回動アーム23は、略X字の交点となる部分であり、それぞれのアームの長さ方向のほぼ中央に位置する場所に設けられる孔(孔22dおよび孔23d)をボルト810が貫き、支持部材70の上端部(孔70a)に、当該ボルト810を中心に回動可能に支持される。
【0025】
また、回動アーム22の下部には、コイルばね36の一端を掛けるための孔22fが設けられ、回動アーム23の下部には、コイルばね37の一端を掛けるための孔23fが設けられており、それらのコイルばねの引っ張り力により、回動アーム22および回動アーム23の上部は、互いに近接する方向に付勢されている(コイルばね36とコイルばね37は、同様の性能を有する)。それにより、入力ホイール2および出力ホイール3は、それぞれのライニング(ライニング2bおよびライニング3b)間の摩擦により、回転方向が反対となるように互いに回転力を伝達し合う。
【0026】
したがって、操作ユニット90(後に詳述)を操作しない場合、すなわち無操作状態において、入力ホイール2および出力ホイール3のそれぞれの回転中心を結ぶ仮想線は、地面に対して略平行である。さらに、連動ホイール5の外周面に対して入力ホイール2の転動面および出力ホイール3の転動面は、一定の距離を保って離間した状態に調整されている。すなわち、無操作状態において後輪650は、補助動力装置100に対して非接続の状態となっている。なお、上記の一定の距離とは、操作ユニット90の操作によって、回動アーム22および回動アーム23がボルト810を中心として回動した際に、入力ホイール2または出力ホイール3が連動ホイール5に当接して、その回転力を伝達する(される)ことを可能とし、かつ、微小な操作に過剰に反応しないための、冗長性を持たせることのできる程度の距離である。
【0027】
図3、
図14および
図15に示すように、補助動力装置100は、自転車操縦者(図示せず)が操作ユニット90を手動操作(操作ユニット90のレバー91を押す、引く、もしくは無操作)することによって動作する。すなわち、回動アーム23の下端部に設けられるホルダ33に掛けられたワイヤ80a(入力側ケーブル80内を挿通)を引く(レバー91を後方に引く)ことで、当該回動アーム23の上部が前方へと回動し、当該回動アーム23に設置される出力ホイール3が、回動アーム22に設置され、当該出力ホイール3に当接している入力ホイール2を前方へと押圧して、当該入力ホイール2が連動ホイール5に当接し、無操作状態において、コイルばね36およびコイルばね37の付勢力により、入力ホイール2および出力ホイール3は、双方共に連動ホイール5から離間して、自転車10の後輪650は、補助動力装置100に対して非接続の状態となり、回動アーム22の下端部に設けられるホルダ32に掛けられたワイヤ81a(出力側ケーブル81内を挿通)を引く(操作ユニット90のレバー91を前方へと押し込む)ことで、回動アーム22の上部が後方へと回動し、当該回動アーム22に設置された入力ホイール2が、回動アーム23に設置され当該入力ホイール2に当接している出力ホイール3を後方へと押圧して、当該出力ホイール3が連動ホイール5に当接する。
【0028】
補助動力装置100は、回動アーム22および回動アーム23を回動させて入力ホイール2を連動ホイール5に当接(この時、回転方向を一方向に規制されている制御ホイール4は、出力ホイール3にのみ当接)させることによって、回転運動する連動ホイール5からエネルギーを回収、蓄積し、制御ホイール4が出力ホイール3にのみ当接し、かつ、入力ホイール2が連動ホイール5から離間している状態、あるいは無操作状態(制御ホイール4は、入力ホイール2および出力ホイール3の双方に当接)において、エネルギー蓄積状態を保持し、回動アーム22および回動アーム23を回動させて出力ホイール3を連動ホイール5に当接(この時、制御ホイール4は、入力ホイール2にのみ当接)させることによって、連動ホイール5に回転力を付与する。なお、回転運動する連動ホイール5の回転方向は、自転車10の前進方向のみ(一方向)を想定したものとなっている。
【0029】
図9に示すように、制御ホイール4は、ワンウェイクラッチユニット14に接続する軸9に一体回転可能に配設される。したがって、上述した無操作状態(制御ホイール4が入力ホイール2と出力ホイール3の双方に同時に当接する状態)に限らず、制御ホイール4が出力ホイール3に当接している状態にあれば、ワンウェイクラッチユニット14の有する、回転方向を一方向に規制する作用により、エネルギー蓄積状態の保持が可能となる。この場合、回転運動する連動ホイール5に入力ホイール2を断続的に当接させてエネルギーを蓄積させることもできる。
【0030】
しかるに、本発明はこれに限られず、ワンウェイクラッチユニット14を使用しない構成とすることも可能である。その場合においては、蓄積されたエネルギーの保持は、制御ホイール4(ワンウェイクラッチユニット14は除かれている)に、入力ホイール2および出力ホイール3の双方を同時に当接させることによってのみ可能となるため、断続的な入力によるエネルギーの蓄積は困難となるが、簡易な構成となり、重量およびコストの面で利点がある。なお、以下に説明する第2の実施形態における補助動力装置200の制御ホイール204についても同様に、ワンウェイクラッチユニット214を使用しない構成とすることが可能である。
【0031】
<連動ホイール>
図1、
図2および
図4に示すように、連動ホイール5は、ハブ625に結合する受け部材50(ねじ孔50a)に、6本のボルト865によって固定され、後輪650(スポーク651、リム652およびタイヤ653からなる)と回転中心を同じくして、当該後輪650と同期して回転する。なお、受け部材50は、ハブ625のフランジ部(図示せず)に溶接接合されている。
【0032】
連動ホイール5は、スポーク部5aおよび当該スポーク部5aの外周面を被覆するライニング5bからなる。スポーク部5aは、アルミ等の金属で形成されるものであってもよいが、剛性を確保できるものであれば樹脂を素材とするものであってもよい。また、ライニング5bは、ゴムあるいは樹脂で形成されるものであってもよいが、ある程度の摩擦および耐磨耗性を有していることが必要である。なお、スポーク部5aが金属で形成されており、入力ホイール2のライニング2bおよび出力ホイール3のライニング3bが、スポーク部5aの外周面に対して十分な摩擦を有する材質のものであれば、ライニング5bを施さずに、スポーク部5aの外周面に直接それらのホイールを当接させ、回転力を伝達させることも可能である。また、樹脂性のスポーク部の外周面に金属製のライニングを施すこともできる。
【0033】
<支持部材>
図1、
図2および
図5に示すように、回動アーム22および回動アーム23を支持する支持部材70は、下端部に設けられる長孔70cを後輪軸615が貫いて、当該後輪軸615上に設置される。また、上述したように、回動アーム22および回動アーム23は、ボルト810が、上端部に開口する孔70a、回動アーム22の孔22dおよび回動アーム23の孔23dを貫いて、支持部材70に、ボルト810を中心に、回動可能に支持される。また、支持部材70には、入力側ケーブル80の端部を支持する枝支持部材73(取り付け孔73a)、出力側ケーブル81の端部を支持する枝支持部材72(取り付け孔72a)、入力側のばね孔部材79(ばね孔79a)および出力側のばね孔部材78(ばね孔78a)が溶接接合されている。
【0034】
さらに、支持部材70には、L字型の補強部材60の一端部を取り付けるための長孔70bが開設されており、当該補強部材60の一端部は、ボルト811により支持部材70に固定される。補強部材60の屈曲部は、ボルト813、2個の固定部材710(後に詳述)およびスペーサ711により、シートステー602に固定され、補強部材60の他端部は、ボルト812によりブラケット保持部材76に固定される。また、ブラケット保持部材76には、2個のボルト867により連結部材75が固設され、当該連結部材75には、2個のボルト866によりブラケット74が固設される。なお、支持部材、補強部材、保持部材および連結部材は、鉄等の強度の高い金属を素材として形成されるものであることが好ましい。
【0035】
回動アーム22および回動アーム23は、ばねワッシャ(図示せず)が間装され、間隔を保ってボルト810にナット(図示せず)が固定されて、ボルト810の長さ方向に押圧付勢されつつ、支持部材70に回動可能に支持されるが、その他の支持の方法として、軸受(針状ころ軸受等)を用いる構成としてもよい。なお、以下の説明中、支持部材に回動アームを回動可能に支持する方法は同様である。
【0036】
<回動アーム>
図6乃至
