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特開2023-71569菓子用材料、米菓、スナック菓子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071569
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】菓子用材料、米菓、スナック菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 3/42 20060101AFI20230516BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20230516BHJP
A23L 7/10 20160101ALN20230516BHJP
A23L 33/21 20160101ALN20230516BHJP
【FI】
A23G3/42
A23G3/34 108
A23L7/10 A
A23L33/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021196530
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】519254358
【氏名又は名称】株式会社ピアンタ
(72)【発明者】
【氏名】杉田 昌之
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4B023
【Fターム(参考)】
4B014GE04
4B014GG03
4B014GK01
4B014GP16
4B014GQ10
4B014GT07
4B014GU09
4B018LB01
4B018MD50
4B018ME01
4B018MF04
4B018MF07
4B018MF14
4B023LC09
4B023LE07
4B023LE30
4B023LG01
(57)【要約】
【課題】粘着性の低いレジスタントスターチ値の高いコメ原料を結着させ、米菓やスナック菓子製造用の生地の製造方法を提供する。
【解決方法】澱粉組成を改良する製粉方法とエクストルーダーによる押し出し成形で米菓やスナック菓子製造用の生地を製造し、油揚げないし焼成によって低糖質の米菓やスナック菓子を製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高レジスタントスターチ値のコメを原料とする菓子用材料
【請求項2】
低粘性の澱粉を結着させて菓子用材料を製造する方法
【請求項3】
澱粉組成を損なうことなく高レジスタントスターチ値のコメを製粉する方法
【請求項4】
高レジスタントスターチ値のコメ粉を主原料とする菓子用材料をもって低糖質の米菓およびスナック菓子に加工製造する方法
【請求項5】
請求項1~5記載のいずれかの材料および製造方法をもって製造される菓子類
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難消化性デンプンを多く含有する材料を用いて、腸での吸収を抑制することによって、結果的に摂取糖質量を低減することが出来る米菓、スナック菓子の製造方法に関する。
【技術背景】
【0002】
食品の栄養成分の中で血糖値上昇にかかわるものは唯一糖質であるが、この糖質を制限することが糖尿病や肥満を予防することが理解されている。また従来「炭水化物」と言われてきたものは、糖質と繊維の合算であり、繊維は血糖値上昇になんら関わりない。
【0003】
米菓やスナック菓子の主原料は、コメ、小麦粉、コーンなどデンプン質を主成分とし、糖質の値が極めて高い。またさらに糖類などをもって味付けを施されるとき、糖質含有率は高くならざるを得ない。
【0004】
菓子製品において糖質を制限した商品への消費者の要望は昨今増大しているが、主原料であるデンプン素材の性質上、期待される製品は製造されないで来ている。