図8は、回動アーム22、回動アーム23、入力ホイール2および出力ホイール3を示すものである。回動アーム22および回動アーム23は、回動アーム22が回動アーム23と比較して左右方向においてアームの板厚の分長くなっていることの他、回動アーム22に設けられる、コイルばね36の端部を掛けるための孔22f、切り欠き加工部22aおよびホルダ32に施されるワイヤを通すための加工の位置(図示せず)が、回動アーム23に設けられる、それぞれに対応する位置とは、互いに前後方向に対称の位置となることを除けば、ほぼ同じ構成のものである。したがって以下では、回動アーム23についてのみ説明する。
【0037】
図7および
図8に示すように、回動アーム23は、略U字の一端を延長したものを上下に逆さまにした形状を呈するが、屈曲部は直角となっている。当該略U字形状の部分の内側に出力ホイール3およびぜんまいばねユニット13が設置され、下端部にワイヤ80aの端部を係止するためのホルダ33が設けられる。また、回動アーム23には、長さ方向の中央部に回動の中心となる孔23d、下部にコイルばね37の端部を掛けるための孔23f、ぜんまいばねユニット13を設置するためのボルト挿通孔23e(ボルト862によって設置される)、軸受ホルダ700(後に詳述)を設置するためのねじ孔23c(ボルト870によって設置される)および当該軸受ホルダ700のハウジング部700aの嵌装する孔23bが設けられる。さらに、当該孔23bの一部分には、ぜんまいばねユニット13に接続する軸8を通すための切り欠き加工(切り欠き加工部23a)が施される。また、軸8の右側端部は、軸受ホルダ700に嵌装される軸受705を介して、回動アーム23に回転可能に支持される。なお、回動アーム22および回動アーム23は、鉄等の強度の高い金属を素材として形成されるものであることが好ましい(以下、回動アームの材質について同様)。
【0038】
<入力ホイール、出力ホイール>
入力ホイール2は、スポーク部2aおよびライニング2bからなり、出力ホイール3は、スポーク部3aおよびライニング3bからなる。入力ホイール2の構成は、出力ホイール3の構成と同様のものであるためその説明を省略し、以下では出力ホイール3についてのみ詳細に説明する。
図8に示すように、出力ホイール3は、スポーク部3aおよび当該スポーク部3aの外周を被覆するライニング3bからなる。スポーク部3aは、アルミ等の金属で形成されるものであってもよいが、剛性を確保できるものであれば樹脂を素材とするものであってもよい。また、ライニング3bは、ゴムあるいは樹脂で形成されるものであってもよいが、入力ホイール2に当接して互いに回転力を伝達するために、ある程度の摩擦および耐磨耗性を有しているものであることが必要である。なお、ぜんまいばねユニット13に接続する軸8の挿通する部分であり、スポーク部3aの中央部に嵌装、固設される中心部3cは、スポーク部3aが樹脂あるいはアルミ等の軽金属を素材とする場合には、鉄等の剛性を有する金属によって形成されることが好ましい。
【0039】
出力ホイール3の中心部3cには、ぜんまいばねユニット13に接続する軸8(キー8bを備える)を挿通させるための軸挿通孔3dが設けられる。また、スポーク部3aの中心付近の適した場所には、軸挿通孔3dに開口するねじ孔3eが設けられ、当該ねじ孔3eにセットスクリュー890を螺合、締結して、出力ホイール3の軸8上における軸方向移動が規制される。なお、ぜんまいばねユニット13の巻き上げ方向は、出力ホイール3が連動ホイール5に当接してエネルギーを放出した(巻き付勢が解かれた)際に自転車10が前進する回転方向である。また、入力ホイール2に接続するぜんまいばねユニット12の巻き上げ方向は、ぜんまいばねユニット13の巻き上げ方向とは逆となる。
【0040】
<ぜんまいばねユニット>
図6に示すように、ぜんまいばねユニット12は、カバー12aおよび本体部12bからなる。本体部12bには、回動アーム22に固設(2個のボルト862により締結される)するための2個のねじ孔(図示せず)が設けられている。また、ぜんまいばねユニット12に接続する軸7は、軸本体部7aおよびキー7bからなり、当該軸7の一端部は、本体部12bの内部に備えられる軸受(図示せず)によって回転可能に支持される。なお、本体部12bには、4本のビス882によりカバー12aが取り付けられる。
【0041】
ぜんまいばねユニット13は、巻き上げ方向の違いを除けば、ぜんまいばねユニット12の構成と同様のものである。
図7に示すように、ぜんまいばねユニット13は、カバー13aおよび本体部13bからなる。本体部13bの背面には、回動アーム23に固設(2個のボルト862により固設される)するための2個のねじ孔(図示せず)が設けられている。また、ぜんまいばねユニット13に接続する軸8は、軸本体部8aおよびキー8bからなり、当該軸8の一端部は、本体部13bの内部に設置される軸受(図示せず)によって回転可能に支持される。なお、本体部13bには4本のビス882によりカバー13aが取り付けられる。
【0042】
以下、本明細書において、エネルギーを蓄積する手段として用いられるぜんまいばねユニットが有すべき性能および特性について記す。
【0043】
≪ぜんまいばねユニットの性能および特性1≫
ぜんまいばねユニットに要求される性能については、自転車操縦者の体重および脚力、自転車のクランク長、フロントおよびリアのスプロケットの比、駆動タイヤ径、補助動力装置に用いる各ホイール(および連動リング)の径の比等様々な要素を考慮すべきであるが、仮にアシストを必要とする自転車操縦者が、体重の30パーセントをペダルにかけることができるとすれば、その3分の1から半分、すなわち体重の10パーセントから15パーセントをペダルにかける力で、自転車を数メートル(後輪1回転)進ませる程度のアシスト力であっても、速度0からの発進時、あるいは極低速時からの加速時においては、かなり有効なもの(スムーズな発進を可能とすること、およびふらつきを抑えること)であると考えられる。ぜんまいばねユニットの有すべき性能(最大の巻き数および最大の巻き数まで巻かれた際に発生する軸トルク)は、そのような考えに基づいて定められるものとする。
【0044】
≪ぜんまいばねユニットの性能および特性2≫
ぜんまいばねユニットに接続する軸が、最大の巻き数を越えて巻かれた(過巻き)場合に、それによる破損を防止するための機構が備わっていることが必要である。例えば、ぜんまいばねユニットに内蔵されるぜんまいばねの外側端部の係止位置が、過巻きの際には、ぜんまいばねユニットの本体部の内周を移動すること(その都度、係止が復帰することも必要)で破損を防止するものであってもよい。
【0045】
≪ぜんまいばねユニットの性能および特性3≫
巻き上げ方向と反対の方向に巻かれた場合(逆巻き)において、ぜんまいばねユニットに接続する軸が、自由回転可能となる機構が備わっていることが必要である。例えば、軸とぜんまいばねが、ワンウェイクラッチ機構を備える軸受を介して接続される構成であってもよい。そのような構成により、逆巻きによる破損を防止し、さらに、ぜんまいばねユニットの巻き付勢が解かれた後には、軸は自由回転することが可能となる。
【0046】
<制御ホイール>
図9は、制御ホイール4およびワンウェイクラッチユニット14を示すものである。制御ホイール4は、スポーク部4aおよび当該スポーク部4aの外周を被覆するライニング4bからなる。なお、ワンウェイクラッチユニット14に接続する軸9(キー9bを備える)に対して、制御ホイール4を設置する方法およびスポーク部4aの構成の説明、ならびに、ライニング4bの材質等の説明は、上述の入力ホイール2および出力ホイール3の説明、ならびに連動ホイール5のライニング5bの材質の説明に準ずるものであるため省略する。
【0047】
図9(B)に示すように、制御ホイール4は、ワンウェイクラッチユニット14に接続する軸9に一体回転可能に配設される。ワンウェイクラッチユニット14の本体部14bの背面には、2個のねじ孔(図示せず)が設けられており、制御ホイール4は、2個のボルト864が当該ねじ孔に締結され、略U字を上下に逆さまにした形状(ただし屈曲部は直角である)を呈する制御アーム24の左側に設置される。軸9の右側端部は、軸受ホルダ700(ボルト870によって締結される)に嵌装される軸受705を介して、制御アーム24の右側に回転可能に支持される。
【0048】
<ワンウェイクラッチユニット>
図9(D)に示すように、ワンウェイクラッチユニット14は、カバー14aおよび本体部14bからなる。ワンウェイクラッチユニット14に接続する軸9(軸本体部9aおよびキー9b)の一端部は、本体部14bの内部に備えられ,ワンウェイクラッチ機構を有する軸受(図示せず)を介して、一方向に回転可能に支持される。すなわち、制御ホイール4と共に回転する軸9は、入力ホイール2が連動ホイール5に当接してエネルギーを回収する際に、制御ホイール4が出力ホイール3に当接して回転する方向にのみ回転する。なお、
図9(C)に示すように、本体部14bには、4個のねじ884によってカバー14aが取り付けられる。
【0049】
<制御アーム>
図1、
図2、
図9および
図10に示すように、制御アーム24は、案内部材44の内側に、上下方向に摺動移動可能に設置される。案内部材44は、2個のボルト840が、ブラケット74に設けられる孔74bおよび当該案内部材44に設けられる孔44bを貫き、2個のナット844に締結されて、ブラケット74に固設される。
【0050】
制御アーム24の中央部に開設されるねじ孔24eには、ロッド34が締結される。当該ロッド34は、ブラケット74の中央部に開設される孔74a、案内筒74d、コイルばね35および案内部材44に開設される孔44aを摺動可能に挿通する。したがって、制御アーム24は、上下方向に摺動移動可能であり、下方向に常に付勢されている。なお、ロッド34の頭部は、孔74aよりその径が大であるため、制御ホイール4およびワンウェイクラッチユニット14を擁する制御アーム24が下方に脱落することはない。また、コイルばね35の内径は、案内筒74dの外径より大であり、孔44aは、コイルばね35の外径より大である。
【0051】
図10に示すように、制御アーム24の左側部には、ワンウェイクラッチユニット14を設置するための孔24dが2個開設されている。また、制御アーム24の右側部には、軸受ホルダ700を設置するための孔24bおよび2個のねじ孔24cが開設され、さらに軸9を通すための切り欠き加工(切り欠き加工部24a)が施されている。
【0052】
図1、
図2および
図10に示すように、ブラケット74は、当該ブラケット74に開設される2個のボルト貫通長孔74cを、2個のボルト866が貫いて連結部材75に固設される。また、当該連結部材75は、シートステー602に、ボルト814によって固定されるブラケット保持部材76の上端部に、2個のボルト867によって固設される。なお、制御アーム24、ブラケット74およびブラケット保持部材76は、鉄等の強度の高い金属を素材として形成されるものであることが好ましい(以下、制御アーム、ブラケットおよびブラケット保持部材の材質について同様)。また、連結部材75に開設されるボルト867の挿通する孔は長孔(図示せず)となっており、制御アーム24の高さ方向の位置の調整が可能である。
【0053】
上述したように、制御アーム24は、上下方向移動可能に支持され、また、コイルばね35によって常時下方向に付勢されるため、第1の実施形態の補助動力装置100の無操作状態において、制御ホイール4は、入力ホイール2および出力ホイール3の双方に対して一定の押圧力で当接している。コイルばね35による付勢力は、入力ホイール2が連動ホイール5に当接して最大の巻き数までエネルギーを回収する際、あるいは最大の巻き数までエネルギーを回収、蓄積して無操作状態へと移行した場合において、出力ホイール3と制御ホイール4の間、さらに入力ホイール2および出力ホイール3と制御ホイール4の間において、押圧力の不足による空転が生じず、かつ、制御ホイール4の押圧力の過大により、入力ホイール2および出力ホイール3が互いに離間してしまうことのない程度のものとなっている。
【0054】
<軸受ホルダ>
図11は、軸受ホルダ700を示すものであり、(A)は、正面図、(B)は、背面図、(C)は、(B)のXI-XI線断面図である。軸受ホルダ700は、ぜんまいばねユニットあるいはワンウェイクラッチユニットに接続する軸の一端部を支持するために使用されるものである。軸受ホルダ700には、ボルト870の挿通する孔700cおよび軸端を逃がすための孔700bが設けられており、さらに中央部に軸受705を収納するハウジング部700aを備える。なお、左右方向の寸法を抑えるために、孔700cのボルト870の頭部の当接する部位に、拡径加工(拡径加工部700d)が施されている。
【0055】
<固定部材>
図12および
図13は、固定部材710を示すものである。
図12は、固定部材710が使用される部分の拡大図であり、
図13(A)は、固定部材710の正面図、(B)は、その背面図、(C)は、その底面図、(D)は、シートステー602に2個の固定部材710を取り付けた状態を示す側面図である。自転車のフレームに使用される鋼材は、一般的に円形もしくは楕円形の断面形状を有し、地面に対して傾斜するものが多い。したがって、溶接によって接続する方法を除いて、自転車の進行方向に平行、かつ、地面に対して垂直な面を得て、支持部材等を自転車のフレームに固定するために、このような専用の部材を用いている。
【0056】
図13(D)に示すように、断面が円形であって傾斜する棒状のシートステー602に対して、2個の固定部材710を、挟むように対向に取り付けることで、自転車の進行方向に平行、かつ、地面に対して垂直な面を得ることができる。
図12に示すように、ブラケット保持部材76は、ボルト814が、当該ブラケット保持部材76の下端部に開設される孔(図示せず)、対向する2個の固定部材710の貫通孔710aおよびシートステー602に開設される貫通孔(図示せず)を貫き、ナット(図示せず)に締結されて、シートステー602に固定される。また、L字型の補強部材60は、ボルト813が、当該補強部材60の屈曲部に開設される孔(図示せず)、対向する2個の固定部材710の貫通孔710aおよびシートステー602に開設される貫通孔(図示せず)を貫き、ナット(図示せず)に締結されて、シートステー602に固定される。
【0057】
<操作ユニット>
図14は、操作ユニット90を示すものであり、(A)は、上面図、(B)は、一部分解図、(C)は、正面図、(D)は、側面図である。
図3に示すように、操作ユニット90は、自転車10のハンドル690の左側に設置され、入力側ケーブル80および出力側ケーブル81が接続される。なお、操作ユニット90の設置場所は、当該位置に限定されるものではなく、ハンドル690の右側、あるいは、その他の車体側の適した場所であってもよい。
【0058】
操作ユニット90は、レバー91、レバー軸91a、ワイヤ80aのワイヤエンド80bおよびワイヤ81aのワイヤエンド81bを係止し、軸92を中心に回動可能に設置される巻回部材95、上部カバー93(中央部93a、周辺部93b)、下部カバー94(中央部94a、周辺部94b)および入力側ケーブル80,出力側ケーブル81のそれぞれの接続部に取り付けられるブーツ96からなる。
【0059】
巻回部材95は、略円盤状の部材であり、当該巻回部材95に対して相対回転不能に設置される軸92を中心に回動する。
図14(B)に示すように、円盤状の巻回部材95の周辺部にホルダ95aおよびホルダ95bが設けられており、ホルダ95aには、入力側ケーブル80内を通るワイヤ80aの端部(ワイヤエンド80b)が係止され、ホルダ95bには、出力側ケーブル81内を通るワイヤ81aの端部(ワイヤエンド81b)が係止される。
【0060】
巻回部材95の軸92は、上部カバー93の中央部93aおよび下部カバー94の中央部94aに設けられる軸受部(図示せず)に回動可能に支持される。また、軸92にはレバー軸91aが接続される。したがって、レバー軸91aの端部に設置される略球形状のレバー91を、自転車操縦者(図示せず)が操作する(巻回部材95を回動させる)ことで、ワイヤ(ワイヤ80aまたはワイヤ81a)を引く、あるいは戻すといった動作が可能となる。
【0061】
<動作の様相>
図15は、第1の実施形態の補助動力装置100の動作の様相を模式的に示すものであり、(A)は、エネルギーの回収の状態を、(B)は、蓄積されたエネルギーの保持の状態を、(C)は、エネルギーの放出の状態を示す。
【0062】
なお、図中の各ホイール(および連動リング)の近傍に位置する矢印は、それら各ホイール(および連動リング)の回転方向を表し、回動アームの下部近傍に位置する矢印は、ワイヤが引かれることで回動アームが回動する方向を表し、ケーブルの近傍に位置する矢印は、ケーブル内を通るワイヤの移動する方向を表している。ただし、矢印の大きさ、あるいはその長さは、それぞれの回転体の回転力または回転速度、あるいは回動アームもしくはワイヤの移動量を正確に表すものではない(以下の説明において同様)。
【0063】
図15(A)に示すように、入力側ケーブル80内を通るワイヤ80aが矢印900Lの方向に引かれることで、回動アーム22および回動アーム23が矢印907Lの方向に回動し、入力ホイール2が、矢印905Lに示す方向に回転する連動ホイール5の外周面に当接する。したがって、入力ホイール2は矢印902Rに示す方向に、出力ホイール3は矢印903Lに示す方向に回転して、ぜんまいばねユニット12およびぜんまいばねユニット13にエネルギーが蓄積、回収される。この時、制御ホイール4は、出力ホイール3にのみ当接しており、矢印904Rに示す方向に回転している。