なお、低糖質菓子の製造方法として特許文献1及び2には小麦粉材用ショ糖代替甘味料材、各ショ糖代替甘味料材を含有する低糖質菓子用組成物およびこれを用いた低糖質菓子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された低糖質菓子は、小麦粉用または小麦粉材用ショ糖代替甘味料材、低糖質菓子用組成物およびこれを用いた低糖質菓子とされるが、コメに関する記載がなく、小麦粉材料のショ糖代替甘味料材を用いるものである。また特許文献2は低糖質食品原料を使用した食品の食感や風味をより効果的に改善できるようにした食品用組成物の提供である。
【0008】
本発明は、従来より問題とされてきた糖質値の高いデンプン質原料材料であるコメについて、腸内で消化吸収率の低いデンプン、これを難消化性デンプン(レジスタントスターチ)というが、このレジスタントスターチ率の高いコメを用いて米菓やスナック菓子の製造に利用するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ジャポニカ米由来高レジスタントスターチ米(高RS米)は、秋田県立大学で開発された新品種で難消化性デンプンが通常の米の10倍程度高く、このコメ素材を主原料として米菓やスナック菓子を製造すれば、摂取後の血糖値上昇抑制が抑制されうる。
(「まんぷくすらり」として令和2年農水省に品種登録出願公表中)
【0010】
高RS米は、デンプンの性質上従来の米と異なって粘性が低く、製粉した後も結着性が極めて低く、従来の蒸練して成形するという生地製造の技術では生地製造が不可能である。
【0011】
本発明は、高RS米を少量ずつ花崗岩製の石臼に供給し、ステンレスの杵を一定間隔で連続的に打ち付け、低温で製粉し、澱粉損傷度10%以下に留めてデンプン組成を損なわない製粉方法で主原料の米粉を得るものである。
図1に示すように、精白せずに玄米のままで製粉する。
【0012】
本発明は、米菓やスナック生地製造に当たり、高RS米の粉と副資材を材料としてエクストルーダーを用いて押し出し成形して菓子製造用材料としてのペレット生地を製造し、第一次材料とする。
図2に示すように、第一次製品としての生地を製造する。
【0013】
本発明では、上記のペレット生地を植物油等をもってフライないし焼成して、醤油のタレや塩などの味付けを施し製品化する。フライ加工によってうまく膨化させるために、予備乾燥を行い、熱を持たせた状態でフライ加工する。
図3に示すように、フライ後の遠心分離機による油切りを行い、シーズニングを施す。
【0014】
従来の米菓は、主原料を粳米とした「せんべい」及び主原料を糯米とした「あられ」に大別され、膨化させるために焼成ないし油揚げした後に調味加工するものである。
【0015】
せんべい、あられともに焼成ないし油揚げする前の工程の半製品を「生地」と呼んでいるが、その製造方法には違いがある。
〈せんべい〉においては、原材料の粳米を製粉した後に蒸気を用いて練り(これを「蒸練」と言う)団子とし、冷水にくぐらせて冷却し、型抜きして生地を得る。この生地を一定時間寝かせた後、乾燥機で予備乾燥して水分値を落とし、焼成ないし油揚げする。
〈あられ〉においては、原材料の糯米を蒸かして「おこわ」とし、杵搗きなどの方法で「餅」とする。これを冷蔵して冷却して固化させ、適当な厚さと大きさに切断して焼成ないし油揚げする。ともに同一の生産場所で一貫して製造される。
【0015】
スナック菓子といわれる分野では、米粉の他、小麦粉澱粉や馬鈴薯澱粉やトウモロコシ澱粉などの食用澱粉類を主原料として生地が製造される。
〈スナック菓子〉では、各種澱粉類を主原料として加水して、これを蒸練して圧延、型抜きして乾燥させて生地とする。この生地を焼成ないし油揚げして膨化させた後味付けして商品とする。一般的に言って、生地製造と加工製造は分離して行われうる。
【0016】
せんべい、あられ、スナック菓子、ともに生地作りにおいては、それぞれが含有するデンプン質の糊化作用により結着力が高く、焼成や油揚げなどのアルファ化加工に耐えうる性状とすることを目的としている。
【0017】
K.H.Meyer(独)は1940年にデンプンは直鎖分子のアミロースと樹枝状分子のアミロペクチンの二種の分子の混合物であると解明したが、このデンプンの分子構造が食品加工においては結着性を高めて、せんべい、あられ、スナック菓子の生地製造が可能になる。
【0018】