【0064】
図15(B)に示すように、無操作状態において、入力ホイール2および出力ホイール3は、いずれも連動ホイール5に当接していない。この時、制御ホイール4は、入力ホイール2および出力ホイール3の双方に当接しており、ぜんまいばねユニット12およびぜんまいばねユニット13に蓄積されたエネルギーが解放されることはない。すなわち、入力ホイール2、出力ホイール3および制御ホイール4は、いずれも静止しており、補助動力装置100を備えた自転車10の後輪650は、当該補助動力装置100に対して非接続の状態となっている。
【0065】
図15(C)に示すように、出力側ケーブル81内を通るワイヤ81aが矢印901Lの方向に引かれることで、回動アーム22および回動アーム23が矢印907Rの方向に回動して、制御ホイール4が出力ホイール3から離間して入力ホイール2にのみ当接し、ぜんまいばねユニット12およびぜんまいばねユニット13に蓄積されたエネルギーが放出される。したがって、入力ホイール2は矢印902Lに示す方向に、出力ホイール3は矢印903Rに示す方向に,制御ホイール4は矢印904Rに示す方向にそれぞれ回転し、連動ホイール5の外周面に当接する出力ホイール3は、当該連動ホイール5に、矢印905Lに示す方向に回転する回転力を付与する。
【0066】
自転車操縦者(図示せず)は、操作ユニット90を操作して回動アーム22および回動アーム23を回動させることで、連動ホイール5に入力ホイール2を当接させて、補助動力装置100を備える自転車10の有する運動エネルギーを回収することができ、連動ホイール5に出力ホイール3を当接させて、当該自転車10に対して運動エネルギーを付与することができる。また、無操作状態において、エネルギーの蓄積状態を保持することができる。
【0067】
[第2の実施形態]
<全体の構成>
図16および
図17は、第2の実施形態の補助動力装置200を示すものであり、
図16は正面図、
図17は側面図である。第2の実施形態の補助動力装置200は、自転車の後輪250のスポーク部251に設置され、当該後輪250と共に回転する連動リング205、連動リング205の内周面に当接して当該連動リング205の回転力を回収する入力ホイール202、入力ホイール202と互いに当接するように付勢され、反対の回転方向となるように回転力を伝達し合い、連動リング205の内周面に当接して連動リング205に回転力を付与する出力ホイール203、入力ホイール202または出力ホイール203の、いずれか一方、あるいは双方に当接して回転を制御する役割を担う制御ホイール204より構成される。
【0068】
<連動リング>
図16乃至
図18に示すように、連動リング205は、自転車の後輪250のスポーク部251にボルト875によって固定され、後輪250と回転中心を同じくし、当該後輪250と共に回転する。第2の実施形態の補助動力装置200の主要部は、連動リング205の内周に展開されるため、当該連動リング205は、第1の実施形態の補助動力装置100で用いられた連動ホイール5と比較して大径となっている。ゆえに重量軽減および左右方向の寸法の抑制を図って、このような構成(連動ホイールに替えて連動リングとする)を採用するものである。なお、以下の実施形態において、同様の趣旨で上記の構成とする。
【0069】
図18(A)および
図18(B)に示すように、連動リング205は、輪状のリング部材205aおよび取り付け部材205bからなり、リング部材205aの径方向外側に等角度間隔で6個の取り付け部材205bが溶接接合されている。後輪250のスポーク部251には、6個の取り付け部材205bの位置に対応して受け加工(受け加工部251b)が施される。
図18(D)に示すように、連動リング205は、ボルト875が取り付け部材205bの孔(図示せず)を挿通し、当該受け加工部251bに締結されて、後輪250に固設される。なお、リング部材205aは、強度確保のため金属製であることが好ましい(以下、リング部材について同様)。
【0070】
図18(C)に示すように、後輪250は、スポーク部251、リム252およびタイヤ253からなる。スポーク部251は、中心(貫通孔251a)から径方向外側に向けて等角度間隔で6本の枝部が延出した形状を有し、それぞれの枝部に連動リング205を設置するための受け加工部251bが設けられており、枝部の径方向外側の端部は、リム252と接合している。なお、スポーク部251およびリム252は、一体に成形されるものであってもよく、その材質は、アルミ等の軽金属、あるいは強度の確保を前提に、樹脂によるものであってもよい(以下、スポーク部およびリムの材質について同様)。
【0071】
<支持部材>
図16および
図17に示すように、回動アーム222および回動アーム223を支持する支持部材270は、下端部に設けられる長孔(図示せず)を後輪軸615が貫いて当該後輪軸615上に設置される。後輪軸615上の支持部材270の左右両側には、スペーサ618(右側)およびスペーサ620(左側)が配され、左右方向の位置が決められる。また、支持部材270の長さ方向の略中央部に長孔(図示せず)が設けられ、当該長孔および補強部材260の端部に設けられる孔(図示せず)をボルト821が貫いて、支持部材270に当該補強部材260の一端部が固定される。補強部材260の他端部は、2個の固定部材710およびボルト822によりシートステー602に固定される。回動アーム222および回動アーム223は、支持部材270の上端部に、ボルト820を中心に回動可能に支持される。
【0072】
<回動アーム>
図16および
図17に示すように、回動アーム222および回動アーム223は、それぞれのアームの長さ方向の略中央部に設けられる貫通孔(図示せず)を、左右(
図16における紙面手前および奥)方向に重なるように、正面視で略X字形状に配され、当該2個の貫通孔および支持部材270の上端部をボルト820が貫いて、支持部材270に、当該ボルト820を中心に回動可能に支持される。回動アーム222の上端部には、略U字形状(ただし屈曲部は直角である)を呈し、入力ホイール202およびぜんまいばねユニット212が設置される保持部材242が溶接接合される。また同様に、回動アーム223の上端部には、略U字形状(ただし屈曲部は直角である)を呈し、出力ホイール203およびぜんまいばねユニット213が設置される保持部材243が溶接接合される。
【0073】
回動アーム222の下端部には、コイルばね236の一端部を掛けるための孔を有する突設部222aが設けられる。同様に、回動アーム223の下端部には、コイルばね237の一端部を掛けるための孔を有する突設部223aが設けられる(コイルばね236とコイルばね237は、同様の性能を有する)。なお、コイルばね236の他端部は、入力側ケーブル280の端部を支持する枝支持部材272(支持部材270の下部前方に溶接接合される)に溶接接合される突設部272aの孔(図示せず)に掛けられる。同じく、コイルばね237の他端部は、出力側ケーブル281の端部を支持する枝支持部材273(支持部材270の下部後方に溶接接合される)に溶接接合される突設部273aの孔(図示せず)に掛けられる。
【0074】
<入力ホイール、出力ホイール>
図16および
図17に示すように、回動アーム222の上端部に溶接接合される保持部材242には、入力ホイール202およびぜんまいばねユニット212が設置され、回動アーム223の上端部に溶接接合される保持部材243には、出力ホイール203およびぜんまいばねユニット213が設置される。コイルばね236およびコイルばね237の作用により、入力ホイール202および出力ホイール203は、それぞれの転動面が当接して、回転方向が反対となるように互いに回転力を伝達し合う。また、上記の作用により、無操作状態において、入力ホイール202の回転中心と出力ホイール203の回転中心を結ぶ仮想線は、地面に対して略平行となっており、それら両ホイールは、いずれも連動リング205に当接していない。なお、入力ホイール202および出力ホイール203の構成は、径の大きさを除けば、第1の実施形態の補助動力装置100の入力ホイール2および出力ホイール3の構成に準ずるものであるため、その説明を省略する。また、入力ホイール202の径と出力ホイール203の径は同じである。
【0075】
<ぜんまいばねユニット>
入力ホイール202は、ぜんまいばねユニット212に接続する軸207に、一体回転可能に配設される。同様に出力ホイール203は、ぜんまいばねユニット213に接続する軸208に、一体回転可能に配設される。なお、ぜんまいばねユニット212の性能とぜんまいばねユニット213の性能は同じであるが、巻き上げ方向は互いに反対となっている。
【0076】
ぜんまいばねユニット212およびぜんまいばねユニット213の構成は、第1の実施形態の補助動力装置100におけるぜんまいばねユニット12およびぜんまいばねユニット13の構成に準ずるものである。ただし、補助動力装置100における入力ホイール2(または出力ホイール3)と連動ホイール5(外径)の径の比と比較して、補助動力装置200における入力ホイール202(または出力ホイール203)と連動リング205(内径)の径の比が大であるため、ぜんまいばねユニット212およびぜんまいばねユニット213に要求される性能は、変更されるべきものと考えられる。すなわち、最大の巻き数は、より大であるべきであるが、最大の巻き数まで巻かれた際に発生する軸トルクは、より低いものであってもよい。
【0077】
<制御ホイール>
図19は、制御アーム224に制御ホイール204およびワンウェイクラッチユニット214が設置された状態を示すものであり、
図19(A)は、正面図、
図19(B)は、側面図である。制御ホイール204は、スポーク部204aおよび当該スポーク部204aの外周を被覆するライニング204bからなる。制御ホイール204は、入力ホイール202が連動リング205の内周面に当接して運動エネルギーを回収する際に、出力ホイール203に当接して、当該入力ホイール202および出力ホイール203の回転を制御し、無操作状態において、入力ホイール202および出力ホイール203の双方に当接して、それらの回転を制止させる。なお、ワンウェイクラッチユニット214に接続する軸209に、制御ホイール204を固設する方法およびスポーク部204a、ならびにライニング204bの説明は、上述の補助動力装置100の入力ホイール2および出力ホイール3の説明、ならびに連動ホイール5のライニング5bの説明に準ずるものであるため省略する。以下、第3の実施形態における制御ホイール304および第4の実施形態における制御ホイール404について同様とする。
【0078】
図19(B)に示すように、制御ホイール204は、ワンウェイクラッチユニット214に接続する軸209に、一体回転可能に配設される。ワンウェイクラッチユニット214の本体部214bの背面には、2個のねじ孔(図示せず)が設けられており、ワンウェイクラッチユニット214は、ボルト868により、略U字形状(ただし屈曲部は直角である)の制御アーム224の左側に設置される。軸209の右側端部は、軸受ホルダ700(ボルト870によって締結される)に嵌装される軸受705を介して、制御アーム224に回転可能に支持される。なお、制御アーム224の右側部には、軸209を通すための切り欠き加工(切り欠き加工部224a)が施される。
【0079】
<ワンウェイクラッチユニット>
図19(B)に示すように、ワンウェイクラッチユニット214は、カバー214aおよび本体部214bからなる。ワンウェイクラッチユニット214に接続する軸209の一端部は、本体部214bの内部に設置され,ワンウェイクラッチ機構を有する軸受(図示せず)を介して支持される。すなわち、制御ホイール204と共に回転する軸209は、入力ホイール202が連動リング205に当接して運動エネルギーを回収する際に、制御ホイール204が出力ホイール203に当接して回転する方向にのみ回転する。
【0080】
<制御アーム>
図17および
図19に示すように、制御アーム224は、案内部材244の内側に、上下方向に摺動移動可能に嵌装され、案内部材244は、2個のボルト840および2個のナット844によってブラケット274に固設される。ブラケット274の左側端部には、補強のための突設部が設けられており、当該突設部の上端部には、当該突設部を補強部材260と共に支持部材270に固定するために用いるボルト821の挿通する孔274aが設けられる。
【0081】
ブラケット274の下部には、2個の脚部275が溶接接合される。2個の脚部275の下部には、筒部276が溶接接合されており、ブラケット274は、当該筒部276を後輪軸615が貫通して、当該後輪軸615上に設置される。その際、後輪軸615上の筒部276の右側にはスペーサ618が配され、左右方向の位置が決められる。なお、制御アーム224にロッド234およびコイルばね235が配設される方法は、上述の補助動力装置100の制御アーム24にロッド34およびコイルばね35が配設される方法と同様であるため、その説明を省略する。すなわち、制御アーム224は、上下方向に摺動移動可能、かつ、上方向に常に付勢されている。
【0082】
<動作の様相>
図20は、第2の実施形態の補助動力装置200の動作の様相を模式的に示すものであり、(A)は、エネルギーの回収の状態を、(B)は、蓄積されたエネルギーの保持の状態を、(C)は、エネルギーの放出の状態を示す。
【0083】
図20(A)に示すように、入力側ケーブル280内を通るワイヤ280aが矢印920Lの方向に引かれることで、回動アーム222および回動アーム223が矢印927Lの方向に回動し、入力ホイール202が、矢印925Lに示す方向に回転する連動リング205の内周面に当接する。したがって、入力ホイール202は矢印922Lに示す方向に、出力ホイール203は矢印923Rに示す方向に回転して、ぜんまいばねユニット212およびぜんまいばねユニット213にエネルギーが蓄積、回収される。この時、制御ホイール204は、出力ホイール203にのみ当接しており、矢印924Lに示す方向に回転している。
【0084】
図20(B)に示すように、無操作状態において、入力ホイール202および出力ホイール203は、いずれも連動リング205に当接していない。この時、制御ホイール204は、入力ホイール202および出力ホイール203の双方に当接しており、ぜんまいばねユニット212およびぜんまいばねユニット213に蓄積されたエネルギーが解放されることはない。すなわち、入力ホイール202、出力ホイール203および制御ホイール204は、いずれも静止しており、補助動力装置200を備えた自転車の後輪250は、当該補助動力装置200に対して非接続の状態となっている。
【0085】
図20(C)に示すように、出力側ケーブル281内を通るワイヤ281aが矢印921Lの方向に引かれることで、回動アーム222および回動アーム223が矢印927Rの方向に回動し、制御ホイール204が出力ホイール203から離間して入力ホイール202にのみ当接して、ぜんまいばねユニット212およびぜんまいばねユニット213に蓄積されたエネルギーが放出される。入力ホイール202は矢印922Rに示す方向に、出力ホイール203は矢印923Lに示す方向に、制御ホイール204は矢印928Lに示す方向にそれぞれ回転し、連動リング205の内周面に当接する出力ホイール203は、当該連動リング205に、矢印925Lに示す方向に回転する回転力を付与する。
【0086】
自転車操縦者(図示せず)は、操作ユニット(第1の実施形態の操作ユニット90と同様のものであるが、入力側ケーブル80および出力側ケーブル81の替わりに、入力側ケーブル280および出力側ケーブル281が接続される)を操作して回動アーム222および回動アーム223を回動させることで、連動リング205に入力ホイール202を当接させて、補助動力装置200を備える自転車の有する運動エネルギーを回収することができ、連動リング205に出力ホイール203を当接させて、当該自転車に運動エネルギーを付与することができる。また、無操作状態において、エネルギーの蓄積状態を保持することができる。
【0087】
[第3の実施形態]
<全体の構成>
図21および
図22は、第3の実施形態の補助動力装置300を示すものであり、
図21は、正面図、
図22は、側面図である。第3の実施形態の補助動力装置300は、自転車の後輪350のスポーク部351に設置され、当該後輪350と共に回転する連動リング305、連動リング305の外周面に当接して連動リング305の回転力を回収する入力ホイール302、入力ホイール302と同じ回転方向となるように回転力を伝達し合い、連動リング305の内周面に当接して連動リング305に回転力を付与する出力ホイール303、入力ホイール302に当接あるいは離間して、入力ホイール302および出力ホイール303の回転を制御する役割を担う制御ホイール304より構成される。
【0088】
<連動リング>
図21および
図22に示すように、連動リング305は、後輪350のスポーク部351にボルト875によって固設され、後輪350と回転中心を同じくし、当該後輪350と共に回転する。連動リング305は、輪状のリング部材305aおよび取り付け部材305bからなり、リング部材305aの径方向外側に等角度間隔で6個の取り付け部材305bが溶接接合されている。なお、後輪350に連動リング305が設置される方法は、第2の実施形態の補助動力装置200の後輪250に連動リング205が設置される方法に準ずるものであるため、その説明を省略する。