しかしながら高RS米は「消化酵素では分解されにくく、小腸を通過して大腸に到達する澱粉」である難消化性デンプン(レジスタントスターチ)の含有率が通常のコメの10倍近くと高く、そのデンプン組成ではブドウ糖も少なく、アミロース値も高く、加水と加熱などの従来のような加工技術では結着させてせんべい、あられ、スナック菓子などの生地を製造することは不可能である。
【0019】
本発明は、高RS米を用いてせんべい、あられ、スナック菓子を製造するときに一次加工材料として製造する生地の製造において、従来の製法を用いず、押し出し成形して加工用の生地をあらかじめ製造することによる。つまり、生地作りと焼成ないし油揚げ加工などを一連の工程とせず、生地作りと製造の工程を分離することを企図する。生地は保存性が高く、製造方法の合理化にも貢献する。
【実施例0020】
秋田県立大学発ベンチャーの株式会社スターチテックが令和3年9月に秋田の圃場で収穫した高RS米「まんぷくすらり」は、元変異体ss3a/be2b二重変異体(特許第4771762号)、戻し交配親は「秋田63号」ジャポニカ型の粳米である。
【0021】
上記のコメは、RS値が通常のコメ(あきたこまちなど)の10倍程度と高く、またアミロース値も約40%(見かけのアミロース値)と高く、食後に血糖値が上がりにくく、整腸作用やダイエット効果があることが証明されている。
【0022】
上記のコメを、高級和菓子材料となる米粉製造に用いる、花崗岩の臼にステンレスの杵を用いて製粉する連続胴搗き製粉機を用いて玄米粉原料を少量ずつ粉砕して製粉し、全量の50%が粒径75μm以下となる主原料の米粉を得た。
【0023】
上記の米粉を分析して、水分12%、澱粉損傷度10%、見かけのアミロース含量は約40%であることを確認した。このことからも、粘性が極めて低く、米価やスナック菓子製品の生地製造が極めて困難であることが理解できる。じじつ加水して蒸煉しても生地として結着することなく、固形化出来ない状態であった。
【0024】
上記の高RS米の米粉では、RS率が高いため、長鎖のデンプンが分解されず小腸を通過し、大腸まで高分子のまま分解されないので体内に吸収されることがない。従って、低糖質が実現できる。普通のデンプンは、長鎖デンプンが消化器官等で消化酵素であるαア
ドウ糖に分解され、大腸で体内に吸収される。レジスタントスターチは、この分解と吸収の流れを阻害する、まさにresistant抵抗するという機能を発揮するものである。
〈揚げスナック菓子の製造〉
【0025】
上記の高RS米の米粉をエクストルーダーを利用してペレット生地を製造した。ホッパーに投入した後、エクストルーダーで2軸スクリューで米粉原材料を搬送しながら、途中で加水、摩砕、圧縮、混錬、捏和、勇断などの作用を働らかせ、加熱加圧によって溶融し、口金より大気中に押し出して、一気に膨化させてスナック菓子製造用の生地が製造できる。
【0026】
エクストルーダーでスナック菓子を製造するときは、通常は最終の膨化工程でこの押出成形機能を利用している。本技術のように、製造の第一次加工としてエクストルーダーを利用することはなかった。
【0027】
成形のための口金はマカロニ・パスタ用の中空に成形できるものを使用して、経8mm、厚さ1mm、長さ35mmの中空円筒状の生地を製造した。また、生地の表裏に0.2mmの縦型の溝を施し、フライしたときにソフトに生地が膨化して広がることを企図した。
【0028】
上記のペレット生地をステンレス製のカゴに入れ、乾燥機の中で均一に熱風が当たるように回転して80℃で10分乾燥させ、水分値5%程度の状態とした。
【0029】
予熱した生地の温度が下がらぬうちに220℃の植物油脂で3分間程度フライした結果、良好なアルファ化状態となって、適度な堅さに仕上がった。
【0030】
遠心分離機で余分な油脂を振り落とし、油脂の吸着は15%以内とすることが出来た。通常の揚げせんべいやスナック菓子が油脂吸着率25%以上であることに比して、油脂含量は4割程度減少できた。
【0031】
この段階での生地の破損はほぼなく、経12mm、厚み1.2~1.5mm、長さ45mm程度の大きさに膨化した。「米菓かたさ度」(OMP(株)の和洋女子大学柳沢研究室への委託研究による米菓硬度認定)は5段階中の3であり、米菓及びスナック菓子として好ましい「かたさ度」の範囲内であった。
【0032】
上記の素揚げした玄米スナック菓子製品を温度の高いまま、食塩、醤油、みりん、蔗糖、酵素分解調味料を混合した調味シーズニング末をからめて味付けした。