【0089】
後輪350は、スポーク部351、リム252およびタイヤ253からなる。スポーク部351は、中心から径方向外側に向けて等角度間隔に6本の枝部が延出する形状を呈し、それぞれの枝部に連動リング305を取り付けるための受け加工(受け加工部は図示せず)が施されている。また、枝部の径方向外側の端部は、リム252と接合されている。なお、スポーク部351およびリム252は、一体に成形されるものであってもよい。
【0090】
<支持部材>
図21および
図22に示すように、回動アーム320を支持する支持部材370は、正面視で略T字形状を呈し、その前方端部は2個のボルト832によってシートステー602に固定され、その下端部は当該部位に設けられる孔(図示せず)を後輪軸615が貫いて当該後輪軸615上に設置される。その際、後輪軸615上の支持部材370の右側には、スペーサ622が配され、その左右方向の位置が決められる。支持部材370の後方端部には、2個のボルト831によって入力側ケーブル380の端部および出力側ケーブル381の端部を支持する枝支持部材372が固設される。支持部材370の略T字形状の交差部には、ボルト830の挿通する孔(図示せず)が設けられる。回動アーム320は、ボルト830が、当該孔および回動アーム320に設けられる孔(図示せず)を挿通して、支持部材370に、ボルト830を中心に回動可能に支持される。
【0091】
<回動アーム>
図21および
図22に示すように、回動アーム320は、正面視で略K字の鏡像となる形状を呈し、ボルト830の挿通する孔(図示せず)から4方向に延出する4本の腕部を有する。前方側の上下2箇所の腕部(入力ホイール側の腕部321aおよび出力ホイール側の腕部321b)の端部には、それぞれ入力側の保持部材342および出力側の保持部材343が溶接接合される。保持部材342は、略U字形状(ただし屈曲部は直角である)を呈する部材であり、当該略U字形状の内側に、入力ホイール302、ぜんまいばねユニット312およびプーリ722が配設される。保持部材343も同じく、略U字形状(ただし屈曲部は直角である)を呈する部材であり、当該略U字形状の内側に、出力ホイール303、ぜんまいばねユニット313およびプーリ723が配設される。
【0092】
その他の2箇所の腕部(入力側の腕部322および出力側の腕部323)の端部には、入力側ケーブル380内を通るワイヤ380aの端部および出力側ケーブル381内を通るワイヤ381aの端部を係止するためのホルダ(図示せず)がそれぞれに設けられる。上記のプーリ722およびプーリ723にベルト720が掛け渡され、入力ホイール302および出力ホイール303は、互いに同じ回転方向となるように回転力を伝達し合う。
【0093】
回動アーム320の腕部322と枝支持部材372の上部には、コイルばね336が掛けられ、回動アーム320の腕部323と枝支持部材372の下部には、コイルばね337が掛けられる。当該2個のコイルばねの付勢力により、無操作状態において、入力ホイール302の回転中心と出力ホイール303の回転中心を結ぶ仮想線は、地面に対して略垂直であり、入力ホイール302および出力ホイール303のいずれも連動リング305に当接していない。なお、第1の実施形態の補助動力装置100および第2の実施形態の補助動力装置200における回動アームは、入力側と出力側に分割しているものであったが、第3の実施形態の補助動力装置300における回動アーム320は、一体に形成されるものとなっている。
【0094】
<入力ホイール、出力ホイール>
図21および
図22に示すように、回動アーム320の腕部321aの上端に溶接接合される保持部材342には、入力ホイール302、ぜんまいばねユニット312およびプーリ722が設置され、回動アーム320の腕部321bの下端に溶接接合される保持部材343には、出力ホイール303、ぜんまいばねユニット313およびプーリ723が設置される。プーリ722および入力ホイール302は、共にぜんまいばねユニット312に接続される軸307に、一体回転可能に配設される。同様に、プーリ723および出力ホイール303は、共にぜんまいばねユニット313に接続される軸308に、一体回転可能に配設される。
【0095】
プーリ722を軸307上に固設する方法およびプーリ723を軸308上に固設する方法は、第1の実施形態の補助動力装置100の入力ホイール2および出力ホイール3を、それぞれの軸上に固設する方法と同様に、セットスクリューを用いた方法でもよいが、軸に加工を施して止め輪を用いる方法でもよい。なお、入力ホイール302および出力ホイール303の構成は、第1の実施形態の補助動力装置100の入力ホイール2および出力ホイール3の構成に準ずるものであるため説明を省略する。また、入力ホイール302の径と出力ホイール303の径は同じである。
【0096】
<ぜんまいばねユニット>
第3の実施形態の補助動力装置300において、ぜんまいばねユニット312とぜんまいばねユニット313の性能および巻き上げ方向は同じであり、それらの構成は、上述の第1の実施形態の補助動力装置100におけるぜんまいばねユニット12の構成と同様のものである。ただし、それぞれに接続される軸の長さは、ぜんまいばねユニット12と比較して、プーリがさらに設置される分だけ長いものとなっている。
【0097】
<制御ホイール>
図21および
図22に示すように、制御ホイール304は、ワンウェイクラッチユニット314に接続される軸(図示せず)に、一体回転可能に配設される。制御ホイール304は、入力ホイール302が連動リング305の外周面に当接して運動エネルギーを回収する際あるいは無操作状態において、入力ホイール302に当接して当該入力ホイール302および出力ホイール303の回転を制御する。なお、出力ホイール303が連動リング305の内周面に当接してエネルギーを放出する際には、制御ホイール304は、入力ホイール302から離間しており、いずれのホイールにも当接しない状態となる。
【0098】
<ワンウェイクラッチユニット>
ワンウェイクラッチユニット314は、第1の実施形態の補助動力装置100のワンウェイクラッチユニット14と同様のものである。すなわち、制御ホイール304と共に回転し、ワンウェイクラッチユニット314に接続する軸(図示せず)は、入力ホイール302が連動リング305に当接して運動エネルギーを回収する際に、当該入力ホイール302に制御ホイール304が当接して回転する方向にのみ回転する。
【0099】
<制御アーム>
図21および
図22に示すように、第3の実施形態の補助動力装置300に用いられる制御アーム24は、第1の実施形態における補助動力装置100に用いられるものと同様のものである。ただし、補助動力装置100の制御アーム24と比べて補助動力装置300のものは、正面視で反時計回りに角度50度程傾斜している。すなわち、制御ホイール304は、
図21に示す制御アーム24の長さ方向に移動可能であり、斜め下方に向けて常に付勢されている。
【0100】
制御アーム24は、案内部材44に嵌装され、当該案内部材44は、ブラケット74に固設される。ブラケット74は、2個のボルト866によって連結部材375に固定され、当該連結部材375は、2個のボルト867によってブラケット保持部材376に固定される。さらに、当該ブラケット保持部材376は、2個のボルト832、2個のスペーサ(図示せず)および4個の取り付け部材710によって、支持部材370の前方端部と共に、シートステー602に固定される。
【0101】
<動作の様相>
図23は、第3の実施形態の補助動力装置300の動作の様相を模式的に示すものであり、(A)は、エネルギーの回収の状態を、(B)は、蓄積されたエネルギーの保持の状態を、(C)は、エネルギーの放出の状態を示す。
【0102】
図23(A)に示すように、入力側ケーブル380内のワイヤ380aが矢印930Lの方向に引かれることで、矢印935Lに示す方向に回転する連動リング305の外周面に入力ホイール302が当接して、当該入力ホイール302が矢印932Rに示す方向に、出力ホイール303が矢印933Rに示す方向に回転し、ぜんまいばねユニット312およびぜんまいばねユニット313にエネルギーが蓄積、回収される。この時、制御ホイール304は、入力ホイール302に当接しており、矢印934Lに示す方向に回転している。
【0103】
図23(B)に示すように、無操作状態において、入力ホイール302および出力ホイール303は、いずれも連動リング305に当接していない。この時、制御ホイール304は、入力ホイール302に当接しており、制御ホイール304に接続されたワンウェイクラッチユニット314の作用により、ぜんまいばねユニット312およびぜんまいばねユニット313に蓄積されたエネルギーが解放されることはない。すなわち、入力ホイール302、出力ホイール303および制御ホイール304は、いずれも静止しており、補助動力装置300を備えた自転車の後輪350は、当該補助動力装置300に対して非接続の状態となっている。
【0104】
図23(C)に示すように、出力側ケーブル381内のワイヤ381aが矢印931Lの方向に引かれることで、制御ホイール304が入力ホイール302から離間し、ぜんまいばねユニット312およびぜんまいばねユニット313に蓄積されたエネルギーが放出される。入力ホイール302は矢印932Lに示す方向に、出力ホイール303は矢印933Lに示す方向に回転し、連動リング305の内周面に当接する出力ホイール303は、当該連動リング305に、矢印935Lに示す方向に回転する回転力を付与する。
【0105】
自転車操縦者(図示せず)は、操作ユニット(第1の実施形態の操作ユニット90と同様のものであるが、入力側ケーブル80および出力側ケーブル81の替わりに、入力側ケーブル380および出力側ケーブル381が接続される)を操作して回動アーム320を回動させることで、連動リング305に入力ホイール302を当接させて、補助動力装置300を備える自転車の有する運動エネルギーを回収することができ、連動リング305に出力ホイール303を当接させて、当該自転車に運動エネルギーを付与することができる。また、無操作状態において、エネルギーの蓄積状態を保持することができる。
【0106】
[第4の実施形態]
<全体の構成>
図24および
図25は、第4の実施形態の補助動力装置400を示すものであり、
図24は正面図、
図25は側面図である。第4の実施形態の補助動力装置400は、自転車の後輪450のスポーク部451に設置され、当該後輪450と共に回転する連動リング405、同様に、自転車の後輪450のスポーク部451に設置され、当該後輪450と共に回転し、連動リング405より大径である連動リング406、連動リング405の外周面に当接して連動リング405の回転力を回収し、連動リング406の内周面に当接して連動リング406に回転力を付与する入出力ホイール402、当該入出力ホイール402に当接あるいは離間して、その回転を制御する役割を担う制御ホイール404より構成される。
【0107】
<連動リング>
図24および
図25に示すように、連動リング405および連動リング406は、自転車の後輪450のスポーク部451にボルト875によって固定され、当該後輪450と中心を同じくし、当該後輪450と共に回転する。連動リング405は、輪状のリング部材405aおよび取り付け部材405bからなり、リング部材405aの径方向外側には、等角度間隔で6個の取り付け部材405bが溶接接合されている。後輪450のスポーク部451には、6個の取り付け部材405bの位置に対応して受け加工部(図示せず)が設けられ、ボルト875が取り付け部材405bに設けられる孔(図示せず)を挿通し、当該受け加工部に締結されて、後輪450に連動リング405が固設される。
【0108】
連動リング406は、輪状のリング部材406aおよび取り付け部材406bからなり、リング部材406aの径方向外側に等角度間隔で6個の取り付け部材406bが溶接接合されている。後輪450のスポーク部451には、6個の取り付け部材406bの位置に対応して受け加工部(図示せず)が設けられ、ボルト875が取り付け部材406bに設けられる孔(図示せず)を挿通し、当該受け加工部に締結されて、後輪450に連動リング406が固設される。なお、連動リング406は、連動リング405より大径となっており、それらは互いに干渉しないように後輪450に設置される。
【0109】
後輪450は、スポーク部451、リム252およびタイヤ253からなる。スポーク部451は、中心から径方向外側に向けて等角度間隔に6本の枝部が延出する形状を有し、それぞれの枝部に連動リング405および連動リング406を設置するための受け加工(受け加工部は図示せず)が施されている。また、枝部の径方向外側の端部は、リム252と接合されている。なお、スポーク部451およびリム252は、一体に成形されるものであってもよい。
【0110】
<支持部材>
図24に示すように、回動アーム420を支持する支持部材470は、正面視でT字を時計回りに角度90度回転させた形状を呈する。支持部材470の下端部は、ボルト841によって補強部材460の一端部に固定され、その前方端部は、ボルト842および2個の固定部材710によってシートステー602に固定される。なお、
図25に示すように、補強部材460は、当該補強部材460の他端部に設けられる孔(図示せず)を後輪軸615が貫いて当該後輪軸615上に設置される。その際、後輪軸615上の補強部材460の右側にはスペーサ624、左側にはスペーサ626が配され、その左右方向の位置が決められる。回動アーム420は、支持部材470の上端部に設けられる孔(図示せず)および回動アーム420に設けられる孔(図示せず)をボルト840が貫いて、支持部材470に、当該ボルト840を中心に回動可能に支持される。
【0111】
支持部材470の下部には、入力側ケーブル480の端部を支持する枝支持部材472および出力側ケーブル481の端部を支持する枝支持部材473が溶接接合される。また、枝支持部材472には、コイルばね436の一端を掛けるための孔(図示せず)を有する突設部472aが設けられており、枝支持部材473には、コイルばね437の一端を掛けるための孔(図示せず)を有する突設部473aが設けられている。
【0112】
<回動アーム>
図24に示すように、回動アーム420は、ボルト840の挿通する孔(図示せず)から延出する3本の腕部(入出力ホイール側の腕部421,入力側の腕部422および出力側の腕部423)を有し、それぞれの腕部の間の角度は、腕部421と腕部422のなす角度が45度であり、腕部422と腕部423のなす角度が90度となっている。腕部422の下部には、ケーブル480を通るワイヤ480aの端部を係止するためのホルダ(図示せず)が設けられ、腕部423の下部には、ケーブル481を通るワイヤ481aの端部を係止するためのホルダ(図示せず)が設けられる。なお、腕部421は、ボルト840の挿通する部位から前方に向かって、地面に対して略平行に延出している。
【0113】
図24および
図25に示すように、回動アーム420の腕部421には、L字状の枝部材421aが溶接接合され、略U字形状(ただし屈曲部は直角である)の保持部442を形成している。入出力ホイール402およびぜんまいばねユニット412は、当該保持部442に設置される。なお、保持部442に入出力ホイール402およびぜんまいばねユニット412が設置される方法は、第1の実施形態の補助動力装置100における入力側の回動アーム22に入力ホイール2およびぜんまいばねユニット12が設置される方法、あるいは出力側の回動アーム23に出力ホイール3およびぜんまいばねユニット13が設置される方法に準ずるものであるため、その説明を省略する。
【0114】
図24に示すように、回動アーム420の腕部422と腕部423のなす角度は、正面視で90度であり、それらは、回動の中心となるボルト840の中心線を通り、地面に対して垂直な面に対して対称となっている。腕部422の下端部には、コイルばね436の一端を掛けるための孔を有する突設部422aが設けられ、腕部423の下端部には、コイルばね437の一端を掛けるための孔を有する突設部423aが設けられる。回動アーム420は、コイルばね436およびコイルばね437の引っ張り力により、上記の位置に留まるように常に付勢されている。
【0115】
<入出力ホイール>
上述のように、回動アーム420の前方に設けられる保持部442には、入出力ホイール402およびぜんまいばねユニット412が設置される。無操作状態において、入出力ホイール402の回転の中心と回動アーム420の回動の中心を結ぶ仮想線は、地面に対して略水平であり、入出力ホイール402は、連動リング405あるいは連動リング406のいずれにも当接していない。なお、入出力ホイール402の構成は、第1の実施形態の補助動力装置100の入力ホイール2あるいは出力ホイール3の構成に準ずるものであるため、その説明を省略する。
【0116】
<ぜんまいばねユニット>
入出力ホイール402は、ぜんまいばねユニット412に接続する軸(図示せず)に一体回転可能に配設される。ぜんまいばねユニット412の構成は、第1の実施形態の補助動力装置100におけるぜんまいばねユニット12の構成に準ずるものである。ただし、第4の実施形態の補助動力装置400においては、ぜんまいばねユニットは1個のみが使用される。また、補助動力装置100における入力ホイール2(または出力ホイール3)と連動ホイール5(外径)の径の比と比較して、補助動力装置400における入出力ホイール402と連動リング405(外径)の径の比または入出力ホイール402と連動リング406(内径)の径の比は異なるため、ぜんまいばねユニット412に要求される性能は、変更されるべきものと考えられる。すなわち、最大の巻き数および最大の巻き数の際に発生する軸トルクは、補助動力装置100におけるぜんまいばねユニット12より共に大であるべきである。