【0033】
試作した揚げ菓子の品質評価であるが、フライしたとき及び調味の段階での破損率は極めて低かった。期待する膨化率で、生地の火抜け、つまり熱通りも概ね良好であった。また食感には改良余地があるものの、歯にまとわりつく粘着性もなく、歯ごなれにも問題がなく、噛んだときの破砕食感も通常商品に近いものであった。
【0034】
商品化について企図するところは「低糖質米菓スナック」なので、調味に関しても出来うる限り低糖質の素材を考慮した。出来上がり製品に対する調味液の糖質は、製品100gにたいして1g未満なので、味付けにおいては通常品に近いものとして、美味しさを追求した。
【0035】
試作品については、原料となるコメが通常せんべいに用いられる粳米ではないため、炊飯のコメの美味しさとは異なる。コメの風味は米菓の身上と言えるが、使用原料の高RS米もジャポニカ種の国産米であるが、デンプン質の性格から通常のせんべいのような風味は弱い。が、この弱点を低糖質という機能性が勝ると評価できる。
【0036】
試作品の「高RS玄米スナック菓子」のRS値を秋田県立大学で測定したところ、1.57%という数値を得た。試作委託先の市販既存品スナック菓子のRS値を同じく測定したところ、その価は0%であった。このRS値の差は、人体の小腸でのブドウ糖吸収阻害により、糖質の吸収率抑制による血糖値上昇抑制効果、肥満防止とされる所謂ダイエット効果が期待される。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難消化性デンプンを多く含有する材料を用いて、腸での吸収を抑制することによって、結果的に摂取糖質量を低減することが出来る米菓、スナック菓子の製造方法に関する。
【技術背景】
【0002】
食品の栄養成分の中で血糖値上昇にかかわるものは唯一糖質であるが、この糖質を制限することが糖尿病や肥満を予防することが理解されている。また従来「炭水化物」と言われてきたものは、糖質と繊維の合算であり、繊維は血糖値上昇になんら関わりない。
【0003】
米菓やスナック菓子の主原料は、コメ、小麦粉、コーンなどデンプン質を主成分とし、糖質の値が極めて高い。またさらに糖類などをもって味付けを施されるとき、糖質含有率は高くならざるを得ない。
【0004】
菓子製品において糖質を制限した商品への消費者の要望は昨今増大しているが、主原料であるデンプン素材の性質上、期待される製品は製造されないで来ている。
なお、低糖質菓子の製造方法として特許文献1及び2には小麦粉材用ショ糖代替甘味料材、各ショ糖代替甘味料材を含有する低糖質菓子用組成物およびこれを用いた低糖質菓子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された低糖質菓子は、小麦粉用または小麦粉材用ショ糖代替甘味料材、低糖質菓子用組成物およびこれを用いた低糖質菓子とされるが、コメに関する記載がなく、小麦粉材料のショ糖代替甘味料材を用いるものである。また特許文献2は低糖質食品原料を使用した食品の食感や風味をより効果的に改善できるようにした食品用組成物の提供である。
【0008】
本発明は、従来より問題とされてきた糖質値の高いデンプン質原料材料であるコメについて、腸内で消化吸収率の低いデンプン、これを難消化性デンプン(レジスタントスターチ)というが、このレジスタントスターチ率の高いコメを用いて米菓やスナック菓子の製造に利用するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ジャポニカ米由来高レジスタントスターチ米(高RS米)は、秋田県立大学で開発された新品種で難消化性デンプンが通常の米の10倍程度高く、このコメ素材を主原料として米菓やスナック菓子を製造すれば、摂取後の血糖値上昇抑制が抑制されうる。
(「まんぷくすらり」として令和2年農水省に品種登録出願公表中)
【0010】
高RS米は、デンプンの性質上従来の米と異なって粘性が低く、製粉した後も結着性が極めて低く、従来の蒸練して成形するという生地製造の技術では生地づくりが不可能である。
【0011】
本発明は、高RS米を少量ずつ花崗岩製の石臼に供給し、ステンレスの杵を一定間隔で連続的に打ち付け、低温で製粉し、デンプン組成を結着性の高いものとする技術により、主原料の米粉を得るものである。
図1に示すように、精白せずに玄米のままで製粉する。
【0012】
本発明は、米菓やスナック生地製造に当たり、高RS米の粉と副資材を材料としてエクストルーダーを用いて押し出し成形して菓子製造用材料としてのペレット生地を製造し、第一次材料とする。
図2に示すように、第一次製品としての生地を製造する。
【0013】
本発明では、上記のペレット生地を植物油等をもってフライないし焼成して、醤油のタレや塩などの味付けを施し製品化する。フライ加工によってうまく膨化させるために、予備乾燥を行い、熱を持たせた状態でフライ加工する。
図3に示すように、フライ後の遠心分離機による油切りを行い、シーズニングを施す。
【0014】
従来の米菓は、主原料を粳米とした「せんべい」及び主原料を糯米とした「あられ」に大別され、膨化させるために焼成ないし油揚げした後に調味加工するものである。
【0015】
せんべい、あられともに焼成ないし油揚げする前の工程の半製品を「生地」と呼んでいるが、その製造方法には違いがある。
〈せんべい〉においては、原材料の粳米を製粉した後に蒸気を用いて練り(これを「蒸練」と言う)団子とし、冷水にくぐらせて冷却し、型抜きして生地を得る。この生地を一定時間寝かせた後、乾燥機で予備乾燥して水分値を落とし、焼成ないし油揚げする。
〈あられ〉においては、原材料の糯米を蒸かして「おこわ」とし、杵搗きなどの方法で「餅」とする。これを冷蔵して冷却して固化させ、適当な厚さと大きさに切断して焼成ないし油揚げする。ともに同一の生産場所で一貫して製造される。
【0016】
スナック菓子といわれる分野では、米粉の他、小麦粉澱粉や馬鈴薯澱粉やトウモロコシ澱粉などの食用澱粉類を主原料として生地が製造される。
〈スナック菓子〉では、各種澱粉類を主原料として加水して、これを蒸練して圧延、型抜きして乾燥させて生地とする。この生地を焼成ないし油揚げして膨化させた後味付けして商品とする。一般的に言って、生地製造と加工製造は分離して行われうる。
【0017】
せんべい、あられ、スナック菓子、ともに生地作りにおいては、それぞれが含有するデンプン質の糊化作用により結着力が高く、焼成や油揚げなどのアルファ化加工に耐えうる性状とすることを目的としている。
【0018】
K.H.Meyer(独)は1940年にデンプンは直鎖分子のアミロースと樹枝状分子のアミロペクチンの二種の分子の混合物であると解明したが、このデンプンの分子構造が食品加工においては結着性を高めて、せんべい、あられ、スナック菓子の生地製造が可能になる。
【0019】
しかしながら高RS米は「消化酵素では分解されにくく、小腸を通過して大腸に到達する澱粉」である難消化性デンプン(レジスタントスターチ)の含有率が通常のコメの10倍近くと高く、そのデンプン組成ではブドウ糖も少なく、アミロース値も高く、加水と加熱などの従来のような加工技術では結着させてせんべい、あられ、スナック菓子などの生地を製造することは不可能である。
【0020】
本発明は、高RS米を用いてせんべい、あられ、スナック菓子を製造するときに一次加工材料として製造する生地の製造において、従来の製法を用いず、押し出し成形して加工用の生地をあらかじめ製造することによる。つまり、生地作りと焼成ないし油揚げ加工などを一連の工程とせず、生地作りと製造の工程を分離することを企図する。生地は保存性が高く、製造方法の合理化にも貢献する。
【実施例0021】
秋田県立大学発ベンチャーの株式会社スターチテックが令和3年9月に秋田の圃場で収穫した高RS米「まんぷくすらり」は、元変異体ss3a/be2b二重変異体(特許第4771762号)、戻し交配親は「秋田63号」ジャポニカ型の粳米である。
【0022】
上記のコメは、RS値が通常のコメ(あきたこまちなど)の10倍程度と高く、またアミロース値も約40%(見かけのアミロース値)と高く、食後に血糖値が上がりにくく、整腸作用やダイエット効果があることが証明されている。
【0023】
上記のコメを、高級和菓子材料となる米粉製造に用いる、花崗岩の臼にステンレスの杵を用いて製粉する連続胴搗き製粉機を用いて玄米粉原料を少量ずつ粉砕して製粉し、全量の50%が粒径75μm以下となる主原料の米粉を得た。
【0024】