【0117】
<制御ホイール>
図24および
図25に示すように、制御ホイール404は、ワンウェイクラッチユニット414に接続する軸409に一体回転可能に配設される。入出力ホイール402が連動リング405に当接して運動エネルギーを回収する際および無操作状態において、制御ホイール404は、入出力ホイール402に当接し、当該入出力ホイール402の回転を制御する。なお、入出力ホイール402が連動リング406の内周面に当接して運動エネルギーを放出する際、制御ホイール404は、入出力ホイール402から離間して、いずれのホイールにも当接しない状態となる。
【0118】
<ワンウェイクラッチユニット>
ワンウェイクラッチユニット414は、第1の実施形態における補助動力装置100のワンウェイクラッチユニット14と同様のものである。すなわち、制御ホイール404と共に回転し、ワンウェイクラッチユニット414に接続する軸409は、入出力ホイール402が連動リング405に当接して運動エネルギーを回収する際に、当該入出力ホイール402に制御ホイール404が当接して回転する方向にのみ回転する。
【0119】
<制御アーム>
図24および
図25に示すように、補助動力装置400の制御アーム24は、第1の実施形態における補助動力装置100に用いられるものと同様のものである。ただし、補助動力装置100の制御アーム24と比べて補助動力装置400のものは、正面視で反時計回りに角度93度程傾斜して設置される。すなわち、制御ホイール404は、
図24に示す制御アーム24の長さ方向に移動可能であり、略後方に向けて常に付勢されている。
【0120】
補助動力装置400における、制御アーム24が嵌装される案内部材44は、2個のボルト844、2個のスペーサ(図示せず)および4個の固定部材710によって、シートステー602に固定されるブラケット(図示せず)に固設される。
【0121】
<動作の様相>
図26は、第4の実施形態の補助動力装置400の動作の様相を模式的に示すものであり、(A)は、エネルギーの回収の状態を、(B)は、蓄積されたエネルギーの保持の状態を、(C)は、エネルギーの放出の状態を示す。
【0122】
図26(A)に示すように、入力側ケーブル480内のワイヤ480aが矢印940Lの方向に引かれることで、回動アーム420が矢印947Lの方向に回動し、矢印945Lに示す方向に回転する連動リング405の外周面に入出力ホイール402が当接して、当該入出力ホイール402が矢印942Rに示す方向に回転し、ぜんまいばねユニット412にエネルギーが回収、蓄積される。この時、制御ホイール404は、入出力ホイール402に当接しており、矢印944Lに示す方向に回転している。
【0123】
図26(B)に示すように、無操作状態において、入出力ホイール402は、連動リング405または連動リング406のいずれにも当接していない。この時、制御ホイール404は、入出力ホイール402に当接しており、制御ホイール404に接続されたワンウェイクラッチユニット414の作用により、ぜんまいばねユニット412に蓄積されたエネルギーが解放されることはない。すなわち、入出力ホイール402および制御ホイール404は、いずれも静止しており、補助動力装置400を備えた自転車の後輪450は、当該補助動力装置400に対して非接続の状態となっている。
【0124】
図26(C)に示すように、出力側ケーブル481内のワイヤ481aが矢印941Lの方向に引かれることで、回動アーム420が矢印947Rの方向に回動し、制御ホイール404が入出力ホイール402から離間して、ぜんまいばねユニット412に蓄積されたエネルギーが放出される。入出力ホイール402は、矢印942Lに示す方向に回転し、連動リング406の内周面に当接する入出力ホイール402は、当該連動リング406に、矢印946Lに示す方向に回転する回転力を付与する。
【0125】
自転車操縦者(図示せず)は、操作ユニット(第1の実施形態の操作ユニット90と同様のものであるが、入力側ケーブル80および出力側ケーブル81の替わりに、入力側ケーブル480および出力側ケーブル481が接続される)を操作して回動アーム420を回動させることで、連動リング405に入出力ホイール402を当接させて、補助動力装置400を備える自転車の有する運動エネルギーを回収することができ、連動リング406に入出力ホイール402を当接させて、当該自転車に運動エネルギーを付与することができる。また、無操作状態において、エネルギーの蓄積状態を保持することができる。
【0126】
[その他の実施形態]
本発明の補助動力装置のその他の実施形態として、第3の実施形態の補助動力装置300において、制御ホイール304を用いない構成とすることが可能である。すなわち、制御ホイール304、ワンウェイクラッチユニット314、制御アーム24および保持部材等を除くことで、軽量、かつ、簡易な構成とすることができる。この場合、ぜんまいばねユニット312およびぜんまいばねユニット313に蓄積されたエネルギーの保持は難しくなるが、加減速を頻繁に繰り返すような走行状況においては、そのデメリットは減少するものと推察される。同様の趣旨で、第4の実施形態の補助動力装置400において、制御ホイール404を用いない構成とすることが可能である。
【0127】
以上、本発明の補助動力装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明したが、本発明は、これらに限られず、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変更、改良を加えての実施が可能である。
【0128】
第1、第2および第3の実施形態において、入力ホイールおよび出力ホイールは、互いの外周面が当接して、あるいはベルトとプーリを用いて、互いに回転力を伝達し合う構成としたが、本発明はそれらに限られず、例えば、歯車、シャフト、スプロケットおよびチェーンを用いた構成とすることもできる。また、第1、第2および第3の実施形態において、入力ホイールおよび出力ホイールには、各1個、すなわち合計2個のぜんまいばねユニットが接続される構成としたが、接続されるぜんまいばねユニットの個数は上記に限定されない。例えば、いずれかのホイールに1個のぜんまいばねユニットのみを使用する構成であってもよい。
【0129】
また、エネルギー蓄積手段は、ぜんまいばねを用いたものに限られず、例えば、減速装置を用いてコイルばね等の弾性体にエネルギーを蓄積させることもできる。また、入力ホイール、出力ホイール、制御ホイールおよび連動ホイール(連動リング)の径は、様々な値をとり得る。例えば、入力ホイールと出力ホイールを互いに異なる径のものとすることで、特性を変更することも可能であり、自転車のタイヤそのものを連動ホイールとする構成も可能である。また、操作ユニットと制動操作を連動させる構成とすることもできる。また、本明細書中、本発明の補助動力装置を2輪の自転車に備えるものとして説明したが、本発明の補助動力装置は、3輪以上の車輪数の車両に対しても適用が可能である。
【符号の説明】
【0130】
2、202、302:入力ホイール
3、203、303:出力ホイール
4、204、304、404:制御ホイール
5:連動ホイール
7、8、9、207、209、307、308、409:軸
10:自転車
12、13、212、213、312、313、412:ぜんまいばねユニット
14、214、314、414:ワンウェイクラッチユニット
22、23、222、223、320、420:回動アーム
24、224:制御アーム
34、234:ロッド
35、235:コイルばね
44、244:案内部材
50:受け部材
60、260、460:補強部材
70、270、370、470:支持部材
80、280、380、480:入力側ケーブル
81、281、381、481:出力側ケーブル
90:操作ユニット
100、200、300、400:補助動力装置
205、305、405、406:連動リング
250、350、450、650:後輪
242、243、342、343:保持部材
442:保持部
402:入出力ホイール
600、601:チェーンステー
602、603:シートステー
610:チェーン
611:リアスプロケット
615:後輪軸
625:ハブ
630:クランクペダル
640:前輪
660:前輪ブレーキ
670:後輪ブレーキ
690:ハンドル
700:軸受ホルダ
705:軸受
710:固定部材
720:ベルト
722、723:プーリ