上記の米粉を分析して、水分12%、澱粉損傷度10%、見かけのアミロース含量は約40%であることを確認した。このことからも、粘性が極めて低く、米価やスナック菓子製品の生地製造が極めて困難であることが理解できる。じじつ加水して蒸煉しても生地として結着することなく、まとまらない状態である。
【0025】
上記の高RS米の米粉では、RS率が高いため、長鎖のデンプンが分解されず小腸を通過し、大腸まで高分子のまま分解されないので体内に吸収されることがない。従って、低糖質が実現できる。普通のデンプンは、長鎖デンプンが消化器官等で消化酵素であるαア
ドウ糖に分解され、大腸で体内に吸収される。レジスタントスターチは、この分解と吸収の流れを阻害する、まさにresistant抵抗するという機能を発揮するものである。
〈揚げスナック菓子の製造〉
【0026】
上記の高RS米の米粉をエクストルーダーを利用してペレット生地を製造した。ホッパーに投入した後、エクストルーダーで2軸スクリューで米粉原材料を搬送しながら、途中で加水、摩砕、圧縮、混錬、捏和、勇断などの作用を働らかせ、加熱加圧によって溶融し、口金より大気中に押し出して、一気に膨化させてスナック菓子製造用の生地が製造できる。
【0027】
エクストルーダーでスナック菓子を製造するときは、通常は最終の膨化工程でこの押出成形機能を利用している。本技術のように、製造の第一次加工としてエクストルーダーを利用することは希である。
【0028】
成形のための口金はマカロニ・パスタ用の中空に成形できるものを使用して、経8mm、厚さ1mm、長さ35mmの中空円筒状の生地を製造した。また、生地の表裏に0.2mmの縦型の溝を施し、フライしたときにソフトに生地が膨化して広がることを企図した。
【0029】
上記のペレット生地をステンレス製のカゴに入れ、乾燥機の中で均一に熱風が当たるように回転して80℃で10分乾燥させ、水分値5%程度の状態とした。
【0030】
予熱した生地の温度が下がらぬうちに220℃の植物油脂で3分間程度フライした結果、良好なアルファ化状態となって、適度な堅さに仕上がった。
【0031】
遠心分離機で余分な油脂を振り落とし、油脂の吸着は15%以内とすることが出来た。通常の揚げせんべいやスナック菓子が油脂吸着率25%以上であることに比して、油脂含量は4割程度減少できた。
【0032】
この段階での生地の破損はほぼなく、経12mm、厚み1.2~1.5mm、長さ45mm程度の大きさに膨化した。「米菓かたさ度」(OMP(株)の和洋女子大学柳沢研究室への委託研究による米菓硬度認定)は5段階中の3であり、米菓及びスナック菓子として好ましい「かたさ度」の範囲内であった。
【0033】
上記の素揚げした玄米スナック菓子製品を温度の高いまま、食塩、醤油、みりん、蔗糖、酵素分解調味料を混合した調味シーズニング末をからめて味付けした。
【0034】
試作した揚げ菓子の品質評価であるが、フライしたとき及び調味の段階での破損率は極めて低かった。期待する膨化率で、生地の火抜け、つまり熱通りも概ね良好であった。また食感には改良余地があるものの、歯にまとわりつく粘着性もなく、歯ごなれにも問題がなく、噛んだときの破砕食感も通常商品に近いものであった。
【0035】
商品化について企図するところは「低糖質米菓スナック」なので、調味に関しても出来うる限り低糖質の素材を考慮した。出来上がり製品に対する調味液の糖質は、製品100gにたいして1g未満なので、味付けにおいては通常品に近いものとして、美味しさを追求した。
【0036】
試作品については、原料となるコメが通常せんべいに用いられる粳米ではないため、炊飯のコメの美味しさとは異なる。コメの風味は米菓の身上と言えるが、使用原料の高RS米もジャポニカ種の国産米であるが、デンプン質の性格から通常のせんべいのような風味は弱い。が、この弱点を低糖質という機能性が勝ると評価されれば良いと考えている。
【0037】
試作品の「高RS玄米スナック菓子】のRS値を秋田県立大学で測定したところ、1.57%という数値を得た。試作委託先の市販既存品スナック菓子のRS値を同じく測定したところ、その価は0%であった。このRS値の差は、人体の小腸でのブドウ糖吸収阻害により、糖質の吸収率抑制による血糖値上昇抑制効果、肥満防止とされる所謂ダイエット効果が期待される。